JP2017203154A - 熱可塑性樹脂組成物、成形品及び成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
耐衝撃性ポリスチレン樹脂とは、一般的にポリスチレン樹脂の耐衝撃性を向上させるために、ゴム状弾性体をポリスチレン(化学式(II))中に重合または分散させたものである。
フィラー(B)は、特に限定されず、板状、繊維状、粒状等形状に関係なく、強度や剛性、経済性などが向上する種々のフィラー(充填剤)を用いることができる。フィラー(B)の具体例としては、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩化合物、ガラス系充填剤、ケイ酸化合物、フェライト類および黒鉛等が挙げられる。金属酸化物としては、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン等が挙げられる。金属水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。炭酸塩としては、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。硫酸塩としては、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、石膏繊維等が挙げられる。ケイ酸塩化合物としては、珪酸カルシウム(ワラストナイト、ゾノトライト等)、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、カオリン、バーミキュライト、スメクタイト等が挙げられる。ガラス系充填剤としては、ガラス繊維、ミルドガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスバルーン等が挙げられる。ケイ酸化合物としては、シリカ(ホワイトカーボンなど)、ケイ砂等が挙げられる。
炭酸カルシウムは、特に限定されるものではなく、合成炭酸カルシウム(沈降性炭酸カルシウム)、重質炭酸カルシウム等を用いることができる。合成炭酸カルシウムは、例えば水酸化カルシウムを炭酸ガスと反応させることによって製造することができる。水酸化カルシウムは、例えば酸化カルシウムを水と反応させることによって製造することができる。酸化カルシウムは、例えば石灰石原石をコークスなどで焼成することよって製造することができる。この場合、焼成時に炭酸ガスが発生するので、この炭酸ガスを水酸化カルシウムと反応させることによって炭酸カルシウムを製造することができる。重質炭酸カルシウムは、天然に産出する炭酸カルシウム原石を公知の方法で粉砕することにより得られるものである。炭酸カルシウム原石を粉砕する方法としては、ローラーミル、高速回転ミル(衝撃剪断ミル)、容器駆動媒体ミル(ボールミル)、媒体攪拌ミル、遊星ボールミル、ジェットミルなどで粉砕する方法が挙げられる。炭酸カルシウムの平均粒子径としては、特に限定はされないが、0.01〜30μmの範囲内であることが好ましい。炭酸カルシウムの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。炭酸カルシウムは、例えば日東粉化工業社製 NS#100や白石工業社製 Vigot−15などが入手可能である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とを反応して得られるエステルである。ポリグリセリン脂肪酸エステル(C)は、フィラー(B)を分散させる分散剤として熱可塑性樹脂(A)に添加される。熱可塑性樹脂(A)中、フィラー(B)を分散させることで、熱可塑性樹脂組成物、即ち成形品の耐衝撃性が向上する。
熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、添加剤を配合することが可能である。添加剤としては例えば導電剤、酸化防止剤、熱安定剤、熱老化防止剤、耐侯剤、可塑剤、結晶核剤、流動性改良剤、相溶化剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、染料、顔料等の着色剤、難燃剤、難燃助剤が挙げられ、通常の添加剤を一種以上添加することができる。
接触角とは、樹脂成形物表面と純水からなる液滴の接触部がなす角度のことであり、0〜180°まである。接触角0°では水滴が樹脂成形物表面にべったり平たく伸びている状態、つまり親水性を示している状態、一方接触角180°では水を弾き球体として樹脂成形物表面に接触している状態となる。すなわち、接触角が小さくなると、樹脂成形物表面の親水性が高くなっていると判断できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、その構造中に多くの水酸基を持ち親水性を示す。そのため、試験片の表面に水滴を滴下したときの水滴の接触角により、ポリグリセリン脂肪酸エステルの試験片の表面へのブリードアウトの進行を判断することができる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。なお、溶媒はテトラヒドロフラン(THF)に溶解して測定したものをポリスチレン(PS)換算することで測定でき、分子量の重量分率は、GPC測定から導き出せる分子量分布曲線におけるエリア面積の割合(%)を算出することによって求めることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、タンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。特に押出機による溶融混練が好ましい。更に溶融混練においては、熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂(A)、フィラー(B)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(C)、およびその他の成分を予め予備混合または予備混練してもよい。また、熱可塑性樹脂(A)とポリグリセリン脂肪酸エステル(C)は、ヘンシェルミキサー、ボールミル、アトマイザーコロイドミル、バンバリーミキサーの攪拌機を用いて表面処理をする乾式法で事前処理することが好ましい。あるいは溶剤に熱可塑性樹脂(A)を加え、攪拌、混合後、溶剤を除去する湿式法で事前処理することが好ましい。特に乾式法で事前処理するのが好ましい。
以下実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。本実施例に共通で用いた原材料は以下のとおりである。
・フィラー(B):日東粉化工業社製 NS#100、平均粒子径2.1μm
・ポリグリセリン脂肪酸エステル(C)
(C−1)太陽化学社製 チラバゾール(登録商標)H−818(ポリグリセリンリシノレート)
(C−2)理研ビタミン社製 ポエム(登録商標)J−0021(ポリグリセリンラウレート)
表1に示す配合で熱可塑性樹脂(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(C)をタンブラーミキサー(セイワ技研社製TMS−36S)を用いてブレンドを行い、更にフィラー(B)を加え、予め均一な原材料のブレンド物を作製した。当該ブレンド物を2軸混練押出し機(池貝社製PCM30)にてシリンダ温度200℃で溶融混練して、ストランドカッターを用いて熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを、射出成形機(住友重機械工業社製 SE−180D)を用いて、シリンダ温度200℃、金型温度50℃で射出成形し、JIS K7152−1で規定される短冊形試験片 タイプB1(長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm)を作製した。この試験片について、下記の測定方法によって接触角の測定、金型汚染および耐衝撃性試験を行った。その結果を表1に示す。
成形した短冊型試験片を用いて接触角の測定を行った。接触角は、自動接触角計装置(協和界面化学社製 DropMaster500)を使って液滴法により測定した。滴下液は純水、液量は1.2μL、滴下1000ms後の接触角をθ/2法により算出した。その結果を表1に示す。
射出成形機(住友重機械工業社製 SE−180D)を用いて、短冊試験片(長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm)が成形可能な金型を取り付け、成形機のシリンダ温度を200℃、金型温度を50℃に設定し、成形を実施した。30ショットを連続で成形した後に、金型キャビティー内部及び周辺を目視で観察し、下記の指標で金型汚染の状況を評価した。その結果を表1に示す。
○:金型表面に析出物が確認されず、金型汚染は認められない。
△:金型表面にわずかな析出物が確認でき、わずかな金型汚染が発生している。
×:金型表面に析出物が確認され、金型汚染が発生している。
成形した短冊型試験片を、ノッチ加工機(安田精機社製)を用いてJIS K7111に準拠してノッチ(形状A)加工を行った。その試験片を、デジタルシャルピー衝撃試験機(安田精機社製 ハンマー0.5J)を用いて、JIS K7111−1に準拠して、シャルピー衝撃試験を行った。その各々測定されたシャルピー衝撃試験の結果を下記の指標で評価した。それらの結果を表1に示す。
○:シャルピー衝撃試験の測定値1.8kgJ/m2以上
×:シャルピー衝撃試験の測定値1.8kgJ/m2未満
52 金型(型)
Claims (11)
- 前記熱可塑性樹脂の含有量は40質量%以上79.5質量%以下、前記フィラーの含有量は20質量%以上50質量%以下、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は0.5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂の全体に対する前記式(I)で示される成分の含有率は、単量体の重量比で2質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂は、耐衝撃性ポリスチレン樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記不飽和脂肪酸が、ヒドロキシ脂肪酸、及び前記ヒドロキシ脂肪酸の縮合体のうちの一方又は両方であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ヒドロキシ脂肪酸が、リシノレイン酸であることを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記不飽和脂肪酸が、オレイン酸であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのうち、分子量1000以下の分子の含有率が、重量分率で20%以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記フィラーが炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
- 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を、型を用いて成形する成形品の製造方法。
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