以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。なお、本発明は、その適用分野がプリンタに限定されるものではなく、複写機、ファクシミリ、複写機能及びFAX機能を有する複合機などにも、本発明の適用が可能である。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための四つのトナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kを備えている。また、転写ユニット30、光書込ユニット80、定着装置90、給送カセット100、レジストローラ対101なども備えている。
四つのトナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するためのトナー像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成されたものであって、駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニット80から発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、Kトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に一次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、一次転写工程(後述する一次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像剤担持体たる現像ロール9Kを収容する現像部12Kと、K現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュー部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュー部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュー部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュー軸線方向の両端部には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュー部材10Kは、螺旋羽根内に保持しているK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュー部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュー部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュー部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュー部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュー部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁にはトナー濃度センサーが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサーとしては、透磁率センサーからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサーは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタは、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するためのY,M,C,Kトナー補給手段を備えている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサーからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサーからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給され、K現像剤のKトナー濃度が所定の範囲内に維持される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュー部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュー部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像の電位よりも絶対値が大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも絶対値が小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる地肌ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び地肌ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
図1において、Y,M,C用のトナー像形成ユニット1Y,M,Cにおいても、K用のトナー像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,2M,2C上にY,M,Cトナー像が形成される。トナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,2M,2C,2Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,2M,2C,2K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、ポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
トナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kなどを有している。また、ベルトクリーニング装置37、濃度センサー40なども有している。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kによって張架されている。駆動ローラ32には、駆動源としての駆動モーターMの駆動力が伝達される。中間転写ベルト31は、駆動モーターMの駆動力によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。駆動モーターMは、制御部200によって駆動が制御される。制御部200は、駆動モーターMを所定の速度で回転させることにより、中間転写ベルト31を所定の線速で無端移動させる。
4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kには、一次転写電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,2M,2C,2K上のY,M,C,Kトナー像と、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の一次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の一次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,2C,2K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。なお、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30の下方には、二次転写ニップ裏打ちローラ36、シート搬送ベルト(一般的には二次転写ベルトや転写部材などとも呼称される)41などを具備するシート搬送ユニット38が配設されている。無端状のシート搬送ベルト41は、そのループ内側に配設された二次転写ニップ裏打ちローラ36などの複数のローラによって張架された状態で、二次転写ニップ裏打ちローラ36の回転駆動によって図中時計回り方向に回転せしめられる。そして、二次転写ニップ裏打ちローラ36により、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、二次転写裏面ローラ33に対する掛け回し領域に当接している。つまり、転写ユニット30の二次転写裏面ローラ33と、シート搬送ユニット38の二次転写ニップ裏打ちローラ36とは、互いの間に中間転写ベルト31及びシート搬送ベルト41を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成部材たるシート搬送ベルト41のおもて面とが当接する二次転写ニップが形成されている。
シート搬送ベルト41のループ内に配設された二次転写ニップ裏打ちローラ36は接地されているのに対し、中間転写ベルト31のループ内に配設された二次転写裏面ローラ33には、二次転写電源39によって二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写裏面ローラ33と、二次転写ニップ裏打ちローラ36との間に、マイナス極性のトナーを二次転写裏面ローラ33側から二次転写ニップ裏打ちローラ36側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。なお、ニップ形成部材として、シート搬送ベルト41の代わりに、二次転写ローラを用い、これを中間転写ベルト31に直接当接させてもよい。また、二次転写電源39によって二次転写ニップ裏打ちローラ36に二次転写バイアスを印加し、二次転写裏面ローラ33を接地してもよい。
転写ユニット30の下方には、記録シートPを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給送カセット100が配設されている。この給送カセット100は、紙束の一番上の記録シートPに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給送路に向けて送り出す。給送路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給送カセット100から送り出された記録シートPをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートPを二次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録シートPを二次転写ニップに向けて送り出す。
二次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括二次転写されてフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPは、二次転写ニップを通過すると、中間転写ベルト31から曲率分離する。更に、シート搬送ベルト41を掛け回している分離ローラ42の曲率によってシート搬送ベルト41から曲率分離する。
なお、ニップ形成部材たるシート搬送ベルト41を中間転写ベルト31に当接させて二次転写ニップを形成する構成に代えて、次のような構成を採用してもよい。即ち、ニップ形成部材たるニップ形成ローラを中間転写ベルト31に当接させて二次転写ニップを形成する構成である。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
濃度センサー40は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して、所定の間隙を介して対向している。この状態で、中間転写ベルト31上に一次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の単位面積あたりのトナー付着量(画像濃度)を測定する。
二次転写ニップよりもシート搬送方向の下流側には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録シートPは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
実施形態に係るプリンタは、モノクロ画像を形成する場合に、転写ユニット30におけるY,M,C用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を支持している支持板の姿勢をソレノイド等の駆動によって変化させる。これにより、Y,M,C用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を、感光体2(Y,M,C)から遠ざけて、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2(Y,M,C)から離間させる。このようにして、中間転写ベルト31をブラック用の感光体2Kだけに当接させた状態で、4つのトナー像形成ユニット1(Y,M,C,K)のうち、ブラック用のトナー像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像をブラック用の感光体2K上に形成する。なお、本発明は、カラー画像を形成する画像形成装置に限らず、モノクロ画像だけを形成する画像形成装置にも適用が可能である。
図3は、二次転写電源の電気回路の要部を、二次転写裏面ローラ33や二次転写ニップ裏打ちローラ36などとともに示すブロック図である。二次転写電源39は、直流電源110、着脱可能に構成された交流電源140、制御部200などを有している。直流電源110は、中間転写ベルト31の表面上のトナーに対して二次転写ニップ内でベルト側から記録シート側に向かう静電気力を付与するための直流電圧を出力するための電源である。そして、直流出力制御部111、直流駆動部112、直流電圧用トランス113、直流出力検知部114、出力異常検知部115、電気接続部221などを具備している。
交流電源140は、二次転写ニップ内に交番電界を形成するための交流電圧を出力する電源である。そして、交流出力制御部141、交流駆動部142、交流電圧用トランス143、交流出力検知部144、除去部145、出力異常検知部146、電気接続部242と、電気接続部243などを具備している。
制御部200は、直流電源110及び交流電源140を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などからなる。直流出力制御部111には、制御部200から、直流電圧の出力の大きさを制御するDC_PWM信号が入力される。更に、直流出力検知部114によって検知された直流電圧用トランス113の出力値も入力される。そして、直流出力制御部111は、入力されたDC_PWM信号のデューティー比及び直流電圧用トランス113の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、直流電圧用トランス113の出力値をDC_PWM信号で指示された出力値にするように、直流駆動部112を介して直流電圧用トランス113の駆動を制御する。
直流駆動部112は、直流出力制御部111からの制御に従って、直流電圧用トランス113を駆動する。また、直流電圧用トランス113は、直流駆動部112によって駆動され、負極性の直流の高電圧出力を行う。なお、交流電源140が接続されていない場合には、電気接続部221と二次転写裏面ローラ33とがハーネス301によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に直流電圧を出力(印加)する。一方、交流電源140が接続されている場合、電気接続部221と電気接続部242とがハーネス302によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス302を介して交流電源140に直流電圧を出力する。
直流出力検知部114は、直流電圧用トランス113からの直流高電圧の出力値を検知し、直流出力制御部111に出力する。また、直流出力検知部114は、検知した出力値をFB_DC信号(フィードバック信号)として制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性が落ちないように、制御部200においてDC_PWM信号のデューティーを制御させるためである。本プリンタでは、二次転写電源39の本体に対して交流電源140が着脱可能であるため、交流電源140が接続されている場合と接続されていない場合とで、高電圧出力の出力経路のインピーダンスが変化する。このため、直流電源110が定電圧制御を行って直流電圧を出力した場合、交流電源140の有無に応じて出力経路中のインピーダンスが変化することにより分圧比が変化する。更に、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧が変化してしまうので、交流電源140の有無に応じて転写性が変化してしまう。
そこで、本プリンタでは、直流電源110が定電流制御を行って直流電圧を出力し、交流電源140の有無に応じて出力電圧を変化させるようになっている。これにより、出力経路中のインピーダンスが変化しても、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができ、交流電源140の有無によらず転写性を一定に保つことができる。更に、DC_PWM信号の値を変更せずに交流電源140を着脱することが可能になる。このように本プリンタでは、直流電源110を定電流制御するようになっているが、次のような構成を採用してもよい。即ち、交流電源140の着脱時にDC_PWM信号の値を変更するなどして、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができれば、直流電源110を定電圧制御する構成を採用してもよい。
出力異常検知部115は、直流電源110の出力ライン上に配置されており、電線の地絡等によって出力異常が発生した際には、リークなどの出力異常を示す信号を制御部200に出力する。これにより、制御部200による直流電源110からの高圧出力を停止するための制御を実施することが可能になる。
交流出力制御部141には、制御部200から、交流電圧の出力の大きさを制御するAC_PWM信号や、交流出力検知部144によって検知された交流電圧用トランス143の出力値が入力される。そして、交流出力制御部141は、入力されたAC_PWM信号のデューティー比、及び交流電圧用トランス143の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、交流電圧用トランス143の出力値がAC_PWM信号で指示された出力値となるように、交流駆動部142を介して交流電圧用トランス143の駆動を制御する。
交流駆動部142には、交流電圧の出力周波数を制御するAC_CLK信号が入力される。そして、交流駆動部142は、交流出力制御部141からの制御及びAC_CLK信号に基づいて、交流電圧用トランス143を駆動する。交流駆動部142は、AC_CLK信号に基づいて交流電圧用トランス143を駆動することで、交流電圧用トランス143によって生成される出力波形を、AC_CLK信号で指示された任意の周波数に制御することができる。
交流電圧用トランス143は、交流駆動部142によって駆動されて交流電圧を生成し、生成した交流電圧と直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧とを重畳して重畳電圧を生成する。交流電源140が接続されている場合、即ち、電気接続部243と二次転写裏面ローラ33とがハーネス301で電気的に接続されている場合、交流電圧用トランス143は、生成した重畳電圧を、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に印加する。なお、交流電圧用トランス143は、交流電圧を生成しない場合には、直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧を、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に出力(印加)する。二次転写裏面ローラ33に出力された電圧(重畳電圧又は直流電圧)は、その後、二次転写ニップ裏打ちローラ36を介して直流電源110内に帰還する。
交流出力検知部144は、交流電圧用トランス143の交流電圧の出力値を検知して交流出力制御部141に出力する。また、検出した出力値をFB_AC信号(フィードバック信号)として制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性を低下させないように、制御部200においてAC_PWM信号のデューティーを制御するためである。なお、交流電源140は、定電圧制御を行うものであるが、定電流制御を行うものを用いてもよい。また、交流電圧用トランス143(交流電源140)が生成する交流電圧の波形については、正弦波、矩形波の何れであってもよいが、本プリンタでは、短パルス状矩形波を採用している。交流電圧の波形を短パルス状矩形波にすることで、より画像品質の向上を図ることが可能になるからである。
なお、二次転写電源39は、出力電流値を所定の目標電流値と一致させるように出力電圧値を調整する定電流制御方式で直流電圧を出力する。また、ピークツウピーク値Vppを所定の目標値と一致させるように振幅を調整する定電圧制御方式で交流電圧を出力する。
特許文献1に記載のように、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いて二次転写ニップに交番電界を形成すれば、表面凹凸に富んだ記録シートの表面の凹部にトナーを良好に二次転写し得ることが既に知られている。その原理は、次のようなものであることも知られている。即ち、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いた場合、二次転写ニップ内において、中間転写ベルト上のトナー像を構成するトナーのうち、ごく小数のトナー粒子だけしか、ベルト表面からシート表面凹部内に転移させることができない。重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いても、二次転写ニップ内にトナー像が進入してから、二次転写バイアスの交流成分における始めの一周期が経過するまでの間は、同様にして、ごく少量のトナー粒子だけしかシート表面凹部内に転移させることができない。ところが、次の一周期が経過すると、ベルト表面からシート表面凹部内に転移するトナー粒子の量が少し増加する。
このようにシート表面凹部内に転移するトナー粒子の量が増加する理由について詳述する。シート表面凹部内のトナー粒子は、ベルト表面に戻る際に、それまでベルト表面に付着したままになっていたトナー粒子にぶつかってそのトナー粒子と他のトナー粒子やベルト表面との付着力を弱める。そして、後半において、前述のようにして付着力を弱めたトナー粒子が、ベルト表面に戻ったトナー粒子とともに、ベルト表面からシート表面凹部内に転移するのである。更に次の一周期でも、同様の現象によってシート表面凹部内に転移するトナー粒子の数が更に増加する。二次転写ニップ内において、トナー粒子がベルト表面とシート表面凹部内とを何度も往復移動する過程で、シート表面凹部内に転移するトナー粒子の数が徐々に増加していく。そして、最終的にトナー像が二次転写ニップを通過する頃には、シート表面凹部内に十分量のトナー粒子が転移しているのである。
図4は、重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形の第一例を示すグラフである。同図に示される二次転写バイアスの波形は正弦波になっている。オフセット電圧Voffは、重畳電圧からなる二次転写バイアスの直流成分(直流電圧)の値である。同図におけるオフセット電圧Voffは、その極性がマイナスになっている。二次転写バイアスの波形が図示のような正弦波である場合には、オフセット電圧Voffと、二次転写バイアスの一周期(T)あたりにおける時間平均値Vaveとが同じ値になる。よって、同図においては、時間平均値Vaveもマイナス極性になっている。
実施形態のプリンタのように、二次転写裏面ローラ(図1の33)の芯金に二次転写バイアスを印加する構成では、二次転写バイアスの極性がトナーの正規帯電極性と同じになったときに、二次転写ニップ内のトナーが転写方向に静電移動する。具体的には、中間転写ベルト31の表面側からニップ内の記録シート表面側に静電移動する。また、二次転写バイアスの極性がトナーの正規帯電極性とは逆極性になったときに、二次転写ニップ内のトナーが転写方向とは逆方向に静電移動する。具体的には、トナーが記録シート表面側から中間転写ベルト31の表面側に向けて静電移動する。時間平均値Vaveをトナーの正規帯電極性と同極であるマイナス極性にすることで、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側とシート表面側との間で往復移動させながら、相対的にはベルト表面側からシート表面側に向けて移動させる。これにより、中間転写ベルト31の表面上のトナー像を、記録シートPの表面上に二次転写することが可能になる。
同図において、転写ピーク値Vtは、二次転写バイアスの一周期(周期T)内で発生する二つのピーク値のうち、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側からシート表面側に向けてより強く静電移動させる方のピーク値である。また、逆ピーク値Vrは、転写ピーク値Vtではない方のピーク値である。同図に示される二次転写バイアスでは、逆ピーク値Vrが転写ピーク値Vtとは逆極性(プラス極性)になっている。
二次転写バイアスの波形は、同図に示されるような正弦波に限られない。三角波や矩形波の二次転写バイアスを採用してもよい。図5は、重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形の第二例を示すグラフである。同図に示される二次転写バイアスの波形は、矩形波である。
以下、重畳電圧からなる二次転写バイアスについて、一周期のうち、二次転写ニップ内において、中間転写ベルト31の表面上のトナーをベルト側からニップ内の記録シート表面側に向けて静電移動させることを主な目的とする時間を、転写側時間Ttと定義する。即ち、二次転写バイアスの周期Tのなかで、二次転写バイアスがその時間平均値Vaveよりもトナー像を中間転写ベルト31から記録シートへ移動させる転写側(本実施形態ではマイナス極性側)にある時間を転写側時間Ttと定義する。また、転写側時間Ttとは異なる時間(一周期内の残りの時間)を、逆転写側時間Trと定義する。そして、二次転写バイアスの周期Tのなかで、二次転写バイアスがその時間平均値Vaveよりも逆転写側(転写側とは反対側。本実施形態ではプラス極性側)にある時間を逆転写側時間Trと定義する。図4や図5に示されるように、逆転写側時間Trは、一周期のうち、時間平均値Vave(所定の基準値である。)を境にして、逆ピーク値Vrの側の値になっている時間である。また、一周期内における逆転写側時間Trの割合を重畳電圧からなる二次転写バイアスのデューティーと定義する。即ち、(T−Tt)/T×100[%]をデューティーと定義する。また、このデューティーが50[%]を超えているという特性を、高デューティーと定義する。また、このデューティーが50[%]未満であるという特性を、低デューティーと定義する。
図4に示される正弦波の二次転写バイアスや、図5に示される矩形波の二次転写バイアスは、何れも、デューティーが50[%]であるので、高デューティーでも、低デューティーでもない。正弦波や、ほぼ垂直の角度で立ち下がったり立ち上がったりする矩形波では、デューティーが50[%]であると、一周期(周期T)あたりにおける時間平均値Vaveとオフセット電圧Voffとが互いに同じ値になる。つまり、直流電圧の値が時間平均値Vaveと同じになる。
図6は、特許文献1に記載の画像形成装置で採用されている二次転写バイアスの波形を示すグラフである。この二次転写バイアスは、逆転写側時間Trが転写側時間Ttよりも短いので、上述した定義では、デューティーが低デューティーになっている。そして、デューティーが50[%]ではないので、オフセット電圧Voffと時間平均値Vaveとが互いに異なった値になっている。なお、二次転写バイアスとしては、図6に示されるような矩形波以外のものを用いることもできる。逆ピーク値Vrから転写ピーク値Vt、転写ピーク値Vtから逆ピーク値Vrへとそれぞれ電圧が移行するのに所定の時間を有するような台形形状の波形の二次転写バイアスを用いてもよい。また、波形の一部または全体が丸みを帯びたような二次転写バイアスを用いてもよい。
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
本発明者らは、プリンタ試験機を用意した。このプリンタ試験機は、株式会社リコー製のPro C5110をベース機にしたものであって、二次転写電源39として、正規の搭載品の代わりに、外部電源を使用するように改造したものである。外部電源としては、Trek COR−A−TROL Model610Dを用いている。
このプリンタ試験機により、単色ベタ画像や単色ハーフトーン画像を記録シートPにプリントするプリント試験を実施した。記録シートPとしては、普通紙であるHammerMill color copy digitalを用いた。感光体2や中間転写ベルト31の線速であるプロセス線速としては、352.8[mm/s]、158.8[mm/s]の二通りを採用した。また、二次転写バイアスとしては、直流電圧だけからなるもの、重畳電圧からなる高デューティーのもの、及び、重畳電圧からなる低デューティーのもの、の三種類を採用した。
直流電圧だけからなる二次転写バイアスとしては、具体的には、−1[kV]の直流電圧だけからなるものを採用した。この値であれば、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側からシート表面側に向けて静電移動させるのに十分な強さの二次転写電界を二次転写ニップ内に形成することが可能である。
図7は、実験に用いられた高デューティーの二次転写バイアスの波形を示すグラフである。この二次転写バイアスの交流成分の周波数は0.8[kHz]であり、周期Tは1.25[ms]である。また、転写側時間Ttが0.1875[ms]であり、逆転写側時間Trが1.0625[ms]であるので、デューティーが85[%]である。一周期内において、主に、トナーをベルト側からシート表面側に向けて転写方向に静電移動させる役割を担う時間よりも、他の時間の方がかなり長くなっているのである。但し、時間平均値Vaveは−1[kV]であるので、理論的には、直流電圧だけからなる二次転写バイアスと同様に、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側からシート表面側に向けて静電移動させるだけの静電気力をトナーに対して付与することが可能である。転写ピーク値Vt=−6[kV]、逆ピーク値Vr=0[kV]、ピークツウピーク値Vpp=6[kV]であるので、一周期内において極性を反転させない特性である。
なお、高デューティーの二次転写バイアスとして、極性を反転させないものに代えて、極性を反転させるものを採用してもよい。この場合、直流電圧だけからなる二次転写バイアスと同様に、時間平均値Vaveを−1[kV]にするためには、転写ピーク値Vtの絶対値を図示の二次転写バイアスよりも大きくすればよい(6kVよりも大きくすればよい)。但し、大きくし過ぎると、その値が二次転写ニップ内におけるベルト表面とシート表面との間の放電開始電圧を超えてニップ内放電を多発させる結果、画像に多数の白点を発生させてしまうので、値をある程度の大きさに留めることが望ましい。
図8は、実験に用いられた低デューティーの二次転写バイアスの波形を示すグラフである。この二次転写バイアスの交流成分の周波数は0.8[kHz]であり、周期Tは1.25[ms]である。また、転写側時間Ttが1.10[ms]であり、逆転写側時間Trが0.15[ms]であるので、デューティーが12[%]である。一周期内において、主に、トナーをベルト側からシート表面側に向けて転写方向に静電移動させる役割を担う時間よりも、他の時間の方がかなり短くなっているのである。時間平均値Vaveは−1[kV]であるので、理論的には、直流電圧だけからなる二次転写バイアスと同様に、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側からシート表面側に向けて静電移動させるだけの静電気力をトナーに対して付与することが可能である。転写ピーク値Vt=−1.8[kV]、逆ピーク値Vr=5.2[kV]、ピークツウピーク値Vpp=7[kV]であるので、一周期内において極性を反転させる特性である。
普通紙にプリントした単色ベタ画像については、画質として、ボソツキの度合いを四段階で評価した。ボソツキは、トナー層の表面が紙面のごく僅かな凹凸にならってごく僅かに波打つことによって観察者に表面不均一感を与える現象である。目視により、特に良好(◎)、良好(○)、良好でないが、画像やユーザーによっては許容できることがある(△)、どのような画像やユーザーであっても許容できない(×)の四段階で評価した。
また、普通紙にプリントした単色ハーフトーン画像については、画質として転写不良の度合いを評価した。具体的には、目視により、特に良好(◎)、良好(○)、良好でないが、画像やユーザーによっては許容できることがある(△)、どのような画像やユーザーであっても許容できない(×)の四段階で評価した。
表1に示されるように、直流電圧だけからなる二次転写バイアス(DC)を用いた場合には、単色ベタ画像のボソツキと、単色ハーフトーン画像の転写不良とが、プロセス線速にかかわらず、何れも△という評価結果になった。また、高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いた場合には、単色ベタ画像のボソツキがプロセス線速にかかわらず△という評価結果になった。この一方で、単色ハーフトーン画像の転写不良による画像濃度不足がプロセス線速にかかわらず◎という評価結果になった。また、低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いた場合には、単色ベタ画像のボソツキが高線速(352.8mm/s)の条件で△になったのに対し、低線速(158.8mm/s)の条件では◎になった。つまり、プロセス線速を速くするほど、単色ベタ画像のボソツキの評価結果が悪化した。また、低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスにおける単色ハーフトーン画像の転写不良による画像濃度不足については、プロセス線速にかかわらず△という評価結果になった。
これらの実験結果から、普通紙にハーフトーン画像を形成する場合には、プロセス線速にかかわらず、二次転写バイアスとして高デューティーの重畳バイアスからなるものを用いることが望ましい。この一方で、普通紙にベタ画像を形成する場合には、プロセス線速を比較的遅くする条件で、二次転写バイアスとして低デューティーの重畳バイアスからなるものを用いることが望ましい。
次に、本発明者らは、記録シートPとして、凹凸紙であるレザック66(175kg)を用いて、普通紙を用いた場合と同様の実験を行った。但し、単色ベタ画像については、画質として、ボソツキの代わりに、紙面凹部へのトナー転写性(紙面凹部転写性)を四段階(◎、○、△、×)で評価した。また、単色ハーフトーン画像については、紙面凸部における転写不良の度合いを四段階(◎、○、△、×)で評価した。この実験の結果を次の表2に示す。なお、凹凸紙は、和紙のような表面凹凸がある用紙である。
表2に示されるように、直流電圧だけからなる二次転写バイアス(DC)を用いた場合には、単色ベタ画像の紙面凹部転写性がプロセス線速にかかわらず×という評価結果になった。また、単色ハーフトーン画像の紙面凸部への転写不良がプロセス線速にかかわらず○という評価結果になった。また、高デューティーの二次転写バイアスを用いた場合には、単色ベタ画像の紙面凹部転写性がプロセス線速にかかわらず×という評価結果になり、且つ、単色ハーフトーン画像の紙面凸部への転写不良がプロセス線速にかかわらず◎という評価結果になった。また、低デューティーの二次転写バイアスを用いた場合には、単色ベタ画像の紙面凹部転写性が高線速(352.8mm/s)の条件では×という評価結果になったのに対し、低線速(158.8mm/s)の条件では○という評価結果になった。更に、単色ハーフトーン画像の紙面凸部への転写不良がプロセス線速にかかわらず△という評価結果になった。
これらの実験結果から、凹凸紙にベタ画像を形成する場合には、プロセス線速を比較的遅くした条件で、低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いることが望ましい。また、凹凸紙にハーフトーン画像を形成する場合には、プロセス線速にかかわらず、高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いることが望ましい。
次に、本発明者らは、記録シートPとして、表面コート紙であるPODグロス(128gsm)を用いて、普通紙を用いた場合と同様の実験を行った。画質についても、普通紙を用いた実験と同様に、単色ベタ画像のボソツキと、単色ハーフトーン画像の転写不良の度合いとをそれぞれ四段階で評価した。この実験の結果を次の表3に示す。
表3に示されるように、直流電圧だけからなる二次転写バイアス(DC)を用いた場合には、単色ベタ画像のボソツキがプロセス線速にかかわらず○という評価結果になった。また、単色ハーフトーン画像の転写不良がプロセス線速にかかわらず△という評価結果になった。また、高デューティーの二次転写バイアスを用いた場合には、単色ベタ画像のボソツキがプロセス線速にかかわらず○という評価結果になり、且つ、単色ハーフトーン画像の転写不良がプロセス線速にかかわらず◎という評価結果になった。また、低デューティーの二次転写バイアスを用いた場合には、単色ベタ画像のボソツキが高線速(352.8mm/s)の条件では○という評価結果になったのに対し、低線速(158.8mm/s)の条件では◎という評価結果になった。更に、単色ハーフトーン画像の転写不良がプロセス線速にかかわらず×という評価結果になった。
これらの実験結果から、表面コート紙にベタ画像を形成する場合には、プロセス線速を比較的遅くした条件で、低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いることが望ましい。また、表面コート紙にハーフトーン画像を形成する場合には、プロセス線速にかかわらず、高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いることが望ましい。
以上のように、表1、表2、及び表3の実験結果によれば、次のようなことが言える。即ち、普通紙、凹凸紙、表面コート紙の何れを用いる場合であっても、ベタ画像を形成する場合には、プロセス線速を比較的遅くした条件で、低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いることが望ましい。また、表面コート紙にハーフトーン画像を形成する場合には、プロセス線速にかかわらず、高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いることが望ましい。
表2において、凹凸紙の表面凹部に対するベタ画像の転写性が△や×であると、凹凸紙の表面凹部と表面凸部とで画像濃度の差が大きくなり過ぎることから、凹凸紙の表面凹凸にならった濃度ムラが著しく目立ってしまう。表2に示されるように、凹凸紙にベタ画像を形成する場合には、二次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものや、高デューティーの重畳電圧からなるものを用いるよりも、低デューティーの重畳電圧からなるものを用いることが望ましい。但し、低デューティーの重畳電圧を用いても、プロセス線速を高速にすると(352.8mm/s)、直流電圧や高デューティーの重畳電圧を用いる場合と同様に、ベタ画像の表面凹部転写性の評価結果が×になってしまう。これは次に説明する理由による。即ち、低デューティーの重畳電圧を用いる場合には、特許文献1にも記載されているように、二次転写ニップ内におけるトナー粒子の往復移動回数が増加する毎に、ベルト表面から記録シートPの表面凹部内に転移するトナー粒子数が増加する。記録シートPの表面凹部内に十分量のトナー粒子を転移させて表面凹部における画像濃度不足を回避するためには、二次転写ニップ内でトナー粒子をある程度の回数だけ往復移動させる必要がある。本発明者らの実験によれば、少なくとも4回は往復移動させることが望ましい。プロセス線速を高速にすると、二次転写ニップ内でトナー粒子を十分な回数だけ往復移動させるだけの時間が確保できなくなることから、低デューティーの重畳電圧を用いても、記録シートの表面凹部に十分量のトナーを往復移動させることができなくなるのである。
なお、重畳電圧の交流成分の周波数を高くするほど、トナーの二次転写ニップ通過時間内で重畳電圧の極性を反転させる回数を増加させることが可能であるが、極性の反転回数と、トナー粒子の往復移動回数とは厳密に相関しない。極性を反転させる回数をある程度まで増加させると、トナー粒子をベルト表面と記録シートPの表面凹部との間で往復移動させることができなくなる。これは、トナー粒子をベルト表面から記録シートPの表面凹部に向けて静電移動させ始めてから、表面凹部内に転移させる前に、極性を反転させてトナー粒子をベルト表面側に逆戻りさせてしまうからである。このため、表面凹部内に十分量のトナー粒子を転移させるためには、トナー粒子の二次転写ニップ通過時間をある程度の長さだけ確保する必要がある。
ベタ画像の凹凸紙の表面凹部に対する転写性と、ベタ画像の普通紙や表面コート紙におけるボソツキとは、互いに全く異なった画質であるが、両者には次のような共通した特徴がある。即ち、表1、表2、及び表3からわかるように、プロセス線速を低速(158.8mm/s)に設定すれば、直流電圧や高デューティーの重畳電圧を用いる場合よりも、低デューティーの重畳電圧を用いる場合の方が、良い結果が得られる。しかし、プロセス線速を高速(352.8mm/s)に設定すると、低デューティーの重畳電圧を用いても、直流電圧や高デューティーの重畳電圧を用いる場合と同様に、悪い結果しか得られなくなってしまう。このことから、普通紙や表面コート紙に対して、ベタ画像をボソツキなく良好に二次転写するためには、凹凸紙の表面凹部に対してベタ画像を良好に転移させる場合と同様に、二次転写ニップ内でトナー粒子を複数回往復移動させる必要があると考えられる。
以下、普通紙や表面コート紙上におけるベタ画像のボソツキと、凹凸紙の表面凹部に対するベタ画像の転写性とをまとめてベタ画質という。
一方、ハーフトーン画像を二次転写する場合には、表1、表2、及び表3からわかるように、記録シートPの種類やプロセス線速にかかわらず、高デューティーの重畳電圧を用いる場合において最も良好な結果が得られる。本発明者らは、実験により、その理由が次のようなものであることを見出した。即ち、ハーフトーン画像を二次転写ニップに進入させているときには、ベタ画像を二次転写ニップに進入させているときに比べて、二次転写ニップ内のトナー粒子の数が少なくなって、個々のトナー粒子に流れる二次転写電流量が増加する。このため、トナー粒子に対して正規の帯電極性とは逆極性の電荷(以下、逆電荷という)が過剰に注入されて、トナー粒子の正規極性の帯電量(Q/M)を不足させたり、極端な場合にはトナー粒子を逆帯電させたりし易くなる。このような帯電量の不足や逆帯電が、ハーフトーン画像の転写不良による画像濃度不足を引き起こす原因になっていた。二次転写ニップ内におけるトナー粒子に対する逆電荷の注入は、逆転写側時間Trでは起こらず、転写側時間Ttだけで起こる。また、転写側時間Ttであってもその初期には殆ど起こらないことから、転写側時間Ttがある閾値よりも長くなった場合だけ、トナー粒子に対する逆電荷の注入が起こる。このため、高デューティーの重畳電圧では、転写側時間Ttが比較的短くなることから、プロセス線速にかかわらず、逆電荷の注入が発生し難くなるのである。
以下、普通紙、凹凸紙、表面コート紙上におけるハーフトーン画像の画像濃度に関する画質をハーフトーン画質という。
特許文献1に記載の画像形成装置においては、既に説明したように、記録シートPの種類にかかわらず、低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いている。かかる構成では、ハーフトーン画像を形成する場合に、トナー粒子に対して逆電荷を注入して、転写不良な二次転写性が得られずに、画像濃度不足を引き起こすおそれがある。また、次のような不具合も引き起こしてしまう。即ち、ベタ画像を形成する場合とは異なり、二次転写ニップ内でトナー粒子を複数回に渡って往復移動させる必要がない。にもかかわらず、ベタ画像を二次転写する場合と同様に、トナー粒子を複数回に渡って往復移動させるためにプロセス線速を低速に設定していることで、プリント速度を不要に低下させてしまう。
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
図9は、実施形態に係るプリンタの入力操作部501の電気回路を示すブロック図である。図示のように、入力操作部501は、ベタ画質優先ボタン501aと、HT画質優先ボタン501bとを有している。実施形態に係るプリンタにおいては、ユーザーに対して次のような操作を行ってもらうための説明を、取り扱い説明書に記載している。即ち、ハーフトーン画質よりもベタ画質を優先して改善したい場合にはベタ画質優先ボタン501aを押すのに対し、ベタ画質よりもハーフトーン画質を優先して改善したい場合にはHT画質優先ボタン501bを押すという操作である。つまり、入力操作部501は、次のような情報を取得することが可能な情報取得手段として機能している。即ち、ユーザーによる希望画像品質の情報である希望品質情報(ベタ画質を優先するのか、あるいはハーフトーン画質を優先するのかを示す情報)である。
図3に示されるように、入力操作部501に入力された情報は、制御部200に送られる。以下、ベタ画質優先ボタン501aが押された場合に入力操作部501から制御部200に送られる情報を、希望品質情報としてのベタ画質優先情報という。また、HT画質優先ボタン501bが押された場合に入力操作部501から制御部200に送られる情報を、希望品質情報としてのHT画質優先情報という。
制御部200は、自らが具備しているフラッシュメモリーに、記憶モード情報を記憶している。制御部200に対しては、入力操作部501から希望品質情報としてHT画質優先情報やベタ画質優先情報が送られてくる。制御部200は、入力操作部501からHT画質優先情報が送られてきた場合には、希望品質情報としてHT画質優先情報をフラッシュメモリーに記憶する。一方、入力操作部501からベタ画質優先情報が送られてきた場合には、希望品質情報として、ベタ画質優先情報をフラッシュメモリーに記憶する。
制御部200は、プリンタ内の各種駆動体の駆動を制御したり、各種センサーの検知結果を受信したり、演算処理を実行したりするものである。トナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、光書込ユニット80、中間転写ベルト31などの駆動は、制御部200によって制御される。
制御部200は、画像形成モードとして、第一モードたるハーフトーン画質優先モード(以下、HT画質優先モードと記す)と、第二モードたるベタ画質優先モードとを切り替えて実施するようになっている。それぞれの画像形成モードにおける各種の条件は、次の表4に示す通りである。
表4に示されるように、第一モードたるHT画質優先モードは、プロセス線速を第二モードたるベタ優先モードよりも速くし、且つ、デューティーをベタ画質優先モードの12[%]よりも高い85[%]にする画像形成モードである。デューティーをより高くすることは、逆転写側時間Trをより長くすることを意味している。
HT画質優先モードでは、高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いることで、表1、表2、及び表3に示されるように、記録シートPの種類にかかわらず、ハーフトーン画像における転写性不良による画像濃度不足を良好に抑えることができる。しかも、その効果は、プロセス線速にかかわらず同じであるので(何れのプロセス線速でも評価結果が◎)、プロセス線速を高速の352.8[mm/s]に設定している。これにより、ハーフトーン画像を形成する場合に、プリント速度を不必要に低下させたり、画像濃度不足を発生させたりすることを抑えることができる。
一方、ベタ画質優先モードでは、低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用い、且つプロセス線速を低速の158.8[mm/s]に設定する。これにより、記録シートPの種類にかかわらず、良好なベタ画質を得ることができる。具体的には、表1や表3に示されるように、普通紙や表面コート紙におけるベタ画像のボソツキを良好に抑えることができる(◎)。また、凹凸紙の表面凹部に対してベタ画像を良好に転写することができる(○)。
図10は、実施形態に係るプリンタの制御部200によって実施されるプリントジョブ処理の処理フローを示すフローチャートである。制御部200は、外部のパーソナルコンピューターやスキャナーなどからプリント命令信号を受信すると(ステップ1でY:以下、ステップをSと記す)、フラッシュメモリーに記憶している希望品質情報についてHT画質優先情報であるか否かを判定する(S2)。そして、HT画質優先情報である場合(S2でY)には、画像形成モードとしてHT画質優先モードを選択する(S3)。これに対し、フラッシュメモリーに記憶している希望品質情報がHT画質優先情報でない場合(S2でY)には、画像形成モードとしてベタ画質優先モードを選択する(S4)。その後、S3又はS4で選択した画像形成モードの条件でプリントジョブを開始する(S5)。そして、外部から送られてきた画像情報における全ての頁の画像を出力したら(S6でY)、プリントジョブを終了した後に(S7)、一連の処理フローをS1にリターンさせる。
このように、実施形態に係るプリンタにおいては、ユーザーがベタ画質よりもHT画質を優先することを希望した場合に、HT画質優先モードでプリントジョブを実行する。これにより、ハーフトーン画像を形成する場合に、プリント速度を不要に低下させることなく、ハーフトーン画像の画像濃度不足を有効に抑えることができる。これに対し、ユーザーがHT画質よりもベタ画質を優先することを希望した場合に、ベタ画質優先モードでプリントジョブを実行する。これにより、ベタ画像を形成する場合に、良好なベタ画質を得ることができる。
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各実施例のプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、各実施例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
[第一実施例]
実施形態に係るプリンタのように、ユーザーから与えられた希望品質情報だけを画像形成モードの選択の判断材料にする構成では、次のような不具合がある。即ち、ユーザーの希望に従ってベタ画質優先モード(低デューティー)を選択した状態でハーフトーン画像を形成すると、HT画質の評価結果が表1、表2、及び表3に示されるように、△又は×になってしまう。この一方で、ユーザーの希望に従ってHT画質優先モード(高デューティー)を選択した状態でベタ画像を形成すると、表3に示されるように、表面コート紙ではベタ画質の評価結果を○にすることができる。しかし、表1、表2に示されるように、普通紙や凹凸紙ではベタ画像の評価結果を△や×にしてしまう。
そこで、第一実施例に係るプリンタの制御部200は、希望品質情報に代えて、頁内画像の平均面積階調率を画像形成モードの選択の判断材料に用いるようになっている。具体的には、頁内の画像部の殆どがベタ画像部であることによって頁内画像の平均面積階調率が所定の閾値以上になっているか、あるいは閾値を超えている場合には、ベタ画質優先モードを選択する。この一方で、頁内の画像部の殆どがHT画像部であることによって頁内画像の平均面積階調率が閾値未満になっているか、あるいは閾値以下になっている場合には、HT画質優先モードを選択する。
図11は、第一実施例に係るプリンタの制御部200によって実施されるプリントジョブ処理の処理フローを示すフローチャートである。制御部200は、外部のパーソナルコンピューターやスキャナーなどからプリント命令信号を受信すると(S1でY)、頁内の平均面積階調率を算出した後(S2)、算出結果について閾値以上であるか否かを判定する(S3)。そして、閾値以上である場合(S3でY)にはベタ画質優先モードを選択する(S4)のに対し、閾値以上でない場合(S3でN)にはHT画質優先モードを選択する(S5)。
制御部200は、画像形成モードを選択すると、プリントジョブを開始する(S6)。そして、一頁分のプリントが終了すると、次頁のプリントジョブの存否を確認し(S7)、存在する場合には(S7でY)、制御フローを上述したS2にループさせる。これに対し、次頁のプリントジョブが存在しない場合には(S7でN)、プリントジョブを終了して(S8)一連の処理フローを終了させる。
かかる構成においては、頁内の平均面積階調率に基づいて何れかの画像形成モードを選択する(S3)ことで、次のようなことを回避することができる。即ち、頁内の画像の殆どを占めるベタ部のベタ画質を悪くしてしまったり、頁内の画像の殆どを占めるHT部のHT画質を悪くしてしまったりということを回避することができる。
なお、頁内の平均面積階調率は、例えば次のようにして求められる。即ち、頁内の領域の全てを画像部で埋め尽くす画像である場合には、頁の全面積又は全画素数に対し、トナーを付着させる領域の面積又は画素数の占める割合を、頁内の平均面積階調率として求めることができる。頁内に複数の孤立した画像部が複数形成される場合(例えば複数の文字画像部)には、それら複数の画像部の全てを包括したものを、頁内の一つの画像として定義する。個々の画像部は独立したものである。そして、それぞれが個別の面積階調率によって画像濃度を再現したものである可能性がある。そこで、全ての画像部のそれぞれについて外枠内(エッジ内)の面積(画像部面積)又は画素数(画像部画素数)を求め、それらを合計した値を画像部合計面積又は画像部合計画素数とする。そして、全ての画像部のそれぞれについてトナーを付着させる領域の面積又は画素数を求め、それらを合計した値をトナー付着合計面積又はトナー付着合計画素数とする。画像部合計面積に対してトナー付着合計面積の占める割合、又は画像部合計画素数に対してトナー付着合計画素数の占める割合を、頁内の平均面積階調率として求める。連続画像形成動作における全頁分の平均面積階調率の平均値については、各頁の平均面積階調率の合計を全頁数で除算した値とする。
[第二実施例]
図12は、第二実施例に係るプリンタの入力操作部501の電気回路を示すブロック図である。入力操作部501は、普通紙ボタン501c、凹凸紙ボタン501d、表面コート紙ボタン501e、紙種自動検知ボタン501f等を有している。ユーザーは、給送カセット100にセットした記録シートPの種類をプリンタに対して自動で検出させたい場合には、紙種自動検知ボタン501fを押す。また、給送カセット100にセットした記録シートPの種類を制御部200に対して普通紙、凹凸紙、表面コート紙であると認識させたい場合には、普通紙ボタン501c、凹凸紙ボタン501d、表面コート紙ボタン501eを押す。制御部200は、入力操作部501から普通紙ボタン501cが押された旨の信号が送られてくると、平滑性情報として、普通紙を示す情報をフラッシュメモリーに記憶する。また、入力操作部501から凹凸紙ボタン501dが押された旨の情報が送られてくると、平滑性情報として、凹凸紙を示す情報をフラッシュメモリーに記憶する。また、入力操作部501から表面コート紙ボタン501eが押された旨の情報が送られてくると、平滑性情報として、表面コート紙を示す情報をフラッシュメモリーに記憶する。また、入力操作部501から紙種自動検知ボタンが押された旨の情報が送られてくると、平滑性情報として、「検知後決定」を示す情報をフラッシュメモリーに記憶する。
図13は、第二実施例に係るプリンタの給紙路を示す構成図である。給紙路は、第一案内板511と第二案内板512との間に挟み込んだ記録シートPを、レジストローラ対101のレジストニップに案内するようになっている。第一案内板511には貫通口が設けられており、この貫通口には平滑性検知センサー510が嵌め込まれている。反射型光学センサーからなる平滑性検知センサー510は、発光素子から発した光を給紙路内の記録シートPに向けて照射し、記録シートPの表面で正反射した正反射光を受光素子によって受光する。その受光量は、記録シートの表面平滑性に応じて変化する。
平滑性検知センサー510は、制御部200に電気的に接続されている。制御部200は、プリンタの主電源が投入された直後の装置起動時に、平滑性検知センサー510の校正を実施する。具体的には、発光素子を点灯させて発光素子からの光を白色の第二案内板512の表面で反射させる状態で、所定の正反射光量が得られるように発光素子の発光量(供給電圧)を調整する。このときの供給電圧値を記憶回路に記憶しておき、以降、平滑性検知センサー510によって記録シートPの表面における正反射光量を検知するときには、記憶回路に記憶してある供給電圧値と同じ値の電圧を発光素子に供給する。
プリントジョブが開始されると、所定のタイミングで給送カセット100から送り出された記録シートPは、スキュー補正のために、駆動していないレジストローラ対101のレジストニップに突き当てられて搬送が一時停止される。このとき、給紙路内において、平滑性検知センサー510に対向する。制御部200は、フラッシュメモリーに記憶している平滑性情報が「検知後決定」を示す情報である場合には、このときに、平滑性検知センサー510によってシート表面で得られる正反射光量を検知する。そして、その検知結果に基づいて、記録シートPについて、普通紙、凹凸紙、表面コート紙の何れであるのかを判定する。そして、それまで記憶していた「検知後決定」という平滑性情報を、判定結果に応じて、普通紙、凹凸紙、あるいは表面コート紙を示す情報に書き換える。
図14は、第二実施例に係るプリンタの制御部200によって実施されるプリントジョブ処理の処理フローを示すフローチャートである。制御部200は、プリント命令信号を受信すると(S1でY)、フラッシュメモリーに記憶している平滑性情報について凹凸紙を示す情報であるか否かを判定する(S2)。そして、凹凸紙を示す情報でない場合(S2でN)には、画像形成モードとしてHT画質優先モードを選択する(S4)。これに対し、フラッシュメモリーに記憶している平滑性情報が凹凸紙を示す情報である場合(S2でY)には、画像形成モードとしてベタ画質優先モードを選択する(S3)。その後、S3又はS4で選択した画像形成モードの条件でプリントジョブを開始する(S5)。そして、外部から送られてきた画像情報における全ての頁の画像を出力したら(S6でY)、プリントジョブを終了した後に(S7)、一連の処理フローをS1にリターンさせる。
このように、第二実施例に係るプリンタにおいては、使用する記録シートPが凹凸紙でない場合には、HT画質優先モードでプリントジョブを実行する。これに対し、使用する記録シートPが凹凸紙である場合には、ベタ画質優先モードでプリントジョブを実行する。表1〜3に示されるように、紙種(3種類)に応じて転写性は異なってくるが、何れの紙種においても、「×」という転写性の評価結果になってしまうことは回避すべきである。この一方で、プリント速度の高速化を重視するユーザーにとっては、転写性について「×」という評価結果にならなければ、例えば転写性を「◎」という最高の評価結果にすることよりも、線速を高速にすることを優先したいところである。
第二実施例に係るプリンタは、このように、プリント速度の高速化を重視するユーザーの要望に応えるために、同図に示されるような処理フローを実施している。具体的には、凹凸紙(平滑シートよりも大きな凹凸を有する凹凸シート)を使用する場合には、ベタ画像、HT画像の何れにおいても、表2に示されるような「×」という転写性の評価結果になってしまうことを避けるために、次のことを実施する。即ち、低デューティー(本例では第二デューティー)且つ低線速(本例では第二線速)を採用したベタ画質優先モードを実施する。一方、凹凸紙ではない記録シート(平滑シート)を用いる場合には、表1や表3に示されるように、高線速を採用しても「×」という転写性の評価結果になってしまうことを回避することが可能である。そこで、凹凸紙でない記録シートを用いる場合には、高デューティー(本例では第一デューティー)且つ高線速(本例では第一線速)を採用したHT画質優先モードを実施する。
なお、ユーザーの希望に応じて、記録シートPの表面平滑性を自動で検知する構成に代えて、次のような構成を採用してもよい。即ち、紙種自動検知ボタンや平滑性検知センサー510を省略して、記録シートPの表面平滑性を検知しないで、普通紙、凹凸紙、表面コート紙の何れのボタン(501c〜e)が押されるかの判断だけによって、平滑性情報を取得する構成である。
また、後述する変形例のように、平滑性情報を記録シートPの銘柄(商品名や型式)に基づいて取得するようにしてもよい。
[第三実施例]
表2に示されるように、凹凸紙を用いる場合には、ベタ画質優先モード(低デューティー及び低線速)を選択すれば、ベタ画像及びHT画像の何れにおいても「×」という評価結果になることを回避することが可能である。これに対し、HT画質優先モード(高デューティー及び高線速)を選択すると、ベタ画像の評価結果を「×」にしてしまう。よって、凹凸紙を用いる場合において、「×」という評価結果になることを避けるためには、ベタ画質優先モードを採用する必要がある。
一方、凹凸紙とは異なる種類の記録シートPとしては、普通紙や表面コート紙がある。このうち、表面コート紙については、表3に示されるように、高デューティーで且つ高線速のHT画質優先モードを選択することで、「×」という転写性の評価結果になることを回避しつつ、プリント速度を高速化することができる。
また、普通紙については、表1に示されるように、ベタ画像ボソツキの評価結果と、HT転写不良の評価結果とのうち、何れか一方が「◎」になり且つ他方が「△」になる態様が3つ存在する。即ち、高デューティー及び低線速という態様、高デューティー及び高線速という態様、及び低デューティー及び低線速という態様である。これらのうち、高デューティー及び低線速という態様と、高デューティー及び高線速という態様とでは、互いに評価結果が全く同じであるので、より高速な高デューティー及び高線速という態様の方が有利である。すると、高デューティー及び高線速という態様と、低デューティー及び低線速という態様との二つが残り、これらのうち前者はHT画質優先モードであり、後者はベタ画質優先モードである。つまり、普通紙を用いる場合には、何れのモードを用いるにしても、「×」という評価結果にすることがなく、ベタ画像及びHT画像のうち、何れか一方の評価結果を「◎」にする一方で、他方の評価結果を「△」にする。そして、どちらの評価結果をより良い「◎」にするのかについては、ユーザーの希望に応じて決定することが望ましい。
図15は、第三実施例に係るプリンタの入力操作部501の電気回路を示すブロック図である。入力操作部501は、ベタ画質優先ボタン501a、HT画質優先ボタン501b、普通紙ボタン501c、凹凸紙ボタン501d、表面コート紙ボタン501e、紙種自動検知ボタン501f等を具備している。ベタ画質優先ボタン501aやHT画質優先ボタン501bの役割については、第一実施例のものと同様である。また、普通紙ボタン501c、凹凸紙ボタン501d、表面コート紙ボタン501e、紙種自動検知ボタン501fの役割については、第二実施例のものと同様である。紙種自動検知を可能にするために、第三実施例に係るプリンタにおいても、図13に示されるような平滑性検知センサー510を備えている。
図16は、第三実施例に係るプリンタの制御部200によって実施されるプリントジョブ処理の処理フローを示すフローチャートである。制御部200は、プリント命令信号を受信すると(S1でY)、フラッシュメモリーに記憶している平滑性情報について、凹凸紙を示す情報であるか否かを判定する(S2)。そして、凹凸紙に対応する情報である場合(S2でY)には、ベタ画質優先モードを選択する(S3)。一方、凹凸紙に対応する情報でない場合(S2でN)には、次に、平滑性情報について表面コート紙に対応する情報であるか否かを判定する(S4)。そして、表面コート紙に対応する情報である場合(S4でY)には、HT画質優先モードを選択する(S6)。また、表面コート紙に対応する情報でない場合(S4でN)には、希望品質情報に基づいて画像形成モードを選択する(S5)。詳しくは、希望品質情報がHT画質優先情報である場合(S5でY)にはHT画質優先モードを選択する一方で、HT画質優先情報でない場合(S5でN)にはベタ画質優先モードを選択する。
かかる構成においては、凹凸紙、表面コート紙、普通紙の何れを用いる場合であっても、ベタ画像やHT画像において「×」という画質の評価結果になることを回避することができる。更には、普通紙を用いる場合には、ベタ画像及びHT画像のうち、ユーザーの希望する方の画質をより良くすることもできる。
[変形例]
図17は、第一実施例に係るプリンタの一部の構成を他の構成に置き換えた変形例に係るプリンタの入力操作部501の電気回路を示すブロック図である。この入力操作部501は、メニューキー501g、上キー501h、下キー501i、決定キー501j、ディスプレイ501kなどを有している。
ユーザーによってメニューキー501gが押されると、制御部200は、ディスプレイ501kにメニュー画面を表示させる。ユーザーは、上キー501hや下キー501iの操作により、メニュー画面に表示されている複数のメニューのうち、所望のメニューにカーソルを合わせた状態で決定キー501jを押すことで、そのメニューを選択することができる。ユーザーのキー操作により、「シート種入力」メニューが選択されると、制御部200は、ディスプレイ501kにシート銘柄一覧を表示させる。ユーザーは、上キー501hや下キー501iの操作により、銘柄一覧に表示されている複数の銘柄のうち、給送カセット100にセットした記録シートPと同じ銘柄を選択することができる。銘柄と、その銘柄の記録シートにおける表面平滑性とは、一対一の関係であるので、銘柄は表面平滑性を示す情報として機能し得る。
制御部200は、銘柄と、その銘柄について普通紙、凹凸紙、表面コート紙の何れに該当するのかの平滑性情報とを一対一で関連付けたデーターテーブルをフラッシュメモリーに記憶している。このデーターテーブルと、入力された銘柄とに基づいて、記録シートPの平滑性情報を取得することが可能になっているのである。
[具体例]
次に、第一実施例、第二実施例、第三実施例又は変形例に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した具体例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、具体例に係るプリンタの構成は、第一実施例、第二実施例、第三実施例又は変形例と同様である。
実施形態、各実施例、変形例に係るプリンタにおいては、硬質のポリイミドを素材とするベルト基体だけからなる単層硬質ベルトを、中間転写ベルト31として用いている。これに対し、具体例に係るプリンタにおいては、硬質のベルト基体のおもて面上に、少なくともベルト基体よりも弾性に富んだ素材からなる弾性層を被覆した多層弾性ベルトを、中間転写ベルトとして用いている。
図18は、具体例に係るプリンタの中間転写ベルト31の横断面を部分的に示す拡大断面図である。中間転写ベルト31は、ある程度の屈曲性を有し且つ剛性の高い材料からなる無端ベルト状の基層(硬質素材のベルト基体)31aと、これのおもて面上に積層された柔軟性に優れた弾性材料からなる弾性層31bとを具備している。弾性層31bには、粒子31cが分散せしめられていて、それらの粒子31cが自らの一部を弾性層31bの表面から突出させた状態で、図19に示されるように、ベルト面方向に密集して並んでいる。それら複数の粒子31cにより、複数の凸がベルト面に形成されている。
基層31aの材料としては、樹脂中に、電気抵抗を調整するための充填材や添加材などからなる電気抵抗調整材を分散させたものを例示することができる。その樹脂としては、難燃性の観点からすると、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂等が好ましい。また、機械強度(高弾性)や耐熱性の観点からすると、特にポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好適である。
樹脂中に分散せしめる電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などを例示することができる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。分散性を向上させるために、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものを用いても良い。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。また、イオン導電剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等でもよい。それらのイオン導電剤を二種類以上混合して使用してもよい。なお、電気抵抗調整材は、これまで例示したものに限られるものではない。
基層31aの前駆体となる塗工液(硬化前の液体の樹脂中に電気抵抗調整材を分散せしめたもの)には、必要に応じて、分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などを添加してもよい。中間転写ベルト31として好適に装備されるシームレスベルトの基層31aに含有される電気抵抗調整材の添加量は、好ましくは表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]となる量とされる。但し、機械強度の観点から、成形膜が脆く割れやすくならない範囲の量を選択して添加することが必要である。つまり、樹脂成分(ポリイミド樹脂前駆体、ポリアミドイミド樹脂前駆体など)と電気抵抗調整材との配合率を適正に調整した塗工液を用いて、電気特性(表面抵抗及び体積抵抗)と機械強度のバランスがとれたシームレスベルトを製造して用いることが好ましい。
電気抵抗調整材の含有量は、カーボンブラックの場合には、塗工液中の全固形分の10〜25[wt%]がよく、更に好ましくは15〜20[wt%]である。また、金属酸化物の場合の含有量は、塗工液中の全固形分の1〜50[wt%]がよく、更に好ましくは10〜30[wt%]である。含有量が前述した範囲よりも少ないと十分な効果が得られず、また含有量が前述した範囲よりも多いと中間転写ベルト31(シームレスベルト)の機械強度が著しく低下するので、実使用上好ましくない。
基層31aの厚みは、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができるが、30μm〜150μmが好ましく、40μm〜120μmがより好ましく、50μm〜80μmが特に好ましい。基層31aの厚みが、30μm未満であると、亀裂によりベルトが裂けやすくなり、150μmを超えると、曲げによってベルトが割れることがあることがある。一方、基層31aの厚みが前述した特に好ましい範囲であると、耐久性の点で有利になる。
ベルト走行安定性を高めるためには、基層31aの層厚ムラをできるだけ少なくすることが好ましい。基層31aの厚みを調整する方法は、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができる。例えば、接触式や渦電流式の膜厚計での計測や膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定する方法が挙げられる。
中間転写ベルト31の弾性層31bは、上述したように、分散せしめられた複数の粒子31cによる複数の凸形状を表面に有している。弾性層31bを形成するための弾性材料としては、汎用の樹脂・エラストマー・ゴムなどを例示することができる。特に、柔軟性(弾性)に優れた弾性材料を用いることが好ましく、エラストマー材料やゴム材料が好適である。エラストマー材料としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリジエン系、シリコーン変性ポリカーボネート系などを例示することができる。フッ素系共重合体系等の熱可塑性エラストマーなどでもよい。また、熱硬化性の樹脂としては、ポリウレタン系、シリコーン変性エポキシ系、シリコーン変性アクリル系の樹脂等を例示することができる。また、ゴム材料としては、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム等を例示することができる。更には、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等を例示することもできる。これまで例示した材料の中から、所望の性能が得られる材料を適宜選択することが可能である。特に、表面に凹凸のある記録シート、例えばレザック紙などの表面凹凸に追従させるためには、できるだけ柔らかい材料を選択することが好ましい。また、粒子31cを分散せしめることから、熱可塑性のものよりも熱硬化性のものの方が好ましい。熱硬化性のものの方が、その硬化反応に寄与する官能基の効果により樹脂粒子との密着性に優れ確実に固定化することが可能だからである。加硫ゴムも同様の理由により好ましい材料の1つである。
弾性層31bを構成する弾性材料の中でも、耐オゾン性、柔軟性、粒子との接着性、難燃性付与、耐環境安定性などの観点から、アクリルゴムが最も好ましい。アクリルゴムは一般的に市販されているものでよく、特定の製品に限定されるものではない。しかし、アクリルゴムの各種架橋系(エポキシ基、活性塩素基、カルボキシル基)の中ではカルボキシル基架橋系のものがゴム物性(特に圧縮永久歪み)及び加工性の点で優れているので、カルボキシル基架橋系のものを選択することが好ましい。カルボキシル基架橋系のアクリルゴムに用いられる架橋剤としては、アミン化合物が好ましく、多価アミン化合物が最も好ましい。このようなアミン化合物として、具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などを例示することができる。更に、脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどを例示することができる。また、芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン等が挙げられる。4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等でもよい。更には、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチル等でもよい。
架橋剤の配合量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋が十分に行われないため、架橋物の形状維持が困難になる。これに対し、含有量が多すぎると、架橋物が硬くなりすぎて、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれる。
弾性層31bに用いるアクリルゴムには、上述した架橋剤の架橋反応を促進する狙いで、架橋促進剤を配合してもよい。架橋促進剤の種類は特に限定されるものではないが、前述した多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができるものであることが好ましい。このような架橋促進剤としては、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。グアニジン化合物としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジオルトトリルグアニジンなどが挙げられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩としては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリ―n−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。多価第三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ‐ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)などが挙げられる。第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。弱酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩あるいはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩が挙げられる。
架橋促進剤の使用量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物表面ヘの架橋促進剤のブルームが生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりする場合がある。これに対し、架橋促進剤が少なすぎると、架橋物の引張強さが著しく低下したり、熱負荷後の伸び変化または引張強さ変化が大きすぎたりする場合がある。
アクリルゴムの調製にあたっては、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの適宜の混合方法を採用することが可能である。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分として、例えば架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合すればよい。
アクリルゴムは、加熱することによって架橋物とすることができる。好ましい加熱温度は、130℃〜220℃であり、より好ましくは140℃〜200℃である。また、好ましい架橋時間は、30秒〜5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。また、一度架橋した後に、架橋物の内部まで確実に架橋させるために、後架橋を行ってもよい。後架橋の時間は、加熱方法、架橋温度、形状などによって異なるが、好ましくは1〜48時間である。後架橋を行う際の加熱方法、加熱温度については、適宜選択することが可能である。選択した材料に、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤、難燃性を得るための難燃剤、必要に応じて、酸化防止剤、補強剤、充填剤、架橋促進剤などの材料を適宜含有させてもよい。さらに、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤として、すでに述べた各種材料を使用することができる。但し、カーボンブラックや金属酸化物などは柔軟性を損なうため、使用量を抑えることが好ましく、イオン導電剤や導電性高分子を用いることも有効である。また、それらを併用しても構わない。
ゴム100重量部に対しは、種々の過塩素酸塩やイオン性液体を0.01部〜3部添加するのが好ましい。イオン導電剤の添加量が0.01部以下であると、抵抗率を下げる効果が得られない。また、添加量が3部以上であると、ベルト表面へ導電剤がブルーム又はブリードする可能性が高くなってしまう。
電気抵抗調整材の添加量については、弾性層31bの抵抗値を、表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]の範囲にするように調整することが好ましい。
弾性層31bの層厚は、200μm〜2mmが好ましく、400μm〜1000μmがより好ましい。層厚が200μmよりも小さいと、記録シートの表面凹凸への追従性や転写圧力の低減効果を低くしてしまうので好ましくない。また、層厚が2mmよりも大きいと、弾性層31bが自重によって撓み易くなって走行性を不安定にしたり、ベルトを張架しているローラへの掛け回しでベルトに亀裂を発生させ易くなったりするので好ましくない。なお、層厚の測定方法としては、断面を走査型顕微鏡(SEM)で観察することによって測定する方法を例示することができる。
弾性層31bの弾性材料に分散せしめる粒子31cとしては、平均粒子径が100μm以下であり、真球状の形状をしており、有機溶剤に不溶であり、且つ3%熱分解温度が200℃以上である樹脂粒子を用いる。粒子31cの樹脂材料に特に制限はないが、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴムなどを例示することができる。これらの樹脂材料からなる粒子の母体表面を異種材料で表面処理してもよい。ゴムからなる球状の母体粒子の表面に硬い樹脂をコートしてもよい。また、母体粒子として、中空のものや、多孔質のものを用いてもよい。
これまで例示した樹脂材料の中でも、滑性、トナーに対しての離型性、耐磨耗性などに優れているという観点から、シリコーン樹脂粒子が最も好ましい。樹脂材料を重合法などによって球状の形状に仕上げた粒子であることが好ましく、真球に近いものほど好ましい。また、粒子31cとしては、体積平均粒径が1.0μm〜5.0μmであり、且つ単分散粒子であるものを用いることが望ましい。単分散粒子は、単一粒子径の粒子ではなく、粒度分布が極めてシャープな粒子である。具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅の粒子である。粒子31cの粒径が1.0μm未満であると、粒子31cによる転写性能の促進効果が十分に得られなくなる。これに対し、粒径が5.0μmよりも大きいと、粒子間の隙間が大きくなってベルト表面粗さを大きくしてしまうことから、トナーを良好に転写できなくなったり、中間転写ベルト31のクリーニング不良を発生させ易くなったりする。更には、樹脂材料からなる粒子31cは一般に絶縁性が高いことから、粒径が大きすぎると粒子31cの電荷により、連続プリント時にこの電荷の蓄積による画像乱れを引き起こし易くなる。
粒子31cとしては、特別に合成したものを用いても良いし、市販品を用いてもよい。粒子31cを弾性層31bに直接塗布して、ならすことにより容易に均一に整列させることができる。このようにすることで、粒子31c同士のベルト厚み方向の重なり合いをほぼなくすことができる。複数の粒子31cの弾性層31bの表面方向における断面の径は、できるだけ均一であることが望ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅にすることが好ましい。このため、粒子31cの粉末として、粒径分布の小さなものを用いることが好ましいが、特定の粒径の粒子31cだけを選択的に弾性層31b表面に塗布することを実現する方法を採用すれば、粒径分布の比較的大きな粉末を用いることも可能である。なお、粒子31cを弾性層31b表面に塗布するタイミングは特に限定されず、弾性層31bの弾性材料の架橋前、架橋後の何れであってもよい。
粒子31cが分散せしめられた弾性層31bの表面方向において、粒子31cが存在している部分と、弾性層31bの表面が露出している部分との投影面積比については、粒子31cが存在している部分の投影面積率を60%以上にすることが望ましい。60%に満たない場合には、トナーと弾性層31bの無垢の表面とを直接接触させる機会を増加させて良好なトナー転写性が得られなくなったり、ベルト表面からのトナークリーニング性を低下させたり、ベルト表面の耐フィルミング性を低下させたりする。なお、中間転写ベルト31として、弾性層31bに粒子31cを分散させていないものを用いることも可能である。
図19に示されるように、中間転写ベルト31の表面において、粒子31c同士の重なり合いは殆ど観測されない。粒子31cの弾性層31b表面における断面の径は、できるだけ均一であることが好ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5)μm以下の分布幅となることが好ましい。このような分布幅を実現するためには、粒径分布の狭い粒子粉末を用いることが好ましいが、特定の粒径の粒子31cを選択的に表面に局在させる方法を採用して弾性層31bを形成すれば、粒径分布の広い粒子粉末を使用してもよい。
記録シートPとして、和紙のような凹凸紙を用いたとする。この場合に、記録シートPの表面における複数の凹部にそれぞれトナーを良好に二次転写して、表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を抑えるためには、弾性層31bをある程度の柔軟性(弾性)に優れたものを採用する必要がある。そして、そのような弾性層31bを採用すると、弾性層31bの単体だけでは、張架するとすぐに伸びてしまうことから、実使用に耐えられない。このため、弾性層31bよりも剛性のある基層31aを設け、その基層31aの剛性によってベルト全体の伸びを長期間に渡って抑えることが必須の条件になる。
以上のような特性の中間転写ベルト31では、二次転写ニップ内において、弾性層31bが記録シートPの表面凹凸にならって柔軟に変形して、シート表面との密着性を向上させる。これにより、例えば凹凸紙であれば、表面凹部とベルト表面との距離を縮めることで、表面凹部へのベタ画像の転写性を向上させる。また、普通紙や表面コート紙であれば、紙面とベルト表面との間に生じる微小隙間を低減して、ベタ画像のボソツキをより抑える。
次に示す表5は、中間転写ベルト31として多層弾性ベルトを用いた点の他は、表3を得た実験と同じ条件で画像を形成した場合における結果を示すものである。
表5に示されるように、高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスと、高線速(プロセス線速=352.8mm/s)との組み合わせの条件で、ベタ画像を形成しても、◎という優れたベタ画質を得ることができる。よって、表面コート紙を用いる場合に、各実施例や変形例に比べて、ベタ画像のベタ画質をより向上させることができる。
これまで、表1、表2、表3において、ハーフトーン画像を形成する場合に、二次転写バイアスとして、低デューティーの重畳電圧からなるものを採用するよりも、直流電圧だけからなるものを採用した方が良好なHT画質が得られる例を示した。これは、低デューティーの重畳電圧として、図7に示されるように、極性を反転させないものを採用した場合の例である。本発明者らは、二次転写バイアスとして、極性を反転させる低デューティーの重畳電圧からなるものを採用すると、直流電圧だけからなるものを採用する場合に比べて、良好なHT画質が得られる場合があることを実験によって確かめている。例えば、機種や仕様によっては、表1や表2の低デューティーにおけるHT画質を△から○に向上させたり、表3の低デューティーにおけるHT画質を×から△に向上させたりすることも可能である。
よって、HT画質を良くするという観点からすれば、低デューティーの重畳電圧としては、極性を反転させるものを用いた方がよい。このHT画質は、ハーフトーン画像の画質全般を意味するものではなく、先に定義したように、トナー粒子への逆電荷の注入に起因するハーフトーン画像の画像濃度不足を意味するものである。つまり、前記画像濃度不足を抑えるという観点からすれば、低デューティーの重畳電圧としては、極性を反転させるものを用いた方がよいのである。
但し、極性を反転させると、反転させない場合と同様の時間平均値Vaveを得るためには、転写ピーク値Vtをより大きくする必要が生ずる。そして、転写ピーク値Vtを大きくし過ぎると、既に述べたように、二次転写ニップ内で放電を多発させることによって画像中の多数の白点を発生させてしまう。放電の発生のし易さや機種や仕様によって異なる。よって、機種や仕様に応じて、放電を多発させない範囲で必要な時間平均値Vaveを確保できるように、転写ピーク値Vtや逆ピーク値Vrを設定する必要がある。機種や仕様によっては、放電の発生のし易さ故に、極性を反転させない低デューティーの重畳電圧を採用した方がよいケースもあり得る。
上述した実施形態及び各実施例では、平滑シートの例としていわゆる普通紙や表面コート紙を挙げたが、平滑シートはこれらに限られない。表面に凹凸を有するもののその凹凸の度合いが比較的小さなシートを平滑シートとして扱ってもよい。こうしたシートの例としては、CLASSIC Linen−Solar White(Neenah Paper社製)の坪量が90[gsm]又は118[gsm]であるものを例示することができる。また、CLASSIC CREST−Solar White(Neenah Paper社製)の坪量が90[gsm]又は104[gsm]であるものでもよい。また、レザック66(特種東海製紙社製)の坪量が118[gsm]であるものでもよい。
上述した実施形態及び各実施例において、画像形成装置を次のように構成してもよい。即ち、記録シートが、凹凸の度合いが比較的小さなシートである場合に、50[%]よりも高い高デューティーの転写バイアスを用いて、第一線速で駆動される像担持体から記録シートへトナー像を転写する。一方、記録シートが、上述したシートよりも凹凸の大きい凹凸シート(例えば表2に示すレザック66 175kg)であったとする。この場合には、50[%]よりも低い低デューティーの転写バイアスを用いて、第一線速よりも低い第二線速で駆動される像担持体から記録シートへトナー像を転写する。
上述した実施形態及び各実施例では、中間転写ベルト31等の中間転写体を用いたいわゆる中間転写方式の画像形成装置について説明したが、感光体から記録シートPへ直接画像を転写するいわゆる直接転写方式の画像形成装置であってもよい。また、像担持体(中間転写ベルト31)として弾性層を有するものを用いたが、弾性層を有さないものを用いてもよい。弾性層を有さないベルトを用いる場合であっても、二次転写ニップに加えられる圧力や、ベルトを支持するローラ(二次転写裏面ローラ33)の弾性変形等によって、ハーフトーン画像中に含まれるドットトナーをベルトが包み込むことがある。上述した実施形態によれば、高デューティーの二次転写バイアスを用いることで、ハーフトーン画像の転写不良を防止することができる。また、弾性層を有しない中間転写ベルト31を用いる場合であっても、低デューティーの二次転写バイアスを用いることで、凹凸シート上での二次転写性を確保することができる。あるいは、ベタ画像のボソツキを抑えることができる。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、像担持体(例えば中間転写ベルト31)とニップ形成部材(例えばシート搬送ベルト41)との当接による転写ニップ(例えば二次転写ニップ)に挟み込んだ記録シート(例えば記録シートP)に対して前記像担持体上のトナー像を転写するために、交流電圧を含む転写バイアスを転写電源(例えば二次転写電源39)から出力し、この転写バイアスが、前記転写ニップ内でトナーを像担持体側から記録シート側に向けてより強く静電移動させる方のピーク値である転写ピーク値(例えば転写ピーク値Vt)、及びこの転写ピーク値とは逆側のピーク値である逆ピーク値(例えば逆ピーク値Vr)を交流成分の一周期内で発生させるものである画像形成装置であって、少なくとも第一モード(例えばHT画質優先モード)及び第二モード(例えばベタ画質優先モード)を含む複数種類の画像形成モードの中から一つを選択して実行する制御手段(例えば制御部200)を備え、前記転写バイアスのピークツウピークの中心値を境にして逆ピーク値Vrの側の値になっている時間の一周期内における割合であるデューティーの前記第一モードにおける値が前記第二モードにおける値よりも高く、且つ前記第一モードにおける前記像担持体の線速が前記第二モードにおける前記線速よりも速いことを特徴とするものである。
かかる構成においては、次に説明する理由により、表面凹凸に富んだ記録シートにおける表面凹部にも像担持体上のトナーを良好に転写しつつ、ハーフトーン画像の画像濃度不足を抑えることができる。
即ち、表面凹凸に富んだ記録シートの表面凹部に対するトナーの転写不良は、ハーフトーン画像よりもベタ画像で発生し易いが、本発明者らが実験で明らかにしたように、次のような構成を採用することで、その転写不良を抑えることが可能である。即ち、デューティーを比較的低くした転写バイアスを採用し、その転写バイアスによって転写ニップ内でトナーを複数回に渡って像担持体表面とシート表面凹部との間で往復移動させる構成である。但し、このようにして記録シートの表面凹部に対するベタ画像の転写不良を抑えるためには、転写ニップ内のトナーの往復移動回数を必要数だけ確保する必要性から、像担持体やニップ形成部材の線速をある程度の値に留める必要がある。
これに対し、平面平滑性に優れた記録シートを用いると、ハーフトーン画像の画像濃度不足を発生させ易くなる。そして、かかる画像濃度不足については、本発明者らが実験で明らかにしたように、デューティーを比較的高くした転写バイアスを採用することで、抑えることができる。この場合、必ずしも転写ニップ内でトナーを前述のように往復移動させる必要がないことから、像担持体やニップ形成部材の線速を所望の値まで速くしても差し支えない。にもかかわらず、表面凹凸に富んだ記録シートの表面凹部に対するベタ画像の転写不良を抑える場合と同様の値に線速を設定すると、プリント速度を不要に低下させてしまうことになる。
つまり、シート表面凹部に対するベタ画像の転写不良を抑えるという観点からすると、第一モードと第二モードとのうち、デューティーがより低く且つ線速がより遅い第二モードが適している。これに対し、ハーフトーン画像の画像濃度不足を抑えるという観点からすると、デューティーがより高く且つ線速がより速い第一モードが適している。
態様Aにおいては、ユーザーがベタ画像の画質よりもハーフトーン画像の画質を重視したり、頁内の平均面積階調率が比較的低かったりする場合に、次のようにすることで、ハーフトーン画像の画像濃度不足を抑えることができる。即ち、シート表面凹部に対するベタ画像の転写不良生を抑えるのに適した第二モードではなく、ハーフトーン画像の画像濃度不足を抑えるのに適した第一モードを選択するのである。一方、ユーザーがハーフトーン画像の画質よりもベタ画像の画質を重視したり、頁内の平均面積階調率が比較的高かったりする場合には、次のようにすることで、シート表面凹部に対するベタ画像の転写不良を抑えることができる。即ち、ハーフトーン画像の画像濃度不足を抑えるのに適した第一モードではなく、シート表面凹部に対するベタ画像の転写不良生を抑えるのに適した第二モードを選択するのである。
以上のように、態様Aにおいては、表面凹凸に富んだ記録シートにおける表面凹部にも像担持体上のトナーを良好に転写しつつ、ハーフトーン画像の画像濃度不足を抑えることができる。更には、ハーフトーン画像を形成する場合に、プリント速度を不必要に低下させずに、ハーフトーン画像の画像濃度不足を抑えることができる。従って、画像不良の発生を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aであって、前記第一モードにおける前記デューティーが50[%]よりも高く、且つ前記第二モードにおける前記デューティーが50[%]よりも低いことを特徴とするものである。かかる構成では、第一モードでは転写バイアスのデューティーを高デューティーにすることで良好なHT画質を得る一方で、第二モードでは転写バイアスのデューティーを低デューティーにすることで良好なベタ画質を得ることができる。
[態様C]
態様Cは、態様A又はBにおいて、ユーザーによる希望画像品質の情報である希望品質情報を取得する情報取得手段(例えば入力操作部501)を設け、且つ、前記情報取得手段による前記希望品質情報の取得結果に基づいて画像形成モードを選択するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、複数の画像形成モードの中から、ユーザーの希望に応じた適切なものを選択して実行することができる。
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいて、前記情報取得手段による前記希望品質情報の取得結果が画像の中間調部(HT画像部)よりもベタ部(ベタ画像部)の画質改善を優先することを示すもの(例えばベタ画質優先情報)である場合には前記第二モードを選択する一方で、前記取得結果がベタ部よりも中間調部の画質改善を優先することを示すもの(例えばHT画質優先情報)である場合には前記第一モードを選択するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、ユーザーの希望に応じて、ベタ画像で良好なベタ画質を得たり、ハーフトーン画像で良好なHT画質を得たりすることができる。
[態様E]
態様Eは、態様A又はBにおいて、画像の平均面積階調率に基づいて画像形成モードを選択するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、複数の画像形成モードの中から、画像の平均面積階調率に応じた適切なものを選択して実行することができる。
[態様F]
態様Fは、態様Eにおいて、前記平均面積階調率が所定の閾値以上又は前記閾値を超える場合には前記第二モードを選択する一方で、前記平均面積階調率が前記閾値未満又は前記閾値以下である場合には前記第一モードを選択するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、ベタ画像の出力頻度が比較的高い場合にベタ画像で良好なベタ画質を得ることを優先したり、ハーフトーン画像の出力頻度が比較的高い場合にハーフトーン画像で良好なHT画質を得ることを優先したりすることができる。
[態様G]
態様Gは、態様A又はBにおいて、トナー像の転写対象となる記録シートの表面平滑性に関する情報である平滑性情報を取得する情報取得手段(例えば入力操作部501や平滑性検知センサー510)を設け、複数の画像形成モードの中から、前記情報取得手段による前記平滑性情報の取得結果に応じたものを選択して実行するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、複数の画像形成モードの中から、記録シートの表面平滑性に応じた適切なものを選択して実行することができる。
[態様H]
態様Hは、態様Gにおいて、前記情報取得手段による前記平滑性情報の取得結果が前記記録シートたる凹凸紙の表面平滑性に対応するものである場合には、複数の画像形成モードの中から第二モードを選択するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、第二実施例で説明したように、凹凸紙を用いる場合に、ベタ画像、HT画像の何れにおいても画質の評価結果を「×」にしてしまうことを回避することができる。
[態様I]
態様Iは、態様Hにおいて、前記情報取得手段による前記平滑性情報の取得結果が凹凸紙の表面平滑性に対応するものでない場合には、複数の画像形成モードの中から第一モードを選択するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、普通紙や表面コート紙を用いる場合に、ベタ画像、HT画像の何れにおいても、画質の評価結果を「×」にしてしまうことを回避しつつ、プリント速度の不要な低速化を回避することができる。
[態様J]
態様Jは、態様Hにおいて、平滑性情報の取得結果に加えて、ユーザーによる希望画像品質の情報である希望品質情報も取得するように情報取得手段を構成し、前記情報取得手段による前記平滑性情報の取得結果が凹凸紙の表面平滑性に対応するものでなく、且つ表面コート紙の表面平滑性に対応するものでもない場合には、複数の画像形成モードの中から、前記情報取得手段による前記希望品質情報の取得結果に対応するものを選択するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、普通紙を用いる場合に、ユーザーの希望に応じた画質を優先させることができる。
[態様K]
態様Kは、態様Jにおいて、前記情報取得手段による前記希望品質情報の取得結果が画像の中間調部よりもベタ部の画質改善を優先することを示すものである場合には前記第二モードを選択する一方で、画像のベタ部よりも中間調部の画質を優先することを示すものである場合には前記第一モードを選択するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、普通紙を用いる場合に、ベタ画像とHT画像とのうち、ユーザーの希望する方の画質の向上を優先させることができる。
[態様L]
態様Lは、態様A〜Kの何れかにおいて、前記像担持体として、少なくとも、無端状のベルト基体、及びこれの表面上に積層された前記ベルト基体よりも弾性に優れた弾性層を具備する多層構造のベルト部材を用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、具体例で説明したように、表面コート紙を用いる場合に、単層構造のベルト部材を用いる構成に比べて、ベタ画像のベタ画質をより向上させることができる。
[態様M]
態様Mは、像担持体とニップ形成部材との当接による転写ニップに挟み込んだ記録シートに対して前記像担持体上のトナー像を転写するために、交流電圧を含む転写バイアスを転写電源から出力し、この転写バイアスとして、前記転写ニップ内でトナーを記録シートに向けてより強く静電移動させる方のピーク値である転写ピーク値、及びこの転写ピーク値とは逆側のピーク値である逆ピーク値を交流成分の一周期内で発生させるものを用いる画像形成方法において、少なくとも第一モード及び第二モードを含む複数種類の画像形成モードの中から一つを選択して実行し、前記転写バイアスのピークツウピークの中心値を境にして逆ピーク値Vrの側の値になっている時間の一周期内における割合であるデューティーの前記第一モードにおける値を前記第二モードにおける値よりも高くし、且つ前記第一モードにおける前記像担持体の線速を前記第二モードにおける前記線速よりも速くすることを特徴とするものである。
[態様1]
態様1は、像担持体(例えば中間転写ベルト31)と、前記像担持体を駆動する駆動源(例えば駆動モーターM)と、前記像担持体との間に転写ニップ(例えば二次転写ニップ)を形成するニップ形成部材(例えばシート搬送ベルト41)と、前記像担持体上のトナー像を前記転写ニップで記録シートに転写するために交流成分を含む転写バイアスを出力する電源(例えば二次転写電源39)とを備える画像形成装置において、前記交流成分の周期をTで表し、且つ前記周期のなかで前記転写バイアスがその時間平均値(Vave)よりも前記転写ニップ内のトナー像を前記像担持体から記録シートに向けて移動させる転写側の値(例えばマイナス極性の値)にある時間をTtで表した場合における数式としての(T−Tt)/T×100[%]の解であるデューティーが第一デューティー(例えば高デューティー)である前記転写バイアスを前記電源から出力させつつ、前記像担持体を第一線速(例えば高線速)で表面移動させる第一モードと、前記デューティーが前記第一デューティーよりも低い第二デューティー(例えば低デューティー)である前記転写バイアスを前記電源から出力させつつ、前記像担持体を前記第一線速よりも低い第二線速(例えば低線速)で表面移動させる第二モードと、を所定条件に応じて切り替える制御手段(例えば制御部200)を備えることを特徴とするものである。かかる構成では、態様Aと同様の理由により、表面凹凸に富んだ記録シートにおける表面凹部にも像担持体上のトナーを良好に転写しつつ、ハーフトーン画像の画像濃度不足を抑えることができる。更には、ハーフトーン画像を形成する場合に、プリント速度を不必要に低下させずに、ハーフトーン画像の画像濃度不足を抑えることができる。従って、画像不良の発生を抑えることができる。
[態様2]
態様2は、態様Aであって、前記第一デューティーが50[%]よりも高く、且つ前記第二デューティーが50[%]よりも低いことを特徴とするものである。かかる構成では、第一モードでは転写バイアスのデューティーを高デューティーにすることで良好なHT画質を得る一方で、第二モードでは転写バイアスのデューティーを低デューティーにすることで良好なベタ画質を得ることができる。
[態様3]
態様3は、態様1において、前記所定条件が記録シートの種類であることを特徴とするものである。かかる構成では、記録シートの種類によらず、画像不良の発生を抑えることができる。
[態様4]
態様4は、態様3において、前記制御手段は、記録シートの種類が平滑シート(例えば表面コート紙)である場合には前記第一モードを実行し、記録シートの種類が平滑シートよりも大きな表面凹凸を有する凹凸シート(例えば凹凸紙)である場合には前記第二モードを実行することを特徴とするものである。かかる構成では、大きな凹凸を有する記録シートにおける表面凹部にも像担持体上のトナーを良好に転写しつつ、平滑シートにおけるハーフトーン画像の画像濃度不足を抑えることができる。更には、ハーフトーン画像を形成する場合に、プリント速度を不必要に低下させずに、ハーフトーン画像の画像濃度不足を抑えることができる。
[態様5]
態様5は、態様4であって、前記第一デューティーが50[%]よりも高く、且つ前記第二デューティーが50[%]よりも低いことを特徴とするものである。かかる構成では、デューティーが50[%]よりも低い二次転写バイアスを用いることにより、大きな凹凸を有する記録シートにおける表面凹部にも像担持体上のトナーをより良好に転写することができる。また、一般に、ユーザによってプリントされる画像としては写真画像などがあるが、こうした写真画像には薄いグレー色や淡色からなるハーフトーン画像が含まれることが多い。平滑シートへこうした写真画像を転写する際、デューティーが50[%]よりも高い二次転写バイアスを用いることにより、ハーフトーン画像の部分での画像濃度不足をより確実に抑えることができる。出力画像における二次転写不良の発生を抑えることができる。更には、ハーフトーン画像を形成する場合に、プリント速度を不必要に低下させずに、ハーフトーン画像の画像濃度不足を抑えることができる。
[態様6]
態様6は、態様1又は2であって、トナー像の転写対象となる記録シートの表面平滑性に関する情報である平滑性情報を取得する情報取得手段を備え、前記制御手段が、前記情報取得手段による前記平滑性情報の取得結果に応じて前記第一モードと前記第二モードとを切り替えることを特徴とするものである。かかる構成では、複数の画像形成モードの中から、記録シートの表面平滑性に応じた適切なものを選択して実行することができる。
[態様7]
態様7は、態様6であって、前記情報取得手段による前記平滑性情報の取得結果が凹凸シートの表面平滑性に対応するものである場合には、前記制御手段が前記第二モードを実行することを特徴とするものである。かかる構成では、第二実施例で説明したように、凹凸紙を用いる場合に、ベタ画像、HT画像の何れにおいても画質の評価結果を「×」にしてしまうことを回避することができる。
[態様8]
態様8は、態様7であって、前記情報取得手段による前記平滑性情報の取得結果が凹凸シートの表面平滑性に対応するものでない場合には、前記制御手段が前記第一モードを実行することを特徴とするものである。かかる構成では、普通紙や表面コート紙を用いる場合に、ベタ画像、HT画像の何れにおいても、画質の評価結果を「×」にしてしまうことを回避しつつ、プリント速度の不要な低速化を回避することができる。
[態様9]
態様9は、態様7において、平滑性情報の取得結果に加えて、ユーザーによる希望画像品質の情報である希望品質情報も取得するように情報取得手段を構成し、前記情報取得手段による前記平滑性情報の取得結果が凹凸シートの表面平滑性に対応するものでなく、且つ表面コート紙の表面平滑性に対応するものでもない場合には、前記制御手段が、前記情報取得手段による前記希望品質情報の取得結果に応じて前記第一モード及び前記第二モードのうち、実行する方を選択することを特徴とするものである。かかる構成では、普通紙を用いる場合に、ユーザーの希望に応じた画質を優先させることができる。
[態様10]
態様10は、態様9であって、前記制御手段は、前記情報取得手段による前記希望品質情報の取得結果が画像の中間調部よりもベタ部の画質改善を優先することを示すものである場合には前記第二モードを選択する一方で、画像のベタ部よりも中間調部の画質を優先することを示すものである場合には前記第一モードを選択することを特徴とするものである。かかる構成では、普通紙を用いる場合に、ベタ画像とHT画像とのうち、ユーザーの希望する方の画質の向上を優先させることができる。
[態様11]
態様11は、態様1又は2であって、ユーザーによる希望画像品質の情報である希望品質情報を取得する情報取得手段を備え、前記制御手段が、前記情報取得手段による前記希望品質情報の取得結果に基づいて前記第一モード及び前記第二モードのうち、実行する方を選択することを特徴とするものである。かかる構成では、複数の画像形成モードの中から、ユーザーの希望に応じた適切なものを選択して実行することができる。
[態様12]
態様12は、態様11であって、前記制御手段は、前記情報取得手段による前記希望品質情報の取得結果が画像の中間調部よりもベタ部の画質改善を優先することを示すものである場合には前記第二モードを選択する一方で、前記取得結果がベタ部よりも中間調部の画質改善を優先することを示すものである場合には前記第一モードを選択することを特徴とするものである。かかる構成では、ユーザーの希望に応じて、ベタ画像で良好なベタ画質を得たり、ハーフトーン画像で良好なHT画質を得たりすることができる。
[態様13]
態様13は、態様1又は2であって、前記制御手段が、画像の平均面積階調率に基づいて前記第一モード及び前記第二モードのうち、実行する方を選択することを特徴とするものである。かかる構成では、複数の画像形成モードの中から、画像の平均面積階調率に応じた適切なものを選択して実行することができる。
[態様14]
態様14は、態様13であって、前記制御手段は、前記平均面積階調率が所定の閾値以上又は前記閾値を超える場合には前記第二モードを選択する一方で、前記平均面積階調率が前記閾値未満又は前記閾値以下である場合には前記第一モードを選択することを特徴とするものである。かかる構成では、ベタ画像の出力頻度が比較的高い場合にベタ画像で良好なベタ画質を得ることを優先したり、ハーフトーン画像の出力頻度が比較的高い場合にハーフトーン画像で良好なHT画質を得ることを優先したりすることができる。
[態様15]
態様15は、態様1〜14の何れかにおいて、前記像担持体として、少なくとも、無端状のベルト基体、及びこれの表面上に積層された前記ベルト基体よりも弾性に優れた弾性層を具備する多層構造のベルト部材を用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、具体例で説明したように、表面コート紙を用いる場合に、単層構造のベルト部材を用いる構成に比べて、ベタ画像のベタ画質をより向上させることができる。
[態様16]
態様16は、転写方法であって、記録シートが平滑シートである場合に、転写バイアスについて、交流成分の周期をTで表し、且つ前記周期のなかで時間平均値よりも転写ニップ内のトナー像を像担持体から記録シートに向けて移動させる転写側の値にある時間をTtで表した場合における数式としての(T−Tt)/T×100[%]の解であるデューティーが50[%]よりも高い前記転写バイアスを用いて、トナー像を第一線速で駆動している前記像担持体から記録シートに転写する一方で、記録シートが平滑シートよりも大きな凹凸を有する凹凸シートである場合に、前記デューティーが50[%]よりも低い転写バイアスを用いて、トナー像を第二線速で駆動している前記像担持体から記録シートに転写することを特徴とするものである。