JP2017194318A - 分離材及びカラム - Google Patents
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[1] 多孔質ポリマ粒子と、多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部を被覆する、重量平均分子量が40000以上の多糖類又はその変性体を含む被覆層と、を備え、多糖類又はその変性体は、多糖類又はその変性体の4質量%水溶液を調製したときに、20〜80℃の範囲での温度変化に対する水溶液の粘度変化においてヒステリシスを有さない、分離材。
[2] 多孔質ポリマ粒子がスチレン系モノマをモノマ単位として含む、[1]に記載の分離材。
[3] 多糖類がデキストランである、[1]又は[2]に記載の分離材。
[4] 多糖類又はその変性体が架橋されている、[1]〜[3]のいずれかに記載の分離材。
[5] 多孔質ポリマ粒子の平均粒径が10〜300μmである、[1]〜[4]のいずれかに記載の分離材。
[6] 細孔径分布におけるモード径が0.01〜0.5μmである、[1]〜[5]のいずれかに記載の分離材。
[7] 空隙率が40〜70体積%である、[1]〜[6]のいずれかに記載の分離材。
[8] 比表面積が30m2/g以上である、[1]〜[7]のいずれかに記載の分離材。
[9] 多孔質ポリマ粒子の粒径の変動係数が5〜15%である、[1]〜[8]のいずれかに記載の分離材。
[10] 多孔質ポリマ粒子1g当たり30〜500mgの被覆層を備える、[1]〜[9]のいずれかに記載の分離材。
[11] カラムに充填した場合、カラム圧0.3MPaのときに通液速度が800cm/h以上である、[1]〜[10]のいずれかに記載の分離材。
[12] [1]〜[11]のいずれかに記載の分離材を備えるカラム。
本実施形態の分離材は、多孔質ポリマ粒子と、該多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備える。なお、本明細書中、「多孔質ポリマ粒子の表面」とは、多孔質ポリマ粒子の外側の表面のみでなく、多孔質ポリマ粒子の内部における細孔の表面を含むものとする。また、本明細書中(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレート等の類似の表現においても同様である。
本実施形態の多孔質ポリマ粒子は、モノマと多孔質化剤とを含む組成物を反応させることにより得ることができる。多孔質ポリマ粒子は、例えば、従来の懸濁重合、乳化重合等によって合成することができる。モノマとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン系モノマを使用することができる。すなわち、多孔質ポリマ粒子は、スチレン系モノマをモノマ単位として含んでいてよい。具体的なモノマとしては、以下のような多官能性モノマ、単官能性モノマ等が挙げられる。
1)超音波分散装置を使用して粒子を水(界面活性剤等の分散剤を含む)に分散させ、1質量%の多孔質ポリマ粒子を含む分散液を調製する。
2)粒度分布計(シスメックスフロー、シスメックス株式会社製)を用いて、上記分散液中の粒子約1万個の画像により平均粒径及び粒径のC.V.(変動係数)を測定する。
本実施形態の被覆層は、多糖類を含む。多糖類で多孔質ポリマ粒子を被覆することによりカラム圧の上昇を抑制することができるとともに、タンパク質の非特異吸着を抑制することが可能となる上、分離材のタンパク質吸着量を向上させることができる。さらに、多糖類が架橋されていると、カラム圧の上昇をより抑制することが可能となる。
被覆層は、多糖類又はその変性体を含む。多糖類としては、好ましくはアガロース、デキストラン、セルロース、キトサン等が挙げられ、デキストランが好ましく用いられる。
1)多糖類又はその変性体を純水に溶解させて、4質量%の水溶液を調製する。
2)共軸二軸円筒型粘度計を用いて、20〜80℃を含む範囲で温度を変化させて上記水溶液の粘度変化を測定する。
3)具体的には、粘度変化の測定時、80℃以上の温度(例えば80〜100℃のいずれかの温度。以下同様。)から開始して2℃/minの降温速度で20℃以下の温度(例えば0〜20℃のいずれかの温度。以下同様。)まで降温させ、その後、2℃/minの昇温速度で80℃以上の温度まで昇温させる。縦軸に粘度、横軸に温度をとったグラフにおいて、80℃以上の温度から20℃以下の温度に降温させた際の粘度測定値から描かれる直線1又は曲線1と、20℃以下の温度から80℃以上の温度に昇温させた際の粘度測定値から描かれる直線2又は曲線2とが一致しない、すなわち、40〜60℃の任意の温度において、降温時(直線1又は曲線1)の粘度と昇温時(直線2又は曲線2)の粘度との差が0.01Pa・s以上である場合をヒステリシスありと判断する。一方、直線1又は曲線1と直線2又は曲線2とが一致する、すなわち、40〜60℃の任意の温度において、降温時(直線1又は曲線1)の粘度と昇温時(直線2又は曲線2)の粘度との差が0.01Pa・s未満である場合をヒステリシスなしと判断する。
多糖類又はその変性体(以下、これらをまとめて単に「多糖類」ともいう)を含む被覆層は、例えば、以下に示す方法により形成することができる。
まず、多糖類の溶液を多孔質ポリマ粒子表面に吸着させる。多糖類の溶液の溶媒としては、多糖類を溶解することのできるものであれば、特に限定されないが、水が最も一般的である。溶媒に溶解させる高分子の濃度は、5〜20(mg/mL)が好ましい。
この溶液を、多孔質ポリマ粒子に含浸させる。含浸方法は、多糖類の溶液に多孔質ポリマ粒子を加えて一定時間放置する。含浸時間は多孔質体の表面状態によっても変わるが、通常一昼夜含浸すれば高分子濃度が多孔質体の内部で外部濃度と平衡状態となる。その後、水、アルコール等の溶媒で洗浄し、未吸着分の多糖類を除去する。
次いで、架橋剤を加えて多孔質ポリマ粒子表面に吸着された多糖類を架橋反応させて、架橋体を形成する。このとき、架橋体は、水酸基を有する3次元架橋網目構造を有する。
被覆層を備える分離材は、イオン交換基、リガンド(プロテインA)等を表面上の水酸基等を介して導入することによりイオン交換精製、アフィニティ精製等に使用することができる。イオン交換基の導入方法として、例えば、ハロゲン化アルキル化合物を用いる方法が挙げられる。
(多孔質ポリマ粒子1の合成)
500mLの三口フラスコ中で、モノマとして純度96%のジビニルベンゼン(新日鉄住金株式会社製、商品名:DVB960)16g、多孔質体としてヘキサノール16g及びジエチルベンゼン16g、開始剤として過酸化ベンゾイル0.64gをポリビニルアルコール(0.5質量%)水溶液に加え、マイクロプロセスサーバーを使用して乳化させた。得られた乳化液をフラスコに移し、80℃のウォーターバスで加熱しながら、撹拌機を用いて約8時間撹拌をして粒子を得た。得られた粒子をろ過後、アセトンで洗浄を行い、多孔質ポリマ粒子1を得た。得られた多孔質ポリマ粒子1の粒径をフロー型粒径測定装置で測定し、平均粒径及び粒径のC.V.値(変動係数)を算出した。また、多孔質ポリマ粒子1の細孔径分布におけるモード径、比表面積、空隙率を水銀圧入法にて測定した。結果を表1に示す。
重量平均分子量(Mw)が4000000であるデキストランの水溶液(2質量%)480mLに水酸化ナトリウム0.98g、グリシジルフェニルエーテル9.80gを投入して60℃で6時間反応させ、デキストランにフェニル基を導入した。得られた変性デキストランをイソプロピルアルコールで再沈殿させ、洗浄した。変性デキストランの疎水性基含有量を下記方法により算出したところ、14.2モル%であった。
乾燥状態の粉末デキストラン(変性されていないデキストラン)と揮発分0.1質量%未満まで乾燥させた疎水性基導入デキストランをそれぞれ70℃の純水に溶解させ、0.05質量%の水溶液サンプルを調製した。分光光度計により各水溶液の269nmの吸光度を測定して濃度を求めることで、下記式より疎水性基含有量を算出した。
・疎水性基含有量(%)=(CAG/(CHAG+CAG))×100
・CAG:変性されているデキストラン構成単位の濃度(mmol/l)=A/εGPE*1000
・A:疎水性基導入デキストランの真の吸光度=疎水性基を導入したデキストランの吸光度−変性されていないデキストランの吸収
・変性されていないデキストランの吸収=変性されてないデキストランの吸光度×(疎水性基を導入したデキストランのサンプル濃度(mmol/l)/変性されてないデキストランのサンプル濃度(mmol/l))
・εGPE:グリシジルフェニルエーテルの吸光係数=1372(l/(mol・cm))
・CHAG:変性されていないデキストラン構成単位の濃度(mmol/l)=(変性されてないデキストラン構成単位の濃度(g/l)/デキストラン構成単位(306g/mol))×1000
・変性されてないデキストランス構成単位の濃度(g/l)=疎水性基を導入したデキストランのサンプル濃度(質量%)×10−変性されているデキストラン構成単位の濃度(g/l)
・変性されているデキストラン成単位の濃度(g/l)=(CAG×変性されているデキストラン構成単位(456g/mol))/1000
なお、粒子に吸着した変性デキストランの疎水性基含有量を測定する場合は、粒子0.2gを1M硫酸10ml中にて、70℃、5時間処理し、処理液を分光光度計にて269nmの吸光度を測定して処理液濃度を求めることで、同様に算出できる。
分離材の分散液をろ過して得られた分離材(乾燥質量20g)を5Mの水酸化ナトリウム水溶液200mLに投入し、室温で1時間放置した。さらに、ジエチルアミノエチルクロライド塩酸塩水溶液200mL(ジエチルアミノエチルクロライド塩酸塩60g相当)を添加し、水溶液の温度を70℃まで上げ、撹拌しながら8時間反応させた。反応終了後、水溶液をろ過し、水/エタノール(体積比5/1)で3回洗浄して、ジエチルアミノエチル(DEAE)基をイオン交換基として有する分離材(DEAE変性分離材)を得た。得られた粒子の細孔径分布におけるモード径、空隙率及び比表面積を、水銀圧入法にて測定した。結果を表2に示す。
得られた分離材0.2gをBSA(Bovine Serum Albumin)濃度24mg/mLのTris−塩酸緩衝液(pH8.0)20mLに投入し、室温で24時間撹拌を行った。その後、遠心分離で上澄みをとった後、分光光度計を用いたろ液の吸光度を測定し、280nmの吸光度からBSA濃度を求めることにより、粒子に吸着したBSA量を算出した。非特異吸着量が1mg/mL粒子以下の場合を○、1mg/mL粒子を超え10mg/mL以下の場合を△、10mg/mLを超える場合を×とした。結果を表3に示す。
DEAE変性分離材のイオン交換容量を以下のように測定した。5mL容量の分離材を、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液20mLに1時間浸漬し、室温で撹拌した。その後、洗浄液として用いた水のpHが7以下となるまで洗浄を行った。洗浄した分離材を0.1Nの塩酸20mLに浸漬し、1時間撹拌させた。分離材をろ過で取り除いた後、ろ液の塩酸水溶液を中和滴定することによって、分離材のイオン交換容量を測定した。結果を表3に示す。
分離材をφ7.8×300mmのステンレスカラムにスラリー(溶媒:メタノール)濃度30質量%にて15分間かけて充填した。その後、カラムに流速を変えて水を流し、流速とカラム圧との関係を測定し、カラム圧0.3MPa時の線流速を算出した。結果を表3に示す。
また、動的吸着量を以下のようにして測定した。20mmol/LのTris−塩酸緩衝液(pH8.0)をカラムに10カラム容量流した。その後、BSA濃度2mg/mLの20mmol/L Tris−塩酸緩衝液を流し、UVによりカラム出口でのBSA濃度を測定した。カラム入口と出口のBSA濃度が一致するまで液を流し、5カラム容量分の1M NaClのTris−塩酸緩衝液で希釈した。10%breakthroughにおける動的吸着量は以下の式を用いて算出した。結果を表3に示す。
q10=cfF(t10−t0)/VB
q10:10%breakthroughにおける動的吸着量(mg/mL wet resin)
cf:注入しているBSA濃度
F:流速(mL/min)
VB:ベッド体積(mL)
t10:10%breakthroughにおける時間
t0:BSA注入開始時間
分離材を0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液中で24時間撹拌し、Tris−塩酸緩衝液(pH8.0)で洗浄後、カラム特性評価と同様の条件にて充填した。BSAの10%breakthrough動的吸着量を測定し、アルカリ処理前の動的吸着量と比較した。動的吸着量の減少率が3%以下である場合を○、3%を超え20%以下である場合を△、20%を超える場合を×とした。結果を表3に示す。
800cm/hの流速で水をカラムに流し、カラム圧を測定後、3000cm/hに流速を上昇させ、1時間通液させた。再度800cm/hにカラム圧を下げた際に、カラム圧が初期値(3000cm/hに流速を上げる前)より10%以上上昇した場合を×、10%未満の上昇である場合を○とした。結果を表3に示す。
重量平均分子量(Mw)が1000000であるデキストランを使用した以外は、実施例1と同様にして分離材の作製及び評価を行った。変性デキストランの4質量%水溶液について、温度を20〜80℃の範囲で変化させたときの水溶液の粘度変化を測定したところ、図1の曲線C2で示されるように、粘度変化にヒステリシスは見られなかった。また、変性デキストランの疎水性基含有量は、14.0モル%であった。
重量平均分子量(Mw)が500000であるデキストランを使用した以外は、実施例1と同様にして分離材の作製及び評価を行った。変性デキストランの4質量%水溶液について、温度を20〜80℃の範囲で変化させたときの水溶液の粘度変化を測定したところ、図1の曲線C3で示されるように、粘度変化にヒステリシスは見られなかった。また、変性デキストランの疎水性基含有量は、14.3モル%であった。
重量平均分子量(Mw)が10000であるデキストランを使用した以外は、実施例1と同様にして分離材の作製及び評価を行った。変性デキストランの4質量%水溶液について、温度を20〜80℃の範囲で変化させたときの水溶液の粘度変化を測定したところ、粘度変化にヒステリシスは見られなかった。また、変性デキストランの疎水性基含有量は、14.1モル%であった。
変性デキストランに代えて重量平均分子量が10000であるポリビニルアルコール(PVA)を使用した以外は、実施例1と同様にして分離材の作製及び評価を行った。ポリビニルアルコールの4質量%水溶液について、温度を20〜80℃の範囲で変化させたときの水溶液の粘度変化を測定したところ、粘度変化にヒステリシスは見られなかった。
変性デキストランに代えて重量平均分子量が10000である変性アガロースを使用した以外は、実施例1と同様にして分離材の作製及び評価を行った。変性デキストランの4質量%水溶液について、温度を20〜80℃の範囲で変化させたときの水溶液の粘度変化を測定したところ、粘度変化にヒステリシスが見られた。
市販のアガロース粒子(Capto DEAE、GEヘルスケア、「多孔質ポリマ粒子2」という)を分離材として使用して、実施例1と同様にして分離材の評価を行った。
Claims (12)
- 多孔質ポリマ粒子と、該多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部を被覆する、重量平均分子量が40000以上の多糖類又はその変性体を含む被覆層と、を備え、
前記多糖類又はその変性体は、該多糖類又はその変性体の4質量%水溶液を調製したときに、20〜80℃の範囲での温度変化に対する前記水溶液の粘度変化においてヒステリシスを有さない、分離材。 - 前記多孔質ポリマ粒子がスチレン系モノマをモノマ単位として含む、請求項1に記載の分離材。
- 前記多糖類がデキストランである、請求項1又は2に記載の分離材。
- 前記多糖類又はその変性体が架橋されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分離材。
- 前記多孔質ポリマ粒子の平均粒径が10〜300μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分離材。
- 細孔径分布におけるモード径が0.01〜0.5μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分離材。
- 空隙率が40〜70体積%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の分離材。
- 比表面積が30m2/g以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の分離材。
- 前記多孔質ポリマ粒子の粒径の変動係数が5〜15%である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分離材。
- 前記多孔質ポリマ粒子1g当たり30〜500mgの前記被覆層を備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の分離材。
- カラムに充填した場合、カラム圧0.3MPaのときに通液速度が800cm/h以上である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の分離材。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載の分離材を備えるカラム。
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