JP2017193611A - ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】高い低発熱性を維持しつつ、100%伸長時のモジュラスに優れるゴム組成物、及び、空気入りタイヤの提供。【解決手段】ジエン系ゴムと、充填剤と、不飽和カルボン酸で形成される酸基を有する酸変性ポリオレフィンとを含有し、前記ジエン系ゴムが、カルボキシ基とニトロン結合とを有するニトロン化合物で形成される変性基を有する変性ジエン系ゴムを含み、前記変性ジエン系ゴムの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、5〜100質量部であり、前記酸変性ポリオレフィンの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜30質量部である、ゴム組成物、及び、ゴム組成物で形成される空気入りタイヤ。【選択図】図1

Description

本発明はゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
近年、空気入りタイヤには、高い強度、燃費を向上させる性能等が望まれている。
例えば、特許文献1には、ジエン系ゴム100重量部に対し、ポリオレフィン系樹脂を不飽和カルボン酸で変性した変性重合体を1〜50重量部配合してなるゴム組成物が記載されている。
特開平10−87900号公報
このようななか、特許文献1を参考にして、ジエン系ゴムと酸変性ポリオレフィンとを含有するゴム組成物を調製し評価したところ、このようなゴム組成物は、昨今要求されている、100%伸長時のモジュラス(M100)又は低発熱性のレベルを満足しない場合があることが明らかとなった。
そこで、本発明は高い低発熱性を維持しつつ、100%伸長時のモジュラスに優れるゴム組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、空気入りタイヤを提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ジエン系ゴムがカルボキシ基とニトロン結合とを有するニトロン化合物で形成される変性基を有する変性ジエン系ゴムを所定の範囲で含み、酸変性ポリオレフィンの含有量が所定の範囲であることによって所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
1. ジエン系ゴムと、充填剤と、不飽和カルボン酸で形成される酸基を有する酸変性ポリオレフィンとを含有し、
前記ジエン系ゴムが、カルボキシ基とニトロン結合とを有するニトロン化合物で形成される変性基を有する変性ジエン系ゴムを含み、
前記変性ジエン系ゴムの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、5〜100質量部であり、
前記酸変性ポリオレフィンの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜30質量部である、ゴム組成物。
2. 前記ニトロン化合物が、
N−フェニル−α−(4−カルボキシフェニル)ニトロン、
N−フェニル−α−(3−カルボキシフェニル)ニトロン、
N−フェニル−α−(2−カルボキシフェニル)ニトロン、
N−(4−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、
N−(3−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン及び
N−(2−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記1に記載のゴム組成物。
3. 前記酸変性ポリオレフィンの主鎖が、
エチレン、プロピレン、ブテン及びオクテンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンの重合体、並びに、
前記オレフィンと、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル系モノマーとの共重合体のうちの少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂である、上記1又は2に記載のゴム組成物。
4. 前記不飽和カルボン酸が、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸及びこれらの酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
5. 上記1〜4のいずれかに記載のゴム組成物で形成される空気入りタイヤ。
本発明のゴム組成物は、高い低発熱性を維持しつつ、100%伸長時のモジュラス(M100)に優れる。
本発明の空気入りタイヤは低燃費性、強靭性に優れる。
図1は、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図である。
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、成分が2種以上の物質を含む場合、上記成分の含有量とは、2種以上の物質の合計の含有量を指す。
本明細書において、本発明のゴム組成物について低発熱性及びM100のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。本発明の空気入りタイヤの効果(低燃費性及び強靭性)についても同様である。
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物(本発明の組成物)は、
ジエン系ゴムと、充填剤と、不飽和カルボン酸で形成される酸基を有する酸変性ポリオレフィンとを含有し、
前記ジエン系ゴムが、カルボキシ基とニトロン結合とを有するニトロン化合物で形成される変性基を有する変性ジエン系ゴムを含み、
前記変性ジエン系ゴムの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、5〜100質量部であり、
前記酸変性ポリオレフィンの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜30質量部である、ゴム組成物である。
本発明の組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
本発明の組成物に含有される酸変性ポリオレフィンは不飽和カルボン酸で形成される酸基を有する。また、変性ジエン系ゴムはカルボキシ基とニトロン結合とを有するニトロン化合物で形成される変性基を有する。つまり、変性ジエン系ゴムはカルボキシ基を有する。
このように、酸変性ポリオレフィンが酸基を有し、変性ジエン系ゴムがカルボキシ基を有することによって、充填剤の分散が優れると考えられる。充填剤の分散が優れることによって、本発明の組成物は低発熱性に優れると推測される。
また、酸変性ポリオレフィンが酸基を有し、変性ジエン系ゴムがカルボキシ基を有することによって、酸変性ポリオレフィンがジエン系ゴムに分散しやすくなり、これが更に充填剤の分散に寄与すると考えられる。
さらに、酸変性ポリオレフィンが酸基を有し、変性ジエン系ゴムがカルボキシ基を有することによって、酸変性ポリオレフィンと変性ジエン系ゴムとの間で相互作用又は反応が可能となり、これによって、本発明の組成物はM100に優れると推測される。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
<ジエン系ゴム>
本発明において、ジエン系ゴムは、カルボキシ基とニトロン結合とを有するニトロン化合物で形成される変性基を有する変性ジエン系ゴムを少なくとも含む。ジエン系ゴムの一部又は全部が変性ジエン系ゴムであればよい。
<変性ジエン系ゴム>
ジエン系ゴムに含まれる、変性ジエン系ゴムは、カルボキシ基とニトロン結合とを有するニトロン化合物で形成される変性基を有する、ジエン系ゴムである。
<変性基>
本発明において、変性ジエン系ゴムが有する変性基は、カルボキシ基とニトロン結合とを有するニトロン化合物で形成される。
変性基は、ニトロン化合物と二重結合によって形成されることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
変性基としては、例えば、下記式(N−1)又は式(N−2)で表される基が挙げられる。
式(N−1)中、R11、R12はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。炭化水素基としては例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状若しくは環状を含む)、芳香族炭化水素基、又はこれらの組合せが挙げられる。炭化水素基は不飽和結合を有してもよい。炭化水素基は、芳香族炭化水素基であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環が挙げられる。
m、nはそれぞれ独立に0〜4であることが好ましい。m+nは1以上である。m+nは4以下であることが好ましい。
*11及び*12は結合点を表す。*11−CH−CH−*12の−CH−CH−は変性ジエン系ゴムの主鎖の一部を表す。上記−CH−CH−は*11および*12で主鎖の他の部分に結合することができる。
式(N−2)中、R21、R22はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。炭化水素基は式(N−1)のR11、R12としての炭化水素基と同様である。
m、nはそれぞれ独立に0〜4であることが好ましい。m+nは1以上である。m+nは4以下であることが好ましい。
*21は結合点を表す。式(N−2)で表される基は*21で主鎖に側鎖として又は主鎖の末端に結合することができる。
(変性ジエン系ゴムの主鎖)
変性ジエン系ゴムが有する主鎖はジエン系ゴムであれば特に制限されない。変性ジエン系ゴムの主鎖を構成するジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(例えば、Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)が挙げられる。なかでも、本発明の効果により優れ、耐摩耗性に優れるという観点から、ブタジエンゴムがより好ましい。
変性ジエン系ゴムは変性基の他に更に二重結合(例えば、ビニレン基、ビニル基)を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
<ニトロン化合物>
本発明において、変性ジエン系ゴムの変性基を構成するニトロン化合物は、カルボキシ基とニトロン結合とを有する化合物である。ニトロン結合は二重結合を反応して五員環を形成することができる。
1分子のニトロン化合物が有するカルボキシ基は1〜4個であることが好ましい。
ニトロン結合は下記式(1)で表される基である。
式(1)中、*は結合点を表す。
カルボキシ基とニトロン結合とは炭化水素基を介して結合することが好ましい態様の1つとして挙げられる。炭化水素基は式(N−1)のR11、R12としての炭化水素基と同様である。
ニトロン化合物としては、例えば、下記式(3−1)で表されるN−フェニル−α−(4−カルボキシフェニル)ニトロン、下記式(3−2)で表されるN−フェニル−α−(3−カルボキシフェニル)ニトロン、下記式(3−3)で表されるN−フェニル−α−(2−カルボキシフェニル)ニトロン、下記式(3−4)で表されるN−(4−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、下記式(3−5)で表されるN−(3−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、および、下記式(3−6)で表されるN−(2−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。

(変性ジエン系ゴムの製造方法)
変性ジエン系ゴムはその製造方法について特に制限されない。例えば、原料ジエン系ゴムと、カルボキシ基とニトロン結合とを有するニトロン化合物とを反応させることによって製造することができる。
変性ジエン系ゴムの製造方法に使用されるニトロン化合物は上記と同様である。
変性ジエン系ゴムの製造に使用される原料ジエン系ゴムは、変性ジエン系ゴムの主鎖を構成するジエン系ゴムと同様である。
原料ジエン系ゴムとニトロン化合物とを、例えば100〜200℃の条件下で混合することによって反応させることができる。
ニトロン化合物の使用量は、原料ジエン系ゴム100質量部に対して、0.3〜10質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。
変性ジエン系ゴムは未変性のニトロン化合物を含んでもよい。
本発明において、原料ジエン系ゴムが有する二重結合全量に対する変性ジエン系ゴムが有する変性基の百分率(モル基準)、又は、変性ジエン系ゴムが有する二重結合と変性基との合計量に対する上記変性基の百分率(モル基準)を、変性ジエン系ゴムの変性率(又は単に変性率)という。
変性ジエン系ゴムの変性率は、変性ジエン系ゴムが有する二重結合と変性基との合計(又は、原料ジエン系ゴムが有する二重結合全量)に対して、0.02〜4.0モル%であることが好ましく、0.1〜4.0モル%がより好ましい。
本発明において、変性率は、例えば、原料ジエン系ゴムおよび変性ジエン系ゴムの1H−NMR(nuclear magnetic resonance)測定を行うことで求めることができる。具体的には、原料ジエン系ゴム及び変性ジエン系ゴムについて、CDCl3を溶媒とした1H−NMR測定(CDCl3、400MHz、標準物質テトラメチルシラン:TMS)を行い、8.08ppm付近(カルボキシ基に隣接するプロトンに帰属する。具体的には例えば、カルボキシ基を有するベンゼン環において、上記カルボキシ基に隣接する、ベンゼン環上の2つのプロトンに帰属する)のピーク面積を測定して、変性率を算出した。
変性ジエン系ゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、ジエン系ゴムが、変性ジエン系ゴムと変性ジエン系ゴム以外のジエン系ゴムとを含有する場合、変性ジエン系ゴム以外のジエン系ゴムは特に制限されない。例えば、変性ジエン系ゴムの主鎖を構成するジエン系ゴムと同様の種類のジエン系ゴムが挙げられる。変性ジエン系ゴム以外のジエン系ゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、変性ジエン系ゴムの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、5〜100質量部である。この範囲である場合、所定の効果に優れ、加工性に優れる。変性ジエン系ゴムの含有量は、本発明の効果により優れ、加工性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましく、30〜100質量部がより好ましい。
<充填剤>
本発明のゴム組成物に含有される充填剤は、特に制限されない。例えば、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群から選ばれる少なくとも1種とすることができる。
(カーボンブラック)
充填剤としてのカーボンブラックは特に制限されない。例えば、ゴム組成物に一般的に使用することができるカーボンブラックと同様のものが挙げられる。具体的には例えば、SAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEF、GPE、SRF等が挙げられる。なかでも、SAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEFが好ましい。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、ゴム組成物の加工性により優れるという観点から、30〜250m2/gであることが好ましく、40〜240m2/gがより好ましい。
ここで、N2SAは、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K 6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
カーボンブラックはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(白色充填剤)
充填剤としての白色充填剤は特に制限されない。例えば、ゴム組成物に一般的に使用することができるものと同様のものが挙げられる。具体的には例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等が挙げられる。なかでも、シリカが好ましい。
・シリカ
シリカとしては、例えば、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。
シリカは、シリカの凝集を抑制する観点から、CTAB吸着比表面積が50〜300m2/gであることが好ましく、80〜250m2/gがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面への臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
白色充填剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
充填剤の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、10〜150質量部であることが好ましく、25〜150質量部がより好ましく、40〜120質量部が更に好ましい。
カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0〜120質量部が好ましく、20〜70質量部がより好ましい。
白色充填剤の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0〜120質量部が好ましく、20〜100質量部がより好ましい。
充填剤としてカーボンブラック及び白色充填剤を併用する場合、カーボンブラックと白色充填剤との合計含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、10〜150質量部であることが好ましく、25〜120質量部がより好ましい。この場合、白色充填剤の含有量は、カーボンブラックと白色充填剤との合計含有量に対して、50〜95質量%であることが好ましい。
<酸変性ポリオレフィン>
本発明の組成物に含有される酸変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸で形成される酸基を有し、主鎖としてポリオレフィンを有するポリマーである。
<酸基>
酸変性ポリオレフィンが有する酸基は不飽和カルボン酸で形成される。
不飽和カルボン酸は、不飽和結合とカルボキシ基とを有する化合物であれば特に制限されない。カルボキシ基は酸無水物基であってもよい。
不飽和カルボン酸としては例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸及びこれらの酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
酸基としては、例えば、下記式(S−1)で表される基が挙げられる。
式(S−1)中、*は結合点を表す。
(酸変性ポリオレフィンの主鎖)
酸変性ポリオレフィンの主鎖はポリオレフィン骨格であれば特に制限されない。
酸変性ポリオレフィンの主鎖は、本発明の効果により優れ、加工性に優れるという観点から、
エチレン、プロピレン、ブテン及びオクテンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンの重合体(ホモポリマー、コポリマーを含む。)、並びに、
前記オレフィンと、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル系モノマーとの共重合体のうちの少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成するアルキル基は特に制限されない。例えば、直鎖状、分岐状、環状又はこれらの組合せが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基のような炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンの主鎖としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリオクテン、これらの相互共重合体(例えば、プロピレン−エチレン共重合体);エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体が挙げられる。なかでも、本発明の効果により優れ、加工性に優れるという観点から、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
酸変性ポリオレフィンの融点は、本発明の効果により優れ、加工性に優れる点で、60〜160℃であることが好ましく、90〜150℃がより好ましい。
本発明において、融点は、ASTM D3418に準じて示差走査熱量測定(DSC)により、10℃/minの昇温速度で測定された。
酸変性ポリオレフィンはその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
酸変性ポリオレフィンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、酸変性ポリオレフィンの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜30質量部である。この範囲である場合、所望の効果に優れ、加工性に優れる。酸変性ポリオレフィンの含有量は、本発明の効果により優れ、加工性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましく、2.5〜15質量部がより好ましい。
(その他の成分)
本発明のゴム組成物は、目的、効果を損なわない範囲で必要に応じてその他の成分(添加剤)を更に含有することができる。添加剤としては、例えば、ジエン系ゴム及び酸変性ポリオレフィン以外の重合体;シランカップリング剤、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、ステアリン酸のような加硫促進助剤、加硫遅延剤、オイル、老化防止剤、可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されうるものが挙げられる。添加剤の含有量は適宜選択することができる。
・シランカップリング剤
本発明のゴム組成物は、本発明の効果がより優れるという観点から、更にシランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤は特に制限されない。なかでも硫黄原子を有するシランカップリング剤(含硫黄シランカップリング剤)が好ましい態様の1つとして挙げられる。
含硫黄シランカップリング剤は、硫黄原子を有するシランカップリング剤であれば特に制限されない。例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(エボニック・デグサ社製Si69)、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのようなポリスルフィド系シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−[エトキシビス(3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタコサン−1−イルオキシ)シリル]−1−プロパンチオール(エボニック・デグサ社製Si363)のようなメルカプト系シランカップリング剤;3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランのようなチオカルボキシレート系シランカップリング剤;3−チオシアネートプロピルトリエトキシシランのようなチオシアネート系シランカップリング剤が挙げられる。
なかでも、ポリスルフィド系シランカップリング剤が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
シランカップリング剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
シランカップリング剤として、上記シランカップリング剤の1種又は2種以上を予め縮合したものを使用してもよい。シランカップリング剤を縮合する方法は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
本発明において、シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、1〜25質量部であることがより好ましい。
本発明のゴム組成物はその製造方法について特に制限されない。例えば、ジエン系ゴム、充填剤、酸変性ポリオレフィン及び必要に応じて使用することができる添加剤を混合することによって製造することができる。
本発明のゴム組成物の製造方法としては、具体的には例えば、ジエン系ゴムと、充填剤と、酸変性ポリオレフィンと、必要に応じて使用することができる添加剤とを、酸変性ポリオレフィンの融点以上の条件下において、混合することによって、本発明のゴム組成物を製造する方法が挙げられる。
混合する際の温度(混合温度)は、加工性に優れるという観点から、酸変性ポリオレフィンの融点以上であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンの融点を超える温度がより好ましい。
混合する際の温度(混合温度)は、170℃以下とすることができる。
また、加硫剤、加硫促進剤等のような加硫系成分以外の成分を予め混合し、これに加硫系成分を加えてもよい。
このとき、上記の予め混合する際の混合温度を、上記の混合温度と同様とすることが好ましい態様の1つとして挙げられる。上記の加硫系成分を加えた後混合する際の混合温度は特に制限されない。酸変性ポリオレフィンの融点未満であってもよい。
上記成分を混合する際に使用される装置は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
本明細書において混合は混練を含むものとする。
本発明の組成物を加硫又は架橋させる方法又は条件は特に制限されない。例えば、従来と同様の方法又は条件が挙げられる。
[空気入りタイヤ]
次に、本発明の空気入りタイヤについて説明する。
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明のゴム組成物で形成される空気入りタイヤである。
本発明の空気入りタイヤに使用されるゴム組成物は本発明のゴム組成物であれば特に制限されない。
ゴム組成物を空気入りタイヤを構成する構造部材に使用することができる。
構造部材としては、例えば、タイヤトレッド部、サイドウォール部、ビード部、カーカス層、ベルト層が挙げられる。
なかでも、タイヤトレッド部を本発明のゴム組成物で形成することが好ましく、キャップトレッド及びアンダートレッドからなる群から選ばれる少なくとも1種を本発明のゴム組成物で形成することがより好ましく、キャップトレッドがさらに好ましい。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示す。なお本発明は添付の図面に限定されない。
図1において、空気入りタイヤは、ビード部1、サイドウォール部2及びタイヤトレッド部3を有する。左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
本発明の空気入りタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、例えば、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<ゴム組成物の製造>
下記各表に示す各成分を各同表に示す組成(質量部)で用いてゴム組成物を製造した。
具体的には、まず、各表に示す成分のうち加硫系成分(硫黄および含硫黄加硫促進剤)を除く成分を、各表に示す混合温度1の条件下で接線式ミキサーで約3分30秒間混練して混合物を得た。次に、上記混合物に上記加硫系成分を加え、これらを各表に示す混合温度2の条件下でオープンロールで混練し、ゴム組成物を製造した。
<評価>
上記のとおり製造されたゴム組成物を用いて以下の評価を行った。結果を各表に示す。評価結果は、下記各表の標準例の値を100とする指数で表した。
(加硫ゴム試験片の調製)
上記のとおり製造されたゴム組成物を所定の金型中で160℃で15分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。
・所定伸び引張応力(Se):(100%モジュラスの指標)
上記のとおり調製した加硫ゴム試験片からJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251:2010に準拠して行い、100%伸長時における引張応力(M100)を室温にて測定した。
M100の指数が大きいほど応力が大きく、モジュラスが高いことを意味する。
・低発熱性:tanδ(60℃)
上記のとおり調製した加硫ゴム試験片について、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、損失正接tanδ(60℃)を測定した。
tanδ(60℃)の指数が小さいほど、低発熱性に優れることを意味する。
上記第1表〜第3表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:天然ゴム、NUSIRA SIR20
・BR:ブタジエンゴム、Nipol BR 1220(日本ゼオン社製)
・変性ジエン系ゴム1(変性BR)
変性ジエン系ゴムを1以下のとおり製造した。
(ニトロン化合物1の合成)
2Lナスフラスコに、40℃に温めたメタノール(900mL)を入れ、ここに、下記式(b−1)で表されるテレフタルアルデヒド酸(30.0g)を加えて溶かした。この溶液に、下記式(a−1)で表されるフェニルヒドロキシアミン(21.8g)をメタノール(100mL)に溶かしたものを加え、室温で19時間撹拌した。撹拌終了後、メタノールからの再結晶により、下記式(c−1)で表されるニトロン化合物(カルボキシニトロン、CPN)を得た(41.7g)。収率は86%であった。得られたニトロン化合物をニトロン化合物1とする。ニトロン化合物1の分子量は241である。
(変性ジエン系ゴム1の製造)
原料BR100質量部[ブタジエンゴム、日本ゼオン社製NIPOL BR 1220、重量平均分子量5.0×105]と上記のとおり製造したニトロン化合物1(2質量部)とをミキサーで160℃の条件下で5分間混合することで、上記原料BRをニトロン化合物1で変性した変性ジエン系ゴム1を得た。
原料BRが有する二重結合全量のうちの0.5モル%がニトロン化合物1によってカルボキシ基に変性された(つまり変性ジエン系ゴム1の変性率:0.5モル%)。
・酸変性ポリオレフィン1:無水マレイン酸変性高密度ポリエチレン(アドマーHE810、三井化学社製)、融点130℃、密度0.96g/cm3
・酸変性ポリオレフィン2:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(商品名アドマーQE060、三井化学社製)、融点140℃、密度0.90g/cm3
・カーボンブラック:ショウブラックN550(昭和キャボット社製)、N2SA42m2/g
・シリカ:湿式シリカ(ニップシールAQ、CTAB吸着比表面積170m2/g、日本シリカ社製)
・シランカップリング剤:Si69(エボニックデグッサ社製)
・酸化亜鉛:亜鉛華3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ステアリン酸(日本油脂社製)
・老化防止剤(S−13):N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(アンチゲン6C、住友化学社製)
・ワックス:大内新興化学社製サンノック
・オイル:エクストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・硫黄:油処理硫黄(軽井沢精錬所社製)
・含硫黄加硫促進剤(CZ):N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(サンセラーCM−PO、三新化学工業社製)
第1表に示す結果から明らかなように、変性ジエン系ゴムを含まない比較例I−1は、M100が低く、低発熱性に劣った。変性ジエン系ゴムを含まない比較例I−2は、低発熱性に劣った。
酸変性ポリオレフィンを含有しない比較例I−3は、M100が低かった。
酸変性ポリオレフィンの含有量が所定の範囲を外れる比較例I−4は加工性が悪く、M100及びtanδ(60℃)を測定できなかった。
これに対して、第1表において、本発明のゴム組成物は、高い低発熱性を維持しつつ、100%伸長時のモジュラスに優れた。また、本発明のゴム組成物は、均一な混合物となり、加工性に優れた。
実施例I−1〜2を比較すると、酸変性ポリオレフィンの量が多いほど、100%伸長時のモジュラスにより優れた。
第2表に示す結果から明らかなように、変性ジエン系ゴムを含まない比較例II−1は、M100が低く、低発熱性に劣った。変性ジエン系ゴムを含まない比較例II−2は、低発熱性に劣った。
酸変性ポリオレフィンを含有しない比較例II−3は、M100が低かった。
酸変性ポリオレフィンの含有量が所定の範囲を外れる比較例II−4は加工性が悪く、M100及びtanδ(60℃)を測定できなかった。
これに対して、第2表において、本発明のゴム組成物は、高い低発熱性を維持しつつ、100%伸長時のモジュラスに優れた。また、本発明のゴム組成物は、均一な混合物となり、加工性に優れた。
実施例II−1〜2を比較すると、酸変性ポリオレフィンの量が多いほど、100%伸長時のモジュラスにより優れた。
第3表に示す結果から明らかなように、変性ジエン系ゴムを含まない比較例III−1は、M100が低く、低発熱性に劣った。変性ジエン系ゴムを含まない比較例III−2は、低発熱性に劣った。
酸変性ポリオレフィンを含有しない比較例III−3は、M100が低かった。
酸変性ポリオレフィンの含有量が所定の範囲を外れる比較例III−4は加工性が悪く、M100及びtanδ(60℃)を測定できなかった。
これに対して、第3表において、本発明のゴム組成物は、高い低発熱性を維持しつつ、100%伸長時のモジュラスに優れた。また、本発明のゴム組成物は、均一な混合物となり、加工性に優れた。
実施例III−1〜2を比較すると、酸変性ポリオレフィンの量が多いほど、100%伸長時のモジュラスにより優れた。
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション

Claims (5)

  1. ジエン系ゴムと、充填剤と、不飽和カルボン酸で形成される酸基を有する酸変性ポリオレフィンとを含有し、
    前記ジエン系ゴムが、カルボキシ基とニトロン結合とを有するニトロン化合物で形成される変性基を有する変性ジエン系ゴムを含み、
    前記変性ジエン系ゴムの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、5〜100質量部であり、
    前記酸変性ポリオレフィンの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜30質量部である、ゴム組成物。
  2. 前記ニトロン化合物が、
    N−フェニル−α−(4−カルボキシフェニル)ニトロン、
    N−フェニル−α−(3−カルボキシフェニル)ニトロン、
    N−フェニル−α−(2−カルボキシフェニル)ニトロン、
    N−(4−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、
    N−(3−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン及び
    N−(2−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記酸変性ポリオレフィンの主鎖が、
    エチレン、プロピレン、ブテン及びオクテンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンの重合体、並びに、
    前記オレフィンと、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル系モノマーとの共重合体のうちの少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
  4. 前記不飽和カルボン酸が、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸及びこれらの酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物で形成される空気入りタイヤ。
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