JP2017190472A - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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この問題を解決するためには、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を溶融亜鉛めっき鋼板と同じ高Al濃度のめっき浴で製造すればよい。
たとえば、P含有量の増加に伴い鋼板の強度は増加するが、合金化溶融亜鉛めっき鋼板製造時の合金化速度が遅くなる。Si、Mn等の元素を含む場合も同様な傾向がある。従来、このような場合は、製造ラインの通板速度を遅くし、あるいは合金化の温度を高くすることによって対応していた。しかし、生産性の維持、めっき層の加工性確保などの観点から通板速度・合金化温度による調整には限界があり、様々な材質のニーズには答えることが難しくなっている。
特許文献2、3に記載されるように、Cr単独でも合金化反応は促進可能であるが、Cr単独で効果を得るには自動車用防錆鋼板としての品質問題が生じる。しかし、Mgを同時に添加することにより、添加するCrの濃度を自動車用防錆鋼板として品質、特に化成処理に悪影響がない濃度まで低下させることを可能としたことが、本発明の特徴である。
P、Si、Mnなどを多く含む鋼板は強度、加工性などの特性に優れるが、合金化溶融亜鉛めっき鋼板製造時の合金化速度が遅くなる傾向が強い。そのため、通板速度を低下させるか、合金化の際の加熱温度を高くすることによって対応することが多い。しかし、前者は生産性の低下、後者は鋼板の材質上またはめっき層の加工性などの品質上の問題を生じることがある。
その結果、加工性への影響は、Crが0.1%以下では確認できなかった。化成処理への影響は、Crが0.015%から燐酸塩結晶が大きくなるなどの悪影響が確認され、0.030%以上で塗装後の耐食性に明確に影響が出るレベルに化成処理皮膜の特性が低下した。このため、現在多く用いられている0.12〜0.14%のAlを含むめっき浴においては、めっき浴へのCr単独での添加量は、0.007%以上0.020%以下程度の範囲が想定される。なお、裸耐食性は、自動車用鋼板としての用途外であり、ここでは考慮していない。
実際には、0.010%のCrと1.5%のMgを添加することにより、その他の条件にもよるが、合金化速度は1.1倍以上になり、明らかな促進効果が得られる。
各元素の存在状態としては、Crはめっき直後にはめっき層と鋼の界面に濃化して存在し、他の4元素はめっき直後からめっき層全体にほぼ均一に存在する。しかし、合金化後には、5元素すべてが合金層内にほぼ均等に分散して存在する。なお、5元素とも、めっき直後、合金化後にめっき最表面に極微量が濃化している場合もあるが、濃化層は極薄く厚さのばらつきも大きいため、高感度分析をもってしても定量は困難である。
各元素の存在量としては、合金化亜鉛めっきにおいては、めっき層に鋼からFeが7%〜14%程度拡散してめっき浴の成分は希釈される。このため、これらの添加元素のめっき層中の平均存在量は、Mg、Ti、Ca、Srはめっき浴濃度の0.8倍〜1.0倍程度となる。よって、合金層中のMg濃度は0.3%〜4.0%の範囲であり、多くの場合は0.4%〜3.0%となる。Ca、Sr、Tiは単独または合計で、0.003%〜0.040%の範囲であり、多くの場合は0.004%〜0.030%となる。
なお、Crはめっき直後には界面に濃化するため、合金化後の合金層中濃度は経験的にめっき浴濃度の2倍〜15倍程度になる。これは、通板速度などのめっき条件がめっき初期反応に影響し、Crの界面濃化量が異なるためである。このため、合金層中のCr濃度には幅があり、0.01%〜0.50%の範囲であり、多くの場合0.02%〜0.38%である。しかし、めっき浴浸漬時間、浴温度、鋼種などのめっき条件を揃えれば、めっき初期のCrの界面への濃化度の変動は小さくなる。このため、製造条件、めっき浴の分析結果、めっき層の分析結果の蓄積があれば、製品のめっき層を調べるだけでめっき浴の添加元素の濃度を類推することが可能である。
Mgについては、異なる浴組成の試験で、生成したFe2Al5合金の溶解速度を大きくしている可能性があることがわかった。このため、MgはAlバリア層の生成には大きな影響はないが、めっき後の合金化過程の初期におけるAlバリア層の破壊を促進することにより、合金化を促進するものと考えている。ただし、Crが存在する場合にMgの効果が明確になることについては、その原因は明らかではない。
このため、めっき鋼板、あるいはめっき浴のインゴットをそのまま通常のGDS(グロー放電−発光分析)分析や、まためっき成分を溶解して溶液のICP分析、原子吸光分析では、各元素の濃度が本発明で規定する範囲内にあっても、分析は半定量分析、または元素の存在の確認をすることにとどまる場合がある。
正確な定量分析が必要となる場合には、GD−MS(グロー放電−質量分析)、またはICP−MS(高周波誘導結合プラズマ−質量分析)を用いるとよい。質量分析法は、0.001%以下の正確な定量が可能であり、他元素の妨害も少ないためである。特にGD−MS法は、めっき層中の元素分布を知ることができる。めっき浴に添加された元素であれば、合金化後にはめっき層全体に存在するため、GD−MS法で分析することにより、後処理、またはコンタミ等により表面に付着した場合と明確に区別できる。
またSi、Mnを含む高張力鋼板、BH鋼板についても同様の試験を行った。
いずれも板厚は0.8mmの冷延鋼板である。
試験に用いた鋼材の成分を表1に示す。
すべて同じ通板速度でめっき−合金化し、焼鈍温度に関しては、高張力鋼板は800−820℃、比較材は780−800℃とした。
製造条件と評価結果を表2及び表3に示す。
[合金化]
目視外観とめっき層中Fe%で判断した。
目視外観の△は外観不均一、Xは未アロイ(合金化不完全)を表す。
[めっき密着性]
60度V曲げ試験を行い、曲げ戻し後のテープ剥離幅で評価した。
○は剥離幅4mm以下、△は剥離幅4−7mm、Xは剥離幅7mm超(不可)である。
[化成処理性]
一般の浸漬型の化成処理を行い、皮膜量測定と結晶性状の観察を行った。
結晶性状のXは結晶性状に変化、または問題がある場合を示す。
[耐食性]
化成処理−電着塗装後に、カッターナイフで鋼材まで達するX状のスクラッチ疵を入れてJASO試験(M409−91)を行ない、最大膨れ幅を観察した。
[浴安定性]
浴温を実生産時よりも高い480℃に設定し、48時間静置した場合のめっき浴の表面の変化を観察した。Zn−0.013%Al浴と明確な差異を確認した場合にXとした。
なお、本発明のめっき浴へのCr+Mg添加は、現状のAl濃度を変更しないで、純粋に生産性向上の立場から条件設定をしたものであり、実施例は、そのうちの多くの例が、合金化が原因で生産性低下をきたしている鋼種の合金化速度の向上効果の例を記したものである。Al濃度を高めに設定し、Al濃度変更による合金化速度低下をCr+Mg添加により補い、生産性向上よりもボトムドロス量の低減を試みた実施例が44と48である。長期連続試験は行っていないが、短期の試験でもボトムドロスの減少が確認されている。 比較例41は、めっき浴にCr、Mgに加えて、0.002%のNiとCuを、添加した例であり、化成処理性が悪化していることがわかる。
表4は、実施例のめっき層組成を抜粋して示したものである。
その他、実施例に記載はないが、例えばSPHCなどの一般熱延材など、焼鈍過程でなく、合金化過程が律速となっている場合の合金化速度向上などに本技術を用いることが可能である。
Claims (4)
- Alを0.13質量%以上含有する440℃〜480℃の溶融亜鉛めっき浴を用いる合金化溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法であって、めっき浴にCrを0.010質量%以上0.025質量%以下、Mgを0.7質量%以上3.0質量%以下含有することを特徴とする、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- さらに、上記めっき浴にCa、Sr、Tiから選択される元素の1種又は2種以上を合計で、0.005質量%以上0.030質量%以下添加したことを特徴とする請求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- めっき層成分が、0.10質量%以上1.00質量%以下のAl、6.0質量%以上16.0質量%以下のFe、及び0.01質量%以上0.50質量%以下のCrと0.4質量%以上4.0質量%以下のMg及び残部がZn及びPb、Cd等の不可避的不純物からなり、不純物のCu、Ni、Coがすべて0.001質量%未満であることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに上記めっき層内に、Ca、Sr、Tiから選択される元素の1種又は2種以上を合計で、0.003質量%以上0.40質量%以下含むことを特徴とする請求項3に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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