JP2017186601A - 製鋼工程における溶鋼温度制御の支援方法、装置及びプログラム - Google Patents

製鋼工程における溶鋼温度制御の支援方法、装置及びプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】操業スケジュールの変更を行わずに、かつ、温度制約を適切に緩和しながら、取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、及び2次精錬終了時の狙い温度指示値を提示できるようにする。
【解決手段】取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値TLD、2次精錬開始時の狙い温度指示値TRHS、2次精錬終了時の狙い温度指示値TRHE、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCS、及び各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHEそれぞれの上下限制約に対する制約違反量の絶対値を表わす変数miを決定変数とし、また、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSと目標温度TCCS *との差の絶対値と、制約違反量を表わす変数miに非負値をとる重み係数Wiを乗じた値の和とを含む関数を目的関数とする線形計画問題として、重み係数Wiの複数の組み合わせについて目的関数の最適解を算出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、1次精錬炉での1次精錬、1次精錬後に取鍋に溶鋼を出鋼してからの2次精錬、及び連続鋳造を行う製鋼工程における溶鋼温度制御の支援方法、装置及びプログラムに関する。
製鋼工場での製鋼工程では、電気炉又は転炉等の1次精錬炉から吹錬完了後、取鍋に溶鋼を出鋼し、取鍋に溶鋼を満たしたままRH脱ガス装置又は取鍋精錬装置(LF)等の2次精錬設備により精錬処理を行い、連続鋳造機に搬送して鋳片を製造する。
製鋼工程においては、予め転炉吹錬開始前に定めた操業スケジュール、製造材質(鋼種)に関する合金投入及び2次精錬の条件設定値を用いて、連続鋳造開始時の溶鋼温度が目標温度となるように、取鍋に出鋼した溶鋼が連続鋳造で鋳造されるまでの間の、取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、及び2次精錬終了時の狙い温度指示値を、転炉吹錬前に決定する。
狙い温度指示値の決定方法には、鋼種や操業方法ごとに詳細な条件表を基に決定する方法や、溶鋼温度の処理間及び処理中の変化を処理間の取鍋搬送時間及び2次精錬処理中の操業条件実績データから回帰式で表わすモデルで表現し、そのモデルを基に数理計画法等の最適化手段により決定する方法等がある。
通常は、一連の処理(以下、取鍋ごとにチャージと呼ぶ)について、鋼種ごとに、取鍋への出鋼完了時の溶鋼温度の上下限制約、2次精錬開始時の溶鋼温度の上下限制約、及び2次精錬終了時の溶鋼温度の上下限制約が定められており、各狙い温度指示値は、これらの温度制約を守るように決定されなければならない。
しかしながら、転炉吹錬前に定められる2次精錬開始及び連続鋳造開始のスケジュールが適切でない場合には、上記温度制約を守る狙い温度指示値を決定することができないことがある。そのため、取鍋への出鋼後の冷材投入、2次精錬における昇温処理又は冷材投入等の温度調整処理が必要になることがある。或いは、狙い温度指示値通りの操業をした場合には、連続鋳造中の溶鋼温度が過度に高温となるため鋳造速度を当初の予定速度より低下させざるを得なかったり、過度に低温となるため鋳造を早期に打切らざるを得なかったりする等、操業の途中変更が生じることがある。
このような課題は、従来、溶鋼温度と操業スケジュールを同時に最適化することで解決が図られてきた。
特許文献1では、少なくとも1基以上の転炉、少なくとも1基以上の2次精錬設備、及び、少なくとも1基以上の連続鋳造機を用いた製鋼プロセスにおける操業スケジュールを作成する方法であって、対象期間における複数のチャージの操業予定情報を読み込む、予定情報読込工程と、前記複数のチャージのうち既に各設備における処理を開始しているチャージがある場合に、該処理を開始しているチャージの処理開始実績時刻または処理終了実績時刻に関する操業実績情報を読み込む、実績情報読込工程と、前記操業予定情報及び前記操業実績情報に基づいて、制約条件として、少なくとも、処理を実施する各設備における処理開始時刻及び処理終了時刻の条件、及び、各設備の開始時及び終了時における溶鋼温度の条件を生成する、制約条件生成工程と、連続鋳造機における溶鋼温度により計算される指標を含む目的関数を生成する、目的関数生成工程と、前記制約条件のもとで、前記目的関数を最大化又は最小化するようなスケジュールを決定する、最適スケジュール決定工程と、を備える、操業スケジュール作成方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1の手法は、溶鋼温度の制約を満たすために操業スケジュールを変更するものであるといえる。転炉吹錬開始前に2次精錬以降の操業スケジュールが確定する場合、特許文献1のように2次精錬開始時刻や連続鋳造開始時刻を変更することができない。
したがって、操業及び品質上許容できる範囲で温度制約を緩和して操業可能な目標温度経路を立案することが求められ、制約条件を完全に満たさなくても次善の解を提示することが重要である。
また、特許文献2では、LP法(線形計画法)による計算で得られるLP解を使用していくつかの加熱制約条件の下で加熱炉の各帯炉を個々に制御し、燃料消費量を最少に保ちつつ、前記加熱炉内に装入された各スラブを目標抽出温度まで加熱させる加熱炉スラブ温度制御装置において、前記加熱制約条件に優先順位を持たせて格納した加熱制約条件格納部と、LP法による計算を行っても、全ての加熱制約条件を満たす最適なLP解が見つからないときには、前記加熱制約条件格納部に格納された加熱制約条件の中から優先順位が低い加熱制約条件を除き、再度LP法による計算を実行して最適なLP解を見つける演算部と、を備えたことを特徴とする加熱炉スラブ温度制御装置が開示されている。
しかしながら、特許文献2の手法は、LP解が得られるまでに制約条件を取り除く最短順序は事前には知ることができず、LP解が得られるまでに不必要に制約条件を取り除いてしまうおそれがある。
特開2014−36974号公報 特開2000−256734号公報
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、操業スケジュールの変更を行わずに、かつ、温度制約を適切に緩和しながら、取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値を提示できるようにすることを目的とする。
上記の課題を解決するための本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 1次精錬炉での1次精錬、1次精錬後に取鍋に溶鋼を出鋼してからの2次精錬、及び連続鋳造を行う製鋼工程における溶鋼温度制御の支援方法であって、
取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値、及び前記各狙い温度指示値それぞれの上下限制約からの外れ量の絶対値(制約違反量と呼ぶ)を表わす変数を決定変数とし、また、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値と目標温度との差の絶対値と、前記制約違反量を表わす変数に非負値をとる重み係数を乗じた値の和とを含む関数を目的関数とする線形計画問題として、
取鍋への出鋼完了から2次精錬開始までの溶鋼温度の降下量、2次精錬開始から2次精錬終了までの溶鋼温度の降下量、及び2次精錬終了から連続鋳造開始までの溶鋼温度の降下量を推定するモデルに基づく等式制約条件と、前記各狙い温度指示値が前記それぞれの上下限制約を前記制約違反量で緩和した範囲内に含まれることを表わす不等式制約条件とに基づいて、
前記重み係数の複数の組み合わせについて前記目的関数の最適解を算出する最適解算出ステップと、
前記最適解算出ステップで、前記重み係数の複数の組み合わせのそれぞれに対応して算出される最適解における取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値の複数の組み合わせを提示する提示ステップとを有することを特徴とする製鋼工程における溶鋼温度制御の支援方法。
[2] 前記重み係数の複数の組み合せは、前記重み係数をすべて0にする組み合せと、前記各狙い温度指示値ごとに一の狙い温度指示値の前記重み係数を他の狙い温度指示値の前記重み係数より十分大きくする組み合わせとを含むことを特徴とする[1]に記載の製鋼工程における溶鋼温度制御の支援方法。
[3] 前記重み係数の大きさを、前記上下限制約内に入ることを重視する狙い温度指示値に対しては1以上とし、前記上下限制約内に入ることを軽視する狙い温度指示値に対しては0.01以下とすることを特徴とする[2]に記載の製鋼工程における溶鋼温度制御の支援方法。
[4] 前記提示ステップは、前記最適解算出ステップで算出される最適解における取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値の複数の組み合わせを時間経過に対してプロットしたグラフを、前記それぞれの上下限制約、及び前記目標温度とともに描画して表示装置に画面表示することを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の製鋼工程における溶鋼温度制御の支援方法。
[5] 1次精錬炉での1次精錬、1次精錬後に取鍋に溶鋼を出鋼してからの2次精錬、及び連続鋳造を行う製鋼工程における溶鋼温度制御の支援装置であって、
取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値、及び前記各狙い温度指示値それぞれの上下限制約からの外れ量の絶対値(制約違反量と呼ぶ)を表わす変数を決定変数とし、また、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値と目標温度との差の絶対値と、前記制約違反量を表わす変数に非負値をとる重み係数を乗じた値の和とを含む関数を目的関数とする線形計画問題として、
取鍋への出鋼完了から2次精錬開始までの溶鋼温度の降下量、2次精錬開始から2次精錬終了までの溶鋼温度の降下量、及び2次精錬終了から連続鋳造開始までの溶鋼温度の降下量を推定するモデルに基づく等式制約条件と、前記各狙い温度指示値が前記それぞれの上下限制約を前記制約違反量で緩和した範囲内に含まれることを表わす不等式制約条件とに基づいて、
前記重み係数の複数の組み合わせについて前記目的関数の最適解を算出する最適解算出手段と、
前記最適解算出手段で、前記重み係数の複数の組み合わせのそれぞれに対応して算出される最適解における取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値の複数の組み合わせを提示する提示手段とを備えたことを特徴とする製鋼工程における溶鋼温度制御の支援装置。
[6] 1次精錬炉での1次精錬、1次精錬後に取鍋に溶鋼を出鋼してからの2次精錬、及び連続鋳造を行う製鋼工程における溶鋼温度制御を支援するためのプログラムであって、
取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値、及び前記各狙い温度指示値それぞれの上下限制約からの外れ量の絶対値(制約違反量と呼ぶ)を表わす変数を決定変数とし、また、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値と目標温度との差の絶対値と、前記制約違反量を表わす変数に非負値をとる重み係数を乗じた値の和とを含む関数を目的関数とする線形計画問題として、
取鍋への出鋼完了から2次精錬開始までの溶鋼温度の降下量、2次精錬開始から2次精錬終了までの溶鋼温度の降下量、及び2次精錬終了から連続鋳造開始までの溶鋼温度の降下量を推定するモデルに基づく等式制約条件と、前記各狙い温度指示値が前記それぞれの上下限制約を前記制約違反量で緩和した範囲内に含まれることを表わす不等式制約条件とに基づいて、
前記重み係数の複数の組み合わせについて前記目的関数の最適解を算出する最適解算出処理と、
前記最適解算出処理で、前記重み係数の複数の組み合わせのそれぞれに対応して算出される最適解における取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値の複数の組み合わせを提示する提示処理とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
本発明によれば、操業スケジュールの変更を行わずに、かつ、温度制約を適切に緩和しながら、取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値の複数の組み合わせを提示することができる。これにより、複数の組み合せの中から操業に適した各狙い温度指示値、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値の組み合せを、操業者の知見により選択することが可能となる。
実施形態に係る溶鋼温度制御の支援装置の機能構成を示す図である。 取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値の複数の組み合わせを提示する画面表示の例を示す図である。 実施形態に係る溶鋼温度制御の支援装置による溶鋼温度制御の支援方法を示すフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。本実施形態では、1次精錬炉として転炉、2次精錬装置としてRH脱ガス装置を使用する製鋼工程を想定するが、電気炉及びLF等を用いる場合にも本発明は適用可能である。
図1は、実施形態に係る溶鋼温度制御の支援装置100の機能構成を示す。
101は入力部であり、演算部102で線形計画問題を定式化し、それを解くのに必要な情報を入力する。
入力部101は、対象とするチャージについて、転炉吹錬開始前に定めた操業スケジュール、製造材質(鋼種)に関する合金投入及び2次精錬の条件設定値を入力する。これらの情報は、例えば操業者が入力装置104を用いて入力するようにしてもよいし、プロセスコンピュータ等の外部装置から受信するようにしてもよい。
また、入力部101は、取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値TLDの上限TLDU及び下限TLDL、2次精錬開始時の狙い温度指示値TRHSの上限TRHSU及び下限TRHSL、2次精錬終了時の狙い温度指示値TRHEの上限TRHEU及び下限TRHEL、連続鋳造開始時の溶鋼温度の目標温度TCCS *を入力する。これらの情報は、例えば操業者が入力装置104を用いて毎回入力するようにしてもよいし、例えば鋼種ごとに予め設定され、記憶装置に記憶されている値を選択して利用するようにしてもよい。
102は最適解算出手段として機能する演算部であり、詳細は後述するが、入力部101で入力される情報に基づいて線形計画問題を定式化し、それを解いて、取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値TLD、2次精錬開始時の狙い温度指示値TRHS、2次精錬終了時の狙い温度指示値TRHE、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSを求める。
ここで、各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHEがそれぞれの上下限制約(TLDU、TLDL)、(TRHSU、TRHSL)、(TRHEU、TRHEL)から逸脱した場合において、上限を超えた場合の上限からの外れ量の絶対値、下限を超えた場合の下限からの外れ量の絶対値を制約違反量と呼ぶ。
演算部102は、各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCS、及び各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHEそれぞれの上下限制約(TLDU、TLDL)、(TRHSU、TRHSL)、(TRHEU、TRHEL)に対する制約違反量を表わす変数miを決定変数とし、また、式(1)のように、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSと目標温度TCCS *との差の絶対値と、制約違反量を表わす変数miに非負値をとる重み係数Wiを乗じた値の和とを足し合わせた関数を目的関数zとする線形計画問題として定式化する。なお、iは識別番号であり、上限TLDU、下限TLDL、上限TRHSU、下限TRHSL、上限TRHEU、下限TRHELの順にi=1、・・・、6が与えられる。
z=|TCCS *−TCCS|+Σiii ・・・(1)
このとき、取鍋への出鋼完了から2次精錬開始までの溶鋼温度の降下量、2次精錬開始から2次精錬終了までの溶鋼温度の降下量、及び2次精錬終了から連続鋳造開始までの溶鋼温度の降下量を推定するモデルに基づく等式制約条件と、各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHEがそれぞれの上下限制約(TLDU、TLDL)、(TRHSU、TRHSL)、(TRHEU、TRHEL)を制約違反量で緩和した範囲内に含まれることを表わす不等式制約条件とに基づいて、重み係数Wiの複数の組み合わせについて目的関数zを最小化する最適解を算出する。
103は提示手段として機能する出力部であり、演算部102で算出される最適解における各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSの複数の組み合わせを出力する。
出力部103は、図2に示すように、演算部102で算出される最適解における各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSの複数の組み合わせを時間経過に対してプロットしたグラフ、すなわち複数の目標温度経路を表わすグラフを、それぞれの上下限制約(TLDU、TLDL)、(TRHSU、TRHSL)、(TRHEU、TRHEL)、及び目標温度TCCS *とともに描画して表示装置105に画面表示する。
操業者は、表示装置105に画面表示される、各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSの複数の組み合わせの中から操業に適すると考える組み合わせを、入力装置104を用いて選択することができる。
出力部103は、操業者により選択された各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHEを、不図示の転炉制御用の計算機やRH脱ガス装置制御用の計算機に送信することにより、製鋼工程における溶鋼温度を制御する。
104はポインティングデバイスやキーボード、タッチパネル等の入力装置、105は表示装置である。
ここで、本実施形態における線形計画問題の詳細を説明する。
事前に操業条件を入力として、式(2)〜式(4)のように、取鍋への出鋼完了から2次精錬開始までの溶鋼温度の降下量、2次精錬中(2次精錬開始から2次精錬終了まで)の溶鋼温度の降下量、及び2次精錬終了から連続鋳造開始までの溶鋼温度の降下量を推定する線形回帰式のモデルを作成する。線形回帰式のモデルは、実績データの線形多重回帰分析等統計処理又は物理的考察から作成することができる。
取鍋への出鋼完了から2次精錬開始までの溶鋼温度の降下量のモデル
LD−TRHS=a0+a1LD+Σk2kk・・・(2)
2次精錬開始から2次精錬終了までの溶鋼温度の降下量のモデル
RHS−TRHE=b0+b1LD+b2RHS+Σk3kk・・・(3)
2次精錬終了から連続鋳造開始までの溶鋼温度の降下量のモデル
RHE−TCCS=c0+c1LD+c2RHS+c3RHE+Σk4kk・・・(4)
以下では、
0+Σk2kk=Ra
0+Σk3kk=Rb
0+Σk4kk=Rc
と表記する。
kは溶鋼温度の降下量のモデルにおける説明変数とする、搬送時間や処理時間等の操業条件であり、ak、bk、ckは溶鋼温度の降下量のモデルにおける切片、係数である(k=0、1、2、・・・)。これらの値は、入力部101から入力、設定される。
転炉吹錬開始前に決定する各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSも、対象とするチャージの予定操業条件及び操業スケジュールに基づく式(2)〜式(4)のモデルを満たすものと仮定する。
まず、本実施形態における線形計画問題を説明する前に、比較のために線形計画問題-1を説明する。
線形計画問題-1では、各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSを決定変数とし、また、式(5)のように、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSと目標温度TCCS *との差の絶対値を目的関数z1とする線形計画問題として、目的関数z1を最小化する最適解を算出する。
[目的関数]
1=|TCCS *−TCCS|・・・(5)
[決定変数(すべて非負値とする)]
LD、TRHS、TRHE、TCCS・・・(6)
また、線形計画問題を解くに際して、等式制約条件を式(2)〜式(4)のモデルに基づいて式(7)〜式(9)のように定め、また、不等式制約条件を式(10)〜式(15)のように定める。
[等式制約条件]
(1−a1)TLD−TRHS=Ra・・・(7)
−b1LD+(1−b2)TRHS−TRHE=Rb・・・(8)
−c1LD−c2RHS+(1−c3)TRHE−TCCS=Rc・・・(9)
[不等式制約条件]
−TLD≧−TLDU ・・・(10)
LD≧TLDL・・・(11)
−TRHS≧−TRHSU・・・(12)
RHS≧TRHSL・・・(13)
−TRHE≧−TRHEU・・・(14)
RHE≧TRHEL・・・(15)
線形計画問題-1で実行可能解が得られる場合、取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値TLD、2次精錬開始時の狙い温度指示値TRHS、2次精錬終了時の狙い温度指示値TRHE、はそれぞれの上下限制約(TLDU、TLDL)、(TRHSU、TRHSL)、(TRHEU、TRHEL)を満たし、かつ、溶鋼温度の降下量のモデルに従う最適解が得られる。
しかしながら、線形計画問題-1では、すべての不等式制約条件を満たすことができずに実行不能となることがありえる。
そこで、溶鋼温度制御の支援装置100の演算部102では、線形計画問題-1に対し、決定変数として制約違反量を表わす変数miを追加し、また、目的関数を、式(1)のように、制約違反量を表わす変数miに非負値をとる重み係数Wiを乗じた値の和を加え、さらに不等式制約条件の各左辺に制約違反量を表わす変数miを加えることで、これらの不等式制約条件を緩和した線形計画問題を定式化する(以下、線形計画問題-2と称する)。
[目的関数]
z=|TCCS *−TCCS|+Σiii ・・・(1)
[決定変数(すべて非負値とする)]
LD、TRHS、TRHE、TCCS、mi(i=1、・・・、6)
[等式制約条件]
線形計画問題-1と同じ(式(7)〜式(9))
[不等式制約条件]
−TLD+m1≧−TLDU・・・(16)
LD+m2≧TLDL・・・(17)
−TRHS+m3≧−TRHSU・・・(18)
RHS+m4≧TRHSL・・・(19)
−TRHE+m5≧−TRHEU・・・(20)
RHE+m6≧TRHEL・・・(21)
線形計画問題-1で最適解が得られる場合、線形計画問題-2でも、各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSは線形計画問題-1での最適解と同値で、かつ、m1=・・・=m6=0である最適解が得られる。
そして、線形計画問題-1で実行可能解が得られない場合でも、線形計画問題-2では、不等式制約条件に含まれる制約違反量miが正値となり、等式制約条件の等号が成立する解が得られる。ただし、m2jとm2j-1(本例の場合、j=1、2、3)は同時に正値になることはない。そのときの、各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSは溶鋼温度の降下量のモデルに従うが、線形計画問題-1の不等式制約条件を完全には満たさないことを意味する。
線形計画問題を単体法で解く場合、最適解は実行可能解の集合の中でも不等式制約条件の等号を満たす解(単体の頂点)の一つとして選ばれる性質を持つ。したがって、目的関数の重み係数Wiの値を変更しても最適解における制約違反量を表わす変数miの値は不連続に変化し、任意の重み係数Wiの値について最適解となりうる制約違反量を表わす変数miの組み合わせは有限個に限られる。また、各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHEがそれぞれの上下限制約(TLDU、TLDL)、(TRHSU、TRHSL)、(TRHEU、TRHEL)について、式(1)の目的関数において対応する重み係数Wiが大きい場合に、制約違反量を表わす変数miが0である単体の頂点が最適解として選択されやすい。
これらの性質を利用して、目的関数zにおける制約違反量を表わす変数miの重み係数W1〜W6をすべて0にする組み合せと、各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHEごとに一の狙い温度指示値の重み係数Wiを他の狙い温度指示値の重み係数Wiより十分大きくする組み合わせを用意し、線形計画問題-1では実行可能解が得られない場合でも、重み係数Wiの各組み合せに対応する目的関数を最適化して得た各狙い温度指示値、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値に関する次善の解を算出し、操業者の判断で適切なものを選択できるように提示する。ここで、上下限制約を守るべき狙い温度指示値の制約違反量の重み係数を「十分」大きくするとは、例えば、狙い温度指示値TLDが上下限制約を満たすべきものとする場合に、等式制約条件を満たしかつ狙い温度指示値TLDが上下限制約を満たさない狙い温度指示値の任意の組み合せについて、目的関数zの狙い温度指示値TLDの制約違反量に関する項が、他の狙い温度指示値TRHS及びTRHEに関する制約違反量に関する項の和よりも確実に大きくなる重み係数の組合せであることを意味する。例えば転炉RH間の取鍋搬送時間、RH処理時間及びRH連鋳間の取鍋搬送時間の操業実績データを用いて、鋳造開始時予測温度が目標値に一致する場合に等式制約条件を満たす狙い温度指示値TLD、TRHS及びTRHEの制約違反量を算出し、目的関数zにおける狙い温度指示値TLDに関する制約違反量項が正値である場合の分布の下限値(例えば分布の1%点)が、他の狙い指示温度に関する制約違反量項のいずれかが正である場合の和の分布の上限値(例えば分布の99%点)よりも大きくなる目的関数zにおける重み係数の組合せとして決定できる。この方法では具体的な値は定められないが、狙い温度指示値TLDと他の狙い温度指示値に関する制約違反量に対する重み係数の比の値を決定できる。発明者らが調べたところでは、この比は100倍程度であればよいことがわかった。
なお、上記で狙い温度指示値TLDの代わりに、狙い温度指示値TRHS又はTRHEが上下限制約を満たすべきものとする場合でも同じ意味である。
この場合に、重み係数Wiの大きさを、例えば、上下限制約内に入ることを重視する狙い温度指示値に対しては1以上とし、上下限制約内に入ることを軽視する狙い温度指示値に対しては、1より十分小さな値として、0.01以下とする。
上下限制約を満たすべき狙い温度指示値については制約違反量を表わす変数miに重みをつけて評価することで、上下限制約を満たすべき狙い温度指示値に対する制約違反量を表わす変数miが正値になる最適解が選択されにくくなるように、他の狙い温度指示値の重み係数Wiより十分大きくする。連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSと目標温度TCCS *との差は、通常は狙い温度指示値の制約違反量と同程度か小さいので、目的関数zの式(1)において前記予測値TCCSと目標温度TCCS *との偏差の絶対値に比べて上下限制約内に入ることを軽視する狙い温度指示値の制約違反量に関する項の大きさが十分小さくなるように、上下限制約を満たすべき狙い温度指示値に対する重み係数Wiは、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSと目標温度TCCS *との差に対する係数と同程度の1とし、反対に上下限制約内に入ることを軽視する狙い温度指示値に対する重み係数Wiの係数は十分小さい0.01とすればよい。
このように、取鍋への出鋼完了時、2次精錬開始時、及び2次精錬終了時という3つのポイントにおいて、線形計画問題で有限個に限られる制約違反量を表わす変数miを決定変数として最適解を算出するので、各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSの代表的な複数の組み合わせを提示することができ、その中から操業に適した組み合せを操業者の知見により選択することが可能となる。
図3は、実施形態に係る溶鋼温度制御の支援装置100による溶鋼温度制御の支援方法を示すフローチャートである。
ステップS1で、入力部101は、ステップS2で線形計画問題を定式化し、それを解くのに必要な情報を入力する。
具体的には、上述したように、対象とするチャージについて、転炉吹錬開始前に定めた操業スケジュール、製造材質(鋼種)に関する合金投入及び2次精錬の条件設定値を入力する。
また、取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値TLDの上限TLDU及び下限TLDL、2次精錬開始時の狙い温度指示値TRHSの上限TRHSU及び下限TRHSL、2次精錬終了時の狙い温度指示値TRHEの上限TRHEU及び下限TRHEL、連続鋳造開始時の溶鋼温度の目標温度TCCS *を入力する。
また、溶鋼温度の降下量のモデルにおける説明変数xk、切片及び係数ak、bk、ckを入力する。
また、重み係数Wiの組み合わせ(重み係数Wiをすべて0にする組み合せと、各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHEごとに重み係数Wiを他の狙い温度指示値の重み係数Wiより大きくする組み合わせ)を入力する。
ステップS2で、演算部102は、ステップS1で入力される情報に基づいて、式(1)、式(7)〜式(9)、式(16)〜式(21)で表現される線形計画問題-2を定式化する。なお、定式化とは、予め枠組みとして与えられている式(1)、式(7)〜式(9)、式(16)〜式(21)に対して、ステップS1で与えられる情報を組み入れることをいう。
ステップS3で、演算部102は、ステップS1で与えられる重み関数Wiの各組み合わせについて、ステップS2で定式化される線形計画問題-2を解いて、すなわち目的関数zを最小化する最適解を算出して、取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値TLD、2次精錬開始時の狙い温度指示値TRHS、2次精錬終了時の狙い温度指示値TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSを求める。
ステップS4で、出力部103は、図2に示すように、ステップS3で算出される最適解における各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSの複数の組み合わせを時間経過に対してプロットしたグラフを、それぞれの上下限制約(TLDU、TLDL)、(TRHSU、TRHSL)、(TRHEU、TRHEL)、及び目標温度TCCS *とともに描画して表示装置105に画面表示する。
具体的には、取鍋への出鋼完了後からの経過時間を横軸にとり、上下限制約(TLDU、TLDL)、(TRHSU、TRHSL)、(TRHEU、TRHEL)を長方形201〜203で示し、また、連続鋳造開始時の溶鋼温度の目標温度TCCS *を、操業スケジュールに基づいて該当する経過時間の位置に表示する。その上に、重み係数Wiの組み合わせごとに得られる各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSを結ぶ折れ線グラフを重ねてプロットする。
操業者は、表示装置105に画面表示される、各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSの複数の組み合わせの中から操業に適すると考える組み合わせを、入力装置104を用いて選択することができる。
ステップS5で、出力部103は、操業者により選択された各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHEを、不図示の転炉制御用の計算機やRH脱ガス装置制御用の計算機に送信することにより、製鋼工程における溶鋼温度を制御する。
以下、本発明を適用した狙い温度指示値を決定する手順及び効果を、シミュレーション結果に基づいて説明する。
実施対象の製鋼工場における実績データの多重回帰分析により、式(2)〜式(4)にモデルに用いられる係数を以下のように決定した。
1=0.083296
1=−0.160679、b2=0.716868
1=−0.002927、c2=0.124891、c3=0.1926405
また、取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値TLDの上限TLDU及び下限TLDL、2次精錬開始時の狙い温度指示値TRHSの上限TRHSU及び下限TRHSL、2次精錬終了時の狙い温度指示値TRHEの上限TRHEU及び下限TRHEL、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の目標温度TCCS *を以下のように定めた。
LDL=1590℃、TLDU=1640℃
RHSL=1574.9℃、TRHSU=1618℃
RHEL=1558℃、TRHEU=1570℃
CCS *=1538℃
転炉吹錬開始前に定めた操業スケジュールでは、取鍋への出鋼完了から2次精錬開始までの時間は37分、2次精錬時間(2次精錬開始から2次精錬終了までの時間)は17分、2次精錬終了から連続鋳造開始までの時間は23分である。
線形計画問題-1(式(5)〜式(15))では、上記のパラメータ及び制約条件を用いて定式化した線形計画問題で実行可能解がないため、狙い温度指示値の上下限制約を満たす最適解を得ることができない。
線形計画問題-2(式(1)、式(7)〜式(9)、式(16)〜式(21))では、上記のパラメータ及び制約条件を用いるとともに、重み係数W1〜W6の組み合せを表1の(a)〜(d)の4ケースについて用意する。図2は、(a)〜(d)の4ケースについて、各狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSの複数の組み合わせを提示したものである。
(a)は重み係数Wiがすべて0であり、制約違反量miはすべて負でない任意の値をとることが可能となるため、式(16)〜式(21)の不等式制約条件は必ず満たされる。すなわち、線形計画問題-1における式(10)〜式(15)の不等式条件をすべて取り除くことを意味する。
また、(b)、(c)、(d)は狙い温度指示値ごとに重み係数Wiを他の狙い温度指示値の重み係数Wiより大きくする組み合わせであり、上下限制約内に入ることを重視する狙い温度指示値に対しては1とし、上下限制約内に入ることを軽視する狙い温度指示値に対しては0.01とする。
Figure 2017186601
表1には、(a)〜(d)の各ケースにおける線形計画問題-2の最適解を示すが、重み係数の各組み合せについて示した各狙い温度指示値の数値解において、右側に○のついたものは上下限制約を満たすもの、×のついたものは上下限制約値を満たさないものを示す。
(a)では、いずれの狙い温度指示値でも上下限制約は満たさないが、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSが目標温度TCCS *に一致する解となる。(b)、(c)、(d)では、重み係数Wiを1とした上下限制約を満たす最適解が得られる。
このように、取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値TLD、2次精錬開始時の狙い温度指示値TRHS、2次精錬終了時の狙い温度指示値TRHEは上下限制約を完全には満たさないが、重視すべき上下限制約を満たし、かつ連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値が目標温度に近い各狙い温度指示値を、線形計画問題-2を各重み係数の組み合せについて1回ずつ解くだけで得ることができる。
以上のように、取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値TLD、2次精錬開始時の狙い温度指示値TRHS、2次精錬終了時の狙い温度指示値TRHEのいずれもが、それぞれの上下限制約を満たし、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSが目標温度TCCS *に一致する場合、それらの温度を採用することができる。しかも、狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHEのいずれもが、それぞれの上下限制約を満たし、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSが目標温度TCCS *に一致する解が得られない場合でも、操業スケジュールの変更を行わずに、かつ、温度制約を適切に緩和しながら、次善の狙い温度指示値TLD、TRHS、TRHE、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値TCCSの複数の組み合わせが提示され、そこから選択することができる。
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、これらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。例えば上記実施形態では、取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値TLD、2次精錬開始時の狙い温度指示値TRHS、2次精錬終了時の狙い温度指示値TRHEに対してそれぞれ上限及び下限を設定するが、上限及び下限のいずれかだけを設定することも可能である。すなわち、本願でいう上下限制約とは、上限及び下限を有するだけでなく、上限及び下限のうちいずれか一方だけを有する制約も含む概念であるとする。
本発明を適用した溶鋼温度制御の支援装置は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ装置により実現される。
また、本発明は、本発明の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
100:溶鋼温度制御の支援装置、101:入力部、102:演算部、103:出力部、104:入力装置、105:表示装置

Claims (6)

  1. 1次精錬炉での1次精錬、1次精錬後に取鍋に溶鋼を出鋼してからの2次精錬、及び連続鋳造を行う製鋼工程における溶鋼温度制御の支援方法であって、
    取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値、及び前記各狙い温度指示値それぞれの上下限制約からの外れ量の絶対値(制約違反量と呼ぶ)を表わす変数を決定変数とし、また、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値と目標温度との差の絶対値と、前記制約違反量を表わす変数に非負値をとる重み係数を乗じた値の和とを含む関数を目的関数とする線形計画問題として、
    取鍋への出鋼完了から2次精錬開始までの溶鋼温度の降下量、2次精錬開始から2次精錬終了までの溶鋼温度の降下量、及び2次精錬終了から連続鋳造開始までの溶鋼温度の降下量を推定するモデルに基づく等式制約条件と、前記各狙い温度指示値が前記それぞれの上下限制約を前記制約違反量で緩和した範囲内に含まれることを表わす不等式制約条件とに基づいて、
    前記重み係数の複数の組み合わせについて前記目的関数の最適解を算出する最適解算出ステップと、
    前記最適解算出ステップで、前記重み係数の複数の組み合わせのそれぞれに対応して算出される最適解における取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値の複数の組み合わせを提示する提示ステップとを有することを特徴とする製鋼工程における溶鋼温度制御の支援方法。
  2. 前記重み係数の複数の組み合せは、前記重み係数をすべて0にする組み合せと、前記各狙い温度指示値ごとに一の狙い温度指示値の前記重み係数を他の狙い温度指示値の前記重み係数より十分大きくする組み合わせとを含むことを特徴とする請求項1に記載の製鋼工程における溶鋼温度制御の支援方法。
  3. 前記重み係数の大きさを、前記上下限制約内に入ることを重視する狙い温度指示値に対しては1以上とし、前記上下限制約内に入ることを軽視する狙い温度指示値に対しては0.01以下とすることを特徴とする請求項2に記載の製鋼工程における溶鋼温度制御の支援方法。
  4. 前記提示ステップは、前記最適解算出ステップで算出される最適解における取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値の複数の組み合わせを時間経過に対してプロットしたグラフを、前記それぞれの上下限制約、及び前記目標温度とともに描画して表示装置に画面表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製鋼工程における溶鋼温度制御の支援方法。
  5. 1次精錬炉での1次精錬、1次精錬後に取鍋に溶鋼を出鋼してからの2次精錬、及び連続鋳造を行う製鋼工程における溶鋼温度制御の支援装置であって、
    取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値、及び前記各狙い温度指示値それぞれの上下限制約からの外れ量の絶対値(制約違反量と呼ぶ)を表わす変数を決定変数とし、また、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値と目標温度との差の絶対値と、前記制約違反量を表わす変数に非負値をとる重み係数を乗じた値の和とを含む関数を目的関数とする線形計画問題として、
    取鍋への出鋼完了から2次精錬開始までの溶鋼温度の降下量、2次精錬開始から2次精錬終了までの溶鋼温度の降下量、及び2次精錬終了から連続鋳造開始までの溶鋼温度の降下量を推定するモデルに基づく等式制約条件と、前記各狙い温度指示値が前記それぞれの上下限制約を前記制約違反量で緩和した範囲内に含まれることを表わす不等式制約条件とに基づいて、
    前記重み係数の複数の組み合わせについて前記目的関数の最適解を算出する最適解算出手段と、
    前記最適解算出手段で、前記重み係数の複数の組み合わせのそれぞれに対応して算出される最適解における取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値の複数の組み合わせを提示する提示手段とを備えたことを特徴とする製鋼工程における溶鋼温度制御の支援装置。
  6. 1次精錬炉での1次精錬、1次精錬後に取鍋に溶鋼を出鋼してからの2次精錬、及び連続鋳造を行う製鋼工程における溶鋼温度制御を支援するためのプログラムであって、
    取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値、及び前記各狙い温度指示値それぞれの上下限制約からの外れ量の絶対値(制約違反量と呼ぶ)を表わす変数を決定変数とし、また、連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値と目標温度との差の絶対値と、前記制約違反量を表わす変数に非負値をとる重み係数を乗じた値の和とを含む関数を目的関数とする線形計画問題として、
    取鍋への出鋼完了から2次精錬開始までの溶鋼温度の降下量、2次精錬開始から2次精錬終了までの溶鋼温度の降下量、及び2次精錬終了から連続鋳造開始までの溶鋼温度の降下量を推定するモデルに基づく等式制約条件と、前記各狙い温度指示値が前記それぞれの上下限制約を前記制約違反量で緩和した範囲内に含まれることを表わす不等式制約条件とに基づいて、
    前記重み係数の複数の組み合わせについて前記目的関数の最適解を算出する最適解算出処理と、
    前記最適解算出処理で、前記重み係数の複数の組み合わせのそれぞれに対応して算出される最適解における取鍋への出鋼完了時の狙い温度指示値、2次精錬開始時の狙い温度指示値、2次精錬終了時の狙い温度指示値、及び連続鋳造開始時の溶鋼温度の予測値の複数の組み合わせを提示する提示処理とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
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