JP2017185693A - 筆記具用インキ逆流防止体組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 基材としてポリブテンを用いた場合であっても、経時による離油を抑制することができるとともに、優れたインキ追従性能を発現できる、水分蒸発抑制効果が高く耐衝撃性能を満足するインキ逆流防止体組成物を提供する。
【解決手段】 筆記具のインキ収容筒内に直接収容したインキの後端面に配設され、前記インキの消費に従って前進する筆記具用インキ逆流防止体組成物であって、ポリブテンとジメチルシリコーンと脂肪酸アマイドと疎水性シリカからなり、前記ポリブテンとジメチルシリコーンとが2:1〜9:1の割合である。
【選択図】 なし
【解決手段】 筆記具のインキ収容筒内に直接収容したインキの後端面に配設され、前記インキの消費に従って前進する筆記具用インキ逆流防止体組成物であって、ポリブテンとジメチルシリコーンと脂肪酸アマイドと疎水性シリカからなり、前記ポリブテンとジメチルシリコーンとが2:1〜9:1の割合である。
【選択図】 なし
Description
本発明は筆記具用インキ逆流防止体組成物に関する。更には、インキ収容筒内に直接収容されたインキの端面に配設される筆記具用インキ逆流防止体組成物とその製造方法に関する。
従来、筆記具に適用されるインキ逆流防止体組成物には、正立(チップ上向き)或いは横置き状態での保管時や運搬時にインキが収容筒後端から漏出することを防止するインキ逆流防止性能、筆記時にインキの減少に伴ってペン先方向へスムースに移動するインキ追従性能、更に、筆記具が高所から落下した際のインキ飛散やインキ流出を防ぐ耐衝撃性能等の性能が要求されている。
前記インキ逆流防止体組成物として、古くは高粘度の油性インキを内蔵する油性ボールペン用として、グリース等が適用されているが、前記油性ボールペン用インキ逆流防止体を粘度が低い水性インキを内蔵した水性ボールペンに適用した場合、インキ消費時の追従不良や温度変化に伴う過度の粘度変化を生じることがあり、水性インキの逆流を抑止できない等の不具合を生じることがあった。そのため、前記不具合を解消するべく、液状ポリブテン、鉱油、シリコーン油等の難揮発性有機液体に、金属石鹸や微粒子シリカをゲル化剤として添加したゲル状物からなるインキ逆流防止体組成物が多数提案され、広く実用化されている(例えば、特許文献1乃至2参照)。
前記難揮発性有機液体のうち水分蒸発抑制効果が高い点から、ポリブテンが特に好適に用いられているが、ポリブテンは分子量分布が大きいため、経時によって低分子量のものが離油することがある。離油が生じた際には、ペン先側に流動して筆記不良を生じたり、後端側に流動して漏れ出したり、耐衝撃性が低下する等の不具合を生じる虞がある。
前記離油を抑制するために、ゲル化剤の配合量を増やすことが検討されているが、その場合、組成物全体が硬くなるため、インキ消費時の追従性能が悪化してしまう。
前記離油を抑制するために、ゲル化剤の配合量を増やすことが検討されているが、その場合、組成物全体が硬くなるため、インキ消費時の追従性能が悪化してしまう。
本発明は、基材としてポリブテンを用いた場合であっても、経時による離油を抑制することができるとともに、優れたインキ追従性能を発現できる、水分蒸発抑制効果が高く耐衝撃性能を満足するインキ逆流防止体組成物とその製造方法を提供するものである。
本発明は、筆記具のインキ収容筒内に直接収容したインキの後端面に配設され、前記インキの消費に従って前進するインキ逆流防止体であって、ポリブテンとジメチルシリコーンと脂肪酸アマイドと疎水性シリカからなり、前記ポリブテンとジメチルシリコーンとが2:1〜9:1の割合である筆記具用インキ逆流防止体組成物を要件とする。
更に、前記ポリブテンの分子量が520〜1020の範囲であること、前記ジメチルシリコーンの25℃における動粘度が1000〜10000cStの範囲であること、前記脂肪酸アマイドがインキ逆流防止体組成物全量中0.1〜3質量%の範囲で添加されることを要件とする。
更には、ポリブテンを基材として脂肪酸アマイドを添加してなる組成物Aと、ジメチルシリコーンを基材として脂肪酸アマイドと疎水性シリカを添加してなる組成物Bが、各基材が2:1〜9:1の範囲となる比率で混合され、均一混練することで得られる筆記具用インキ逆流防止体組成物の製造方法を要件とする。
更に、前記ポリブテンの分子量が520〜1020の範囲であること、前記ジメチルシリコーンの25℃における動粘度が1000〜10000cStの範囲であること、前記脂肪酸アマイドがインキ逆流防止体組成物全量中0.1〜3質量%の範囲で添加されることを要件とする。
更には、ポリブテンを基材として脂肪酸アマイドを添加してなる組成物Aと、ジメチルシリコーンを基材として脂肪酸アマイドと疎水性シリカを添加してなる組成物Bが、各基材が2:1〜9:1の範囲となる比率で混合され、均一混練することで得られる筆記具用インキ逆流防止体組成物の製造方法を要件とする。
本発明は基材としてポリブテンとジメチルシリコーンを特定の割合で用いるとともに、ゲル化剤としての脂肪酸アマイドと、添加剤としての疎水性シリカを配合することで、経時による離油が抑制でき、硬化することなく優れたインキ追従性能(流動性)が発現できる。そのため、水分蒸発抑制効果とともに、経時安定性能、耐衝撃性能、インキ逆流防止性能のすべてを満足する実用性の高いインキ逆流防止体組成物が提供できる。
更に、各基材と脂肪酸アマイドからなる組成物(更にジメチルシリコーン基材には疎水性シリカを配合)を作製した後、特定範囲で混合して均一混練することで、前記インキ逆流防止体組成物を製造する方法を用いることにより、ポリブテン中にジメチルシリコーンと疎水性シリカを確実に均一分散させて安定化できるため、特に優れた離油抑制効果と高いインキ追従性能が発現できる。
更に、各基材と脂肪酸アマイドからなる組成物(更にジメチルシリコーン基材には疎水性シリカを配合)を作製した後、特定範囲で混合して均一混練することで、前記インキ逆流防止体組成物を製造する方法を用いることにより、ポリブテン中にジメチルシリコーンと疎水性シリカを確実に均一分散させて安定化できるため、特に優れた離油抑制効果と高いインキ追従性能が発現できる。
前記ポリブテンはインキ逆流防止体組成物の基材(ベースオイル)として用いられるものである。前記ポリブテンは水性媒体と混和し難く、水分蒸発抑制効果が高いことから特に水性インキ用に好適である反面、逆流防止体として単独で使用した際には経時によって離油を生じ易いものである。
前記ポリブテンの市販品として具体的には、ポリブテンLV−7、同LV−10、同LV−25、同LV−50、同LV−100、同HV−15、同HV−35、同HV−35、同HV−50、同HV−100、同HV−300(以上、新日本石油化学(株)製)、ポリブテン0H、同5H、同10H−T、同15H、同300H、同15R、同35R、同100R、同100R、同300R(以上、出光石油化学(株)製)、015N、06N、3N、5N、10N、ニューグライドM、ニューグライドμ、015N(以上、日油(株)製)等を例示することができる。尚、前記ポリブテンは逆流防止体組成物全量に対し、66〜90質量%の範囲で使用できる。
前記ポリブテンの市販品として具体的には、ポリブテンLV−7、同LV−10、同LV−25、同LV−50、同LV−100、同HV−15、同HV−35、同HV−35、同HV−50、同HV−100、同HV−300(以上、新日本石油化学(株)製)、ポリブテン0H、同5H、同10H−T、同15H、同300H、同15R、同35R、同100R、同100R、同300R(以上、出光石油化学(株)製)、015N、06N、3N、5N、10N、ニューグライドM、ニューグライドμ、015N(以上、日油(株)製)等を例示することができる。尚、前記ポリブテンは逆流防止体組成物全量に対し、66〜90質量%の範囲で使用できる。
尚、前記ポリブテンの中でも分子量が520〜1020の範囲のものは、併用する脂肪酸アマイドとの混練状態での安定性に特に優れており、高所からの落下や繰り返しのノック衝撃等のより強い応力がかかった場合であっても逆流防止体組成物が崩れることなく、形状保持性に優れたものとなる。特に、分子量が540〜1000の範囲にあるものは、前述の効果が高くより有用である。
前記ジメチルシリコーンもインキ逆流防止体組成物の基材(ベースオイル)として用いられるものである。本発明においては、ポリブテンに対して特定の範囲(ポリブテン:ジメチルシリコーン=2:1〜9:1)で併用することで、経時による離油の発生を遅延させつつ、ポリブテンの硬化を抑制してインキ追従性を良化させることが可能となる。
尚、前記ジメチルシリコーンとして、25℃での動粘度〔JISZ8803、K2283に準じる測定値〕が1000〜10000cStの範囲にあるものは、ポリブテン中で安定した分散状態を維持し易いため特に好適である。前記範囲内で動粘度が相違するものを二種以上併用することもでき、更に、前記範囲外のものを用いた場合でも、二種以上を混合して平均動粘度を前記範囲内とすることもできる。
尚、前記ジメチルシリコーンとして、25℃での動粘度〔JISZ8803、K2283に準じる測定値〕が1000〜10000cStの範囲にあるものは、ポリブテン中で安定した分散状態を維持し易いため特に好適である。前記範囲内で動粘度が相違するものを二種以上併用することもでき、更に、前記範囲外のものを用いた場合でも、二種以上を混合して平均動粘度を前記範囲内とすることもできる。
前記ジメチルシリコーンの市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製の商品名:KF96−50(25℃、50cSt)、KF96−100(25℃、100cSt)、KF96−1000(25℃、1000cSt)、KF96−3000(25℃、3000cSt)、KF96H−6000(25℃、6000cSt)、KF96H−10000(25℃、10000cSt)、KF96H−30000(25℃、30000cSt)等が例示できる。尚、前記ジメチルシリコーンは逆流防止体組成物全量に対し、10〜33質量%の範囲で使用できる。
更に、必要に応じて、従来からベースオイルとして使用されるαオレフィンコオリゴマー、流動パラフィン、精製鉱油等の汎用の難揮発性液体を併用することもできる。
前記脂肪酸アマイドはゲル化剤として用いられ、ポリブテンとジメチルシリコーンをインキ逆流防止体組成物としての好適な粘度まで増粘させるために添加される。特に、ジメチルシリコーンに対する相溶性が高く、ポリブテンとジメチルシリコーンを混練分散した状態での安定性を長期にわたって維持できるため、本構成において特に有用である。
前記脂肪酸アマイドとして、具体的には、ラウリン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、リシノール酸アマイド、12−ヒドロキシステアリン酸アマイド、N−イソブチルラウリン酸アマイド、N−イソブチルステアリン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルパルミチン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−シクロヘキシルメチルラウリン酸アマイド、N−シクロヘキシルメチルカプロン酸アマイド等が例示できる。
また、N,N´−エチレンビスラウリン酸アマイド、N,N´−メチレンビスステアリン酸アマイド、N,N´−エチレンビスステアリン酸アマイド、N,N´−エチレンビスオレイン酸アマイド、N,N´−エチレンビスベヘン酸アマイド、N,N´−エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N´−ブチレンビスステアリン酸アマイド、N,N´−ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、N,N´−ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド等も例示できる。
また、N,N´−エチレンビスラウリン酸アマイド、N,N´−メチレンビスステアリン酸アマイド、N,N´−エチレンビスステアリン酸アマイド、N,N´−エチレンビスオレイン酸アマイド、N,N´−エチレンビスベヘン酸アマイド、N,N´−エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N´−ブチレンビスステアリン酸アマイド、N,N´−ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、N,N´−ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド等も例示できる。
更に、汎用のゲル化剤を併用することもでき、例えば、脂肪酸アルミニウム、アマイド変性ポリエチレンワックス、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物等が挙げられる。
前記脂肪酸アマイド及び汎用ゲル化剤は、インキ逆流防止体組成物全量に対し0.5〜3質量%、好ましくは0.8〜1.5質量%の範囲で用いられる。
前記脂肪酸アマイド及び汎用ゲル化剤は、インキ逆流防止体組成物全量に対し0.5〜3質量%、好ましくは0.8〜1.5質量%の範囲で用いられる。
前記疎水性シリカは、ポリブテンの離油を抑制する効果を発現するために添加されるものであり、ジメチルシリコーンとの併用によって、ポリブテンを硬化することなく前記効果が発現できるものとなる。
前記疎水性シリカとしては、疎水性であれば限定されないが、例えば、シリカ粒子表面にメチル基、トリメチルシリル基等の疎水性基を付与したものや、シリカ粒子表面をジメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイルで処理したもの等を用いることができる。特に、シリカ粒子をジメチルジクロロシランで表面処理したものは離油抑制効果が高く好適である。
好ましい市販品としては、例えば、AEROSIL R972、AEROSIL R974、AEROSIL R812(日本アエロジル株式会社製)等が挙げられる。
前記疎水性シリカとしては、疎水性であれば限定されないが、例えば、シリカ粒子表面にメチル基、トリメチルシリル基等の疎水性基を付与したものや、シリカ粒子表面をジメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイルで処理したもの等を用いることができる。特に、シリカ粒子をジメチルジクロロシランで表面処理したものは離油抑制効果が高く好適である。
好ましい市販品としては、例えば、AEROSIL R972、AEROSIL R974、AEROSIL R812(日本アエロジル株式会社製)等が挙げられる。
前記疎水性シリカは、インキ逆流防止体組成物全量中0.1〜3質量%、好ましくは0.5〜1.5質量%の範囲で添加される。前記範囲で用いることで、長期経時後においてもインキ逆流防止体から離油が発生することをより確実に抑制できる。
その他必要に応じて、ゲル化助剤、着色防止性能や逆流防止性能を向上させるためのアルコールやグリコール等の極性溶剤、安定剤として種々の界面活性剤、酸化金属粒子や各種微粒子の添加も可能である。
前記インキ逆流防止体組成物はベースオイルとして用いられるポリブテンとジメチルシリコーンに対し、脂肪酸アマイド及び疎水性シリカ(必要により他のゲル化剤)を添加してディスパー等の攪拌機で均一になるように分散した後、三本ロール、ニーダー、バスケットミル等の分散機で混練することにより得られる。また、必要に応じて遠心脱泡等によって脱泡することもできる。
特に好ましい製造方法としては、ポリブテンを基材として脂肪酸アマイド(必要に応じて他のゲル化剤や各種添加剤)を添加して攪拌機で均一になるように分散した後、分散機で混練することで作製した逆流防止体組成物Aと、ジメチルシリコーンを基材として脂肪酸アマイドと疎水性シリカ(必要に応じて他のゲル化剤や各種添加剤)を添加して攪拌機で均一になるように分散した後、分散機で混練することで作製した逆流防止体組成物Bとをそれぞれ別に作製した後、前記組成物Aと組成物Bを各基材が2:1〜9:1の範囲となる比率で混合して分散機で混練する方法がとられる。尚、必要に応じて遠心脱泡等によって脱泡することもできる。
前記ポリブテンとジメチルシリコーンは親和性が低いため、均一分散化に長時間の攪拌を要する。また、ポリブテン中に疎水性シリカを直接添加して撹拌した際には、組成物が硬化する傾向にある。前記製造方法を用いることで、これらの不具合を生じることなく、本発明の構成成分からなるインキ逆流防止体組成物を効率的に製造できるとともに、得られたインキ逆流防止体組成物は均一分散状態を長期にわたって維持できる。そのため、高いインキ追従性と経時安定性に優れたインキ逆流防止体組成物を容易且つ確実に形成できる。
特に好ましい製造方法としては、ポリブテンを基材として脂肪酸アマイド(必要に応じて他のゲル化剤や各種添加剤)を添加して攪拌機で均一になるように分散した後、分散機で混練することで作製した逆流防止体組成物Aと、ジメチルシリコーンを基材として脂肪酸アマイドと疎水性シリカ(必要に応じて他のゲル化剤や各種添加剤)を添加して攪拌機で均一になるように分散した後、分散機で混練することで作製した逆流防止体組成物Bとをそれぞれ別に作製した後、前記組成物Aと組成物Bを各基材が2:1〜9:1の範囲となる比率で混合して分散機で混練する方法がとられる。尚、必要に応じて遠心脱泡等によって脱泡することもできる。
前記ポリブテンとジメチルシリコーンは親和性が低いため、均一分散化に長時間の攪拌を要する。また、ポリブテン中に疎水性シリカを直接添加して撹拌した際には、組成物が硬化する傾向にある。前記製造方法を用いることで、これらの不具合を生じることなく、本発明の構成成分からなるインキ逆流防止体組成物を効率的に製造できるとともに、得られたインキ逆流防止体組成物は均一分散状態を長期にわたって維持できる。そのため、高いインキ追従性と経時安定性に優れたインキ逆流防止体組成物を容易且つ確実に形成できる。
本発明のインキ逆流防止体組成物では、前記ポリブテンとジメチルシリコーンを2:1〜9:1の範囲で用いることで、脂肪酸アマイド及び疎水性シリカと合わせて前述の性能を発現している。ポリブテンとジメチルシリコーンの比率が2:1より小さい(即ち、ポリブテンが少なくジメチルシリコーンが多い)場合、インキ中の水分蒸発を抑制するのには不十分となり、ポリブテンとジメチルシリコーンの比率が9:1より大きい(即ち、ポリブテンが多くジメチルシリコーンが少ない)場合、経時により容易に離油が発生するとともに十分な流動性が得られず、速記時等にインキ追従ができなくなってしまう。
前記インキ逆流防止体組成物は、ペン先を備えたインキ収容筒にインキを充填した後、最後端のインキと接触した位置に充填されるものであり、必要に応じて固体のインキ逆流防止体と併用して配設される。これによりインキ収容筒後端からのインキの蒸発を防止し、ペン先を上向きで放置した場合や、衝撃が加わった場合にインキが逆流することを防止するものとなる。
前記インキとしては、従来公知の水性又は油性インキが用いられる。前記インキが油性インキの場合、特に25℃でのインキ粘度が100mPa・S以上5000mPa・S以下の低粘度乃至中粘度油性インキが好適に用いられる。また、水性インキの場合は、特に剪断減粘性水性インキが好適に用いられる。
尚、本発明のインキ逆流防止体組成物は、離油を抑制しながらも高いインキ追従性能を発現できるため、離油による不具合を生じ易い水性インキに対して特に有用である。
尚、本発明のインキ逆流防止体組成物は、離油を抑制しながらも高いインキ追従性能を発現できるため、離油による不具合を生じ易い水性インキに対して特に有用である。
前記ペン先には、マーキングペンチップやボールペンチップが用いられる。特に、ボールペンチップを用いたボールペン形態での適用が好ましく、例えば、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属製のパイプや金属材料の切削加工により形成したチップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等の0.15〜1.2mm径程度のものが適用できる。
前記インキ収容筒は、金属加工体や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる成形体が、インキの低蒸発性、生産性の面で好適に用いられる。特に樹脂成形体においては、透明、着色透明、或いは半透明の成形体を用いることにより、外部からインキを視認することが可能であり、特異の意匠効果を与えると共に、インキの色相や残量等を確認できる。前記インキ収容筒にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容筒とチップを連結してもよい。尚、前記インキ収容筒は、ボールペン用レフィルの形態として、前記レフィルを軸筒内に収容するものでもよいし、軸筒をインキ収容筒として用いて、前記軸筒内に直接インキとインキ逆流防止体を充填してもよい。
以下に実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。尚、表中の実施例、比較例の数字は質量部を表わす。
表中の原料の内容を注番号に従って説明する。
(1)日油(株)製、商品名:ポリブテン3N 分子量:720
(2)日油(株)製、商品名:ポリブテン5N 分子量:800
(3)楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6900−20X(有効成分20%)
(4)楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6850−20X(有効成分20%)
(5)信越化学工業(株)製、商品名:KF96−3000
(6)信越化学工業(株)製、商品名:KF96H−6000
(7)日本アエロジル工業(株)製、商品名:アエロジルR974
(8)日本アエロジル工業(株)製、商品名:アエロジルR972
(1)日油(株)製、商品名:ポリブテン3N 分子量:720
(2)日油(株)製、商品名:ポリブテン5N 分子量:800
(3)楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6900−20X(有効成分20%)
(4)楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6850−20X(有効成分20%)
(5)信越化学工業(株)製、商品名:KF96−3000
(6)信越化学工業(株)製、商品名:KF96H−6000
(7)日本アエロジル工業(株)製、商品名:アエロジルR974
(8)日本アエロジル工業(株)製、商品名:アエロジルR972
インキ逆流防止体組成物の作製
ポリブテン中に脂肪酸アマイドを所定量投入してディスパー1000rpmで10分間均一になるように攪拌した後、三本ロール処理(2pass)を行うことで組成物Aを得た。
また、ジメチルシリコーン中に脂肪酸アマイドと疎水性シリカを所定量投入してディスパー1000rpmで10分間均一になるように攪拌した後、三本ロール処理(2pass)を行うことで組成物Bを得た。
得られた組成物Aと組成物Bを各比率で混合した後、三本ロール処理(2pass)を行い、更に遠心脱泡することでインキ逆流防止体組成物を得た。
ポリブテン中に脂肪酸アマイドを所定量投入してディスパー1000rpmで10分間均一になるように攪拌した後、三本ロール処理(2pass)を行うことで組成物Aを得た。
また、ジメチルシリコーン中に脂肪酸アマイドと疎水性シリカを所定量投入してディスパー1000rpmで10分間均一になるように攪拌した後、三本ロール処理(2pass)を行うことで組成物Bを得た。
得られた組成物Aと組成物Bを各比率で混合した後、三本ロール処理(2pass)を行い、更に遠心脱泡することでインキ逆流防止体組成物を得た。
試料ボールペンの作製
直径0.5mmの超硬合金製ボールを備えたステンレス切削チップ(ボールペンチップ)を先端に嵌着した、内径4.4mmのポリプロピレン製パイプ(インキ収容筒)に、25℃における粘度が400mPa・Sの水性黒インキ(剪断減粘性インキ)を1.0g充填し、インキ後端に実施例及び比較例のインキ逆流防止体組成物をそれぞれ0.17g接触配置した後に遠心処理してボールペンレフィルを作製し、各レフィルが収容可能なキャップ式形態の筆記具外装にそれぞれ組み込むことで試料ボールペンを得た。
直径0.5mmの超硬合金製ボールを備えたステンレス切削チップ(ボールペンチップ)を先端に嵌着した、内径4.4mmのポリプロピレン製パイプ(インキ収容筒)に、25℃における粘度が400mPa・Sの水性黒インキ(剪断減粘性インキ)を1.0g充填し、インキ後端に実施例及び比較例のインキ逆流防止体組成物をそれぞれ0.17g接触配置した後に遠心処理してボールペンレフィルを作製し、各レフィルが収容可能なキャップ式形態の筆記具外装にそれぞれ組み込むことで試料ボールペンを得た。
前記試料ボールペンを用いて以下の試験を実施し、それぞれの評価基準で評価した。結果を表2に示す。
筆記試験
前記試料ボールペンを25℃の環境下でJIS P3201筆記用紙Aに、4m/minで螺旋状の丸を書き切りまで連続筆記した。その際の筆跡とインキ逆流防止体の状態を目視により観察した。
○:インキ逆流防止体組成物がインキの消費に伴って良好に追従しており、書き切りまで均一の筆跡が得られた。
×:インキ逆流防止体組成物が追従せず、筆跡にカスレや線飛びが見られた、又は途中で筆記不能となった。
経時安定性試験
前記試料ボールペンをペン先上向き状態で50℃の環境下に30日間静置した後のインキ逆流防止体組成物の状態を目視で観察して初期と比較した。
○:離油を生じることなく初期の形態を維持している。
×:離油を生じて流動し、レフィル後端から漏れ出している、もしくはインキ中に這い上がる。
水分蒸発試験
IWAKI GLASS製のPYREX試験管(リムなし、10×75m/m)に前記水性黒インキ2.5gと、各インキ逆流防止体組成物0.5gを順に収容し、遠心処理を施した試験サンプル(初期)を、50℃の環境下に30日間静置した後の重量を測定して初期と比較した。
○:重量変化なし。
×:インキ中の水分が減少して軽量となった。
前記試料ボールペンを25℃の環境下でJIS P3201筆記用紙Aに、4m/minで螺旋状の丸を書き切りまで連続筆記した。その際の筆跡とインキ逆流防止体の状態を目視により観察した。
○:インキ逆流防止体組成物がインキの消費に伴って良好に追従しており、書き切りまで均一の筆跡が得られた。
×:インキ逆流防止体組成物が追従せず、筆跡にカスレや線飛びが見られた、又は途中で筆記不能となった。
経時安定性試験
前記試料ボールペンをペン先上向き状態で50℃の環境下に30日間静置した後のインキ逆流防止体組成物の状態を目視で観察して初期と比較した。
○:離油を生じることなく初期の形態を維持している。
×:離油を生じて流動し、レフィル後端から漏れ出している、もしくはインキ中に這い上がる。
水分蒸発試験
IWAKI GLASS製のPYREX試験管(リムなし、10×75m/m)に前記水性黒インキ2.5gと、各インキ逆流防止体組成物0.5gを順に収容し、遠心処理を施した試験サンプル(初期)を、50℃の環境下に30日間静置した後の重量を測定して初期と比較した。
○:重量変化なし。
×:インキ中の水分が減少して軽量となった。
Claims (5)
- 筆記具のインキ収容筒内に直接収容したインキの後端面に配設され、前記インキの消費に従って前進するインキ逆流防止体であって、ポリブテンとジメチルシリコーンと脂肪酸アマイドと疎水性シリカからなり、前記ポリブテンとジメチルシリコーンとが2:1〜9:1の割合である筆記具用インキ逆流防止体組成物。
- 前記ポリブテンの分子量が520〜1020の範囲である請求項1記載の筆記具用インキ逆流防止体組成物。
- 前記ジメチルシリコーンの25℃における動粘度が1000〜10000cStの範囲である請求項1又は2に記載の筆記具用インキ逆流防止体組成物。
- 前記脂肪酸アマイドがインキ逆流防止体組成物全量中0.1〜3質量%の範囲で添加される請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具用インキ逆流防止体組成物。
- ポリブテンを基材として脂肪酸アマイドを添加してなる組成物Aと、ジメチルシリコーンを基材として脂肪酸アマイドと疎水性シリカを添加してなる組成物Bが、各基材が2:1〜9:1の範囲となる比率で混合され、均一混練することで得られる請求項1記載の筆記具用インキ逆流防止体組成物の製造方法。
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- 2016-04-06 JP JP2016076284A patent/JP2017185693A/ja active Pending
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