以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る空気調和機の室内機を示す斜視図、図2は、本発明の実施形態に係る空気調和機の室内機を示す分解斜視図、図3は、本発明の実施形態に係る空気調和機の制御構成を示すブロック図である。図1〜図3に示すように、空気調和機1は、室内に設置される室内機2と、室外に設置される室外機3とを備えており、室内機2と室外機3との間を循環する冷媒(例えば、R32冷媒)と空気とを熱交換させて、室内機2から室内に向けて冷風や温風を吹き出して室内の冷房、暖房、除湿などを行うように構成されている。
図1に示すように、本実施形態の室内機2は、床面に設置される床置き式であり、その正面に設けられる吸込口4と、吸込口4の上下に設けられる上吹出口5x(吹出口5)、下吹出口5y(吹出口5)とを備えている。そして、図2に示すように、室内機2の内部には、吸込口4と2つの吹出口5とを結ぶ空気通路に熱交換器6が備えられている。なお、本実施例では、各要素の上下の区別を符号枝番x/yで表し、上下の区別をしないときは符号枝番x/yを付さないで説明する。
空気通路のうち上送風路21x(送風路21)には上モータ22x(モータ22)によって回転する上室内ファン7x(室内ファン7)が設けられており、上室内ファン7xは、上吹出口5xを構成する上ケーシング23x(ケーシング23)によって覆われている。同様に、下送風路21y(送風路21)には下モータ22y(モータ22)によって回転する下室内ファン7y(室内ファン7)が設けられており、下室内ファン7yは、下吹出口5yを構成する下ケーシング23y(ケーシング23)によって覆われている。なお、室内機2には、そのほかに、後述する制御部9が格納される電装品箱24や、室内機2の運転状態を表示する表示部25、温度センサ26が設けられている。
一般的に、室内機と室外機の間で冷媒を循環させる空気調和機において冷媒が漏洩した場合は、漏洩した冷媒が床面付近に滞留して冷媒濃度が上昇する。特に、可燃性冷媒又は本実施形態で使用するR32冷媒のような微燃性冷媒を用いる場合は、漏洩した冷媒の濃度が可燃濃度に達する可能性がある。しかし、本実施形態の床置き式の室内機2であれば、室内ファン7の動作によって吹き出される空気が床面付近を流れるので、漏洩した冷媒を室内に拡散させやすいという特徴がある。
図3に示すように、空気調和機1には、赤外線リモコン、赤外線受光部などで構成される操作部8の設定操作に応じて、室外機3や、室内機2の室内ファン7、などを制御する制御部9が設けられている。さらに、制御部9には、冷媒の漏洩を検知するセンサであり検知方式が異なる第1冷媒センサ10および第2冷媒センサ11と、警報音を出力する警報機12とが接続されており、冷媒センサ10、11による冷媒の漏洩検知に基づき、警報機12によってユーザに冷媒の漏洩を報知したり、室内ファン7によって漏洩した冷媒を室内に拡散させたり、図示しない遮断弁によって冷媒の循環を遮断する、などの安全対策制御を行う。
第1冷媒センサ10は、低濃度の冷媒を精度良く検知可能な半導体式の冷媒センサであり、本実施形態では、主に0.1%〜1%の濃度範囲での冷媒検知に用いる。また、第2冷媒センサ11は、高濃度の冷媒を精度良く検知可能な気体熱伝導式の冷媒センサであり、本実施形態では、主に1%〜3.6%の濃度範囲での冷媒検知に用いる。
半導体式の第1冷媒センサ10は、加熱状態(例えば、300〜400℃)において冷媒の漏洩を検知する検知部と、検知部を加熱するヒーターを備えている。検知部は、可燃性の冷媒が存在するとセンサ素子の電気抵抗が下がり、電気抵抗の低下率が冷媒濃度に依存することを利用して冷媒の漏洩を検知するものである。センサ素子は、半導体特性を有する金属酸化物(例えば、酸化スズ)の焼結体で形成される。
このような検知部10aのセンサ素子をヒーターの発熱で300〜400℃に加熱すると、冷媒のような還元性のガスを含まない大気中では、空気中の酸素が一定量その表面に負電荷吸着(酸素が酸化スズの電子を捉えて表面に吸着)し、抵抗値が高い状態となる。このセンサ素子の表面に冷媒のような還元性のガスが接触すると、吸着酸素と反応を起こして吸着酸素が脱離するのに伴い、捉えていた電子が解放されて抵抗値が減少する。このような抵抗値の変化に基づいて、冷媒の漏洩や漏洩した冷媒濃度を検知することが可能になる。
しかしながら、半導体式の第1冷媒センサ10は、ヒーターの加熱による影響で経時劣化することが知られている。その理由は、酸化スズの結晶粒子が、長期間にわたってヒーターで加熱されることで、酸化活性が低下するからであり、経時劣化すると、抵抗値が低い状態のままになり、反応が鋭敏化してしまう。すなわち、ごく微量な還元性のガスにも反応してしまうため、例えば生鮮食品から発生する僅かなガスにも反応してしまう(誤検知)。このような第1冷媒センサ10の経時劣化は、ヒーターによる加熱時間を短縮することで抑制することが可能である。
一方、気体熱伝導式の第2冷媒センサ11は、空気と冷媒の熱伝導度の差による発熱体(白金線コイル)の温度変化に基づいて、冷媒の漏洩を検知する。気体熱伝導式の第2冷媒センサ11は、1%〜100%の高濃度範囲で冷媒を良好に検知できるだけでなく、熱伝導という物理的性質を利用して冷媒を検知するため、触媒の劣化、被毒などの問題がなく、経時的に安定である。
気体熱伝導式の第2冷媒センサ11により漏洩を検知する冷媒は、第2冷媒センサ11の検知濃度下限である1%よりも高い許容濃度規制値(IEC/ISO)を有することが望ましい。例えば、R32冷媒は、LFL(Lower Flammable Limit)が13%であり、許容濃度規制値は、LFLに安全率(1/4)を掛けた3.6%であるため、「許容濃度規制値(3.6%)>検知濃度下限(1%)」である。
図4は、本発明の実施形態に係る第1冷媒センサ及び第2冷媒センサの通電制御を示すタイミングチャートである。この図に示すように、制御部9は、冷媒の漏洩リスク(空気調和機1の運転開始時/停止時や冷房−暖房切換え時といった急激な圧力変動が発生するときに、冷媒配管やその接続部等にピンホールや亀裂が発生するリスク)が低く、また、冷媒漏洩が発生しても冷媒の濃度上昇が緩やかである空気調和機1の運転停止中は、半導体式の第1冷媒センサ10への通電をオフにし、気体熱伝導式の第2冷媒センサ11に通電して動作させて冷媒の漏洩を検知する。これにより、半導体式の第1冷媒センサ10に対する通電時間(ヒータによるセンサ素子の加熱時間)が短くなり、第1冷媒センサ10の経時劣化が抑制される。
気体熱伝導式の第2冷媒センサ11は、空気調和機1の運転停止中、主に1%〜3.6%の濃度範囲で冷媒の検知を行う。これにより、漏洩した冷媒の濃度が許容濃度規制値に到達する以前に冷媒の漏洩を検知することができる。特に、空気調和機1の運転停止中は、室内ファン7も停止しており、漏洩した冷媒が室内ファン7によって拡散されないため、検知濃度範囲が第1冷媒センサ10よりも高い第2冷媒センサ11であっても漏洩した冷媒を確実に検知することができる。また、第1冷媒センサ10が通電状態で高濃度の冷媒や雑ガス(生鮮食品や果物から発生するガス、エタノール等)に接触して故障することを回避でき、第1冷媒センサ10の雑ガスによる誤検知も防止できる。
また、空気調和機1の運転停止中における冷媒の低速漏洩(スローリーク)であっても、一定時間経過後には漏洩した冷媒の濃度が第2冷媒センサ11の検知濃度下限である1%を超えるので、許容濃度規制値に到達する以前に漏洩した冷媒を検知することが可能になる。
一方、冷媒の漏洩リスクが高く、また、冷媒漏洩が発生したときに運転停止時と比べて冷媒の濃度が早く上昇する空気調和機1の運転中は、低濃度の冷媒も検知可能な半導体式の第1冷媒センサ10に通電してセンサ素子を加熱することで第1冷媒センサ10を動作させて冷媒の漏洩を検知する。半導体式の第1冷媒センサ10は、主に0.1%〜1%の濃度範囲で冷媒の検知を行う。これにより、冷媒の漏洩リスクが高い空気調和機1の運転中は、低速漏洩であっても漏洩した冷媒を迅速に検知することが可能になる。
また、圧力変動が大きく、冷媒の漏洩リスクが高い運転停止直後の一定時間(例えば、20分程度)は、引き続き半導体式の第1冷媒センサ10を動作させて冷媒の漏洩を検知することが好ましい。このようにすると、運転停止後における冷媒の低速漏洩も迅速に検知することが可能になる。
以上に述べた本実施形態の空気調和機1によれば、ヒーターによる加熱状態で冷媒の漏洩を検知する半導体式の第1冷媒センサ10と、非加熱状態で冷媒の漏洩を検知する第2冷媒センサ11と、第1冷媒センサ10及び第2冷媒センサ11の動作を制御する制御部9とを備え、制御部9は、空気調和機1の運転中及び運転停止直後から一定時間は第1冷媒センサ10を加熱して動作させ、空気調和機1の停止中は第2冷媒センサ11を動作させ、且つ、第1冷媒センサ10を加熱しないように制御するので、冷媒の漏洩検知期間を短縮することなく、半導体式である第1冷媒センサ10の加熱時間を短縮して第1冷媒センサ10の経時劣化を抑制できる。
また、第2冷媒センサ11は、第1冷媒センサ10による冷媒の検知濃度上限以下の検知濃度下限を有するので、第1冷媒センサ10で検出できない濃度範囲の全てを第2冷媒センサ11で検出できる。これにより、空気調和機1の運転停止中における冷媒の低速漏洩(スローリーク)であっても、一定時間経過後には漏洩した冷媒の濃度が第2冷媒センサ11の検知濃度下限である1%を超えるので、許容濃度規制値に到達する以前に漏洩した冷媒を検知することが可能になる。
また、冷媒の漏洩リスクが高い空気調和機1の運転中は、低濃度の冷媒も検知可能な半導体式の第1冷媒センサ10に通電するので、冷媒の漏洩を高精度に検知することができる。
また、冷媒の漏洩リスクが低い空気調和機1の運転停止中は、第1冷媒センサ10ではなく第2冷媒センサ11を動作させることにより、第1冷媒センサ10の経時劣化を抑制する。空気調和機1の運転停止中は、室内ファン7も停止しており、漏洩した冷媒が室内ファン7によって拡散されないため、検知濃度範囲が第1冷媒センサ10よりも高い第2冷媒センサ11であっても漏洩した冷媒を確実に検知することができる。また、第1冷媒センサ10が通電状態で高濃度の冷媒や雑ガスに接触して故障することも回避でき、第1冷媒センサ10の雑ガスによる誤検知も防止できる。
また、本実施形態では、第2冷媒センサ11として、半導体式よりも経時的に安定で 、赤外線式よりもコストが安い気体熱伝導式の冷媒センサを用いるので、大幅なコストアップを回避しつつ、第1冷媒センサ10の耐用年数を延ばすことができる。
また、本実施形態では、冷媒が第2冷媒センサ11の検知濃度下限よりも高い許容濃度規制値を有するので、空気調和機1の運転停止中であっても、漏洩した冷媒をその濃度が許容濃度規制値に達する前に検知することができる。
また、本実施形態では、圧力変動が大きく、冷媒の漏洩リスクが高い運転停止直後の一定時間については、検知濃度範囲が低い第1冷媒センサ10が通電されるように制御するので、運転停止後における冷媒の低速漏洩も検知することができ、また、一定時間経過後は、低速漏洩であっても第2冷媒センサ11の検知濃度下限に到達し、第2冷媒センサ11による検知が可能になる。
また、本実施形態では、漏洩した冷媒が床面に滞留しやすい床置き式の室内機2に第1冷媒センサ及び第2冷媒センサが搭載されているので、本発明の効果が顕著になる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
例えば、上述した実施形態は、床置き式の室内機を例として説明したが、本発明は壁掛け式の室内機や室外機でも実施することができる。
また、上述の実施形態では、第1冷媒センサ及び第2冷媒センサを室内機の内部に配置することを想定しているが、室内機の外部に配置してもよい。
また、上述の実施形態では、第2冷媒センサとして気体熱伝導式の冷媒センサを用いているが、気体熱伝導式以外(半導体式も除外)の方式で冷媒を検知する冷媒センサであってもよい。
また、上述の実施形態では、冷媒としてR32を使用しているが、他の冷媒を使用した空気調和機であってもよい。ただし、冷媒の種類によってLFL(Lower Flammable Limit)が異なるので、冷媒の種類に応じて規格値(LFL*1/4)を変更する必要がある。例えば、R32のLFLは14.4%だが、R1234yfは6.2%、R1234zeは6.5%である。