JP2003504640A - 空調プロセスおよび冷凍プロセスを監視するためのバイオセンサ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 バイオセンサ（１０）は、空調プロセス・システムもしくは冷凍プロセス・システムの選択された局面を実時間で監視するために利用される。バイオセンサ（１０）は、監視すべき、前記環境制御プロセスの選択された局面を示す１つもしくは複数の分析物を検出するよう機能する生物剤（２２）を備えている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【背景技術】

本発明は、主に、バイオセンサに関し、特に、暖房、換気、空調および冷凍プ
ロセスといった環境制御プロセスを監視するためのバイオセンサに関する。

【０００２】 バイオセンサは、反応性の生物物質素子、ベースセンサ素子およびこれらの間
の中間素子の３つの基本的構成要素からなる化学的センサである。生物物質素子
は、検出すべき所定の分析物と特異的に反応するよう選択された生物剤（bioage
nt）（例えば、生物活性種や生体機能模倣種）を備えている。生物剤は、通常は
生化学的プロセスによって、分析物と結合するか、もしくは分析物を測定可能な
物質に変換するよう機能する。一般的なセンサに用いられる生物物質としては、
酵素、抗原、抗体、受容体、組織、全細胞、細胞小器官、バクテリアおよび核酸
といった生物学的種（biological species）が挙げられる。センサ素子は、分析
物の存在（例えば分析物の実際の量）を示す測定可能な出力（通常は電気的信号
や光学的信号）を発生させる物理的要素を備えている。一般的なセンサに用いら
れるセンサ素子には、例えば、電気化学的デバイス、光学的デバイス、音響デバ
イスおよび測熱デバイスが含まれる。中間素子は、センサと生物物質とを分離し
かつこれらを連結するよう機能する膜もしくはコーティングからなる。一般的な
バイオセンサに用いられる中間層の例として、高分子膜、電子高分子化コーティ
ング（electropolymerized coating）、および自己集合モノマが挙げられる。

【０００３】 一般的なバイオセンサとしては、例えば、マイクロカンチレバーバイオセンサ
、生物発光バイオレポータセンサ（bioluminescent bioreporter sensor）、光
ファイバプローブバイオセンサ、多孔性シリコン光学的干渉バイオセンサ（poro
us silicon optical interferrometric biosensor）、および生体機能模倣型セ
ンサ（biomimetic sensor）が挙げられる。マイクロカンチレバーバイオセンサ
は、電子式読出しチップと動作上関連したＭＥＭＳセンサチップを備えている。
このようなタイプのバイオセンサは、抗体−抗原反応を利用した生物学的検出に
用いられてきた。さらに、このようなマイクロカンチレバーバイオセンサは、ト
ルエン、アセトン、メタノールおよびホルムアルデヒドの濃度測定に用いられて
きた。このようなタイプのバイオセンサに用いられるマイクロカンチレバーは、
通常、シリコンもしくは窒化シリコンからなる。

【０００４】 生物発光バイオレポータセンサは、集積回路にじかに接触したバイオレポータ
生物を備えている。バイオレポータ生物は、遺伝学的に設計することが可能なも
のであるが、分析物が検出された場合に発光し、この光学的信号がＩＣにより検
出される。現在、ＩＣの光検出部およびその近傍にこのような細胞を固定するた
めの材料として、様々なものが考慮されている。このような材料の例として、寒
天／アガロース、アルギナート、カラナーゲン、ポリウレタンおよびポリアクリ
ルアミドが挙げられる。生物発光バイオレポータ集積回路センサは、ナフタレン
、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、およびポリ塩化ビフェニル
（ＰＣＢ）の検出に利用して成功してきた。生物発光バイオレポータは、さらに
、イソプロピルベンゼンの検出、熱ショック遺伝子発現の監視、酸化的応力の監
視、水銀の検出、生物膜中のアルギナートの生成の検出のために設計されてきた
。

【０００５】 光ファイバプローブバイオセンサは、エーロゾール化されたバクテリア（aero
solized bacteria）の遠隔式検出のために設計されてきた。このようなバイオセ
ンサは、光ファイババイオセンサプローブを備えており、この光ファイババイオ
センサプローブは、遠隔運転される小型航空機に搭載された自動流体装置、サイ
クロン型空気採取装置、無線受信器および電池と一体化されている。このような
バイオセンサは、光ファイバの減衰波領域で複数の免疫測定を同時に行なうこと
が可能なものである。分析物を含有するサンプルにプローブが接触すると、固定
化された抗体が、バルク溶液中の分析物と特異的に結合する。蛍光物質もまた、
減衰波領域で結合する。減衰波領域において蛍光物質が光により励起される（レ
ーザー蛍光計を用いて）ことによって、検出可能な信号が発生する。光ファイバ
プローブは、病原体を検出するための臨床サンプル、毒素を検出するための食料
品サンプル、汚染物質を検出するための地下水サンプル、および生物戦の薬剤を
検出するための雰囲気サンプルを分析するために用いられてきた。ある遠隔式バ
イオセンサには、光ファイバプローブのテーパ状先端部に抗体を固定するために
、ビオチン‐アビジンシステムが用いられている。このようなシステムは、光フ
ァイバプローブ上の結合する抗体を変えることによって、複数の分析物の検出に
適合させることができる。アビジン−ビオチンの架橋方法を用いた場合、感度が
増大するとともに、ガラス表面が非特異性抗体に対して不活性化されるために非
特異的な反応が減少する。

【０００６】 多孔性シリコンをベースとした光干渉バイオセンサは、色の変化によって、種
々の分子の存在を示すものである。このような技術の基礎は、光干渉パターンの
変化を監視することである。ＤＮＡ鎖や抗体鎖といった化学的認識分子が、多孔
性シリコンチップ上に固定される。媒体の有効光学的厚さは、干渉スペクトル（
spectral interferrogram）のピークのオーダおよび波長に関連する。従って、
強度とエネルギとの間の関係のフーリエ変換を用いて、中間層の有効光学的厚さ
を計算することができる。生物物質が結合することによって有効光学的厚さが変
化した場合（屈折率および厚さの変化に起因して）、関連する屈折率変化機構に
依存して干渉パターンがシフトし、波長が増減し、この結果、放出される色が変
化する。このことは、感度が極めて良好なバイオセンシング方法として利用する
ことができる。多孔性シリコンのこのような光ルミネッセンスは、ナノ／量子寸
法のシリコン結晶が存在することに起因する。このような技術を用いて、様々な
化合物を検出するための搬送可能な手保持型のバイオセンサが、開発されている
。このような装置は、ＤＮＡ、抗体、およびビオチン／アビジンシステムの検出
に用いることができる。

【０００７】 生体機能模倣センサは、実質的に、分析物を検出するために生物素子を用いる
のではなく、化学的反応を利用して生物学的プロセスを模倣するものである。生
体機能模倣センサは、一般的に、光を透過させる多孔性固体状基板（例えば、シ
リカゲル、多孔性二酸化シリコン、多孔性の浸出されたホウケイ酸ガラス）を備
えている。さらに、生体機能模倣センサは、発光ダイオードと、伝達された光を
検出するフォトトランジスタと、を備えており、自己再生型の化学的検出エジェ
ントが基板上に浸漬されている。一酸化炭素を検出するために設計された１つの
このような生体機能模倣センサにおいては、ヘモグロビンの機能を模倣する超分
子有機金属化学化合物が、化学的検出用エジェントとして、自己集合により固体
基板の表面に配置されている。ＣＯ検出のための化学的検出用エジェントは、可
溶性のパラジウム塩、モリブデンおよび／またはタングステン塩、銅塩、分子封
止物質（molecular encapsulants）（例えばアルファサイクロデキストリン）の
混合物である。このような固体状センサをＣＯに接触させると、化学的エジェン
トの光密度が変化する。ＣＯが含まれない空気中では、雰囲気中のＣＯの減少速
度に比例した速度の自己再生過程によって、化学的検出素子のスペクトルが逆方
向にシフトする。このようなセンサの応答特性（感度および応答時間）は、化学
的検出エジェントの形成プロセスを制御することによって、所定の標準もしくは
用途を満たすように設計することができる。米国特許第５，０６３，１６４号に
は、エチレンの検出のために開発された生体機能模倣センサについて開示されて
いる。

【０００８】

【発明の開示】

本発明の目的は、空調プロセス・システムもしくは冷蔵プロセス・システムの
選択された局面を実時間で監視するためのバイオセンサを提供することである。

【０００９】 開示された一実施例によると、バイオセンサが、居住用もしくは商業用建造物
の空調システム内部のバクテリア、菌類、微生物、揮発性有機化合物もしくは特
定のアレルゲンを検出するために利用される。

【００１０】 もう１つの開示された実施例によると、居住用システムもしくは商業用システ
ムにおける蒸発器コイルからの冷媒の漏洩の発生を検出するために利用される。
冷媒の漏洩の検出は、雰囲気に悪影響が及ぶ可能性があるとともに幾つかの冷媒
には毒性があることから、極めて懸念されるものである。

【００１１】 開示された他の実施例によると、バイオセンサが、空調システムや冷凍システ
ムにおけるバクテリアや菌類の増殖を検出するために利用される。例えば、バイ
オセンサが、商業用建造物の空調システム、水加熱器もしくは冷却塔の内部のレ
ジュネラバクテリアの存在を検出したり、冷凍食品保存コンテナ内部の大腸菌バ
クテリアの存在を検出するために利用される。

【００１２】 更に他の開示された実施例によると、バイオセンサが、食品保存用冷蔵コンテ
ナ内部で果物や野菜が熟していることもしくは食品の品質が低下していることを
示すある種の微生物（例えばエチレン）の存在および／またはその濃度を検出す
るために利用される。

【００１３】 更に開示された実施例によると、バイオセンサが、酸素が低減された雰囲気が
維持されている、生鮮食品用の冷凍輸送コンテナ内部の二酸化炭素の存在および
濃度を検出するために利用される。このようなバイオセンサを用いて、室内の二
酸化炭素の濃度を監視し、清浄な空気を室内に導入するための換気を制御するた
めの制御信号を発生させることも可能である。

【００１４】 開示された他の実施例によると、バイオセンサが、金属部材の腐食の副生成物
である化学物質の存在を検出するために利用される。

【００１５】 開示された他の実施例によると、バイオセンサが、吸収冷凍器（例えば、商業
用建造物の空調システムの吸収冷凍器）の内部の水素ガスの存在を検出するため
に利用される。冷却器内部の水素ガス濃度は、冷却器内部の腐食の程度を示すも
のである。

【００１６】

【発明を実施するための最良の形態】

図１を参照すると、暖房プロセス、換気プロセス、空調プロセス、冷蔵プロセ
スもしくは他の環境制御プロセスの選択された局面を実時間で監視するのに適し
たバイオセンサ１０が示されている。バイオセンサ１０は、生物剤２２を備えた
生物物質素子（biocomponent element）２０を備えている。生物剤２２は、監視
すべき環境制御プロセスの選択された局面を示す１つもしくは複数の分析物を検
出するよう機能するものである。図１に示されているように、生物物質素子２０
は、片持ち方式でベースセンサ素子３０上に支持されている。ベースセンサ素子
３０は、さらに、測定可能な出力信号を入力信号から発生させるよう動作する。
中間層４０が、ベースセンサ素子３０の少なくとも一部の上に延びており、生物
物質素子２０とベースセンサ素子３０との間でこれらに接触している。図１には
マイクロカンチレバーバイオセンサが示されているが、本発明の主旨および範囲
から逸脱することなく、バイオセンサ１０を、他の物理的構成で形成することも
可能である。

【００１７】 各分析物は、環境制御プロセスと関連するガスもしくは空気中に存在する微生
物の代謝プロセスにより副生成物として生成された所定の揮発性有機化合物を構
成するものである。本発明のバイオセンサを用いて所定の分析物の存在を検出す
ることにより環境制御プロセスを監視することによって、分析物のレベルが低下
するようにもしくは分析物の影響が緩和されるように、このプロセスを制御する
ことができる。図２には、本発明によって環境制御プロセスを監視するためのプ
ロセスが示されている。容器５０内部の、環境制御された雰囲気からの空気もし
くは気体は、連続的もしくは要求に応じて、戻り導管６０、供給導管７０および
プロセスユニット８０を循環する。プロセスユニット８０は、環境制御ユニット
８２（例えば、暖房ユニット、濾過ユニット、空調ユニット、換気ユニット、冷
凍ユニットなど）を備えている。好ましくは、プロセスユニット８０に、プロセ
スユニット８０を通過する空気流もしくはガス流から望ましくない分析物の少な
くとも一部を除去するための汚染除去装置８４（例えば、スクラバ、吸収装置、
反応器など）を備えることも可能である。

【００１８】 環境制御された雰囲気からの空気もしくはガスを監視して１つもしくは複数の
分析物の存在を検出するために、空気流もしくはガス流７５の比較的僅かな部分
９５が、バイパス導管９０によって戻り導管７０から取り出された後に、下流側
部分で導管７０に戻される。バイオセンサ１０は、バイパス導管９０と動作上関
連付けて配置され、バイパス流９５中の分析物の存在を検知する。動作中、バイ
オセンサ１０の生物物質素子２０は、分析物と反応し、バイオセンサ１０のベー
スセンサ素子３０への入力信号を発生させる。ベースセンサ素子３０は、少なく
とも、バイパス流９５中の所定レベルの分析物の存在もしくは分析物の絶対量を
示す出力信号３を発生させる。

【００１９】 コントローラ１００は、センサ素子３０からの出力信号３（例えば連続的な電
圧信号）を受信して処理し、信号の絶対値および変化率のいずれかに対して適切
な応答を与える。例えば、コントローラ１００によって、出力信号３により示さ
れた分析物の濃度が望ましくない（例えば所定値を上回っている）と判断された
場合、システムの適切な応答を開始する制御信号がコントローラ１００から発生
される。例えば、警報機１１０を起動する制御信号５をコントローラ１００から
発生させることが可能である。さらに、コントローラから、汚染除去装置８４を
起動する制御信号７を発生させたり、もしくは、アクチュエータ１２０へと制御
信号９を出力して、供給導管６０と関連する換気用ドア１２２を開かせ、供給導
管６０を流れる空気もしくはガスの一部を放出することも可能である。

【００２０】 本発明の一実施例によると、微生物（例えば、菌類、揮発性有機化合物、特定
のアレルゲン）などの特定の汚染物質もしくは関連する汚染物質の存在を検知す
るよう形成された反応性生物物質を備えたバイオセンサが、環境制御される人員
用隔室（例えば、居住用もしくは商業用の建造物、自動車、車両、バス、航空機
、電車もしくは船室）のためのＨＶＡＣシステムの供給導管もしくは戻り導管に
動作上関連付けて配置されている。センサの生物物質素子によって、被検出分析
物の存在を示す出力が発生され、センサ素子から、測定可能な信号が発生される
。この信号をパターン認識システムにより処理することによって、容器に出入り
する空気流中の選択された分析物（例えば、菌類の数、揮発性有機可能物の濃度
、もしくはアレルゲンの濃度）を推測することができる。ある種の揮発性有機化
合物（一般的に、微生物ＶＯＣもしくはｍＶＯＣとして知られる）は、建物用空
調システム内に悪臭を発生させるものと認識されている（例えば、ジオスミン、
１−オクテン−３−オール）。検出すべき所定分析物に対応した特定の吸収剤に
より各マイクロカンチレバーが被覆されたマイクロカンチレバーセンサと、所定
分析物の検出に対して遺伝学的に設計された特定のバイオレポータを備えた生物
発光バイオレポータセンサと、がこのような用途に特に適している。このような
用途においては、バイオセンサ１０として、例えば、抗原−抗体結合反応を利用
した生物剤を備えたマイクロカンチレバーセンサ、光出力を検知するマイクロチ
ップに一体に設けられた生物発光センサ、免疫測定技術と組み合わせられたファ
イバプローブバイオセンサを用いることができる。

【００２１】 マイクロカンチレバーをベースとしたセンサは、空調システムの漏洩する冷媒
の検出にも有用である。複数のマイクロカンチレバーセンサ（それぞれ異なる種
類の、冷媒を吸収する樹脂化合物により被覆されている）を、蒸発器コイルの近
傍の空調導管に設置することができる。種々の冷媒の、選択された各樹脂への溶
解度がそれぞれ異なるものとなるように、樹脂化合物が選択される。所定樹脂へ
の冷媒の溶解度は、主に、冷媒の双極子モーメントおよび蒸気圧によって決まる
。カンチレバーの被覆に依存する冷媒の溶解速度によって、各冷媒に固有のパタ
ーンが得られる。吸収された冷媒の総重量はその周囲圧力に関連するため、冷媒
の濃度もまた測定することができる。嫌気性雰囲気に反応するバイオセンサもま
た、冷媒の存在を検出するのに用いることができるだろう。このようなセンサに
は、メタン細菌の培養や、冷媒と反応して酸もしくは他の副生成物を生成する活
性酵素を利用することも可能である。このような酸もしくは他の副生成物は、色
の変化や蛍光分子（fluorescent molecules）からの発光により検出することが
できる。

【００２２】 マイクロカンチレバーをベースとしたセンサは、さらに、吸収冷凍器（例えば
大規模な商業用建造物の空調システムに通常利用される水冷器）における漏洩の
発生を検出するのに有用である。通常、漏洩が生じると、空気中の酸素が冷凍器
内部へと漏洩することによって、腐食が促進される。腐食が発生した結果、水素
が吸収冷凍器内部に形成されるため、水素の生成が促進され、バイオセンサが実
時間の腐食検出器として動作する。従来の技術を用いた場合、動作中の吸収冷凍
器の内部の腐食を監視するのが極めて困難であるとともに、多くの手作業が必要
となり、かつ運転を中断しなければらならい。本発明のこのような形態によると
、漏洩および冷凍器内部での腐食の発生が、冷凍器外部に配置されたバイオセン
サにより非干渉的な方式で検出される。

【００２３】 本発明の他の形態によると、バイオセンサが、バクテリアの存在を検出するた
めに用いられる。大腸菌のバクテリアは、温度が適切に保たれない場合に、食料
品が存在する場所で繁殖することが知られている。病原性レジュネラバクテリア
は、ある条件下で冷却塔内部に存在する可能性があり、ある場合には、建物の空
調システム内部の被制御空気に含まれている。各用途に応じて大腸菌特異抗体も
しくはレジュネラ特異抗体による被覆、浸漬もしくは他の前処理が行われた生物
物質素子を備えたバイオセンサを、食品保存コンテナや陳列ケースの内部の大腸
菌、および冷却塔内のレジュネラ菌のオンラインモニタを行なうのに利用するこ
とができる。カンチレバー素子が選択された特定の抗体により被覆されたマイク
ロカンチレバーバイオセンサ、光ファイバプローブの先端部が選択された特定の
抗体により被覆された光ファイバプローブバイオセンサ、および多孔性シリコン
の表面が選択された所定の抗体により被覆された多孔性シリコンセンサが、この
ような用途に特に適している。これらのセンサは、集積回路上の電子回路と一体
化することも可能である。例えば、抗体、抗原もしくは酵素を薄膜表面に結合さ
せることによって、大腸菌を表面プラズモン共鳴（ＳＰＲ）技術により検出する
ことができる。大腸菌の結合によって、薄膜の光学特性が変化し、共振光の波長
がシフトし、これによって、バクテリアの存在が示される。また、どちらのバク
テリアも、特定の抗体と結合した場合に、電流もしくは蛍光の応答によって検出
することができる。購入可能なレジュネラ特異抗体もしくは大腸菌特異抗体を、
センサ素子（例えば、バクテリアを空気から捕獲するのに利用できる磁気ビード
）上に被覆することも可能である。サンドイッチ分析方法を用いることによって
、捕獲されたバクテリアを、続いて、適切に標識した抗体により発色させること
ができる。

【００２４】 本発明のバイオセンサは、さらに、生鮮食品を冷蔵する用途（例えば、冷凍保
存室、冷凍輸送用のコンテナ、トラックおよびトレイラ、冷凍陳列ケース）にお
いて、熟した果物および生鮮食品の品質の保存状態を管理するのにも適している
。このような用途では、本発明のバイオセンサの生物物質素子が、果物、野菜、
肉および他の食品の鮮度を示すものとして利用可能な所定の化学種もしくは代謝
産物を検出することができる特定の生物剤により被覆、浸漬もしくは他の方法で
前処理される。このようなセンサは、食品保存用冷凍ユニット内部に配置するこ
とができる。食品保存用冷凍ユニットの例としては、これらに限られないが、ス
ーパーマーケットの陳列ケース、冷蔵庫および冷凍庫のみならず、輸送用のコン
テナ、トレイラおよびトラックが挙げられる。例えば、バイオセンサを、熟した
果物の存在を示すものとして食品保存冷凍ユニット内部のエチレンのレベルを監
視するために配置し、換気を改善させたり、エチレンを除去したり、温度を低下
させるための能動的フィードバック手段として利用することができる。食品保存
装置内部のエチレンに加えて、バイオセンサを、食品保存ユニット内部の二酸化
炭素のレベルを監視するために利用することができ、さらに、食品保存状態を制
御するための能動型フィードバックを行なうことも可能である。エチレンもしく
は二酸化炭素に対して遺伝学的に設計されたバイオレポータ生物を備えた生物発
光バイオレポータセンサ、およびエチレンもしくは二酸化炭素に応じた吸収剤に
より被覆、浸漬もしくは他の前処理が行なわれたマイクロカンチレバーバイオセ
ンサが、このような用途に適している。

【００２５】 図２を再び参照すると、冷凍果物輸送コンテナの例において、バイオセンサ１
０が、バイパス導管９０に配置されている。バイパス導管９０は、コンテナ５０
から延びた空気取り入れ導管７０と連通した流入口と、流入口の下流側でかつ冷
凍ユニット８２の上流側で空気取り入れ導管７０と連通した流出口と、を備えて
いる。僅かな量の空気がバイパス導管９０により抽気されてバイオセンサ９０に
導かれる。好ましくは、バイオセンサ１０は、連続的な監視が可能なものであり
、かつその応答時間が１０分以下である。生物物質素子２０が、エチレンに接触
した場合に光密度が変化するもの（例えば、バラジウムベースの化合物およびモ
リブデンベースの化合物）であるとともにベース素子３０と動作上関連しており
、ベース素子３０が、生物物質素子２０を通過する光の密度を検出し、検出した
光密度を示す電圧信号を発生させるもの（例えばフォトトランジスタ）であるバ
イオセンサ１０を好適に利用することができる。動作中、所定強度の光ビームが
光源（図示せず）から生物物質素子２０へと投射され、生物物質素子２０を通過
する光強度が、センサ素子３０により測定される。コントローラ１００は、セン
サ素子３０から電圧信号を受信し、この信号を１００％の光透過を示す設定点電
圧と比較し、設定点電圧と受信した電圧信号との差から、コンテナ５０からの空
気に含まれているエチレンの濃度を決定する。

【００２６】 コントローラ１００は、測定したエチレン濃度を、エチレンの許容可能なレベ
ルを示す所定設定点濃度と比較する。測定された濃度が設定点濃度を上回ってい
る場合、コントローラ１００は、通気アクチュエータへと制御信号を送ることに
より通気用ドアを開く。戻り導管６０を通ってコンテナ２０に戻る空気の一部は
、開かれた通気用ドアにより設けられた開口部により外部に放出され、冷凍ユニ
ットからの補給空気と置換される。センサ１０によって、エチレン濃度が連続的
に監視されるため、コントローラ１００は、エチレン濃度が許容可能なレベルに
戻った時点を認識し、この時点で信号を通気アクチュエータへと送って通気用ド
アを閉じる。さらに、コントローラ１００をバイオセンサ１０の機能を監視する
ために配置し、バイオセンサ１０が故障してしまった場合もしくはバイオセンサ
の動作時間が所定時間を超えた場合に、コントローラ１００から警告信号を発生
させることも可能である。ある種のバイオセンサは、例えば時間もしくはバイオ
センサの電圧出力のレベルに基づいて、生物剤を周期的に充填したり交換したり
する必要がある。従って、バイオセンサの動作時間を記録するためのタイマ、も
しくは、交換もしくは充填の必要性を示す機能の変化を検知する検出器をコント
ローラ１００に備え、コントローラ１００から警報を発生させて使用者に警告を
与えることができる。

【００２７】 さらに、コントローラ１００を、循環する空気の温度、湿度、二酸化炭素レベ
ル、酸素レベル、窒素レベルを監視するための付加的なセンサ（バイオセンサお
よび一般的センサのどちらでもよい）に接続し、このような情報をデータ記録装
置１３０に送ることができる。バイオセンサ１０の出力およびコントローラ１０
０の出力をデータ記録装置１３０により記録して、輸送／保存運転中にコンテナ
内部に存在したエチレンの量を示す時間‐濃度履歴の記録を得ることもできる。
具体的には、温度、湿度、二酸化炭素、酸素および窒素のみならず、エチレン濃
度を記録することができる「スマートカード」もしくは「レシート（receipt）
」を所望により用いることができる。

【００２８】 バイオセンサは、金属部材の初期腐食を検出する手段として、金属の腐食過程
で生じる化学種を検出するのに利用することもできる。例えば、微生物により引
き起こされる、構成部材の腐食は、暖房システム、換気システムおよび空調シス
テムにおいて徐々に懸念されてきている現象である。微生物による腐食が起こっ
た結果生じる種の例として、有機酸が挙げられる。さらに、ギ酸の存在は、ギ酸
による腐食（formicary corrosion）が発生していることを示している。このよ
うな種の存在を検出することによって、構成部材もしくは所定の部材の健全性を
、連続的もしくは周期的に、かつ遠隔的に監視することができる。腐食過程中に
生じる有機塩もしくはギ酸を検出するための所定の吸収剤により被覆、浸漬もし
くは他の処理が行われれたマイクロカンチレバーベースのセンサが、このような
用途に特に適している。生物発光バイオレポータセンサおよび多孔性シリコンバ
イオセンサもまた、このような用途に有用である。

【００２９】 本発明の様々な実施例についての詳細な説明および付随の図面によって、本発
明をより詳細に理解することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の一形態のバイオセンサの側断面図。

【図２】 本発明のバイオセンサにより監視される環境制御プロセスを示す概略図。

【手続補正書】特許協力条約第３４条補正の翻訳文提出書

【提出日】平成１３年８月８日（２００１．８．８）

【手続補正１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】特許請求の範囲

【補正方法】変更

【補正の内容】

【特許請求の範囲】

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｆ２５Ｂ 49/04 Ｆ２５Ｂ 49/04 Ｆ２５Ｄ 11/00 １０１ Ｆ２５Ｄ 11/00 １０１Ｄ 23/00 ３０１ 23/00 ３０１Ｌ Ｇ０１Ｎ 33/00 Ｇ０１Ｎ 33/00 Ｃ // Ｇ０１Ｎ 21/59 21/59 Ｚ (72)発明者 ミッシェル，ハーヴェイ アメリカ合衆国，コネチカット，ダヴリュ ー．ハートフォード，タンブルブロック レーン ７ (72)発明者 メインザー，リチャード アメリカ合衆国，コネチカット，グラスト ンベリー，グッデイル ヒル ロード 599 (72)発明者 ヘルツバーグ，ジャレッド バルネイ アメリカ合衆国，コネチカット，マンチェ スター，ハイ ストリート 84 Ｆターム(参考） 2G045 AA40 BA11 CB21 CB30 DA80 FB01 FB03 FB05 FB11 2G059 AA01 BB01 CC13 EE01 KK01 MM05 3L045 PA02 3L061 BA01 BC05 4B029 AA07 BB01 BB15 BB20 CC01 FA06 FA10 FA12 HA09 HA10

Claims (10)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 暖房プロセス、換気プロセス、空調プロセスもしくは冷凍プロ
   セスの選択された局面を実時間で監視するためのバイオセンサ装置であって、 測定可能な出力信号を入力信号から発生させるセンサ素子と、 前記センサ素子と動作上関連しているとともに、監視すべき前記プロセスの前
   記局面を示す分析物を検出するよう機能する生物剤を備えている生物物質素子と
   、 を備えていることを特徴とするバイオセンサ装置。
2. 【請求項２】 環境制御された雰囲気を通って循環する気体を暖房、換気、冷
   却もしくは冷凍するプロセスの選択された局面を制御する装置であって、 前記気体中に存在する所定の分析物を検出するよう機能する生物剤を含む生物
   物質素子、および前記生物物質素子と動作上関連して、前記気体中の前記分析物
   の存在を示す測定可能な出力信号を発生させるセンサ素子を備えたバイオセンサ
   と、 前記バイオセンサから受信した前記出力信号に応答して、警告信号を発生させ
   るコントローラと、 を備えていることを特徴とする装置。
3. 【請求項３】 環境制御された雰囲気を通って循環する気体を暖房、換気、冷
   却もしくは冷凍するためのプロセスの選択された局面を制御する装置であって、 前記気体中に存在する所定の分析物を検出するよう機能する生物剤を備えた生
   物物質素子、および前記生物物質素子と動作上関連しているとともに、前記気体
   中の前記分析物の濃度を示す測定可能な出力信号を発生させるセンサ素子を備え
   たバイオセンサと、 前記バイオセンサからの前記出力信号を受信して、制御信号を発生させるコン
   トローラと、を備えており、前記制御信号は、前記バイオセンサから受信された
   、 前記分析物の濃度を示す前記出力信号が所定濃度を上回っていることが前記コン
   トローラによって判断された場合に、前記コントローラと関連した被制御装置を
   駆動するよう機能するものであることを特徴とする装置。
4. 【請求項４】 前記生物物質素子が、居住用建造物もしくは商業用建造物の暖
   房システム、換気システムもしくは冷房システムの空気流に含まれる菌類、揮発
   性有機化合物もしくはアレルゲンを検出するよう機能する生物活性剤を備えてい
   ることを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の装置。
5. 【請求項５】 前記生物物質素子が、居住用もしくは商業用の空調システムの
   蒸発器から漏洩する冷媒を検出するよう機能する生物剤を備えていることを特徴
   とする請求項１〜３のいずれかに記載の装置。
6. 【請求項６】 前記生物物質素子が、居住用建造物もしくは商業用建造物の暖
   房システム、換気システムもしくは冷却システムの内部のバクテリアを検出する
   よう機能する生物剤を備えていることを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記
   載の装置。
7. 【請求項７】 前記生物物質素子が、食品保存用冷凍コンテナ内部の気体中の
   エチレンを検出するよう機能する生物剤を備えていることを特徴とする請求項１
   〜３のいずれかに記載の装置。
8. 【請求項８】 前記生物物質素子が、食品保存用冷凍コンテナ内部の気体中の
   二酸化炭素を検出するよう機能する生物剤を備えていることを特徴とする請求項
   １〜３のいずれかに記載の装置。
9. 【請求項９】 前記生物物質素子が、吸収冷凍器のプロセスガス中の水素を検
   出するよう機能する生物剤を備えていることを特徴とする請求項１〜３のいずれ
   かに記載の装置。
10. 【請求項１０】 前記生物物質素子が、金属部材の腐食の化学的副生成物を検
    出するよう機能する生物剤を備えていることを特徴とする請求項１〜３のいずれ
    かに記載の装置。