JP2017178748A - ニッケル−マンガン系複合化合物及びその製造方法 - Google Patents

ニッケル−マンガン系複合化合物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 広いニッケル−マンガンモル比の範囲において、ニッケルとマンガンが高い分散性を有するニッケル−マンガン系複合酸化物を提供し、そのニッケル−マンガン系複合酸化物を使用して得られるリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物、及びそのリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物を正極として使用するリチウム二次電池を提供する。【解決手段】 化学組成式がNix−aM1aMn1−x−bM2bOc(OH)d(ただし、M1及びM2はそれぞれ独立に、Mg、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、ZnおよびZrから選ばれる1種を表し、0.5≦x≦0.625であり、0≦a≦0.01、0≦b≦0.025、0.5≦c≦0.9、1.1≦d≦1.5、c+d=2である)で表され、かつ、平均原子価が2.55〜2.90であることを特徴とするニッケル−マンガン系複合化合物及びその製造方法。【選択図】 図1

Description

本発明は、ニッケル−マンガン系複合化合物、その製造方法、及びその用途に関するものである。詳しくはニッケル−マンガン系化合物、その製造方法、及び該化合物を用いて得られるリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物、並びに該複合酸化物を正極として使用するリチウム二次電池に関する。
リチウム二次電池の正極材料に適したリチウム−ニッケル−マンガン複合酸化物やリチウム−ニッケル−マンガン−遷移金属複合酸化物が求められている。その製造方法としては、ニッケル源、マンガン源、遷移金属源を混合し焼成する固相反応法や、ニッケル及びマンガン、遷移金属を含有する、複合炭酸塩、複合水酸化物、複合オキシ水酸化物、又は複合酸化物を前駆体とする製造方法がある。ニッケル及びマンガンを含有する複合化合物は、金属がより均一に分布しているため、ニッケルとマンガンの規則配列を前提とした場合、好ましい前駆体といえる。
このような正極材料として、例えば、リチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物の前駆体として、不活性雰囲気下の共沈法により得られたニッケル−マンガン複合水酸化物を焼成したニッケル−マンガン複合酸化物を用いることを特徴としたものが開示されている(特許文献1参照)。また、ニッケル塩とマンガン塩とを噴霧乾燥、焼成したニッケル−マンガン複合酸化物をリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物の前駆体として用いることが開示されている(特許文献2参照)。さらに、共沈法により直接得られたニッケル−マンガン複合オキシ水酸化物を用いることが開示されている(特許文献3参照)。また、共沈法により直接得られたニッケル−マンガン−コバルト部分酸化水酸化物を用いることが開示されている(特許文献4参照)。
特開2011−153067号公報 特開2004−303710号公報 WO2015/008863 特許5353239号
特許文献1のマンガンニッケル複合酸化物粒子粉末は、Fd−3mの空間群を有する立方晶スピネル型複合酸化物である。前記マンガンニッケル複合酸化物粉末は、マンガン塩水溶液に過剰量のアルカリ水溶液を用いて中和して、マンガン水酸化物を含有する水懸濁液とし、その酸化反応を行って四酸化三マンガン核粒子を得る一次反応を行い、該一次反応後の反応溶液に対して、マンガン原料とニッケル原料を添加した後、酸化反応を行う二次反応を行い、次いで、酸化性雰囲気で焼成して得られる。以上のように、製造工程が非常に複雑であるため、製造コストが高価であると推定される。
また、特許文献2のマンガンニッケル複合酸化物は、所定のMnとNiの原子比となるようにMn塩とNi塩を溶媒中に投入し、平均粒径が0.1μm以下となるまで粉砕混合し、得られたスラリーを噴霧乾燥させ、Mn塩とNi塩の混合物を得る工程、前記混合物を800〜1000℃で焼成する工程から成る。特許文献1と同様に製造コストが嵩むと推定される。このように、ニッケルとマンガンとが原子レベルで分散したニッケルマンガン系複合酸化物は、正極であるリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物の前駆体として好適であるにもかかわらず、製造工程が複雑であるという課題を有している。
さらに、特許文献3のニッケル−マンガン複合オキシ水酸化物は、共沈、洗浄、乾燥といった一般的かつ簡素な工程で前駆体を得ることが可能であるが、マンガンの比率が高いため、マンガンの比率が低いような、幅広い遷移金属比に対応したリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物およびリチウム−ニッケル−マンガン−遷移金属系複合酸化物の前駆体としては好適でない。
また、特許文献4のニッケル−マンガン−コバルト部分酸化水酸化物は、Coを含有したものしか実施例に記載がなく、実質的にニッケルおよびマンガンを主体とした化合物に関したものではないため、リチウム−ニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物の前駆体としては使用可能でも、リチウム−ニッケル−マンガン複合酸化物および、リチウム−ニッケル−マンガン−遷移金属複合酸化物の前駆体としては好適ではない。また、酸化数が低く水酸化物の形態に近いことから、保存中の空気酸化により、性状の不均一化が起きることが懸念される。
本発明の目的は、共沈、洗浄、乾燥といった一般的かつ簡素な工程で、広いニッケル−マンガンモル比の範囲において、ニッケルとマンガンが高い分散性を有するニッケル−マンガン系複合酸化物を提供し、そのニッケル−マンガン系複合酸化物を使用して得られるリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物、及びそのリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物を正極として使用するリチウム二次電池を提供することである。
本発明者らはリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物の前駆体であるニッケル−マンガン系複合化合物について鋭意検討した。その結果、一般的な共沈、洗浄、乾燥といった一連の操作で、pHと酸化還元電位を制御することにより、広いニッケル−マンガンモル比においてニッケル−マンガン系化合物が得られることを見出した。さらに、金属元素の分散性の高いニッケル−マンガン系化合物を前駆体としたリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物及びリチウム−ニッケル−マンガン−遷移金属系複合酸化物を正極として使用するリチウム二次電池が高性能であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、化学組成式がNix−aM1Mn1−x−bM2(OH)(ただし、M1及びM2はそれぞれ独立に、Mg、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、ZnおよびZrから選ばれる1種を表し、0.5≦x≦0.625であり、0≦a≦0.01、0≦b≦0.025、0.5≦c≦0.9、1.1≦d≦1.5、c+d=2である)で表され、かつ、平均原子価が2.55〜2.90であることを特徴とするニッケル−マンガン系複合化合物及びその製造方法である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物は、化学組成式がNix−aM1Mn1−X−bM2(OH)(ただし、M1及びM2はそれぞれ独立に、Mg、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、ZnおよびZrから選ばれる1種を表し、0.5≦x≦0.625であり、0≦a≦0.01、0≦b≦0.025、0.5≦c≦0.9、1.1≦d≦1.5、c+d=2である)で表される。
上記化学組成式中、0.5≦x≦0.625である。xの値がこの範囲より小さい場合、化合物中のNa濃度が高くなり電池性能が低下し、大きい場合、化合物の形態が水酸化物様となり保存特性が低下する。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物は、異種金属がない場合(a=0及びb=0)でも十分な効果が発揮されるが、異種元素の置換(M1,M2)により、電池性能、特に充放電サイクルの安定性の向上やMnの溶出抑制効果が期待できる。ただし、異種金属が多すぎると、二次電池用正極材とした際に異種金属が異相となり、電池特性が低下する。そのため、0≦a≦0.01、0≦b≦0.025であることが好ましい。
c及びdは、化合物の酸化度に関する指数であり、0.5≦c≦0.9、1.1≦d≦1.5、c+d=2である。cがこの範囲より少ないと化合物の形態が水酸化物様となり、保存特性が低下し、大きい場合、化合物中のNa濃度が高くなり電池性能が低下する。一方、dがこの範囲より大きいと化合物の形態が水酸化物様となり、保存特性が低下し、少ない場合、化合物中のNa濃度が高くなり電池性能が低下する。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物は、平均原子価が2.55〜2.90である。平均原子価が2.55未満の場合は、化合物の形態が水酸化物様となり保存特性が低下し、2.90を超える場合は、化合物中のNa濃度が高くなり電池性能が低下する。電池性能および保持特性をより高い状態とするため、2.60〜2.80が好ましい。ここに、平均原子価は、ヨードメトリーにより求められる。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物は、化学組成式中のNi、Mn、M1及びM2の平均原子価は、2.55〜2.90であることが好ましく、2.60〜2.80がさらに好ましい。ここに、平均原子価は、ヨードメトリー法により求められる。なお、理論平均原子価は形式酸化数に準じるものである。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物の比表面積は、特に限定するものではないが、高い充填性が得られやすいため、160m/g以下であることが好ましく、130m/g以下であることがさらに好ましく、100m/g以下であることが特に好ましく、70m/g以下であることが最も好ましい。
一般的には、充填性と比表面積とは相関関係があるため、低比表面積の方が高い充填性の粉末が得られやすい。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物の平均粒子径は、電極を形成しやすい粒子径に適合させるため、1.5〜10μmが好ましく、3〜8μmがさらに好ましい。なお、平均粒子径とは、一次粒子が凝集した二次粒子の平均粒子径、いわゆる凝集粒子径である。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物の粒子径分布は、特に限定されるものではなく、例えば、単分散の粒子径分布、二峰性の粒子径分布等が挙げられる。単分散、すなわち、モノモーダル(Mono−modal)な分布を有する粒子径分布である場合には、正極とした際にも粒子径が均一であるため、その充放電反応もより均一なものとなる。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物は、その効果を阻害しない限り、化学組成式に含まれるものとは別に、例えば、Mg、Ca、Na、K等のアルカリ金属、アルカリ土類金属等を含有していてもよい。これらのMg等は、極力少ない方が好ましいが、適量含むことで、サイクル性能向上の効果がみられる場合がある。しかし、これら金属の含有量が1000ppmを超えると、放電容量が減少し、エネルギー密度が損なわれるなどの課題が生ずる。そのため、1000ppm以下が好ましく、20〜1000ppmがより好ましく、200〜1000ppmがさらに好ましく、300〜600ppmが特に好ましい。
次に、本発明のニッケル−マンガン系複合化合物の製造方法について説明する。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物は、ニッケル及びマンガン、又はニッケル及びマンガン、並びにMg、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、Zn及びZrからなる群から選ばれる1種以上を含む金属塩水溶液、苛性ソーダ水溶液、及び酸化剤として有酸素ガス又は過酸化水素水を、pH9.5〜11.5、酸化還元電位0.10〜0.23Vで混合して混合水溶液を得た後、該混合水溶液中で、ニッケル−マンガン系複合化合物を析出させて、スラリーを得ることにより製造することができる。
金属塩水溶液は、少なくともニッケル及びマンガンを含み、さらにMg、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、Zn及びZrからなる群から選ばれる1種以上の金属を含むことができる。
金属塩水溶液としては、ニッケル及びマンガン、さらに他の所定の金属を含む、硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩などを溶解させた水溶液、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸、あるいは酢酸などの有機酸に、ニッケル及びマンガン、さらに他の所定の金属を溶解した水溶液、等を挙げることができる。好ましい金属塩水溶液としては、硫酸ニッケル及び硫酸マンガンを含む水溶液を例示することができる。
また、金属塩水溶液中のニッケル、マンガン、及び他の所定の金属の割合は、目的とするニッケル−マンガン系複合化合物中のニッケル、マンガン、及び他の所定の金属の割合となるようにすればよい。
金属塩水溶液中のニッケルとマンガンの割合は、モル比で、0.5:0.5≦ニッケル:マンガン≦0.625:0.375である。
金属塩水溶液中のニッケル、マンガン、及び他の所定の金属の割合は、モル比で、Ni+M1:Mn+M2=0.5≦x≦0.625:0.375≦1−x≦0.5であり、Ni:M1=(0.5≦x≦0.625)−a:a、Mn:M2=(0.375≦1−x≦0.5)−b:b(M1及びM2はそれぞれ独立に、Mg、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、ZnおよびZrから選ばれる1種を表し、0≦a≦0.01、0≦b≦0.025である)を挙げることができる。ここで、a、及びbの好ましい範囲などは、上記したとおりである。
金属塩水溶液中のニッケル、マンガンなどの全金属の合計濃度(金属濃度)は任意であるが、金属濃度は生産性に影響を及ぼすため、1.0mol/L以上が好ましく、2.0mol/L以上がさらに好ましい。
苛性ソーダ水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液であり、例えば、固形状水酸化ナトリウムを水に溶解させたもの、食塩電解で生成した水酸化ナトリウム水溶液を、水で濃度調製したもの等を用いることができる。
苛性ソーダ水溶液の濃度は、10〜48重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい。
酸化剤は、酸素含有ガス又は過酸化水素水である。酸素含有ガスとしては、例えば、空気、酸素等を例示することができる。経済上、空気が最も好ましい。空気や酸素などのガスは、バブラー(bubbler)などを用いてバブリングさせることで添加する。一方、過酸化水素水は、金属塩水溶液や苛性ソーダ水溶液と一緒に混合することができる。過酸化水素水の濃度としては、3〜30重量%、好ましくは3〜10重量%を例示することができる。
金属塩水溶液、苛性ソーダ水溶液、及び酸化剤として有酸素ガス又は過酸化水素水を、pH9.5〜11.5、酸化還元電位0.10〜0.23Vで混合することにより、混合水溶液が得られる。本発明のニッケル−マンガン系複合化合物は、該混合水溶液中で析出し、スラリーとして得られる。
pHが9.5未満であると、層間に硫黄分を含む副生物が生成し化合物中の不純物硫黄濃度が高くなりやすい。一方、pHが11.5を超えると、粒子の成長が阻害され、微細粒子となりやすい。このような微細粒子は濾過・洗浄効率が低く、著しく製造効率が低くなる。高い製造効率での目的物の製造を可能とするためには、pH10〜11が好ましい。
酸化還元電位が0.10V未満であると、化合物の酸化度が低くなり、水酸化物様となる事で保持特性が低くなる。一方、酸化還元電位が0.23Vを超えると、化合物の酸化度が高くなりNa濃度が高くなり電池性能が低下する、化合物の保持特性と高い電池性能の両立のため、酸化還元電位0.13〜0.2Vが好ましい。酸化還元電位は、ヨードメトリー法により、求めることができる。
金属塩水溶液、苛性ソーダ水溶液及び酸化剤を混合するときの温度は、特に限定するものではないが、金属塩水溶液の酸化反応が進みやすく、ニッケル−マンガン系複合化合物がより析出しやすくするために、50℃以上が好ましく、60℃以上がさらに好ましく、60〜70℃が特に好ましい。
なお、混合する温度は、使用する下記の錯化剤によっては、80℃以上とすることもできるが、製造工程上は、上記のような、低い温度が好ましい。
金属塩水溶液、苛性ソーダ水溶液及び酸化剤の混合によりpHが変動する場合がある。この場合、適宜、苛性ソーダ水溶液以外のアルカリ水溶液を混合水溶液に混合することで、pHを制御することができる。苛性ソーダ水溶液以外のアルカリ水溶液の混合は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。苛性ソーダ水溶液以外のアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水溶液が例示できる。また、アルカリ水溶液のアルカリ濃度は1mol/L以上を例示することができるが、1〜10mol/Lが好ましい。
なお、本発明のニッケル−マンガン系複合化合物の製造の際には、錯化剤を添加することができる。錯化剤を共存させると、ニッケルイオンの溶解度が増加し、粒子表面が円滑となり球形度が向上する。その結果、タップ密度が向上するといった利点がある。
錯化剤としては、アンモニア、アンモニウム塩又はアミノ酸が好適である。
アンモニアとしては、例えば、アンモニア水等が例示される。アンモニウム塩としては、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等が例示され、硫酸アンモニウムが特に好ましい。
アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、リシン等が例示され、グリシンが特に好ましい。
該錯化剤は、金属塩水溶液とともにフィード(feed)するのが好ましい。その濃度は、アンモニア又はアンモニウム塩では、NH3/遷移金属のモル比として、0.1〜2が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1である。アミノ酸を使用する場合は、アミノ酸/遷移金属のモル比として、0.001〜0.25が好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.1である。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物の製造は、雰囲気制御は必ずしも必要なく、通常の大気雰囲気下で行うことが可能である。
ニッケル−マンガン系複合化合物の製造方法は、バッチ式、連続式のどちらでもよい。バッチ式の場合、混合時間は任意である。例えば、3〜48時間が挙げられ、さらには6〜24時間を挙げることができる。一方、連続式の場合、ニッケル−マンガン系複合化合物粒子が、反応容器内に滞在する平均滞在時間は、1〜30時間が好ましく、3〜20時間がより好ましい。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物の製造方法では、ニッケル−マンガン系複合化合物が析出した後に、得られたスラリーをろ過し、ケーキの洗浄及び乾燥を行うのが好ましい。
洗浄は、ニッケル−マンガン系複合化合物に付着、あるいは吸着した不純物を除去するために行う。洗浄方法としては、水(例えば、純水、水道水、河川水等)に、ニッケル−マンガン系複合化合物を添加し、撹拌して洗浄する方法が例示できる。
乾燥は、ニッケル−マンガン系複合化合物の水分を除去するために行う。乾燥方法としては、例えば、ニッケル−マンガン系複合化合物を、110〜150℃で、2〜15時間、乾燥する方法が挙げられる。乾燥は、対流伝熱乾燥、輻射伝熱乾燥方式等の装置を用いて行う。
本発明の製造方法では、洗浄し、乾燥した後に、粉砕を行ってもよい。
粉砕は、用途に適した平均粒子径の粉末とするために行う。所望の平均粒子径が得られる方法であれば、粉砕条件は任意であり、例えば、湿式粉砕、乾式粉砕等の方法が例示できる。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物は、金属元素の分散性が高く、リチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物の製造に使用することができる。
特に、本発明のニッケル−マンガン系複合化合物は、二次電池の正極活物質として使用される、化学組成式LiNix−aM1Mn1−x−bM2(ただし、M1及びM2はそれぞれ独立に、Mg、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、ZnおよびZrから選ばれる1種を表し、0.5≦x≦0.625であり、0≦a≦0.01、0≦b≦0.025である)で表せられるリチウム−ニッケル−マンガン系複合化合物の合成に好適に使用できる。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物を原料として、リチウム−ニッケル−マンガン系複合化合物を製造する場合、その製造方法は、ニッケル−マンガン系複合化合物と、リチウム及びリチウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種とを、混合する工程(混合工程)と熱処理する工程(焼成工程)とを有することが好ましい。
ニッケル−マンガン系複合化合物と、リチウム及びリチウム化合物の混合割合は、特に限定するものではなく、一般的にリチウムイオン二次電池の正極材に使われるリチウム:遷移金属モル比が好適に使用できる。例えば、金属モル比で、リチウム及びリチウム化合物÷ニッケル−マンガン系複合化合物=0.9〜1.5があげられ、好ましくは1.0〜1.2があげられる。また、5Vスピネル正極材を作製する場合、マンガン原料を添加して原料中の遷移金属モル比をニッケル:マンガン=1:3付近とし、リチウム及びリチウム化合物÷ニッケル−マンガン系複合化合物=0.45〜0.55としても好適に使用できる。
ニッケル−マンガン系複合化合物とリチウム原料の混合は乾式混合、湿式混合により可能であるが、その方法は任意である。乾式混合ではヘンシェルミキサーを用いた混合を例示できる。
混合工程において、リチウム化合物は任意のものを用いることができる。リチウム化合物としては、水酸化リチウム、酸化リチウム、炭酸リチウム、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、シュウ酸リチウム及びアルキルリチウムからなる群から選ばれる1種以上が例示できる。好ましいリチウム化合物としては、水酸化リチウム、酸化リチウム及び炭酸リチウムからなる群から選ばれる1種以上が例示できる。
焼成工程においては、それぞれの原料を混合した後に、マッフル電気炉等を用いて焼成して、リチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物を製造する。焼成は500〜1000℃、好ましくは800〜1000℃の温度で、空気中、酸素中などの各種の雰囲気下で行うことができる。
得られたリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物は、リチウム二次電池の正極活物質として用いることができる。
本発明のリチウム二次電池に用いる負極活物質としては、金属リチウム、リチウム、又はリチウムイオンを吸蔵放出可能な物質を用いることができる。例えば、金属リチウム、リチウム/アルミニウム合金、リチウム/スズ合金、リチウム/鉛合金、電気化学的にリチウムイオンを挿入・脱離することができる炭素材料等が例示される。中でも、電気化学的にリチウムイオンを挿入・脱離することができる炭素材料が、安全性及び電池の特性の面から、特に好適に用いられる。
本発明のリチウム二次電池で用いる電解質は、特に制限はなく、例えば、カーボネート類、スルホラン類、ラクトン類、エーテル類等の有機溶媒中に、リチウム塩を溶解したものや、リチウムイオン導電性の固体電解質を用いることができる。中でも、カーボネート類が好ましい。
本発明のリチウム二次電池で用いるセパレーターは、特に制限はないが、例えば、ポリエチレン製、ポリプロピレン製などの微細多孔膜等を用いることができる。
本発明のリチウム二次電池の構成の一例としては、本発明のリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物と導電剤との混合物を、ペレット状に成型した後、100〜200℃、好ましくは150〜200℃で減圧乾燥して得られる成形物を電池用正極とし、金属リチウム箔からなる負極、及びエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒に六フッ化リン酸リチウムを溶解した電解液を用いたものが挙げられる。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物は、単一結晶相に近く、金属元素の分散性が高い前駆体である。また、製造プロセスが簡素であるという利点を有する。さらに、本発明のニッケル−マンガン系複合化合物を前駆体としたリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物を正極として使用した場合、リチウム二次電池は高性能である。
実施例1のニッケル−マンガン系複合酸化物のXRDパターンである。 実施例2のニッケル−マンガン系複合酸化物のXRDパターンである。 実施例3のニッケル−マンガン系複合酸化物のXRDパターンである。 実施例4のニッケル−マンガン系複合酸化物のXRDパターンである。 実施例1のニッケル−マンガン系複合酸化物の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2のニッケル−マンガン系複合酸化物の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例3のニッケル−マンガン系複合酸化物の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4のニッケル−マンガン系複合酸化物の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1のニッケル−マンガン系複合酸化物の粒度分布曲線である。 実施例2のニッケル−マンガン系複合酸化物の粒度分布曲線である。 実施例3のニッケル−マンガン系複合酸化物の粒度分布曲線である。 実施例4のニッケル−マンガン系複合酸化物の粒度分布曲線である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これらに限定して解釈されるものではない。
<化学組成の測定>
複合化合物の組成分析は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP法)により行った。すなわち、複合化合物を塩酸、及び過酸化水素の混合溶液に溶解させ、測定溶液を調製した。得られた測定溶液を誘導結合プラズマ発光分析装置(商品名:OPTIMA3000DV、PERKIN ELMER社製)を用いて分析し、化学組成を確定した。
<金属原子価の測定>
ニッケル、マンガンなどの金属の平均原子価は、ヨードメトリーにより測定した。複合化合物0.3gとヨウ化カリウム3.0gを、7N−塩酸溶液50mlに溶解させた後、1N−NaOH溶液200mlを添加して中和した。中和した試料液に対して、0.1N−チオ硫酸ナトリウム水溶液を滴下し、滴下量から平均原子価を計算した。なお、指示薬にはでんぷん溶液を用いた。
<粉末X線回折測定>
X線回折装置(商品名:MXP−3、マックサイエンス社製)を使用し、試料の粉末X線回折測定を行った。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定モードはステップスキャンであり、スキャン条件は毎秒0.04°、計測時間は3秒、測定範囲は2θとして5〜100°の範囲で測定した。
<粒度分布及び平均粒子径の測定>
複合化合物0.5gを0.1Nアンモニア水50mL中に投入し、10秒間超音波照射して分散スラリーとした。該分散スラリーを粒度分布測定装置(商品名:マイクロトラックHRA、HONEWELL社製)に投入し、レーザー回折法で体積分布の測定を行なった。得られた体積分布から粒度分布及び平均粒子径(μm)を求めた。
<タップ密度の測定>
複合化合物2gを10mL(ミリリットル)のガラス製メスシリンダーに充填し、これを200回タッピング(tapping)した。重量及びタッピング後の体積から、タップ密度(g/cm)を算出した。
<比表面積の測定>
流動式比表面積自動測定装置(商品名:フローソーブ3−2305、Micrometrics社製)を用い、複合化合物1.0gを窒素気流中150℃、1時間前処理した後、BET1点法にて吸脱着面積を測定した後、重量で除することで比表面積(m/g)を求めた。
<電池性能評価>
リチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物と、導電剤のポリテトラフルオロエチレンとアセチレンブラックとの混合物(商品名:TAB−2)とを、重量比4:1の割合で混合し、1ton/cmの圧力で、メッシュ(SUS316製)上にペレット状に成型した後、150℃で減圧乾燥し、電池用正極を作製した。
得られた電池用正極と、金属リチウム箔(厚さ0.2mm)からなる負極、及びエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒に六フッ化リン酸リチウムを1mol/dmの濃度で溶解した電解液を用いて、リチウム二次電池を構成した。当該リチウム二次電池を用いて、定電流で、電池電圧が4.9Vから3.0Vの間を、室温下で30サイクル充放電させた。充放電時の電流密度は0.4mA/cmとした。
実施例1
硫酸ニッケル及び硫酸マンガンを純水に溶解し、1.0mol/L(リットル)の硫酸ニッケル及び1.0mol/Lの硫酸マンガンを含む水溶液(金属塩水溶液)を得た。金属塩水溶液中の全金属の合計濃度は2.0mol/Lであった。
また、内容積1Lの反応容器に純水200gを入れた後、これを70℃まで昇温し、維持した。
得られた金属塩水溶液を供給速度1.036g/minで反応容器に連続供給した。また、酸化剤として、空気を供給速度1L/minで反応容器中にバブリングした。さらに、金属塩水溶液及び空気供給の際、pHが10.0となるように、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(苛性ソーダ水溶液)を断続的に添加しながら連続的に反応を進行させた(反応時の酸化還元電位は0.18Vであった)。前記反応により、かかる反応容器中で、ニッケル−マンガン系複合化合物が析出し、スラリーが得られた。反応容器出口から連続的に押し出されたスラリーをろ過し、純水で洗浄することによって、ウェットケーキを得た。当該ウェットケーキを1週間、大気中で風乾した。その後、115℃で5時間乾燥することで、ニッケル−マンガン系複合化合物を得た(Ni0.498Mn0.5020.71(OH)1.29)。当該ニッケル−マンガン系複合化合物の測定結果を表1に示す。
Figure 2017178748
実施例2
pHが10.5となるように5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を断続的に添加しながら連続的に反応を進行させたこと以外は、実施例1と同様な方法でスラリーを得た(反応時の酸化還元電位は0.15Vであった)。得られたスラリーを、実施例1と同様にして、ろ過し、洗浄した後、乾燥することで、ニッケル−マンガン系複合化合物を得た(Ni0.5Mn0.50.85(OH)1.15)。当該ニッケル−マンガン系複合化合物の測定結果を表1に示す。
実施例3
硫酸ニッケル及び硫酸マンガンを純水に溶解し、1.25mol/L(リットル)の硫酸ニッケル及び0.75mol/Lの硫酸マンガンを含む水溶液(金属塩水溶液)を得た。金属塩水溶液中の全金属の合計濃度は2.0mol/Lであった。
また、内容積1Lの反応容器に純水200gを入れた後、これを70℃まで昇温し、維持した。
得られた金属塩水溶液を供給速度1.036g/minで反応容器に連続供給した。また、酸化剤として、空気を供給速度1L/minで反応容器中にバブリングした。さらに、金属塩水溶液及び空気供給の際、pHが10.0となるように、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(苛性ソーダ水溶液)を断続的に添加しながら連続的に反応を進行させた(反応時の酸化還元電位は0.19Vであった)。前記反応により、かかる反応容器中で、ニッケル−マンガン系複合化合物が析出し、スラリーが得られた。反応容器出口から連続的に押し出されたスラリーをろ過し、純水で洗浄することによって、ウェットケーキを得た。当該、ウェットケーキを1週間、大気中で風乾した。その後、115℃で5時間乾燥することで、ニッケル−マンガン系複合化合物を得た(Ni0.621Mn0.3790.59(OH)1.41)。当該ニッケル−マンガン系複合化合物の測定結果を表1に示す。
実施例4
pHが10.5となるように5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を断続的に添加しながら連続的に反応を進行させたこと以外は、実施例3と同様な方法でスラリーを得た(反応時の酸化還元電位は0.15Vであった)。得られたスラリーを、実施例3と同様にして、ろ過し、洗浄した後、乾燥することで、ニッケル−マンガン系複合化合物を得た(Ni0.625Mn0.3750.62(OH)1.38)。当該ニッケル−マンガン系複合化合物の測定結果を表1に示す。
本発明のニッケル−マンガン系複合化合物は、リチウム二次電池の正極活物質などに用いられるリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物の前駆体として使用することができ、そのリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物は、電池用正極材料として、高性能なリチウム二次電池を構成することが可能となる。

Claims (10)

  1. 化学組成式がNix−aM1Mn1−x−bM2(OH)(ただし、M1及びM2はそれぞれ独立に、Mg、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、ZnおよびZrから選ばれる1種を表し、0.5≦x≦0.625であり、0≦a≦0.01、0≦b≦0.025、0.5≦c≦0.9、1.1≦d≦1.5、c+d=2である)で表され、かつ、平均原子価が2.55〜2.90であることを特徴とするニッケル−マンガン系複合化合物。
  2. Ni、Mn、M1及びM2の平均原子価が、2.55〜2.90であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル−マンガン系複合化合物。
  3. 平均粒子径が、1.5〜10μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のニッケル−マンガン系複合化合物。
  4. 化学組成式がNiMn1−x(OH)(ただし、0.5≦x≦0.625であり、5≦c≦0.9、1.1≦d≦1.5、c+d=2である)で表され、平均原子価が2.55〜2.90であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のニッケル−マンガン系複合化合物。
  5. ニッケル及びマンガン、又はニッケル、マンガン、並びにMg、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、Zn及びZrからなる群から選ばれる1種以上を含む金属塩水溶液(ただし、ニッケルとマンガンのモル比が、0.5:0.5≦ニッケル:マンガン≦0.625:0.375である)、苛性ソーダ水溶液及び酸化剤を、pH9.5〜11.5、酸化還元電位0.10V〜0.23Vで混合して混合水溶液を得て、該混合水溶液中で析出させることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかの項に記載のニッケル−マンガン系複合酸化物の製造方法。
  6. pH10〜11で混合することを特徴とする請求項5に記載のニッケル−マンガン系複合化合物の製造方法。
  7. 混合水溶液を得る際に、さらに、錯化剤を添加することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のニッケル−マンガン系複合酸化物の製造方法。
  8. 錯化剤がアンモニア、アンモニウム塩又はアミノ酸であることを特徴とする請求項7に記載のニッケル−マンガン系複合酸化物の製造方法。
  9. 請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載のニッケル−マンガン系複合酸化物とリチウム化合物を混合し、熱処理することを特徴とするリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物の製造方法。
  10. 請求項9に記載のリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物の製造方法で得られたリチウム−ニッケル−マンガン系複合酸化物を正極活物質として使用することを特徴とするリチウム二次電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN115594233A (zh) * 2022-11-07 2023-01-13 湖州超钠新能源科技有限公司(Cn) 钠离子电池四元正极材料前驱体、其制备方法及应用

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