JP2017177448A - 積層多孔フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の性能上及び製造上の課題を解決し、電気化学素子用セパレータとして用いた際に、セパレータとしての実用的な透気特性及び耐熱収縮性を有する積層多孔フィルムを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔フィルムの少なくとも一方の面にアルミナを含有する塗工層を有する電気化学素子用セパレータであって、該塗工層はアルミナ粒子と樹脂粒子とから形成された3次元網目構造を有し、該アルミナ粒子が遷移アルミナ粒子を含み、該塗工層中の該樹脂粒子の含有量が1.5質量%以上である積層多孔フィルムである。
【選択図】図1

Description

本発明は積層多孔フィルムに関する。より詳しくは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔フィルムの少なくとも一方の面に所定のアルミナ含有層を有する、電気化学素子用セパレータとしての使用に適した積層多孔フィルムに関する。以下、電気化学素子用セパレータを単に「セパレータ」と称することがある。
近年、エネルギー保存技術への関心がますます高まりつつある。モバイル機器や電気自動車のエネルギーまでその適用分野が広がるに伴い、充放電可能な二次電池の開発に関心が寄せられている。
二次電池は、化学エネルギーと電気エネルギーの可逆的な相互変換を用いて充電と放電を繰り返し行うことができる化学電池であって、ニッケル−水素二次電池とリチウム二次電池とに大別できる。これらのうち、リチウム二次電池には、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、及びリチウムイオンポリマー二次電池などがある。
一般に、リチウム二次電池は、電極(正極及び負極)、及びセパレータからなる電極群と、前記電極群を収納しアルミニウムがラミネートされたケースと、から構成されている。前記電極群はスタッキング(stacking)形態を有している。上記電極は、正極の場合にはアルミニウム箔に活物質をコートして使用し、負極の場合には銅箔に活物質をコートして使用する。このような形態とすることで電池の大面積化が可能となるので電池容量を増大させることができ、また、電池を簡易化できるという長所がある。一方で電極とセパレータとを単純積層する場合、セパレータと電極の凹凸により界面が不均一となる。その結果、充放電サイクルにおいて電極に対する電解液の湿潤状態が不均一になり、電極上における電解液の局所的な枯渇や、局所的な電極反応が続くことで、電極の劣化を加速させ、電池の寿命を短縮させるおそれがある。また、電極に対する電解液の湿潤状態が不均一な状態が続くと、電極反応が局所的に起こるようになり、電解液に由来する金属リチウムが局所的に析出し、安全性の面でも問題を引き起こし得る。
上記のような課題を解決する技術として、ゲル状ポリマーをセパレータの表面に塗工することが知られている(特許文献1)。ゲル状ポリマーとは、電解液と接触すると、電解液を吸収し、膨潤する高分子を意味する。ゲル状ポリマーを塗工したセパレータは、電解液非膨潤性のポリマーを塗工したセパレータに対してサイクル特性に優れる。これは、膨潤したゲル状ポリマーにより電極とセパレータとの界面が密着し、電極上での局所的な電解液の枯渇や不均一な電極反応が防止された結果であると推察される。
このようなゲル状ポリマーとしてフッ化ビニリデン系ポリマーが知られており、フッ化ビニリデン系ポリマーを表層に有するセパレータが実用化されている。
また、現在生産されているリチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池では、正極と負極との間の短絡を防止するために、ポリオレフィン系のセパレータが採用されている。しかしながらポリオレフィンは200℃以下で溶融する性質を有しているため、内部及び/又は外部の刺激により電池が高温となる場合、ポリオレフィン系セパレータは熱収縮あるいは溶融により体積変化又は流動が起こり、その結果、正極と負極との間の短絡が起こり、ひいては電池が爆発するおそれがある。この理由から、高温環境下でも熱収縮が起こらず、膜形状を維持できるセパレータの開発が望まれている。またポリオレフィン系のセパレータ表面は、電解液のぬれ性が低いという課題もあった。
上述したポリオレフィン系セパレータの問題点を改善するために、多孔性のポリオレフィン系のセパレータ膜基材の少なくとも一部の領域に、無機物粒子とバインダー高分子との混合物が塗布された活性層を含んでなる有無機複合多孔性セパレータ膜が提案されている(特許文献2)。前記ポリオレフィン系のセパレータ膜基材に塗布された前記活性層内の無機物粒子は、該活性層の物理的形態を維持する一種のスペーサの役割をすることで、電池が過熱したとき、該基材が熱収縮することを抑制する。また、活性層中の無機物粒子同士の間には空き空間(interstitial volume)が存在し、これにより微細気孔が形成されている。
特許文献2の実施例には、ポリエチレンセパレータ膜基材上に、無機物粒子と、バインダー高分子としてフッ化ビニリデン系ポリマー(PVdF−CTFE)を用いて形成された活性層を有するセパレータが記載されている。特許文献2によると、このセパレータは疑似内部短絡実験、局部圧壊実験、及び過充電実験により、安全性の向上が確認されている。また、0.5C〜2Cの放電レート特性は、従来のポリエチレンセパレータと同等の性能を有することが記載されている。
このように近年では、従来のポリオレフィン系セパレータ単体では電池の高性能化のニーズに対応しきれなくなってきており、ポリオレフィン系セパレータの表面に機能層を付与することが有効である。前述した無機物粒子やゲル状ポリマーを塗工したセパレータは、その代表例であり、既に商品化されている。
特表2006−525624号公報 特表2008−524824号公報
近年の様々なニーズに応えるために、ポリオレフィン系セパレータの表面に、特許文献1に記載されたゲル状ポリマーや、特許文献2に記載された無機物粒子及びバインダー高分子の混合物を塗布した場合、該セパレータが本来有するイオン透過性をいくらか悪化させることになる。これは前記ゲル状ポリマーやバインダー高分子が、ポリオレフィン系セパレータとの界面において該セパレータの微細孔を閉塞すること、セパレータ内をイオンが移動する際に、無機物粒子が存在するとこれを迂回するために該イオンの行路長が長くなること、並びに、ゲル状ポリマーや前記混合物の塗布膜表面に非多孔性の膜が形成されたりすることなどが原因である。
実際に、特許文献2に記載されているようなセパレータは、無機物粒子及びバインダー高分子の混合物を塗布して活性層を形成することにより、セパレータの透気抵抗の悪化が生じる上に、電池評価においては、2C程度の充放電レートでは特に問題にならない場合でも、充放電レートがさらに大きくなった場合には、容量が著しく低下することが知られており、ハイブリッド電気自動車(HybridElectric Vehicle;HEV)に搭載されるような高い充放電レートが求められる電池には適さないという課題があった。このように、無機物粒子及びバインダー高分子の混合物の塗布により形成される層(以下「塗布層」ともいう)がセパレータのイオン透過性に及ぼす影響を極力小さくする技術が望まれていた。
また、特許文献2の[0042]に記載がある通り、無機物粒子同士の間隙により形成される空き空間を使用した気孔の孔径は、無機物粒子の粒子径よりも小さくなることが知られている。つまり、特許文献2の実施例に記載されているような、気孔径が0.05μm〜5μmの実用的な多孔層を得るためには、使用する無機物粒子の粒子径はさらに大きい必要があり、同様の技術のほとんどが、D50が0.2μm〜10μmの無機物粒子を用いて実施されている。ところが、このような粒子径の無機物粒子が存在すると、該粒子を含む塗布層を有するセパレータ内をイオンが移動する際の行路長を増大させ、セパレータの透気特性を悪化させる上、塗布層の塗布乾燥工程においては、無機物粒子の沈降により該塗布層内で該粒子が厚み方向に偏在するなど、製造上の問題を引き起こすことがあった。
セパレータ表面に形成される前記塗布層において一般的に用いられる無機物粒子としてα−アルミナが挙げられる。しかしながらα−アルミナは比重が約4g/cmと大きく、その粒子径もビーズミル等のBreak−Down法により調整するため、粒子径が不揃いである上に、50nm以下の粒子とすることは原理上困難である。また表面に無機物粒子を含む塗布層が形成された従来のセパレータは、上記のような性能上及び製造上の課題を抱えていた。
本発明の目的は、以上のような性能上及び製造上の課題を解決し、電気化学素子用セパレータとして好適に用いられ、セパレータとしての実用的な透気特性及び耐熱収縮性を有する積層多孔フィルムを提供することにある。
本発明者らは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔フィルムの少なくとも一方の面にアルミナを含有する塗工層を有する積層多孔フィルムにおいて、該塗工層に所定の成分を使用して3次元網目構造を形成させることにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は下記である。
(1)ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔フィルムの少なくとも一方の面にアルミナを含有する塗工層を有する積層多孔フィルムであって、該塗工層はアルミナ粒子と樹脂粒子とから形成された3次元網目構造を有し、該アルミナ粒子が遷移アルミナ粒子を含み、該塗工層中の該樹脂粒子の含有量が1.5質量%以上である、積層多孔フィルム。
(2)前記塗工層中の前記樹脂粒子の含有量が2.0〜35質量%である、上記(1)に記載の積層多孔フィルム。
(3)透気度が1000秒/100mL以下である、上記(1)又は(2)に記載の積層多孔フィルム。
(4)前記3次元網目構造により形成される孔径が、前記アルミナ粒子の平均1次粒子径よりも大きい、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
(5)前記樹脂粒子の1次粒子のD50が10〜300nmである、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
(6)前記樹脂粒子がポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、及び(メタ)アクリレート系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂からなる樹脂粒子である、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
(7)前記多孔フィルムがポリオレフィン系樹脂を主成分とする延伸多孔フィルムである、上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
(8)JIS K3832:1990に準拠してバブルポイント法により測定される前記多孔フィルムの最大細孔径が0.001〜0.5μmである、上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
(9)前記多孔フィルムと前記塗工層との厚み比が1:1〜100:1である、上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
(10)上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の積層多孔フィルムからなるセパレータ。
(11)上記(10)に記載のセパレータを有する電気化学素子。
本発明によれば、電気化学素子用セパレータとして用いた際に、セパレータとしての実用的な透気特性及び耐熱収縮性を有する積層多孔フィルムを提供することができる。該積層多孔フィルムは、ニッケル−水素電池、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、及びリチウムイオンポリマー二次電池などのリチウム二次電池、キャパシタ等の電気化学素子用のセパレータとして好適である。
本発明における塗工層の3次元網目構造の模式図である。 本発明における塗工層の形成過程を示す模式図である。 従来のアルミナを含有する塗工層の形成過程の模式図である。 実施例3における塗工層の表面(左)及び断面(右)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。 比較例1における塗工層の表面(左)及び断面(右)のSEM画像である。
以下、本発明の実施形態の例について説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、電気化学素子用セパレータを単に「セパレータ」と称することがある。
[積層多孔フィルム]
本発明の積層多孔フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔フィルムの少なくとも一方の面にアルミナを含有する塗工層を有する積層多孔フィルムであって、該塗工層はアルミナ粒子と樹脂粒子とから形成された3次元網目構造を有し、該アルミナ粒子が遷移アルミナ粒子を含み、該塗工層中の該樹脂粒子の含有量が1.5質量%以上である。
前記塗工層は、前記多孔フィルムの少なくとも一方の面に、前記アルミナ粒子及び前記樹脂粒子を含有する塗工液を塗工することにより形成できる。本発明者らは、前記塗工層中でアルミナ粒子が形成する高次構造に着目して検討した結果、該塗工層における高次構造を、α−アルミナよりも低比重な遷移アルミナの粒子と、樹脂粒子とが3次元的に連なった3次元網目構造とすることで、セパレータとして用いた際の実用的な耐熱性、耐熱収縮性を有しつつ、塗工層の形成によるイオン透過性の悪化を抑え、前述した製造上の課題を解決できることを見出したものである。
前述したように、セパレータ表面に形成される、アルミナを含有する塗工層において一般的に用いられているアルミナはα−アルミナである。α−アルミナは遷移アルミナを1000℃以上の高温で焼成することで得られ、該焼成工程でアルミナ粒子同士が融合してα−アルミナ粒子が形成されるため、比較的大きな粒子が得られる。このことから、セパレータのアルミナ含有塗工層においてα−アルミナ粒子を用いると、粒子同士の間隙により形成される空き空間を形成し易く、結果、透気特性に優れるセパレータが得られるという利点があった。
しかしながら本発明者らは、あえて1次粒子径が小さい遷移アルミナ粒子と、樹脂粒子を用いることで、該遷移アルミナ粒子の1次粒子径よりも大きな気孔を有する3次元網目構造膜を得ることに成功した。
この3次元網目構造を有する塗工層は、従来公知の技術とは明らかに異なる高次構造を有しており、従来のα−アルミナ粒子同士の間隙により形成される空き空間を利用した塗工層よりも透気特性に優れ、かつ、熱収縮抑制効果も大きいことを見出した。
本明細書において「3次元網目構造」とは、積層多孔フィルムの面方向及び断面方向に、アルミナ粒子と樹脂粒子とが互いに連なって形成された網目状の構造をいい、具体的には、図1の模式図に示されるような構造である。図1において、1は遷移アルミナ粒子、2は樹脂粒子、4は多孔フィルムであり、多孔フィルム4上に、遷移アルミナ粒子1と樹脂粒子2とが連なった3次元網目構造が形成されている。3次元網目構造により形成される孔径は、遷移アルミナ粒子1の平均1次粒子径よりも大きい。当該3次元網目構造を形成しているかどうかの確認は、走査電子顕微鏡(SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)等の顕微鏡観察により判断することができる。例えば、図4は後述する本願実施例3における塗工層の表面(左)及び断面(右)のSEM画像である。
図2は本発明における塗工層の形成過程を示す模式図である。塗工層5は、遷移アルミナ粒子1、樹脂粒子2、及び分散媒3を含む塗工液を多孔フィルム4に塗工することにより形成される。本発明に用いる遷移アルミナ粒子1は1次粒子のD50が5〜50nm程度と小さいものであり、塗工液、及び塗工直後のWet膜(図2左)中では、遷移アルミナ粒子1は1次粒子の状態か、又は1次粒子が数個凝集した凝集粒子の状態で存在している。また本発明に用いる樹脂粒子2は、好ましくは1次粒子のD50が10〜300nm程度であり、塗工液、及び塗工直後のWet膜(図2左)中では1次粒子の状態で存在している。このWet膜を乾燥させて分散媒3を除去することにより、遷移アルミナ粒子1と樹脂粒子2とが3次元的に連なり、図2右に示すような3次元網目構造を有する塗工層5が多孔フィルム4の表面に形成される。樹脂粒子2は、遷移アルミナ粒子1のバインダーとしての作用を有しており、かつ3次元網目構造の骨材にもなっている。
遷移アルミナ粒子1は従来使用されていたα−アルミナ粒子と比較して1次粒子径及び比重が小さいので、前記塗工液及びその塗工直後のWet膜中において沈降し難い。そのため、塗工層中でアルミナ粒子が沈降して、多孔フィルム4の孔を閉塞して積層多孔フィルムの透気特性を悪化させるという従来の問題を回避でき、かつ、塗工層中で前述したような3次元網目構造を形成できるものである。図4に示される塗工層の断面のSEM画像においても、多孔フィルム4の孔は、塗工層5やこれに含まれる遷移アルミナ粒子1などにより閉塞されていないことがわかる。
また、図2右の模式図にも示されるように、該3次元網目構造により形成される孔径は、遷移アルミナ粒子1の平均1次粒子径よりも大きい。そのため本発明における塗工層5は、平均1次粒子径が小さい遷移アルミナ粒子を用いても透気特性が良好になる。さらに、塗工層5を有する本発明の積層多孔フィルムは、多孔フィルム4に由来する熱収縮も抑えることができる。
図3は従来のアルミナを含有する塗工層の形成過程を示す模式図である。図3の塗工層7は、α−アルミナ粒子6、樹脂粒子2、及び分散媒3を含む塗工液を多孔フィルム4に塗工することにより形成される。α−アルミナ粒子6は遷移アルミナ粒子1と比較して1次粒子径及び比重が大きいので、塗工層7は本発明における塗工層5のような3次元網目構造は有しておらず、塗工層7の形成過程において、Wet膜中でα−アルミナ粒子6同士の堆積、及び、樹脂粒子2によるα−アルミナ粒子6の結着が生じる(図3中央)。このWet膜を乾燥させて分散媒3を除去すると、α−アルミナ粒子6同士の間隙により形成された空き空間を有する塗工層7が形成されるものである。
図3右の模式図にも示されるように、前記空き空間による孔径は、α−アルミナ粒子6の平均1次粒子径よりも小さいものである。そのため本発明の積層多孔フィルムにおける塗工層5と比較すると透気特性は低くなる。さらに、塗工層7中には1次粒子径の大きいα−アルミナ粒子6が存在するので、塗工層7を有するセパレータ内をイオンが移動する際にはイオンの行路長が長くなり、その結果、セパレータに適用した際のセパレータ抵抗も高くなる傾向がある。
以下、本発明の積層多孔フィルムを構成する部材について説明する。
<多孔フィルム>
本発明に用いる多孔フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔フィルムである。本発明において「主成分」とは、全構成成分に対する割合が50質量%超、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90〜100質量%の成分をいう。
当該多孔フィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂を主成分とし、セパレータ性能の点から、好ましくは1000秒/100mL以下の透気度を有するフィルムであれば特に制限なく使用することができる。多孔フィルムの透気度は、より好ましくは300秒/100mL以下、さらに好ましくは200秒/100mL以下である。透気度はJIS P8117:2009に準拠して測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
前記ポリオレフィン系樹脂におけるオレフィンとしては、例えば、エチレン、又は、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンが挙げられる。これらの中でも、多孔化が容易で機械的強度にも優れる観点から、前記ポリオレフィン系樹脂はポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、又はプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、機械的強度、耐熱性の観点から、ホモポリプロピレンがより好適に使用される。
本発明に用いる多孔フィルムの製造方法には特に制限はなく、湿式法と乾式法のいずれを用いて製造されたものでもよい。中でも、当該多孔フィルムは乾式法により製造されたものであることが好ましく、多孔化の容易性及び生産性の観点から、前述したポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる無孔膜状物を延伸して得られる、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする延伸多孔フィルムであることがより好ましい。さらに好ましくは、本発明に用いる多孔フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする延伸多孔フィルムである。当該延伸多孔フィルムは、繊維系の不織布基材と比較して、表面の凹凸が少ない上に、表面に明確な界面を持つために、塗工プロセスにおいて表面に厚みの均一な塗工層を設けることができるため好ましい。また、当該延伸多孔フィルムは繊維系の不織布基材よりも厚み方向へ潰れにくく、セパレータに適用した際に、充放電による経時の厚み変化が小さいという利点も有する。以下、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする延伸多孔フィルムを例にとって説明する。
当該ポリプロピレン系樹脂を主成分とする延伸多孔フィルムは、例えば、結晶形態の一つであるβ晶を多く含むポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる無孔膜状物を延伸することで得られる。β晶を利用した多孔構造形成は、延伸過程においてポリプロピレン系樹脂中のβ晶が、α晶に転移する過程で多孔化が生じるため、多孔構造は緻密であり、従来公知である無機フィラーや非相溶性有機物の添加による多孔化と比較し、粒径や分散径に依存しないことから、多孔構造の調製に有利である。
β晶を多く含むポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物を得る方法としては、該樹脂組成物中にポリプロピレン系樹脂のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、特許第3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレン系樹脂を添加する方法、及び前記樹脂組成物中にβ晶核剤を添加する方法等が挙げられる。中でも、前記樹脂組成物にβ晶核剤を添加してβ晶活性を得る方法が好ましい。β晶核剤を添加することで、より均質に効率的にポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成を促進させることができる。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期表第2族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。
これらの中でも、アミド化合物、テトラオキサスピロ化合物、及びキナクリドン類からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
市販されているβ晶核剤の具体例としては、新日本理化社製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」などが挙げられる。
β晶核剤としては上記に例示したもの以外でも、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成、成長を増加させるものであれば特に限定されず、また2種類以上を混合して用いてもよい。
前記樹脂組成物中のβ晶核剤の含有量は、β晶核剤の種類又はポリプロピレン系樹脂の組成などにより適宜調整することができるが、該樹脂組成物中のポリプロピレン系樹脂100質量部に対し0.0001〜5.0質量部が好ましく、0.001〜3.0質量部がより好ましく、0.01〜1.0質量部がさらに好ましい。0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン系樹脂のβ晶を生成成長させ、十分なβ晶活性が確保でき、所望の透気特性を有する多孔フィルムが得られる。一方、5.0質量部以下であれば、経済的にも有利になるほか、フィルム表面へのβ晶核剤のブリードなどがなく好ましい。
その他、前記樹脂組成物には、その性質を損なわない程度に、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、着色剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤などの各種添加剤を適宜含有させてもよい。またその性質を損なわない程度に他の樹脂を含有させてもよい。
前記樹脂組成物は、例えば、前記成分を、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて、または袋の中に全成分を入れてハンドブレンドにて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等、好ましくは二軸押出機で溶融混練後、カッティングして、樹脂組成物からなるペレットを得る。次いで、該ペレットを押出機に投入して押出成形し、キャストロールにより冷却固化して、無孔膜状物を形成することができる。
さらに、前記無孔膜状物を少なくとも一軸方向に延伸することで多孔化し、本発明に用いる多孔フィルムを得ることができる。延伸は一軸延伸、二軸延伸のいずれでもよい。一軸延伸は縦一軸延伸であってもよいし、横一軸延伸であってもよい。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。延伸条件を選択でき、多孔構造を制御し易いという点では逐次二軸延伸が好ましい。
なお本明細書において、無孔膜状物の流れ方向(MD)への延伸を「縦延伸」といい、流れ方向に対して垂直方向(TD)への延伸を「横延伸」という。
延伸倍率及び延伸温度は、任意に選択できるが、一軸延伸あたりの延伸倍率は1.1〜10倍が好ましく、より好ましくは1.5〜8.0倍であり、さらに好ましくは1.5〜5.0倍である。一軸延伸あたりの延伸倍率を1.1倍以上とすることで延伸による多孔化が十分に行われる。また、10倍以下とすることで、気孔の変形が抑制される。延伸温度は、多孔化により十分な透気特性を得る観点から、好ましくは80〜160℃であり、より好ましくは90〜155℃である。
さらに、得られた多孔フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じてコロナ処理、プラズマ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面加工、ミシン目加工などを施すことができる。
JIS K3832:1990に準拠してバブルポイント法により測定される多孔フィルムの最大細孔径(以下、当該最大細孔径を「FBP(ファーストバブルポイント)径」ともいう)は、0.001〜0.5μmであることが好ましい。FBP径は、より好ましくは0.01〜0.1μm、さらに好ましくは0.015〜0.050μmである。FBP径が0.001μm以上であれば、本発明の積層多孔フィルムをセパレータに適用した際にセパレータが目詰まりする心配がなく、またFBP径が小さい方が、多孔フィルムが同じ透気度である場合にはより緻密な多孔構造になっていることを意味するため、FBP径が0.5μm以下であれば電池用セパレータとして用いた際に、電池内部の不均一性による電池性能の低下も抑制できると考えられる。
一方、電池が高性能になればなるほど電池用セパレータの多孔構造には均一性が求められてくる。すなわち、多孔フィルムのFBP径についても、0.5μmより大きい範囲であっても、本発明の積層多孔フィルムをセパレータに適用した際の電池の安定性やセパレータの多孔構造の均一性の観点から、電解液中のリチウムイオンの行き来を遮らない範囲で小さい孔径にすることが好ましい。
また、前記バブルポイント法により測定される多孔フィルムの平均流量細孔径(以下、当該平均流量細孔径を「MFP径」ともいう)は、0.0001〜0.2μmが好ましく、0.001〜0.1μmがより好ましい。
多孔フィルムのFBP径及びMFP径は、JIS K3832:1990に準拠したバブルポイント法にて、パームポロメータ(PMI社製、500PSIタイプ)を用いて測定することができる。
また多孔フィルムの厚みは、特に限定されないが、得られる積層多孔フィルムの透気特性及び機械的強度の両立の観点から、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜30μmの範囲である。多孔フィルムの厚みは、例えばダイアルゲージにより測定することができる。
<塗工層>
本発明の積層多孔フィルムは、前記多孔フィルムの少なくとも一方の面にアルミナを含有する塗工層を有し、該塗工層はアルミナ粒子と樹脂粒子とから形成された3次元網目構造を有するものである。当該塗工層を有することにより、本発明の積層多孔フィルムはセパレータに適用した際に、実用的な透気特性及び耐熱収縮性に優れたものとなる。塗工層の3次元網目構造については前述した通りである。
本発明における塗工層は、従来のα−アルミナを含有する塗工層と比較すると非常に均一な構造であり、塗工層の表面のSEM画像を2値化し、フィルムの流れ方向(MD)あるいは該流れ方向に対し垂直な方向(TD)に画像を複数に分割した場合、それぞれの分割画像で、前記3次元網目構造により形成される気孔又は該3次元網目構造を形成する骨材に対応する部分の面積率の標準偏差が非常に小さくなる。つまり、気孔の存在率が均一であることを意味する。本発明における塗工層は、その表面を10万倍で観察したSEM画像をMDに0.15μmおきに分割した時の、それぞれのエリアにおける、骨材に対応する部分の面積率の標準偏差は3以下が好ましい。より好ましくは2以下である。標準偏差が3以下であれば、塗工層中の気孔の分布のバラつきが小さく、本発明の積層多孔フィルムを電池用セパレータに適用した際に、電解液中のリチウムイオンの還元反応により析出する金属リチウムが樹枝状に成長したリチウムデンドライト発生のリスクを低くできる。
SEM画像の2値化、分割、面積率算出、標準偏差算出は「A像くん」(旭化成エンジニアリング(株)製、商品名)などの画像解析ソフトにて可能である。なお、塗工層における上記面積率の絶対値は、2値化のしきい値やその他の設定条件によって変化するが、各エリアの面積率の標準偏差に関しては、バラツキの指標なので設定条件の影響をほとんど受けず、大きく変化することがないことがわかっている。
(アルミナ粒子)
本発明で用いるアルミナ粒子は、遷移アルミナ粒子を含むことを特徴とする。本明細書において「遷移アルミナ粒子」とは、結晶構造がα以外のアルミナの粒子をいい、より具体的には、結晶構造がγ、θ、及びδからなる群から選ばれる1つ以上であるアルミナの粒子をいう。なお以下の記載において、「遷移アルミナ粒子を含むアルミナ粒子」を単に「(前記)アルミナ粒子」と称することがある。
塗工層において上記のような遷移アルミナ粒子を用いることで、塗工層の形成に用いる塗工液、及び塗工直後のWet膜中でのアルミナ粒子の沈降を抑制することができ、塗工層において均一な3次元網目構造を形成することが可能である。また、遷移アルミナ粒子はα−アルミナ粒子と比較して硬度が低いため、積層多孔フィルムの製造設備の摩耗を抑制し、製品への異物混入のリスクを低減する効果も期待できる。
本発明の効果を得る観点から、塗工層に含まれる全アルミナ粒子に対する遷移アルミナ粒子の含有量は、好ましくは50質量%超、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、よりさらに好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは100質量%である。
前記アルミナ粒子の製造方法には特に制限はないが、前述したとおり、Break−Down法では微細な粒子が得られにくいことから、Build−Up法により製造されたアルミナ粒子が好ましい。Build−Up法により製造されたアルミナ粒子はBreak−Down法により製造されたものに比べて、粒子径も揃っていることから、より均一な3次元網目構造を形成しやすいためである。
前記アルミナ粒子の平均1次粒子径は5〜50nmが好ましく、8〜40nmがより好ましい。アルミナ粒子の平均1次粒子径が50nm以下であれば、3次元網目構造を形成しやすく、塗工層の形成に用いる塗工液及び塗工直後のWet膜中での沈降の問題も生じない。また、アルミナ粒子の平均1次粒子径が5nm以上であれば、形成される3次元網目構造及び孔径が小さくなりすぎず、セパレータの抵抗の増大を引き起こさない。
前記アルミナ粒子の平均1次粒子径は、具体的にはTEM観察及び画像解析ソフトによる画像解析により求められる。
前記アルミナ粒子の1次粒子の形状には特に制限はないが、後述する樹脂粒子との3次元網目構造を形成する観点からは、球状であることが好ましい。また、アルミナ粒子の1次粒子は互いに凝集及び/又は結着してアルミナ2次粒子(凝集粒子)を形成していてもよい。アルミナ2次粒子のD50は10〜1000nmが好ましく、50〜500nmがより好ましく、100〜300nmがさらに好ましい。上記のBuild−Up法でアルミナ粒子を製造する際には、ある程度凝集したアルミナ2次粒子として得られる場合があるので、アルミナ粒子のスラリーを製造する際には、該アルミナ粒子の2次粒子のD50が上記の範囲となるように粉砕及び分散することが好ましい。
また、アルミナ粒子の1次粒子を意図的に凝集させ、所定の粒径の2次粒子を調製することもできる。例えば、アルミナ粒子のスラリーが水系の場合はpHをコントロールし、アルミナの等電点付近とすることで、該粒子を凝集させることが可能である。また、従来公知の造粒技術を使用して所定の2次粒子を調製することができる。造粒の際には公知の造粒用バインダーを使用することができる。
前記アルミナ粒子の2次粒子のD50は、スラリーの状態で動的光散乱法により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
前記アルミナ粒子のBET比表面積は50〜400m/gが好ましく、30〜200m/gがより好ましい。BET比表面積が400m/g以下であれば、水分吸着能が低いため、本発明の積層多孔フィルムをセパレータに適用した際に、セパレータを透過して電気化学素子に持ち込まれる水分量を少なくすることができる。また、BET比表面積が50m/g以上であれば、3次元網目構造を形成しやすい。
また、前記アルミナ粒子の真比重は3.0〜3.6g/cmが好ましく、3.1〜3.4g/cmがより好ましい。前記アルミナ粒子の真比重がこの範囲にあることで、真比重が約4g/cmのα−アルミナ粒子を用いた塗工層を有する積層多孔フィルムよりも軽量にできる。当該真比重は、JIS R9301−2−1:1999(ピクノメーター法)により求められる。
(樹脂粒子)
本発明に用いる樹脂粒子の樹脂の種類には特に制限はないが、電解液と接触すると電解液を吸収し、膨潤する性質の樹脂が好ましい。この観点からは、ポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、及び(メタ)アクリレート系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂からなる樹脂粒子が好ましい。より好ましくは、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂粒子である。
〔ポリオレフィン系樹脂〕
前記樹脂粒子に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等が挙げられる。中でも、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、及びポリメチルペンテン系樹脂からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ポリエチレン系樹脂がより好ましい。
前記樹脂粒子に用いられるポリエチレン系樹脂の例としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び、エチレンを主成分とする共重合体が挙げられる。エチレンを主成分とする共重合体(エチレン系共重合体)としては、例えば、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル;共役ジエン;非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種又は2種以上のモノマーとの共重合体、あるいは該共重合体の混合物が挙げられる。該共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。エチレン系共重合体中のエチレン単位の含有量は、全単量体単位に対して、通常50質量%を超えるものである。
前記重合体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステルによりグラフト変性等された変性体でもよい。
前記樹脂粒子に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、及び、プロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、及び1−デセンなどのα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル;共役ジエン;非共役ジエンのような不飽和化合物とのランダム共重合体又はブロック共重合体などが挙げられる。共重合体中のプロピレン単位の含有量は、全単量体単位に対して、通常50質量%を超えるものである。前記重合体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステルによりグラフト変性等された変性体でもよい。
前記樹脂粒子に用いられるポリペンテン系樹脂としては、ホモポリペンテン(ペンテン単独重合体)、及び、ペンテンと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、及び1−デセンなどのα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル;共役ジエン;非共役ジエンのような不飽和化合物とのランダム共重合体又はブロック共重合体などが挙げられる。共重合体中のペンテン単位の含有量は、全単量体単位に対して、通常50質量%を超えるものである。前記重合体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステルによりグラフト変性等された変性体でもよい。
前記樹脂粒子に用いられるポリメチルペンテン系樹脂は、その構成単位として、少なくともメチルペンテン単位を含むオレフィンの単独重合体又は共重合体である。メチルペンテンとしては、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。これらのメチルペンテンは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのメチルペンテンのうち、4−メチル−1−ペンテンが好ましい。
ポリメチルペンテン系樹脂は、他のオレフィン系モノマーを共重合単位として含んでいてもよい。他のオレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセンなどの環状オレフィン、ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエンなどのジエン類などが挙げられる。これら他のオレフィン系モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これら他のオレフィン系モノマーのうち、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセンなどの炭素数2〜6のα−オレフィン、特に、エチレン、プロピレンなどの炭素数2〜4のα−オレフィンが好ましい。
ポリメチルペンテン系樹脂において、メチルペンテンと他のオレフィン系モノマーとの割合(モル比)は、メチルペンテン/他のオレフィン系モノマー=100/0〜50/50程度の範囲から選択でき、好ましくは100/0〜85/15、さらに好ましくは100/0〜90/10(特に99.9/0.1〜90/10)程度である。
ポリメチルペンテン系樹脂は、メチルペンテンと、オレフィン系モノマー以外の他の共重合成分であるモノマー(他のモノマーという)との共重合体であってもよい。
他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステル]、不飽和カルボン酸又はその無水物[例えば、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)シトラコン酸、(無水)イタコン酸など]、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)などが例示できる。他のモノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
ポリメチルペンテン系樹脂において、他のモノマーの割合は、メチルペンテンの合計100モルに対して、例えば、0〜50モル、好ましくは0〜30モル、さらに好ましくは0〜10モル程度の範囲から選択できる。
またポリメチルペンテン系樹脂は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステルによりグラフト変性等された変性体でもよい。
前記ポリオレフィン系樹脂の中でも、前記アルミナ粒子との親和性、塗工液を調製する際の分散媒への分散容易性の観点から、ポリオレフィン系樹脂は低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンを主成分とする共重合体、及びこれらの変性体からなる群から選ばれる1種以上のポリエチレン系樹脂が好ましく、共重合体単位又は変性体単位として不飽和カルボン酸エステル単位を含有するポリエチレン系樹脂がより好ましい。
前記ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂粒子の市販品としては、ユニチカ(株)製の「アローベース」等が挙げられる。
〔ポリフッ化ビニリデン系樹脂〕
前記樹脂粒子に用いられるポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンを主成分とするものであれば特に制限はなく、例えば、フッ化ビニリデン単独重合体、フッ化ビニリデン−4フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリクロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、及びこれらの混合物を使用することができる。
〔(メタ)アクリレート系樹脂〕
(メタ)アクリレート系樹脂としては、各種(メタ)アクリレートを主成分とするものであれば特に制限はなく、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステルの単独重合体、及びこれらの混合物を使用することができる。当該(メタ)アクリレート系樹脂は、重合性官能基を有していてもよい。
前記樹脂粒子の製造方法には特に制限はないが、各種乳化方法により製造された樹脂乳化物であることが好ましい。樹脂乳化物は、粉砕などのBreak−Down法により製造されたものに比べて、粒子径の揃った微粒子を低コストで得やすいからである。
前記樹脂粒子の1次粒子のD50は10〜300nmが好ましく、15〜200nmがより好ましく、50〜180nmがさらに好ましい。樹脂粒子の1次粒子のD50が300nm以下であれば、該粒子が沈降し難く、前記塗工層において3次元網目構造を形成しやすい。また、樹脂粒子の1次粒子のD50が10nm以上であれば、形成される3次元網目構造及び孔径が小さくなりすぎず、本発明の積層多孔フィルムをセパレータに適用した際にセパレータの抵抗の増大を引き起こさない。樹脂粒子の1次粒子のD50は動的光散乱法により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
本発明の積層多孔フィルムにおいて、前記塗工層中の前記樹脂粒子の含有量は1.5質量%以上である。塗工層中の樹脂粒子の含有量が1.5質量%未満であると、塗工層からの前記アルミナ粒子の脱落が顕著になる。上記観点から、塗工層中の樹脂粒子の含有量は、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、さらに好ましくは5.0質量%以上である。また、積層多孔フィルムの透気特性及び耐熱収縮性の観点からは、塗工層中の樹脂粒子の含有量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、よりさらに好ましくは20質量%以下である。
前記塗工層の厚みは、0.3〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましく、0.5〜5.0μmがさらに好ましく、1.0〜3.0μmがよりさらに好ましい。塗工層の厚みが0.3μm以上であれば、積層多孔フィルムの熱収縮を十分に抑えることができる。また、塗工層の厚みが20μm以下であれば、該塗工層にクラックが入り難くなり、また、多孔フィルムからの脱落も起こりにくくなる。
なお積層多孔フィルムが前記多孔フィルムの両面に塗工層を有する態様である場合、「塗工層の厚み」とは、塗工層の合計厚みをいう。
塗工層の形成方法には特に制限はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、前記アルミナ粒子、樹脂粒子、及び分散媒を含有する塗工液を調製した後に、前記多孔フィルム上に塗工し、次いで乾燥して、分散媒を除去する方法が好ましい。塗工方法にも特に制限はなく、従来公知のあらゆる塗工方式を用いることができる。
前記塗工液は、例えば、前記アルミナ粒子のスラリーと、前記樹脂粒子の分散液とをそれぞれ調製した後、これらを混合することにより調製できる。アルミナ粒子のスラリーの分散媒は水系分散媒であることが好ましく、分散媒としては例えば、水、炭素数1〜4のアルコールが好適である。
樹脂粒子の分散液における分散媒も水系分散媒であることが好ましく、上記と同様の分散媒を用いることができる。塗工液の調製時に、必要に応じ水、炭素数1〜4のアルコール、及び任意の添加剤等をさらに添加してもよい。
塗工液の固形分濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
上記塗工液を、所望の厚みとなるように多孔フィルムに塗工し、次いで乾燥して前記分散媒を除去することで塗工層が形成され、本発明の積層多孔フィルムを得ることができる。乾燥温度は分散媒の種類等によって適宜選択できるが、30〜100℃の範囲が好ましい。
本発明の積層多孔フィルムにおいて、前記多孔フィルムと前記塗工層との厚み比は1:1〜100:1であることが好ましく、1:1〜50:1がより好ましく、1:1〜30:1がさらに好ましく、1:1〜25:1がよりさらに好ましく、1:1〜20:1がよりさらに好ましく、3:1〜20:1がよりさらに好ましく、5:1〜15:1がよりさらに好ましい。前記多孔フィルムと前記塗工層との厚み比が上記範囲であると、セパレータに適用した際の透気特性を実用的な範囲に維持しつつ、熱収縮を抑えることができる。
塗工層の厚み、並びに多孔フィルムと塗工層との厚み比は、積層多孔フィルムの断面をSEM観察することにより求められる。
また本発明の積層多孔フィルムの総厚みは、透気特性及び機械的強度の観点から、好ましくは3.3〜90μm、より好ましくは5.5〜50μmである。積層多孔フィルムの総厚みは、例えばダイアルゲージにより測定することができる。
<積層多孔フィルムの特性>
本発明の積層多孔フィルムは、セパレータに適用した際に電気化学素子の内部抵抗を下げる観点から、透気度が1000秒/100mL以下が好ましく、300秒/100mL以下がより好ましく、200秒/100mL以下がさらに好ましい。
また本発明の積層多孔フィルムは、セパレータに適用した際に、電気化学素子が過熱された場合にも安全性を確保する観点から、面内圧力2g/cmの押圧条件下、150℃で20分加熱した時の流れ方向(MD)の収縮率及び該流れ方向に対し垂直な方向(TD)の収縮率がいずれも3.0%以下であることが好ましい。より好ましくは、上記MD及びTDの収縮率がいずれも2.5%以下、さらに好ましくは2.0%以下、よりさらに好ましくは1.5%以下である。なお、ここでいうMD及びTDは、使用した多孔フィルムのMD及びTDである。
当該収縮率は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
[セパレータ]
本発明のセパレータは、本発明の積層多孔フィルムからなるものである。本発明のセパレータの好ましい態様、及び好ましい特性は前記積層多孔フィルムにおいて記載したものと同じである。本発明のセパレータは後述する電気化学素子用のセパレータとして好適である。
[電気化学素子]
本発明の電気化学素子は、本発明のセパレータを有するものである。当該電気化学素子としては、ニッケル−水素電池、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、及びリチウムイオンポリマー二次電池などのリチウム二次電池、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタのようなコンデンサ系デバイスが挙げられる。これらの中でも、リチウム二次電池が好ましい。
以下、本発明を実施例、比較例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における各種評価及び分析方法は以下の通りである。
<FBP径及びMBP径>
多孔フィルムのFBP径及びMBP径は、パームポロメータ(PMI社製、500PSIタイプ)を用いて、JIS K3832:1990に準拠したバブルポイント法により測定した。
<アルミナ粒子の平均1次粒子径>
アルミナ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、旭化成エンジニアリング(株)製画像処理ソフト「A像くん」にて、画像から粒子抽出を行い、平均1次粒子径を求めた。
<分散粒子径及び多分散指数>
大塚電子(株)製の光散乱光度計「ELS−Z」を用いて、動的光散乱法により、スラリー、分散液、又は塗工液中のアルミナ粒子及び樹脂粒子の分散粒子径(D10、D50、D90)、並びに多分散指数を測定した。
<塗工層の厚み>
積層多孔フィルムの面内を不特定に3箇所切り出し、イオンミリングにより断面を出した切片を走査型電子顕微鏡(SEM)で5000倍の倍率で観察して、塗工層の厚みを平均値から求めた。厚みの数値は0.5μm単位で四捨五入した。
<高次構造観察>
積層多孔フィルムの塗工層の表面及び断面を、SEMを用いて10万倍の倍率で観察した。なお、実施例で得られた積層多孔フィルムは、いずれも、アルミナ粒子の1次粒子と樹脂粒子とが連なって3次元網目構造を形成しており、アルミナ粒子の平均1次粒子径よりも大きい孔を形成していることがわかった。
<塗工層の骨材部分の面積率の標準偏差>
塗工層の表面を倍率10万倍でSEM観察し、塗工層表面のビットマップイメージを得た。次に、旭化成エンジニアリング(株)製画像処理ソフト「A像くん」でビットマップイメージを開き、フレームをトリミング除去した後、しきい値0の2次微分2値化法で2値化イメージを得た。得られた2値化イメージを区分ピッチ0.15μmでMD軸を13分割し、それぞれのエリアにおいて、3次元網目構造を形成しているアルミナ粒子及び樹脂粒子(骨材)部分の面積率を求めた。13区分の面積率を累計したときの標準偏差を求めた。
<透気度>
JIS P8117:2009に準拠して、多孔フィルム及び積層多孔フィルムの透気度(秒/100mL)を王研式透気度計により測定した。透気度の値が小さいほど連通性が高く、セパレータとしての性能が良好であることを示す。
判定基準は、透気度が300秒/100mL以下であるものを「○」、300秒/100mL超、1000秒/100mL以下であるものを「△」、1000秒/100mL超であるものを「×」とした。
<TD熱収縮率>
積層多孔フィルムをMD100mm×TD100mm四方に切り出して平滑なガラス板2枚の間に挟み、さらに、積層多孔フィルムへの面圧力が2g/cmとなるように重りを乗せて調整した。その状態のまま150℃に設定したオーブン(タバイエスペック社製「タバイギヤオーブンGPH200」)に入れ、20分加熱した。加熱後、積層多孔フィルムをオーブンから取り出して自然冷却し、40℃以下になったところで重りを取り除き、TD方向に最も収縮した部分のTD長さ(mm)を測定し、以下の式から150℃加熱時の熱収縮率を算出した。
TD熱収縮率(%)={(加熱前のTD長さ−加熱後のTD長さ)/(加熱前のTD長さ)}×100
表において、TD熱収縮率が3.0%以下であるものを「○」、3.0%超であるものを「×」とした。
なお、本実施例及び比較例では、多孔フィルムとしてMDに対してTDの収縮が大きい傾向にある乾式二軸製法のフィルムを使用しているため、TDの熱収縮率のみ測定した。
製造例1(多孔フィルムの作製)
ポリプロピレン系樹脂((株)プライムポリマー製「プライムポリプロ F300SV」、密度:0.90g/cm、MFR:3.0g/10分)と、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを用いた。前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、β晶核剤を0.2質量部の割合でブレンドし、東芝機械(株)製の同方向二軸押出機(口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを作製した。
前記のペレットを用いて、Tダイ押出機の口金より押出し、124℃のキャスティングロールで冷却固化させて膜状物を作製した。前記膜状物を、縦延伸機を用いて100℃で縦方向に4.6倍延伸し、その後、横延伸機にて150℃で横方向に2.1倍延伸後、153℃で熱固定を行った。
続いてVETAPHONE社製ジェネレータ「CP1」を使用し、出力0.4kW、速度10m/minでコロナ表面処理を施すことで、ポリプロピレン系樹脂からなる多孔フィルムを得た。
得られた多孔フィルムの厚みを、1/1000mmのダイアルゲージにて面内を不特定に5箇所測定し、その平均値として算出したところ20μmであることがわかった。また、多孔フィルムの透気度は152秒/100mLであり、FBP径は0.045μm、MFP径は0.0196μmであった。
製造例2(アルミナスラリーAの調製)
結晶構造がθ、δ及びγである遷移アルミナ粒子(日本アエロジル(株)製「AEROXIDE Alu65」、平均1次粒子径:20nm、真比重:3.2g/cm)400gと、脱イオン水590gと、酢酸10gを混合した液体を、ポットミルで分散、解砕し、固形分濃度40質量%のアルミナスラリーAを得た。
前記方法によりアルミナスラリーA中のアルミナ粒子の分散粒子径を測定したところ、D10が84nm、D50が137nm、D90が228nmであり、多分散指数は0.130であった。つまり、アルミナスラリーAは平均1次粒子径が20nmの遷移アルミナ粒子の凝集粒子として、上記のような分布で水に分散していることがわかった。
製造例3(アルミナスラリーBの調製)
結晶構造がαであるα−アルミナ粒子(日本軽金属(株)製、低ソーダアルミナ「LS−235C」、真比重:3.9g/cm)400gと、脱イオン水590gと、酢酸10gを混合した液体を、ポットミルで分散、解砕し、固形分濃度40質量%のアルミナスラリーBを得た。
前記方法によりアルミナスラリーB中のアルミナ粒子の分散粒子径を測定したところ、D10が441nm、D50が1008nm、D90が2292nmであり、多分散指数は0.298であった。
実施例1
(塗工液の調製)
前記アルミナスラリーAを50gと、樹脂粒子の水分散液として、アクリル酸エステル単位を含有するポリエチレン樹脂の乳化物(ユニチカ(株)製「アローベース CD−1010」、カチオン分散型、固形分濃度:20質量%、分散粒子径D10:69nm、D50:134nm、D90:265nm、多分散指数:0.192)を2g、脱イオン水を48g、イソプロピルアルコール(IPA)を21g混合し、塗工液を得た。
得られた塗工液の分散粒子径を前記方法により測定し、アルミナ粒子と樹脂粒子との間で凝集していないことを確認した。
(積層多孔フィルムの作製)
前記多孔フィルムをガラス定盤上に貼り付け、塗工液をNo.3のバーコーターにて多孔フィルムの片面に塗布し、45℃の温風で乾燥させて、多孔フィルムの片面に塗工層を有する積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムを前記方法により評価した。結果を表1に示す。
実施例2〜6
塗工液の配合、及び塗工層の厚みを表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様に塗工液の調製及び積層多孔フィルムの作製を行った。得られた積層多孔フィルムを前記方法により評価した結果を表1に示す。
実施例2〜6で調製した塗工液の分散粒子径を前記方法により測定し、アルミナ粒子と樹脂粒子との間で凝集していないことを確認した。
比較例1
アルミナスラリーAをアルミナスラリーBに変更し、樹脂粒子の水分散液を8gに、脱イオン水を42gに変更した以外は実施例1と同様に塗工液を調製した。得られた塗工液の分散粒子径を前記方法により測定し、アルミナ粒子と樹脂粒子との間で凝集していないことを確認した。
次いで、得られた塗工液を用いて、実施例1と同様の方法で積層多孔フィルムを作製した。この積層多孔フィルムの塗工層の高次構造を観察したところ、3次元網目構造は形成されておらず、アルミナ1次粒子同士が堆積し、堆積したアルミナ粒子同士の空き空間(interstitialvolume)が形成されていることがわかった。また、樹脂粒子が変形してアルミナ粒子同士を結着しており、アルミナ粒子間の空き空間を埋める形で存在していることがわかった。
また、得られた積層多孔フィルムを前記方法により評価した。結果を表2に示す。
比較例2
塗工液の配合、及び塗工層の厚みを表2に示すとおりに変更したこと以外は比較例1と同様に塗工液の調製及び積層多孔フィルムの作製を行った。得られた積層多孔フィルムを前記方法により評価した結果を表2に示す。
比較例2で調製した塗工液の分散粒子径を前記方法により測定し、アルミナ粒子と樹脂粒子との間で凝集していないことを確認した。
比較例3
多孔フィルムのいずれの面にも塗工層を形成せず、前記方法で透気度及びTD熱収縮率を測定した。結果を表2に示す。
実施例1〜6で得られた積層多孔フィルムの塗工層は3次元網目構造を有しており、塗工層の厚みが2.0〜2.5μmの範囲で、得られる積層多孔フィルムのTD熱収縮率を3.0%以下に抑えることが可能であった。比較例3は多孔フィルムのみの測定結果であるが、そのTD熱収縮率が約15%であることからも、本発明の積層多孔フィルムが低熱収縮率であることが確認できる。
また、実施例1〜6は塗工層における樹脂粒子の含有量のみが異なるが、いずれも実用上必要な透気度である1000秒/mL以下を達成している。
これに対し、比較例1及び2で得られた積層多孔フィルムの塗工層は3次元網目構造を有しておらず、特許文献2などの従来技術と同様のアルミナ粒子堆積構造を有し、堆積したアルミナ粒子間の空き空間が気孔となっていた。塗工層の厚みは実施例1〜6と同程度であるが、得られた積層多孔フィルムの透気度の値が大きく、TD熱収縮率も実施例より劣る結果となった。
実施例3と比較例1、並びに実施例4と比較例2は、塗工層における樹脂粒子の含有量は同じであるが、評価結果には大きな違いが出た。図4は実施例3の塗工層の表面(左)及び断面(右)のSEM画像であり、図5は比較例1の塗工層の表面(左)及び断面(右)のSEM画像である。これらのSEM画像によると、比較例1及び2の場合は、塗工層において、堆積したアルミナ粒子の空き空間を樹脂粒子が埋めることで透気度が悪化するが、実施例1〜6の場合は、樹脂粒子が3次元網目構造の骨材の一部となることで、樹脂粒子による孔の閉塞は少なく抑えられていると推察される。
また、実施例1〜6の積層多孔フィルムでは結晶構造がθ,δ,γといった遷移アルミナ粒子を用いていることから、α−アルミナ粒子を用いた比較例1及び2よりも硬度が低く、製造設備の摩耗も少なくすることができる。
さらに、実施例1〜6では塗工層の骨材部分の面積率の標準偏差は3以下であり、比較例よりも塗工層の孔分布が均一であることがわかる。
本発明によれば、電気化学素子用セパレータとして用いた際に、セパレータとしての実用的な透気特性及び耐熱収縮性を有する積層多孔フィルムを提供することができる。該積層多孔フィルムは、ニッケル−水素電池、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、及びリチウムイオンポリマー二次電池などのリチウム二次電池、キャパシタ等の電気化学素子用のセパレータとして好適である。
1 遷移アルミナ粒子
2 樹脂粒子
3 分散媒
4 多孔フィルム
5 本発明における塗工層
6 α−アルミナ粒子
7 アルミナ粒子同士の間隙により空き空間が形成された従来の塗工層

Claims (11)

  1. ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔フィルムの少なくとも一方の面にアルミナを含有する塗工層を有する積層多孔フィルムであって、該塗工層はアルミナ粒子と樹脂粒子とから形成された3次元網目構造を有し、該アルミナ粒子が遷移アルミナ粒子を含み、該塗工層中の該樹脂粒子の含有量が1.5質量%以上である、積層多孔フィルム。
  2. 前記塗工層中の前記樹脂粒子の含有量が2.0〜35質量%である、請求項1に記載の積層多孔フィルム。
  3. 透気度が1000秒/100mL以下である、請求項1又は2に記載の積層多孔フィルム。
  4. 前記3次元網目構造により形成される孔径が、前記アルミナ粒子の平均1次粒子径よりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  5. 前記樹脂粒子の1次粒子のD50が10〜300nmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  6. 前記樹脂粒子がポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、及び(メタ)アクリレート系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂からなる樹脂粒子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  7. 前記多孔フィルムがポリオレフィン系樹脂を主成分とする延伸多孔フィルムである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  8. JIS K3832:1990に準拠してバブルポイント法により測定される前記多孔フィルムの最大細孔径が0.001〜0.5μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  9. 前記多孔フィルムと前記塗工層との厚み比が1:1〜100:1である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層多孔フィルムからなるセパレータ。
  11. 請求項10に記載のセパレータを有する電気化学素子。
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