JP7002229B2 - パターン塗工用スラリー - Google Patents

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Description

本発明は、パターン塗工用スラリーに関する。より詳細には、本発明は、蓄電デバイス用セパレータの基材として用いられるポリオレフィン多孔性基材の少なくとも片面にパターン塗工するための、パターン塗工用スラリーに関する。
近年、非水電解液電池等の蓄電デバイスの開発が活発に行われている。通常、蓄電デバイスは、正極と負極との間に、多孔性基材を含むセパレータを有する。セパレータは、正負極間の直接的な接触を防ぎ、かつ多孔性基材中に保持した電解液を通じてイオンを透過させる機能を有する。
多孔性基材としては、例えば、ポリオレフィン多孔性基材が挙げられる。ポリオレフィン多孔性基材は、電子絶縁体であるが、多孔構造によりイオン透過性を示すことから、非水電解液電池用セパレータとして広く利用されている。ポリオレフィン多孔性基材は、非水電解液電池が異常発熱を起こした際に、熱溶融により多孔を閉塞させて、電解液中のイオン伝導を遮断し、電気化学反応の進行を停止させるシャットダウン機能も有する。
このようなポリオレフィン多孔性基材の表面に熱可塑性ポリマーを含む塗工層を形成して、蓄電デバイスに種々の性能、例えば、電極との接着性を付与する試みが行われている。しかしながら、一般に、セパレータに用いられる塗工層は、蓄電デバイスにとって抵抗になり得る。そのため、塗工面積が増えると塗工層が意図する性能、例えば接着性が増加するが、抵抗が上昇する。他方、接着面積が少ないと抵抗の上昇が抑制されるが、塗工層に起因する性能、例えば接着性が低下する。したがって、セパレータを設計する場合には、塗工層の性能と抵抗の上昇とのバランスを考慮して製品設計を行うことが必要であり。そのためには、ポリオレフィン多孔性基材の表面に熱可塑性ポリマーを含む塗工層を所望の設計のとおりに形成できることが重要であり、そのようなパターン塗工が可能な塗工用パリマーが求められている。
例えば、特許文献1~3では、基材の少なくとも片面上の少なくとも一部に、特定の熱可塑性ポリマーを含有するスラリーをパターン塗工及び乾燥させて塗工層を形成し、これによって電極との密着性に優れた蓄電デバイス用セパレータを提供することを記載している。
特開2016-122648号公報 特開2016-201367号公報 特開2016-207659号公報
しかしながら、特許文献1~3に記載されているような従来のスラリーでは、後述する様々な要因によって、塗工から乾燥までの間にパターン形状が変化することがあり、設計された形状どおりに塗工層を形成することが困難であった。
したがって、本発明の目的の一つは、蓄電デバイス用セパレータの基材として用いられるポリオレフィン多孔性基材上に、所望の形状にパターン塗工することが容易な、パターン塗工用スラリーを提供することである。
本願発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ハイシェア粘度測定における低速領域(50000s-1以下)における粘度が5cps以上であるスラリーを用いることにより上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
蓄電デバイス用セパレータの基材として用いられるポリオレフィン多孔性基材の少なくとも片面にパターン塗工するための、パターン塗工用スラリーであって、
上記パターン塗工用スラリーは、熱可塑性ポリマーと、分散媒又は溶媒とを含み、
上記パターン塗工用スラリーは、剪断速度50000s-1以下におけるハイシェア粘度の最大値が5cps以上である、パターン塗工用スラリー。
[2]
上記ハイシェア粘度の最大値が5cps以上10cps以下である、項目1に記載のパターン塗工用スラリー。
[3]
上記パターン塗工用スラリーの表面張力が50以上100以下である、項目1又は2に記載のパターン塗工用スラリー。
[4]
上記パターン塗工用スラリーの固形分濃度が30質量%のときの粘度が100mPa・s以下であり、固形分濃度が50質量%のときの粘度が300mPa・s以上である、項目1~3のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリー。
[5]
上記パターン塗工用スラリーの固形分濃度が30質量%のときの粘度が100mPa・s以下であり、固形分濃度が45質量%のときの粘度が150mPa・s以上である、項目1~4のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリー。
[6]
上記パターン塗工用スラリーの固形分濃度が30質量%のときの粘度が100mPa・s以下であり、固形分濃度が40質量%のときの粘度が150mPa・s以上である、項目1~5のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリー。
[7]
上記パターン塗工用スラリーの固形分濃度が30質量%のときの粘度が70mPa・s以下であり、固形分濃度が40質量%のときの粘度が150mPa・s以上である、項目1~6のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリー。
[8]
上記分散媒を含み、上記分散媒が水を主成分として含む、項目1~7のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリー。
[9]
上記熱可塑性ポリマーが、(メタ)アクリル酸エステル単量体、共役ジエン系単量体、及びフッ化ビニリデン単量体からなる群から選択される少なくとも一つを単量体単位として有する共重合体を含む、項目1~8のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリーから形成されたパターン塗工を有する、蓄電デバイス用セパレータ。
[10]
上記塗工用スラリーに含まれる熱可塑性ポリマーは、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーを含み、全体としてガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、
上記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃未満の領域に存在し、
上記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃以上の領域に存在する、項目1~9のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[11]
上記熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度が1倍以上10倍以下である、項目1から10のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[12]
ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも片面に、項目1~11のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリーから形成されたパターン塗工を有する、蓄電デバイス用セパレータ。
[13]
上記パターン塗工がドットパターンである、項目12に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[14]
上記ドットの径が10μm以上1000μm以下であり、上記ドットの面積占有率が5%以上80%以下である、項目12又は13に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[15]
ポリオレフィン多孔性基材と、上記ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも片面の少なくとも一部を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とを有する、蓄電デバイス用セパレータであって、
上記ポリオレフィン多孔性基材上に上記熱可塑性ポリマー被覆層が存在する部分と、上記熱可塑性ポリマー被覆層が存在しない部分とが海島状に存在し、
上記熱可塑性ポリマー被覆層に含まれる熱可塑性ポリマーは、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーを含み、全体としてガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、
上記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃未満の領域に存在し、
上記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃以上の領域に存在する、
蓄電デバイス用セパレータ。
本発明によれば、蓄電デバイス用セパレータの基材として用いられるポリオレフィン多孔性基材上に、所望の形状にパターン塗工することが容易な、パターン塗工用スラリーを提供することができる。
本発明の例示的な実施形態及び利点を記載したが、本発明の他の実施形態及び他の利点は、以下の本願明細書から明らかとなる。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を例示する目的で詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本願明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
《パターン塗工用スラリー》
本実施形態のパターン塗工用スラリーは、蓄電デバイス用セパレータの基材として用いられるポリオレフィン多孔性基材の少なくとも片面にパターン塗工するための、パターン塗工用スラリーである。上記パターン塗工用スラリーは、熱可塑性ポリマーと、分散媒又は溶媒とを含み、上記パターン塗工用スラリーは、剪断速度50000s-1以下におけるハイシェア粘度の最大値が5cps以上である。
蓄電デバイス用セパレータの基材上に所定パターンの塗工層を形成する工程は、典型的に、所定の初期固形分を有するスラリーをポリオレフィン多孔性基材上に所望のパターンで塗工して、徐々に固形分を上昇(すなわち、乾燥)させて塗工層を形成することを含む。従来のスラリーでは、スラリーを塗工してからそれが完全に乾燥するまでの間に、パターン形状が変化することがあり、設計された形状どおりに塗工層を形成することが困難であった。このことは、微細な、例えば数mm~数μm程度のオーダーの構造を有するパターンを形成したい場合に特に問題となる。理論に限定されず、また、以下に限定されないが、パターン形状が変化する要因としては、例えば:(1)塗工用スラリーを基材へ転写する時に所望の形状に転写できないこと;及び(2)塗工してから乾燥に至るまでの間にスラリーが流れて、塗工形状が崩れること等が考えられる。
〈ハイシェア粘度〉
これに対して、本実施形態のパターン塗工用スラリーは、熱可塑性ポリマーと、分散媒又は溶媒を含み、かつ、剪断速度50000s-1以下におけるハイシェア粘度の最大値が5cps以上であることによって、塗工用スラリーを基材へ転写する時に所望の形状に転写し易く、かつ、塗工してから乾燥に至るまでの間にスラリーが流れにくくなるため、上記要因の少なくとも一部を解消することができる。したがって、本実施形態のパターン塗工用スラリーは、ポリオレフィン多孔性基材上に、所望の形状のパターン塗工を容易に形成することができる。この効果は、微細な、例えば数mm~数μm程度のオーダーの構造を有するパターンを形成したい場合に特に有利である。
理論は未だ明らかではなく、また、理論に限定されないが、一般に、セパレータ製造ラインは高速で動いているため、塗工後のスラリーに対して、ラインの方向転換等に起因する加速度等の外力が加わることが考えられる。したがって、パターン塗工用スラリーの塗工性、すなわち転写性は、B型粘度計のような低いシェアにおける粘度よりも、ある程度高いシェアにおける粘度に相関すると発明者らは推定している。また、パターン塗工用スラリーを転写してから乾燥させるまでのスラリーの動きづらさ、すなわち、転写されたパターンの形態安定性は、ハイシェア粘度よりも、固形分濃度の上昇に伴うB型粘度の上昇プロファイルに相関すると発明者らは推定している。
本実施形態のパターン塗工用スラリーの剪断速度50000s-1以下におけるハイシェア粘度の最大値は、5cps以上、好ましくは7cps以上である。剪断速度50000s-1以下におけるハイシェア粘度の最大値は、好ましくは15cps以下、より好ましくは12cps以下、更に好ましくは10cps以下である。ハイシェア粘度の最大値の範囲は、好ましくは5cps以上15cps以下、より好ましくは7cps以上12cps以下である。剪断速度50000s-1以下におけるハイシェア粘度の最大値が5cps以上15cps以下であることによって、塗工用スラリーを基材へ転写する時に所望の形状に転写し易く、乾燥時に塗工部が泡立つことを抑制することができ、かつ、塗工してから乾燥に至るまでの間にスラリーが流れにくくなるため、ポリオレフィン多孔性基材上に、所望の形状のパターン塗工を容易に形成することができる。
〈表面張力〉
本実施形態のパターン塗工用スラリーの表面張力は、好ましくは50以上100以下、より好ましくは60以上90以下である。パターン塗工用スラリーの表面張力が50以上100以下であれば、ポリオレフィン多孔性基材との親和性が良好であるため、塗工用スラリーを基材へ転写する時に所望の形状に転写し易くなり、かつ、界面活性剤の量が多過ぎないため、スラリーが泡立ちにくくなる。
〈各固形分濃度におけるスラリーの粘度〉
本実施形態のパターン塗工用スラリーの固形分濃度に対するスラリーの粘度の関係は以下のとおりである。
パターン塗工用スラリーの固形分濃度が30質量%の場合、粘度は、好ましくは5mPa・s以上、より好ましくは10mPa・s以上、さらに好ましくは15mPa・s以上であり、150mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは50mP・s以下である。
パターン塗工用スラリーの固形分濃度が40質量%の場合、粘度は、好ましくは30mPa・s以上、より好ましくは50mPa・s以上、さらに好ましくは80mPa・s以上であり、350mPa・s以下、より好ましくは250mPa・s以下、さらに好ましくは180mP・s以下である。
パターン塗工用スラリーの固形分濃度が45質量%の場合、粘度は、好ましくは70mPa・s以上、より好ましくは100mPa・s以上、さらに好ましくは150mPa・s以上であり、500mPa・s以下、より好ましくは400mPa・s以下、さらに好ましくは250mP・s以下である。
パターン塗工用スラリーの固形分濃度が50質量%の場合、粘度は、好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは15mPa・s以上、さらに好ましくは200mPa・s以上であり、700mPa・s以下、より好ましくは600mPa・s以下、さらに好ましくは500mP・s以下である。
パターン塗工用スラリーの固形分濃度に対するスラリーの粘度が上記範囲であれば、塗工中におけるスラリーの泡立ちを抑制することができる一方。スラリーが乾燥に至るまでの間にスラリーが流れて塗工形状が崩れることを効果的に防止できる。
上記値は、スラリー中の熱可塑性ポリマーのモノマー種、モノマー添加量、粒径、増粘剤種、増粘剤添加量等を調整することで、制御可能である。
〈熱可塑性ポリマー〉
パターン塗工用スラリーに含まれる熱可塑性ポリマーの具体例としては、以下の1)~4)が挙げられる。
1)共役ジエン系重合体、
2)アクリル系重合体、
3)ポリビニルアルコール系樹脂、及び
4)含フッ素樹脂。
中でも、電極とのなじみ易さの観点からは上記1)共役ジエン系重合体が好ましく、耐電圧性の観点からは上記2)アクリル系重合体及び4)含フッ素樹脂が好ましい。
パターン塗工用スラリーは、その全量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上の、上記熱可塑性ポリマーを含む。パターン塗工用スラリーを乾燥させて得られるパターン塗工(本願明細書において、「熱可塑性ポリマー被覆層」ともいう。)は、その全量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上の、上記熱可塑性ポリマーを含む。
パターン塗工用スラリー及びパターン塗工は、上記熱可塑性ポリマー以外に、本発明の課題解決を損なわない程度の、その他の成分を含んでもよい。
上記1)共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物を単量体単位として含む重合体である。上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、特に1,3-ブタジエンが好ましい。
また、共役ジエン系重合体は、後述する(メタ)アクリル系化合物又は他の単量体を単量体単位として含んでいてもよい。具体的には、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びその水素化物等である。
上記2)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系化合物を単量体単位として含む重合体である。上記(メタ)アクリル系化合物とは、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つを示す。
このような化合物としては、例えば、下記式(P1)で表される化合物が挙げられる。
CH=CRY1-COO-RY2 (P1)
式(P1)中、RY1は水素原子又はメチル基を示し、RY2は水素原子又は1価の炭化水素基を示す。RY2が1価の炭化水素基の場合は、置換基を有していてもよくかつ鎖内にヘテロ原子を有していてもよい。1価の炭化水素基としては、例えば、直鎖であっても分岐していてもよい鎖状アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基が挙げられる。また、置換基としては、例えば、ヒドロキシル基及びフェニル基が挙げられ、ヘテロ原子としては、例えばハロゲン原子、酸素原子等が挙げられる。(メタ)アクリル系化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
このような(メタ)アクリル系化合物としては、(メタ)アクリル酸、鎖状アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、フェニル基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
Y2の1種である鎖状アルキル基として、より具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基である炭素原子数が1~3の鎖状アルキル基;n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、及びラウリル基等の、炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基が挙げられる。また、RY2の1種であるアリール基としては、例えばフェニル基が挙げられる。
そのようなRY2を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の、芳香環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中では、電極(電極活物質)との密着性向上の観点から、炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基を有する単量体、より具体的には、RY2が炭素原子数4以上の鎖状アルキル基である(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましい。より具体的には、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートから成る群より選択される少なくとも1種が好ましい。なお、炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基における炭素原子数の上限は特に限定されず、例えば14であってもよいが、7が好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、上記炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基を有する単量体に代えて、或いはこれに加えて、RY2としてシクロアルキル基を有する単量体を含むことも好ましい。これによっても、電極との密着性が更に向上する。
そのようなシクロアルキル基を有する単量体としては、より具体的には、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。シクロアルキル基の脂環を構成する炭素原子の数は、4~8が好ましく、6及び7がより好ましく、6が特に好ましい。また、シクロアルキル基は置換基を有していても有していなくてもよい。置換基としては、例えば、メチル基及びt-ブチル基が挙げられる。これらの中では、シクロヘキシルアクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が、アクリル系重合体調製時の重合安定性が良好である点で好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
また、アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体として、上記のものに代えて、あるいは加えて、好ましくは上記のものに加えて、架橋性単量体を含むことが好ましい。架橋性単量体としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合性の二重結合を2個以上有している単量体、重合中又は重合後に自己架橋構造を与える官能基を有する単量体等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ラジカル重合性の二重結合を2個以上有している単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。上記多官能(メタ)アクリレートは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、及び4官能(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。具体的には、例えば、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、上記と同様の観点から、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
重合中又は重合後に自己架橋構造を与える官能基を有する単量体としては、例えば、エポキシ基を有する単量体、メチロール基を有する単量体、アルコキシメチル基を有する単量体、加水分解性シリル基を有する単量体などが挙げられる。上記エポキシ基を有する単量体としては、アルコキシメチル基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、具体的には例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
メチロール基を有する単量体としては、例えば、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、ジメチロールアクリルアミド、ジメチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
上記アルコキシメチル基を有する単量体としては、アルコキシメチル基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、具体的には例えば、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド等が挙げられる。
上記加水分解性シリル基を有する単量体としては、例えば、ビニルシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
また、上記アクリル系重合体は、様々な品質及び物性を改良するために、上記以外の単量体を単量体単位として更に有してもよい。そのような単量体としては、例えば、カルボキシル基を有する単量体(但し、(メタ)アクリル酸を除く。)、アミド基を有する単量体、シアノ基を有する単量体、ヒドロキシル基を有する単量体、芳香族ビニル単量体等が挙げられる。
更に、スルホン酸基、リン酸基等の官能基を有する各種のビニル系単量体、及び酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等も必要に応じて使用できる。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記他の単量体は、上記各単量体のうち2種以上に同時に属するものであってもよい。
アミド基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
シアノ基を有する単量体としては、シアノ基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、具体的には、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
ヒドロキシル基を有する単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等が挙げられる。好ましくはスチレンである。
上記アクリル系重合体における(メタ)アクリル系化合物を単量体単位として含有する割合は、アクリル系重合体100質量%に対して、好ましくは5~95質量%である。その下限値は、より好ましくは15質量%であり、更に好ましくは20質量%であり、特に好ましくは30質量%である。上記単量体単位の含有割合が5質量%以上であると、基材への結着性及び耐酸化性の点で好ましい。一方、より好ましい上限値は92質量%であり、更に好ましい上限値は80質量%であり、特に好ましい上限値は60質量%である。上記単量体の含有割合が95質量%以下であると、基材との密着性が向上するため好ましい。
アクリル系重合体が、鎖状アルキル(メタ)アクリレート又はシクロアルキル(メタ)アクリレートを単量体単位として有する場合、それらの含有割合の合計は、アクリル系重合体100質量%に対して、好ましくは、3~92質量%であり、より好ましくは10~90質量%であり、更に好ましくは15~75質量%であり、特に好ましくは25~55質量%である。これらの単量体の含有割合が3質量%以上であると耐酸化性の向上の点で好ましく、92質量%以下であると、基材との結着性が向上するため好ましい。
アクリル系重合体が、(メタ)アクリル酸を単量体単位として有する場合、その含有割合は、アクリル系重合体100質量%に対して、好ましくは0.1~5質量%である。上記単量体の含有割合が、0.1質量%以上であると、セパレータは膨潤状態でのクッション性が向上する傾向にあり、5質量%以下であると、重合安定性が良好な傾向にある。
アクリル系重合体が、架橋性単量体を単量体単位として有する場合、アクリル系重合体における架橋性単量体の含有割合は、アクリル系重合体100質量%に対して、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.1~5質量%であり、更に好ましくは0.1~3質量%である。上記単量体の含有割合が0.01質量%以上であると耐電解液性が更に向上し、10質量%以下であると膨潤状態でのクッション性の低下をより抑制することができる。
アクリル系重合体は、例えば、通常の乳化重合法によって得られる。乳化重合の方法に関しては特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、水性媒体中で上述の単量体、界面活性剤、ラジカル重合開始剤、及び必要に応じて用いられる他の添加剤成分を基本組成成分とする分散系において、上記各単量体を含む単量体組成物を重合することによりアクリル系重合体が得られる。重合に際しては、供給する単量体組成物の組成を全重合過程で一定にする方法、重合過程で逐次又は連続的に変化させることによって生成する樹脂分散体の粒子の形態的な組成変化を与える方法等、必要に応じて様々な方法が利用できる。アクリル系重合体を乳化重合により得る場合、例えば、水と、その水中に分散した粒子状のアクリル系重合体とを含む水分散体(ラテックス)の形態であってもよい。
界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート等のノニオン性界面活性剤、またはオクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。
また、各種界面活性剤には非反応性界面活性剤と反応性界面活性剤があり、どちらも用いることができる。
上記界面活性剤は、単量体組成物100質量部に対して0.1~5質量部用いることが好ましい。界面活性剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ラジカル重合開始剤としては、熱又は還元性物質によりラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤及び有機系開始剤のいずれも用いることができる。また、ラジカル重合開始剤としては、水溶性又は油溶性の重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤は、単量体組成物100質量部に対して、好ましくは0.05~2質量部用いることができる。ラジカル重合開始剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記3)ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等が;
上記4)含フッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等が、
それぞれ挙げられる。
熱可塑性ポリマーは、粒子状であってもよい。熱可塑性ポリマー粒子が粒子状である場合、その平均粒径は、好ましくは0.01μm以上5μm以下、より好ましくは0.05μm以上3μm以下、更に好ましくは0.1μm以上1μm以下である。熱可塑性ポリマーの平均粒径が上記範囲内であれば、パターン塗工用スラリーの剪断速度50000s-1以下におけるハイシェア粘度の最大値が5cps以上となるよう調整することがより容易となる。
熱可塑性ポリマーの平均粒径は、熱可塑性ポリマーの重合時間、重合温度、原料組成比、原料投入順序、pH等を調整することで制御可能である。
(熱可塑性ポリマーのガラス転移点及び融点)
熱可塑性ポリマーは、好ましくは、ガラス転移点(Tg)又は融点(Tm)が-50℃以上、より好ましくは-40℃以上、更に好ましくは-20℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは80℃以下である熱可塑性ポリマーを含む。ガラス転移点又は融点が上記範囲内であることにより、熱プレス時に多孔性基材上の熱可塑性ポリマーが変形し易くなり、被着体である電極への接着面積が増加する。それによって、多孔性基材と熱可塑性層の接着性又はセパレータと電極との接着性がより良好になる。
融点及びガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線から決定される。具体的には、融点は、DSC曲線におけるベースラインと融解吸熱ピークの傾きの接線との交点により、ガラス転移点は、DSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の変曲点における接線との交点により決定される。
本願明細書において、「ガラス転移」とは、DSCにおいてポリマーの状態変化に伴う熱量変化が吸熱側に生じたものを指す。「ベースライン」とは、試験片に転移及び反応を生じない温度領域のDSC曲線のことを示す。「ピーク」とは、DSC曲線において、曲線がベースラインから離れて、再度ベースラインに戻るまでの部分を示す。「階段状変化」とは、DSC曲線において、曲線がそれまでのベースラインから離れて、新たなベースラインに移行するまでの部分を示す。階段状変化は、ピーク及び階段状変化の組み合わさった形状も含む。「変曲点」とは、階段状変化部分のDSC曲線のこう配が最大になるような点を示す。言い換えれば、変曲点とは、階段状変化部分において上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点と表現することもできる。
熱可塑性ポリマーのTgは、例えば、熱可塑性ポリマーの製造に用いるモノマーの種類及び各モノマーの配合比を変更することにより、適宜調整できる。熱可塑性ポリマーのTgは、その製造に用いられる各モノマーについて一般に示されているそのホモポリマーのTg(例えば、「ポリマーハンドブック」(A WILEY-INTERSCIENCE PUBLICATION)に記載)とモノマーの配合比とから、概略で推定することができる。例えば約100℃のTgのポリマーを与えるスチレン、メチルメタクリレ-ト、及びアクリルニトリル等のモノマーを高比率で配合する熱可塑性ポリマーは、高いTgを有する。また、例えば約-80℃のTgのポリマーを与えるブタジエン、約-50℃のTgのポリマーを与えるn-ブチルアクリレ-ト及び2-エチルヘキシルアクリレ-ト等のモノマーを高い比率で配合した熱可塑性ポリマーは、低いTgを有する。熱可塑性ポリマーのTgは、FOXの式(下記式1)により概算することができる。熱可塑性ポリマーのガラス転移点としては、上記DSCを用いた方法により測定したものを採用する。
1/Tg=W/Tg+W/Tg+…+W/Tg+…W/Tg (1)
{式中、Tg(K)は、コポリマーのTgを示し、Tg(K)は、各モノマーiのホモポリマーのTgを示し、Wは、各モノマーの質量分率を示す}。
熱可塑性ポリマーのゲル分率は、特に限定されないが、電解液中への溶解の抑制、及び電池内部での熱可塑性ポリマーの強度維持の観点から、80質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。ここで、ゲル分率は、トルエン不溶分の測定により求められる。
ゲル分率は、重合するモノマー成分及び各モノマーの投入比、重合条件を変更することにより、調整することができる。
熱可塑性ポリマーは、サイクル特性等の電池特性の点から、電解液に対する膨潤性を有することが好ましい。乾燥させた熱可塑性ポリマー(又は熱可塑性ポリマー分散液)に電解液を所定の時間浸透させ、洗浄した後の熱可塑性ポリマー(A)の質量をWaとし、Aを150℃のオーブン中に1時間静置した後の質量をWbとする時、以下の式により熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度を算出することができる。膨潤度は、10倍以下が好ましく、6倍以下がより好ましく、5倍以下が更に好ましく、4.5倍以下がより更に好ましく、4倍以下が特に好ましい。また、膨潤度は、1倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。
熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度(倍)=(Wa-Wb)÷Wb
なお、ポリマー層が2種以上の共重合体を含む場合、膨潤度は、各々の共重合体の膨潤度の加重平均とする。
本実施形態のセパレータにおける熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤性は、電解液のモデルとして、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(体積比1:2)から成る混合溶媒、又はエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(質量比2:3)を用いて測定することが好ましい。
熱可塑性ポリマーは、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーを含み、全体としてガラス転移点を少なくとも2つ有していることも好ましい。この場合、熱可塑性ポリマーのTgのうち少なくとも1つが20℃未満であることが好ましく、より好ましくは15℃以下、更に好ましくは-50℃以上15℃以下の領域に存在する。これにより、塗工層と多孔性基材との密着性により優れ、その結果、セパレータが電極との密着性により優れるので、蓄電デバイスの剛性、及びサイクル特性が向上する。熱可塑性ポリマーと多孔性基材との密着性を向上させ、セパレータのハンドリング性を向上させ、及び/又は熱可塑性層の粉落ちを抑制するために、20℃未満の領域に存在するTgは、-50℃以上15℃以下の領域にのみ存在することがより更に好ましい。
熱可塑性ポリマーがガラス転移点を少なくとも2つ有する場合、熱可塑性ポリマーのTgのうちの少なくとも1つが20℃以上であることが好ましく、20℃以上150℃以下であることがより好ましく、更に好ましくは30℃以上120℃以下、より更に好ましくは40℃以上80℃以下の領域に存在する。上記範囲にガラス転移温度が存在することで、セパレータのハンドリング性がより良好になる。更に、電池作製時の加圧により発現する電極とセパレータとの間の密着性を一層高めることができる。
ガラス転移点を少なくとも2つ有する熱可塑性ポリマーは、例えば、2種類以上の熱可塑性ポリマーをブレンドすること、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーを用いること等によって得ることができる。本明細書において「コアシェル構造」とは、ポリマーが中心部分(コア)と、コアを覆う外殻部分(シェル)との二重構造の形態を有し、かつコアのポリマー組成とシェルのポリマー組成とが異なるポリマーをいう。ポリマーブレンド及びコアシェル構造において、Tgの高いポリマーとTgの低いポリマーとを組み合せることにより、熱可塑性ポリマー全体のガラス転移点を制御し、かつ熱可塑性ポリマー全体に複数の機能を付与することができる。
ポリマーブレンドの場合は、ガラス転移点が20℃以上の領域に存在するポリマーと、ガラス転移点が20℃未満の領域に存在するポリマーとを、2種類以上ブレンドすることにより、耐ベタツキ性と基材への密着性とを両立させることができる。ブレンドする場合の混合比としては、ガラス転移点が20℃以上の領域に存在するポリマーと、ガラス転移点が20℃未満の領域に存在するポリマーとの質量比は、好ましくは0.1:99.9~99.9:0.1、より好ましくは5:95~95:5、更に好ましくは50:50~95:5、より更に好ましくは60:40~90:10である。
コアシェル構造の場合は、シェルのポリマーの種類を変えることにより、他の材料(例えばポリオレフィン多孔性基材等)に対する接着性及び相溶性を調整することができる。コアのポリマーの種類を変更することにより、例えば、熱プレス後の電極に対するポリマーの接着性を調整することができる。コアシェル構造の場合は、粘性の高いポリマーと弾性の高いポリマーとを組み合わせることにより、粘弾性を制御することもできる。コアシェル構造を有する熱可塑性ポリマーの場合、シェルのポリマーのガラス転移点は、限定されないが、好ましくは20℃以上150℃以下、より好ましくは30℃以上120℃以下である。コアのポリマーのガラス転移点は、限定されないが、好ましくは20℃未満、より好ましくは15℃以下、更に好ましくは-50℃以上15℃以下である。
〈分散媒/溶媒〉
本実施形態のパターン塗工用スラリーは、熱可塑性ポリマーと、その分散媒又は溶媒とを含む。本願明細書において、「溶媒」は熱可塑性ポリマーを実質的に全て溶解することができる媒体をいい、「分散媒」は、熱可塑性ポリマーの少なくとも一部を溶解せずに分散させることができる媒体をいう。分散媒は、熱可塑性ポリマーに対して貧溶媒であることが好ましい。
パターン塗工用スラリーに含まれる溶媒又は分散媒としては、特に限定されないが、水が好ましい。パターン塗工用スラリーを基材に塗布する際に、パターン塗工用スラリーが基材の内部にまで入り込んでしまうと、熱可塑性ポリマーが、基材の孔の表面及び内部を閉塞し、得られるセパレータの透過性が低下し易くなる。この点、パターン塗工用スラリーの溶媒又は分散媒として水を用いる場合には、基材の内部にパターン塗工用スラリーが入り込み難くなり、熱可塑性ポリマーは主に基材の外表面上に存在し易くなる。そのため、得られるセパレータの透過性の低下をより効果的に抑制できるので、好ましい。また、この溶媒又は分散媒としては、水のみを用いてもよいし、水、及び水と相溶する他の溶媒又は分散媒とを併用してもよい。水と併用可能な溶媒又は分散媒としては、例えば、エタノール、メタノール等を挙げることができる。
媒体として水を用いる場合は、長期の分散安定性を保つため、そのpHが5~12の範囲に調整されることが好ましい。pHの調整には、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジメチルアミノエタノール等のアミン類を用いることが好ましく、アンモニア(水)又は水酸化ナトリウムによりpHを調整することがより好ましい。
〈その他の成分〉
本実施形態のパターン塗工用スラリーは、熱可塑性ポリマーと、分散媒又は溶媒から成ってもよく、熱可塑性ポリマー及び分散媒以外の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤等の分散剤、増粘剤、及びpH調整剤等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば低分子量分散剤、例えば、カルボン酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩を複数有するモノマー(Cii)、及びカルボン酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩を複数有する非重合性化合物(例えば、アルギン酸ソーダ、及びヒアルロン酸ソーダ)等が挙げられる。
パターン塗工用スラリーの剪断速度50000s-1以下におけるハイシェア粘度の最大値が5cps以上となるよう調整するために、界面活性剤等の分散剤、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、酸やアルカリを含むpH調製剤等の各種添加剤を加えてもよい。これらの添加剤は、溶媒除去や可塑剤抽出の際に除去できるものが好ましいが、リチウムイオン二次電池の使用範囲において電気化学的に安定で、電池反応を阻害しないものであれば、電池内に残存してもよい。好ましい添加剤としては、界面活性剤または増粘剤、更には両方を含むことが好ましい。
界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート等のノニオン性界面活性剤、またはオクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。
イオン解離性の酸基を有する場合、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ酸基、及びマレイン酸基等、またはイオン解離性の酸塩基を有する場合、例えばカルボン酸塩基、スルホン酸塩基、及びマレイン酸塩基等を複数含有するものが好ましい。具体的には、イオン解離性有機分散剤としては、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩がより好ましい。イオン解離性有機分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。界面活性剤の種類及び添加量を調整することにより、表面張力を50以上100以下にすることがより容易となる。
増粘剤としては、例えば、ポリエチレングリコール類、ポリエーテル類、セルロース類、多糖類、ポリアクリルアミド類、ポリN-ピロリドン類、ポリビニルアルコール類、変性ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、変性デンプン等を挙げることができる。増粘剤の配合割合は、パターン塗工用スラリーの全量に対して、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。増粘剤は、スラリーの粘度、ポットライフ及び粒度分布の観点から適宜選択される。増粘剤は1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせても良い。増粘剤の種類及び添加剤を調整することにより、パターン塗工用スラリーの剪断速度50000s-1以下におけるハイシェア粘度の最大値が5cps以上にすることができる。
《パターン塗工用スラリーの製造方法》
本実施形態のパターン塗工用スラリーの製造方法は限定されない。例えば、パターン塗工用スラリーは、熱可塑性ポリマー及び分散媒等の成分を任意の手段で混合して、分散媒中に成分を分散させることによって製造することができる。分散方法は、限定されないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌等が挙げられる。
熱可塑性ポリマーを乳化重合によって合成し、乳化重合によって得られるエマルジョンをパターン塗工用スラリーとして使用することが好ましい。乳化重合の方法及び条件は限定されない。
《蓄電デバイス用セパレータ》
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも片面に、本実施形態のパターン塗工用スラリーから形成されたパターン塗工を有する。一実施形態において、蓄電デバイス用セパレータは、ポリオレフィン多孔性基材の両面にパターン塗工を有してもよい。パターン塗工は、基材の片面又は両面の全体に形成してもよく、セパレータが高いイオン透過性を有するように、片面又は両面の一部のみに形成してもよい。
〈パターン塗工〉
パターン塗工の形状としては、限定されないが、例えば、線状、斜線状、ストライプ状、ドット状、格子目状、縞状、及び亀甲模様状等のパターンが挙げられる。パターン塗工は、好ましくは斜線パターン、ストライプパターン、及びドットパターンであり、より好ましくはドットパターンである。本願明細書において、「ストライプパターン」又は「ストライプ状」とは、ポリオレフィン基材のMD方向(機械方向)に対してほぼ平行な、複数の線を有するパターンを意味する。本願明細書において、「斜線パターン」又は「斜線状」とは、ポリオレフィン基材のMD方向以外の方向に対してほぼ平行な、複数の線を有するパターンを意味する。本願明細書において、「ドットパターン」又は「ドット状」とは、ポリオレフィン多孔質基材上に、熱可塑性ポリマーが存在しない部分と、熱可塑性ポリマーが存在する部分とが海島状である(海:熱可塑性ポリマーが存在しない部分、島:熱可塑性ポリマーが存在する部分である。)ことを意味する。
パターン塗工がドットパターンであることにより、以下のいずれか一つ以上の利点が提供される:
熱可塑性ポリマーが存在しない部分によってセパレータの透過性が確保できるため、高い出力の電池が得られる;並びに
基材表面に凹凸が形成されるため、電池の製造工程において電解液が侵入し易く、注液性が良い(すなわち、電池の製造工程におけるタクトタイムが短縮される)。
パターン塗工の寸法は、限定されないが、微細な、例えば数mm~数μm程度のオーダーの構造を有することが好ましい。例えば、パターン塗工は、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下、更に好ましくは500μm以下、より更に好ましくは200μm以下の構造を有することが好ましい。本願明細書において、パターン塗工が例えば「2000μm以下の構造を有する」とは、パターン塗工の設計上、パターンの幅、長さ、間隔、及び曲率半径等の寸法の少なくとも一部を、2000μm以下に制御することを意味する。パターン塗工の寸法が上記範囲内であることにより、本発明による利点、すなわちパターン塗工性がより顕著になる。
パターン塗工がドットパターンである場合、ドットの径は、好ましくは10μm以上1000μm以下、より好ましくは50μm以上800μm以下、更に好ましくは100μm以上500μm以下である。「ドットの径」とは、ドットが円形の場合は直径を意味し、円形以外の場合は、その重心を通りかつ最短の径を意味する。ドット同士の間隔は、好ましくは5μm以上2000μm以下、より好ましくは10μm以上1500μm以下、更に好ましくは25μm以上1000μm以下、より更に好ましくは50μm以上500μm以下である。「ドット同士の間隔」とは、ドットが円形の場合は中心同士の間隔を意味し、円形以外の場合は、その重心間の距離を意味する。
パターン塗工が斜線状又はストライプ状である場合、線の幅は、好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは20μm以上400μm以下、更に好ましくは35μm以上300μm以下、より更に好ましくは50μm以上200μm以下である。線同士の距離は、好ましくは5μm以上2000μm以下、より好ましくは10μm以上1500μm以下、更に好ましくは25μm以上1000μm以下、より更に好ましくは50μm以上500μm以下である。
ポリオレフィン多孔性基材上における熱可塑性ポリマーの面積占有率は、好ましくは5%以上80%未満であり、より好ましくは15%以上70%以下、更に好ましくは20%以上60%以下である。「面積占有率」とは、パターン塗工がポリオレフィン多孔性基材の片面に配置されている場合、基材の片面の全面積に対して、熱可塑性ポリマーが存在する部分の面積割合を意味し、パターン塗工がポリオレフィン多孔性基材の両面に配置されている場合、基材の両面の全面積に対して、熱可塑性ポリマーが存在する部分の面積割合を意味する。
上記面積占有率に調製することで、電解液注液工程での注液性が良好となる。更には、ポリオレフィン多孔性基材表面の気孔が維持されるため、蓄電デバイス用セパレータとして使用した際のレート特性に優れる。蓄電デバイス用セパレータの注液性は、電池の製造工程における電解液の侵入し易さを示す指標である。注液性が高いほど、電池の製造工程におけるタクトタイムが短縮されるため好ましい。
パターン塗工の厚さは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは6μm以下、より更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは4μm以下である。パターン塗工が多孔性基材の両面に配置されている場合、熱可塑性層の厚さは、多孔性基材の片面当たりの厚さを意味する。パターン塗工の厚さが0.01μm以上であれば、セパレータをプレスした際に熱可塑性ポリマーを熱可塑性層の表面にマイグレーションさせ易く、その結果、熱可塑性層が接着層として機能してセパレータと電極との接着強度及び蓄電デバイスの剛性を確保することができる。熱可塑性層の厚さが6μm以下であれば、セパレータのイオン透過性の低下を抑制することができるため好ましい。
〈ポリオレフィン多孔性基材〉
本発明におけるポリオレフィン多孔性基材について説明する。
ポリオレフィン多孔性基材としては、電子伝導性が小さく、イオン伝導性を有し、有機溶媒に対する耐性が高く、孔径の微細なポリオレフィン微多孔膜が好ましい。
ポリオレフィン多孔性基材は、蓄電デバイス用セパレータのシャットダウン性能等を向上させる観点から、多孔膜を構成する樹脂成分の50質量%以上100質量%以下をポリオレフィン樹脂が占めるポリオレフィン樹脂組成物により形成される多孔膜であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂が占める割合は、60質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物に含有されるポリオレフィン樹脂としては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等から選択されるα-オレフィンをモノマーとして用いて得られるホモ重合体、共重合体、多段重合体等が挙げられる。これらのポリオレフィン樹脂は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
中でも、蓄電デバイス用セパレータのシャットダウン特性の観点から、ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、若しくはこれらの共重合体、又はこれらの混合物が好ましい。
ポリエチレンの具体例としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等、
ポリプロピレンの具体例としては、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン等、
共重合体の具体例としては、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレンプロピレンラバー等、が挙げられる。
中でも、蓄電デバイス用セパレータの低融点かつ高強度の要求性能を満たす観点からは、ポリオレフィン樹脂としてポリエチレン、特に高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。なお、本発明において、高密度ポリエチレンとは密度0.942~0.970g/cm3のポリエチレンをいう。なお、本発明においてポリエチレンの密度とは、JIS K7112(1999)に記載のD)密度勾配管法に従って測定した値をいう。
ポリオレフィン多孔性基材の耐熱性を向上させる観点からは、ポリオレフィン樹脂としてポリエチレン及びポリプロピレンの混合物を用いることが好ましい。この場合、ポリオレフィン樹脂組成物中の、総ポリオレフィン樹脂に対するポリプロピレンの割合は、耐熱性と良好なシャットダウン機能を両立させる観点から、1~35質量%であることが好ましく、より好ましくは3~20質量%、更に好ましくは4~10質量%である。
ポリオレフィン樹脂組成物には、任意の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、ポリオレフィン樹脂以外の重合体;無機フィラー;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;防曇剤;着色顔料等が挙げられる。これらの添加剤の総添加量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、20質量部以下であることがシャットダウン性能等を向上させる観点から好ましく、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
多孔膜は、非常に小さな孔が多数集まって緻密な連通孔を形成した多孔構造を有しているため、イオン伝導性に非常に優れると同時に耐電圧特性も良好であり、しかも高強度であるという特徴を有する。
ポリオレフィン多孔性基材は、上述した材料からなる単層膜であってもよく、積層膜であってもよい。
ポリオレフィン多孔性基材の膜厚は、0.1μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上50μm以下、更に好ましくは3μm以上25μm以下である。機械的強度の観点から0.1μm以上が好ましく、電池の高容量化の観点から100μm以下が好ましい。多孔膜の膜厚は、ダイリップ間隔、延伸工程における延伸倍率等を制御すること等によって調整することができる。
ポリオレフィン多孔性基材の平均孔径は、0.03μm以上0.70μm以下が好ましく、より好ましくは0.04μm以上0.20μm以下、更に好ましくは0.05μm以上0.10μm以下、特に好ましくは0.06μm以上0.09μm以下である。高いイオン伝導性と耐電圧の観点から、0.03μm以上0.70μm以下が好ましい。ポリオレフィン多孔性基材の平均孔径は、後述する測定法で測定することができる。
平均孔径は、組成比、押出シートの冷却速度、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率等から選択される1つ以上を制御することにより調整することができる。
ポリオレフィン多孔性基材の気孔率は、好ましくは25%以上95%以下、より好ましく30%以上65%以下、更に好ましくは35%以上55%以下である。イオン伝導性向上の観点から25%以上が好ましく、耐電圧特性の観点から95%以下が好ましい。ポリオレフィン多孔性基材の気孔率は、後述する方法で測定することができる。
ポリオレフィン多孔性基材の気孔率は、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の混合比率、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率等から選択される1つ以上を制御することによって調整することができる。
ポリオレフィン多孔性基材の粘度平均分子量は、30,000以上12,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは50,000以上2,000,000未満、更に好ましくは100,000以上1,000,000未満である。粘度平均分子量が30,000以上であると、溶融成形の際のメルトテンションが大きくなり成形性が良好になるとともに、重合体同士の絡み合いにより高強度となる傾向にあるため、好ましい。一方、粘度平均分子量が12,000,000以下であると、均一に溶融混練をすることが容易となり、シートの成形性、特に厚み安定性に優れる傾向にあるため好ましい。粘度平均分子量が1,000,000未満であると、蓄電デバイス用セパレータの温度上昇時にポリオレフィン多孔性基材の孔を閉塞し易く、良好なシャットダウン機能が得られる傾向にあるため、好ましい。ポリオレフィン多孔性基材の粘度平均分子量は、後述する方法で測定することができる。
〈蓄電デバイス用セパレータの物性〉
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも片面に、本実施形態のパターン塗工用スラリーから形成されたパターン塗工を有し、それによってイオン透過性、電極との接着性、ブロッキング性、及び注液性等に優れる。
(イオン透過性)
蓄電デバイス用セパレータのイオン透過性は、実施例の欄に記載するように、セパレータの透気度によって評価することができる。蓄電デバイス用セパレータの透気度は、好ましくは10~10,000秒/100ccであり、より好ましくは10~1,000秒/100ccであり、更に好ましくは50~500秒/100ccである。透気度が上記範囲内であることにより、セパレータをリチウムイオン二次電池に適用したときには、大きなイオン透過性を示す。
(膜厚)
上記セパレータの最終的な膜厚は、2μm以上200μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上100μm以下、更に好ましくは7μm以上30μm以下である。膜厚が2μm以上であると、機械強度が十分となる傾向にある。また、200μm以下であると、セパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向にある。
(接着性)
蓄電デバイス用セパレータの接着性は、実施例の欄に記載するように、セパレータと電極との間の剥離強度により評価することができる。蓄電デバイス用セパレータは、セパレータの熱可塑性ポリマーを含有する層側を正極に、100℃において1MPaの圧力で5秒間加圧した場合の剥離強度(以下、「加熱剥離強度」ともいう。)として測定される。上記セパレータの剥離強度としては、加熱剥離強度の値が2mN/mm以上であることが好ましい。加熱剥離強度が上記範囲にあるセパレータは、後述の蓄電デバイスに適用する際に、電極とセパレータとの密着性に優れる点で好ましい。上記の加熱剥離強度の測定方法については、後述の実施例において具体的に記載される。
また、本実施形態におけるセパレータは、該セパレータを2枚重ねて、その積層方向に、温度25℃において圧力5MPaで3分間加圧した後の90°剥離強度(以下、「常温剥離強度」ともいう。)が、20mN/mm以下であることが好ましく、10mN/mm以下であることがより好ましい。この要件を満たすことにより、セパレータが耐ブロッキング性に更に優れ、そのハンドリング性がより良好になるという効果が得られる。
《蓄電デバイス用セパレータの製造方法》
蓄電デバイス用セパレータの製造方法は:
ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも片面に、パターン塗工用スラリーをパターン塗工することと;
上記パターン塗工用スラリーから分散媒を乾燥させることと
を含み、
上記パターン塗工用スラリーは、熱可塑性ポリマーと、分散媒又は溶媒とを含み、
上記パターン塗工用スラリーは、剪断速度50000s-1以下におけるハイシェア粘度の最大値が5cps以上である、方法であることが好ましい。
〈ポリオレフィン多孔性基材の製造方法〉
ポリオレフィン多孔性基材を製造する方法としては特に制限はなく、公知の製造方法を採用することができる。例えば、
(1)ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、必要に応じて延伸した後、孔形成材を抽出することにより多孔化させる方法、
(2)ポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練して高ドロー比で押出した後、熱処理及び延伸によって、ポリオレフィン結晶界面を剥離させることにより多孔化させる方法、
(3)ポリオレフィン樹脂組成物と無機充填材とを溶融混練してシート上に成形した後、延伸によってポリオレフィンと無機充填材との界面を剥離させることにより多孔化させる方法、
(4)ポリオレフィン樹脂組成物を溶解後、ポリオレフィンに対する貧溶媒に浸漬させてポリオレフィンを凝固させると同時に溶剤を除去することにより多孔化させる方法、
等が挙げられる。
以下、ポリオレフィン多孔性基材を製造する方法の一例として、ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、孔形成材を抽出する方法について説明する。
まず、ポリオレフィン樹脂組成物及び孔形成材を溶融混練する。溶融混練方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂及び必要によりその他の添加剤を、例えば押出機、ニーダー、ラボプラストミル、混練ロール、バンバリーミキサー等の樹脂混練装置を用いて、樹脂成分を加熱溶融させながら任意の比率で孔形成材を導入して混練する方法が挙げられる。
上記孔形成材としては、可塑剤、無機材、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
可塑剤としては、特に限定されないが、ポリオレフィンの融点以上において均一溶液を形成し得る不揮発性溶媒を用いることが好ましい。このような不揮発性溶媒の具体例としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。特に、多成分との相溶性及び延伸時の均一性の観点から、流動パラフィンが好ましい。
可塑剤の混合方法として、好ましくは、樹脂混練装置に投入する前に、ポリオレフィン樹脂、その他の添加剤、及び可塑剤を、予めヘンシェルミキサー等を用いて所定の割合で事前混練しておくことである。より好ましくは、事前混練において、可塑剤はその一部のみを投入し、残りの可塑剤は、適宜加温しつつ樹脂混練装置にサイドフィードして混練する。このような混練方法を用いることにより、可塑剤の分散性が高まり、後の工程で樹脂組成物と可塑剤の溶融混練物のシート状成形体を延伸する際に、破膜することなく高倍率で延伸することができることになる。
ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の比率は、これらを均一に溶融混練して、シート状に成形できる範囲であれば特に限定はない。例えば、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とからなる組成物中に占める可塑剤の質量分率として、好ましくは20~90質量%、より好ましくは30~80質量%である。可塑剤の質量分率が90質量%以下であると、溶融成形時のメルトテンションが成形性向上のために十分なものとなる傾向にある。一方、可塑剤の質量分率が20質量%以上であると、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤との混合物を高倍率で延伸した場合でもポリオレフィン分子鎖の切断が起こらず、均一かつ微細な孔構造を形成し易く、強度も増加し易いため、好ましい。
無機材としては、特に限定されず、例えば、アルミナ、シリカ(珪素酸化物)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、電気化学的安定性の観点から、シリカ、アルミナ、又はチタニアが好ましく、抽出が容易である点から、シリカが特に好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物と無機材との比率は、良好な隔離性を得る観点から、これらの合計質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、ポリオレフィン多孔性基材の高い強度を確保する観点から、ポリオレフィン樹脂組成物と無機材との合計質量に対して、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
次に、溶融混練物をシート状に成形する。シート状成形体を製造する方法としては、例えば、溶融混練物を、Tダイ等を介してシート状に押出し、熱伝導体に接触させて樹脂成分の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却して固化する方法が挙げられる。冷却固化に用いられる熱伝導体としては、金属、水、空気、或いは可塑剤等が挙げられる。これらの中でも、熱伝導の効率が高いため、金属製のロールを用いることが好ましい。また、押出した混練物を金属製のロールに接触させる際に、ロール間に挟み込むことは、熱伝導の効率が更に高まると共に、シートが配向して膜強度が増し、シートの表面平滑性も向上する傾向にあるため、より好ましい。溶融混練物をTダイからシート状に押出す際のダイリップ間隔は200μm以上3,000μm以下であることが好ましく、500μm以上2,500μm以下であることがより好ましい。ダイリップ間隔が200μm以上であると、メヤニ等が低減され、スジや欠点等膜品位への影響が少なく、その後の延伸工程において膜破断等のリスクを低減することができる。一方、ダイリップ間隔が3,000μm以下であると、冷却速度が速く冷却ムラを防げるとともに、シートの厚み安定性を維持できる。
また、シート状成形体を圧延してもよい。圧延は、例えば、ダブルベルトプレス機等を使用したプレス法にて実施することができる。圧延を施すことにより、特に表層部分の配向を増すことができる。圧延面倍率は1倍を超えて3倍以下であることが好ましく、1倍を超えて2倍以下であることがより好ましい。圧延倍率が1倍を超えると、面配向が増加し最終的に得られる多孔膜の膜強度が増加する傾向にある。一方、圧延倍率が3倍以下であると、表層部分と中心内部の配向差が小さく、膜の厚さ方向に均一な多孔構造を形成することができる傾向にある。
次いで、シート状成形体から孔形成材を除去して、多孔膜を得ることができる。孔形成材を除去する方法としては、例えば、抽出溶剤にシート状成形体を浸漬して孔形成材を抽出した後、充分に乾燥させる方法が挙げられる。孔形成材を抽出する方法は、バッチ式、連続式のいずれであってもよい。多孔膜の収縮を抑えるために、浸漬及び乾燥から成る一連の工程中に、シート状成形体の端部を拘束しておくことが好ましい。
シート状成形体から孔形成材を除去する際には、多孔膜中の孔形成材残存量を多孔膜全体の質量に対して1質量%未満にすることが好ましい。
孔形成材を抽出する際に用いられる抽出溶剤としては、孔形成材料に対して貧溶媒で、かつ孔形成材に対して良溶媒であり、沸点が孔形成材料の融点より低いものを用いることが好ましい。このような抽出溶剤としては、
孔形成材料としてポリオレフィン樹脂を用いる場合には、例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、1,1,1-トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤;エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等を;
孔形成材として無機材を用いる場合には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を、
それぞれ、抽出溶剤として用いることができる。
上記シート状成形体又は多孔膜を延伸することが好ましい。延伸はシート状成形体から孔形成材を抽出する前に行ってもよいし、シート状成形体から孔形成材を抽出した多孔膜に対して行ってもよい。更に、シート状成形体から孔形成材を抽出する前と後に行ってもよい。
延伸処理としては、一軸延伸又は二軸延伸のいずれも好適に用いることができる。得られる多孔膜の強度等を向上させる観点から、二軸延伸が好ましい。特に、シート状成形体を二軸方向に高倍率延伸すると、分子が面方向に配向し、最終的に得られる多孔膜が裂け難くなり、高い突刺強度を有するものとなる。延伸方法としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。突刺強度の向上、延伸の均一性、及びシャットダウン性の観点からは、同時二軸延伸が好ましい。また、面配向の制御容易性の観点からは、遂次二軸延伸が好ましい。
延伸倍率は、面倍率として、20倍以上100倍以下の範囲であることが好ましく、25倍以上70倍以下の範囲であることがより好ましい。各軸方向の延伸倍率は、MDに4倍以上10倍以下、TDに4倍以上10倍以下の範囲であることが好ましく;MDに5倍以上8倍以下、TDに5倍以上8倍以下の範囲であることがより好ましい。総面積倍率が20倍以上であると、得られる多孔膜に十分な強度を付与できる傾向にあり、一方、総面積倍率が100倍以下であると、延伸工程における膜破断を防ぎ、高い生産性が得られる傾向にある。
多孔膜には、収縮を抑制する観点から熱固定を目的として熱処理を施すことが好ましい。熱処理の方法としては、物性の調整を目的とする延伸操作、並びに、延伸応力低減を目的とする緩和操作のうちの1つ以上が挙げられる。延伸操作を行った後に緩和操作を行っても構わない。これらの熱処理は、テンターやロール延伸機を用いて行うことができる。
延伸操作は、膜のMD及びTDのうちの1つ以上の方向に、1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上の延伸を施すことが、更なる高強度かつ高気孔率な多孔膜が得られる観点から好ましい。
緩和操作における緩和率(緩和操作後の膜の寸法を緩和操作前の膜の寸法で除した値)は、膜のMD及びTDのうちの1つ以上の方向に、1.0以下であることが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.95以下であることが更に好ましい。緩和率は、膜品位の観点から0.5以上であることが好ましい。緩和操作は、MD及びTDの両方向で行ってもよいし、MD又はTDの片方だけについて行ってもよい。
この可塑剤抽出後の延伸及び緩和操作は、好ましくはTDに行う。延伸及び緩和操作における温度は、ポリオレフィン樹脂の融点(以下、「Tm」ともいう。)より低いことが好ましく、Tmより1℃から25℃低い範囲がより好ましい。延伸及び緩和操作における温度が上記範囲であると、熱収縮率低減と気孔率とのバランスの観点から好ましい。
《無機フィラーと樹脂製バインダとを含む多孔層》
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも片面に形成されたパターン塗工に加えて、無機フィラーと樹脂製バインダを含む多孔層を備えていてもよい。以下、無機フィラーと樹脂製バインダとを含む多孔層について説明する。
〈無機フィラー〉
多孔層に使用する無機フィラーとしては、特に限定されないが、耐熱性及び電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
無機フィラーとしては、例えば、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、その他化合物が挙げられる。
アルミニウム化合物としては、例えば、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
その他化合物としては、例えば、酸化物系セラミックス、窒化物系セラミックス、粘土鉱物、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂、ガラス繊維等が挙げられる。酸化物系セラミックスとしては、例えば、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等が挙げられる。窒化物系セラミックスとしては、例えば、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等が挙げられる。粘土鉱物としては、例えば、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
上記の中でも、電気化学的安定性及び耐熱特性の観点から、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、及びケイ酸アルミニウムからなる群より選択される1種以上が好ましい。酸化アルミニウムの具体例としては、例えばアルミナ等が挙げられる。水酸化酸化アルミニウムの具体例としては、例えばベーマイト等が挙げられる。ケイ酸アルミニウムの具体例としては、例えば、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト等が挙げられる。
酸化アルミニウムとしては、電気化学的安定性の観点から、アルミナがより好ましい。多孔層を構成する無機フィラーとして、アルミナを主成分とする粒子を採用することにより、高い透過性を維持しながら、非常に軽量な多孔層を実現できる。更に、多孔層厚がより薄い場合であっても、多孔膜の高温における熱収縮が抑制され、優れた耐熱性を発現する傾向にある。アルミナには、α-アルミナ、β-アルミナ、γ-アルミナ、θ-アルミナ等、多くの結晶形態が存在するが、いずれも好適に使用することができる。この中でα-アルミナが、熱的・化学的に安定なので、最も好ましい。
水酸化酸化アルミニウムとしては、リチウムデンドライトの発生に起因する内部短絡を防止する観点から、ベーマイトがより好ましい。多孔層を構成する無機フィラーとして、ベーマイトを主成分とする粒子を採用することにより、高い透過性を維持しながら、非常に軽量な多孔層を実現できる。更に、多孔層厚がより薄い場合であっても、多孔膜の高温における熱収縮が抑制され、優れた耐熱性を発現する傾向にある。蓄電素子の特性に悪影響を与えるイオン性の不純物を低減できる合成ベーマイトが、更に好ましい。
ケイ酸アルミニウムの中では、主にカオリン鉱物で構成されているカオリナイト(以下、カオリンともいう)が、軽量性及び透気度の観点から好ましい。カオリンには湿式カオリン及びこれを焼成処理した焼成カオリンがある。これらのうち焼成カオリンは、焼成処理の際に結晶水が放出されるのに加えて不純物が除去されるので、電気化学的安定性の点で特に好ましい。多孔層を構成する無機フィラーとして、焼成カオリンを主成分とする粒子を採用することにより、高い透過性を維持しながら、非常に軽量な多孔層を実現できる。更に、多孔層厚がより薄い場合であっても、多孔膜の高温における熱収縮が抑制され、優れた耐熱性を発現する傾向にある。
無機フィラーの平均粒径は、0.1μm以上10.0μm以下であることが好ましく、0.2μm以上5.0μm以下であることがより好ましく、0.4μm以上3.0μm以下であることが更に好ましい。無機フィラーの平均粒径を上記範囲に調整することは、透気度を高くするとともに、高温における熱収縮を抑制する観点から好ましい。
無機フィラーの粒度分布としては、以下のとおりであることが好ましい。最小粒径は、0.02μm以上であることが好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上が更に好ましい。最大粒径は20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、7μm以下が更に好ましい。また、最大粒径/平均粒径の比率は、50以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。無機フィラーの粒度分布を上記範囲に調整することは、高温での熱収縮を抑制する観点から好ましい。無機フィラーの粒度分布は、最大粒径と最小粒径との間に、1つ又は複数の粒径ピークを更に有してもよい。無機フィラーの粒度分布を調整する方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等を用いて無機フィラーを粉砕し、所望の粒度分布に調整する方法、複数の粒径分布のフィラーを調整後ブレンドする方法等を挙げることができる。
無機フィラーの形状としては、板状、鱗片状、多面体、針状、柱状、球状、紡錘状、塊状等が挙げられる。上記形状を有する無機フィラーを複数種組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、透過性向上の観点からは、板状、鱗片状、及び多面体からなる群より選択される1種以上の形状が好ましい。
無機フィラーが、多孔層中に占める割合としては、透過性、耐熱性等の観点から適宜決定することができる。上記割合は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは97質量%以上とすることができる。また、上記割合は、100質量%未満であることが好ましく、より好ましくは99.99質量%以下、更に好ましくは99.9質量%以下、特に好ましくは99質量%以下である。
〈樹脂製バインダ〉
樹脂製バインダは、前述した無機フィラーを相互に結着する役割を果たす樹脂である。これに加えて、無機フィラーと多孔膜とを相互に結着する役割を果たす樹脂であることが好ましい。
樹脂製バインダの種類としては、セパレータとした時にリチウムイオン二次電池の電解液に対して不溶であり、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲の環境において、電気化学的に安定なものを用いることが好ましい。
樹脂製バインダの具体例としては、例えば以下の1)~7)が挙げられる。
1)ポリオレフィン:例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンラバー、及びこれらの変性体等;
2)共役ジエン系重合体:例えば、スチレン-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びその水素化物等;
3)アクリル系重合体:例えば、メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体等;
4)ポリビニルアルコール系樹脂:例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル;
5)含フッ素樹脂:例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等;
6)セルロース誘導体:例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等;
7)融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂、或いは融点を有しないが分解温度が200℃以上のポリマー:例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル等。特に、耐久性の観点から全芳香族ポリアミド、中でもポリメタフェニレンイソフタルアミドが好適である。
中でも、電極とのなじみやすさの観点からは、上記2)共役ジエン系重合体が好ましく、耐電圧性の観点からは上記3)アクリル系重合体及び5)含フッ素樹脂空なる群より選択される1種以上が好ましい。
上記2)共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物を単量体単位として含む重合体である。
上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、特に1,3-ブタジエンが好ましい。
上記3)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系化合物を単量体単位として含む重合体である。上記(メタ)アクリル系化合物とは、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つを示す。
上記3)アクリル系重合体に用いられる(メタ)アクリル酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等を挙げることができる。
上記3)アクリル系重合体に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアメタクリレート等;
エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等;が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特にアクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
上記2)共役ジエン系重合体及び3)アクリル系重合体は、それぞれ、共役ジエン化合物又は(メタ)アクリル系化合物と共重合可能な他の単量体を共重合させて得られるものであってもよい。用いられる共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマール酸、イタコン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特に不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体が好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、例えば、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
上記2)共役ジエン系重合体は、他の単量体として上記(メタ)アクリル系化合物を共重合させて得られるものであってもよい。
〈多孔層の構造及び形成方法〉
多孔層の層厚は、耐熱性、絶縁性を向上させる観点から、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは1.0μm以上、更に好ましくは1.2μm以上、特に好ましくは1.5μm以上、とりわけ好ましくは1.8μm以上、最も好ましくは2.0μm以上である。また、電池の高容量化と透過性を向上させる観点から、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下、特に好ましくは7μm以下である。
多孔層における無機フィラーの充填率としては、軽量性及び高透過性の観点から、95体積%以下が好ましく、80体積%以下がより好ましく、70体積%以下が更に好ましく、60体積%以下が特に好ましい。熱収縮抑制及びデンドライト抑制の観点から、無機フィラー充填率の下限としては、20体積%以上が好ましく、30体積%以上がより好ましく、40体積%以上が更に好ましい。無機フィラーの充填率は、多孔層の層厚、並びに無機フィラーの質量及び比重から算出することができる。
多孔層は、多孔膜の片面にのみ形成しても、両面に形成してもよい。
多孔層の形成方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜の少なくとも片面に、無機フィラーと樹脂製バインダとを含む塗布液を塗布して多孔層を形成する方法等を挙げることができる。
塗布液中の樹脂製バインダの形態としては、水に溶解又は分散した水系溶液又は分散液であっても、一般的な有機媒体に溶解又は分散した有機媒体系溶液又は分散液であってもよいが、樹脂製ラテックスが好ましい。「樹脂製ラテックス」とは、樹脂が媒体に分散した状態の分散液を示す。樹脂製ラテックスをバインダとして用いた場合、無機フィラーとバインダとを含む多孔層をポリオレフィン多孔膜の少なくとも片面に積層したときに、イオン透過性が低下し難く、高出力特性のセパレータが得られ易い。加えて、異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い。
樹脂製ラテックスバインダの平均粒径は、50~1,000nmであることが好ましく、より好ましくは60~500nm、更に好ましくは80~250nmである。平均粒径が50nm以上である場合、無機フィラーとバインダとを含む多孔層をポリオレフィン多孔膜の少なくとも片面に積層した際、良好な結着性を発現し、セパレータとした場合に熱収縮が良好となり、安全性に優れる傾向にある。平均粒径が1,000nm以下である場合、イオン透過性が低下し難く、高出力特性が得られ易い。加えて、異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い。平均粒径は、樹脂製バインダを製造する際の重合時間、重合温度、原料組成比、原料投入順序、pH、撹拌速度等を調整することにより、制御することが可能である。
塗布液の媒体としては、無機フィラー及び樹脂製バインダを、均一かつ安定に分散又は溶解できるものが好ましい。具体的には、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、水、エタノール、トルエン、熱キシレン、塩化メチレン、ヘキサン等が挙げられる。
塗布液には、分散安定化、塗工性等の向上のために、界面活性剤等の分散剤;増粘剤;湿潤剤;消泡剤;酸又はアルカリを含むpH調整剤等の各種添加剤を加えてもよい。これら添加剤の総添加量は、無機フィラー100質量部に対して、その有効成分(添加剤が溶媒に溶解している場合は溶解している添加剤成分の質量)量として、20質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
無機フィラーと樹脂製バインダとを、塗布液の媒体に分散又は溶解させる方法については、塗布工程に必要な塗布液の分散特性を実現できる方法であれば特に限定はない。例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌等が挙げられる。
塗布液を多孔膜に塗布する方法については、必要とする層厚及び塗布面積を実現できる方法であれば特に限定はない。例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。
更に、塗布液の塗布に先立ち、多孔膜表面に表面処理を施すと、塗布液を塗布し易くなると共に、塗布後の無機フィラー含有多孔層と多孔膜表面との接着性が向上するため、好ましい。表面処理の方法としては、多孔膜の多孔質構造を著しく損なわない方法であれば特に限定はない。例えば、コロナ放電処理法、プラズマ放電処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、紫外線酸化法等が挙げられる。
塗布後に塗布膜から媒体を除去する方法については、多孔膜に悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定はない。例えば、多孔膜を固定しながらその融点以下の温度において乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、抽出乾燥等が挙げられる。また電池特性に著しく影響を及ぼさない範囲において溶媒を一部残存させても構わない。多孔膜及び多孔層を積層した多孔膜のMD方向の収縮応力を制御する観点から、乾燥温度、巻取り張力等を、適宜調整することが好ましい。
〈パターン塗工の方法〉
パターン塗工の方法は、所望のパターン及び層厚等を実現できれば限定されず、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、及びスプレー塗布法等が挙げられる。パターン塗工の方法は、熱可塑性ポリマーの塗工形状の自由度が高く、所望の面積割合を容易に得ることができること等から、好ましくはグラビアコーター法である。
グラビアコーター法を用いる場合、所望のパターン加工が施されたグラビアコーターを用いてパターン塗工を行う。グラビアコーターにおけるパターンの形状としては、上記「〈パターン塗工〉」の欄に挙げた形状に対応する形状であることができ、好ましくはドット、斜線、又はストライプのパターンであり、より好ましくはドットパターンである。グラビアコーターにおけるパターンの深さとしては、好ましくは1μm~50μm、より好ましくは3μm~20μmである。深さが1μm以上であれば、セル内の塗料の量を充分に確保でき、塗工不良を低減することができる。深さが50μm以下であれば、スラリーがセルに入りやすく、塗工性が安定し易い。グラビアコーターにおけるパターンの深さを制御することにより、塗工パターンの厚さを制御することができる。それぞれのパターンの好ましい径、幅、距離、面積占有率、及び厚さ等は、上記「〈パターン塗工〉」の欄を参照されたい。
パターン塗工に先立ち、多孔性基材の表面に表面処理を施すと、スラリーを塗布し易くなるとともに、基材とパターン塗工との接着性が向上するため好ましい。表面処理の方法は、基材の多孔質構造を著しく損なわない方法であれば限定されず、例えば、コロナ放電処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、及び紫外線酸化法等が挙げられる。
〈乾燥方法〉
分散媒を乾燥させる方法は、塗布後のパターン塗工から分散媒を実質的に除去して多孔性基材上に、熱可塑性ポリマーを含むパターン塗工を残すことができれば限定されない。乾燥後のパターン塗工に許容量の分散媒が残留してもよい。分散媒を乾燥させる方法としては、例えば、多孔性基材を固定しながらその融点以下の温度で乾燥させる方法、及び低温で減圧乾燥させる方法等が挙げられる。多孔性基材のMD方向(多孔性基材の機械方向)の収縮応力を制御する観点から、乾燥温度、及び巻取り張力等を調整することが好ましい。
パターン形成性の観点から、乾燥方法としては特に限定されないが、スラリーを塗布してからゲル化点の固形分に達するまでの時間が20秒以内であることが好ましく、より好ましくは15秒以内、より好ましくは10秒以内、更に5秒以内であることが好ましい。ゲル化点以降は、ポリオレフィン微多孔基材の気孔が閉塞しない程度の条件で乾燥させることが好ましい。
《蓄電デバイス》
本実施形態の蓄電デバイスは、正極と、負極と、電解質と、本実施形態の蓄電デバイス用セパレータとを有する。蓄電デバイスは、典型的には、正極と、本実施形態の蓄電デバイス用セパレータと、負極とが、この順に積層した電極積層体、又は電極積層体を捲回した電極捲回体を有する。
蓄電デバイスとしては、限定されないが、例えば、非水系電解液二次電池等の電池、コンデンサー、及びキャパシタが挙げられる。本実施形態の効果による利益がより有効に得られる観点から、蓄電デバイスは、好ましくは電池であり、より好ましくは非水系電解液二次電池であり、更に好ましくはリチウムイオン二次電池である。蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池等の非水系電解液二次電池である場合について、好適な態様を以下に説明する。
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータを用いてリチウムイオン二次電池を製造する場合、正極、負極、及び電解液は限定されず、それぞれ既知の材料を用いることができる。
正極としては、正極集電体上に、正極活物質を含む正極活物質層が形成された正極を好適に用いることができる。正極集電体としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiNiO、スピネル型LiMnO、及びオリビン型LiFePO等のリチウム含有複合酸化物等が挙げられる。正極活物質層は、正極活物質に加えて、バインダ、及び導電材等を含んでもよい。
負極としては、負極集電体上に、負極活物質を含む負極活物質層が形成された負極を好適に用いることができる。負極集電体としては、例えば銅箔等が挙げられる。負極活物質としては、例えば、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、及び複合炭素体等の炭素材料;シリコン、スズ、金属リチウム、及び各種合金材料等が挙げられる。
電解液としては、非水電解液を用いることができる。非水電解液としては、限定されないが、電解質を有機溶媒に溶解した電解液を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネート等が挙げられる。電解質としては、例えば、LiClO、LiBF、及びLiPF等のリチウム塩が挙げられる。
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータを用いて、蓄電デバイス、好ましくはリチウムイオン二次電池等の非水系電解液二次電池を製造する方法を以下に例示する。
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータを、幅10~2000mm、好ましくは30~1500mm、長さ200~4,000m、好ましくは1,000~4,000mの縦長形状を有するセパレータとして製造する。得られたセパレータを、正極-セパレータ-負極-セパレータ、又は負極-セパレータ-正極-セパレータの順に積層し、円又は扁平な渦巻状に捲回して電極捲回体を得て、電極捲回体を電池容器内に入れて、電解液を注液することにより、蓄電デバイスを製造することができる。
代替的には、本実施形態の蓄電デバイス用セパレータと、正極と、負極とから構成される電極積層体、又は電極積層体を折り畳んだものを電池容器に入れて、電解液を注液することにより、蓄電デバイスを製造してもよい。電極積層体は、例えば、正極-セパレータ-負極-セパレータ-正極、又は負極-セパレータ-正極-セパレータ-負極の順に平板状に積層した電極積層体であることができる。電池容器は、例えば、アルミニウム製のフィルムであることができる。
いずれの場合にも、上記接着体を製造するための方法は、特に限定されないが、例えば、上記セパレータと電極とを重ねた後、加熱及びプレスのうちの少なくとも1種の加工を行うことにより、製造することができる。
上記の加熱及びプレスは、それぞれ、電極とセパレータとを重ねた状態で行うことができる。例えば、上述の巻回体又は積層体を形成して加熱及びプレスのうちの少なくとも1種の加工を行うことができる。
上記加熱及びプレスは、それぞれ、電極及びセパレータを、外装体に収容する前に行ってもよく、外装体に収容した後に行ってもよく、更には外装体に収容する前及び後の双方に行ってもよい。
加熱及びプレスのうちの少なくとも1種の加工を、電極及びセパレータを外装体に収容した後に行う場合には、外装体に電解液を注入する前に行ってもよく、注入した後に行ってもよく、更には、電解液を注入する前及び後の双方に行ってもよい。
特に外装体として袋状のフィルムを使用する場合には、電極及びセパレータを外装体に収容し、更に電解液を注入した後に、加熱及びプレスのうちの少なくとも1種の加工を行うことが好ましい。この時、電極及びセパレータのずれを防止する観点から、これらを外装体に収容する前に加熱及びプレスのうちの少なくとも1種の加工を行うことが好ましい。
プレス温度は、効果的に接着性を発現できる温度、例えば、20℃以上が好ましい。プレスによるセパレータ孔の目詰まり又は熱収縮を抑える点で、プレス温度は、ポリオレフィン多孔性基材の融点よりも低いことが好ましく、120℃以下であることがさらに好ましい。プレス圧力は、セパレータ孔の目詰まりを抑える観点から、20MPa以下が好ましい。プレス時間は、ロールプレスを用いたときに1秒以下でもよく、面プレスを用いたときに数時間でもよい。本実施形態の蓄電デバイス用セパレータを用いて、上記のプレス方法を行うことにより、電極及びセパレータを含む電極捲回体をプレス成形した際のプレスバックを効果的に抑制することができ;又は、電極及びセパレータを含む電極積層体をプレス成形した後の、剥がれ及び位置ズレを防ぐことができる。したがって、電池組立工程における歩留まり低下を抑制し、生産工程時間を短縮することができるので、上記のプレス方法を含む製造工程を使用して蓄電デバイスを製造することが好ましい。
本実施形態の蓄電デバイスは、イオン透過性、電極との接着性等に優れる本実施形態の蓄電デバイス用セパレータを有するため、レート特性に優れる。
以下、実施例及び比較例により本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
《測定及び評価方法》
〈ハイシェア粘度〉
ハイシェア回転式粘度計PM9002HV(三井電気精機製)を用いて、室温にて0rpmから12000rpmまで1200rpm/secの条件で回転数を増加させ測定した。
〈接触角〉
セルガード製C2500の表面にスラリーを乗せ、23℃において1分間放置した後、日本国協和界面科学製、CA-X150型接触角計を用いて測定した。
〈スラリーの各固形分濃度における粘度〉
B型粘度計を使用して、25℃での塗工液の粘度(mPa・s)をせん断速度60s-1の条件で測定した。
各スラリーの固形分濃度は、スラリー100mlを40℃のホットスターラー上にて、スラリーを100rpmにて撹拌しながら徐々に溶媒を蒸発させることで調整した。
〈熱可塑性ポリマーのゲル分率(トルエン不溶分)〉
テフロン(登録商標)板上に、熱可塑性ポリマーの塗工液(不揮発分=38~42%、pH=9.0)をスポイトで滴下し(直径5mm以下)、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。乾燥後、乾燥皮膜を約0.5g精秤(a)し、それを50mLポリエチレン容器に取り、そこに30mLのトルエンを注ぎ入れ、3時間室温で振とうした。その後、内容物を325メッシュでろ過し、メッシュ上に残ったトルエン不溶分をメッシュごと、130℃の熱風乾燥機で1時間乾燥させた。なお、ここで使用する325メッシュは、予めその乾燥質量を測っておいたものである。
そして、トルエンを揮発させた後、トルエン不溶分の乾燥体及び325メッシュの合計質量から、予め測っておいた325メッシュ質量を差し引くことにより、トルエン不溶分の乾燥質量(b)を得た。ゲル分率(トルエン不溶分)は、以下の計算式を用いて算出した。
熱可塑性ポリマーのゲル分率(トルエン不溶分)(%)=(b)/(a)×100
〈熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度(倍)〉
熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを分散させた溶液を130℃のオーブン中に1時間静置した後、乾燥させた熱可塑性ポリマーを0.5gになるように切り取り、所定の成分及び混合比の混合溶媒10gと一緒に50mLのバイアル瓶に入れ、所定時間浸透させた後、サンプルを取り出し、上記混合溶媒にて洗浄し、質量(Wa)を測定した。その後、150℃のオーブン中に1時間静置したあと質量(Wb)を測定し、以下の式より熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度を測定した。
熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度(倍)=(Wa-Wb)/(Wb)
上記混合溶媒の成分、混合比、及び浸透時間は、それぞれ、以下のとおりとした。
混合比 エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)
浸透時間 3時間
〈熱可塑性ポリマーの平均粒径〉
熱可塑性ポリマーの平均粒径は、粒子径測定装置(日機装株式会社製、Microtrac UPA150)を使用して測定した。測定条件は、ローディングインデックス=0.15~0.3、測定時間300秒であった。得られたデータにおける50%粒子径の数値(D50)を平均粒径として記載した。
〈ガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)〉
熱可塑性ポリマーのガラス転移点及び融点は、示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線から決定した。
熱可塑性ポリマーを含む水分散体(固形分=38~42質量%、pH=9.0)を、アルミ皿に適量取り、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。乾燥後の乾燥皮膜約17mgを測定用アルミ容器に詰め、DSC測定装置(島津製作所社製、DSC6220)にて窒素雰囲気下におけるDSC曲線及びDDSC曲線を得た。測定条件は下記のとおりとした。
1段目昇温プログラム:70℃スタート、毎分15℃の割合で昇温。110℃に到達後5分間維持。
2段目降温プログラム:110℃から毎分40℃の割合で降温。-50℃に到達後5分間維持。
3段目昇温プログラム:-50℃から毎分15℃の割合で130℃まで昇温。この3段目の昇温時にDSC及びDDSCのデータを取得。
融点は、DSC曲線におけるベースラインと融解吸熱ピークの傾きの接線との交点により決定した。ガラス転移点は、DSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の変曲点における接線との交点により決定した。
〈粘度平均分子量(Mv)〉
熱可塑性ポリマーについて、ASRM-D4020に準拠して、デカリン溶剤中、135℃における極限粘度[η]を求めた。この[η]値を用いて、下記数式の関係から熱可塑性ポリマーの粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ポリエチレンの場合:[η]=0.00068×Mv0.67
ポリプロピレンの場合:[η]=1.10×Mv0.80
〈膜厚〉
ポリオレフィン多孔性基材から10cm×10cm角の試料を切り取り、格子状に9箇所(3点×3点)の測定箇所を選んで、微小測厚器(株式会社東洋精機製作所 タイプKBM)を用いて、室温23±2℃で、各測定箇所の膜厚を測定した。得られた9個の測定値の平均値を、基材の膜厚として算出した。
〈気孔率〉
ポリオレフィン多孔性基材から10cm×10cm角の試料を切り取り、その体積(cm)及び質量(g)を求めた。これらの値を用い、基材の密度を0.95(g/cm)として、以下の式により気孔率を計算した:
気孔率(%)=(1-質量/体積/0.95)×100
〈透気度〉
蓄電デバイス用セパレータの透気度は、一般的な多孔性基材の透気度と同様に、JIS P-8117に準拠して測定される透気抵抗度である。透気抵抗度は、単位面積及び単位圧力差当たり、規定された体積の空気が透過するのに要する時間であり、100mL当たりの時間(秒)で表される。東洋精器(株)製のガーレー式透気度計G-B2(商標)により測定した透気抵抗度を透気度(s-1)とした。
〈突刺強度〉
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES-G5(商標)を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーでポリオレフィン多孔性基材を固定した。次に、固定されたポリオレフィン多孔性基材の中央部を、先端の曲率半径0.5mmの針を用いて、突刺速度2mm/secで、25℃雰囲気下において突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として突刺強度(g)を得た。
〈パターン形成性〉
パターン塗工用スラリーの、ポリオレフィン多孔性基材へのパターン形成性(%)は、ポリオレフィン多孔性基材としてセルガードの型番「CG2500」(旭化成株式会社製)を用いて測定及び評価する。パターン形成性は、グラビアコーター上に加工されたパターンと、ポリオレフィン多孔性基材に実際に塗工されたパターンとの寸法のずれを評価するための指標である。
測定対象のパターン塗工用スラリーを、CG2500上に塗工し、以下の手法を用いてパターン形成性を算出した。なお、ポリオレフィン多孔性基材上の平均パターン面積は、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所製、S-4800)で観察した。:
パターン形成性(倍)=ポリオレフィン多孔性基材上の平均パターン面積/
グラビア版の平均パターン面積
S:0.7以上2.0倍以下
A:0.6以上0.7未満、2.0倍超3.0倍以下
B:0.4以上~0.6未満、3.0倍超5.0倍以下
C:0.4~5.0倍の範囲外
〈泡立ち性〉
各パターン塗工用スラリーの泡立ち易さは、JIS K3362:2008(8.5 起泡力および泡の安定度)に準じて評価した。
得られたパターン塗工用スラリー(固形分濃度30%)200mLを採取し、常温下にて、900mmの高さから30秒間かけて200mLを液面上に落下させたときに生じる泡の高さ(初期泡立ち高さ)を測定した。さらに、5分経過後の泡の高さ(5分後泡立ち高さ)を測定した。測定は3回実施し、その平均値を測定値とした。
〈セパレータと電極との剥離強度〉
蓄電デバイス用セパレータと、被着体としての正極(enertech社製、正極材料:LiCoO、導電助剤:アセチレンブラック、バインダ:PVDF、LiCoO/アセチレンブラック/PVDF(重量比)=95/2/3、L/W:両側について36mg/cm、密度:3.9g/cc、Al集電体の厚み:15μm、プレス後の正極の厚み:107μm)とを、それぞれ幅15mm及び長さ60mmの長方形状に切り取った。セパレータの熱可塑性ポリマー層と正極活物質とが相対するようにこれらを重ね合わせて積層体を得た。得られた積層体を、以下の条件でプレスした。
プレス圧:1MPa
温度:100℃
プレス時間:5秒
プレス後の積層体について、(株)イマダ製のフォースゲージZP5N及びMX2-500N(製品名)を用いて、電極を固定し、セパレータを把持して引っ張る方式によって、剥離速度50mm/分にて90°剥離試験を行い、剥離強度を調べた。このとき、上記の条件で行った長さ40mm分の剥離試験における剥離強度の平均値を剥離強度とした。
〈基材との結着性〉
セパレータの熱可塑性ポリマー被覆層に対し、幅12mm×長さ100mmのテープ(3M社製)を貼りつけた。テープをサンプルから50mm/分の速度で剥がすときの力を、90°剥離強度測定器(IMADA社製、製品名IP-5N)を用いて測定した。得られた測定結果に基づいて、下記評価基準で接着力を評価した。
○:6gf/mm以上
×:6gf/mm未満
〈セパレータのハンドリング性〉
蓄電デバイス用セパレータの塗工面同士を重ね合わせ、温度30℃及び圧力5MPaの条件下で3分間に亘ってプレスを行った。その後、重なり合った塗工面同士の剥離強度を、株式会社島津製作所製オートグラフAG-IS型(商標)を用いて、JIS K6854-2に準じて引張速度200mm/分で測定した。剥離強度の値(N/m)が小さいほどハンドリング性に優れる。
〈レート特性〉
a.正極の作製
正極活物質としてニッケル、マンガン、コバルト複合酸化物(NMC)(Ni:Mn:Co=1:1:1(元素比)、密度4.70g/cm)を90.4質量%、導電助材としてグラファイト粉末(KS6)(密度2.26g/cm、数平均粒子径6.5μm)を1.6質量%及びアセチレンブラック粉末(AB)(密度1.95g/cm、数平均粒子径48nm)を3.8質量%、並びにバインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(密度1.75g/cm)を4.2質量%の比率で混合し、これらをN-メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターを用いて塗布し、130℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧縮成形することにより、正極を作製した。この時の正極活物質塗布量は109g/mであった。
b.負極の作製
負極活物質としてグラファイト粉末A(密度2.23g/cm、数平均粒子径12.7μm)を87.6質量%及びグラファイト粉末B(密度2.27g/cm、数平均粒子径6.5μm)を9.7質量%、並びにバインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%(固形分換算)(固形分濃度1.83質量%水溶液)及びジエンゴム系ラテックス1.7質量%(固形分換算)(固形分濃度40質量%水溶液)を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形することにより、負極を作製した。この時の負極活物質塗布量は5.2g/mであった。
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1.0mol/Lとなるように溶解させることにより、非水電解液を調製した。
d.電池組立
各実施例及び比較例で得られた蓄電デバイス用セパレータを24mmφ、正極及び負極をそれぞれ16mmφの円形に切り出した。正極と負極の活物質面とが対向するように、負極、セパレータ、正極の順に重ね、プレス又はヒートプレスをして、蓋付きステンレス金属製容器に収容した。容器と蓋とは絶縁されており、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミニウム箔と、それぞれ接していた。この容器内に上記非水電解液を0.2ml注入して密閉することにより、電池を組み立てた。
e.レート特性の評価
上記d-2.で組み立てた簡易電池を、25℃において、電流値3mA(約0.5C)で電池電圧4.2Vまで充電した後、4.2Vを保持するようにして電流値を3mAから絞り始めるという方法により、電池作成後の最初の充電を合計約6時間行った。その後、電流値3mAで電池電圧3.0Vまで放電した。
次に、25℃において、電流値6mA(約1.0C)で電池電圧4.2Vまで充電した後、4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法により、合計約3時間充電を行った。その後、電流値6mAで電池電圧3.0Vまで放電した時の放電容量を1C放電容量(mAh)とした。
次に、25℃において、電流値6mA(約1.0C)で電池電圧4.2Vまで充電した後、4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法により、合計約3時間充電を行った。その後、電流値60mA(約10C)で電池電圧3.0Vまで放電した時の放電容量を10C放電容量(mAh)とした。
そして、1C放電容量に対する10C放電容量の割合を算出し、この値をレート特性とした。
レート特性(%)=(10C放電容量/1C放電容量)×100
評価基準
《熱可塑性ポリマー粒子の合成》
〈水分散体a1〉
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、イオン交換水70.4質量部と、乳化剤として「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液、表中「KH1025」と表記。以下同様。)0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25%水溶液、表中「SR1025」と表記。以下同様。)0.5質量部とを投入した。次いで、反応容器内部の温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液(表中「APS(aq)と表記。以下同様。」)を7.5質量部添加し、初期混合物を得た。過硫酸アンモニウム水溶液を添加終了した5分後に、乳化液を滴下槽から反応容器に150分かけて滴下した。
なお、上記乳化液は:
ポリエチレングリコール基含有単量体単位(P)を構成するモノマーとしてメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(表中PEGMと表記。以下同様。)10質量部;
シクロアルキル基含有単量体単位(A)を構成するモノマーとしてシクロヘキシルメタクリレート(表中、「CHMA」と表記。以下同様。)30質量部;
カルボキシル基含有単量体単位(b1)を構成するモノマーとしてメタクリル酸(表中、「MAA」と表記。以下同様。)1.0質量部;
アクリル酸(表中、「AA」と表記。以下同様。)1.0質量部;
アミド基含有単量体単位(b2)を構成するモノマーとしてアクリルアミド(表中、「AM」と表記。以下同様。)0.1質量部;
ヒドロキシル基含有単量体単位(b3)を構成するモノマーとして2-ヒドロキシエチルメタクリレート(表中、「2HEMA」と表記。以下同様。)5質量部;
架橋性単量体単位(b4)を構成するモノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(A-TMPT、新中村化学工業株式会社製商品名、表中、「A-TMPT」と表記。以下同様。)0.5質量部;
上記以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b5)を構成するモノマーとしてメチルメタクリレート(表中、「MMA」と表記。以下同様。)1.0質量部;
ブチルメタクリレート(表中、「BMA」と表記。以下同様。)0.4質量部;
ブチルアクリレート(表中、「BA」と表記。以下同様。)1.0質量部;
2-エチルヘキシルアクリレート(表中、「2EHA」と表記。以下同様。)50.0質量部;
乳化剤として「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液)3質量部と「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25%水溶液)3質量部とp-スチレンスルホン酸ナトリウム(表中、「NaSS」と表記。以下同様。)0.05質量部;
過硫酸アンモニウムの2%水溶液7.5質量部;及び
イオン交換水52質量部
の混合物を、ホモミキサーにより5分間混合させて調製した。
乳化液の滴下終了後、反応容器内部の温度を80℃に保ったまま90分間維持し、その後室温まで冷却した。得られたエマルジョンを、25%の水酸化アンモニウム水溶液(表中、「AW」と表記。)でpH=8.0に調整し、少量の水を加えて固形分40%の水分散体を得た(水分散体a1)。得られた水分散体a1中の共重合体について、上記方法により、平均粒径、ガラス転移点、熱可塑性層形成後の形状、及び熱可塑性層形成後の粒径を測定した。得られた結果を表2に示す。
〈水分散体A1~A20〉
原材料の種類及び配合比を表2及び3に示すように変更した以外は、水分散体a1と同様にして、水分散体A1~A20を得た。得られた水分散体A1~A20及びa1の共重合体について、上記方法により、粒子径、及びガラス転移点(Tg)を測定した。得られた結果を表2及び3に示す。なお、表中、原材料の組成は質量基準である。
《ポリオレフィン多孔性基材の製造》
〈基材B1〉
Mvが70万であるホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、
Mvが30万であるホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、
Mvが40万であるホモポリマーのポリプロピレン5質量部と、
を、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。
得られたポリオレフィン混合物99質量部に酸化防止剤としてテトラキス-[メチレン-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。
得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。
また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
押し出される全混合物中の、流動パラフィンの割合が65質量部、及びポリマー濃度が35質量部となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
次いで、それらを二軸押出機内で230℃に加熱しながら溶融混練し、得られた溶融混練物を、T-ダイを経て表面温度80℃に制御された冷却ロール上に押し出し、その押出物を冷却ロールに接触させ成形(cast)して冷却固化することにより、シート状成形物を得た。
このシートを同時二軸延伸機にて、温度112℃において倍率7×6.4倍に延伸した。その後、延伸物を塩化メチレンに浸漬して、流動パラフィンを抽出除去後、乾燥し、更にテンター延伸機を用いて温度130℃において横方向に2倍延伸した。
その後、この延伸シートを幅方向に約10%緩和して熱処理を行い、ポリオレフィン多孔性基材B1を得た。得られた基材B1の物性を表1に示す。
〈基材B2〉
ポリオレフィン多孔性基材B2として、ポリプロピレン単層膜であるセルガードの型番「CG2500」(旭化成株式会社製)を用意した。使用した基材を表1に記す。
〈基材B3〉
水酸化酸化アルミニウム(平均粒径1.0μm)97.0質量部、アクリルラテックス(固形分濃度40%、平均粒径145nm、最低成膜温度0℃以下)3.0質量部、及びポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)1.0質量部を100質量部の水に均一に分散させて塗布液を調製した。続いて、その塗布液を、ポリオレフィン多孔性基材B2の表面にグラビアコーターを用いて塗布した。その後、60℃において乾燥して水を除去した。このようにして、ポリオレフィン多孔性基材B2上に水酸化酸化アルミニウム層(無機フィラーの多孔層)を厚さ2μmで形成することにより、ポリオレフィン多孔性基材B3を得た。
《実施例1》
表2に記載の水分散体A1を、精製水を加えることで固形分30質量%に調整し、有機バインダ含有スラリーを作製した。次いでスラリーに添加剤として、固形分濃度1.5質量%に調製したキサンタンガム(三晶株式会社製、ケルザンM)水溶液を作製し、有機バインダ量対比で0.5質量%となるように、スラリーに添加し、12時間撹拌した。スラリーの測定結果については、表4に示す。
《実施例2、3》
キサンタンガム(三晶株式会社製、ケルザンM)の添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様にしてスラリーを作製した。スラリーの測定結果については、表4に示す。
《実施例4、5》
キサンタンガム(三晶株式会社製、ケルザンM)をCMC(ダイセル社製、カルボキシメチルセルロース 2200)に変更し、バインダを表4に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてスラリーを作製した。スラリーの測定結果については、表4に示す。
《実施例6》
キサンタンガム(三晶株式会社製、ケルザンM)をCMC(ダイセル社製、カルボキシメチルセルロース 2200)に変更し、界面活性剤としてアルキルスルホン酸系界面活性剤(三井サイテック株式社製、OT-75)を有機バインダ量対比0.1質量%となるように添加したこと以外は、実施例5と同様にしてスラリーを作製した。スラリーの測定結果については、表4に示す。
《実施例7》
有機バインダをA4に変更し、界面活性剤としてアルキルスルホン酸系界面活性剤(三井サイテック株式社製、OT-75)を有機バインダ量対比0.1質量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にしてスラリーを作製した。スラリーの測定結果については、表4に示す。
《実施例8》
有機バインダをA11に変更し、添加剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてスラリーを作製した。スラリーの測定結果については、表4に示す。
《実施例9》
有機バインダー量が80:20質量%となるようにA7とA1を混合し、その後、固形分濃度が30質量%となるよう精製水を添加し、12時間撹拌したこと以外は、実施例8と同様にしてスラリーを作製した。スラリーの測定結果については、表4に示す。
《実施例10》
有機バインダー量が80:20質量%となるようにA10とA1を混合し、その後、固形分濃度が30質量%となるよう精製水を添加し、12時間撹拌したこと以外は、実施例9と同様にしてスラリーを作製した。スラリーの測定結果については、表4に示す。
《実施例11~13、比較例1》
表4に示すスラリー組成としたこと以外は、実施例10と同様にしてスラリーを作製した。スラリーの測定結果については、表4に示す。
《セパレータの評価:S1》
調整したスラリーC1を、表1に記載のポリオレフィン微多孔基材B2の片面表面にドット径800μm、深さ5μmにドット型刻印されたグラビアロールを用いて塗工液をパターン塗布し、60℃にて乾燥して塗工液の水を除去することでセパレータS1を得た。測定結果は表5に示す。
《セパレータの評価:S2~S9》
調整したスラリー、塗工する基材を表5に示すように変更した。また、ドット径、及び面積占有率が表5になるように使用するグラビアロール版を変更したこと以外は、S1と同様にしてセパレータを作製した。
Figure 0007002229000001
Figure 0007002229000002
Figure 0007002229000003
Figure 0007002229000004
Figure 0007002229000005
本発明のパターン塗工用スラリーは、蓄電デバイス用セパレータの基材として用いられるポリオレフィン多孔性基材の少なくとも片面にパターン塗工するために用いることができる。得られる蓄電デバイス用セパレータは、蓄電デバイス、例えばリチウムイオン電池の製造に用いることができる。

Claims (14)

  1. 蓄電デバイス用セパレータの基材として用いられるポリオレフィン多孔性基材の少なくとも片面にパターン塗工するための、パターン塗工用スラリーであって、
    前記パターン塗工用スラリーは、熱可塑性ポリマーと、分散媒又は溶媒とを含み、
    前記パターン塗工用スラリーは、剪断速度50000s-1以下におけるハイシェア粘度の最大値が5cps以上である、パターン塗工用スラリー。
  2. 前記ハイシェア粘度の最大値が5cps以上10cps以下である、請求項1に記載のパターン塗工用スラリー。
  3. 前記パターン塗工用スラリーの固形分濃度が30質量%のときの粘度が100mPa・s以下であり、固形分濃度が50質量%のときの粘度が300mPa・s以上である、請求項1又は2に記載のパターン塗工用スラリー。
  4. 前記パターン塗工用スラリーの固形分濃度が30質量%のときの粘度が100mPa・s以下であり、固形分濃度が45質量%のときの粘度が150mPa・s以上である、請求項1~のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリー。
  5. 前記パターン塗工用スラリーの固形分濃度が30質量%のときの粘度が100mPa・s以下であり、固形分濃度が40質量%のときの粘度が150mPa・s以上である、請求項1~のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリー。
  6. 前記パターン塗工用スラリーの固形分濃度が30質量%のときの粘度が70mPa・s以下であり、固形分濃度が40質量%のときの粘度が150mPa・s以上である、請求項1~のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリー。
  7. 前記分散媒を含み、前記分散媒が水を主成分として含む、請求項1~のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリー。
  8. 前記熱可塑性ポリマーが、(メタ)アクリル酸エステル単量体、共役ジエン系単量体、及びフッ化ビニリデン単量体からなる群から選択される少なくとも一つを単量体単位として有する共重合体を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリーから形成されたパターン塗工を有する、蓄電デバイス用セパレータ。
  9. 前記塗工用スラリーに含まれる熱可塑性ポリマーは、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーを含み、全体としてガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、
    前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃未満の領域に存在し、
    前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃以上の領域に存在する、請求項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  10. 前記熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度が1倍以上10倍以下である、請求項8又は9に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  11. ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも片面に、請求項1~のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリーから形成されたパターン塗工を有する、蓄電デバイス用セパレータ。
  12. 前記パターン塗工がドットパターンである、請求項11に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  13. 前記ドットの径が10μm以上1000μm以下であり、前記ドットの面積占有率が5%以上80%以下である、請求項12に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  14. ポリオレフィン多孔性基材と、前記ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも片面の少なくとも一部を被覆する、請求項1~7のいずれか1項に記載のパターン塗工用スラリーから形成された熱可塑性ポリマー被覆層とを有する、蓄電デバイス用セパレータであって、
    前記ポリオレフィン多孔性基材上に前記熱可塑性ポリマー被覆層が存在する部分と、前記熱可塑性ポリマー被覆層が存在しない部分とが海島状に存在し、
    前記熱可塑性ポリマー被覆層に含まれる熱可塑性ポリマーは、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーを含み、全体としてガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、
    前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃未満の領域に存在し、
    前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃以上の領域に存在する、
    蓄電デバイス用セパレータ。
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