本発明は、並列運転される複数のDC−DCコンバータを備えた直流電源装置に関するものである。
バッテリ等から得られる直流電圧を一旦交流電圧に変換した後、整流器を通して直流電圧に再変換することにより、負荷の駆動に適した電圧値を有する直流電圧を得るDC−DCコンバータを用いた直流電源装置が広く用いられている。
DC−DCコンバータは、負荷率(出力/定格出力)が高いとき(高出力時)には高い電力変換効率を得ることができるが、負荷率が低下するにつれて電力変換効率が低下する傾向がある。そこで、電力変換効率の向上を図るために、並列運転される複数台のDC−DCコンバータにより直流電源装置を構成して、負荷率に応じて運転するDC−DCコンバータの台数を変更する方式を採用した直流電源装置が用いられている。このように直流電源装置を構成すると、各DC−DCコンバータから常に定格出力又は定格出力に近い出力を発生させて、各DC−DCコンバータの負荷率を高い値に維持することができるため、直流電源装置全体としての電力変換効率を高くして、エネルギー損失の低減を図ることができる。この種の直流電源装置は例えば特許文献1に示されている。
並列運転される複数のDC−DCコンバータにより直流電源装置を構成する場合、負荷に供給する電圧を一定に保つため、直流電源装置の出力電圧を目標値に保つように、各DC−DCコンバータをフィードバック制御する必要がある。各DC−DCコンバータをフィードバック制御するようにした直流電源装置としては、図3又は図4に示した構成を有するものが知られている。
図3に示された直流電源装置は、2台のDC−DCコンバータ1及び2を備えて、両コンバータの出力側が逆流阻止回路3及び4を構成するダイオードを通して負荷5の両端に並列に接続されている。
各DC−DCコンバータは、例えば、直流電圧を交流電圧に変換するインバータなどの直流/交流変換部と、直流/交流変換部から得られる交流電圧を直流電圧に変換する交流/直流変換部とを備えていて、両DC−DCコンバータ1及び2に対して共通に設けられたPWMパルス発生器6が発生するPWMパルスが、各DC−DCコンバータの直流/交流変換部を構成するスイッチング素子に与えられている。また2台のDC−DCコンバータ1,2に対して共通にフィードバック制御部7が設けられ、負荷5に印加される出力電圧Voがフィードバック制御部7にフィードバックされている。フィードバック制御部7は、フィードバックされた出力電圧の値とその目標値との偏差を零にするように、PWMパルス発生器6が発生するPWMパルスのデューティ比を設定して該デューティ比の設定値をPWMパルス発生器6に与える。PWM発生器6は、フィードバック制御部7から与えられるデューティ比の設定値に等しいデューティ比を有するPWMパルスをDC−DCコンバータ1,2の直流/交流変換部のスイッチング素子の制御端子に与えて、該スイッチング素子を設定されたデューティ比でオンオフさせ、DC−DCコンバータ1及び2から目標値に等しい出力電圧を発生させる。
図4に示された直流電源置は、2台のDC−DCコンバータ1及び2を備えて、両DC−DCコンバータの出力側が逆流阻止回路3及び4を構成するダイオードを通して負荷5の両端に並列に接続されている点は図3に示したものと同様であるが、図4に示された直流電源装置においては、DC−DCコンバータ1及び2に対してそれぞれPWMパルス発生器6A及び6Bとフィードバック制御部7A及び7Bとが設けられて、各DC−DCコンバータ毎にフィードバック制御が行われる。DC−DCコンバータ1及び2はそれぞれ直流/交流変換部101及び201と、交流/直流変換部102及び202とを有していて、DC−DCコンバータ1及び2に対してそれぞれ設けられたPWMパルス発生器6A及び6Bが出力するPWMパルスが、DC−DCコンバータ1及び2の直流/交流変換部101及び201を構成するスイッチング素子の制御端子に与えられている。
図3に示された直流電源装置においては、すべてのDC−DCコンバータ1,2のスイッチング素子が同一のPWMパルスによりオンオフ制御されるため、DC−DCコンバータ1,2をそれぞれ構成する回路素子の特性のばらつきにより、DC−DCコンバータ1,2の出力に差が生じることがあった。
DC−DCコンバータ1,2の出力に差が生じるのを防ぐためには、DC−DCコンバータ1,2の出力の差を無くすように、DC−DCコンバータ1,2のスイッチング素子にそれぞれ与えるPWMパルスのデューティ比を個別に補正してやればよいが、図3に示した直流電源装置では、DC−DCコンバータ1,2に対して一つのPWMパルス発生器6しか設けられていないため、DC−DCコンバータ1及び2の出力の差を無くすように、両DC−DCコンバータに与えるPWMパルスのデューティ比を個別に補正することは困難である。
図4に示された直流電源装置においては、DC−DCコンバータ1及び2に対してそれぞれPWMパルス発生器6A及び6Bが設けられているため、両DC−DCコンバータの出力の差を無くすように、DC−DCコンバータ1及び2のスイッチング素子に与えるPWMパルスのデューティ比を補正することは可能である。しかしながら、DC−DCコンバータ1及び2に対してそれぞれフィードバック制御部7A及び7Bが設けられている図4に示された直流電源装置においては、各DC−DCコンバータが個々に負荷の変化に追従してその出力を調整する動作を行うため、負荷の急変時にDC−DCコンバータ1,2の制御応答性にばらつきが生じ、DC−DCコンバータ1,2の出力に差が生じることがあった。
並列運転されているDC−DCコンバータ1,2の出力に差が生じると、出力が大きい方のDC−DCコンバータにかかる負担が大きくなって、両DC−DCコンバータの寿命に差が生じるおそれがある。また、出力が大きい方のDC−DCコンバータの出力が最大定格を超えると、負荷に電力を供給することができなくなるという問題が生じる。
本発明の目的は、直流電源装置において、複数のDC−DCコンバータを並列運転する方式を採用する場合に、回路素子の特性のばらつきや、負荷の急変により、複数のDC−DCコンバータの出力に差が生じるのを防ぐことにある。
本発明は、PWMパルス発生器が発生するPWMパルスによりオンオフ制御されるスイッチング素子を有する直流/交流変換部と、該直流/交流変換部から得られる交流電圧を直流電圧に変換する交流/直流変換部とを有して、負荷に与えられる出力電圧がフィードバックされるフィードバック制御部により設定されたデューティ比を有するPWMパルスをPWMパルス発生器から発生させることにより、出力電圧を目標値に保つ制御を行うDC−DCコンバータをn台(nは2以上の整数)備えて、該n台のDC−DCコンバータが並列運転される直流電源装置を対象とする。
本発明においては、PWMパルス発生器を各DC−DCコンバータ毎に設け、フィードバック制御部を、n台のDC−DCコンバータに対して共通に設ける。またn台のDC−DCコンバータの出力の差を無くすように、各DC−DCコンバータの出力に応じてフィードバック制御部により設定されたPWMパルスのデューティ比を補正する出力補正部を、各DC−DCコンバータに対して設ける。各DC−DCコンバータに対して設けられたPWMパルス発生器は,フィードバック制御部により設定され、出力補正部により補正されたデューティ比を有するPWMパルスを発生するように構成される。
上記のように、各DC−DCコンバータ毎にPWMパルス発生器を設け、フィードバック制御部をn台のDC−DCコンバータに対して共通に設けるとともに、n台のDC−DCコンバータの出力の差を無くすように、フィードバック制御部により設定されたPWMパルスのデューティ比を補正して、各DC−DCコンバータに対して設けられたPWMパルス発生器から出力補正部により補正されたデューティ比を有するPWMパルスを発生させるようにすると、DC−DCコンバータを構成する回路素子の特性のばらつきにより、並列運転するn台のDC−DCコンバータの出力に差が生じるのを防ぐことができる。
また上記のように、フィードバック制御部をn台のDC−DCコンバータに対して共通に設けると、各DC−DCコンバータに与えられるPWMパルスのデューティ比が同じフィードバック制御部により同時に設定されるため、負荷が急変したときにn台のDC−DCコンバータの制御応答性にばらつきが生じるのを防ぐことができ、負荷の急変時にn台のDC−DCコンバータの出力に差が生じるのを防ぐことができる。
本発明の好ましい態様では、各DC−DCコンバータの出力電流を検出する電流検出器が各DC−DCコンバータに設けられる。各DC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部は、各DC−DCコンバータに設けられた電流検出器により検出された出力電流をn台のDC−DCコンバータにそれぞれ設けられた電流検出器により検出された出力電流の平均値と比較して、各DC−DCコンバータに設けられた電流検出器により検出された出力電流と上記平均値との差を無くすように各DC−DCコンバータに対して設けられたPWMパルス発生器が発生するPWMパルスのデューティ比を補正する。
本発明の好ましい態様では、負荷を駆動するために必要最小限の台数のDC−DCコンバータを並列運転するように、負荷の大きさに応じて各DC−DCコンバータを個別にオンオフすることにより、並列運転するDC−DCコンバータの台数を増減させる並列運転台数切換手段が設けられる。
上記のように構成すると、各DC−DCコンバータの負荷率を高い値に維持して、直流電源装置全体としての電力変換効率を高めることができるため、直流電源装置で生じるエネルギー損失の低減を図ることができる。
本発明の好ましい態様では、上記並列運転台数切換手段が、各DC−DCコンバータをオフ状態にする際に、オフ状態にするDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部の動作をも停止させるように構成される。
DC−DCコンバータをオフ状態にすると、出力電流が0になるため、そのDC−DCコンバータに対して設けた出力補正部を動作させておくと、該出力補正部は、オフ状態にしたDC−DCコンバータの出力を最大にするようにPWMパルスのデューティ比を補正する。この状態でそのDC−DCコンバータをオン状態にすると、そのDC−DCコンバータの出力が一瞬最大値に調整されるため、直流電源装置の出力にオーバシュートが生じてしまう。このような問題が生じるのを防ぐため、本態様では、各DC−DCコンバータをオフ状態にする際に、オフ状態にするDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部の動作をも停止させるように、並列運転台数切換手段を構成している。このように構成しておくと、各DC−DCコンバータをオフ状態にした際に、そのDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部が補正動作を行うことがないため、そのDC−DCコンバータをオン状態に復帰させた際に直流電源装置の出力にオーバシュートが生じるのを防ぐことができる。
本発明によれば、各DC−DCコンバータ毎にPWMパルス発生器を設け、フィードバック制御部をn台のDC−DCコンバータに対して共通に設けるとともに、n台のDC−DCコンバータの出力の差を無くすように、フィードバック制御部により設定されたPWMパルスのデューティ比を補正して、各DC−DCコンバータに対して設けられたPWMパルス発生器から、出力補正部により補正されたデューティ比を有するPWMパルスを発生させるようにしたので、各DC−DCコンバータを構成する回路素子の特性のばらつきなどにより、並列運転する複数のDC−DCコンバータの出力に差が生じるのを防ぐことができる。
また本発明によれば、フィードバック制御部をn台のDC−DCコンバータに対して共通に設けたことにより、各DC−DCコンバータのスイッチング素子に与えられるPWMパルスのデューティ比が同じフィードバック制御部により同時に設定される。そのため、負荷が急変したときに複数台のDC−DCコンバータの制御応答性にばらつきが生じるのを防ぐことができ、負荷の急変時に並列運転されるn台のDC−DCコンバータの出力に差が生じるのを防ぐことができる。
更に、本発明において、負荷を駆動するために必要最小限の台数のDC−DCコンバータを並列運転するように、負荷の大きさに応じて各DC−DCコンバータを個別にオンオフすることにより、並列運転するDC−DCコンバータの台数を増減させる並列運転台数切換手段を設けた場合には、各DC−DCコンバータの負荷率を高い値に維持して、直流電源装置全体としての電力変換効率を高めることができ、直流電源装置で生じるエネルギー損失の低減を図ることができる。
また本発明において、各DC−DCコンバータをオフ状態にする際に、オフ状態にするDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部の動作をも停止させるように並列運転台数切換手段を構成した場合には、各DC−DCコンバータをオン状態に復帰させる際に直流電源装置の出力にオーバシュートが生じるのを防ぐことができ、負荷に与える電力の品質を良好にすることができる。
本発明の一実施形態の構成を示したブロック図である。
図1の実施形態に係る直流電源装置のDC−DCコンバータ部分の具体的な構成例を示した回路図である。
従来の直流電源装置の構成を示したブロック図である。
従来の他の直流電源装置の構成を示したブロック図である。
以下図面を参照して本発明に係る直流電源装置の実施形態を詳細に説明する。
図1は本実施形態の構成を示したブロック図である。本発明は一般にn台(nは2以上の整数)のDC−DCコンバータを並列運転する直流電源装置に適用することができるが、以下に示す実施形態においては、2台のDC−DCコンバータ1及び2を並列運転するものとする。
図1において、1は第1のDCーDCコンバータ、2は第2のDC−DCコンバータである。第1のDC−DCコンバータ1は、直流電圧を交流電圧に変換する直流・交流変換部101と、直流・交流変換部101から得られる交流電圧を直流電圧に再変換する交流/直流変換部102とを備えている。また第2のDC−DCコンバー2は、直流電圧を交流電圧に変換する直流・交流変換部201と、直流・交流変換部201から得られる交流電圧を直流電圧に再変換する交流/直流変換部202とを備えている。
第1のDC−DCコンバータ1及び第2のDC−DCコンバータ2は、それぞれの一方の出力端子(図示の例ではプラス側の出力端子)をシャント抵抗器等からなる電流検出器8A及び8Bと、ダイオードなどからなる逆流阻止回路3及び4とを通して負荷5の一端に接続し、他方の出力端子(図示の例ではマイナス側出力端子)を負荷5の他端(図示の例ではアース端子)に共通接続した状態で設けられて並列運転される。
図示の例では、逆流阻止回路3及び4の出力側の端子の共通接続点が直流電源装置のプラス側の出力端子gとなっており、アース端子が直流電源装置のマイナス側の出力端子hとなっている。これらの出力端子間に直流電源装置の出力電圧を検出する電圧検出器11が接続されている。電圧検出器11は抵抗分圧回路等からなっていて、負荷5に印加される直流電源装置の出力電圧Voに比例した電圧検出信号Vo′を出力する。
各DC−DCコンバータの直流/交流変換部101,201は例えばインバータにより構成され、交流/直流変換部102,202は、整流回路により構成される。各DC−DCコンバータには更に必要に応じて、直流/交流変換部の出力を変成するトランスや、交流/直流変換部の出力を平滑するフィルタ回路等が設けられるが、図1においてはこれらの図示が省略されている。
本実施形態では、第1のDC−DCコンバータ1及び第2のDC−DCコンバータ2に対してそれぞれPWMパルス発生器6A及び6Bが設けられ、これらのPWMパルス発生器6A及び6Bからそれぞれ第1のDC−DCコンバータ1及び第2のDC−DCコンバータ2の直流/交流変換部101及び201を構成するスイッチング素子の制御端子にPWMパルスが与えられる。
本実施形態では、フィードバック制御部7が、第1及び第2のDC−DCコンバータ1及び2に対して共通に設けられ、電圧検出器11が出力する電圧検出信号Vo′がフィードバック制御部7にフィードバックされている。このフィードバック制御部7により、直流電源装置の出力電圧Voを目標値に保つように、DC−DCコンバータ1及び2のPWMパルス発生器6A及び6Bが発生するPWMパルスのデューティ比が設定される。PWMパルス発生器6A及び6Bは、与えられた設定値に等しいデューティ比を有するPWMパルスを発生するように構成されていて、設定されたデューティ比を有するPWMパルスを直流/交流変換部101及び201を構成するスイッチング素子の制御端子に与える。これにより、DC−DCコンバータ1及び2の直流/交流変換部101及び201のスイッチング素子を設定されたデューティ比でオンオフさせて、DC−DCコンバータ1及び2の出力電圧を目標値に保つようにPWM制御する。
なお本明細書においては、PWMパルスをスイッチング素子の制御端子に与えて該スイッチング素子をオンオフさせる場合に、PWMパルスがスイッチング素子をオン状態にする期間及びオフ状態にする期間をそれぞれTon及びToffとしたときに、Tonと(Ton+Toff)との比Ton/(Ton+Toff)を、PWMパルスのデューティ比とする。従って、PWMパルスのデューティ比を大きくするとDC−DCコンバータの出力が増大し、PWMパルスのデューティ比を小さくするとDC−DCコンバータの出力が低下する。
本実施形態ではまた、第1及び第2のDC−DCコンバータ1及び2に対してそれぞれ出力補正部12A及び12Bが設けられていて、フィードバック制御部7の出力と、出力補正部12Aの出力とが加算器13Aにより加算されてPWMパルス発生器6Aに与えられ、フィードバック制御部7の出力と、出力補正部12Bの出力とが加算器13Bにより加算されてPWMパルス発生器6Bに与えられている。
DC−DCコンバータ1に対して設けられた出力補正部12Aは、電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流と、電流検出器8Bにより検出されたDC−DCコンバータ2の出力電流との平均値を演算して、演算した平均値と電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流とを比較し、電流検出器8Aにより検出された出力電流と上記平均値との差を無くすために、フィードバック制御部7から与えられるデューティ比の設定値に加算する必要がある補正値(正又は負の符号をもつ値)を加算器13Aに与える。電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流が上記平均値よりも小さい場合には、上記補正値が正の符号を持ち、電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流が上記平均値よりも大きい場合には、上記補正値が負の符号を持つ。フィードバック制御部7から与えられるPWMパルスのデューティ比の設定値に上記補正値が加算されることにより、DC−DCコンバータ1の出力電流と2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値との差を無くすように、PWMパルス発生器6Aに与えられるデューティ比の設定値が補正される。
同様に、DC−DCコンバータ2に対して設けられた出力補正部12Bは、電流検出器8Bにより検出されたDC−DCコンバータ2の出力電流と、電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流との平均値を演算して、演算した平均値と電流検出器8Bにより検出されたDC−DCコンバータ2の出力電流とを比較し、電流検出器8Bにより検出された出力電流と上記平均値との差を無くすためにフィードバック制御部7から与えられるデューティ比の設定値に加算する必要がある補正値を加算器13Bに与える。フィードバック制御部7から与えられるPWMパルスのデューティ比の設定値に上記補正値が加算されることにより、DC−DCコンバータ2の出力電流と2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値との差を無くすように、PWMパルス発生器6Bに与えられるデューティ比の設定値が補正される。
上記のように構成すると、出力補正部12Aは、DC−DCコンバータ1及び2の出力に差が生じたときに、DC−DCコンバータ1の出力電流と2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値との差を無くすように、フィードバック制御部7により設定されたPWMパルスのデューティ比の設定値を補正して、補正したデューティ比の設定値をPWMパルス発生器6Aに与える。PWMパルス発生器6Aは、補正されたデューティ比の設定値に等しいデューティ比を有するPWMパルスをDC−DCコンバータ1の直流/交流変換部のスイッチング素子に与えて、DC−DCコンバータ1の出力電流を平均値に等しくするように制御する。
また出力補正部12Bは、DC−DCコンバータ1及び2の出力に差が生じたときに、DC−DCコンバータ2の出力電流と2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値との差をなくすように、フィードバック制御部7により設定されたPWMパルスのデューティ比の設定値を補正して、補正したデューティ比の設定値をPWMパルス発生器6Bに与える。PWMパルス発生器6Bは、補正されたデューティ比の設定値に等しいデューティ比を有するPWMパルスをDC−DCコンバータ2の直流/交流変換部のスイッチング素子に与えて、DC−DCコンバータ2の出力電流を平均値に等しくするように制御する。このように、DC−DCコンバータ1及び2の出力電流に差が生じた時に、各DC−DCコンバータの出力電流を平均値に等しくするように、PWMパルス発生器6A及び6Bが発生するPWMパルスのデューティ比を補正すると、2台のDC−DCコンバータの出力の差をなくすように制御することができ、DC−DCコンバータ1及び2をそれぞれ構成する回路素子の特性のばらつきにより、両DC−DCコンバータの出力に差が生じるのを防ぐことができる。
また上記のように、フィードバック制御部7を2台のDC−DCコンバータに対して共通に設けると、各DC−DCコンバータに与えられるPWMパルスのデューティ比が同じフィードバック制御部により同時に設定されるため、負荷5が急変したときに複数台のDC−DCコンバータ1,2の制御応答性にばらつきが生じるのを防ぐことができ、負荷5の急変時にDC−DCコンバータ1,2の出力に差が生じるのを防ぐことができる。
本実施形態ではまた、負荷5を駆動するために必要最小限の台数のDC−DCコンバータを並列運転するように、負荷5に与えられる全負荷電流に応じて(負荷5の大きさに応じて)各DC−DCコンバータを個別にオンオフして、並列運転するDC−DCコンバータの台数を増減させる並列運転台数切換手段14が設けられている。並列運転台数切換手段14は、各DC−DCコンバータをオフ状態にする際に、オフ状態にするDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部12A,12Bの動作をも停止させるように構成されている。
上記のように並列運転台数切換手段14を設けておくと、各DC−DCコンバータの負荷率を高くして、直流電源装置全体としての電力変換効率を高めることができるため、直流電源装置で生じるエネルギー損失の低減を図ることができる。
DC−DCコンバータをオフ状態にすると、その出力電流が0になるため、そのDC−DCコンバータに対して設けた出力補正部を動作させておくと、該出力補正部は、オフ状態にしたDC−DCコンバータの出力を最大にするようにPWMパルスのデューティ比を補正することになる。この状態でそのDC−DCコンバータをオン状態にすると、そのDC−DCコンバータの出力が一瞬最大値に調整されるため、直流電源装置の出力にオーバシュートが生じ、負荷に悪影響を及ぼすおそれがある。このような問題が生じるのを防ぐため、本実施形態では、並列運転台数切換手段14が各DC−DCコンバータをオフ状態にする際に、オフ状態にするDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部の動作をも停止させるように構成されている。このように構成しておくと、各DC−DCコンバータをオフ状態にした際に、そのDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部が補正動作を行うことがないため、そのDC−DCコンバータをオン状態に復帰させた際に直流電源装置の出力にオーバシュートが生じるのを防ぐことができる。
図2を参照すると、並列運転するDCーDCコンバータ1及び2として、フルブリッジインバータと整流回路とを組み合わせた一次側位相シフトPWM制御方式のDCーDCコンバータを用いる場合の回路構成の一例が示されている。図2において、INVは直流電源20の出力電圧Eを高周波交流電圧Vcdに変換するフルブリッジインバータ、TsfはインバータINVの出力が入力されたトランス、Recはトランスの高周波交流出力を整流して直流出力に変換する整流回路、Fはスイッチング周波数のリップルを取り除く平滑フィルタである。
インバータINVは、スイッチング素子Q1と該スイッチング素子に並列に接続されたスナバキャパシタC1とスイッチング素子Q1に逆並列接続された帰還ダイオードD1とからなる上側アームと、スイッチング素子Q2と該スイッチング素子に並列に接続されたスナバキャパシタC2とスイッチング素子Q2に逆並列接続された帰還ダイオードD2とからなる下側アームとを直列に接続して構成した基準相のレグと、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q3に並列に接続されたスナバキャパシタC3とスイッチング素子Q3に逆並列接続された帰還ダイオードD3とからなる上側アームと、スイッチング素子Q4とスイッチング素子Q4に並列に接続されたスナバキャパシタC4とスイッチング素子Q4に逆並列接続された帰還ダイオードD4とからなる下側アームとを直列に接続して構成した制御相のレグとを並列に接続した回路からなっている。
このインバータにおいては、基準相のレグと制御相のレグとの並列回路の上アーム側の端部及び下アーム側の端部がそれぞれプラス側入力端子a及びマイナス側入力端子bとなっており、これらの入力端子間に直流電源20の出力電圧Eが印加されている。また基準相のレグの上側アームと下側アームとの接続点及び制御相のレグの上側アームと下側アームとの接続点がそれぞれ第1及び第2のインバータ出力端子c及びdとなっており、これらのインバータ出力端子間に得られる高周波交流電圧Vcdが直列リアクトルL1を通してトランスの一次コイルW1に印加されている。
トランスTsfは一次コイルW1と二次コイルW2とを有し、二次コイルW2の誘起電圧が整流回路Recに入力されている。整流回路Recは、ダイオードD5ないしD8をブリッジ接続したダイオードブリッジ全波整流回路からなっていて、その出力電圧が、フィルタ回路Fに入力されている。
フィルタ回路Fは、一端が整流回路Recのプラス側出力端子に接続されたインダクタ(チョークコイル)Loと、インダクタLoの他端と整流回路Recのマイナス側出力端子との間に接続されたキャパシタCoとからなっている。DC−DCコンバータ1のフィルタ回路FのインダクタLoの他端から電流検出器8Aを通してDC−DCコンバータ1のプラス側コンバータ出力端子g1が引出され、DC−DCコンバータ1の整流回路Recのマイナス側出力端子からDC−DCコンバータ1のマイナス側コンバータ出力端子h1が引出されている。同様に、DC−DCコンバータ2のフィルタ回路FのインダクタLoの他端から電流検出器8Bを通してDC−DCコンバータ2のプラス側コンバータ出力端子g2が引出され、DC−DCコンバータ2の整流回路Recのマイナス側出力端子からDC−DCコンバータ2のマイナス側コンバータ出力端子h2が引出されている。そして、DC−DCコンバータ1及び2のプラス側出力端子g1及びg2がそれぞれ逆流阻止回路3及び4を構成するダイオードを通して負荷5の一端に接続され、DC−DCコンバータ1及び2のマイナス側出力端子h1及びh2が負荷5の他端に共通接続されることにより、2台のDC−DCコンバータ1及び2が並列運転されるようになっている。負荷5の両端には、電圧検出器11が接続されている。図2に示されたDC−DCコンバータはよく知られたものであるので、その詳細な動作の説明は省略する。
図2に示した直流電源装置においては、第1及び第2のDC−DCコンバータ1及び2の直流/交流変換部101及び201がインバータINVにより構成され、第1及び第2のDC−DCコンバータ1及び2の交流/直流変換部102及び202が整流回路Recとフィルタ回路Fとにより構成されている。本実施形態においても、第1のDC−DCコンバータ1及び第2のDC−DCコンバータ2に対してそれぞれPWMパルス発生器6A及び6Bが設けられ、これらのPWMパルス発生器6A及び6Bからそれぞれ第1のDC−DCコンバータ1及び第2のDC−DCコンバータ2のインバータINVを構成するスイッチング素子の制御端子にPWMパルスが与えられる。なお図が複雑になるのを避けるため、図2においては、PWMパルス発生器6A及び6Bから第1のDC−DCコンバータ1及び第2のDC−DCコンバータ2のインバータINVを構成するスイッチング素子の制御端子にPWMパルスを与える信号経路の図示が省略されている。
図2に示した直流電源装置においても、フィードバック制御部7が、第1及び第2のDC−DCコンバータ1及び2に対して共通に設けられ、電圧検出器11から出力される電圧検出信号Vo′がフィードバック制御部7にフィードバックされている。フィードバック制御部7により、直流電源装置の出力電圧を目標値に保つように、DC−DCコンバータ1及び2のPWMパルス発生器6A及び6Bが発生するPWMパルスのデューティ比が設定される。第1及び第2のDC−DCコンバータ1及び2に対してそれぞれ出力補正部12A及び12Bが設けられていて、フィードバック制御部7の出力と、出力補正部12Aの出力とが加算器13Aにより加算されてPWMパルス発生器6Aに与えられ、フィードバック制御部7の出力と、出力補正部12Bの出力とが加算器13Bにより加算されてPWMパルス発生器6Bに与えられている。
DC−DCコンバータ1に対して設けられた出力補正部12Aは、電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流と、電流検出器8Bにより検出されたDC−DCコンバータ2の出力電流との平均値を演算して、演算した平均値と電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流とを比較し、電流検出器8Aにより検出された出力電流と上記平均値との差を無くすために、フィードバック制御部7から与えられるデューティ比の設定値に加算する必要がある補正値を加算器13Aに与える。フィードバック制御部7から与えられるPWMパルスのデューティ比の設定値に上記補正値が加算されることにより、DC−DCコンバータ1の出力電流と2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値との差を無くすように、PWMパルス発生器6Aに与えられるデューティ比の設定値が補正される。
同様に、DC−DCコンバータ2に対して設けられた出力補正部12Bは、電流検出器8Bにより検出されたDC−DCコンバータ2の出力電流と、電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流との平均値を演算して、演算した平均値と電流検出器8Bにより検出されたDC−DCコンバータ2の出力電流とを比較し、電流検出器8Bにより検出された出力電流と上記平均値との差を無くすためにフィードバック制御部7から与えられるデューティ比の設定値に加算する必要がある補正値を加算器13Bに与える。フィードバック制御部7から与えられるPWMパルスのデューティ比の設定値に上記補正値が加算されることにより、DC−DCコンバータ2の出力電流と2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値との差を無くすように、PWMパルス発生器6Bに与えられるデューティ比の設定値が補正される。
なお図2には図示してないが、同図に示された実施形態においても、負荷を駆動するために必要最小限の台数のDC−DCコンバータを並列運転するように、負荷の大きさに応じて各DC−DCコンバータを個別にオンオフして、並列運転するDC−DCコンバータの台数を増減させる並列運転台数切換手段を設けることが好ましい。その場合、並列運転台数切換手段は、各DC−DCコンバータをオフ状態にする際に、オフ状態にするDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部の動作をも停止させるように構成することが好ましい。
なお上記の説明では、DC−DCコンバータ1,2の出力電流に差が生じたときに、出力補正部12A,12Bが、フィードバック制御部7が出力するPWMパルスのデューティ比に加算する補正値を出力するとしたが、DC−DCコンバータ1,2の出力電流に差が生じたときに、フィードバック制御部7が出力するPWMパルスのデューティ比に乗算する補正係数を出力補正部12A,12Bから出力させて、DC−DCコンバータ1,2の出力電流に差が生じたときに出力補正部が出力する補正係数をフィードバック制御部が出力するデューティ比に乗算することにより、DC−DCコンバータ1,2の直流/交流変換部のスイッチング素子に与えるPWMパルスのデューティ比を補正するようにしてもよい。
上記の実施形態では、DC−DCコンバータ1,2の出力電流に差が生じたときに、各DC−DCコンバータの出力電流を、2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値と比較して、各DC−DCコンバータの出力電流を2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値に等しくするように各DC−DCコンバータに対して設けられたPWMパルス発生器が発生するPWMパルスのデューティ比を補正して、並列運転する2台のDC−DCコンバータに負荷電流を案分させるようにしたが、本発明において、PWMパルスのデューティ比の補正の仕方は上記の例に限定されない。例えば、負荷電流の目標値が予め分かっている場合には、並列運転するDC−DCコンバータ1,2の出力電流の合計値が負荷電流の目標値よりも小さいときに、DC−DCコンバータ1,2のそれぞれから負荷に流す電流を負荷電流の目標値の1/2(一般にn台にDC−DCコンバータを並列運転する場合には負荷電流の目標値の1/n)とするように、各DC−DCコンバータの直流/交流変換部のスイッチング素子に与えるPWMパルスのデューティ比を補正するように、出力補正部を構成することができる。
また上記の実施形態のように、各DC−DCコンバータの出力側に逆流阻止回路を挿入する場合には、各DC−DCコンバータの逆流阻止回路の手前の位置で各DC−DCコンバータの出力電圧を個別に検出することができるため、並列運転する複数台のDC−DCコンバータのそれぞれの出力電圧を個別に検出して、検出された出力電圧を等しくするように、各DC−DCコンバータに対して設けられたPWMパルス発生器から直流/交流変換部に与えるPWMパルスのデューティ比を出力補正部により補正するようにしてもよい。
上記の実施形態では、各DC−DCコンバータの出力端と負荷との間に、各DC−DCコンバータの出力端に他のDC−DCコンバータ側から電流が逆流するのを阻止する逆流阻止回路を挿入しているが、出力端から電流が流れ込むおそれがない場合、又は流れ込んでも支障を来さない場合には、逆流阻止回路を省略することができる。
上記の実施形態では、2台のDC−DCコンバータを並列運転する場合を例にとったが、3台以上のDC−DCコンバータを並列運転する場合にも本発明を適用することができるのはもちろんである。
図2に示した例では、一次側位相シフトPWM制御方式のDCーDCコンバータを並列運転する場合を例にとったが、他の形式のDC−DCコンバータ、例えば、直流電圧が印加されるトランスの一次コイルに対して直列にスイッチング素子を挿入して、このスイッチング素子をオンオフすることにより、トランスの二次側に交流電圧を誘起させるチョッパ型の直流/交流変換部と、整流回路からなる交流/直流変換部とを組み合わせたDC−DCコンバータを複数台並列運転する場合にも本発明を適用することができる。
1 第1のDC−DCコンバータ
101 直流/交流変換部
102 交流/直流変換部
2 第2のDC−DCコンバータ
201 直流/交流変換部
202 交流/直流変換部
5 負荷
6A,6B PWMパルス発生器
7 フィードバック制御部
8A,8B 電流検出器
11 電圧検出器
12A,12B 出力補正部
13A,13B 加算器
14 並列運転台数切換手段
本発明は、並列運転される複数のDC−DCコンバータを備えた直流電源装置に関するものである。
バッテリ等から得られる直流電圧を一旦交流電圧に変換した後、整流器を通して直流電圧に再変換することにより、負荷の駆動に適した電圧値を有する直流電圧を得るDC−DCコンバータを用いた直流電源装置が広く用いられている。
DC−DCコンバータは、負荷率(出力/定格出力)が高いとき(高出力時)には高い電力変換効率を得ることができるが、負荷率が低下するにつれて電力変換効率が低下する傾向がある。そこで、電力変換効率の向上を図るために、並列運転される複数台のDC−DCコンバータにより直流電源装置を構成して、負荷率に応じて運転するDC−DCコンバータの台数を変更する方式を採用した直流電源装置が用いられている。このように直流電源装置を構成すると、各DC−DCコンバータから常に定格出力又は定格出力に近い出力を発生させて、各DC−DCコンバータの負荷率を高い値に維持することができるため、直流電源装置全体としての電力変換効率を高くして、エネルギー損失の低減を図ることができる。この種の直流電源装置は例えば特許文献1に示されている。
並列運転される複数のDC−DCコンバータにより直流電源装置を構成する場合、負荷に供給する電圧を一定に保つため、直流電源装置の出力電圧を目標値に保つように、各DC−DCコンバータをフィードバック制御する必要がある。各DC−DCコンバータをフィードバック制御するようにした直流電源装置としては、図3又は図4に示した構成を有するものが知られている。
図3に示された直流電源装置は、2台のDC−DCコンバータ1及び2を備えて、両コンバータの出力側が逆流阻止回路3及び4を構成するダイオードを通して負荷5の両端に並列に接続されている。
各DC−DCコンバータは、例えば、直流電圧を交流電圧に変換するインバータなどの直流/交流変換部と、直流/交流変換部から得られる交流電圧を直流電圧に変換する交流/直流変換部とを備えていて、両DC−DCコンバータ1及び2に対して共通に設けられたPWMパルス発生器6が発生するPWMパルスが、各DC−DCコンバータの直流/交流変換部を構成するスイッチング素子に与えられている。また2台のDC−DCコンバータ1,2に対して共通にフィードバック制御部7が設けられ、負荷5に印加される出力電圧Voがフィードバック制御部7にフィードバックされている。フィードバック制御部7は、フィードバックされた出力電圧の値とその目標値との偏差を零にするように、PWMパルス発生器6が発生するPWMパルスのデューティ比を設定して該デューティ比の設定値をPWMパルス発生器6に与える。PWM発生器6は、フィードバック制御部7から与えられるデューティ比の設定値に等しいデューティ比を有するPWMパルスをDC−DCコンバータ1,2の直流/交流変換部のスイッチング素子の制御端子に与えて、該スイッチング素子を設定されたデューティ比でオンオフさせ、DC−DCコンバータ1及び2から目標値に等しい出力電圧を発生させる。
図4に示された直流電源置は、2台のDC−DCコンバータ1及び2を備えて、両DC−DCコンバータの出力側が逆流阻止回路3及び4を構成するダイオードを通して負荷5の両端に並列に接続されている点は図3に示したものと同様であるが、図4に示された直流電源装置においては、DC−DCコンバータ1及び2に対してそれぞれPWMパルス発生器6A及び6Bとフィードバック制御部7A及び7Bとが設けられて、各DC−DCコンバータ毎にフィードバック制御が行われる。DC−DCコンバータ1及び2はそれぞれ直流/交流変換部101及び201と、交流/直流変換部102及び202とを有していて、DC−DCコンバータ1及び2に対してそれぞれ設けられたPWMパルス発生器6A及び6Bが出力するPWMパルスが、DC−DCコンバータ1及び2の直流/交流変換部101及び201を構成するスイッチング素子の制御端子に与えられている。
図3に示された直流電源装置においては、すべてのDC−DCコンバータ1,2のスイッチング素子が同一のPWMパルスによりオンオフ制御されるため、DC−DCコンバータ1,2をそれぞれ構成する回路素子の特性のばらつきにより、DC−DCコンバータ1,2の出力に差が生じることがあった。
DC−DCコンバータ1,2の出力に差が生じるのを防ぐためには、DC−DCコンバータ1,2の出力の差を無くすように、DC−DCコンバータ1,2のスイッチング素子にそれぞれ与えるPWMパルスのデューティ比を個別に補正してやればよいが、図3に示した直流電源装置では、DC−DCコンバータ1,2に対して一つのPWMパルス発生器6しか設けられていないため、DC−DCコンバータ1及び2の出力の差を無くすように、両DC−DCコンバータに与えるPWMパルスのデューティ比を個別に補正することは困難である。
図4に示された直流電源装置においては、DC−DCコンバータ1及び2に対してそれぞれPWMパルス発生器6A及び6Bが設けられているため、両DC−DCコンバータの出力の差を無くすように、DC−DCコンバータ1及び2のスイッチング素子に与えるPWMパルスのデューティ比を補正することは可能である。しかしながら、DC−DCコンバータ1及び2に対してそれぞれフィードバック制御部7A及び7Bが設けられている図4に示された直流電源装置においては、各DC−DCコンバータが個々に負荷の変化に追従してその出力を調整する動作を行うため、負荷の急変時にDC−DCコンバータ1,2の制御応答性にばらつきが生じ、DC−DCコンバータ1,2の出力に差が生じることがあった。
並列運転されているDC−DCコンバータ1,2の出力に差が生じると、出力が大きい方のDC−DCコンバータにかかる負担が大きくなって、両DC−DCコンバータの寿命に差が生じるおそれがある。また、出力が大きい方のDC−DCコンバータの出力が最大定格を超えると、負荷に電力を供給することができなくなるという問題が生じる。
本発明の目的は、直流電源装置において、複数のDC−DCコンバータを並列運転する方式を採用する場合に、回路素子の特性のばらつきや、負荷の急変により、複数のDC−DCコンバータの出力に差が生じるのを防ぐことにある。
本発明は、PWMパルス発生器が発生するPWMパルスによりオンオフ制御されるスイッチング素子を有する直流/交流変換部と、該直流/交流変換部から得られる交流電圧を直流電圧に変換する交流/直流変換部とを有して、負荷に与えられる出力電圧がフィードバックされるフィードバック制御部により前記出力電圧の値とその目標値との偏差を零にするように前記PWMパルスのデューティ比を設定して設定したデューティ比を有するPWMパルスをPWMパルス発生器から発生させることにより、出力電圧を目標値に保つ制御を行うDC−DCコンバータをn台(nは2以上の整数)備えて、該n台のDC−DCコンバータが並列運転される直流電源装置を対象とする。
本発明においては、PWMパルス発生器が各DC−DCコンバータ毎に設けられる。またフィードバック制御部はn台のDC−DCコンバータに対して共通に設けられて、n台のDC−DCコンバータに対してそれぞれ設けられたn台のパルス発生器から発生させるPWMパルスのデューティ比を同時に設定するように構成される。本発明においてはまた、各DC−DCコンバータの一方の出力端子と負荷の一端との間に逆流阻止回路が挿入されて、前記逆流阻止回路よりも負荷側で検出した負荷の両端の電圧が前記負荷に与えられる出力電圧としてフィードバック制御部にフィードバックされる。また本発明では、n台のDC−DCコンバータの出力の差を無くすように、各DC−DCコンバータの出力に応じてフィードバック制御部により設定されたPWMパルスのデューティ比を補正する出力補正部が、各DC−DCコンバータに対して設けられる。各DC−DCコンバータに対して設けられたPWMパルス発生器は,フィードバック制御部により設定され、出力補正部により補正されたデューティ比を有するPWMパルスを発生するように構成される。
上記のように、各DC−DCコンバータ毎にPWMパルス発生器を設け、フィードバック制御部をn台のDC−DCコンバータに対して共通に設けて、n台のDC−DCコンバータに対してそれぞれ設けられたn台のパルス発生器から発生させるPWMパルスのデューティ比をフィードバック制御部により同時に設定するように構成するとともに、n台のDC−DCコンバータの出力の差を無くすように、フィードバック制御部により設定されたPWMパルスのデューティ比を補正して、各DC−DCコンバータに対して設けられたPWMパルス発生器から出力補正部により補正されたデューティ比を有するPWMパルスを発生させるようにすると、DC−DCコンバータを構成する回路素子の特性のばらつきにより、並列運転するn台のDC−DCコンバータの出力に差が生じるのを防ぐことができる。
また上記のように、フィードバック制御部をn台のDC−DCコンバータに対して共通に設けると、各DC−DCコンバータに与えられるPWMパルスのデューティ比が同じフィードバック制御部により同時に設定されるため、負荷が急変したときにn台のDC−DCコンバータの制御応答性にばらつきが生じるのを防ぐことができ、負荷の急変時にn台のDC−DCコンバータの出力に差が生じるのを防ぐことができる。
本発明の好ましい態様では、各DC−DCコンバータの出力電流を検出する電流検出器が各DC−DCコンバータに設けられる。各DC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部は、各DC−DCコンバータに設けられた電流検出器により検出された出力電流をn台のDC−DCコンバータにそれぞれ設けられた電流検出器により検出された出力電流の平均値と比較して、各DC−DCコンバータに設けられた電流検出器により検出された出力電流と上記平均値との差を無くすように各DC−DCコンバータに対して設けられたPWMパルス発生器が発生するPWMパルスのデューティ比を補正する。
本発明の好ましい態様では、負荷を駆動するために必要最小限の台数のDC−DCコンバータを並列運転するように、負荷の大きさに応じて各DC−DCコンバータを個別にオンオフすることにより、並列運転するDC−DCコンバータの台数を増減させる並列運転台数切換手段が設けられる。
上記のように構成すると、各DC−DCコンバータの負荷率を高い値に維持して、直流電源装置全体としての電力変換効率を高めることができるため、直流電源装置で生じるエネルギー損失の低減を図ることができる。
本発明の好ましい態様では、上記並列運転台数切換手段が、各DC−DCコンバータをオフ状態にする際に、オフ状態にするDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部の動作をも停止させるように構成される。
DC−DCコンバータをオフ状態にすると、出力電流が0になるため、そのDC−DCコンバータに対して設けた出力補正部を動作させておくと、該出力補正部は、オフ状態にしたDC−DCコンバータの出力を最大にするようにPWMパルスのデューティ比を補正する。この状態でそのDC−DCコンバータをオン状態にすると、そのDC−DCコンバータの出力が一瞬最大値に調整されるため、直流電源装置の出力にオーバシュートが生じてしまう。このような問題が生じるのを防ぐため、本態様では、各DC−DCコンバータをオフ状態にする際に、オフ状態にするDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部の動作をも停止させるように、並列運転台数切換手段を構成している。このように構成しておくと、各DC−DCコンバータをオフ状態にした際に、そのDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部が補正動作を行うことがないため、そのDC−DCコンバータをオン状態に復帰させた際に直流電源装置の出力にオーバシュートが生じるのを防ぐことができる。
本発明によれば、各DC−DCコンバータ毎にPWMパルス発生器を設け、フィードバック制御部をn台のDC−DCコンバータに対して共通に設けるとともに、n台のDC−DCコンバータの出力の差を無くすように、フィードバック制御部により設定されたPWMパルスのデューティ比を補正して、各DC−DCコンバータに対して設けられたPWMパルス発生器から、出力補正部により補正されたデューティ比を有するPWMパルスを発生させるようにしたので、各DC−DCコンバータを構成する回路素子の特性のばらつきなどにより、並列運転する複数のDC−DCコンバータの出力に差が生じるのを防ぐことができる。
また本発明によれば、フィードバック制御部をn台のDC−DCコンバータに対して共通に設けたことにより、各DC−DCコンバータのスイッチング素子に与えられるPWMパルスのデューティ比が同じフィードバック制御部により同時に設定される。そのため、負荷が急変したときに複数台のDC−DCコンバータの制御応答性にばらつきが生じるのを防ぐことができ、負荷の急変時に並列運転されるn台のDC−DCコンバータの出力に差が生じるのを防ぐことができる。
更に、本発明において、負荷を駆動するために必要最小限の台数のDC−DCコンバータを並列運転するように、負荷の大きさに応じて各DC−DCコンバータを個別にオンオフすることにより、並列運転するDC−DCコンバータの台数を増減させる並列運転台数切換手段を設けた場合には、各DC−DCコンバータの負荷率を高い値に維持して、直流電源装置全体としての電力変換効率を高めることができ、直流電源装置で生じるエネルギー損失の低減を図ることができる。
また本発明において、各DC−DCコンバータをオフ状態にする際に、オフ状態にするDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部の動作をも停止させるように並列運転台数切換手段を構成した場合には、各DC−DCコンバータをオン状態に復帰させる際に直流電源装置の出力にオーバシュートが生じるのを防ぐことができ、負荷に与える電力の品質を良好にすることができる。
本発明の一実施形態の構成を示したブロック図である。
図1の実施形態に係る直流電源装置のDC−DCコンバータ部分の具体的な構成例を示した回路図である。
従来の直流電源装置の構成を示したブロック図である。
従来の他の直流電源装置の構成を示したブロック図である。
以下図面を参照して本発明に係る直流電源装置の実施形態を詳細に説明する。
図1は本実施形態の構成を示したブロック図である。本発明は一般にn台(nは2以上の整数)のDC−DCコンバータを並列運転する直流電源装置に適用することができるが、以下に示す実施形態においては、2台のDC−DCコンバータ1及び2を並列運転するものとする。
図1において、1は第1のDCーDCコンバータ、2は第2のDC−DCコンバータである。第1のDC−DCコンバータ1は、直流電圧を交流電圧に変換する直流・交流変換部101と、直流・交流変換部101から得られる交流電圧を直流電圧に再変換する交流/直流変換部102とを備えている。また第2のDC−DCコンバー2は、直流電圧を交流電圧に変換する直流・交流変換部201と、直流・交流変換部201から得られる交流電圧を直流電圧に再変換する交流/直流変換部202とを備えている。
第1のDC−DCコンバータ1及び第2のDC−DCコンバータ2は、それぞれの一方の出力端子(図示の例ではプラス側の出力端子)をシャント抵抗器等からなる電流検出器8A及び8Bと、ダイオードなどからなる逆流阻止回路3及び4とを通して負荷5の一端に接続し、他方の出力端子(図示の例ではマイナス側出力端子)を負荷5の他端(図示の例ではアース端子)に共通接続した状態で設けられて並列運転される。
図示の例では、逆流阻止回路3及び4の出力側の端子の共通接続点が直流電源装置のプラス側の出力端子gとなっており、アース端子が直流電源装置のマイナス側の出力端子hとなっている。これらの出力端子間に直流電源装置の出力電圧を検出する電圧検出器11が接続されている。電圧検出器11は抵抗分圧回路等からなっていて、負荷5に印加される直流電源装置の出力電圧Voに比例した電圧検出信号Vo′を出力する。
各DC−DCコンバータの直流/交流変換部101,201は例えばインバータにより構成され、交流/直流変換部102,202は、整流回路により構成される。各DC−DCコンバータには更に必要に応じて、直流/交流変換部の出力を変成するトランスや、交流/直流変換部の出力を平滑するフィルタ回路等が設けられるが、図1においてはこれらの図示が省略されている。
本実施形態では、第1のDC−DCコンバータ1及び第2のDC−DCコンバータ2に対してそれぞれPWMパルス発生器6A及び6Bが設けられ、これらのPWMパルス発生器6A及び6Bからそれぞれ第1のDC−DCコンバータ1及び第2のDC−DCコンバータ2の直流/交流変換部101及び201を構成するスイッチング素子の制御端子にPWMパルスが与えられる。
本実施形態では、フィードバック制御部7が、第1及び第2のDC−DCコンバータ1及び2に対して共通に設けられ、電圧検出器11が出力する電圧検出信号Vo′がフィードバック制御部7にフィードバックされている。このフィードバック制御部7により、直流電源装置の出力電圧Voを目標値に保つように、DC−DCコンバータ1及び2のPWMパルス発生器6A及び6Bが発生するPWMパルスのデューティ比が設定される。PWMパルス発生器6A及び6Bは、与えられた設定値に等しいデューティ比を有するPWMパルスを発生するように構成されていて、設定されたデューティ比を有するPWMパルスを直流/交流変換部101及び201を構成するスイッチング素子の制御端子に与える。これにより、DC−DCコンバータ1及び2の直流/交流変換部101及び201のスイッチング素子を設定されたデューティ比でオンオフさせて、DC−DCコンバータ1及び2の出力電圧を目標値に保つようにPWM制御する。
なお本明細書においては、PWMパルスをスイッチング素子の制御端子に与えて該スイッチング素子をオンオフさせる場合に、PWMパルスがスイッチング素子をオン状態にする期間及びオフ状態にする期間をそれぞれTon及びToffとしたときに、Tonと(Ton+Toff)との比Ton/(Ton+Toff)を、PWMパルスのデューティ比とする。従って、PWMパルスのデューティ比を大きくするとDC−DCコンバータの出力が増大し、PWMパルスのデューティ比を小さくするとDC−DCコンバータの出力が低下する。
本実施形態ではまた、第1及び第2のDC−DCコンバータ1及び2に対してそれぞれ出力補正部12A及び12Bが設けられていて、フィードバック制御部7の出力と、出力補正部12Aの出力とが加算器13Aにより加算されてPWMパルス発生器6Aに与えられ、フィードバック制御部7の出力と、出力補正部12Bの出力とが加算器13Bにより加算されてPWMパルス発生器6Bに与えられている。
DC−DCコンバータ1に対して設けられた出力補正部12Aは、電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流と、電流検出器8Bにより検出されたDC−DCコンバータ2の出力電流との平均値を演算して、演算した平均値と電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流とを比較し、電流検出器8Aにより検出された出力電流と上記平均値との差を無くすために、フィードバック制御部7から与えられるデューティ比の設定値に加算する必要がある補正値(正又は負の符号をもつ値)を加算器13Aに与える。電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流が上記平均値よりも小さい場合には、上記補正値が正の符号を持ち、電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流が上記平均値よりも大きい場合には、上記補正値が負の符号を持つ。フィードバック制御部7から与えられるPWMパルスのデューティ比の設定値に上記補正値が加算されることにより、DC−DCコンバータ1の出力電流と2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値との差を無くすように、PWMパルス発生器6Aに与えられるデューティ比の設定値が補正される。
同様に、DC−DCコンバータ2に対して設けられた出力補正部12Bは、電流検出器8Bにより検出されたDC−DCコンバータ2の出力電流と、電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流との平均値を演算して、演算した平均値と電流検出器8Bにより検出されたDC−DCコンバータ2の出力電流とを比較し、電流検出器8Bにより検出された出力電流と上記平均値との差を無くすためにフィードバック制御部7から与えられるデューティ比の設定値に加算する必要がある補正値を加算器13Bに与える。フィードバック制御部7から与えられるPWMパルスのデューティ比の設定値に上記補正値が加算されることにより、DC−DCコンバータ2の出力電流と2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値との差を無くすように、PWMパルス発生器6Bに与えられるデューティ比の設定値が補正される。
上記のように構成すると、出力補正部12Aは、DC−DCコンバータ1及び2の出力に差が生じたときに、DC−DCコンバータ1の出力電流と2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値との差を無くすように、フィードバック制御部7により設定されたPWMパルスのデューティ比の設定値を補正して、補正したデューティ比の設定値をPWMパルス発生器6Aに与える。PWMパルス発生器6Aは、補正されたデューティ比の設定値に等しいデューティ比を有するPWMパルスをDC−DCコンバータ1の直流/交流変換部のスイッチング素子に与えて、DC−DCコンバータ1の出力電流を平均値に等しくするように制御する。
また出力補正部12Bは、DC−DCコンバータ1及び2の出力に差が生じたときに、DC−DCコンバータ2の出力電流と2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値との差をなくすように、フィードバック制御部7により設定されたPWMパルスのデューティ比の設定値を補正して、補正したデューティ比の設定値をPWMパルス発生器6Bに与える。PWMパルス発生器6Bは、補正されたデューティ比の設定値に等しいデューティ比を有するPWMパルスをDC−DCコンバータ2の直流/交流変換部のスイッチング素子に与えて、DC−DCコンバータ2の出力電流を平均値に等しくするように制御する。このように、DC−DCコンバータ1及び2の出力電流に差が生じた時に、各DC−DCコンバータの出力電流を平均値に等しくするように、PWMパルス発生器6A及び6Bが発生するPWMパルスのデューティ比を補正すると、2台のDC−DCコンバータの出力の差をなくすように制御することができ、DC−DCコンバータ1及び2をそれぞれ構成する回路素子の特性のばらつきにより、両DC−DCコンバータの出力に差が生じるのを防ぐことができる。
また上記のように、フィードバック制御部7を2台のDC−DCコンバータに対して共通に設けると、各DC−DCコンバータに与えられるPWMパルスのデューティ比が同じフィードバック制御部により同時に設定されるため、負荷5が急変したときに複数台のDC−DCコンバータ1,2の制御応答性にばらつきが生じるのを防ぐことができ、負荷5の急変時にDC−DCコンバータ1,2の出力に差が生じるのを防ぐことができる。
本実施形態ではまた、負荷5を駆動するために必要最小限の台数のDC−DCコンバータを並列運転するように、負荷5に与えられる全負荷電流に応じて(負荷5の大きさに応じて)各DC−DCコンバータを個別にオンオフして、並列運転するDC−DCコンバータの台数を増減させる並列運転台数切換手段14が設けられている。並列運転台数切換手段14は、各DC−DCコンバータをオフ状態にする際に、オフ状態にするDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部12A,12Bの動作をも停止させるように構成されている。
上記のように並列運転台数切換手段14を設けておくと、各DC−DCコンバータの負荷率を高くして、直流電源装置全体としての電力変換効率を高めることができるため、直流電源装置で生じるエネルギー損失の低減を図ることができる。
DC−DCコンバータをオフ状態にすると、その出力電流が0になるため、そのDC−DCコンバータに対して設けた出力補正部を動作させておくと、該出力補正部は、オフ状態にしたDC−DCコンバータの出力を最大にするようにPWMパルスのデューティ比を補正することになる。この状態でそのDC−DCコンバータをオン状態にすると、そのDC−DCコンバータの出力が一瞬最大値に調整されるため、直流電源装置の出力にオーバシュートが生じ、負荷に悪影響を及ぼすおそれがある。このような問題が生じるのを防ぐため、本実施形態では、並列運転台数切換手段14が各DC−DCコンバータをオフ状態にする際に、オフ状態にするDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部の動作をも停止させるように構成されている。このように構成しておくと、各DC−DCコンバータをオフ状態にした際に、そのDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部が補正動作を行うことがないため、そのDC−DCコンバータをオン状態に復帰させた際に直流電源装置の出力にオーバシュートが生じるのを防ぐことができる。
図2を参照すると、並列運転するDCーDCコンバータ1及び2として、フルブリッジインバータと整流回路とを組み合わせた一次側位相シフトPWM制御方式のDCーDCコンバータを用いる場合の回路構成の一例が示されている。図2において、INVは直流電源20の出力電圧Eを高周波交流電圧Vcdに変換するフルブリッジインバータ、TsfはインバータINVの出力が入力されたトランス、Recはトランスの高周波交流出力を整流して直流出力に変換する整流回路、Fはスイッチング周波数のリップルを取り除く平滑フィルタである。
インバータINVは、スイッチング素子Q1と該スイッチング素子に並列に接続されたスナバキャパシタC1とスイッチング素子Q1に逆並列接続された帰還ダイオードD1とからなる上側アームと、スイッチング素子Q2と該スイッチング素子に並列に接続されたスナバキャパシタC2とスイッチング素子Q2に逆並列接続された帰還ダイオードD2とからなる下側アームとを直列に接続して構成した基準相のレグと、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q3に並列に接続されたスナバキャパシタC3とスイッチング素子Q3に逆並列接続された帰還ダイオードD3とからなる上側アームと、スイッチング素子Q4とスイッチング素子Q4に並列に接続されたスナバキャパシタC4とスイッチング素子Q4に逆並列接続された帰還ダイオードD4とからなる下側アームとを直列に接続して構成した制御相のレグとを並列に接続した回路からなっている。
このインバータにおいては、基準相のレグと制御相のレグとの並列回路の上アーム側の端部及び下アーム側の端部がそれぞれプラス側入力端子a及びマイナス側入力端子bとなっており、これらの入力端子間に直流電源20の出力電圧Eが印加されている。また基準相のレグの上側アームと下側アームとの接続点及び制御相のレグの上側アームと下側アームとの接続点がそれぞれ第1及び第2のインバータ出力端子c及びdとなっており、これらのインバータ出力端子間に得られる高周波交流電圧Vcdが直列リアクトルL1を通してトランスの一次コイルW1に印加されている。
トランスTsfは一次コイルW1と二次コイルW2とを有し、二次コイルW2の誘起電圧が整流回路Recに入力されている。整流回路Recは、ダイオードD5ないしD8をブリッジ接続したダイオードブリッジ全波整流回路からなっていて、その出力電圧が、フィルタ回路Fに入力されている。
フィルタ回路Fは、一端が整流回路Recのプラス側出力端子に接続されたインダクタ(チョークコイル)Loと、インダクタLoの他端と整流回路Recのマイナス側出力端子との間に接続されたキャパシタCoとからなっている。DC−DCコンバータ1のフィルタ回路FのインダクタLoの他端から電流検出器8Aを通してDC−DCコンバータ1のプラス側コンバータ出力端子g1が引出され、DC−DCコンバータ1の整流回路Recのマイナス側出力端子からDC−DCコンバータ1のマイナス側コンバータ出力端子h1が引出されている。同様に、DC−DCコンバータ2のフィルタ回路FのインダクタLoの他端から電流検出器8Bを通してDC−DCコンバータ2のプラス側コンバータ出力端子g2が引出され、DC−DCコンバータ2の整流回路Recのマイナス側出力端子からDC−DCコンバータ2のマイナス側コンバータ出力端子h2が引出されている。そして、DC−DCコンバータ1及び2のプラス側出力端子g1及びg2がそれぞれ逆流阻止回路3及び4を構成するダイオードを通して負荷5の一端に接続され、DC−DCコンバータ1及び2のマイナス側出力端子h1及びh2が負荷5の他端に共通接続されることにより、2台のDC−DCコンバータ1及び2が並列運転されるようになっている。負荷5の両端には、電圧検出器11が接続されている。図2に示されたDC−DCコンバータはよく知られたものであるので、その詳細な動作の説明は省略する。
図2に示した直流電源装置においては、第1及び第2のDC−DCコンバータ1及び2の直流/交流変換部101及び201がインバータINVにより構成され、第1及び第2のDC−DCコンバータ1及び2の交流/直流変換部102及び202が整流回路Recとフィルタ回路Fとにより構成されている。本実施形態においても、第1のDC−DCコンバータ1及び第2のDC−DCコンバータ2に対してそれぞれPWMパルス発生器6A及び6Bが設けられ、これらのPWMパルス発生器6A及び6Bからそれぞれ第1のDC−DCコンバータ1及び第2のDC−DCコンバータ2のインバータINVを構成するスイッチング素子の制御端子にPWMパルスが与えられる。なお図が複雑になるのを避けるため、図2においては、PWMパルス発生器6A及び6Bから第1のDC−DCコンバータ1及び第2のDC−DCコンバータ2のインバータINVを構成するスイッチング素子の制御端子にPWMパルスを与える信号経路の図示が省略されている。
図2に示した直流電源装置においても、フィードバック制御部7が、第1及び第2のDC−DCコンバータ1及び2に対して共通に設けられ、電圧検出器11から出力される電圧検出信号Vo′がフィードバック制御部7にフィードバックされている。フィードバック制御部7により、直流電源装置の出力電圧を目標値に保つように、DC−DCコンバータ1及び2のPWMパルス発生器6A及び6Bが発生するPWMパルスのデューティ比が設定される。第1及び第2のDC−DCコンバータ1及び2に対してそれぞれ出力補正部12A及び12Bが設けられていて、フィードバック制御部7の出力と、出力補正部12Aの出力とが加算器13Aにより加算されてPWMパルス発生器6Aに与えられ、フィードバック制御部7の出力と、出力補正部12Bの出力とが加算器13Bにより加算されてPWMパルス発生器6Bに与えられている。
DC−DCコンバータ1に対して設けられた出力補正部12Aは、電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流と、電流検出器8Bにより検出されたDC−DCコンバータ2の出力電流との平均値を演算して、演算した平均値と電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流とを比較し、電流検出器8Aにより検出された出力電流と上記平均値との差を無くすために、フィードバック制御部7から与えられるデューティ比の設定値に加算する必要がある補正値を加算器13Aに与える。フィードバック制御部7から与えられるPWMパルスのデューティ比の設定値に上記補正値が加算されることにより、DC−DCコンバータ1の出力電流と2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値との差を無くすように、PWMパルス発生器6Aに与えられるデューティ比の設定値が補正される。
同様に、DC−DCコンバータ2に対して設けられた出力補正部12Bは、電流検出器8Bにより検出されたDC−DCコンバータ2の出力電流と、電流検出器8Aにより検出されたDC−DCコンバータ1の出力電流との平均値を演算して、演算した平均値と電流検出器8Bにより検出されたDC−DCコンバータ2の出力電流とを比較し、電流検出器8Bにより検出された出力電流と上記平均値との差を無くすためにフィードバック制御部7から与えられるデューティ比の設定値に加算する必要がある補正値を加算器13Bに与える。フィードバック制御部7から与えられるPWMパルスのデューティ比の設定値に上記補正値が加算されることにより、DC−DCコンバータ2の出力電流と2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値との差を無くすように、PWMパルス発生器6Bに与えられるデューティ比の設定値が補正される。
なお図2には図示してないが、同図に示された実施形態においても、負荷を駆動するために必要最小限の台数のDC−DCコンバータを並列運転するように、負荷の大きさに応じて各DC−DCコンバータを個別にオンオフして、並列運転するDC−DCコンバータの台数を増減させる並列運転台数切換手段を設けることが好ましい。その場合、並列運転台数切換手段は、各DC−DCコンバータをオフ状態にする際に、オフ状態にするDC−DCコンバータに対して設けられた出力補正部の動作をも停止させるように構成することが好ましい。
なお上記の説明では、DC−DCコンバータ1,2の出力電流に差が生じたときに、出力補正部12A,12Bが、フィードバック制御部7が出力するPWMパルスのデューティ比に加算する補正値を出力するとしたが、DC−DCコンバータ1,2の出力電流に差が生じたときに、フィードバック制御部7が出力するPWMパルスのデューティ比に乗算する補正係数を出力補正部12A,12Bから出力させて、DC−DCコンバータ1,2の出力電流に差が生じたときに出力補正部が出力する補正係数をフィードバック制御部が出力するデューティ比に乗算することにより、DC−DCコンバータ1,2の直流/交流変換部のスイッチング素子に与えるPWMパルスのデューティ比を補正するようにしてもよい。
上記の実施形態では、DC−DCコンバータ1,2の出力電流に差が生じたときに、各DC−DCコンバータの出力電流を、2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値と比較して、各DC−DCコンバータの出力電流を2台のDC−DCコンバータの出力電流の平均値に等しくするように各DC−DCコンバータに対して設けられたPWMパルス発生器が発生するPWMパルスのデューティ比を補正して、並列運転する2台のDC−DCコンバータに負荷電流を案分させるようにしたが、本発明において、PWMパルスのデューティ比の補正の仕方は上記の例に限定されない。例えば、負荷電流の目標値が予め分かっている場合には、並列運転するDC−DCコンバータ1,2の出力電流の合計値が負荷電流の目標値よりも小さいときに、DC−DCコンバータ1,2のそれぞれから負荷に流す電流を負荷電流の目標値の1/2(一般にn台にDC−DCコンバータを並列運転する場合には負荷電流の目標値の1/n)とするように、各DC−DCコンバータの直流/交流変換部のスイッチング素子に与えるPWMパルスのデューティ比を補正するように、出力補正部を構成することができる。
上記の実施形態では、2台のDC−DCコンバータを並列運転する場合を例にとったが、3台以上のDC−DCコンバータを並列運転する場合にも本発明を適用することができるのはもちろんである。
図2に示した例では、一次側位相シフトPWM制御方式のDCーDCコンバータを並列運転する場合を例にとったが、他の形式のDC−DCコンバータ、例えば、直流電圧が印加されるトランスの一次コイルに対して直列にスイッチング素子を挿入して、このスイッチング素子をオンオフすることにより、トランスの二次側に交流電圧を誘起させるチョッパ型の直流/交流変換部と、整流回路からなる交流/直流変換部とを組み合わせたDC−DCコンバータを複数台並列運転する場合にも本発明を適用することができる。
1 第1のDC−DCコンバータ
101 直流/交流変換部
102 交流/直流変換部
2 第2のDC−DCコンバータ
201 直流/交流変換部
202 交流/直流変換部
5 負荷
6A,6B PWMパルス発生器
7 フィードバック制御部
8A,8B 電流検出器
11 電圧検出器
12A,12B 出力補正部
13A,13B 加算器
14 並列運転台数切換手段