本発明を実施するための形態について以下に図面を参照して詳細に説明する。
なお、実施の形態は例示であり、開示の装置及び方法は、以下の実施の形態の構成には限定されない。また、図に付した参照符号は理解を助けるための一例として便宜上付記したものであり、なんらの限定を意図するものではない。
(第1の実施形態)
第1の実施形態を図1乃至図3を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の障害診断装置の構成を例示するブロック図である。なお、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。
第1の実施形態の障害診断装置10は、障害探索手順リストを記憶する記憶手段11、通知情報分析手段12および障害探索手段13を含む構成になっている。
障害探索手順リストは、監視対象とする相互が通信回線で接続された複数の通信装置の通信回線状態に関する障害情報の内容に応じて予め作成されている、障害情報が示す障害箇所を推定する診断手順を順次記述したものである。
通知情報分析手段12は、受信した障害情報が、当該障害を検出した通信装置から受信した最初の障害情報または後続の障害情報かを判定する。そして、最初の障害情報である場合には、記憶手段11を検索してその障害情報が示す障害に対応する障害探索手順リストを取得して最初の障害情報とともに出力し、後続の障害情報である場合には、当該後続の障害情報のみを出力する。
障害探索手段13は、通知情報分析手段12が出力する前記の最初の障害情報と障害探索手順リストの診断手順に基づいて、障害情報に関連する通信装置内に組み込まれているループバック部をループバック動作させるループバック指示情報を送信する。
また、障害探索手段13は、通知情報分析手段12が出力する前記の後続の障害情報と既に取得した障害探索手順リストの診断手順に基づいて、障害情報が示す障害箇所の推定の可否を判定する。
更に、障害探索手段13は、障害情報が示す障害箇所の推定を否と判定した場合には、後続の障害情報と障害探索手順リストに記述された次の診断手順で指定される別のループバック指示情報を送信する。この別のループバック指示情報は、後続の障害情報と次の診断手順で指定される通信装置内に組み込まれているループバック部をループバック動作させる。
図2は、本発明の第1の実施形態の障害診断システムの構成を例示するブロック図である。なお、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。
第1の実施形態の障害診断システム1は、前記の障害診断装置10と、相互が通信回線で接続された複数の通信装置20を含んで構成される。ここでは、複数の通信装置のそれぞれは同じ構成なので、各通信装置に対しては同じ参照符号が付されている。
通信装置20は、通信回線をループバックさせる少なくとも2つのループバック部21、22と、障害診断装置10と監視制御回線で接続された診断制御手段23を含む。診断制御手段22は、通信回線状態に関する障害情報を出力し、障害診断装置10から受信したループバック指示情報に基づいて、指定された箇所のループバック部21、22をループバック動作させる。
図3は、本発明の第1の実施形態の障害診断方法の動作を例示するフロー図である。
第1の実施形態の障害診断方法は、障害診断装置10が次のように動作することで実現される。
監視対象とする相互が通信回線で接続された複数の通信装置の通信回線状態に関する通信装置の障害情報の内容に応じて予め作成されている、障害情報が示す障害箇所を推定する診断手順を順次記述した障害探索手順リストを記憶する(S101)。
受信した障害情報が、当該障害を検出した通信装置から受信した最初の障害情報または後続の障害情報かを判定する(S102)。
最初の障害情報である場合には、その障害情報が示す障害に対応する、記憶している障害探索手順リストを検索して取得し、その最初の障害情報とともに出力する。一方、後続の障害情報である場合には、当該後続の障害情報のみを出力する(S103)。
最初の障害情報と障害探索手順リストの診断手順に基づいて、障害情報に関連する通信装置内に組み込まれているループバック部をループバック動作させるループバック指示情報を送信する(S104)。
後続の障害情報と障害探索手順リストの診断手順に基づいて、障害情報が示す障害箇所の推定の可否を判定する(S105)。
障害情報が示す障害箇所の推定を否と判定した場合には、後続の障害情報と障害探索手順リストに記述された次の診断手順で指定される別のループバック指示情報を送信する。この別のループバック指示情報は、後続の障害情報と次の診断手順で指定される通信装置内に組み込まれているループバック部をループバック動作させる(S106)。
このように、本実施形態では、障害探索手順リストに、監視対象とする通信装置の障害情報の内容に応じてその障害を推定する診断手順が予め記述されている。そして、受信した障害情報に対応する診断手順で指定される通信装置内に組み込まれているループバック部をループバック動作させることで診断を行う。そのループバックの結果として後続の障害情報が通知され、その後続の障害情報と障害探索手順リストの診断手順に基づいて障害情報が示す障害箇所の推定ができる。ここで通知された後続の障害情報で障害箇所の推定ができない場合には、後続の障害情報と次の診断手順で指定される通信装置内に組み込まれているループバック部をループバック動作させた診断を行う。これらの一連の診断は、障害情報の内容に応じてその障害を推定するために実行すべき手順が記述された、障害探索手順リストの診断手順にしたがって順次実行される。
したがって、本実施形態では、通信システム全体を考慮した障害診断、障害が発生した通信装置の判別および障害が疑われる機器の推定を行うことができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。
第2の実施形態は、都市部に構築されるモバイルネットワークでの適用を想定する。本実施形態では、通信装置である無線基地局の相互間がデジタル無線回線で接続され、障害診断装置が各無線基地局を監視する構成環境を想定する。
なお、無線基地局を以降の説明では通信装置と称して説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態の障害診断システムの構成を例示するブロック図である。
図4を参照して、本実施形態の障害診断システム2の構成を説明する。
障害診断システム2は、障害診断装置100、障害探索手順データベース110、およびそれぞれが無線基地局である複数の通信装置200、201、202、203を含む構成になっている。
各通信装置は、対向する通信装置とデジタル無線回線を通信回線として用いて接続されている。図4では、通信装置200は通信装置201と対向しており、通信装置202は通信装置203と対向している構成を例示している。
障害診断装置100は各通信装置と監視制御回線により接続され、各通信装置が検出した障害の発生個所を推定する障害探索を行う。障害診断装置100は障害探索手順データベース110から障害探索に必要な障害探索手順リストを取得する。また、障害診断装置100は監視制御回線を介して各通信装置と障害探索に係る情報の送受信を行う。
図4では、2系統の監視制御回線が設けられ、各系統の監視制御回線に通信装置200と通信装置201、および通信装置202と通信装置203がそれぞれ接続される構成を示しているが、これに限ることはない。つまり、監視制御回線の系統数は任意であり、1系統の監視制御回線には、相互が通信回線で接続された複数の通信装置が接続されていれば良い。
障害診断装置100は、障害の発生を検出してその障害報告を行った通信装置およびそれと対向する通信装置に対して、報告された障害の内容に従い各通信装置に具備されている、通信回線の信号をループバックさせるループバック部の制御を行う。なお、以降は、「障害報告」を「アラーム通知」、「報告された障害」を「通知されたアラーム」とも称して説明する。
そして、障害診断装置100は、ループバックを実施したことによる障害の発生状況の変化(アラームの変化状態)を監視する。
ここでは、障害として、通信回線の異常を示す品質劣化(例えば、エラー多発)や信号断を想定する。
障害診断装置100は、報告を受けた障害の内容に従い、障害探索手順データベース110からその障害に関する障害探索に必要な障害探索手順リストを取得する。そして、取得した障害探索手順リストに基づいて、診断対象とする通信装置のどのループバック部をループバックさせるかを判別してループバック指示を出す。
障害診断装置100は、ループバック指示後のアラームの変化状態を監視し、ループバックさせたループバック部の位置やアラームの変化状態から、障害探索手順リストを参照して通信装置のどの機器に問題があるかを推定する情報を出力する。
障害探索手順データベース110は、障害の種別と障害情報の送信元の通信装置の種別に応じて、当該障害の発生個所を推定するための障害探索手順リストを蓄積している。障害探索手順リストには、その障害種別と通信装置種別に応じて順次実行すべき診断手順が記述されている。そして、診断手順には、障害情報に関連する診断対象とする通信装置、ループバック箇所とループバック方向、当該ループバックの結果に基づくアラームの変化状態、その変化状態に応じて次に実行すべき診断手順や推定できる障害箇所等が示されている。
なお、障害探索手順データベース110は、図示しない他の障害診断装置から共通的に使用されるものとして、障害診断装置100とは別構成として図示している。しかし、小規模なシステム構成の場合には、障害探索手順データベース110は障害診断装置100に含まれる構成であっても良い。
障害診断装置100の構成および動作について、図5乃至図7を参照して詳細に説明する。まず、図5を参照して障害診断装置100の構成を説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態の障害診断装置の構成を例示するブロック図である。なお、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。
障害診断装置100は、通信部101、通知情報分析部102、障害探索手順リスト取得部103、ループバック指示部104、診断実行判定部105および障害推定出力部106を含む構成になっている。
通信部101は、監視制御回線により接続された各通信装置と障害探索に係る情報の送受信を行う。
通信部101は、各通信装置からは障害情報を受信し、各通信装置にはループバック指示情報を送信する。
障害情報には障害の内容を示すアラーム情報やその障害を報告した通信装置を特定する送信元の通信装置の識別情報(装置識別情報)を含む。
また、ループバック指示情報にはループバックを指示する宛先の通信装置を特定する宛先識別情報、その通信装置のループバック箇所とループバック方向を含む。なお、各通信装置からの障害情報は、各通信装置が障害を検出して主体的に障害診断装置100に報告する形態でも良いし、障害診断装置100から送信されるポーリング信号に応じて障害情報を報告する形態でも良い。後者の場合は、ポーリング信号や特定の通信装置に障害情報の報告を指示する障害情報報告指示もループバック指示情報に含まれるものとする。
通知情報分析部102は、通信装置から受信した障害情報(アラーム情報と装置識別情報)を分析し、当該通信装置から受信した最初のアラーム情報か、診断制御の途中で受信した後続のアラーム情報かを判定する。
最初のアラーム情報の場合は、障害探索手順リストを取得するために、障害探索手順リスト取得部103に対して、アラーム情報と装置識別情報を通知して、それに対応する障害探索手順リストの取得指示を出す。また、診断実行判定部105に対しても、受信したアラーム情報と装置識別情報を通知して、障害探索手順リスト入手後に診断実行するように指示する。
診断制御の途中で2番目以降に受信した後続のアラーム情報は、そのまま診断実行判定部105に通知して、最初のアラーム情報の処理の際に取得している障害探索手順リストに基づく診断を継続するように指示する。
障害探索手順リスト取得部103は、通知情報分析部102の指示に基づいて、アラーム情報と装置識別情報をキーにして障害探索手順データベース110を検索する。障害探索手順リスト取得部103は、検索の結果で得られた障害探索手順リストを診断実行判定部105に送る。
診断実行判定部105は、障害探索手順リスト取得部103から障害探索手順リストを受け取ると、通知情報分析部102から通知されたアラーム情報と装置識別情報に基づいて、障害探索手順リストを参照して診断を実行する。
具体的には、診断を開始した最初の動作においては、障害探索手順リストに記述されている最初の診断手順の内容に従ったループバック指示を行うようにループバック指示部104に通知する。この通知のループバック指示情報には、指示の対象となる通信装置を特定する宛先識別情報、ループバックさせる箇所とループバック方向等が示されている。
診断開始後の2回目以降の動作において、診断実行判定部105には、アラーム情報として前回の動作で使用した診断手順によるループバック指示の結果に基づくアラームの変化状態が通知される。アラームの変化状態とは、当初通知されたアラームが継続しているのか、そのアラームが解消したのか、それとも別のアラームに変わったのか、というような情報を含む。
診断実行判定部105は、そのアラームの状態変化に基づく障害箇所の推定または診断の継続を判定する。診断を継続する場合には、通知されたアラームの変化状態に応じて次に用意されている診断手順で指定される通信装置のループバック部をループバック動作させるループバック指示を出す。また、判定の結果、障害箇所が推定できる場合は、推定した障害箇所の情報を障害推定出力部106に通知する。
ループバック指示部104は、診断実行判定部105からの通知に基づいて、指示された箇所のループバックを指示された方向にループバックさせる旨を指定したループバック指示情報を作成して、指示された通信装置に対して送信する。
障害推定出力部106は、診断実行判定部105からの通知に基づいて、推定した障害箇所の情報(障害箇所推定出力)を図示しない保守者制御卓等に送信する。
次に、図6を参照する。
図6は、障害探索手順リストの参照原理を説明する図である。なお、図6はあくまでも障害探索手順リストの参照原理を説明するものであり、実際の診断内容を示すものではない。
障害探索手順リストは、アラーム情報と装置識別情報に基づいて障害探索手順データベース110を検索して取得するものである。そして、その障害探索手順リストには、障害の発生個所を推定するために順次実行すべき診断手順が記述されている。診断手順には、診断対象とする通信装置内で動作させるループバック箇所とそのループバック動作の結果であるアラームの変化状態に基づく判定内容が示されている。なお、診断手順にはループバックさせる方向を指定する情報も含まれるが、図6の説明においては省略する。
図6を参照すると、この障害探索手順リストは、診断手順1、診断手順2および診断手順3で構成される例を示している。もちろん、診断手順の数はこれに限られることはなく、対象とするアラーム情報と装置識別情報に基づいて、障害探索に必要な所定の診断手順が設けられている。
最初に、診断手順実行番号1が指定され、診断手順1による診断が実行される。ここでは、診断対象とする通信装置のLB(ループバック)1をループバックさせる指示が出される例を示している。そして、そのループバックの結果に基づくアラームの変化状態に応じた判定結果が示されている。なお、診断対象とする通信装置は、アラーム通知を行った通信装置とは限らない。通知されたアラームの内容によっては、アラーム通知を行った通信装置と通信回線で接続された対向する通信装置でもあり得る。
LB1のループバックの結果、アラームの変化状態としてアラームが消滅した場合には、LB1以降の機器の障害が推定されるので、診断手順実行番号2が指定され、次の診断手順2が実行される。また、LB1のループバックの結果、アラームの変化状態としてアラームが継続している場合には、当該通信装置と通信回線で接続されている前位の対向局での障害が疑える。そのため、障害推定情報として「前位対向局」を出力する。なお、ここでは、障害推定情報を出力するように説明しているが、前位対向局を診断するための診断手順が用意されていて、前位対向局の診断を実行するように制御しても良い。
診断手順2では、診断対象とする通信装置のLB2をループバックさせる指示が出される。
LB2のループバックの結果、アラームの変化状態としてアラームが消滅している場合には、さらにLB2以降の機器の障害が推定されるので、診断手順実行番号3が指定され、次の診断手順3が実行される。また、LB2のループバックの結果、アラームの変化状態として、消滅していたアラームが再現した場合には、LB1とLB2の間に設置された機器の障害が疑える。そのため、障害推定情報として「LB1−LB2間機器」を出力する。
LB3のループバックの結果、アラームの変化状態としてアラームが依然として消滅している場合には、当該通信装置と通信回線で接続されている後位の対向局での障害が疑える。そのため、障害推定情報として「後位対向局」を出力する。なお、ここでは、障害推定情報を出力するように説明しているが、後位対向局を診断するための診断手順が用意されていて、後位対向局の診断を実行するように制御しても良い。また、LB3のループバックの結果、アラームの変化状態として、消滅していたアラームが再現した場合には、LB2とLB3の間に設置された機器の障害が疑える。そのため、障害推定情報として「LB2−LB3間機器」を出力する。
以上のように、障害探索手順データベース110を検索して取得した障害探索手順リストの診断手順を順次参照して、ループバック試験とその結果に基づく検証が行われる。この制御は、図5に示した診断実行判定部105により実行される。
なお、各診断手順が指定する通信装置は、必ずしも前回のループバック指示で指定した通信装置と同じ通信装置とは限らない。通知されたアラームの内容や診断経過に応じて異なる通信装置が指定されることもあり得る。
図7は、本発明の第2の実施形態の障害診断装置の動作を例示するフロー図である。
図7を参照して障害診断装置100の動作を説明する。
なお、第2の実施形態の障害診断方法は、障害診断装置100が次のように動作することで実現される。
まず、監視の対象としている通信装置から、アラーム情報と当該通信装置の装置識別情報を受信する(S201)。この受信は、図5に示した通信部101により行われる。
次に、受信したアラーム情報と装置識別情報を分析する(S202)。この分析は、図5に示した通知情報分析部102により行われる。
ここでは、受信したアラーム情報が最初のアラーム情報なのか、それとも診断の実行途中における後続のアラーム情報なのかを判定する(S203)。例えば、受信したアラーム情報と装置識別情報に基づいて診断実行中フラグをセットし、後述するステップS210の障害箇所推定情報の出力で診断を終了するまで、当該フラグで診断が実行中であることを識別すれば良い。
最初のアラーム情報の場合は障害探索手順リストを取得する必要がある。一方、診断の実行途中における後続のアラーム情報の場合は既に障害探索手順リストは取得している。
そこで、最初のアラーム情報の場合(S203、Yes)は、データベース検索を行って障害探索手順リストを取得する(S204)。これは、図5に示した障害探索手順リスト取得部103が通知情報分析部102の指示に基づいて、受信したアラーム情報と装置識別情報を検索キーにして障害探索手順データベース110から取得する。このとき、取得した障害探索手順リストとともに診断手順実行番号nを1で初期設定して通知する(S205)。
一方、診断の実行途中における後続のアラーム情報の場合(S203、No)は、障害探索手順リストは既に取得済みなので、当該障害探索手順リストに基づく診断手順を実行する(S206)。障害探索手順リストに基づく診断手順は、図5の診断実行判定部105により、診断手順実行番号に対応する診断手順が実行される。なお、前述したステップS205の診断手順実行番号nを1に初期設定する動作は、障害探索手順リストを最初に受領したときに診断実行判定部105が行っても良い。
障害探索手順リストに基づく診断は、図6を参照して説明した原理の手順で、障害探索手順リストの内容に応じて順次実行される。つまり、診断開始時の動作においては、障害箇所推定可否判定(S207)では判定できないので(S207、推定否)、最初の診断手順の内容に従ってループバック指示情報を関連する通信装置に送信する(S208)。このとき、診断手順実行番号nを1加算して次の診断手順が実行されるようにする(S209)。
なお、関連する通信装置とは、診断手順に記述されている通信装置であって、前述したように必ずしもアラーム情報の送信元の通信装置とは限らない。通知されたアラームの内容に応じて、送信元の通信装置と通信回線で接続されている対向通信装置でもあり得る。
診断対象とする通信装置へのループバック指示情報は、図5の診断実行判定部105がループバック指示部104に指示して通信部101から送信される。
この手順によるループバックの結果に基づくアラームの変化状態が、ステップS201で受信される。その後、ステップS202、ステップS203、No、ステップS206を経てステップS207で判定される。前回の手順によるループバックの結果に基づくアラームの変化状態でも障害箇所推定ができない場合(S207、推定否)、次の診断手順に基づくループバック指示情報が、その診断手順で指定された通信装置に送信される(S208)。そして、診断手順実行番号nを1加算して次の診断手順が実行されるようにする(S209)。
なお、前述したように、診断手順で指定される通信装置は、必ずしも前回のループバック指示情報で指定した通信装置と同じ通信装置とは限らない。通知されたアラームの内容や診断経過に応じて異なる通信装置が指定されることもあり得る。
一方、前回の手順によるループバックの結果に基づくアラームの変化状態で障害箇所推定ができた場合(S207、推定可)、障害箇所推定情報を出力する(S210)。これは、図5の診断実行判定部105が障害推定出力部106に通知して出力する。なお、このとき、前述した診断実行中フラグはリセットされる。
次に、図8と図9を参照して通信装置の構成を説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態の通信装置の構成を例示するブロック図である。
通信装置200は、信号処理部230および無線送受信処理部240を含む無線通信装置を想定している。
信号処理部230は、有線通信回線側と接続された図示しない対向局の通信装置との間で送受信する信号を処理する機能を有する。ここでは、有線通信回線での信号(有線回線信号)形式と装置内で使用する信号(装置内信号)形式とのフォーマット変換する機能を含む。また、無線送受信処理部240は、無線通信回線側と接続された図示しない対向局の通信装置との間で送受信する信号を処理する機能を有する。ここでは、装置内信号に対する無線送受信するクロックとの同期や、無線フレームとのフォーマット変換、無線回線信号を送受信する機能等を含む。
有線通信回線から入力した有線回線信号は信号処理部230で装置内信号に変換される。そして、装置内信号は無線送受信処理部240で無線回線信号に変換されて無線通信回線から出力される。また、無線通信回線から入力した無線回線信号は逆の方向で処理されて有線通信回線から出力される。
そして、通信装置200は、通信装置200の有線通信回線側にループバック部211、無線通信回線側にループバック部213、そして、信号処理部230と無線送受信処理部240の間にループバック部212を備える。各ループバック部は、配備された位置における信号回線の入力方向の信号を、出力方向での信号処理を行うクロックに同期させたり、アドレスを入れ換えるなどの処理を行って、出力方向の信号回線に載せ換える機能を備える。
さらに、通信装置200は、診断制御部220、タイマー250および記憶部260を含む構成になっている。
診断制御部220は、図4に示すように、障害診断装置100と監視制御回線により接続されて、障害診断装置100との間で障害診断に関わる情報の送受信を行う。
また、診断制御部220は、信号処理部230や無線送受信処理部240と装置内のアラーム通知回線により接続されており、信号処理部230や無線送受信処理部240のアラーム情報を収集する。診断制御部220は、収集したアラーム情報を記憶部260に蓄積しておき、障害診断装置100からの指示に基づいて当該通信装置の装置識別情報を付して送信する。なお、この場合、障害診断装置100からの指示に基づくことなく、自発的にアラーム情報を送信する形態であってもかまわない。
さらに、診断制御部220は、ループバック部211、ループバック部212およびループバック部213のそれぞれと装置内の設定制御回線により接続されており、障害診断装置100からの指示に基づいて、各ループバック部を動作させる。
診断制御部220は、ループバック部にループバック指示を出してから所定時間をタイマー250で計時する。そして、診断制御部220は、所定時間が経過するとそのループバックを解除する。
なお、診断制御部220は、障害診断装置100からの指示に基づいて動作させた各ループバック部のループバック設定情報を記憶部260に保存する。記憶部260は不揮発性メモリで構成されており、電源が切断されても消去されないものとする。
続いて、図9を参照してループバック部の構成を詳細に説明する。
図9は、通信装置内のループバック部の構成を例示するブロック図である。なお、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。
図9で説明するループバック部は図8のループバック部211乃至213を代表するものとして、参照符号210を付している。
ループバック部210は、SW2101、SW2102、SW2103およびSW2104を含む。SWは切り替えスイッチであり、SWに入出力する装置回線を切り替える。なお、この装置回線は、ループバック部の設置位置に応じて、対向する通信装置と接続する通信回線でもあり得るが、便宜上、装置回線と称して説明する。
また、ループバック部210は、設定処理部2105を備える。設定処理部2105は、図8に示した診断制御部220と前述した装置内の設定制御回線で接続されている。設定処理部2105は、診断制御部220からの指示に基づいて、指定されたSWの切り替え設定およびその解除の設定制御信号を出力する。
例えば、SW2101とSW2103に切り替え設定の指示を出すことにより、AからB方向の装置回線が、AからD方向にループバック(折り返し)されるようになる。また、SW2102とSW2104に切り替え設定の指示を出すことにより、CからD方向の装置回線が、CからB方向に折り返されるようになる。なお、以降は「切り替え設定の指示」を「切替指示」と称して説明する。
また、図では信号を単に折り返すように示されているが、前述したように、クロック同期やアドレスを入れ換えるなどの信号折り返しに必要な処理も行われている。
図8に示したループバック部211乃至213のそれぞれが上述した折り返しにより果たす役割を説明する。
ループバック部211は、対向する通信装置と接続する有線通信回線と信号処理部230との間に設置されている。
図9のSW2101とSW2103に切替指示を出すことにより、図8のループバック部211に入力する有線通信回線が、ループバック部211から出力する有線通信回線側にループバックする制御が行われる。このような折り返しは、有線通信回線から入力する方向の回線障害の診断において、当該通信装置200の障害か、有線通信回線で対向する図示しない通信装置側での障害かを切り分ける際に実施される。有線通信回線で対向する図示しない通信装置側での障害には、当該通信装置200と接続している有線通信回線の障害も含まれる。
また、図9のSW2102とSW2104に切替指示を出すことにより、図8の信号処理部230からループバック部211に入力する装置回線が、ループバック部211から信号処理部230に出力する装置回線側にループバックする制御が行われる。このような折り返しは、無線通信回線から入力して有線通信回線に出力する方向の回線障害の診断において、無線送受信処理部240までの機器に障害が推定できず、信号処理部230での障害の有無推定を行う場合に実施される。
ループバック部212は、信号処理部230と無線送受信処理部240との間に設置されている。
図9のSW2101とSW2103に切替指示を出すことにより、図8のループバック部212に信号処理部230から入力する装置回線が、ループバック部212から信号処理部230に出力する装置回線側にループバックする制御が行われる。このような折り返しは、有線通信回線から入力して無線通信回線に出力する方向の回線障害の診断において、図示しない対向装置側や有線通信回線のケーブルでの障害が推定できず、信号処理部230での障害の有無推定を行う場合に実施される。
また、図9のSW2102とSW2104に切替指示を出すことにより、図8の無線送受信処理部240からループバック部212に入力する装置回線が、ループバック部212から無線送受信処理部240に出力する装置回線側にループバックする制御が行われる。このような折り返しは、無線通信回線から入力して有線通信回線に出力する方向の回線障害の診断において、無線通信回線で対向する図示しない通信装置側での障害が推定できず、無線送受信処理部240での障害の有無推定を行う場合に実施される。
そして、ループバック部213は、無線送受信処理部240と、対向する通信装置と接続する無線通信回線の間に設置されている。
なお、図8では、ループバック部213が無線送受信処理部240と無線通信回線との間に設置されているように示されているが、当該ループバック部213は図示しない無線送受信装置に具備されているものとする。つまり、無線送受信装置内のIF(Intermediate Frequency)信号をループバックさせるものとする。
図9のSW2101とSW2103に切替指示を出すことにより、図8のループバック部213に無線送受信処理部240から入力する装置回線が、ループバック部213から無線送受信処理部240に出力する装置回線側にループバックする制御が行われる。このような折り返しは、無線通信回線に出力する方向の回線障害の診断において、信号処理部230での障害が推定できず、無線送受信処理部240での障害の有無推定を行う場合に実施される。
また、図9のSW2102とSW2104に切替指示を出すことにより、図8のループバック部213に入力する無線通信回線が、ループバック部213から出力する無線通信回線側にループバックする制御が行われる。このような折り返しは、無線通信回線から入力する方向の回線障害の診断において、無線信号の伝搬環境における無線通信回線の劣化の有無推定を行う場合に実施される。
以上のように、所定のループバック部に対し、所定のループバック方向を切り替え、その際にアラームが消滅するか、アラームが継続するか、それとも別のアラームが発生するかを判定することで障害箇所の機器を推定する。この制御は、前述した障害探索手順リストの診断手順に基づいて実行される。
図10は、本発明の第2の実施形態の障害診断システムの関連装置間での動作を例示するシーケンス図である。また、図11は、図10のシーケンス図の続きの動作を示すシーケンス図である。
図10と図11を参照して、図4に示した障害診断システム2における障害診断の一連の動作を説明する。なお、図10および図11は、障害診断装置100が通信装置200と通信装置201を対象として障害診断を行う場合の動作を例示したものである。
障害診断装置100は、監視対象とする通信装置200と通信装置201からのアラームを収集している。このアラーム収集は、各通信装置が自発的にアラームの発生を報告する形態であっても良いし、障害診断装置100からのポーリングに基づいて発生しているアラームを報告する形態であっても良い。図10、図11の例では、障害診断装置100からのポーリング(リクエスト)に基づいて、各通信装置がそのときのアラーム発生の有無とアラームの内容を報告(レスポンス)する形態としている(S211)。
なお、図10と図11の説明においては、ポーリングや特定の通信装置に障害情報の報告を指示するリクエストおよびループバック試験指示を前述のループバック指示情報としている。また、レスポンスやループバック試験指示応答が前述の障害情報に相当する。
各通信装置からの障害情報を収集した際に、通信装置200での信号回線に関するアラーム発生を検出したとする(S212)。
障害診断装置100は、通知されたアラームの内容を確認し、信号回線に関するアラームであること、通信装置200から通知されたことに基づいて前述したように障害探索手順リストを取得する。そして、取得した障害探索手順リストの診断手順の指示に基づいて以降の処理を行う。
ここでは、アラームを通知した通信装置200とその対向局である通信装置201に対して、順次ループバック試験を行うものとする。
まず、通信装置200の対向局である通信装置201に対してループバック試験を行う(S213)。
通信装置201に送信されるループバック試験指示には、試験対象とする通信装置201の識別情報(宛先識別情報)、ループバックさせるループバック部とループバック方向の指定情報およびループバックさせている時間を指定するタイマー値を含む。この場合、図8に示した無線通信回線と対向しているループバック部213を、無線通信回線方向にループバックさせる指示が出される。
当該指示を受けた通信装置201の診断制御部220は、指定されたループバック部213に対してループバック方向を指示する設定制御情報を送信する。設定制御情報を受信したループバック部213の設定処理部2105(図9参照)は、設定制御情報に基づいて、無線通信回線方向にループバックするようにループバック部内の各SWを動作させる。これにより、通信装置201のループバック部213が無線通信回線を介して通信装置200と向き合う方向に折り返される。
指示されたループバック部のループバックを実施すると、通信装置201の診断制御部220は、ループバック試験指示応答を障害診断装置100に返送する。
また、このとき、診断制御部220は、指示されたタイマー値をタイマー250に設定する。タイマー250は、タイマー値の計時が満了するとその旨を診断制御部220に報告する。診断制御部220は、タイマー値の計時満了の報告を受けると、ループバック部213のループバックを解除する設定制御情報をループバック部213の設定処理部2105に送信してループバックを解除させる。
なお、図7を参照して説明した障害診断装置100の動作において、ループバック試験指示応答については言及していないが、障害診断装置100はループバック試験指示応答から所定のタイミングの後に、ループバックが解除されることを認識する。
障害診断装置100は、通信装置201に対するループバック試験指示を出した後、アラーム収集のために通信装置200に対してアラーム報告をさせる(S214)。
このとき、ステップS214では、ループバック直後とループバック解除後の2回のアラーム報告指示が通信装置200に対して出されるものとする。
障害診断装置100は、ステップS213のループバック試験後の、ステップS214によるアラーム収集で報告を受けたアラームの変化状態を確認する(S215)。
このとき、ループバックの実施でアラームが解消し、ループバックが解除されたときに再度アラームが発生する場合は、信号回線をループバックしている箇所の外側にある通信装置201の信号回線や機器に障害が内在していると推定できる。
この段階で障害箇所の推定ができる場合、障害診断装置100は障害箇所推定情報を出力する(不図示)。
一方、ループバックを実施してもアラームが継続して障害箇所の推定がまだできない場合、障害診断装置100は、ループバック解除後の通信装置201に対して別のループバック部を指定して、再度のループバック試験を行う(S216)。
このときは、図8に示した無線送受信処理部240と信号処理部230の間に設けられているループバック部212を、無線送受信処理部240の方向にループバックさせる指示が出される。当該指示を受けた通信装置201の診断制御部220は、前述したと同様の処理を実行して、指定されたループバック部212を通信装置200の方向に折り返すように設定する。
障害診断装置100は、通信装置201に対するループバック試験指示を出した後、通信装置200に対してアラーム報告をさせる(S217)。
このとき、ステップS217では、ステップS214と同様にループバック直後とループバック解除後の2回のアラーム報告指示が通信装置200に対して出されるものとする。
ステップS216のループバック試験後の、ステップS217によるアラーム収集で報告を受けたアラームの変化状態を確認する(S218)。
このときアラームが解消し、ループバック解除で再度アラームが発生する場合は、信号回線をループバックしている箇所の外側で、かつ前回の試験では問題のなかった箇所を除いた通信装置201の信号回線や機器に障害が内在していると推定できる。
この段階で障害箇所の推定ができる場合、障害診断装置100は障害箇所推定情報を出力する(不図示)。
一方、アラームが継続して障害箇所の推定がまだできない場合、障害診断装置100は、ループバック解除後の通信装置201に対して、通信装置200から見てより外側の別のループバック部を指定して上記と同様に再度のループバック試験を行う(不図示)。
通信装置201のループバック部に対するループバック試験で障害箇所が推定できない場合、障害診断装置100は、通信装置201に対するループバック試験を終了して、通信装置200に対してループバック試験を行う。
以降の説明は、図11を参照する。
通信装置200に対するループバック試験も上述したループバック試験と同様に行われる。
障害診断装置100は、通信装置200に対してループバック試験を行う(S219)。このとき、図8に示すループバック部213が通信装置200の内側(無線送受信処理部側)に折り返すようにループバック指示が出される。
障害診断装置100は、通信装置200に対するループバック試験指示を出した後、通信装置200に対してアラーム報告をさせる(S220)。
このとき、ステップS220でもループバック直後とループバック解除後の2回のアラーム報告指示が通信装置200に対して出されるものとする。
ステップS219のループバック試験後の、ステップS220によるアラーム収集で報告を受けたアラームの変化状態を確認する(S221)。
このとき、ループバックの実施でアラームが解消し、ループバックが解除されたときに再度アラームが発生する場合は、信号回線をループバックしている箇所の外側の信号回線に障害が内在していると推定できる。
この段階で障害箇所の推定ができる場合、障害診断装置100は障害箇所推定情報を出力する(不図示)。
一方、アラームが継続して障害箇所の推定がまだできない場合、障害診断装置100は、ループバック解除後の通信装置200に対して別の箇所のループバック試験を行い、上記と同様の障害箇所の推定を行う(S222、S223、S224)。
障害箇所の推定ができない場合は、通信装置200に具備されている残りのループバック部をループバックさせてアラームの変化状態を確認する。
通信装置200に具備されている全てのループバック部に対するループバック試験を行っても障害箇所の推定ができる状態にならない場合は、通信装置200と通信装置201の2台で組まれる無線システムには問題がないと推定する。そして、これらの通信装置の外側に接続されている装置や回線に問題があるとの推定情報を出力する。
障害診断装置100は、実施した一連のループバック試験に関する診断結果情報を出力し、保存する(S225)。当該診断結果情報には、発生したアラーム種別、対象とした通信装置の識別情報、実施日時、ループバック試験を実施したループバック部とループバック方向、ループバック後のアラームの変化状態、障害箇所の推定情報等を含む。
出力された上記の診断結果情報は保守者に通知される。
診断結果情報の通知を受けた保守者は、通知された情報を確認して、障害が推定される機器の設定等に誤りがあれば、再設定や再調整を実施する。また、設定情報に問題がなければ回路やケーブル等のハードウェア的な故障として修理や新たなカードやケーブルとの交換を実施する。このように保守者は障害箇所の推定情報を事前に取得することができるので、現場に赴いてから問題箇所の切り分けを行うという作業がなくなる。そのため、障害復旧作業の効率化と回線断時間の短縮が実現でき、システムの保守および信頼性を向上することができる。
また、蓄積された診断結果情報と、保守者が実施してフィードバックした障害復旧作業情報を用いて、障害探索手順リストをより精度の高い診断手順として改版することができる。そのため、障害探索手順リストを用いた障害探索の精度を更に向上することができる。
このように、本実施形態は、監視対象とする通信装置のアラームの内容に応じてその障害の発生個所を推定する診断手順が予め記述されている障害探索手順リストを用いた自動的な診断試験が行われる。障害探索手順リストには、順次実行すべき診断手順とその結果に基づくアラームの変化状態に応じて推定できる障害箇所が示されている。そして、診断手順には、ループバックさせる箇所とループバック方向、当該ループバックの結果に基づく次に実行すべき診断手順や推定できる障害箇所等が示されている。さらに、診断手順には、アラーム報告した通信装置のみならず、その通信装置と対向して接続されている通信装置も含めたループバック試験について記述されている。
そのため、本実施形態では、通信システム全体を考慮した障害診断、障害が発生した通信装置の判別および障害が疑われる機器の推定を行うことができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、山間のダムや島嶼等に設置された無人の無線中継局を連ねた無線中継ネットワークでの適用を想定する。本実施形態では、通信装置である無人無線中継局がデジタル無線回線で直列に接続され、障害診断装置が各無人無線中継局を監視する構成環境を想定する。
なお、無線中継局を以降の説明では通信装置と称して説明する。
図12は、本発明の第3の実施形態の障害診断システムの構成を例示するブロック図である。
第3の実施形態の障害診断システム3は、障害診断装置100、障害探索手順データベース110、およびそれぞれが無線中継局である複数の通信装置300、301、302、303を含む構成になっている。
第3の実施形態の障害診断システム3における障害診断装置100および障害探索手順データベース110は、図4を参照して説明した第2の実施形態の障害診断システム2の障害診断装置および障害探索手順データベースと同じである。そのため、同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施形態の障害診断システム2では、障害診断装置100は全ての通信装置と監視制御回線で接続されていた。それに対し、第3の実施形態の障害診断システム3では、障害診断装置100は1台の通信装置と監視制御回線で接続されており、他の通信装置は、それぞれの通信装置を接続する通信回線を監視制御回線として用いる構成となっている。
図12では、通信装置300が監視制御回線により障害診断装置100と接続されている。そして、通信装置300はデジタル無線回線で通信装置301と接続されている。通信装置301は有線通信回線で通信装置302に接続され、通信装置302はデジタル無線回線で通信装置303と接続されている。なお、通信装置301と通信装置302がデジタル無線回線で接続される構成になっていてもかまわない。
このように、第3の実施形態の障害診断システム3は無線中継局である複数の通信装置がデジタル無線回線を通信回線に用いて順次直列に接続された一連の無線中継ネットワークの構成となっている。そして、この通信回線で直列に接続された複数の通信装置の端部に位置する通信装置300のみが障害診断装置100と監視制御回線で接続されている。
そのため、障害診断装置100と各通信装置との間で送受信される指示や応答の信号は、通信装置間を接続する通信回線を通じてやり取りされる。例えば、障害診断装置100から通信装置300に送信されるループバック指示情報には、通信装置を特定する宛先識別情報が付されている。各通信装置では、そのループバック指示情報に付された宛先識別情報を判別し、自装置宛でなければ次の通信装置に順送りする。自装置宛のループバック指示情報であればそれを取り込み、ループバック指示情報に従った制御を行う。
また、各通信装置から障害診断装置100に向かう障害情報であるアラームや各種の指示/応答信号も通信回線をとおして転送される。
そのため、第3の実施形態の障害診断システム3における各通信装置は、上記を実現するための構成を含む。
図13は、本発明の第3の実施形態の通信装置の構成を例示するブロック図である。
第3の実施形態の通信装置300は、試験指示処理部320を含むことで、図8に示した第2の実施形態の通信装置200と異なる。また、この試験指示処理部320に対する制御を行う点で、診断制御部310の構成も異なる。更に、アラームや各種の指示/応答信号を通信回線や通信装置内を介して送受信するため、ループバック部311乃至ループバック部313の構成も異なる。その他の構成については第2の実施形態の通信装置200で説明した構成と同じなので、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態では、アラームや各種の指示/応答信号は、所定のチャンネルを用いて通信回線や通信装置内を介して障害診断装置100と各通信装置の間で送受信される。そのため、ループバック部311乃至ループバック部313では、ループバックに際しても、アラームや各種の指示/応答信号を載せるこの所定のチャンネルの折り返しは行わないように構成されている。
試験指示処理部320には、前位の通信装置から通信回線に載せて送られてくるループバック指示情報を抜き取る抜去回路と、そのループバック指示情報を後位の通信装置に向かう通信回線に載せる挿入回路を含む。
図14は、通信装置内の試験指示処理部320の構成を例示するブロック図である。なお、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。
試験指示処理部320は、抜去回路321、抜去回路323、挿入回路322、挿入回路324および指示情報処理部325を含む構成になっている。
抜去回路321は、図14のAからBに向かう方向の装置回線上を流れるループバック指示情報を抜き取り、指示情報処理部325に送る。
指示情報処理部325は、そのループバック指示情報に含まれる宛先識別情報が自局宛かどうかを判別する。その結果、自局宛であった場合は、装置内の指示制御回線を用いて、診断制御部310に送る。そして、診断制御部310は、第2の実施形態で説明したように、ループバック指示情報に基づいたループバック制御を行う。
一方、ループバック指示情報に含まれる宛先識別情報が自局宛ではないと判別すると、指示情報処理部325は、抜き取ったループバック指示情報を挿入回路322からAからBに向かう方向の装置回線に挿入して、後位の通信装置に送る。
抜去回路323と挿入回路324は、CからDに向かう方向の装置回線上を流れる障害診断に関わるループバック指示情報に対して、上記と同様に抜き取りと挿入を行う回路である。
また、障害診断装置100に向かう障害情報であるアラームや各種の応答信号も上記と同様に各通信装置を中継して順送りされる。
図12乃至図14を参照して、第3の実施形態の障害診断システム3におけるアラーム収集やループバック試験指示等のループバック指示情報の流れを説明する。
図12を参照すると、障害診断装置100は、制御対象とする通信装置を識別する宛先識別情報を付したループバック指示情報を、監視制御回線で接続されている通信装置300に送る。
通信装置300では、図13に示す診断制御部310がそのループバック指示情報を受信する。通信装置300の診断制御部310は、ループバック指示情報に付された宛先識別情報が自局宛かどうかを判別する。その結果、自局宛であった場合、第2の実施形態で説明したように、ループバック指示情報に基づいたループバック制御を行う。
一方、通信装置300の診断制御部310は、ループバック指示情報に含まれる宛先識別情報が自局宛ではないと判別すると、装置内の指示制御回線を用いて、そのループバック指示情報を試験指示処理部320に送り、後位の通信装置301に送り出すように動作する。
通信装置300の診断制御部310から試験指示処理部320に送られたループバック指示情報は、図14に示す指示情報処理部325で受信される。そして、そのループバック指示情報は、挿入回路322においてBに向かう方向の装置回線に挿入され、後位の通信装置301に送られる。
通信装置301では、通信回線上を流れてきたループバック指示情報が、図13の信号処理部230を経て試験指示処理部320に入力する。通信装置301の試験指示処理部320に入力したループバック指示情報は、図14の抜去回路321により抜き取られて指示情報処理部325に送られる。
前記同様に、指示情報処理部325は、ループバック指示情報に含まれる宛先識別情報が自局宛であった場合は、装置内の指示制御回線を用いて、図13の診断制御部310に送る。そして、診断制御部310は、ループバック指示情報に基づいた通信装置301でのループバック制御等を行う。
一方、ループバック指示情報に含まれる宛先識別情報が自局宛ではない場合、指示情報処理部325は、抜き取ったループバック指示情報を挿入回路322においてBに向かう方向の装置回線に挿入して、後位の通信装置302に送る。
通信装置302においても同様の制御が行われ、ループバック指示情報に含まれる宛先識別情報が自局宛ではない場合には、ループバック指示情報を後位の通信装置303に送る。
このように、宛先識別情報で指定された通信装置に到達するまでループバック指示情報は通信回線上を流れ続け、指定された通信装置に到達すると、その通信装置においてループバック指示情報に基づいたループバック制御等が行われる。
なお、本実施形態では、通信回線や通信装置内の回線部に障害が発生した場合、当該通信装置からは障害アラームを障害診断装置100に伝達することができない。しかし、このような場合であっても、前位の通信装置の受信部においてエラー多発や無信号のような受信異常を検出して、前位の通信装置からそのアラームを障害診断装置100に報告することができる。
例えば、図12に示す通信装置302と通信装置303の間の無線回線や通信装置303においてそのような障害が発生した場合、通信装置302は受信部において通信装置303からの受信異常を検出する。そして、通信装置302は、そのアラームを通信装置301および通信装置300を介して障害診断装置100に報告する。
この場合、診断を実行する障害診断装置100は、第2の実施形態の図10を参照して説明したように、通信装置302の後位局である通信装置303に対してループバック試験指示(S213参照)を出す。しかし、本実施形態では、このループバック試験指示は通信装置302で止まってしまい、通信装置303に伝達されない。つまり、障害診断装置100は、ループバック試験指示に対するループバック試験指示応答を受信することができない。そのため、本実施形態の障害探索手順リストには、ループバック試験指示に対するループバック試験指示応答が所定時間経過しても受信できない場合は、通信装置302と通信装置303を接続する通信回線以降の障害を推定するという診断手順が作られている。
このように、本実施形態では、障害診断装置と接続する監視制御回線を制御対象とする全ての通信装置との間に敷設できないような環境であっても、第2の実施形態で説明したような障害診断を行うことができる。そのため、山間のダムや島嶼等に設置された無人の無線中継局のように、アクセスが不便な場所に設置された通信装置の障害復旧作業においても、その効率化と回線断時間の短縮が実現でき、システムの保守および信頼性を向上することができる。
以上に説明したように、本実施形態においても第2の実施形態と同様に、通信システム全体を考慮した障害診断、障害が発生した通信装置の判別および障害が疑われる機器の推定を行うことができる。
なお、上記の第2の実施形態や第3の実施形態では通信装置を無線通信装置と想定して説明したが、本発明はこれらに限られることはなく有線通信回線で接続される有線通信装置で構成される通信システムにも適用することができる。