以下、本発明のウエハ搬送装置を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。実施形態において、部品供給装置の一種としてウエハを供給するウエハ供給装置に、ウエハ搬送装置が適用された構成を例示する。部品供給装置は、回路基板に電子部品を実装する部品実装機の要求に応じて、部品実装機が所定の電子部品をピックアップ可能に供給する。
<実施形態>(部品実装機1の全体構成)部品実装機1の構成について、図1および図3を参照して説明する。部品実装機1は、図1に示すように、基板搬送装置2と、部品供給装置3と、部品移載装置4とを備える。以下の説明において、部品実装機1の水平幅方向(図1の左上から右下に向かう方向)をX軸方向とし、部品実装機1の水平長手方向(図1の右上から左下に向かう方向)をY軸方向とし、X軸およびY軸に垂直な鉛直方向(図1の上下方向)をZ軸方向とする。
基板搬送装置2は、ベルトコンベアなどにより構成され、回路基板Bdを搬送方向(X軸方向)へと順次搬送する。基板搬送装置2は、部品実装機1の機内における所定の位置に回路基板Bdを位置決めする。そして、基板搬送装置2は、部品実装機1による実装処理が実行された後に、回路基板Bdを部品実装機1の機外に搬出する。
部品供給装置3は、回路基板Bdに装着される電子部品を供給する。本実施形態において、上記の電子部品には、キャリアテープに所定ピッチで収容された電子部品と、ウエハ90を部品単位でカットしたチップ91とが含まれる。キャリアテープは、部品供給装置3の複数のスロットに着脱可能にセットされたフィーダにより送り移動される。これにより、部品供給装置3は、フィーダの先端側の取出し部において電子部品を供給する。また、部品実装機1は、部品供給装置3の一種としてウエハ90のチップ91を供給するウエハ供給装置20を備える。ウエハ供給装置20の詳細構成については後述する。
ここで、上記のウエハ90は、図3に示すように、複数のチップ91と、粘着シート92と、リングフレーム93と、バーコード94(本発明の「識別コード」に相当する)とを有する。複数のチップ91は、例えばウエハ本体において格子状に多数形成され、粘着シート92に貼着された状態でレーザーカッタなどにより部品単位にカットされて形成される。
リングフレーム93は、環状に形成されたプレート部材である。リングフレーム93は、放射方向に拡大された状態の粘着シート92を保持する。これにより、複数のチップ91は、リングフレーム93の開口部において互いに分離した状態となる。このような構成により、ウエハ90は、全体形状としてはプレート状からなり、外枠として機能するリングフレーム93により全体形状が保持されている。
また、ウエハ90の周縁部(本実施形態においては、リングフレーム93)には、当該ウエハ90の特定に用いられる識別コードが付される。識別コードとしては、バーコードや二次元コード、文字列、模様、色彩またはこれらの結合体の何れでも採用し得る。本実施形態において、識別コードは、図3に示すように、線幅および線同士の間隔が異なる複数の棒線を平行に配置して構成されるバーコード94を採用する。
部品移載装置4は、X軸方向およびY軸方向に移動可能に構成される。部品移載装置4は、部品実装機1の長手方向の後部側(図1の右上側)から前部側の部品供給装置3の上方にかけて配置されている。部品移載装置4は、ヘッド駆動装置11および実装ヘッド12を備える。ヘッド駆動装置11は、直動機構により移動台をXY軸方向に移動可能に構成されている。実装ヘッド12は、ヘッド駆動装置11の移動台に着脱可能に設けられている。
また、実装ヘッド12には、複数の吸着ノズル13が着脱可能に設けられる。実装ヘッド12は、Z軸と平行なR軸回りに回転可能に、且つ昇降可能に各吸着ノズル13を支持する。各吸着ノズル13は、実装ヘッド12に対する昇降位置や角度、負圧の供給状態を制御される。各吸着ノズル13は、負圧を供給されることにより、フィーダの取出し部において供給される電子部品、およびウエハ供給装置20により供給されたウエハ90のチップ91を吸着して保持する。
(ウエハ供給装置20の詳細構成)ウエハ供給装置20は、図2および図5に示すように、記憶装置21と、マガジン30と、ウエハ搬送装置40と、突き上げ装置80とを備える。記憶装置21は、マガジン30の各スロットにどのウエハ90が収容されているかが記録されたマガジン用の設定ファイルなどを記憶する。
マガジン30は、ハウジング31と、ウエハストッカ32と、ストッカ昇降装置33とを備える。ハウジング31は、直方体状に形成される。ハウジング31は、外周面のうち部品移載装置4が電子部品をピックアップする部品供給位置Psに面する部位に、ウエハ90を搬入および搬出可能なスリット31aが形成される。
ウエハストッカ32は、ハウジング31の内部に昇降可能に設けられる。ウエハストッカ32は、複数のウエハ90を積層させた状態で収容する。より詳細には、ウエハストッカ32は、Z軸方向に等間隔に配置された複数のスロットが形成されており、各スロットにウエハ90がY軸方向に摺動可能に収容される。
ストッカ昇降装置33は、ハウジング31の内部においてウエハストッカ32を昇降可能に配置される。ストッカ昇降装置33は、ハウジング31に対して昇降可能に設けられたウエハストッカ32を支持する。ストッカ昇降装置33は、例えばモータとボールねじ機構により構成され、ハウジング31に対してウエハストッカ32を所定の上下方向位置に昇降させる。
このような構成により、マガジン30は、制御指令に基づいてウエハストッカ32を昇降させ、所定のウエハ90をハウジング31のスリット31aから搬出可能とする。同様に、マガジン30は、ウエハストッカ32の空きスロットをハウジング31のスリット31aに対応する上下方向位置に位置決めすることにより、当該空きスロットにウエハ90を搬入可能とする。
ウエハ搬送装置40は、マガジン30から所定のウエハ90を取り出して搬送する。ウエハ搬送装置40は、図2、図3、および図5に示すように、クランプ部41と、アーム42と、ウエハテーブル43と、駆動装置50と、識別装置60と、制御装置70とを備える。クランプ部41は、ウエハストッカ32に収容された複数のウエハ90のうち、ハウジング31のスリット31aに対応する上下方向位置にあるウエハ90の前側周縁部93aを把持可能に構成される。クランプ部41の詳細構成については後述する。
アーム42の基端部は、駆動装置50に固定される。アーム42の先端部は、クランプ部41を支持する。ウエハテーブル43は、部品移載装置4が電子部品(チップ91)をピックアップ可能な部品供給位置Psに配置される。ウエハテーブル43は、上方に搬送されたウエハ90のリングフレーム93を保持可能に構成される。
駆動装置50は、アーム42を介してクランプ部41を搬送方向(図2の左右方向)に移動させるローダである。また、駆動装置50は、クランプ部41に設けられたアクチュエータ(図示しない)を作動させて、クランプ部41の把持状態と開放状態を切り換える。駆動装置50は、スライド本体51と、ガイドレール52と、無端ベルト53と、サーボモータ54とを有する。
駆動装置50のスライド本体51は、アーム42の基端部を支持する。スライド本体51は、Y軸方向に延びるガイドレール52によって、搬送方向に沿って移動可能に案内される。また、スライド本体51は、無端ベルト53の一部に固定される。無端ベルト53は、一対のプーリ(図示しない)に懸架され、一方のプーリの回転軸に連結されたサーボモータ54の駆動により回転する。
このような構成により、駆動装置50は、制御指令に基づいてサーボモータ54を駆動させて、無端ベルト53、スライド本体51、およびアーム42を介してクランプ部41を搬送方向に往復移動させる。駆動装置50は、上記の搬送動作に加えて、クランプ部41の把持状態と開放状態を切り換える把持動作を同期させて、マガジン30から引き出したウエハ90をウエハテーブル43まで搬出し、またウエハテーブル43からマガジン30にウエハ90を搬入する。
識別装置60は、マガジン30から少なくとも一部が取り出された状態にあるウエハ90を対象として、当該ウエハ90のバーコード94で反射された反射光を受光することによりバーコード94を識別して、バーコード94に含まれる識別情報を読み取る。識別装置60は、図2に示すように、ハウジング31の外周面のうちスリット31aが形成された外周面の上部に設けられる。
識別装置60は、バーコード94で反射された反射光を受光するセンサ部61を備える。このような構成により、識別装置60は、図3に示すように、ハウジング31のスリット31aに隣接する識別領域Rsにおいて、バーコード94を識別可能としている。つまり、識別装置60は、マガジン30から一部が引き出された状態にあるウエハ90を対象として、当該ウエハ90に付されたバーコード94の識別情報を読み取る。
制御装置70は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置70は、インターフェース回路を介して駆動装置50および識別装置60と接続され、ウエハ搬送装置40によるウエハ90の搬送処理を制御する。制御装置70は、図5に示すように、搬送制御部71と、コード有無判定部72とを備える。搬送制御部71は、ウエハ供給装置20の制御指令に基づいて、ウエハ搬送装置40によるウエハ90の搬送処理を実行する。
具体的には、搬送制御部71は、駆動装置50の動作を制御して、クランプ部41によるウエハ90の把持および開放を切り換えるとともに、クランプ部41に把持されたウエハ90をマガジン30とウエハテーブル43との間で移動させる。また、搬送制御部71は、識別装置60の動作を制御して、マガジン30から引き出したウエハ90を特定し、このウエハ90と供給要求により指定されたウエハとを照合する。当該照合処理を含むウエハ搬送装置40による搬送処理の詳細については後述する。
コード有無判定部72は、クランプ部41が把持したウエハ90の周縁部にバーコード94が付されているか否かを判定する。より具体的には、識別装置60は、制御装置70による制御指令に基づいて、識別領域Rsに光を照射し、センサ部61により反射光を受光して識別を行う。コード有無判定部72は、この識別の結果に基づいて、識別情報が読み取られた場合にはバーコード94が付されていたものと判定し、それ以外の場合にはバーコード94が付されていなかったものと判定する。
突き上げ装置80は、図2に示すように、部品供給位置Psにおいて、ウエハ搬送装置40の下方の基台に設けられる。突き上げ装置80は、ピン昇降装置81と、ピン部材82とを備える。ピン昇降装置81は、XYロボットに支持され、部品供給位置PsにおいてX軸方向(図2の前後方向)およびY軸方向(図2の左右方向)に移動可能に設けられる。また、ピン昇降装置81は、Z軸方向に延びるピン部材82を支持する。
突き上げ装置80は、ウエハテーブル43に保持されたウエハ90における所定のXY位置にある部位を下方から突き上げる。ウエハ90のうち当該所定のXY位置にあるチップ91は、ピン部材82の突き上げによって粘着シート92から剥離される。そして、チップ91は、負圧を供給された状態にある吸着ノズル13によりピックアップされる。
このような構成からなるウエハ供給装置20は、制御指令に基づいてウエハ90の供給処理を実行する。ウエハ90の供給処理には、マガジン30によるウエハストッカ32の昇降処理、ウエハ搬送装置40によるウエハ90の搬送処理、突き上げ装置80による所定のチップ91の剥離処理などが含まれる。
(クランプ部41の詳細構成)クランプ部41は、図2に示すように、ウエハ90の周縁部(リングフレーム93)を上下方向から挟み込むことにより、ウエハ90を把持する。クランプ部41は、識別装置60により照射した光のうちウエハ90のバーコード94で反射した反射光を透過する材料により形成される。
つまり、クランプ部41は、識別装置60が識別のために可視光を照射する場合には、当該可視光を透過可能な透明の材料により形成される。透明の材料としてはアクリル樹脂やガラスなど種々のものが適用可能である。本実施形態においては、クランプ部41は、アクリル樹脂により形成される。このような構成により、クランプ部41は、ウエハ90のうちバーコード94が付された周縁部を把持した状態で識別装置60によるバーコード94の識別を可能とする。
また、図4に示すように、クランプ部41のうちウエハ90の周縁部と対向する把持面41aの面積Spは、バーコード94の面積Scよりも大きく設定される。これにより、ウエハ90のうちバーコード94が付された周縁部をクランプ部41が把持した場合に、バーコード94の全体がクランプ部41に覆われた状態となる。このような状態では、バーコード94で反射された反射光は、全てクランプ部41を透過する。
ここで、上記のようにバーコード94が透明のクランプ部41に把持されると、透過光により視認されるバーコード94の見かけの形状は、クランプ部41の形状や屈折率などに応じて歪む。そこで、クランプ部41は、図3に示すように、識別装置60がバーコード94を識別可能な領域(識別領域Rs)に対して、幅方向の中央に配置される。上記の「幅方向」は、ウエハ90の周縁部を含む平面(即ちリングフレーム93の上面)においてウエハ90の搬送方向に直交する方向(図3の左右方向)と定義される。以下では、識別装置60がバーコード94を走査する識別領域Rsにおける上記の幅方向を「走査幅方向」と称する。
このような構成により、バーコード94で反射された反射光のうちクランプ部41の走査幅方向の両端部を透過した反射光は、センサ部61までの光路長さが同程度となる。これにより、識別装置60がバーコード94を識別する際に、バーコード94の両端部では同程度の歪み量となり、その歪み量は、識別領域Rsに対してクランプ部41が走査幅方向に偏って配置された場合の最大歪み量と比較して小さくなる。
(ウエハ搬送装置40によるウエハの搬送処理)部品実装機1は、電子部品の実装処理の実行において、所定のチップ91の装着が必要となった場合に、部品供給装置3であるウエハ供給装置20に対して、対応するチップ91の供給を要求する。ウエハ供給装置20は、先ず、供給要求により指定されたウエハ90をマガジン30から部品供給位置Psまで搬送する。次に、ウエハ供給装置20は、突き上げ装置80により所定のチップ91を下方から突き上げて、当該チップ91をピックアップ可能な状態とする。
部品実装機1の部品移載装置4は、部品供給位置Psにおいて供給されたチップ91の座標位置に係る情報をウエハ供給装置20から入力し、当該情報に基づいて吸着ノズル13を移動させてチップ91を吸着する。このようなウエハ供給装置20によるウエハ90の供給処理において、ウエハ搬送装置40は、図6に示すように、ウエハ90の搬送処理を実行する。
ここで、ウエハ90のリングフレーム93は、ウエハ90の周縁部に相当する。また、ウエハ90の特定に用いられる識別情報を含む識別コード(バーコード94)は、ウエハ90の周縁部(リングフレーム93)のうち搬送方向(図3の上下方向)の前側周縁部93aまたは後側周縁部93bの少なくとも一方に付されるものとする。
ウエハ90の搬送処理において、先ず、搬送制御部71は、マガジン30のスリット31aに対応する上下方向位置に移動されたウエハ90を所定量だけ引き出す(ステップ11(以下、「ステップ」を「S」と表記する))。これにより、ウエハ90の前側周縁部93aは、クランプ部41に把持された状態で識別装置60の識別領域Rsの内部に収まるように位置決めされる(図3を参照)。このとき、クランプ部41は、上記のようにウエハ90がマガジン30から取り出された場合に、ウエハ90の前側周縁部93aを把持した状態を維持する。
次に、識別装置60は、ウエハ90に付されたバーコード94の識別処理を実行する(S12)。詳細には、識別装置60は、照明用のLEDにより光をバーコード94に対して照射する。照射された光は、クランプ部41を透過してバーコード94で反射され、再びクランプ部を透過する。識別装置60は、センサ部61により反射光を受光してバーコード94を走査する。
バーコード94の走査によりウエハ90のリングフレーム93にバーコード94が正常に付されている場合には、当該バーコード94は、識別装置60により識別されて、識別情報を読み取られる。続いて、コード有無判定部72は、クランプ部41が把持したウエハ90の前側周縁部93aにバーコード94が付されているか否かを、識別装置60による識別の結果に基づいて判定する(S13)。
コード有無判定部72は、識別処理(S12)において、バーコード94に含まれる識別情報が読み取られた場合には、ウエハ90の前側周縁部93aにバーコード94が付されていると判定する(S13:Yes)。一方で、コード有無判定部72は、識別処理(S12)において、識別情報が読み取られなかった場合には、ウエハ90の前側周縁部93aにバーコード94が付されていないと判定する(S13:No)。
搬送制御部71は、クランプ部41を搬送方向に移動させて、クランプ部41が把持しているウエハ90をさらに引き出す(S14)。これにより、ウエハ90の後側周縁部93bは、識別装置60の識別領域Rsの内部に収まるように位置決めされる。識別装置60は、後側周縁部93bに付されたバーコード94の識別処理を実行する(S15)。続いて、コード有無判定部72は、ウエハ90の後側周縁部93bにバーコード94が付されているか否かを、識別処理(S15)の結果に基づいて判定する(S16)。
後側周縁部93bに対する識別処理(S15)およびバーコード94の有無の判定(S16)は、前側周縁部93aに対する識別処理(S12)およびバーコード94の有無の判定(S13)と実質的に同一であるため、詳細な説明を省略する。ここで、後側周縁部93bにバーコード94が付されていないと判定された場合には(S16:No)、ウエハ90は、前側周縁部93aにも後側周縁部93bにもバーコード94が正常に付されていないなどの状態にある。
そのため、ウエハ搬送装置40は、エラー処理(S17)を実行して、搬送処理を終了する。上記のエラー処理(S17)としては、引き出したウエハ90と、供給要求により指定されたウエハとが一致するか否かが不明である旨をウエハ供給装置20に対して通知することが含まれる。当該通知を入力したウエハ供給装置20は、例えばウエハストッカ32に同種のウエハ90が収容されている場合には、当該ウエハ90で代替してもよい。また、ウエハ供給装置20は、他のウエハで代替できない場合には、指定のチップ91を供給できない旨を部品実装機1に通知する。
搬送制御部71は、ウエハ90の前側周縁部93aまたは後側周縁部93bの何れかに付されたバーコード94の識別処理(S12,S15)によって、識別情報を読み取れた場合には(S13:Yes,S16:Yes)、ウエハ90の照合処理を実行する(S21)。具体的には、搬送制御部71は、読み取りにより取得した識別情報に基づいて、マガジン30から引き出されたウエハ90と、ウエハ供給装置20が供給要求により指定されたウエハとを照合する。
続いて、マガジン30から引き出されたウエハ90が供給要求により指定されたウエハと相違する場合には(S22:No)、ウエハ搬送装置40は、エラー処理(S17)を実行して、搬送処理を終了する。上記のエラー処理(S17)としては、引き出したウエハ90と、供給要求により指定されたウエハとが不一致である旨をウエハ供給装置20に対して通知することが含まれる。当該通知を入力したウエハ供給装置20の動作については、バーコード94が付されていないと判定された場合(S16:No)におけるウエハ供給装置20の動作と同様である。
一方で、マガジン30から引き出されたウエハ90が供給要求により指定されたウエハと一致する場合には(S22:Yes)、搬送制御部71は、駆動装置50の動作を制御して、クランプ部41が把持しているウエハ90を部品供給位置Psまで搬送する(S23)。以上により、ウエハ搬送装置40は、ウエハ90の搬送処理を終了する。
(実施形態の構成による効果)本実施形態のウエハ搬送装置40は、複数のウエハ90を積層させた状態で収容するマガジン30から所定のウエハ90を取り出して搬送する。ウエハ90の周縁部には、当該ウエハ90の特定に用いられる識別情報を含む識別コード(バーコード94)が付される。ウエハ搬送装置40は、ウエハ90の周縁部を把持するクランプ部41と、クランプ部41をウエハ90の搬送方向に移動させる駆動装置50と、マガジン30から少なくとも一部が取り出された状態にあるウエハ90を対象として、当該ウエハ90の識別コードで反射された反射光を受光することにより当該識別コードを識別する識別装置60と、を備える。クランプ部41は、識別コードで反射された反射光を透過する材料により形成され、ウエハ90のうち識別コードが付された周縁部を把持した状態で識別装置60による識別コードの識別を可能とする。
このような構成によると、クランプ部41がウエハ90の周縁部に付されたバーコード94を覆うようにウエハ90を把持した場合に、当該クランプ部41をバーコード94で反射された反射光が透過する。よって、バーコード94がクランプ部41に覆われた状態において、クランプ部41を一旦開放して退避させることなく、識別装置60は、バーコード94を識別可能となる。
従って、ウエハ90の搬送処理において、マガジン30から引き出されたウエハ90が、供給要求により指定されたウエハ90か否かを判定する場合に(S21,S22)、クランプ部41による把持状態を維持して当該判定をすることができる。これにより、サイクルタイムの延長が抑制される。
また、クランプ部41のうちウエハ90の周縁部と対向する把持面41aの面積Spは、識別コード(バーコード94)の面積Scよりも大きく設定される(図4を参照)。ウエハ90のうち識別コードが付された周縁部をクランプ部41が把持した場合に、識別コードの全体がクランプ部41に覆われた状態とされる。
このような構成によると、クランプ部41がウエハ90を把持した状態において、バーコード94がクランプ部41の端部により区切られない。これにより、バーコード94で反射した反射光は、クランプ部41の屈折率に応じた光路でクランプ部41を透過する。よって、バーコード94の見かけの形状は、全体として歪みが抑制された状態で視認可能となる。従って、識別装置60によるバーコード94の識別精度が向上する。
また、クランプ部41は、識別装置60が識別コード(バーコード94)を識別可能な領域(識別領域Rs)に対して、ウエハ90の周縁部を含む平面においてウエハ90の搬送方向に直交する幅方向(本実施形態の走査幅方向)の中央に配置される。このような構成によると、走査幅方向において、バーコード94で反射した反射光がクランプ部41を透過することによるバーコード94の最大歪み量が小さくなる。これにより、バーコード94の識別精度が向上する。
また、識別コード(バーコード94)は、ウエハ90の前側周縁部93aのうち搬送方向の前側周縁部93aおよび搬送方向の後側周縁部93bの少なくとも一方に付される。クランプ部41は、ウエハ90がマガジン30から取り出される場合に当該ウエハ90の前側周縁部93aを把持する。ウエハ搬送装置40は、クランプ部41が把持した前側周縁部93aに識別コードが付されているか否かを、識別装置60による識別の結果に基づいて判定する判定部(コード有無判定部72)をさらに備える。識別装置60は、判定部により前側周縁部93aに識別コードが付されていないと判定された場合に、後側周縁部93bに付された識別コードを識別する。
このような構成によると、クランプ部41がウエハ90の前側周縁部93aを把持した状態でバーコード94の有無を判定することが可能となる(S13)。そして、前側周縁部93aにバーコード94が付されていない場合にのみ後側周縁部93bを識別領域Rsまで移動させるようにウエハ90を搬送するので、搬送処理におけるウエハ90の照合処理などの効率を向上できる。
また、クランプ部41の材料は、アクリル樹脂またはガラスである。このような構成によると、クランプ部41は、確実に可視光を透過させる。また、クランプ部41を安価に形成することが可能であり、製造コストを低減できる。また、均一な密度での形成が容易であり、歪みの小さなクランプ部41を形成することができる。
<実施形態の変形態様>(ウエハについて)実施形態において、ウエハ90は、複数のチップ91が貼着された粘着シート92を、リングフレーム93が保持して構成される。これに対して、ウエハは、マガジン30に積層された状態で複数収容されるものであれば、ウエハ搬送装置40の搬送対象となる。よって、ウエハは、例えば粘着シート92やリングフレーム93を有しない構成としてもよい。当該構成において、識別コードは、ウエハ本体の周縁部に付される。
また、実施形態において、ウエハ90に付される識別コードは、バーコード94を採用する。これに対して、識別コードとしては、二次元コード、文字列、模様、色彩またはこれらの結合体の何れでも採用し得る。例えば、二次元コードを採用する識別コードは、複数の単位セルをマトリックス形状に配列されて構成され、ウエハの特定に用いられる識別情報を含む。
(クランプ部について)実施形態において、クランプ部41の各部位における把持方向(図2の上下方向)の厚みは、走査幅方向の全域に亘って一定となるように設定される。これに対して、クランプ部41の各部位における把持方向の厚みは、各部位から識別装置60のセンサ部61までの距離に応じて設定される構成としてもよい。
具体的には、クランプ部41は、例えば、中央部から両端部側に向かうに従って、徐々に厚みが増すように設定される。このとき、クランプ部41の上面は、平面状または曲面状をなすように形成される。また、識別装置60のセンサ部61に対してクランプ部41が走査幅方向の中央に配置されていない場合には、クランプ部41は、例えば、センサ部61に近接する側の端部から他方側の端部に向かうに従って、徐々に厚みが増すように設定される。このような構成によると、例えば歪み量を補正するようにクランプ部41の把持方向の厚みが設定されることにより、視認される識別コードの歪み量が調整される。これにより、識別装置60は、好適に識別コードを識別可能となり、確実に識別情報を読み取ることができる。
また、実施形態において、ウエハ90の周縁部に相当するリングフレーム93は、例えば金属の材料により形成される。これに対して、ウエハ90は、上述したようにリングフレーム93を有しない構成、またはリングフレーム93が可撓性を有する硬度の低い材料(例えば樹脂材料)により形成される構成を採用し得る。このような場合には、ウエハ90の収容状態において、識別コードが付されるウエハ90の周縁部が撓んでいることがある。
そこで、以下のような構成を採用してもよい。即ち、クランプ部41の硬度は、ウエハ90の前側周縁部93aの硬度よりも高く設定される。さらに、クランプ部41の把持面41aは、平面状に形成される。このような構成によると、ウエハ90の周縁部は、クランプ部41に把持されることによって、平面状に伸ばされた状態となる。これにより、識別コードの歪みが小さくなり、識別装置60による識別コードの識別精度が向上する。
(制御装置70について)上述したように、識別コードとしては、例えば二次元コードなどを採用し得る。このような場合には、識別装置60は、識別コードを識別し識別情報を読み取る際に、画像処理を必要とする。そこで、このような識別コードがウエハ90に付される場合に、識別装置60は、図5に示すように、画像変換部65と、画像処理部66と、情報取得部67とを備える構成としてもよい。
画像変換部65は、識別コードで反射された反射光を画像に変換する。画像処理部66は、クランプ部41の形状および屈折率に基づいて予め設定されている補正値を用いて画像の歪みを補正する。情報取得部67は、補正後の画像に基づいて識別情報を読み取る。このような構成によると、画像処理部66は、クランプ部41の屈折率に応じて歪む識別コードについて補正処理を実行する。これにより、予め想定される歪み量を画像に反映させることができるので、識別装置60による識別コードの識別精度が向上する。
(その他)実施形態において、ウエハ搬送装置40は、部品実装機1の部品供給装置3の一種であるウエハ供給装置20に適用される。これに対して、ウエハ搬送装置は、複数のウエハを積層させた状態で収容するマガジンから所定のウエハを取り出して搬送し、当該搬送の途中で識別コードの識別を必要とする装置に適用することができる。
また、実施形態において、識別コードで反射されクランプ部41を透過する反射光は、可視光である。これに対して、反射光は、識別装置60のセンサ部61が受光可能であれば可視光以外の例えば赤外線としてもよい。このような構成において、クランプ部41は、実施形態と同様に、反射光を透過する材料により形成される。