以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、トナー母体粒子に加え、外添剤として、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bを含む;
シリカ粒子Aは、個数平均一次粒子径が80〜300nmであり、かつ炭素数が6〜8の直鎖アルキル基を表面に有する;
シリカ粒子Bは、個数平均一次粒子径が10〜50nmであり、かつ炭素数が8〜16の直鎖アルキル基を表面に有する。
本発明に係るトナーは、上記シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bを外添剤として含むことにより、高温高湿環境下であっても良好な初期帯電性を発揮することができ、帯電量の安定性に優れ、かつ、良好なクリーニング性を示す。
なぜ、本発明のトナーにより上記の効果が得られるのか、その発現機構や作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
すなわち、本発明のトナーは、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bの個数平均一次粒子径の関係、ならびにシリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bの表面にそれぞれ存在する直鎖アルキル基の炭素数の関係を適切な範囲とすることにより、上記効果が得られると推測される。以下、詳細に述べる。
シリカ粒子Aは、その個数平均一次粒子径が、80〜300nmであり、比較的大径の粒子である。かような大径のシリカ粒子は、外添処理を行う際、以下で説明する小径のシリカ粒子Bを解砕することができるため、シリカ粒子をトナー母体粒子に対して均一に付着させることができる。よって、帯電性の向上に寄与する。ここで、個数平均一次粒子径が80nmよりも小さいと、上記の解砕が十分にできなくなる。また、感光体表面に残留したトナーを除去するクリーニング部(クリーニングブレード)の先端において、シリカ粒子が擦り抜けてしまい、これにより感光体の減耗が促進され、クリーニング性が良好でなくなる。一方、個数平均一次粒子径が300nmよりも大きいと、トナー母体粒子に対してシリカ粒子が固定化しにくくなり、キャリアへの移行が促進され、帯電量の安定性が低下する。上記特許文献1では、小径の外添剤粒子と共に大径の外添剤粒子を使用することで、大径粒子のスペーサー効果によってクリーニング性の向上を図っている。しかしながら、トナー母体粒子に対する大径の外添剤粒子自体の付着力が弱いために、初期帯電性が低下する。これに対し、本発明では、以下で詳説するように、大径粒子であるシリカ粒子Aの表面に、炭素数6〜8の直鎖アルキル基を有しているため、適度な付着性が付与され、シリカ粒子Aがトナー母体粒子に付着しやすくなる。その結果、本発明に係るトナーは、初期帯電性および帯電量の安定性に優れる。
上記所定の個数平均一次粒子径を有するだけでなく、シリカ粒子Aは、その表面において、炭素数6〜8の直鎖アルキル基を有する。ここで、シリカ粒子表面に存在するアルキル基の炭素数は、シリカ粒子の疎水性および付着性に寄与する。炭素数6〜8のアルキル基を表面に有することにより、大径のシリカ粒子Aは、適度な疎水性および付着性を有する。炭素数が6よりも小さいと、疎水性が低くなり、高温高湿環境下において水分の影響を受けやすくなる。したがって、電荷保持能が低下し、十分な初期帯電性が得られない。一方、炭素数が8よりも大きいと、アルキル基の効果により疎水性は高まるものの、これと同時に、付着性が高くなり、シリカ粒子A同士の凝集が促進され、シリカ粒子Aが凝集体を形成しやすくなる。そして、クリーニング部(クリーニングブレード)の先端で形成された凝集体の付着性が高くなる結果、当該凝集体が貯留してしまい、感光体の減耗を促進してしまう。よって、本発明では、シリカ粒子Aの表面に炭素数6〜8の直鎖アルキル基を有することで、適度な付着性を付与することにより、シリカ粒子Aの帯電性を良好に保持すると共に、凝集を抑制し、クリーニング性の向上が図られる。
上記シリカ粒子Aに加え、本発明に係るトナーは、シリカ粒子Bを含む。シリカ粒子Bは、その個数平均一次粒子径が、10〜50nmであり、比較的小径の粒子である。かような小径のシリカ粒子は、表面抵抗が高いため、トナーに優れた帯電性を付与することができる。ここで、個数平均一次粒子径が10nmより小さいと、シリカ粒子A(大径粒子)によっても解砕することができず、シリカ粒子がトナー母体粒子の表面に均一に付着することが難しくなる。その結果、シリカ粒子のキャリアへの移行が促進され、帯電量の安定性が低下する。一方、個数平均一次粒子径が50nmよりも大きいと、小径シリカ粒子の高い帯電性が発現しにくく、高温高湿環境下における初期帯電性が低下する。
また、シリカ粒子Bは、その表面において、炭素数8〜16の直鎖アルキル基を有する。炭素数8〜16のアルキル基を表面に有することにより、小径のシリカ粒子Bは、適度な疎水性および付着性を有する。炭素数が8より小さい場合、十分な疎水性が得られず、高温高湿環境下における帯電性が低下する。一方、炭素数が16よりも大きいと、アルキル基に起因するシリカ粒子同士の付着性が高くなり、シリカ粒子の凝集が促進され、解砕が不十分な状態でトナー母体粒子に付着する。その結果、シリカ粒子がキャリアへ移行しやすくなり、帯電量の安定性が損なわれる。また、炭素数が16よりも大きいと、クリーニング部(クリーニングブレード)におけるせき止め層において、シリカ粒子が凝集体を形成する。そして、当該凝集体が貯留してしまう結果、感光体の表面に傷を付けてしい、クリーニング性が低下する。
そして、本発明では、上記大径のシリカ粒子Aと、小径のシリカ粒子Bとを併用することも特徴の一つである。これにより、帯電性に優れる小径のシリカ粒子Bを、大径のシリカ粒子Aで解砕することができ、各シリカ粒子をトナー母体粒子の表面に均一に付着させて、外添剤がキャリアへ移行することを効果的に抑制できる。その結果、高温高湿環境下であっても初期帯電量を十分に確保し、また、帯電量の安定性も確保される。加えて、トナー母体粒子の表面に各シリカ粒子が均一に付着しやすくなることで、凝集体の形成による感光体の減耗を抑制し、クリーニング性の向上が図られる。
なお、上記メカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
以下、本発明の静電潜像現像用トナーを詳細に説明する。なお、本発明に係るトナーは、上述したように「トナー母体粒子」を含有する。「トナー母体粒子」は、外添剤(シリカ粒子Aおよびシリカ粒子B)の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
[シリカ粒子Aおよびシリカ粒子B]
「シリカ粒子A」および「シリカ粒子B」は、トナー母体粒子の表面に付着し、トナーに帯電性を付与する外添剤として機能する。すなわち、本発明に係るトナーは、外添剤として、シリカ粒子Aと、シリカ粒子Bとの2種類のシリカ粒子を含有する。なお、以下では、「シリカ粒子A」および「シリカ粒子B」の両方を指す場合、単に「シリカ粒子」とも称することがある。
シリカ粒子Aは、その個数平均一次粒子径が80〜300nmである。また、シリカ粒子Bは、個数平均一次粒子径が10〜50nmである。なお、シリカ粒子の個数平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真を用いて算出することができるが、具体的には、実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
シリカ粒子Aの個数平均一次粒子径は、100〜250nmであると好ましく、120〜200nmであるとより好ましい。かような範囲であれば、トナー母体粒子へのシリカ粒子Aの付着を促進し、帯電量の安定性およびクリーニング性を向上させることができる。
また、シリカ粒子Bの個数平均一次粒子径は、15〜45nmであると好ましく、20〜40nmであるとより好ましい。かような範囲であれば、小径シリカ粒子の良好な帯電性を十分に得ることができ、また、トナー母体粒子表面において均一に付着しやすくすることで、高温高湿環境下における初期帯電量および帯電量の安定性を向上させることができる。
このように、本発明に係るトナーは、個数平均一次粒子径が異なる二種のシリカ粒子を含む。炭素数8〜16である直鎖アルキル基を有するシリカ粒子B(小径粒子)は、そのアルキル基の効果により、適度な疎水性が付与される。一方で、かようなアルキル基は、その付着性ゆえ、シリカ粒子B同士の凝集を促す方向に働くが、シリカ粒子B(小径粒子)が凝集体を形成しても、シリカ粒子A(大径粒子)により解砕されるため、均一な外添処理が施される。その結果、高温高湿環境下であっても良好な初期帯電性や帯電量の安定性を示し、かつ良好なクリーニング性を発揮するトナーが得られる。
ここで、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bの個数平均一次粒子径の差(絶対値)は、特に制限されないが、30〜280nmであると好ましく、50〜200nmであるとより好ましく、60〜150nmであると特に好ましい。かような範囲であれば、大径であるシリカ粒子Aにより、小径であるシリカ粒子Bの凝集体がより解砕しやすくなり、上記効果が得られやすくなる。
また、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bは、いずれも、その表面に直鎖アルキル基を有し、その炭素数は、それぞれ6〜8および8〜16である。なお、各シリカ粒子の表面に存在する直鎖アルキル基の炭素数は、固体核磁気共鳴装置(固体NMR)および熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)を組み合わせた方法により確認することができる。
シリカ粒子Aの直鎖アルキル基の炭素数は、6または7であると好ましく、6であるとより好ましい。かような値であれば、大径であるシリカ粒子Aにおいて、疎水性および適度な付着性が付与されることにより、良好な初期帯電量を確保することができる。また、付着性が適度に付与されるため、大径であるシリカ粒子Aのキャリアへの移行が抑制され、帯電量の安定性も良好になる。
シリカ粒子Bの直鎖アルキル基の炭素数は、8〜14であると好ましく、8〜12であるとより好ましく、8〜10であると特に好ましい。かような値であれば、小径であるシリカ粒子B同士の付着性が高くなりすぎず、シリカ粒子Aによって解砕されやすくなり、トナー母体粒子に対してシリカ粒子が均一に付着しやすくなる。その結果、帯電量の安定性が良好となる他、クリーニング性も良好になる。
また、本発明に係るトナーは、シリカ粒子Aが有する直鎖アルキル基と、シリカ粒子Bが有する直鎖アルキル基の炭素数とが異なる態様であると好ましい。かような態様とすることで、シリカ粒子Aとシリカ粒子Bとの親和性(付着性)が低減され、これらのシリカ粒子がより解砕されやすくなる。その結果、トナー母体粒子に各シリカ粒子がより均一な状態で付着しやすくなり、帯電量の安定性やクリーニング性が向上する。
シリカ粒子Aが有する直鎖アルキル基の炭素数と、シリカ粒子Bが有する直鎖アルキル基の炭素数との差(絶対値)は、特に制限されないが、2〜8であると好ましく、2〜6であるとより好ましい。かような範囲であれば、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bにおける直鎖アルキル基による効果(初期帯電性の向上等)も確保しつつ、帯電量の安定性やクリーニング性の向上効果も得られる。
なお、シリカ粒子Aの表面に導入された直鎖アルキル基が2種以上である場合、および/またはシリカ粒子Bの表面に導入された直鎖アルキル基が2種以上である場合には、上記炭素数の差は、それぞれのシリカ粒子におけるアルキル基の炭素数の最大値を基準とするものとする。
各シリカ粒子の表面に導入される直鎖のアルキル基は、上記炭素数を満たすものである限り特に制限されない。
シリカ粒子Aの表面に導入される直鎖のアルキル基は、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基およびn−オクチル基が挙げられる。これらのなかでも、n−ヘキシル基およびn−ヘプチル基が好ましく、n−ヘキシル基が特に好ましい。また、シリカ粒子Bの表面に導入される直鎖のアルキル基は、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基およびn−ヘキサデシル基が挙げられる。これらのなかでも、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基およびn−ドデシル基が好ましく、n−オクチル基、n−ノニル基およびn−デシル基が特に好ましい。
本発明に係る各シリカ粒子の表面に導入されているアルキル基は、上述のように、分岐のアルキル基ではなく、直鎖のアルキル基であることもまた、特徴の一つとする。分岐のアルキル基をシリカ粒子の表面に導入した場合、その立体障害により、アルキル基の導入量(表面処理の量)を多くすることができない。一方、本発明のように、直鎖のアルキル基をシリカ粒子の表面に導入する場合には、アルキル基の導入量(表面処理の量)を多くすることができ、疎水性や付着性の制御がしやすくなる。よって、帯電性の向上効果がより得られやすくなる。
また、シリカ粒子Aの平均円形度は、特に制限されないが、0.730〜0.980であると好ましく、0.750〜0.950であるとより好ましく、0.800〜0.930であると特に好ましい。平均円形度が0.730以上、より好ましくは0.750以上、特に好ましくは0.800以上であると、シリカ粒子Aの流動性が良好となり、外添処理時に混合性が向上するため、シリカ粒子Bを十分に解砕することができる。したがって、トナー母体粒子に対してより均一に各シリカ粒子が付着するため、帯電量の安定性やクリーニング性が向上する。また、平均円形度が0.980以下、より好ましくは0.950以下、特に好ましくは0.930以下であると、適度に球形が崩れるため、シリカ粒子Aがトナー母体粒子に固定化しやすくなる。したがって、キャリアへの移行を抑制することができ、帯電量の安定性を向上させることができる。なお、シリカ粒子の平均円形度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
上記の直鎖アルキル基を導入する前(すなわち、疎水化処理を行う前)のシリカ粒子(以下、「原料シリカ粒子」とも称する)としては、特に制限されないが、例えば、コロイダルシリカ、アルコキシシランの加水分解物(ゾルゲルシリカ)、沈殿シリカ等の湿式法で製造されたシリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ等の乾式法で製造されたシリカ等が用いられる。
上記各シリカ粒子は公知の方法により作製することができる。原料シリカ粒子を作製する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。すなわち、アルコキシシランを加水分解する方法(ゾルゲル法)、ケイ素塩化物を気化し、高温の水素炎中において気相反応によってシリカ粒子を合成する方法(気相法、ガス燃焼法)、微粉砕された珪石シリカと、金属シリコン粉末や炭素粉末などの還元剤と、スラリー状にするための水とからなる混合原料を、還元雰囲気下、高温で熱処理してSiOガスを発生させ、当該SiOガスを、酸素を含む雰囲気下で冷却する方法(溶融法)等が挙げられる。
これらのなかでも、シリカ粒子の形状(特に平均円形度)を制御しやすいという観点から、ゾルゲル法により作製されたシリカ粒子を用いると好ましい。したがって、以下、ゾルゲル法によるシリカ粒子の製造方法について説明する。
具体的には、まず、純水にテトラメトキシシラン(TMOS)を加えたTMOS加水分解液を調製する。次に、このTMOS加水分解液を、アルカリ触媒との混合液に所定の速度で添加する。その後、pHを調整しながらアルカリ触媒を適宜添加し、一定時間ごとにTMOS加水分解液を前記所定の速度で添加し、これを継続する。その後、加水分解および縮合を行うことにより、親水性の球状シリカ粒子(原料シリカ粒子)の混合媒体分散液を得ることができる。ここで、得られるシリカ粒子の粒径(個数平均一次粒子径)および平均円形度は、上記アルカリ触媒の添加量(TMOSに対する添加量)およびTMOS加水分解液の添加速度を変更することによって制御することができる。
上記ゾルゲル法において用いられるアルカリ触媒としては、特に制限されないが、アンモニア;尿素;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン等のモノアミン化合物;エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチルブチレンジアミン等のジアミン化合物;四級アンモニウム塩等が挙げられる。
シリカ粒子Aを製造するために用いられる原料シリカ粒子の個数平均一次粒子径は、80〜300nmであると好ましく、100〜250nmであるとより好ましく、120〜200nmであると特に好ましい。また、シリカ粒子Bを製造するために用いられる原料シリカ粒子の個数平均一次粒子径は、10〜50nmであると好ましく、15〜45nmであるとより好ましく、20〜40nmであると特に好ましい。なお、上記個数平均一次粒子径は、実施例に記載の方法により測定される値を採用する。
シリカ粒子Aを製造するために用いられる原料シリカ粒子の平均円形度は、特に制限されないが、0.730〜0.980であると好ましく、0.750〜0.950であるとより好ましく、0.800〜0.930であると特に好ましい。なお、上記平均円形度は、実施例に記載の方法により測定される値を採用する。
直鎖アルキル基を原料シリカ粒子の表面に導入する際には、原料シリカ粒子に対して、上記の直鎖アルキル基を有する疎水化処理剤を作用させる疎水化処理を行えばよい。たとえば、疎水化処理剤として上記直鎖アルキル基を有するアルコキシシラン化合物を用いると好ましい。かような場合、シリカ粒子の表面は、アルコキシシラン残基を介して化学結合しているアルキル基を有することになる。
好適な疎水化処理剤としては、上記直鎖アルキル基を有するものであれば特に制限されないが、以下の一般式(1)により表されるアルコキシシラン化合物が挙げられる。
上記一般式(1)中、R1は、直鎖アルキル基であり、R2は、炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基である。
原料シリカ粒子を疎水化処理してシリカ粒子Aを得る場合、上記一般式(1)において、R1は、炭素数6〜8の直鎖アルキル基である。初期帯電量や帯電量の安定性を向上させる目的から、R1の炭素数は、6または7であると好ましく、6であると特に好ましい。
また、原料シリカ粒子を疎水化処理してシリカ粒子Bを得る場合、上記一般式(1)において、R1は、炭素数8〜16の直鎖アルキル基である。初期帯電量や帯電量の安定性を向上させる目的から、R1の炭素数は、8〜14であると好ましく、8〜12であるとより好ましく、8〜10であると特に好ましい。
上記R2は、比較的立体障害が小さいという観点から、炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基である。R2の立体構造が小さいほど、原料シリカ粒子の表面処理が促進され、帯電性の向上効果がより得られやすくなる。立体障害が小さいという観点からは、R2は、水素原子であってもよいが、このとき、上記一般式(1)の「OR2」が水酸基となる。そうすると、疎水化処理剤としてのアルコキシシラン化合物と水との化学的親和性が高くなり、高温高湿環境下における帯電量のリーク点となってしまう。したがって、このようなリークを抑制するため、上記R2は、炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基であると好ましい。R2としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基およびi−プロピル基が挙げられるが、反応性の観点から、メチル基およびエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
疎水化処理剤として用いられるアルコキシシラン化合物の例としては、たとえば、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ノニルトリメトキシシラン、n−ノニルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ウンデシルトリメトキシシラン、n−ウンデシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、n−トリデシルトリメトキシシラン、n−トリデシルトリエトキシシラン、n−テトラデシルトリメトキシシラン、n−テトラデシルトリエトキシシラン、n−ペンタデシルトリメトキシシラン、n−ペンタデシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシランおよびn−ヘキサデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
上記疎水化処理剤を用いた原料シリカ粒子の疎水化処理方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、乾式法または湿式法を使用することができる。
乾式法においては、流動層反応器内で原料シリカ粒子と、上記一般式(1)で表される構造を有するアルコキシシラン化合物とを撹拌または混合すると好ましい。また、湿式法においては、以下の手順を行うことが好ましい。すなわち、原料シリカ粒子を溶剤中に分散させて原料シリカ粒子のスラリーを形成し、次いで、このスラリーに上記一般式(1)で表される構造を有するアルコキシシラン化合物を加えて、原料シリカ粒子の表面をアルコキシシラン化合物により変性(疎水化)させると好ましい。
このとき、原料シリカ粒子とアルコキシシラン化合物との混合物は、100〜200℃の範囲で0.5〜5時間加熱すると好ましい。このような加熱処理によって、原料シリカ粒子表面のシラノール基をアルコキシシラン化合物で効果的に修飾することができる。また、表面処理剤(表面修飾剤)であるアルコキシシラン化合物の量は、特に制限されないが、原料シリカ粒子100質量部に対して5〜30質量部であると好ましく、8〜20質量部であるとより好ましい。
以上の方法により、疎水化処理されたシリカ粒子が得られる。ここで、シリカ粒子は、シリカ粒子分散液として用いてもよいし、溶媒を除去してシリカ粒子の粉体として取り出して用いてもよい。
シリカ粒子分散液として用いる場合は、必要に応じて水やアルコールで希釈したり濃縮したりすることによりシリカ粒子の固形分濃度の調整を行ってもよい。また、シリカ粒子分散液は、その他のアルコール類、エステル類、ケトン類などの水溶性有機溶媒などに溶媒置換して用いてもよい。
一方、シリカ粒子を粉体として用いる場合、シリカ粒子分散液からの溶媒を除去する必要がある。この溶媒除去方法の例には、1)濾過、遠心分離、蒸留などにより溶媒を除去した後、真空乾燥機、棚段乾燥機などにより乾燥する方法;2)流動層乾燥機、スプレードライヤーなどによりスラリーを直接乾燥する方法などの公知の方法が含まれる。乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは200℃以下である。200℃以下であれば、シリカ粒子表面に残存するシラノール基の縮合による一次粒子同士の結合や粗大粒子の発生が抑えられる。
乾燥されたシリカ粒子からは、必要に応じて解砕、篩分により、粗大粒子や凝集物が除去される。解砕は、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ピンミルなどの乾式粉砕装置により行うことができる。篩分は、例えば、振動篩、風力篩分機など公知の篩分機により行うことができる。
さらに他のシリカ粒子の疎水化処理方法としては、原料シリカ粒子(乾燥粉末)を十分に混合しながら、液体または蒸気のアルコキシシラン化合物に接触させる、バッチ法または連続法を用いてもよい。
シリカ粒子Aの添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して0.1〜1.5質量部であることが好ましく、0.3〜1.3質量部であることがより好ましく、0.5〜1.0質量部であることがさらに好ましい。この範囲であれば、帯電量の安定性やクリーニング性が向上する。
また、シリカ粒子Bの添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して、0.1〜1.5質量部であることが好ましく、0.3〜1.3質量部であることがより好ましく、0.5〜1.0質量部であることがさらに好ましい。この範囲であれば、シリカ粒子B同士の凝集が抑制され、トナー母体粒子表面にシリカ粒子Bが均一に付着する。その結果、トナーの帯電性の向上効果をより得られやすくなる。
[他の外添剤]
本発明のトナーは、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bに加え、外添剤として、公知の他の外添剤をさらに含んでもよい。かような外添剤としては、たとえば、酸化アルミニウム微粒子、酸化チタン微粒子などの無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これら無機微粒子は、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上等のために、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等によって、光沢処理、疎水化処理等が行われていてもよい。
上記外添剤の粒径は特に制限されないが、個数平均一次粒子径が10〜150nmであると好ましい。
これら他の外添剤の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して、好ましくは0.05〜2.0質量部である。
また、他の外添剤として、上記以外の疎水化処理剤で表面処理したシリカ粒子をさらに含んでいてもよい。かような疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルメチルジメトキシシラン、フェネチルジメチルメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これら疎水化処理剤は、単独でも、または2種以上混合しても用いることができる。
なかでも、外添剤の流動性が向上するという観点から、他の外添剤としては、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理したシリカ粒子を用いると好ましい。これらの疎水化処理されたシリカ粒子の粒径は特に制限されないが、個数平均一次粒子径が10〜30nmであると好ましい。なお、上記個数平均一次粒子径は、実施例に記載の方法により測定される値を採用する。また、これらの他の外添剤の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して、好ましくは0.1〜1.0質量部である。
さらに、他の外添剤として、有機微粒子も用いられうる。有機微粒子としては、個数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機微粒子を使用することができる。
外添剤として滑材も用いられうる。滑材は、クリーニング性や転写性をさらに向上させる目的で使用されるものであって、具体的には、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
これら他の外添剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。
[トナー母体粒子]
「トナー母体粒子」とは、トナー粒子の母体を構成するものである。本発明に係るトナー母体粒子は、結着樹脂を含有すると好ましい。また、トナー母体粒子は、その他必要に応じて、着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。
<結着樹脂>
(結晶性樹脂)
本発明に係るトナー母体粒子に含まれる結着樹脂は、結晶性樹脂を含んでいると好ましい。すなわち、トナー母体粒子が、結晶性樹脂を含有する結着樹脂を含んでいると好ましい。結晶性樹脂を以下で詳説する非晶性樹脂と混合して用いることにより、加熱定着時、結晶性樹脂と非晶性樹脂とが相溶化する。その結果、トナーの低温定着化を図ることができ、省エネルギー化を図ることができる。
ここで、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
結晶性樹脂としては、上記特性を有するものであれば特に制限はなく、本技術分野における従来公知の結晶性樹脂を用いることができる。その具体例としては、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂等が挙げられる。結晶性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
なかでも結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。ここで、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)およびその誘導体と、2価以上のアルコール(多価アルコール)およびその誘導体との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、上記吸熱特性を満たす樹脂である。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は特に制限されないが、55℃〜90℃であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記範囲であることにより、十分な低温定着性が得られる。かような観点から、より好ましくは60〜85℃である。なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。また、本明細書中、樹脂の融点は実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
結晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸および多価アルコールの価数としては、好ましくはそれぞれ2〜3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、以下では、価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について詳説する。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、必要に応じて芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジカルボン酸成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上用いてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸(テトラデカン二酸)、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などが挙げられる。
ジカルボン酸成分としては、上記脂肪族ジカルボン酸の中でも、炭素数6〜14の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸であるとより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸と共に用いることのできる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手容易性および乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。
また、上記ジカルボン酸の他、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸、および上記のカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1〜3のアルキルエステルなどを用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、さらに好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジカルボン酸成分における脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を十分に確保することができる。
また、ジオール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールを併用してもよい。脂肪族ジオールとしては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジオール成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上用いてもよい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールネオペンチルグリコール、などが挙げられる。
ジオール成分としては、上記脂肪族ジオールの中でも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールであることが好ましく、炭素数3〜10の脂肪族ジオールがより好ましい。
脂肪族ジオールと共に用いることのできるジオールとしては、二重結合を有するジオール、スルホン酸基を有するジオールなどが挙げられ、具体的には、二重結合を有するジオールとしては、例えば、1,4−ブテンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオールなどが挙げられる。また、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどを用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジオール成分としては、脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、さらに好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジオール成分における脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を確保することができ、低温定着性に優れたトナーが得られる。
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、十分な低温定着性および優れた長期耐熱保管安定性を確実に両立して得るという観点から、3,000〜100,000であると好ましく、4,000〜50,000であるとより好ましく、5,000〜20,000であると特に好ましい。なお、本明細書中、重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載の方法により求めた値を採用する。
上記のジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシル基の当量[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシル基の当量[COOH]との比[OH]/[COOH]が、1.5/1〜1/1.5であると好ましく、1.2/1〜1/1.2であるとより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記ジカルボン酸およびジアルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより製造することができる。
結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;およびアミン化合物等が挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられ、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度は特に限定されるものではないが、150〜250℃であることが好ましい。また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5〜15時間とすると好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
結着樹脂が結晶性樹脂(好ましくは、結晶性ポリエステル樹脂)を含む場合、結着樹脂における結晶性樹脂の含有量は特に制限されないが、結着樹脂の総量に対して、50質量%未満であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。結晶性樹脂として結晶性ポリエステル樹脂である場合、含有量を50質量%未満とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂の吸湿性に起因する帯電量の環境依存性を低減することができる。一方、含有量の下限値は特に制限されないが、結着樹脂が結晶性樹脂(好ましくは、結晶性ポリエステル樹脂)を含む場合、5質量%以上であると好ましい。結晶性樹脂の含有量が結着樹脂の総量に対して5質量%以上であれば、低温定着性に優れたトナーが得られる。
(非晶性樹脂)
本発明に係るトナー母体粒子に含まれる結着樹脂は、上記結晶性樹脂と共に、非晶性樹脂を含んでいると好ましい。非晶性樹脂は、当該樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、低温定着性などの定着性、並びに、耐熱保管性および耐ブロッキング性などの耐熱性を確実に得る観点から、25〜60℃であることが好ましい。なお、本明細書中、樹脂のガラス転移温度(Tg)は実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
非晶性樹脂としては、上記特性を有するものであれば特に制限はなく、本技術分野における従来公知の非晶性樹脂を用いることができる。その具体例としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂などが挙げられる。なかでも、熱可塑性を制御しやすいという理由から、ビニル樹脂が好ましい。
ビニル樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル樹脂のなかでも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂が好ましい。したがって、以下では、非晶性樹脂としてのスチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂(以下、「スチレン−(メタ)アクリル樹脂」とも称する)について説明する。
スチレン−(メタ)アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物やメタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステル化合物を含むものである。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」とを総称したものである。
スチレン−(メタ)アクリル樹脂の形成が可能なスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の一例を以下に示す。
スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。
スチレン−(メタ)アクリル樹脂中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有率は、当該樹脂の全量に対し、40〜90質量%であると好ましい。また、当該樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、当該樹脂の全量に対し、10〜60質量%であると好ましい。
さらに、スチレン−(メタ)アクリル樹脂は、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体に加え、以下の単量体化合物を含んでいてもよい。
かような単量体化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシル基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。これら単量体化合物は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。
スチレン−(メタ)アクリル樹脂中の上記単量体化合物に由来する構成単位の含有率は、当該樹脂の全量に対し、0.5〜20質量%であると好ましい。
スチレン−(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜100,000であることが好ましい。なお、本明細書中、重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載の方法により求めた値を採用する。
スチレン−(メタ)アクリル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫化物、過硫酸塩、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。また、分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばn−オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
結着樹脂中の非晶性樹脂の含有量は特に制限されないが、結着樹脂の総量に対して、50質量%超であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。一方、含有量の上限値は特に制限されず、100質量%以下である。
<他の構成成分>
本発明で用いられるトナー母体粒子は、必要に応じて着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤を含んでいてもよい。
(着色剤)
着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、またはランプブラックなどが使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、またはコバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、またはマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などを用いることができる。
染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などを用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。顔料としてはC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同15:4、または同60などを用いることができ、これらの混合物も用いることができる。
(離型剤)
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスのような炭化水素系ワックス類、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、およびクエン酸ベヘニルなどのエステルワックス類などが挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、離型剤の融点は、電子写真におけるトナーの低温定着性および離型性の観点から、50〜95℃であることが好ましい。
(荷電制御剤)
荷電制御剤粒子を構成する荷電制御剤としては種々の公知のもので、かつ水系媒体中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩、あるいはその金属錯体などが挙げられる。
[トナー母体粒子の形態]
本発明に係るトナー母体粒子の形態は特に制限されず、例えば、いわゆる単層構造(コア−シェル型ではない均質な構造)であっても、コア−シェル構造であっても、3層以上の多層構造であっても、ドメイン−マトリックス構造であってもよい。トナーの保存安定性を良好にするという目的から、トナー母体粒子は、コア粒子と当該コア粒子表面を被覆してなるシェル層とを有するコア−シェル構造を有していると好ましい。
<コア−シェル構造>
コア−シェル構造の粒子は、具体的には、必要に応じて添加される着色剤や離型剤等を含有した、ガラス転移温度が比較的低い樹脂領域(コア粒子)の表面に、比較的高いガラス転移温度を有する樹脂領域(シェル層)を有する。かようなコア−シェル構造の断面構造は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて確認することが可能である。
なお、コア−シェル構造は、シェル層がコア粒子を完全に被覆した構造のものに限定されるものではなく、例えば、シェル層がコア粒子を完全に被覆せず、所々コア粒子が露出しているものも含む。
コア粒子およびシェル層を構成する樹脂としては、上記ガラス転移温度に係る特性を満たすものであれば特に制限されない。
(コア粒子)
コア粒子を構成する結着樹脂としては、特に制限されないが、例えば、上述した非晶性樹脂および結晶性樹脂が用いられうる。より好ましくは、コア粒子を構成する結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂およびスチレン−(メタ)アクリル樹脂などが用いられうる。これらの樹脂としては、上記のものから選択される1種または2種以上が用いられる。
このとき、結晶性ポリエステル樹脂の含有割合は、コア粒子を構成する結着樹脂100質量%として、1〜20質量%であると好ましく、3〜10質量%であるとより好ましい。
(シェル層)
シェル層を構成する結着樹脂としては、特に制限されないが、例えば、上述した非晶性樹脂が用いられる。当該樹脂は、上記のものから選択される1種または2種以上が用いられる。なかでもシェル層は、上述のスチレン−(メタ)アクリル樹脂を含んでいると好ましい。
シェル層がスチレン−(メタ)アクリル樹脂を含んでいる場合、当該樹脂の含有割合は、シェル層を構成する結着樹脂(シェル用樹脂)100質量%として、70〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがさらに好ましい。シェル用樹脂中におけるスチレン−(メタ)アクリル樹脂の含有割合が上記範囲内であると、コア粒子とシェル層との十分な親和性が得られる。その結果、薄層で均一なシェル層を形成することができるので、耐熱保管性、耐破砕性が良好となり、帯電性が良好となる。
<コア−シェル構造の形態>
コア粒子の含有量は、コア粒子とシェル層との合計の樹脂量(結着樹脂の全量)を100質量%として、50〜95質量%が好ましく、60〜90質量%であるとより好ましい。また、シェル層の含有量は、コア粒子とシェル層との合計の樹脂量(結着樹脂の全量)を100質量%として、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%であるとより好ましい。トナー中の結着樹脂におけるシェル用樹脂の含有割合が上記範囲内であると低温定着性および耐熱保管性を両立させることができるので好ましい。
<平均円形度>
帯電環境安定性や低温定着性を向上させるという観点から、トナー母体粒子の平均円形度は0.920〜1.000であることが好ましく、0.940〜0.995であることがより好ましい。ここで、上記平均円形度は、実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
<粒径>
トナー母体粒子の粒径について、個数基準のメディアン径が3〜10μmであると好ましい。
個数基準のメディアン径を上記範囲とすることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できると共に、トナーの消費量を、大粒径トナーを用いた場合に比して削減することができる。また、トナー流動性も確保できる。ここで、トナー母体粒子の個数基準のメディアン径は、実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
トナーの個数基準のメディアン径は、後述のトナーの製造時の凝集・融着工程における凝集剤の濃度や溶剤の添加量、または融着時間、さらには樹脂成分の組成等によって制御することができる。
[静電潜像現像用トナーの製造方法]
以下、本発明に係る静電潜像現像用トナーの製造方法について説明する。
本発明のトナーを製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。
これらの中でも、粒径の均一性、形状の制御性、好ましい構造であるコア−シェル構造形成の容易性の観点からは、乳化凝集法を採用することが好ましい。以下、乳化凝集法について説明する。
(乳化凝集法)
乳化凝集法とは、界面活性剤や分散安定剤によって分散された結着樹脂の粒子(以下、「結着樹脂粒子」ともいう)の分散液を、必要に応じて、着色剤の粒子(以下、「着色剤粒子」ともいう)の分散液と混合し、所望のトナー粒子径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。ここで、結着樹脂の粒子は、任意に離型剤、荷電制御剤などを含有していてもよい。
本発明に係るトナーの好ましい製造方法として、乳化凝集法を用いてコア−シェル構造を有するトナー粒子を得る場合の一例を以下に示す。
(1)水系媒体中に着色剤粒子が分散されてなる着色剤粒子分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂粒子が分散されてなる樹脂粒子分散液(コア用/シェル用樹脂粒子分散液)を調製する工程
(3)着色剤粒子分散液とコア用樹脂粒子分散液とを混合して凝集用樹脂粒子分散液を得て、凝集剤の存在下で着色剤粒子および結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子としての凝集粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
(4)コア粒子を含む分散液中に、シェル層用の結着樹脂粒子を含むシェル用樹脂粒子分散液を添加して、コア粒子表面にシェル層用の粒子を凝集、融着させてコア−シェル構造のトナー母体粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
(5)トナー母体粒子の分散液(トナー母体粒子分散液)からトナー母体粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程(洗浄工程)
(6)トナー母体粒子を乾燥する工程(乾燥工程)
(7)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程(外添剤処理工程)。
コア−シェル構造を有するトナー粒子は、先ず、コア粒子用の結着樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル層用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。しかしながら、例えば、上記(4)の工程において、シェル用樹脂粒子分散液を添加せずに、単層の粒子から形成されるトナー粒子も同様に製造することができる。
以下、上記各工程について説明する。
<工程(1):着色剤粒子分散液の調製工程>
着色剤粒子分散液の調製工程は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
本発明において、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。より好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、ドデシルアンモニウムブロマイド等のカチオン性界面活性剤、ドデシルポリオキシエチレンエーテル等のノニオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤が添加されていてもよい。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどを用いることができる。
着色剤分散液における着色剤の含有量は、10〜40質量%の範囲とすることが好ましい。このような範囲であると、色再現性確保の効果がある。
着色剤粒子の粒子径としては、体積基準のメディアン径で10〜300nmであることが好ましい。
(着色剤粒子分散液中の分散粒径の測定)
着色剤粒子の水系媒体中における分散粒径は体積平均粒子径、すなわち体積基準におけるメディアン径であり、このメディアン径は、実施例に記載の方法により測定される。
<工程(2):樹脂粒子分散液(コア用/シェル用樹脂粒子分散液)の調製工程>
樹脂粒子分散液の調製工程は、トナー母体粒子を構成する結着樹脂を合成し、この結着樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて結着樹脂粒子の分散液を調製する工程である。
結着樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、結着樹脂を得るための単量体から結着樹脂粒子を形成し、当該結着樹脂粒子の水系分散液を調製する方法(I)や、結着樹脂を有機溶媒(溶剤)中に溶解または分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒(溶剤)を除去する方法(II)が挙げられる。これら方法(I)および(II)は、結着樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。本工程において、結着樹脂として好ましく用いられるスチレン−(メタ)アクリル樹脂(必要に応じて結晶性樹脂を含む)の粒子の分散液を調製する場合には上記方法(I)を用いると好ましい。
(方法(I))
方法(I)においては、まず、スチレン−(メタ)アクリル樹脂を得るための単量体を重合開始剤と共に水系媒体中に添加して重合し、基礎粒子を得る。このとき、重合開始剤としては、水溶性重合開始剤を用いることができる。水溶性重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性ラジカル重合開始剤を好適に用いることができる。
また、上記水系媒体は<工程(1):着色剤粒子分散液の調製工程>の項で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、ドデシル硫酸ナトリウム等の界面活性剤が添加されていてもよい。
次に、ビニル樹脂を得るためのラジカル重合性単量体および重合開始剤を添加し、上記基礎粒子にラジカル重合性単量体をシード重合する手法を用いることが好ましい。
また、スチレン−(メタ)アクリル樹脂粒子を得るためのシード重合反応系には、スチレン−(メタ)アクリル樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン;n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート、ステアリル−3−メルカプトプロピオネートなどのメルカプトプロピオン酸;およびスチレンダイマーなどを用いることができる。これらは一種単独であるいは二種以上組み合わせて用いることができる。
なお、方法(I)では、スチレン−(メタ)アクリル樹脂を得るための単量体からスチレン−(メタ)アクリル樹脂粒子を形成する際に、上記単量体とともに離型剤を分散させることにより、スチレン−(メタ)アクリル樹脂粒子中に離型剤を含有させてもよい。さらにこのとき、上記単量体とともに、予め調製しておいた結晶性樹脂を分散させてもよい。このように、スチレン−(メタ)アクリル樹脂粒子中に結晶性樹脂を内包させることにより、トナー母体粒子を形成した際に、結晶性樹脂が表面に露出しにくくなり、その結果、帯電性が向上する。また、上記シード重合反応をさらに行い、多段階の重合反応によりスチレン−(メタ)アクリル樹脂粒子の分散液を調製してもよい。
(方法(II))
方法(II)において、油相液の調製に使用される有機溶媒(溶剤)としては、上記と同様に、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、具体的には、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
有機溶媒(溶剤)の使用量(二種類以上使用する場合はその合計使用量)は、結着樹脂100質量部に対して、通常10〜500質量部、好ましくは100〜450質量部である。
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2,000質量部であることが好ましく、100〜1,000質量部であることがより好ましい。水系媒体の使用量を上記の範囲とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
また、上記と同様に、水系媒体中には、油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤が添加されていてもよい。
このような油相液の乳化分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、上記<工程(1):着色剤粒子分散液の調製工程>の項において説明したものを用いることができる。
油滴の形成後における有機溶媒の除去は、結着樹脂粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、徐々に撹拌状態で昇温し、一定の温度域において強い撹拌を与えた後、脱溶媒を行うなどの操作により行うことができる。あるいは、エバポレータ等の装置を用いて減圧しながら除去することができる。
上記方法(I)または(II)によって準備された結着樹脂粒子分散液における結着樹脂粒子の含有量は、5〜50質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%の範囲である。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
<工程(3)および(4):凝集・融着工程>
この凝集・融着工程は、水系媒体中で前述の結着樹脂粒子と、必要に応じて添加される着色剤粒子とを凝集させ、凝集させると同時にこれら粒子を融着させてトナー母体粒子を得る工程である。
(工程(3):コア粒子の形成工程)
コア粒子の形成方法としては、公知の方法で製造することができるが、水系媒体に分散した樹脂粒子を凝集させてコア粒子を形成する乳化凝集法が好ましく用いられる。
コア粒子がスチレン−(メタ)アクリル樹脂を含有する結着樹脂粒子等を凝集/融着して成る構成を有する場合、当該コア粒子は通常、乳化凝集法によって形成される。ここでは、乳化凝集法において結着樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集会合させる工程について説明する。
本工程においては、樹脂粒子分散液(コア用樹脂粒子分散液)と、必要に応じて添加される着色剤粒子分散液や、その他トナー構成成分の粒子の分散液とを混合して凝集用樹脂粒子分散液を調製し、水系媒体中で凝集・融着させ、凝集粒子の分散液を調製する。
この凝集・融着工程において使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウムおよびリチウムなどのアルカリ金属の塩などの1価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガンおよび銅などの2価の金属塩;鉄およびアルミニウムなどの3価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウムおよび硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、2価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
凝集剤の使用量は特に制限されない。トナー母体粒子を構成する結着樹脂の固形分100質量部に対して、例えば、5〜25質量部であり、好ましくは8〜20質量部である。
上記凝集剤は、そのままの形態で凝集用樹脂粒子分散液に添加してもよく、あらかじめ水系媒体に溶解または分散させたものを凝集用樹脂粒子分散液に添加してもよい。凝集剤を凝集用樹脂粒子分散液に添加する形態も特に制限されないが、好ましくは撹拌下で、1〜20分間かけて添加する。
凝集工程においては、凝集剤を添加した後に放置する放置時間(加熱を開始するまでの時間)をできるだけ短くすることが好ましい。すなわち、凝集剤を添加した後、凝集用樹脂粒子分散液の加熱をできるだけ速やかに開始し、コア用樹脂のガラス転移温度以上とすることが好ましい。この理由は明確ではないが、放置時間の経過によって粒子の凝集状態が変動して、得られるトナー粒子の粒径分布が不安定になったり、表面性が変動したりする問題が発生するおそれがあるからである。放置時間は、通常30分以内とされ、好ましくは10分以内である。
また、凝集用樹脂粒子分散液がガラス転移温度以上の温度に到達した後、当該凝集用樹脂粒子分散液の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させることが肝要である。これにより、粒子の成長と、融着とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナー粒子の耐久性を向上させることができる。
(工程(4):シェル層の形成工程)
コア粒子表面に均一にシェル層を形成させる場合、乳化凝集法を採用するのが好ましい。乳化凝集法を採用する場合、コア粒子の水分散液中に、シェル粒子の乳化分散液(シェル用樹脂粒子分散液)を添加し、コア粒子の表面にシェル粒子を凝集/融着させてシェル層を形成させることができる。
具体的には、コア粒子分散液について、上記凝集・融着工程における温度を維持した状態でシェル用樹脂粒子分散液を添加し、加熱撹拌を継続しながらゆっくりとシェル用樹脂粒子をコア粒子表面に被覆させる。
その後、会合粒子が所望の粒径になった段階で、例えば塩化ナトリウムなどの停止剤を添加して粒子成長を停止させ、その後も会合粒子を含む液を継続して加熱撹拌する。このように会合粒子の形状を所望の円形度になるまで、加熱温度、撹拌速度、加熱時間により調製し、トナー母体粒子とする。加熱撹拌の条件は、特に制限されない。これによって、所望の円形度を有し、形状のそろったトナー母体粒子が得られうる。
その後、好ましくは、前記トナー母体粒子を含む会合液を冷却処理し、トナー母体粒子分散液を得る。
<工程(5):洗浄工程>
トナー母体粒子分散液からトナー母体粒子を濾別するための濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
次いで、固液分離されたトナー母体粒子から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理が施される。例えば水またはアルコール、好ましくは水で洗浄する。
水による洗浄は、好ましくは、濾液の電気伝導度が50μS/cm以下になるまで続けられる。濾液の電気伝導度が50μS/cm以下になるまで洗浄すると、トナー粒子に付着している不純物の残存量が低減され好ましい。さらに濾液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで洗浄すると、トナー粒子に付着する不純物の量がさらに低減される。ここで、濾液の電気伝導度は、通常の電気伝導度計により測定することができる。
<工程(6):乾燥工程>
その後、洗浄処理して回収されたトナー母体粒子を乾燥処理し、乾燥されたトナー母体粒子を得る。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。乾燥されたトナー母体粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2質量%以下である。尚、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
<工程(7):外添剤処理工程>
本発明では、上記のシリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bを外添剤として添加する。
外添剤の添加方法としては、乾燥済みのトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加する乾式法が好適に用いられる。このとき、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bは、トナー粒子に対して一括で混合(添加)してもよいし、あるいはシリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bをそれぞれ分割して混合(添加)してもよいが、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bを一括で混合(添加)することが好ましい。これらのシリカ粒子を一括で混合(添加)することにより、シリカ粒子Aによりシリカ粒子Bの凝集体が解砕されやすくなり、各シリカ粒子が均一にトナー母体粒子に付着する。その結果、帯電量の安定性やクリーニング性が向上する。
トナー母体粒子に対する外添剤の混合処理は、機械式混合装置を用いることができる。機械式混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、タービュラーミキサー等が使用できる。なかでも、ヘンシェルミキサーを用いることが好ましい。ヘンシェルミキサーは、処理される粒子に剪断力を付与できる。このとき、撹拌時間は10〜30分間であると好ましく、撹拌羽根の回転周速は30〜60m/分とすると好ましい。かような条件で混合処理を行うことにより、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bの解砕度合いやトナー母体粒子への付着強度を好適に制御することができる。
また、このとき、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bの他、他の外添剤を添加してもよい。なお、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子B以外に外添剤として使用可能な材料は上述したため、ここでは詳細な説明を割愛する。他の外添剤は、上記シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bと同時に混合(添加)されてもよいし、分割して混合されてもよい。トナー母体粒子に対してより均一に外添剤を付着させる目的からは、他の外添剤は、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子B塗装時に混合(添加)されると好ましい。
[現像剤]
本発明に係るトナーは、キャリアとトナーとから構成される二成分現像剤として、また、トナーのみから構成される非磁性一成分現像剤として使用することが可能である。
二成分現像剤として使用する際に用いられる磁性粒子であるキャリアは、公知のものを用いることができる。例えば、キャリアとしては、磁性体からなる芯材粒子と、当該芯材粒子の表面を被覆する被覆材の層とを有する被覆型キャリア粒子や、樹脂中に磁性体の微粉末が分散されてなる樹脂分散型のキャリア粒子等が挙げられる。キャリアは、感光体に対するキャリアの付着を抑制する観点から、上記被覆型キャリア粒子であることが好ましい。以下、被覆型キャリア粒子について説明する。
被覆型キャリア粒子を構成する芯材粒子(キャリアコア)は、磁性体、例えば、磁場によって強く磁化する物質によって構成される。かような磁性体としては、例えば、鉄、ニッケルおよびコバルトなどの強磁性を示す金属、これらの金属を含む合金または化合物、ならびに熱処理することにより強磁性を示す合金等が挙げられる。上記磁性体は、一種単独であるいは二種以上組み合わせて用いることができる。
上記強磁性を示す金属およびこれらの金属を含む合金または化合物としては、鉄、下記式(a)で表わされるフェライト、および、下記式(b)で表わされるマグネタイトが挙げられる。式(a)、式(b)中のMは、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、CdおよびLiからなる群から選択される一以上の金属を表す。
式(a):MO・Fe2O3
式(b):MFe2O4
また、上記熱処理することにより強磁性を示す合金としては、マンガン−銅−アルミニウムおよびマンガン−銅−錫などのホイスラー合金、ならびに、二酸化クロム等が挙げられる。
一般に、被覆型キャリア粒子の比重は、芯材粒子を構成する金属の比重よりも小さくなる。よって、現像器内における撹拌の衝撃力をより小さくするという観点から、上記の中でも、芯材粒子として、各種のフェライトを用いると好ましい。
上記芯材粒子の表面を被覆材(キャリアコート樹脂)により被覆することにより、被覆型キャリア粒子を得ることができる。このとき、被覆材としては、芯材粒子の被覆に利用される公知の樹脂を用いることができる。かような樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニルなどのポリビニル樹脂およびポリビニリデン樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体やスチレン−アクリル酸共重合体などの共重合体樹脂;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂またはその変性樹脂(例えば、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンなどによる変性樹脂);ポリフッ化ビニルなどのフッ素樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリカーボネート樹脂;尿素−ホルムアルデヒド樹脂などのアミノ樹脂;エポキシ樹脂などが挙げられる。
キャリア粒子の水分吸着性を低減させる観点、および、被覆材と芯材粒子との密着性を高める観点から、被覆材は、シクロアルキル基を有する樹脂であると好ましい。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基およびシクロデシル基が挙げられる。なかでも、被覆材と芯材粒子(好ましくはフェライト粒子)との密着性の観点からシクロペンチル基またはシクロヘキシル基が好ましく、シクロへキシル基がより好ましい。
被覆材としてのキャリアコート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、10,000〜800,000であると好ましく、100,000〜750,000であるとより好ましい。なお、上記重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載のGPC装置を用いた方法により測定することができる。当該樹脂における上記シクロアルキル基を有する構成単位の含有量は、例えば10質量%〜90質量%である。なお、樹脂中のシクロアルキル基を有する構成単位の含有量は、例えば、熱分解−ガスクロマトグラフ/質量分析(P−GC/MS)や1H−NMR等によって求めることが可能である。
上記被覆材および芯材粒子に対して機械的衝撃力や熱を加えることにより、被覆材を芯材粒子に対して付着、固着させることができ、これにより、キャリアを得ることができる。
キャリアの体積基準のメディアン径は、15〜100μmのものが好ましく、25〜80μmのものがより好ましい。なお、当該メディアン径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明に係るトナーと、上記キャリアとを混合することにより、二成分現像剤を得ることができる。混合の際に用いられる混合装置としては特に制限されないが、例えば、ナウターミキサー、WコーンおよびV型混合機等が挙げられる。
二成分現像剤中のトナーの含有量(トナー濃度)は、特に制限されないが、4.0〜8.0質量%であると好ましい。
また、本発明に係るトナーが一成分現像剤として使用される場合には、現像ローラーとトナー層を規制する規制ブレードとの間における摩擦帯電、および、電圧印加による注入帯電における帯電量が安定する。
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例においては、特記しない限り、「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味し、各操作は、室温(25℃)で行われた。
<シリカ粒子の作製>
[製造例1−1:シリカ粒子a1の作製]
三角フラスコに純水347.4gを計りとり、撹拌下でテトラメトキシシラン(TMOS)110gを加え、そのまま1時間撹拌し、TMOS加水分解液457.4gを作製した。
次に、撹拌機と、滴下ロートと、温度計とを備えた3リットルのガラス製反応器に、水2250gと、エチレンジアミン112gとを入れて混合した。この溶液を35℃となるように調整し、撹拌しながらTMOS加水分解液を2.5mL/分で添加した。
TMOS加水分解液(上記で調製した部分の一部)の添加が終了したら、その状態で30分間保持した後、1mmol/gエチレンジアミン水溶液4.5gを加え、pHを8〜9に調整した。
以後、pH8を保持するようにアルカリ触媒(1mmol/gエチレンジアミン水溶液)を適宜添加しながら、3時間ごとに残りのTMOS加水分解液を2.5mL/分で添加し、これを継続し、合計で457.4g添加した。
TMOS加水分解液の滴下が終了した後も、さらに0.5時間撹拌を継続して加水分解、縮合を行うことにより、親水性の球状シリカ粒子a1の混合媒体分散液を得た。得られたシリカ粒子a1の粒径(個数平均一次粒子径)は120nm、平均円形度は0.900であった。
[製造例1−2〜1−10:シリカ粒子a2〜a10の作製]
上記製造例1−1において、TMOSの使用量、エチレンジアミンの使用量およびTMOS加水分解液の添加速度を以下の表1に示す値にそれぞれ変更したこと以外は、上記製造例1−1と同様にしてシリカ粒子a2〜a10をそれぞれ作製した。
なお、上記シリカ粒子の粒径(個数平均一次粒子径)および平均円形度は、以下の方法で測定した。各シリカ粒子の粒径および平均円形度を、以下の表1に示す。
(個数平均一次粒子径の測定)
走査型電子顕微鏡像を撮影し、この写真画像をスキャナーにより取り込んだ。画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて、シリカ粒子について2値化処理し、一種類のシリカ粒子につき100個の粒子の水平方向フェレ径を算出し、その平均値を個数平均粒子径とした。
(平均円形度の測定)
走査型電子顕微鏡像を撮影し、一種類のシリカ粒子につき100個の粒子の画像解析を行い、撮影された各々のシリカ粒子に対して以下の式(1)により円形度を求め、それらを平均することにより得た値を平均円形度とした。
式(1)中、PMは画像上におけるシリカ粒子の周囲長を示し、Aはシリカ粒子の投影面積を表す。シリカ粒子の平均円形度は、上記平面画像解析によって得られたシリカ粒子100個の円形度の累積頻度における50%円形度として得られる。
[製造例2−1:シリカ粒子A1の作製(疎水化処理)]
上記製造例1−1で得られたシリカ粒子a1を100質量部、反応器に入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、水3.0質量部を噴霧した。これに、疎水化処理剤であるn−ヘキシルトリメトキシシラン10質量部、ジエチルアミン1.0質量部を噴霧し、180℃で1時間熱撹拌し、その後冷却し、減圧下にて乾燥し、シリカ粒子A1を得た。
[製造例2−2〜2−14:シリカ粒子A2〜A14の作製(疎水化処理)]
上記製造例2−1において、原料シリカ粒子の種類および用いたアルコキシシラン(疎水化処理剤)の種類を以下の表2に示すものにそれぞれ変更したこと以外は、上記製造例2−1と同様にしてシリカ粒子A2〜A14をそれぞれ作製した。
なお、これらシリカ粒子の粒径(個数平均一次粒子径)および平均円形度について、上記と同様の方法で測定したところ、上記疎水化処理の前後で変化しなかったことが確認された。
[製造例3−1:シリカ粒子B1の作製(疎水化処理)]
個数平均一次粒子径が30nmのシリカ粒子を100質量部、反応器に入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、水3.0質量部を噴霧した。これに、疎水化処理剤であるn−デシルトリメトキシシラン10質量部、ジエチルアミン1.0質量部を噴霧し、180℃で1時間熱撹拌し、その後冷却し、減圧下で乾燥し、シリカ粒子B1を得た
[製造例3−2〜3−10:シリカ粒子B2〜B10の作製(疎水化処理)]
上記製造例3−1において、用いたアルコキシシラン(疎水化処理剤)の種類およびシリカ粒子の粒径(個数平均一次粒子径)を以下の表3に示すものにそれぞれ変更したこと以外は、上記製造例3−1と同様にしてシリカ粒子B2〜B10をそれぞれ作製した。
なお、これらシリカ粒子の粒径(個数平均一次粒子径)について、上記と同様の方法で測定したところ、上記疎水化処理の前後で変化しなかったことが確認された。
<トナーの作製>
[製造例4−1:着色剤粒子分散液(P1)の調製]
n−ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に撹拌しながら溶解させ、溶液を調製した。この溶液を撹拌しながら、当該溶液中に銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)24.5質量部を徐々に添加した。次いで、撹拌装置「クレアミックス(登録商標)Wモーション CLM−0.8」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理を行うことにより、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液(P1)を調製した。この分散液における着色剤粒子の粒子径を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装株式会社製)を用いて測定したところ、体積基準のメディアン径は126nmであった。
[製造例4−2:結晶性ポリエステル樹脂(C1)の調製]
三ツ口フラスコに、1,9−ノナンジオール300質量部と、ドデカン二酸250質量部と、触媒Ti(O−nBu)4(ドデカン二酸に対し、0.014質量%)とを入れた混合液を調製し、その後、減圧操作により容器内の空気を減圧した。さらに、窒素ガスを上記三ツ口フラスコに導入して当該フラスコ内を不活性雰囲気とし、上記混合液を機械撹拌しながら180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて未反応のモノマー成分を除去し、220℃まで徐々に昇温を行って12時間撹拌を行った。粘稠な状態となったところで冷却することにより、結晶性ポリエステル樹脂(C1)を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂(C1)の重量平均分子量(Mw)は19,500であった。また、結晶性ポリエステル樹脂(C1)の融点は75℃であった。なお、結晶性ポリエステル樹脂(C1)の重量平均分子量および融点は、以下の方法により測定した。
(重量平均分子量の測定)
以下の条件にて、GPC装置により重量平均分子量を測定した。試料溶液10μLをGPC装置内に注入した。屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を、単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出することにより、重量平均分子量を測定した。
−測定条件−
GPC装置:「HLC−8220」(東ソー株式会社製)
カラム:「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連」(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
キャリア溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.2mL/分。
(融点の測定)
融点は、示差走査熱量測定装置「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定した。まず、試料3.0mgをアルミニウム製パンに封入してホルダーにセットした。リファレンスとして空のアルミニウム製パンをセットした。昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却する冷却過程、および昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によってDSC曲線を得る。この測定によって得られるDSC曲線に基づいて、第1昇温過程における結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピークトップ温度を、融点とした。
[製造例4−3:コア用樹脂微粒子分散液(D1)の調製]
≪第1段重合≫
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム質量部およびイオン交換水3000質量部を加えた。得られた混合液(界面活性剤溶液)を、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、当該混合液の温度を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液(開始剤溶液)を上記混合液に添加し、当該混合液の液温を75℃とし、下記組成の単量体混合液を1時間かけて上記混合液に滴下した。その後、当該混合液を75℃にて2時間、加熱、撹拌することにより単量体の重合を行い、樹脂粒子(d1)の分散液を調製した。
・スチレン(St) 568質量部
・n−ブチルアクリレート(BA) 164質量部
・メタクリル酸(MAA) 68質量部。
≪第2段重合≫
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液(界面活性剤溶液)を加え、得られた混合液を80℃に加熱した。
一方で、下記組成の単量体を80℃にて溶解させた溶液を調製した。その後、当該溶液を上記混合液に添加し、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(登録商標)」(エム・テクニック株式会社製)により、1時間混合分散させることにより、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。次いで、過硫酸カリウム5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を調製し、上記分散液に添加した。得られた分散液を80℃にて1時間にわたって加熱撹拌して上記単量体の重合を行い、樹脂粒子(d2)の分散液を調製した。
・樹脂粒子(d1) 42質量部(固形分換算)
・ベヘン酸ベヘニル 70質量部
・結晶性ポリエステル樹脂(C1) 70質量部
・スチレン(St) 195質量部
・n−ブチルアクリレート(BA) 91質量部
・メタクリル酸(MAA) 20質量部
・n−オクチルメルカプタン 3質量部。
≪第3段重合≫
上記の樹脂粒子(d2)の分散液に、さらに、過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加した。得られた分散液を80℃に維持し、下記組成の単量体混合液を1時間かけて上記分散液に滴下した。滴下終了後、得られた分散液を2時間にわたって加熱撹拌することにより上記単量体の重合を行い、その後、上記分散液を28℃まで冷却し、コア用樹脂微粒子分散液(D1)を調製した。
・スチレン 298質量部
・n−ブチルアクリレート(BA) 137質量部
・n−ステアリルアクリレート(SA) 50質量部
・メタクリル酸(MAA) 64質量部
・n−オクチルメルカプタン 6質量部。
コア用樹脂微粒子分散液(D1)中において、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は48℃、重量平均分子量(Mw)は48,000であった。なお、コア用樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)は、上記結晶性ポリエステル樹脂(C1)の重量平均分子量の測定方法と同様にして測定した。また、ガラス転移温度(Tg)は、以下の方法により測定した。
(ガラス転移温度の測定)
まず、上記結晶性ポリエステル樹脂(C1)の融点測定と同様の条件とし、コア用樹脂微粒子について、DSC曲線を得た。当該DSC曲線に基づいて、その第2昇温過程における第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度(Tg)とした。
[製造例4−4:シェル用樹脂微粒子分散液(E1)の調製]
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2.0質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液(界面活性剤溶液)を加えた。当該溶液を、窒素気流下、230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、当該溶液の温度を80℃に昇温させた。この溶液に、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、下記組成の単量体混合液を上記溶液に3時間かけて滴下した。その後、得られた混合液を80℃にて1時間、加熱、撹拌することにより単量体の重合を行い、シェル用樹脂微粒子の分散液(E1)を調製した。
・スチレン(St) 564質量部
・n−ブチルアクリレート(BA) 140質量部
・メタクリル酸(MAA) 96質量部
・n−オクチルメルカプタン 12質量部。
シェル用樹脂微粒子分散液(E1)中において、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は57℃、重量平均分子量(Mw)は68,500であった。なお、シェル用樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)は、上記結晶性ポリエステル樹脂(C1)の重量平均分子量の測定方法と同様にして測定した。また、ガラス転移温度(Tg)は、上記コア用樹脂粒子のガラス転移温度の測定方法と同様にして測定した。
〔トナー1の作製〕
≪コアシェル粒子分散液1の調製(凝集・融着工程)≫
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、コア用樹脂微粒子分散液(D1)360質量部(固形分換算)と、イオン交換水1100質量部と、着色剤粒子分散液(P1)の50質量部(固形分換算)とを仕込み、得られた分散液の温度を30℃に調整した。その後、当該分散液に5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えて当該分散液のpHを10に調整した。次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて上記分散液に添加した。添加後、分散液を30℃に3分間保持した後に昇温を開始し、上記分散液を60分間かけて85℃まで昇温し、当該分散液の温度を85℃に保持したまま粒子成長反応を継続し、コア粒子の分散液を調製した。そこにシェル用樹脂微粒子分散液(E1)80質量部(固形分換算)を添加し、80℃にて1時間にわたって撹拌を継続した。これにより、コア粒子の表面にシェル用樹脂微粒子を融着させてシェル層を形成させてコアシェル粒子(1)を得た。ここで、得られた分散液に、塩化ナトリウム150gをイオン交換水600gに溶解した水溶液を添加し、液温80℃にて熟成処理を行い、コアシェル粒子(1)の平均円形度が0.960になった時点で30℃に冷却した。冷却後のコアシェル粒子(1)の個数基準のメディアン径が5.5μmであった。なお、コアシェル粒子の平均円形度およびメディアン径は、以下の方法により測定した。
(平均円形度の測定)
コアシェル粒子の平均円形度はフロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用いて測定した。具体的には、コアシェル粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散した後、「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で測定を行った。この範囲であれば、再現性のある測定値が得られる。なお、円形度は以下の式(2)で計算される。
また、平均円形度は、各粒子の円形度の和をとり、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
(メディアン径の測定)
コアシェル粒子の個数基準のメディアン径(Dnt)は、「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出した。測定手順としては、コアシェル粒子0.02gを、界面活性剤溶液20ml(コアシェル粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、コアシェル粒子分散液を作製した。このコアシェル粒子分散液を、サンプルスタンド内のISOTON(登録商標)II(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5〜10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを25000個に設定して測定した。なお、マルチサイザー3のアパチャー径は100μmのものを使用した。測定範囲1〜30μmの範囲を256分割しての頻度数を算出し、個数積算分率が大きい方から50%の粒子径を個数基準のメディアン径(Dnt)とした。
≪トナー母体粒子1の作製(洗浄・乾燥工程)≫
上記凝集・融着工程にて生成したコアシェル粒子(1)の分散液を遠心分離機で固液分離し、コアシェル粒子(1)のウェットケーキを形成した。当該ウェットケーキを、前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄した。その後「フラッシュジェットドライヤー」(株式会社セイシン企業製)に移し、水分量が0.8質量%となるまで乾燥して、トナー母体粒子1を作製した。
≪トナー粒子1の作製(外添剤処理工程)≫
上記のトナー母体粒子1 100質量部に、下記の外添剤を同時に添加し、ヘンシェルミキサー「型式:FM20C/I」(日本コークス工業株式会社製)に添加し、撹拌羽根先端周速が40m/分となるようにして撹拌翼の回転数を設定して15分間撹拌し、トナー粒子1を作製した。
シリカ粒子A1 1.0質量部
シリカ粒子B1 1.0質量部
疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径:20nm) 1.0質量部。
上記外添剤を混合する際の温度は、40℃±1℃となるように設定した。当該温度が41℃になった場合は、ヘンシェルミキサーの外浴に冷却水を5L/分の流量で冷却水を流し、39℃になった場合は、当該冷却水の流量が1L/分となるように冷却水を流すことで、ヘンシェルミキサー内部の温度を制御した。
〔トナー2〜30の作製〕
上記〔トナー1の作製〕において、外添剤処理工程において用いたシリカ粒子を表4−1および表4−2のように変更したこと以外は、上記と同様にしてトナー2〜30をそれぞれ作製した。なお、トナー29の作製においては、外添剤として、シリカ粒子Aを2.0質量部および疎水性酸化チタンを1.0質量部、トナー30の作製においては、シリカ粒子Bを2.0質量部および疎水性酸化チタンを1.0質量部、それぞれ用いた。
また、表中、「炭素数の差」は、シリカ粒子Aの表面に存在するアルキル基の炭素数と、シリカ粒子Bの表面に存在するアルキル基の炭素数との差(絶対値)を示す。なお、シリカ粒子Aの平均円形度を測定するため、各トナーの走査型電子顕微鏡像を撮影し、上記シリカ粒子の平均円形度の測定方法と同様の方法により測定したところ、以下の表4−1および表4−2に示す値であった。また、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bの粒径(個数平均一次粒子径)を以下の方法により測定したところ、以下の表4−1および4−2に示す値であった。
(シリカ粒子の粒径の測定)
走査型電子顕微鏡にて各トナーの3万倍写真を撮影し、この写真画像をスキャナーにより取り込んだ。画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)にて、当該写真画像のトナー表面に存在する外添剤について2値化処理し、外添剤1種につき100個についての水平方向フェレ径を算出、その平均値を個数平均粒子径とした。
<キャリア粒子の作製>
[製造例5−1:芯材被覆用樹脂(被覆材1)の作製]
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシルおよびメタクリル酸メチルを1:1のモル比で添加した。続いて、単量体総量に対して0.5質量%となる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行い、得られた分散液を用いてスプレードライ法により、分散液中の樹脂粒子を乾燥することで、芯材被覆用樹脂である被覆材1を作製した。得られた被覆材1の重量平均分子量(Mw)は50万であった。被覆材1の重量平均分子量(Mw)は、上記結晶性ポリエステル樹脂(C1)の重量平均分子量の測定方法と同様にして測定した。
〔キャリア粒子の作製〕
体積平均径が30μmであるMn−Mg系のフェライト粒子を芯材粒子として準備した。水平撹拌羽根付き高速撹拌混合機に、100質量部のフェライト粒子と、4.5質量部の被覆材1とを投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌した。その後、120℃で50分間混合して、機械的衝撃力(メカノケミカル法)の作用で上記芯材粒子の表面に被覆材1を被覆させ、キャリア粒子1を作製した。キャリア粒子1の体積分布基準のメディアン径は32μmであった。なお、キャリア粒子のメディアン径は以下の方法により測定した。
(メディアン径の測定)
キャリア粒子の体積基準のメディアン径(Dvc)は、レーザー回折式粒度分布測定装置「HEROS KA」(日本レーザー株式会社製)を用いて湿式にて測定した。具体的には、まず、焦点位置200mmの光学系を選択し、測定時間を5秒に設定した。そして、測定用のキャリア粒子を0.2%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に加え、超音波洗浄機「US−1」(asone社製)を用いて3分間分散させて測定用試料分散液を作製した。当該測定用試料分散液を「HELOS KA」に数滴供給し、試料濃度ゲージが測定可能領域に達した時点で測定を開始した。得られた粒度分布を粒度範囲(チャンネル)に対して、小径側から累積分布を作成し、累積50%となる粒径を体積平均粒径とした。
<現像剤の作製>
〔二成分現像剤1の作製〕
上記トナー粒子1およびキャリア粒子1を、二成分現像剤におけるトナー粒子の含有量(トナー濃度)が7質量%となるようにして、V型混合機にて30分混合して二成分現像剤を作製した。
〔二成分現像剤2〜30の作製〕
上記〔二成分現像剤1の作製〕において、トナー粒子1を、トナー粒子2〜30にそれぞれ変更したこと以外は、上記と同様にして二成分現像剤2〜30をそれぞれ作製した。
<評価>
評価装置として、市販のデジタルフルカラー複合機「bizhub(登録商標) PRESS 1070」(コニカミノルタ株式会社製)を用いた。上記のようにして得られた二成分現像剤をそれぞれ上記評価装置に装填し、高温高湿環境(30℃・80%RH)で、下記の評価を実施した。評価結果を、表4−1および表4−2に示す。
〔帯電性:初期帯電量および帯電量の安定性〕
高温高湿環境下における初期帯電量と帯電量の安定性(耐久印刷後の帯電量の変動量)とを測定した。初期帯電量は、10枚印刷した後のマグロール上の現像剤を採取し、帯電量を測定することにより評価した。帯電量の安定性は、10万枚印刷した後のマグロール上の現像剤を採取して帯電量を測定することにより評価した。なお、帯電量の測定は、ブローオフ法を用いて測定した。各評価基準は、以下のとおりである。なお、いずれかの評価においても、〇〜△を合格と判断した。
(初期帯電量)
〇:45μC/g以上
△:40μC/g以上45μC/g未満(実用上問題ない)
×:40μC/g未満(実用不可)。
(帯電量の変動量)
〇:5μC/g以下
△:5μC/gを超えて10μC/g以下(実用上問題ない)
×:10μC/gよりも大きい(実用不可)。
〔クリーニング性〕
A4の上質紙(坪量:65g/m2)上に、幅3cmの縦帯状ベタ画像が5本あるテスト画像を10万枚連続印刷(耐久印刷)し、耐久印刷後の全面ベタ画像を出力した。この全面ベタ画像について、耐久時の帯部に相当する部分5点と非帯部に相当する6点の濃度を、マクベス社製反射濃度計「RD−918」を用いて計測し、最大濃度差にて評価を実施し、以下の基準により判定した。なお、当該評価において、〇〜△を合格と判断した。
(濃度均一性)
○:最大濃度差が0.05以下
△:最大濃度差が0.05より大きく0.10以下
×:最大濃度差が0.10より大きい。
上記表4−1および表4−2の結果より、本発明に係る構成を有するトナーは、高温高湿環境下における初期帯電性、帯電量の安定性、およびクリーニング性について、バランスよく向上していることが確認された。
一方、シリカ粒子として、シリカ粒子Aのみやシリカ粒子Bのみを用いたトナー(トナー29および30)は、初期帯電性、帯電量の安定性およびクリーニング性の全てをバランスよく向上させることはできなかった。また、シリカ粒子Aおよびシリカ粒子Bの粒径や、表面に存在するアルキル基の炭素数が本願発明の範囲を外れるトナーもまた、上記の各特性のいずれかにおいて良好でないという結果を示した。