JP2017171877A - ワイヤハーネス封止用樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】導体部を被覆する絶縁性の被覆部との密着性が極めて良好で、環境試験後においても極めて防水性に優れたワイヤハーネス封止用樹脂組成物を提供する。【解決手段】 結晶性ポリエステル樹脂(A)、1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B)、およびポリオレフィン樹脂(C)を必須成分とするワイヤハーネス封止用樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は自動車、二輪車、電子機器、電送部品、トランス・コイルパワーモジュール及びそのデバイス、リレー、センサー等のワイヤハーネス封止に適した樹脂組成物に関する。
自動車や電気機器等の機器内部に搭載される電子制御ユニットは一般的にワイヤハーネスによって接続されている。
ワイヤハーネスは複数の導体素線からなる導体部を絶縁性被覆体で被覆した構成のみからなるものや、導体部及び絶縁性被覆体から成る構成およびそれらを複数結束させた形態(以下、集合ワイヤハーネスともいう。)が一般的であるため、水を被りやすい環境におかれた場合、水が絶縁被覆部を経由して導体部まで侵入し、毛管現象によって導体素線によってつながれた他の電気接続部まで水が浸透して不具合を及ぼすケースが多い。このため絶縁被覆部ならびに導体部に侵入してくる水を封止することは極めて重要となってくる。
ワイヤハーネスの封止の方法としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で封止する方法や、硬化性の樹脂をポッティングする方法が用いられている(特許文献1)。その他として、塗布のしやすさやハンドリング性の観点から液状の樹脂を挿入し、ワイヤハーネス導体部の芯線束に浸み込ませ、硬化させることで形状を維持させる方法がある(特許文献2)。
特開2007−317470号公報 特開平9−55278号公報
しかしながら、これらの方法は硬化のために長時間の工程が必要となり、また、硬化するまで単体で形状保持が出来ないため作業性が悪い。
以上の背景からワイヤハーネスを成型によって封止することができれば、工程における成形型の設置場所が省スペース化され、ワイヤハーネスを展開しないでワイヤハーネスの集合形状のまま成形型にセットすることができることからワイヤハーネスの封止作業が極めて迅速化される。また、成型型においては繰り返し使用することができるため簡素化・低コストされる。
一方、成型材料は一般に溶融粘度が高く、複雑な形状の部品を封止するには数十MPa以上の高圧での射出成型が必要となるため、ワイヤハーネスが位置ずれを起こしたり、集合ワイヤハーネスを破壊してしまうおそれがある。このため低圧で成型できる低粘度のホットメルト材が好ましい。低圧で成型可能なホットメルト材としてはポリアミド系のホットメルト材が挙げられるが、ポリアミドは吸水性が高い上に、絶縁材料として用いられるポリ塩化ビニル(PVC素材)との接着性が弱く、特に環境試験後においては絶縁部との間にリークパス(隙間)が生じ、防水性能が満たされないおそれがある。
本発明のワイヤハーネス封止用樹脂組成物は、導体部および導体部を被覆する絶縁性の被覆部との密着性が極めて良好であるため、特に集合ワイヤハーネスの封止に適しており、初期はもちろんのこと冷熱試験後の防水性を保つことができる。さらには低圧成型が可能であるためワイヤハーネスにダメージを与えない低圧での封止が可能であるとともに、導体の集合部や絶縁体間の空隙まで樹脂を充填することができるため、極めて高い防水性を保つことができる。
すなわち、本発明の課題は、導体部を被覆する絶縁性の被覆部との密着性が極めて良好で、環境試験後においても極めて防水性に優れたワイヤハーネス封止用樹脂組成物を提供することである。
上記目的を達成する為、本発明者等は鋭意検討し、以下の発明を提案するに至った。
結晶性ポリエステル樹脂(A)、1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B)、およびポリオレフィン樹脂(C)を必須成分とするワイヤハーネス封止用樹脂組成物。
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)が
(1)全酸成分を100モル%としたときに、ナフタレンジカルボン酸成分を80モル%以上含有し、
(2)ガラス転移温度が30℃以下であり、
(3)融点が70℃〜210℃である
ことが好ましい。
前記ワイヤハーネスは、導体部及び導体部を被覆する絶縁性の被覆部を含むことが好ましい。
前記いずれかに記載のワイヤハーネス封止用樹脂組成物で封止されたワイヤハーネス。
本発明のワイヤハーネス封止用樹脂組成物は溶融粘度が低く、結晶化速度が適度に低いため、導体部および導体部を被覆する絶縁性の被覆部を有する集合ワイヤハーネスを容易にモールドすることができる。また、低圧で射出することができるため、射出成型法による封止でありながら、ワイヤハーネスの位置ずれを起こすことなく、ワイヤハーネスを破壊することなく封止することができる。さらに、導体ならびに絶縁体との接着性が極めて良好であるため、環境試験(冷熱試験)後においても良好な防水性を保つことができる。
本発明のワイヤハーネス封止用樹脂組成物(以下、単に封止用樹脂組成物ともいう。)は結晶性ポリエステル樹脂(A)、1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B)、およびポリオレフィン樹脂(C)を必須成分とする樹脂組成物である。
<結晶性ポリエステル樹脂(A)>
本発明に用いる結晶性ポリエステル樹脂(A)は、耐熱性の観点からナフタレンジカルボン酸成分が共重合されており、冷熱試験(冷熱サイクル)負荷の観点からガラス転移温度が30℃以下、融点が70℃〜200℃である。
結晶性ポリエステル樹脂(A)を構成する酸成分としては、全酸成分を100モル%としたときに、ナフタレンジカルボン酸成分が80モル%以上共重合されていることが必要である。好ましくは85モル%以上であり、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%であることがさらに好ましい。80モル%未満であると、ワイヤハーネス封止に必要な耐熱性が不足することがある。
ナフタレンジカルボン酸としては、例えば、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、およびそのジメチルエステル体、ジエチルエステル体等を挙げることができる。なかでも、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
その他の酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を挙げることができる。なかでも耐熱性の観点からは芳香族ジカルボン酸を共重合することが好ましく、密着性の観点からは脂肪族または脂環族ジカルボン酸が好ましい。その量としては、全酸成分を100モル%としたときに、20モル%以下であることが必要であり、好ましくは15モル%以下であり、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。
また、結晶性ポリエステル樹脂(A)を構成するグリコール成分としては1,4−ブタンジオールを含有していることが好ましく、その量としてはグリコール成分の合計量を100モル%としたとき40モル%以上であることが好ましい。更に好ましくは45モル%以上、特には50モル%以上が好ましく、最も好ましくは55モル%以上である。1,4−ブタンジオールを共重合することで、結晶性ポリエステル(A)の結晶化を促進させることができ、耐久性を付与することができる。40モル%未満であると、結晶化速度が不足しすぎ、金型離型性の悪化や、成型時間が長くなる等成型性が損なわれる上、結晶性も不足し、耐熱性が不足することがある。
その他のグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステル、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−ドデカンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族または脂環族グリコールを適宜共重合することができる。共重合量としては、全グリコール成分を100モル%としたとき、60モル%以下であることが好ましく、55モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることがさらに好ましく、45モル%以下であることが特に好ましい。60モル%を超えると結晶化速度が不足しすぎ、金型離型性の悪化や、成型時間が長くなる等成型性が損なわれる上、結晶性も不足し、耐熱性が不足することがある。
また、結晶性ポリエステル樹脂(A)においては、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ダイマージオール、水添ダイマージオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、またはポリオキシメチレングリコールの様な分子量の比較的高い脂肪族系成分に代表されるブロック的なセグメント(以下、ブロックセグメントともいう。)を導入することが好ましい。このようなブロックセグメントを共重合すると、結晶性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が低くなる。このことにより冷熱サイクル(冷熱試験)耐久性が向上し、さらにエステル基濃度が低下することにより耐加水分解性が向上するので、モールド後の耐久性が重要な場合はより好ましい方策である。
ここで言う冷熱サイクル耐久性とは、高温と低温の間を何度も昇降温させても、導体部ならびに導体部を被覆する絶縁部と封止樹脂との界面部分の剥離や、封止樹脂の亀裂が起こりにくいという性能である。冷却時に樹脂の弾性率が著しく上がると、剥離や亀裂が起こりやすくなる。
前記ダイマー酸とは、不飽和脂肪酸が重合またはDiels−Alder反応等によって二量化して生じる脂肪族または脂環族ジカルボン酸(大部分の2量体の他、3量体、モノマー等を数モル%含有するものが多い)をいい、水添ダイマー酸とは前記ダイマー酸の不飽和結合部に水素を付加させたものをいう。また、ダイマージオール、水添ダイマージオールとは、該ダイマー酸または該水添ダイマー酸の二つのカルボキシル基を水酸基に還元したものをいう。ダイマー酸またはダイマージオールとしてはコグニス社のエンポール(登録商標)若しくはソバモール(登録商標)またはユニケマ社のプリポール等が挙げられる。
前記ブロックセグメントは結晶性ポリエステル樹脂(A)の全酸成分と全グリコール成分の合計を200モル%としたとき2モル%以上であることが好ましく、さら好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、最も好ましくは20モル%以上である。上限は耐熱性やブロッキング等の取り扱い性を考慮すると70モル%以下が好ましく、より好ましくは60モル%以下であり、さらに好ましくは50モル%以下である。また、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシメチレングリコールの数平均分子量は400以上であることが好ましく、より好ましくは500以上であり、さらに好ましくは600以上であり、特に好ましくは700以上である。上限は好ましくは10000、より好ましくは6000、さらに好ましくは4000、特に好ましくは3000である。ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシメチレングリコールの数平均分子量が400未満であると、冷熱サイクル耐久性や耐加水分解性が低下することがある。一方10000を越えると、ポリエステル部分との相溶性が低下し、ブロック状に共重合することが難しくなる場合がある。
また、本発明の結晶性ポリエステル樹脂(A)は、必要に応じて無水トリメリット酸、トリメチロールプロパン等の三官能以上のポリカルボン酸やポリオールを共重合し、分岐を有するポリエステルとしても差し支えない。
結晶性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、30℃以下であることが必要である。好ましくは−10℃以下であり、より好ましくは−15℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以下であり、特に好ましくは−30℃以下である。高すぎると本発明のワイヤハーネス封止用樹脂組成物の環境試験(冷熱試験)後における防水性が低下することがある。下限は特に限定されないが、密着性や耐ブロッキング性を考慮すると−100℃以上が現実的である。
本発明の結晶性ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量は3000以上であることが好ましく、より好ましくは5000以上、さらに好ましくは7000以上である。また、数平均分子量の上限は好ましくは50000以下、より好ましくは40000以下、さらに好ましくは30000以下である。数平均分子量が3000未満であると、封止用樹脂組成物の耐加水分解性や高温高湿下での強伸度保持が不足することがあり、50000を超えると、220℃での溶融粘度が高くなることがある。
本発明の結晶性ポリエステル樹脂(A)は、不飽和基を含有していない飽和ポリエステル樹脂であることが望ましい。不飽和ポリエステルであれば、溶融時に架橋が起こる等の可能性があり、溶融安定性に劣る場合がある。
結晶性ポリエステル(A)の融点は、常温での取り扱い性と耐熱性から、70℃以上であることが必要である。好ましくは100℃以上であり、より好ましくは120℃以上であり、さらに好ましくは140℃以上であり、特に好ましくは150℃以上である。また、210℃以下であることが必要であり、好ましくは205℃以下であり、より好ましくは200℃以下である。上記範囲内であれば、本発明の封止用樹脂組成物が210〜240℃で速やかに溶融するため、封止用樹脂組成物の熱劣化を出来るだけ生じさせずに封止体を製造することができる。
本発明の結晶性ポリエステル樹脂(A)の製造方法としては、公知の方法をとることができる。例えば、上記のジカルボン酸及びジオール成分を150〜250℃でエステル化反応後、減圧しながら230〜300℃で重縮合することにより、目的の結晶性ポリエステル樹脂(A)を得ることができる。あるいは、上記のジカルボン酸のジメチルエステル等の誘導体とジオール成分を用いて150℃〜250℃でエステル交換反応後、減圧しながら230℃〜300℃で重縮合することにより、目的の結晶性ポリエステル樹脂(A)を得ることができる。
結晶性ポリエステル樹脂(A)の組成及び組成比を決定する方法としては、例えば結晶性ポリエステル樹脂(A)を重クロロホルム等の溶媒に溶解して測定するH−NMRや13C−NMR、結晶性ポリエステル樹脂(A)のメタノリシス後に測定するガスクロマトグラフィーによる定量(以下、メタノリシス−GC法と略記する場合がある)等が挙げられる。本発明においては、結晶性ポリエステル樹脂(A)を溶解でき、なおかつH−NMR測定に適する溶剤がある場合には、H−NMRで組成及び組成比を決定することとする。適当な溶剤がない場合やH−NMR測定だけでは組成比が特定できない場合には、13C−NMRやメタノリシス−GC法を採用または併用することとする。
<1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B)>
本発明においては1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B)(以下、(B)成分ともいう。)を封止用樹脂組成物に配合することにより、導体部および導体部を被覆する絶縁性被覆体との良好な初期密着性が向上する他、結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(C)の相溶化剤としての効果、さらには官能基導入による基材への濡れ性向上の効果を得ることができる。
1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B)における官能基とは、ハーネスを構成する導体、絶縁性被覆材に対する接着性を付与する官能基という観点で、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などが好ましく、その中でも特にエポキシ基が好ましい。
本発明における1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B)の含有量は、結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましい。また、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。(B)成分の含有量が0.1質量部未満の場合、結晶化遅延による応力緩和効果が発現できない上、ポリオレフィン樹脂(C)と(B)成分の相溶化剤としての働きも発現できないことがある。また、(B)成分を50質量部以上配合した場合、封止用樹脂組成物の生産性に劣り、さらには封止体の耐熱性等の特性が劣ることがある。
本発明に用いる(B)成分の例としては、エポキシ樹脂が挙げられ、分子中に平均で少なくとも1.1個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂が好ましい。分子量としては数平均分子量450〜40000の範囲が好ましく、500〜30000の範囲がより好ましい。数平均分子量が450未満では密着剤組成物が極めて軟化し易く、機械的物性が劣ることがあり、40000以上では、ポリエステル樹脂(A)との相溶性が低下し、密着性が損なわれる恐れがある。具体的にはビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテルタイプ、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステルタイプ、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルヒンダントイン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、ジグリシジルトリブロムアニリン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン、あるいは3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の脂環族あるいは脂肪族エポキサイドなどが挙げられる。これらを単独で、または2種以上を併せて用いることができる。これらのうち、特に、高い密着力を発揮させるためには結晶性ポリエステル樹脂(A)に対して相溶性が良いものが好ましい。
その他の(B)成分の例としては、ロジン系樹脂(ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、ロジンエステル等)、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂(α−ピネン、β-ピネン、リモネンなどの重合体)、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂(脂肪族系、脂環族系、芳香族系等)、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂(アルキルフェノール、フェノールキシレンホルムアルデヒド、ロジン変性フェノール樹脂等)、キシレン樹脂などが挙げられ、これらは単独あるいは2種以上をあわせて用いることができる。これらのうち、熱安定性の観点から、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂、水添石油樹脂などを使用しても良い。
<ポリオレフィン樹脂(C)>
本発明において、ポリオレフィン樹脂(C)を封止用樹脂組成物に配合することで、ワイヤハーネスの封止に際し、導体部および導体部を被覆する絶縁性被覆体と良好な密着性を示し、さらに冷熱サイクルや高温高湿環境負荷に対する密着耐久性といった優れた特性を発揮する。
本発明に用いるポリオレフィン樹脂(C)は、密度が0.75g/cm以上0.91g/cm未満であることが好ましい。このような超低密度のポリオレフィンを使用することによって、元来非相溶の結晶性ポリエステル樹脂(A)に対して、ポリオレフィン樹脂(C)を容易に微分散・混合することができ、特別な混練設備を必要とせず、均質な樹脂組成物を得ることができる。
また、低密度で結晶性も低いことで、結晶性ポリエステル樹脂(A)に生じた射出成型時の残存応力の経時的な緩和にも適切に作用し、封止樹脂として長期密着耐久性付与や環境負荷による発生応力の軽減といった好ましい特性を発揮する。このような特性を有するポリオレフィン樹脂(C)としては、ポリエチレンおよびエチレン共重合体が、入手容易、安価、金属やフィルムへの密着性に悪影響しない点で、特に好ましい。具体的には低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンプロピレンエラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体が挙げられる。
また、ポリオレフィン樹脂(C)にはカルボキシル基、グリシジル基等の結晶性ポリエステル樹脂(A)と反応しうる極性基を含まないものが好ましい。極性基が存在すると、結晶性ポリエステル樹脂(A)との相溶性が変化し、結晶性ポリエステル樹脂(A)の結晶化時のひずみエネルギーをかえって緩和できないことがある。一般に極性基を有するポリオレフィンは、極性基を有しないポリオレフィンに比べてポリエステル樹脂に対する相溶性が高い傾向にあるが、本発明では相溶性が高くなるとかえって経時的な密着性低下が大きくなる傾向にある。
ポリオレフィン樹脂(C)の含有量は、結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましい。また、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。ポリオレフィン樹脂(C)の含有量が少なすぎると、結晶性ポリエステル樹脂(A)の結晶化やエンタルピー緩和によるひずみエネルギーの緩和が難しいため、密着性や環境試験(冷熱試験)後の密着耐久性が低下することがある。多すぎても密着性が低下することがある。さらに、結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(C)が、ミクロな海島構造的相分離ではなく、マクロな相分離を起こして破断伸度が低下し、平滑な表面を得られない等、成型性に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明の封止用樹脂組成物には、密着性、柔軟性、耐久性等を改良する目的でポリエステル樹脂(A)、1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B)、ポリオレフィン樹脂(C)以外のポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、エポキシ、ポリカーボネート、アクリル、エチレンビニルアセテート、フェノール等の他の樹脂、イソシアネート化合物、メラミン等の硬化剤、タルクや雲母等の充填材、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料を配合しても全く差し支えない。その際の結晶性ポリエステル樹脂(A)は、封止用樹脂組成物全体に対して50質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。結晶性ポリエステル樹脂(A)の含有量が50質量%未満であると結晶性ポリエステル樹脂(A)自身が有する、優れた導体部および導体部を被覆する絶縁性被覆体に対する密着性、密着耐久性、伸度保持性、耐加水分解性、耐水性が低下するおそれがある。
さらには本発明の封止用樹脂組成物で封止されたワイヤハーネス(以下、ワイヤハーネス封止体ともいう。)が高温高湿度環境に長期間曝される場合には、酸化防止剤を添加することが好ましい。例えば、ヒンダードフェノール系として、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,1,3−トリ(4−ヒドロキシ−2−メチル−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパノイック酸、ペンタエリトリチル テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−メチル−ベンゼンプロパノイック酸、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、リン系として、3,9−ビス(p−ノニルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリ(モノノニルフェニル)フォスファイト、トリフェノキシフォスフィン、イソデシルフォスファイト、イソデシルフェニルフォスファイト、ジフェニル2−エチルヘキシルフォスファイト、ジノニルフェニルビス(ノニルフェニル)エステルフォスフォラス酸、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルフォスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ペンタエリスリトールビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルフォスファイト)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルフォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール ジフォスファイト、チオエーテル系として4,4’−チオビス[2−t−ブチル−5−メチルフェノール]ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオネート]、チオビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−5−メチル−4,1−フェニレン]ビス[3−(テトラデシルチオ)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス(3−n−ドデシルチオプロピオネート)、ビス(トリデシル) チオジプロピオネートが挙げられ、これらを単独に、または複合して使用できる。添加量は封止用樹脂組成物全体に対して0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。0.1質量%未満だと熱劣化防止効果に乏しくなることがある。5質量%を超えると、密着性等に悪影響を与える場合がある。
本発明のワイヤハーネス封止用樹脂組成物においては、無機物を添加することができる。無機物としては炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブテン、炭化カルシウム、ダイヤモンドカーボンラクタム等の各種炭化物;窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等の各種窒化物、ホウ化ジルコニウム等の各種ホウ化物;酸化チタン(チタニア)、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム等の各種酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の各種チタン酸化合物;二硫化モリブデン等の硫化物;フッ化マグネシウム、フッ化炭素等の各種フッ化物;ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸;その他、滑石、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、ベントナイト、カオリン、ガラス繊維、雲母等を用いることができる。これらの無機物を添加することによって、耐熱性、さらには機械的強度を向上させることが可能となる場合がある。
その他にも、チキソ性付与剤、粘着付与剤、加水分解防止剤、レベリング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料、染料を用いることができる。
さらには樹脂分解抑制剤としてカルボジイミド等を適宜使用することもできる。これらは単独もしくは併用で用いることができる。
本発明のワイヤハーネス封止用樹脂組成物にはワックスを添加しても良い。ワックスを添加することで、溶融粘度を低下させることができ、成型時に集合ワイヤハーネスの導体部と導体部の隙間や、絶縁体と絶縁体の隙間に密に封止用樹脂組成物を充填させることができる。ワックスとしては例えば、動物ワックス、植物ワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、木蝋、蜜蝋、鉱物ワックス、石油ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、高級脂肪酸ワックス、高級脂肪酸エステルワックス、フィッシャー・トロプシュワックス等が挙げられる。
ワックスの含有量は、成型性向上、及び粘度低下による被着体への濡れ性向上の観点から、封止用樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは3〜50質量部、より好ましくは5〜40質量部、更に好ましくは7〜20質量部である。3質量部より少ないと効果が少なく、50質量部より多いと物性が低下することがある。また、耐熱性の観点からワックスの融点は70℃以上が好ましい。
本発明のワイヤハーネス封止用樹脂組成物には難燃性を付与するために難燃剤を添加しても良い。難燃剤の種類としては特に限定されないが、臭素化ポリスチレン、リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハロゲン系化合物、三酸化アンチモン、熱膨張性黒鉛、赤燐などが挙げられる。
難燃剤の含有量は、難燃性付与の観点から、封止用樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは10〜80質量部、より好ましくは20〜70質量部、更に好ましくは30〜60質量部である。10質量部より少ないと難燃性付与効果が少なく、80質量部より多いと物性が低下する他、流動性が乏しくなり、成型性が顕著に劣る。
本発明の封止用樹脂組成物は220℃での溶融粘度が5〜4000dPa・sであることが望ましい。ここで220℃での溶融粘度は以下のようにして測定した値である。すなわち、封止用樹脂組成物を水分率0.1%以下に乾燥し、次いで島津製作所株式会社製フローテスター(型番CFT−500C)にて、220℃に加温安定した封止用樹脂組成物を、1.0mmの孔径を有する厚み10mmのダイを98N/cmの圧力で通過させたときの粘度の測定値である。4000dPa・s超の高溶融粘度になると、高い樹脂凝集力や耐久性が得られるが、高圧の射出成型の際に圧力を高くすることが必要となるため、ワイヤハーネスの位置ずれや破損を生じることがある。1000dPa・s以下の溶融粘度が好ましく、より好ましくは500dPa・s以下の溶融粘度を有する封止用樹脂組成物である。このような封止用樹脂組成物を使用することで、ワイヤハーネスを金型内部にセットした金型の中に0.1〜30MPaの比較的低い射出圧力で、防水性に優れたモールド部品が得られると共に、ワイヤハーネスの特性も損ねない。また、封止用樹脂組成物注入操作の観点からは220℃での溶融粘度は低いほうが好ましいが、封止用樹脂組成物の密着性や凝集力を考慮すると下限としては5dPa・s以上が望ましく、さらに好ましくは10dPa・s以上、より好ましくは50dPa・s以上、最も好ましくは100dPa・s以上である。
本発明のワイヤハーネス封止用樹脂組成物は、ワイヤハーネスの導体部と導体部を被覆する絶縁性被覆体部分をセットした金型に注入することで成型される。より具体的には、スクリュータイプのホットメルト成型加工用アプリケーターを用いた場合において、130〜220℃前後で加熱溶融し、射出ノズルを通じて金型へ注入され、その後一定の冷却時間を経た後、成型物を金型から取り外して成型物を得ることが出来る。
本発明のワイヤハーネス封止体は、ワイヤハーネスを挿入した金型に本発明の封止用樹脂組成物を溶融して注入することによって製造することができる。より具体的には、スクリュータイプのホットメルト成型加工用アプリケーターを用いた場合において、200〜280℃前後で加熱溶融し、射出ノズルを通じて金型へ注入され、その後一定の冷却時間を経た後、成型物を金型から取り外してワイヤハーネス封止体を得ることができる。封止用樹脂組成物の注入時の温度および圧力は、温度130℃以上260℃以下かつ圧力0.1MPa以上10MPa以下であることが好ましい。このような条件で封止されることにより、封止されるワイヤハーネスの破損が生じにくく、またショートショット、バリおよびひけのない形状良好なワイヤハーネス封止体を得やすい。
ホットメルト成型加工用アプリケーターの型式は特に限定されないが、例えば独国Nordson社製ST2、井元製作所製竪型押し出し成型機等が挙げられる。
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例、比較例を挙げるが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。尚、実施例、比較例に記載された各測定値は次の方法によって測定したものである。また、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。
<融点、ガラス転移温度の測定>
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量分析計「DSC220型」にて、測定試料5mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、一度250℃で5分ホールドした後、液体窒素で急冷して、その後−150℃から250℃まで、20℃/minの昇温速度で測定した。得られた曲線の変曲点をガラス転移温度、吸熱ピークを融点とした。
<溶融特性試験>
封止用樹脂組成物の溶融粘度の評価方法
島津製作所製、フローテスター(CFT−500C型)にて、220℃に設定した加熱体中央のシリンダー中に水分率0.1%以下に乾燥した封止用樹脂組成物を充填し、充填1分経過後、プランジャーを介して試料に荷重を加え、圧力1MPaで、シリンダー底部のダイ(孔径:1.0mm、厚み:10mm)より溶融した試料を押し出し、プランジャーの降下距離と降下時間を記録し、溶融粘度を算出した。
<低圧成型性評価>
ワイヤハーネスとしてAVS0.3f電線(自動車用薄肉低圧電線(薄肉電線タイプ)導体の素線数15,導体の素線径0.18mm,導体の外径0.8mm,絶縁体の厚さ0.5mm(住友電装社製))を6本準備し、導体部の先端を融着させて、導体部及び絶縁体部を有する集合ワイヤハーネスを作製した。この集合ワイヤハーネスの導体部と絶縁体部の両方がモールドされるように直径1cm、長さ5cmの円柱状の成型品(ワイヤハーネス封止体)を作製した。成型条条件としては、成型樹脂温度220℃、成型圧力15MPa、保圧圧力3MPa、射出時間60秒、冷却時間15秒設定である。
評価基準
○:集合ワイヤハーネスの導体部、絶縁樹脂の露出がなく成型でき、ヒケ、ショートが無い。
△:集合ワイヤハーネスの導体部、絶縁樹脂の露出がなく成型できるが、ショートショットもしくはヒケが見られる。
×:ショートショット有り。または集合ワイヤハーネスの導体部、絶縁樹脂の露出あり。
<初期防水性評価>
上記のように成型したワイヤハーネス封止品において、モールド部および電線を全て水の中に浸漬し、6本の電線チューブ1本1本に対し100kPaのエアーを吹き込んだ。ワイヤハーネス封止体のモールド根元またはエアーを吹き込んでいないチューブからの気泡の発生の有無によって初期防水性を評価した。
評価基準
○:6本とも気泡の発生が無い。
△:1〜2本気泡が発生した。
×:3本以上気泡が発生した。
<高温試験後防水性評価>
初期防水性を評価したのと同様にして作製したワイヤハーネス封止品に対して、105℃で240時間の環境負荷を与えた後にモールド部および電線を全て水の中に浸漬し、6本の電線チューブ1本1本に対し100kPaのエアーを吹き込んだ。ワイヤハーネス封止体のモールド根元またはエアーを吹き込んでいないチューブからの気泡の発生の有無によって高温試験後防水性を評価した。
評価基準
○:6本とも気泡の発生が無い。
△:1〜2本気泡が発生した。
×:3本以上気泡が発生した。
<低温試験後防水性評価>
初期防水性を評価したのと同様にして作製したワイヤハーネス封止品に対して、−30℃で240時間の環境負荷を与えた後にモールド部および電線を全て水の中に浸漬し、6本の電線チューブ1本1本に対し100kPaのエアーを吹き込んだ。ワイヤハーネス封止体のモールド根元またはエアーを吹き込んでいないチューブからの気泡の発生の有無によって低温試験後防水性を評価した。
評価基準
○:6本とも気泡の発生が無い。
△:1〜2本気泡が発生した。
×:3本以上気泡が発生した。
<冷熱サイクル試験後防水性評価>
初期防水性を評価したのと同様にして作製したワイヤハーネス封止品に対して、−30℃で30分、次いで80℃で30分の環境下に置くことを1サイクルとして、100サイクルの環境負荷を与えた。その後、モールド部および電線を全て水の中に浸漬し、6本の電線チューブ1本1本に対し100kPaのエアーを吹き込んだ。ワイヤハーネス封止体のモールド根元またはエアーを吹き込んでいないチューブからの気泡の発生の有無によって冷熱サイクル試験後防水性を評価した。
評価基準
○:6本とも気泡の発生が無い。
△:1〜2本気泡が発生した。
×:3本以上気泡が発生した。
結晶性ポリエステル樹脂の製造例
撹拌機、温度計、溜出用冷却器を装備した反応缶内に2,6−ナフタレンジカルボン酸216質量部、1,4−ブタンジオール180質量部、テトラブチルチタネート0.25質量部を加え、170〜220℃で2時間エステル化反応を行った。エステル化反応終了後、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール「PTMG1000」(三菱化学社製)を400質量部とヒンダードフェノール系酸化防止剤「イルガノックス1330」(チバガイギー社製)を0.5質量部投入し、255℃まで昇温する一方、系内をゆっくり減圧にしてゆき、60分かけて255℃で665Paとした。そしてさらに133Pa以下で30分間重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂A1を得た。このポリエステル樹脂A1のガラス転移温度は−70℃、融点は160℃であった。
結晶性ポリエステル樹脂A2〜A6は、結晶性ポリエステル樹脂A1と同様な方法により合成した。それぞれの組成及び物性値を表1に示す。
表1中の略号は以下の通りである。
TPA:テレフタル酸、NDC:2,6−ナフタレンジカルボン酸、IPA:イソフタル酸、DIA:水添ダイマー酸、BD:1,4−ブタンジオール、PTMG1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1000)、PTMG2000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量2000)
ワイヤハーネス封止用樹脂組成物1の製造例
ワイヤハーネス封止用樹脂組成物1は、結晶性ポリエステル樹脂(A−1)100質量部、1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B1)5質量部、ポリオレフィン樹脂(C1)10質量部を均一に混合した後、二軸押し出し機を用いてダイ温度220℃において溶融混練することによって得た。
ワイヤハーネス封止用樹脂組成物2〜13の製造例
表2に示す成分及び配合によりワイヤハーネス封止用樹脂組成物1と同様に封止用樹脂組成物2〜13を作製した。
実施例1
ワイヤハーネス封止用樹脂組成物として、封止用樹脂組成物1を用いて溶融特性(溶融粘度)試験、低圧成型性評価、初期防水性評価、高温試験後防水性評価、低温試験後防水性評価、冷熱サイクル試験後防水性評価を行った。
溶融粘度は450dPa・s,であり、低圧成型性良好であった。また、初期防水性評価、高温試験後防水性評価、低温試験後防水性評価、冷熱サイクル試験後防水性評価についても良好であった。
実施例2〜13
実施例1と同様に各項目の評価を行った。評価結果を表2に示した。
ワイヤハーネス封止用樹脂組成物14の製造例
ワイヤハーネス封止用樹脂組成物14は、結晶性ポリエステル樹脂(A−1)100質量部、ポリオレフィン樹脂(C)10質量部を均一に混合した後、二軸押し出し機を用いてダイ温度220℃において溶融混練することによって得た。
ワイヤハーネス封止用樹脂組成物15〜18の製造例
表3に示す成分及び配合によりワイヤハーネス封止用樹脂組成物8と同様に封止用樹脂組成物15〜18を作製した。
比較例1
ワイヤハーネス封止用樹脂組成物として、封止用樹脂組成物14を用いて溶融特性(溶融粘度)試験、低圧成型性評価、初期防水性評価、高温試験後防水性評価、低温試験後防水性評価、冷熱サイクル試験後防水性評価を行った。
溶融粘度は650dPa・s,であり、低圧成型性は良好であった。また、初期防水性評価については実施例1〜13と比較して悪化しており、さらに高温試験後防水性評価、低温試験後防水性評価、冷熱サイクル試験後防水性評価については防水性が顕著に低下した。
比較例2〜5
比較例1と同様に各項目の評価を行った。評価結果を表3に示した。
表2、表3中の略号は以下の通りである。
1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B1):JER(登録商標)1007、ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノール型エポキシ樹脂。
1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B2):UG4070、東亞合成(株)製、多官能エポキシ樹脂。
1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B3):パインクリスタル(登録商標)KR−85、荒川化学工業社製、超淡色ロジン
1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B4):YSポリスター(登録商標)T160、ヤスハラケミカル(株)製、テルペンフェノール樹脂
ポリオレフィン樹脂(C1):エクセレン(登録商標)VL EUL731、住友化学(株)製、α−オレフィン共重合超低密度ポリエチレン、密度0.90。
ポリオレフィン樹脂(C2):アドマー(登録商標)SF−600、三井化学(株)製、接着性ポリオレフィン、密度0.88。
OM−673:Macromelt(登録商標) OM673(ポリアミド系ホットメルト材(ヘンケル社製))(ガラス転移温度:−45℃、軟化点185℃)
TH-865:Thermelt865(ポリアミド系ホットメルト材(東亜合成社製))(軟化点155℃)
実施例1〜13は特許請求の範囲を満たし、初期防水性、高温試験後防水性、低温試験後防水性、冷熱サイクル試験後防水性が良好である。これに対し、比較例1は1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B)が含まれず、比較例2はポリオレフィン樹脂(C)が含まれず、比較例3は化合物(B)も(C)も含まれず本発明の範囲外であり、環境試験後の防水性の低下が大きい。比較例4、5はポリアミド系のホットメルト材であり、環境試験後の防水性の低下が大きい。
本発明のワイヤハーネス封止用樹脂組成物は、自動車、二輪車、電子機器、電送部品、トランス・コイルパワーモジュール及びそのデバイス、リレー、センサー等のワイヤハーネス封止に有用である。

Claims (4)

  1. 結晶性ポリエステル樹脂(A)、1分子に1個以上の官能基を有する化合物(B)、およびポリオレフィン樹脂(C)を必須成分とするワイヤハーネス封止用樹脂組成物。
  2. 前記結晶性ポリエステル樹脂(A)が
    (1)全酸成分を100モル%としたときに、ナフタレンジカルボン酸成分を80モル%以上含有し、
    (2)ガラス転移温度が30℃以下であり、
    (3)融点が70℃〜210℃である
    ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス封止用樹脂組成物。
  3. 前記ワイヤハーネスが導体部及び導体部を被覆する絶縁性の被覆部を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤハーネス封止用樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のワイヤハーネス封止用樹脂組成物で封止されたワイヤハーネス。
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