JP2017171796A - ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有しており、また、生産性にも優れ、特に、電池用セパレータに好適に用いることができるポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム及びその製造方法を提供する。【解決手段】厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/100mLであり、JIS K 7127:1999に準じて、測定方向の長さ80mm、幅15mm及び厚み15〜28μmの試験片を用いて、チャック間距離40mm、試験速度200mm/分にてそれぞれ測定された、フィルムの流れ方向(MD:Machine Direction)の引張強度SMD、及び前記流れ方向に対する垂直方向(TD:Transverse Direction)の引張強度STDが、下記式(1)及び(2)の関係を満たす、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム。0.13≦SMD/STD≦0.80 …(1)170MPa≦SMD+STD≦400MPa …(2)【選択図】なし

Description

本発明は、優れた透気性及び機械的強度を備え、電池用、特にリチウムイオン二次電池用セパレータに好適に用いることができる、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム及びその製造方法に関する。
二次電池は、OA(Office Automation)化やFA(Factory Automation)化に伴って需要が増加し、さらに、家庭用電器や通信機器等のポータブル機器用電源にも広く使用されている。特に、ポータブル機器においては、容積効率に優れ、装填する機器の小型化及び軽量化が図れることから、リチウムイオン二次電池の使用が増加している。
一方、エネルギーや環境関連の分野においては、例えば、ロードレベリング、いわゆるUPS(Uninterruptible Power Supply)等の無停電電源装置、電気自動車等における大型の二次電池の研究開発が進められており、大容量、高出力、高電圧及び優れた長期保存性の観点から、非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
リチウムイオン二次電池の正極と負極との間には、内部短絡の防止の観点から、電池用セパレータが設けられている。この電池用セパレータには、その役割から当然に絶縁性が要求され、さらに、リチウムイオンの通路となるための透気性及び電解液の拡散及び保持機能も要求される。これらの要求を満たすために、電池用セパレータは、微細孔構造である必要があり、多孔性フィルムが使用されている。
さらに、リチウムイオン二次電池用セパレータにおいては、上記のように、透気性を有する多孔性でありながらも、電池の異常により熱暴走を起こした場合においても、破膜や収縮を生じて電極間が短絡し、電池が異常発熱することに起因する発火等の事故を防止できることが要求される。このため、セパレータの安全性を高める上で、より機械的強度が高いもの、具体的には、突刺強度が高い多孔性フィルムが求められている。
このような多孔性フィルムは、一般にポリオレフィン系樹脂を主成分としており、その主な製造方法は、湿式法、乾式一軸延伸法、及び乾式二軸延伸法の3種に大別される。
湿式法は、超高分子量のポリマーを用いることができることから、突刺強度が高い多孔性フィルムが得られるものの、多孔化のために可塑剤を溶剤で抽出する工程が必要であるため製造コストが高いという課題を有していた。
これに対して、例えば、特許文献1〜5には、乾式一軸延伸法又は乾式二軸延伸法が開示されており、これらの乾式法では、汎用的な延伸装置を用いて製造することができるため、湿式法よりも低コストであり、生産性にも優れている。
特表2003−519723号公報 特開2014−70092号公報 特開2013−23673号公報 特開平11−297297号公報 特開2015−4017号公報
上記特許文献1〜3には、乾式一軸延伸法によりポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを得ることが記載されているが、特許文献1に記載の方法では、十分な突刺強度が得られない。また、特許文献2及び3においては、より高い突刺強度が得られるものの、未延伸の原反フィルムを一旦巻き取り、アニール処理した後、冷延伸及び熱延伸を経るため、効率的な連続生産が困難であり、生産性に劣る。
一方、上記特許文献4には、乾式二軸延伸法により製造される積層フィルムの突刺強度が高いことが記載されているが、厚み1μm当たりの突刺強度は明らかでない。また、同文献に記載の方法においては、低温延伸、高温縦延伸及び高温横延伸を行うため、フィルムの巻き替え頻度が多く、効率的な連続生産が困難であり、また、延伸倍率も低いことから、生産性に乏しい。
また、上記特許文献5には、縦延伸後、横延伸を行う、乾式二軸延伸法により、β晶活性を有するポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを得ることが記載されているが、乾式一軸延伸法と比較して同等以上の突刺強度は得られていない。
したがって、電池用セパレータには、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有する多孔性フィルムが求められており、また、このようなフィルムを効率的に生産することができる方法も求められている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有しており、また、生産性にも優れ、特に、電池用セパレータに好適に用いることができるポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明の多孔性フィルムは、連続生産が可能な乾式二軸延伸法の工程条件に着目して検討し、従来よりも突刺強度を向上させることができる手法を見出したことに基づき、優れた透気性及び高い突刺強度の両立を可能としたものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1]厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/100mLであり、JIS K 7127:1999に準じて、測定方向の長さ80mm、幅15mm及び厚み15〜28μmの試験片を用いて、チャック間距離40mm、試験速度200mm/分にてそれぞれ測定された、フィルムの流れ方向(MD:Machine Direction)の引張強度SMD、及び前記流れ方向に対する垂直方向(TD:Transverse Direction)の引張強度STDが、下記式(1)及び(2)の関係を満たす、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム。
0.13≦SMD/STD≦0.80 …(1)
170MPa≦SMD+STD≦400MPa …(2)
[2]厚み1μm当たりの突刺強度が21.5gf以上である、上記[1]に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム。
[3]前記ポリプロピレン系樹脂がβ晶活性を有している、上記[1]又は[2]に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム。
[4]上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを有する電池用セパレータ。
[5]上記[4]に記載の電池用セパレータを有する電池。
[6]β晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練し、ポリプロピレン系樹脂の膜状物を成形する成形工程と、前記膜状物を延伸して多孔性フィルムを得る延伸工程とを含み、前記延伸工程において、前記膜状物を前記フィルムの流れ方向(MD)に対する垂直方向(TD)への横延伸を行った後、前記フィルムの流れ方向(MD)への縦延伸を行い、前記縦延伸の倍率に対する前記横延伸の倍率の比を3.0以上とする、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムの製造方法。
[7]前記横延伸の倍率が5.5〜12.0倍である、上記[6]に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムの製造方法。
本発明のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムは、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有しており、また、生産性にも優れている。このため、このポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムは、電池用セパレータに好適に用いることができ、電池の安全性の向上に寄与し得る。
また、本発明の製造方法によれば、前記ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを、簡便かつ効率的に製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム]
本発明のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムは、厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/100mLであり、JIS K 7127:1999に準じて、測定方向の長さ80mm、幅15mm及び厚み15〜28μmの試験片を用いて、チャック間距離40mm、試験速度200mm/分にてそれぞれ測定された、フィルムの流れ方向(MD)の引張強度SMD、及び前記流れ方向に対する垂直方向(TD)の引張強度STDが、所定の関係式を満たすものである。
本発明の多孔性フィルムは、MD及びTDの各方向の引張強度を所定の条件を満たすものとすることにより、優れた透気性及び高い突刺強度の両立が図られたものである。
(ポリプロピレン系樹脂)
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、及びプロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記各共重合体の構成単位の由来成分であるプロピレン以外のα−オレフィンの具体例としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記各共重合体においては、前記α−オレフィンに由来する構成単位の含有量(α−オレフィン含有量)は、延伸によりポリプロピレン系樹脂を多孔化させやすくする観点から、10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下である。同様の観点から、前記各共重合体におけるプロピレンに由来する構成単位の含有量は、90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上である。
ポリプロピレン系樹脂は、機械的強度や耐熱性の維持等の観点から、ホモポリプロピレンであることが好ましい。この場合、機械的強度の観点から、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85〜99%、さらに好ましくは90〜99%である。
ここで、「アイソタクチックペンタッド分率」とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同じ方向に位置する立体構造の割合を意味する。13C−NMRスペクトルのメチル基領域のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位から求められる。なお、メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli, et al.,“Macromolecules”Volume 8, Issue 5, pp.687-689 (1975)に記載の方法に準拠するものとする。
ポリプロピレン系樹脂の分子量は、製膜安定性や生産性、フィルムの機械的強度等の観点から、高温ゲル浸透クロマトグラフィー(高温GPC法)により測定される重量平均分子量(Mw)が100,000〜3,000,000であることが好ましく、より好ましくは100,000〜1,000,000である。
同様の観点から、分子量分布を示すパラメーターである重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnが1.5〜10.0であることが好ましく、より好ましくは2.0〜8.0、さらに好ましくは2.0〜6.0である。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC法によって求められ、Mw/Mnが1に近いほど分子量分布の幅が狭いことを意味する。
また、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されるものではないが、0.5〜15g/10分であることが好ましく、より好ましくは1.0〜10g/10分である。0.5g/10分以上であれば、成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く、良好な生産性を確保することができる。また、15g/10分以下であれば、フィルムの機械的強度を十分に保持することができる。
なお、前記MFRは、JIS K 7210−1:2014に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。
ポリプロピレン系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の重合触媒を用いた重合方法を用いればよく、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法等を用いることができる。
ポリプロピレン系樹脂としては、市販品では、例えば、「ノバテックPP」、「ウィンテック」(日本ポリプロ株式会社製);「ノティオ」、「タフマーXR」(三井化学株式会社製);「ゼラス」、「サーモラン」(三菱化学株式会社製);「住友ノーブレン」、「タフセレン」(住友化学株式会社製);「プライムポリプロ」、「プライムTPO」(株式会社プライムポリマー製);「アドフレックス」、「アドシル」、「HMS−PP(PF−814)」(サンアロマー株式会社製);「インスパイア」、「バーシファイ」(ダウ・ケミカル社製)等を使用することができる。
また、ポリプロピレン系樹脂は、多孔化促進や成形加工性の付与の観点から、本発明の効果を損なわない範囲において、2種以上のポリプロピレン系樹脂の併用のほか、変性ポリオレフィン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂もしくはその変性体、エチレン系共重合体、低分子量ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー等が添加されていてもよい。熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン系、ポリオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル系、アイオノマー等が挙げられる。
また、成形加工性や生産性、多孔性フィルムの諸物性の改善や調整等の観点から、本発明の効果を損なわない範囲において、トリミングロス等により生じるリサイクル樹脂、シリカ、タルク、カオリン及び炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
本発明の多孔性フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂は、β晶活性を有していることが好ましい。β晶活性を有しているということは、フィルムを多孔化する前のポリプロピレン系樹脂の膜状物がβ晶を生成していたことを示していると言える。前記膜状物中にβ晶が生成されていれば、多孔化する延伸工程において、好適な微細孔が形成されやすく、透気性に優れた多孔性フィルムが得られる。
ポリプロピレン系樹脂がβ晶活性を有していることは、示差走査型熱量測定(DSC:Differential scanning calorimetry)において、β晶に由来する結晶融解ピーク温度が検出されることにより判断することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により判断することができる。
また、β晶活性を有していることは、広角X線回折測定により得られる回折プロファイルにおいて、回折ピークが検出されることによっても判断することができる。具体的には、フィルムをポリプロピレン系樹脂の結晶融解ピーク温度を超える温度である170〜190℃で熱処理し、徐冷した後、広角X線測定を行い、β晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0°〜16.5°の範囲に検出された場合、β晶活性を有しているものと判断される(“Macromolecular Chemistry and Physics” Volume 187, Issue 3, pp.643-652 (1986)、“Progress in Polymer Science” Volume 16, Issues 2-3, pp.361-404 (1991)、“Macromolecular Symposia” Volume 89, Issue 1, pp.499-511 (1995)、“Macromolecular Chemistry and Physics” Volume 75, Issue 1, pp.134-158, (1964)参照)。
前記多孔性フィルムにおけるβ晶活性の程度であるβ晶活性度は、20%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは60%以上である。β晶活性度が高いほど、フィルムを多孔化する前のポリプロピレン系樹脂の膜状物中でβ晶が多く生成されていると言え、多孔化する延伸工程において、均一な微細孔が多く形成されやすく、透気性に優れ、かつ、機械的強度が高い多孔性フィルムが得られる。β晶活性度の上限値は、特に限定されるものではないが、100%に近いほど好ましい。
なお、β晶活性度は、検出されるα晶由来の結晶融解熱量ΔHmαとβ晶由来の結晶融解熱量ΔHmβの合計のうちのΔHmβの割合として求められる。
例えば、ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合、ΔHmβは、主に145℃以上160℃未満の温度範囲にて検出され、ΔHmαは、主に160〜170℃の温度範囲にて検出される。このΔHmαとΔHmβから、ホモポリプロピレンのβ晶活性度を算出することができる。
また、例えば、ポリプロピレン系樹脂がエチレンを1〜4モル%含有するランダム共重合体である場合は、ΔHmβは、主に120℃以上140℃未満の温度範囲にて検出され、ΔHmαは、主に140〜165℃の温度範囲にて検出される。このΔHmαとΔHmβから、前記ランダム共重合体のβ晶活性度を算出することができる。
β晶活性を有するポリプロピレン系樹脂を得る方法としては、ポリプロピレン系樹脂にα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレン系樹脂を添加する方法(特許第3739481号公報参照)、樹脂組成物にβ晶核剤を添加する方法等が挙げられる。これらのうち、β晶活性を効率的に発現させる観点から、β晶核剤を添加する方法により得ることが好ましい。
(透気抵抗度)
本発明の多孔性フィルムは、十分な透気性を有するものであり、厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/100mLである。
本発明で言う透気抵抗度は、JIS P 8117:2009に準拠して、ガーレー法により測定された、空気100mLが厚み方向に通過するのに要する時間を表している。したがって、数値が小さいほど空気が通過しやすいことを示している。
前記透気抵抗度が10秒/100mL未満の場合、該多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用した際に、内部短絡等の事故を生じるおそれがあり、十分な安全性が得られない。15秒/100mL以上であることが好ましく、より好ましくは20秒/100mL以上である。一方、透気抵抗度が1000秒/100mLを超えると、該多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用した際に、電気抵抗が高くなり、電池性能が低下するため好ましくない。800秒/100mL以下であることが好ましく、より好ましくは600秒/100ml以下である。
なお、透気抵抗度は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
(引張強度)
本発明の多孔性フィルムは、JIS K 7127:1999に準じて、測定方向の長さ80mm、幅15mm及び厚み15〜28μmの試験片を用いて、チャック間距離40mm、試験速度200mm/分にてそれぞれ測定された、フィルムのMDの引張強度SMD、及びTDの引張強度STDが、下記式(1)及び(2)の関係を満たすものである。
0.13≦SMD/STD≦0.80 …(1)
170MPa≦SMD+STD≦400MPa …(2)
引張強度SMDと引張強度STDとが上記式(1)及び(2)に示すような関係を満たすことにより、優れた透気性を有しつつ、高い突刺強度を有するポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを構成することができる。
なお、引張強度は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
引張強度SMDと引張強度STDの比SMD/STDは、0.13〜0.80であり、好ましくは0.2〜0.75である。SMD/STDが0.13未満である場合、フィルムの空孔率が低く、十分な透気性が得られない。一方、0.80を超える場合は、十分な突刺強度を有するフィルムが得られない。
また、引張強度SMDと引張強度STDの和SMD+STDは、170〜400MPaであり、好ましくは200〜350MPaである。SMD+STDが170MPa未満である場合、十分な突刺強度を有するフィルムが得られない。一方、400MPaを超える場合は、フィルムの空孔率が低く、十分な透気性が得られない虞がある。
(突刺強度)
本発明の多孔性フィルムの厚み1μm当たりの突刺強度は21.5gf/μm以上であることが好ましく、より好ましくは22.0gf/μm以上である。厚み1μm当たりの突刺強度が21.5gf/μm以上であれば、薄膜化した場合においても、該ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムは、十分な突刺強度を有していると言える。一方、前記突刺強度の上限は、特に限定されるものではないが、他のフィルム物性とのバランスを考慮して、35gf/μm以下であることが好ましい。
なお、突刺強度は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
(厚み)
本発明の多孔性フィルムの厚みは、1〜500μmであることが好ましく、より好ましくは2〜100μm、さらに好ましくは3〜50μm、よりさらに好ましくは5〜30μmである。厚みが1μm以上であれば、該多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用した際に、十分な電気絶縁性が得られ、短絡が生じにくく、電池の十分な安全性が確保される。また、捲回して電池に収容する際にも破れにくい。また、500μm以下であれば、電池用セパレータとして使用した際に、該多孔性フィルム自体の電気抵抗が小さくなり、十分な電池性能が確保される。
なお、厚みは、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
(積層構成)
本発明のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムは、単層で優れた透気性かつ高い突刺強度を有するものであるが、該多孔性フィルムの機能を妨げない範囲において、他の層を積層させて用いてもよい。例えば、高融解温度樹脂層や、耐熱性粒子及び結着剤等からなる塗布層等による耐熱層、あるいはまた、低融解温度樹脂層によるシャットダウン層等を積層させた構成とすることができる。
積層構成とする場合の層数は、該フィルムの用途及び使用目的等に応じて適宜選択することができ、2〜7層であることが好ましく、生産性やコスト等の観点から、より好ましくは2層又は3層である。各層の厚さ及び繰り返し積層数等も、該フィルムの用途及び使用目的等に応じて適宜調整することができる。
[ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムの製造方法]
上記のようなポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムは、その製造方法は、特に限定されるものではないが、β晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練し、ポリプロピレン系樹脂の膜状物を成形する成形工程と、前記膜状物を延伸して多孔性フィルムを得る延伸工程とを含み、前記延伸工程において、前記膜状物をTDへの横延伸を行った後、MDへの縦延伸を行い、前記縦延伸の倍率に対する前記横延伸の倍率の比を3.0以上とする、本発明の製造方法により好適に製造することができる。
このような製造方法によれば、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有するポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを生産性よく製造することができる。
以下、上記製造方法を各工程順に説明する。
(成形工程)
まず、成形工程においては、β晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練し、ポリプロピレン系樹脂の膜状物を成形する。
<β晶核剤>
β晶核剤は、上述したように、β晶活性を有するポリプロピレン系樹脂を得るために配合されるものである。ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成及び成長を促進することができるものであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。
例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノサイズの酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウム等のカルボン酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム等の芳香族スルホン酸化合物;二塩基又は三塩基カルボン酸のジ又はトリエステル類;フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分aと第2族元素金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分bとからなる2成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物等が挙げられる。その他、特開2003−306585号公報、特開平8−144122号公報又は特開平9−194650号公報に具体的に記載されている物質を用いることもできる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
β晶核剤の市販品としては、「エヌジェスターNU−100」(新日本理化株式会社製)、また、β晶核剤が配合されたポリプロピレン系樹脂の市販品としては、ポリプロピレン「Bepol B−022SP」(Aristech社製)、ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」(Borealis社製)、ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」(Mayzo社製)等が挙げられる。
β晶核剤の配合量は、β晶核剤の種類やポリプロピレン系樹脂の組成等により適宜調整されるが、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.0001〜5質量部の割合で配合されることが好ましい。より好ましくは0.001〜3質量部、さらに好ましくは0.01〜2質量部である。β晶核剤の配合割合が0.0001質量部以上であれば、β晶の生成及び成長を促進し、多孔性フィルムにおいて十分なβ晶活性を有するものとすることができる。また、5質量部以下であれば、多孔性フィルム表面へのβ晶核剤のブリードが抑制され、かつ、コスト面からも好ましい。
<溶融混練及び成形>
前記溶融混練及び成形は、公知の方法を用いることができ、例えば、押出機を用いてβ晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化する押出成形による方法、また、チューブラー法で製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法等が挙げられる。これらのうち、押出成形による方法がより好ましい。具体的には、以下のような方法で行うことが好ましい。
溶融混練は、ポリプロピレン系樹脂、β晶核剤、及び必要に応じて添加される添加剤等を、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーもしくはタンブラー型ミキサー等を用いて、又は袋に収容してハンドブレンドにて混合した後、一軸又は二軸押出機、ニーダー等にて行い、樹脂組成物をペレット化することが好ましい。
混練温度は、β晶核剤の種類や配合量にもよるが、β晶核剤の分散性及びポリプロピレン樹脂の加熱による劣化等の観点から、230〜380℃であることが好ましく、より好ましくは240〜350℃である。高温のポリプロピレン系樹脂に対して溶解し得るβ晶核剤を用いる場合は、β晶核剤の分散性の観点から、完全に溶解する温度で溶融混練することが好ましい。
溶融混練後に得られた樹脂組成物のペレットを押出機に投入し、Tダイから押出して膜状物を成形することが好ましい。Tダイのギャップは、所望の多孔性フィルムの厚みや、延伸条件、ドラフト率等の各種条件から決定されるが、生産性や製膜安定性等の観点から、一般的には0.1〜3.0mmであり、好ましくは0.3〜1.5mmである。
押出温度は、樹脂組成物の流動性や成形性等に応じて適宜調整されるが、生産性や製膜安定性、ポリプロピレン樹脂の加熱による劣化等の観点から、160〜380℃であることが好ましく、より好ましくは165〜350℃、さらに好ましくは170〜300℃である。
キャストロールによる冷却固化温度は、膜状物中のβ晶の比率を十分に高くするため、また、製膜安定性等の観点から、80〜150℃であることが好ましく、より好ましくは90〜140℃、さらに好ましくは100〜135℃である。
(延伸工程)
次に、延伸工程で、前記膜状物を延伸して多孔性フィルムを得る。前記成形工程で得られたβ晶を有する樹脂組成物からなる膜状物を延伸することにより、微細孔が多数形成され、厚み方向に連通性を有する多孔質フィルムを得ることができる。
延伸方法としては、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法等の手法があるが、本発明に係る製造方法においては、逐次二軸延伸法を用いる。
前記逐次二軸延伸法においては、前記膜状物をTDへの横延伸を行った後、MDへの縦延伸を行う。このような延伸工程は、各延伸で得られたシートの巻き替えを行う必要がなく、連続的に行うことができるため、生産性に優れている。
前記縦延伸の倍率に対する前記横延伸の倍率の比は、3.0以上とする。すなわち、先に行う横延伸の倍率を後に行う縦延伸の倍率よりも大きくし、[横延伸倍率/縦延伸倍率]の比を3.0以上として横延伸、縦延伸の順に行う。
このように、膜状物を延伸破断しない範囲で高倍率に横延伸した後、得られた横延伸シートを、横延伸よりも低い倍率で縦延伸することにより、引張強度STDの方が引張強度SMDよりも高く、SMD/STDが0.13以上0.80以下であるとする前記式(1)に示した条件を満たし、かつ、SMD及びSTDの和SMD+STDは、170MPa以上400MPa以下であるとする前記式(2)に示した条件を満たすポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを好適に得ることができる。このような多孔性フィルムは、優れた透気性を有しつつ、従来の乾式一軸延伸法又は乾式二軸延伸法では到達し得なかった高い突刺強度を備えているものである。
[横延伸倍率/縦延伸倍率]の比が3.0未満では、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有する多孔性フィルムを得ることが困難である。
横延伸での延伸温度は、良好な延伸性及び効率的な多孔化の観点から、60〜140℃であることが好ましく、より好ましくは70〜130℃である。
また、横延伸倍率は、STDが向上し、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有する多孔性フィルムを得る観点から、5.5〜12.0倍であることが好ましく、より好ましくは6.0〜11.0倍、さらに好ましくは6.5〜10.0倍である。
一方、縦延伸での延伸温度は、フィルムを破断することなく、均一な延伸を行う観点から、また、ポリプロピレン系樹脂が溶融することなく、効率的に気孔を拡大させる観点から、60〜160℃であることが好ましく、より好ましくは70〜155℃、さらに好ましくは80〜150℃である。
また、縦延伸倍率は、延伸時の破断を抑制しつつ、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有する多孔性フィルムを得る観点から、1.2〜4.0倍であることが好ましく、より好ましくは1.3〜3.5倍である。
横延伸の歪み速度は、多孔性フィルムの透気性及び引張強度の調整容易性等の観点から、100〜12000%/分であることが好ましく、より好ましくは800〜10000%/分、さらに好ましくは1000〜8000%/分である。
一方、縦延伸の歪み速度は、多孔性フィルムの透気性及び引張強度の調整容易性等の観点から、10〜3000%/分であることが好ましく、より好ましくは20〜2000%/分、さらに好ましくは50〜1000%/分である。
なお、寸法安定性の改善等の観点から、横延伸及び縦延伸のいずれか又は両方の後、熱処理を施してもよい。熱処理温度は100〜170℃であることが好ましく、より好ましくは120〜170℃である。熱処理時間は、1〜120秒間であることが好ましく、より好ましくは3〜60秒間である。
さらに、本発明の多孔性フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、用途及び使用目的等に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面加工や、ミシン目加工等を施してもよい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムの製造]
実施例及び比較例のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムの製造に用いた原材料は、以下のとおりである。
<ポリプロピレン>
・「ノバテックPP FY6HA」(日本ポリプロ株式会社製);MFR:2.4g/10分(230℃、2.16kg荷重)、アイソタクチックペンタッド分率98%、Mw:470,000、Mw/Mn:4.0
<β晶核剤>
・B−1:2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド;「エヌジェスターNU−100」(新日本理化株式会社製)
・B−2:3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン
<酸化防止剤>
・「IRGANOX B 225」(BASFジャパン株式会社製)
(実施例1)
ポリプロピレン100質量部に対して、β晶核剤(B−1)0.2質量部、及び酸化防止剤0.1質量部を配合し、同方向二軸押出機(東芝機械株式会社製、口径40mm、スクリューの有効長Lと外径Dの比L/D=32)に投入し、設定温度280℃で溶融混練した。得られたストランドを水槽で冷却固化し、ペレタイザーでカットし、ペレットを作製した。
作製したペレットを、単軸押出機(三菱重工業株式会社製)を用いて、200℃で溶融混練後、ギャップ0.8mm、200℃のTダイより押出した溶融樹脂シートを127℃のキャストロールで引き取り、冷却固化し、厚み約120μmの膜状物を得た。この膜状物のβ晶活性度は62%であった。
得られた膜状物をフィルムテンター設備(京都機械株式会社製)に通して、80℃に予熱し、横延伸した後、155℃で10秒間熱処理を行い、徐冷して横延伸シートを得た。続いて、この横延伸シートを100℃で縦延伸し、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを得た。この多孔性フィルムはβ晶活性を有しているものであった。
横延伸(延伸1)及び縦延伸(延伸2)の延伸条件は、表1に示すとおりである。
(実施例2〜5、比較例2及び3)
実施例1において、延伸条件を表1に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを製造した。
なお、実施例5においては、β晶核剤としてB−1に代えて、B−2を用いた。また、膜成物の厚みは約80μmであった。
(比較例1)
実施例1において、縦延伸(延伸2)を行わずに、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを製造した。
(比較例4)
実施例1において、縦延伸を延伸1とし、その後、横延伸を延伸2として行い、それ以外は実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを製造した。
[物性評価及び測定]
上記実施例及び比較例で製造した各ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムに関し、以下に示す方法により、各種物性評価及び測定を行った。
<引張強度>
JIS K 7127:1999に準じた方法により測定した。測定装置は、引張圧縮試験機(200X型、株式会社インテスコ製)を用いた。試験片は、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムから測定方向の長さ80mm、幅15mmの長方形に切り出したものを用いた。試験片の長さ方向の両端部をチャック間距離40mmでチャックし、クロスヘッドスピード200mm/分で引っ張り、破断点における応力を引張強度として5回測定し、その平均値を求めた。
<厚み>
ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムから直径40mmの試料片を切り出し、目量1/1000mmのダイヤルゲージにて、フィルム面内の任意の5箇所で厚みを測定し、その平均値を求めた。
<空孔率>
厚み測定で作製した試料片について測定した実質量Wと、樹脂組成物の原材料から算出した密度と厚みから算出した空孔率0%の場合の質量Wから、下記式にて算出した。
空孔率[%]={(W−W)/W}×100
<透気抵抗度(ガーレー値)>
厚み測定で作製した試料片を用いて、JIS P 8117:2009に準拠して、ガーレー法により透気抵抗度(秒/100mL)を測定し、厚み1μm当たりに換算した。
<突刺強度>
厚み測定で作製した試料片をホルダー(測定部:直径10mmの円形)に固定し、直径1mm、先端曲率半径0.5mmの金属(SUS440C)製針を厚み方向に300mm/分の速さで突き刺し、穴が開口する最大荷重を測定し、厚み1μm当たりに換算した。
<β晶活性の有無(DSC)>
ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム10mgを秤量して試料とし、示差走査型熱量計(DSC−7、株式会社パーキンエルマージャパン製;以下、同様。)にて、窒素ガス雰囲気下で、25℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持した後、200℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、さらに25℃から200℃まで加熱速度10℃/分で再昇温した。再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度Tmβである145〜160℃にピークが検出された場合を、「β晶活性を有している」とした。
下記実施例及び比較例の膜状物のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムは、いずれも、β晶活性を有していることが確認された。
<膜状物のβ晶活性度(DSC)>
延伸前の膜状物について、10mgを秤量して試料とし、示差走査型熱量計にて、窒素ガス雰囲気下で、25℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温した。昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度Tmβである145〜160℃にピークが検出されることにより、「β晶活性を有している」ことを確認した。
膜状物のβ晶活性度を、DSCにて検出されるポリプロピレン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量ΔHmα及びβ晶由来の結晶融解熱量ΔHmβから下記式にて算出した。
β晶活性度[%]={ΔHmβ/(ΔHmα+ΔHmβ)}×100
下記実施例及び比較例の膜状物のβ晶活性度は、いずれも62%であった。
実施例及び比較例で製造した各ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムについての各種物性の測定及び評価結果を、下記表1にまとめて示す。
Figure 2017171796
表1に示した結果から分かるように、横延伸後、縦延伸を行うことにより得られた、引張強度SMD及びSTDが所定の条件を満たすポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム(実施例1〜5)は、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有していることが認められた。
一方、引張強度が所定の条件を満たしていない場合(比較例1〜4)は、透気性及び突刺強度ともに十分と言えるものは得られなかった。
本発明のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムは、上述したように、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有するものであり、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の各種蓄電デバイス、中でも、電池用、特にリチウムイオン二次電池用のセパレータ等に好適に用いることができる。
さらに、使い捨て紙オムツ等の体液吸収用パット、手術衣等の医療用材料、ジャンパー、雨着等の衣料用材料、家屋防水材、断熱材等の建築用材料、乾燥剤、使い捨てカイロ等の包装材料、各種フィルター、工業用ろ過膜等の液体処理材料等の資材等、透気性が要求される種々の用途での幅広い利用が期待される。

Claims (7)

  1. 厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/100mLであり、JIS K 7127:1999に準じて、測定方向の長さ80mm、幅15mm及び厚み15〜28μmの試験片を用いて、チャック間距離40mm、試験速度200mm/分にてそれぞれ測定された、フィルムの流れ方向(MD)の引張強度SMD、及び前記流れ方向に対する垂直方向(TD)の引張強度STDが、下記式(1)及び(2)の関係を満たす、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム。
    0.13≦SMD/STD≦0.80 …(1)
    170MPa≦SMD+STD≦400MPa …(2)
  2. 厚み1μm当たりの突刺強度が21.5gf以上である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム。
  3. 前記ポリプロピレン系樹脂がβ晶活性を有している、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを有する電池用セパレータ。
  5. 請求項4に記載の電池用セパレータを有する電池。
  6. β晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練し、ポリプロピレン系樹脂の膜状物を成形する成形工程と、前記膜状物を延伸して多孔性フィルムを得る延伸工程とを含み、
    前記延伸工程において、前記膜状物を前記フィルムの流れ方向(MD)に対する垂直方向(TD)への横延伸を行った後、前記フィルムの流れ方向(MD)への縦延伸を行い、前記縦延伸の倍率に対する前記横延伸の倍率の比を3.0以上とする、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムの製造方法。
  7. 前記横延伸の倍率が5.5〜12.0倍である、請求項6に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムの製造方法。
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