JP2017171796A - ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、エネルギーや環境関連の分野においては、例えば、ロードレベリング、いわゆるUPS(Uninterruptible Power Supply)等の無停電電源装置、電気自動車等における大型の二次電池の研究開発が進められており、大容量、高出力、高電圧及び優れた長期保存性の観点から、非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
湿式法は、超高分子量のポリマーを用いることができることから、突刺強度が高い多孔性フィルムが得られるものの、多孔化のために可塑剤を溶剤で抽出する工程が必要であるため製造コストが高いという課題を有していた。
また、上記特許文献5には、縦延伸後、横延伸を行う、乾式二軸延伸法により、β晶活性を有するポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを得ることが記載されているが、乾式一軸延伸法と比較して同等以上の突刺強度は得られていない。
[1]厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/100mLであり、JIS K 7127:1999に準じて、測定方向の長さ80mm、幅15mm及び厚み15〜28μmの試験片を用いて、チャック間距離40mm、試験速度200mm/分にてそれぞれ測定された、フィルムの流れ方向(MD:Machine Direction)の引張強度SMD、及び前記流れ方向に対する垂直方向(TD:Transverse Direction)の引張強度STDが、下記式(1)及び(2)の関係を満たす、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム。
0.13≦SMD/STD≦0.80 …(1)
170MPa≦SMD+STD≦400MPa …(2)
[2]厚み1μm当たりの突刺強度が21.5gf以上である、上記[1]に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム。
[3]前記ポリプロピレン系樹脂がβ晶活性を有している、上記[1]又は[2]に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム。
[5]上記[4]に記載の電池用セパレータを有する電池。
[7]前記横延伸の倍率が5.5〜12.0倍である、上記[6]に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムの製造方法。
また、本発明の製造方法によれば、前記ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを、簡便かつ効率的に製造することができる。
[ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム]
本発明のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムは、厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/100mLであり、JIS K 7127:1999に準じて、測定方向の長さ80mm、幅15mm及び厚み15〜28μmの試験片を用いて、チャック間距離40mm、試験速度200mm/分にてそれぞれ測定された、フィルムの流れ方向(MD)の引張強度SMD、及び前記流れ方向に対する垂直方向(TD)の引張強度STDが、所定の関係式を満たすものである。
本発明の多孔性フィルムは、MD及びTDの各方向の引張強度を所定の条件を満たすものとすることにより、優れた透気性及び高い突刺強度の両立が図られたものである。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、及びプロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記各共重合体の構成単位の由来成分であるプロピレン以外のα−オレフィンの具体例としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記各共重合体においては、前記α−オレフィンに由来する構成単位の含有量(α−オレフィン含有量)は、延伸によりポリプロピレン系樹脂を多孔化させやすくする観点から、10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下である。同様の観点から、前記各共重合体におけるプロピレンに由来する構成単位の含有量は、90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上である。
ここで、「アイソタクチックペンタッド分率」とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同じ方向に位置する立体構造の割合を意味する。13C−NMRスペクトルのメチル基領域のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位から求められる。なお、メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli, et al.,“Macromolecules”Volume 8, Issue 5, pp.687-689 (1975)に記載の方法に準拠するものとする。
同様の観点から、分子量分布を示すパラメーターである重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnが1.5〜10.0であることが好ましく、より好ましくは2.0〜8.0、さらに好ましくは2.0〜6.0である。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC法によって求められ、Mw/Mnが1に近いほど分子量分布の幅が狭いことを意味する。
なお、前記MFRは、JIS K 7210−1:2014に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。
また、成形加工性や生産性、多孔性フィルムの諸物性の改善や調整等の観点から、本発明の効果を損なわない範囲において、トリミングロス等により生じるリサイクル樹脂、シリカ、タルク、カオリン及び炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
例えば、ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合、ΔHmβは、主に145℃以上160℃未満の温度範囲にて検出され、ΔHmαは、主に160〜170℃の温度範囲にて検出される。このΔHmαとΔHmβから、ホモポリプロピレンのβ晶活性度を算出することができる。
また、例えば、ポリプロピレン系樹脂がエチレンを1〜4モル%含有するランダム共重合体である場合は、ΔHmβは、主に120℃以上140℃未満の温度範囲にて検出され、ΔHmαは、主に140〜165℃の温度範囲にて検出される。このΔHmαとΔHmβから、前記ランダム共重合体のβ晶活性度を算出することができる。
本発明の多孔性フィルムは、十分な透気性を有するものであり、厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/100mLである。
本発明で言う透気抵抗度は、JIS P 8117:2009に準拠して、ガーレー法により測定された、空気100mLが厚み方向に通過するのに要する時間を表している。したがって、数値が小さいほど空気が通過しやすいことを示している。
前記透気抵抗度が10秒/100mL未満の場合、該多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用した際に、内部短絡等の事故を生じるおそれがあり、十分な安全性が得られない。15秒/100mL以上であることが好ましく、より好ましくは20秒/100mL以上である。一方、透気抵抗度が1000秒/100mLを超えると、該多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用した際に、電気抵抗が高くなり、電池性能が低下するため好ましくない。800秒/100mL以下であることが好ましく、より好ましくは600秒/100ml以下である。
なお、透気抵抗度は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
本発明の多孔性フィルムは、JIS K 7127:1999に準じて、測定方向の長さ80mm、幅15mm及び厚み15〜28μmの試験片を用いて、チャック間距離40mm、試験速度200mm/分にてそれぞれ測定された、フィルムのMDの引張強度SMD、及びTDの引張強度STDが、下記式(1)及び(2)の関係を満たすものである。
0.13≦SMD/STD≦0.80 …(1)
170MPa≦SMD+STD≦400MPa …(2)
引張強度SMDと引張強度STDとが上記式(1)及び(2)に示すような関係を満たすことにより、優れた透気性を有しつつ、高い突刺強度を有するポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを構成することができる。
なお、引張強度は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
また、引張強度SMDと引張強度STDの和SMD+STDは、170〜400MPaであり、好ましくは200〜350MPaである。SMD+STDが170MPa未満である場合、十分な突刺強度を有するフィルムが得られない。一方、400MPaを超える場合は、フィルムの空孔率が低く、十分な透気性が得られない虞がある。
本発明の多孔性フィルムの厚み1μm当たりの突刺強度は21.5gf/μm以上であることが好ましく、より好ましくは22.0gf/μm以上である。厚み1μm当たりの突刺強度が21.5gf/μm以上であれば、薄膜化した場合においても、該ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムは、十分な突刺強度を有していると言える。一方、前記突刺強度の上限は、特に限定されるものではないが、他のフィルム物性とのバランスを考慮して、35gf/μm以下であることが好ましい。
なお、突刺強度は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
本発明の多孔性フィルムの厚みは、1〜500μmであることが好ましく、より好ましくは2〜100μm、さらに好ましくは3〜50μm、よりさらに好ましくは5〜30μmである。厚みが1μm以上であれば、該多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用した際に、十分な電気絶縁性が得られ、短絡が生じにくく、電池の十分な安全性が確保される。また、捲回して電池に収容する際にも破れにくい。また、500μm以下であれば、電池用セパレータとして使用した際に、該多孔性フィルム自体の電気抵抗が小さくなり、十分な電池性能が確保される。
なお、厚みは、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
本発明のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムは、単層で優れた透気性かつ高い突刺強度を有するものであるが、該多孔性フィルムの機能を妨げない範囲において、他の層を積層させて用いてもよい。例えば、高融解温度樹脂層や、耐熱性粒子及び結着剤等からなる塗布層等による耐熱層、あるいはまた、低融解温度樹脂層によるシャットダウン層等を積層させた構成とすることができる。
積層構成とする場合の層数は、該フィルムの用途及び使用目的等に応じて適宜選択することができ、2〜7層であることが好ましく、生産性やコスト等の観点から、より好ましくは2層又は3層である。各層の厚さ及び繰り返し積層数等も、該フィルムの用途及び使用目的等に応じて適宜調整することができる。
上記のようなポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムは、その製造方法は、特に限定されるものではないが、β晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練し、ポリプロピレン系樹脂の膜状物を成形する成形工程と、前記膜状物を延伸して多孔性フィルムを得る延伸工程とを含み、前記延伸工程において、前記膜状物をTDへの横延伸を行った後、MDへの縦延伸を行い、前記縦延伸の倍率に対する前記横延伸の倍率の比を3.0以上とする、本発明の製造方法により好適に製造することができる。
このような製造方法によれば、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有するポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを生産性よく製造することができる。
以下、上記製造方法を各工程順に説明する。
まず、成形工程においては、β晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練し、ポリプロピレン系樹脂の膜状物を成形する。
β晶核剤は、上述したように、β晶活性を有するポリプロピレン系樹脂を得るために配合されるものである。ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成及び成長を促進することができるものであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。
例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノサイズの酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウム等のカルボン酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム等の芳香族スルホン酸化合物;二塩基又は三塩基カルボン酸のジ又はトリエステル類;フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分aと第2族元素金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分bとからなる2成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物等が挙げられる。その他、特開2003−306585号公報、特開平8−144122号公報又は特開平9−194650号公報に具体的に記載されている物質を用いることもできる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記溶融混練及び成形は、公知の方法を用いることができ、例えば、押出機を用いてβ晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化する押出成形による方法、また、チューブラー法で製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法等が挙げられる。これらのうち、押出成形による方法がより好ましい。具体的には、以下のような方法で行うことが好ましい。
次に、延伸工程で、前記膜状物を延伸して多孔性フィルムを得る。前記成形工程で得られたβ晶を有する樹脂組成物からなる膜状物を延伸することにより、微細孔が多数形成され、厚み方向に連通性を有する多孔質フィルムを得ることができる。
延伸方法としては、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法等の手法があるが、本発明に係る製造方法においては、逐次二軸延伸法を用いる。
前記逐次二軸延伸法においては、前記膜状物をTDへの横延伸を行った後、MDへの縦延伸を行う。このような延伸工程は、各延伸で得られたシートの巻き替えを行う必要がなく、連続的に行うことができるため、生産性に優れている。
このように、膜状物を延伸破断しない範囲で高倍率に横延伸した後、得られた横延伸シートを、横延伸よりも低い倍率で縦延伸することにより、引張強度STDの方が引張強度SMDよりも高く、SMD/STDが0.13以上0.80以下であるとする前記式(1)に示した条件を満たし、かつ、SMD及びSTDの和SMD+STDは、170MPa以上400MPa以下であるとする前記式(2)に示した条件を満たすポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを好適に得ることができる。このような多孔性フィルムは、優れた透気性を有しつつ、従来の乾式一軸延伸法又は乾式二軸延伸法では到達し得なかった高い突刺強度を備えているものである。
[横延伸倍率/縦延伸倍率]の比が3.0未満では、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有する多孔性フィルムを得ることが困難である。
また、横延伸倍率は、STDが向上し、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有する多孔性フィルムを得る観点から、5.5〜12.0倍であることが好ましく、より好ましくは6.0〜11.0倍、さらに好ましくは6.5〜10.0倍である。
また、縦延伸倍率は、延伸時の破断を抑制しつつ、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有する多孔性フィルムを得る観点から、1.2〜4.0倍であることが好ましく、より好ましくは1.3〜3.5倍である。
一方、縦延伸の歪み速度は、多孔性フィルムの透気性及び引張強度の調整容易性等の観点から、10〜3000%/分であることが好ましく、より好ましくは20〜2000%/分、さらに好ましくは50〜1000%/分である。
さらに、本発明の多孔性フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、用途及び使用目的等に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面加工や、ミシン目加工等を施してもよい。
実施例及び比較例のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムの製造に用いた原材料は、以下のとおりである。
・「ノバテックPP FY6HA」(日本ポリプロ株式会社製);MFR:2.4g/10分(230℃、2.16kg荷重)、アイソタクチックペンタッド分率98%、Mw:470,000、Mw/Mn:4.0
<β晶核剤>
・B−1:2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド;「エヌジェスターNU−100」(新日本理化株式会社製)
・B−2:3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン
<酸化防止剤>
・「IRGANOX B 225」(BASFジャパン株式会社製)
ポリプロピレン100質量部に対して、β晶核剤(B−1)0.2質量部、及び酸化防止剤0.1質量部を配合し、同方向二軸押出機(東芝機械株式会社製、口径40mm、スクリューの有効長Lと外径Dの比L/D=32)に投入し、設定温度280℃で溶融混練した。得られたストランドを水槽で冷却固化し、ペレタイザーでカットし、ペレットを作製した。
作製したペレットを、単軸押出機(三菱重工業株式会社製)を用いて、200℃で溶融混練後、ギャップ0.8mm、200℃のTダイより押出した溶融樹脂シートを127℃のキャストロールで引き取り、冷却固化し、厚み約120μmの膜状物を得た。この膜状物のβ晶活性度は62%であった。
得られた膜状物をフィルムテンター設備(京都機械株式会社製)に通して、80℃に予熱し、横延伸した後、155℃で10秒間熱処理を行い、徐冷して横延伸シートを得た。続いて、この横延伸シートを100℃で縦延伸し、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを得た。この多孔性フィルムはβ晶活性を有しているものであった。
横延伸(延伸1)及び縦延伸(延伸2)の延伸条件は、表1に示すとおりである。
実施例1において、延伸条件を表1に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを製造した。
なお、実施例5においては、β晶核剤としてB−1に代えて、B−2を用いた。また、膜成物の厚みは約80μmであった。
実施例1において、縦延伸(延伸2)を行わずに、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを製造した。
実施例1において、縦延伸を延伸1とし、その後、横延伸を延伸2として行い、それ以外は実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを製造した。
上記実施例及び比較例で製造した各ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムに関し、以下に示す方法により、各種物性評価及び測定を行った。
JIS K 7127:1999に準じた方法により測定した。測定装置は、引張圧縮試験機(200X型、株式会社インテスコ製)を用いた。試験片は、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムから測定方向の長さ80mm、幅15mmの長方形に切り出したものを用いた。試験片の長さ方向の両端部をチャック間距離40mmでチャックし、クロスヘッドスピード200mm/分で引っ張り、破断点における応力を引張強度として5回測定し、その平均値を求めた。
ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムから直径40mmの試料片を切り出し、目量1/1000mmのダイヤルゲージにて、フィルム面内の任意の5箇所で厚みを測定し、その平均値を求めた。
厚み測定で作製した試料片について測定した実質量W1と、樹脂組成物の原材料から算出した密度と厚みから算出した空孔率0%の場合の質量W0から、下記式にて算出した。
空孔率[%]={(W0−W1)/W0}×100
厚み測定で作製した試料片を用いて、JIS P 8117:2009に準拠して、ガーレー法により透気抵抗度(秒/100mL)を測定し、厚み1μm当たりに換算した。
厚み測定で作製した試料片をホルダー(測定部:直径10mmの円形)に固定し、直径1mm、先端曲率半径0.5mmの金属(SUS440C)製針を厚み方向に300mm/分の速さで突き刺し、穴が開口する最大荷重を測定し、厚み1μm当たりに換算した。
ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム10mgを秤量して試料とし、示差走査型熱量計(DSC−7、株式会社パーキンエルマージャパン製;以下、同様。)にて、窒素ガス雰囲気下で、25℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持した後、200℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、さらに25℃から200℃まで加熱速度10℃/分で再昇温した。再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度Tmβである145〜160℃にピークが検出された場合を、「β晶活性を有している」とした。
下記実施例及び比較例の膜状物のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムは、いずれも、β晶活性を有していることが確認された。
延伸前の膜状物について、10mgを秤量して試料とし、示差走査型熱量計にて、窒素ガス雰囲気下で、25℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温した。昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度Tmβである145〜160℃にピークが検出されることにより、「β晶活性を有している」ことを確認した。
膜状物のβ晶活性度を、DSCにて検出されるポリプロピレン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量ΔHmα及びβ晶由来の結晶融解熱量ΔHmβから下記式にて算出した。
β晶活性度[%]={ΔHmβ/(ΔHmα+ΔHmβ)}×100
下記実施例及び比較例の膜状物のβ晶活性度は、いずれも62%であった。
一方、引張強度が所定の条件を満たしていない場合(比較例1〜4)は、透気性及び突刺強度ともに十分と言えるものは得られなかった。
さらに、使い捨て紙オムツ等の体液吸収用パット、手術衣等の医療用材料、ジャンパー、雨着等の衣料用材料、家屋防水材、断熱材等の建築用材料、乾燥剤、使い捨てカイロ等の包装材料、各種フィルター、工業用ろ過膜等の液体処理材料等の資材等、透気性が要求される種々の用途での幅広い利用が期待される。
Claims (7)
- 厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/100mLであり、JIS K 7127:1999に準じて、測定方向の長さ80mm、幅15mm及び厚み15〜28μmの試験片を用いて、チャック間距離40mm、試験速度200mm/分にてそれぞれ測定された、フィルムの流れ方向(MD)の引張強度SMD、及び前記流れ方向に対する垂直方向(TD)の引張強度STDが、下記式(1)及び(2)の関係を満たす、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム。
0.13≦SMD/STD≦0.80 …(1)
170MPa≦SMD+STD≦400MPa …(2) - 厚み1μm当たりの突刺強度が21.5gf以上である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム。
- 前記ポリプロピレン系樹脂がβ晶活性を有している、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルム。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムを有する電池用セパレータ。
- 請求項4に記載の電池用セパレータを有する電池。
- β晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練し、ポリプロピレン系樹脂の膜状物を成形する成形工程と、前記膜状物を延伸して多孔性フィルムを得る延伸工程とを含み、
前記延伸工程において、前記膜状物を前記フィルムの流れ方向(MD)に対する垂直方向(TD)への横延伸を行った後、前記フィルムの流れ方向(MD)への縦延伸を行い、前記縦延伸の倍率に対する前記横延伸の倍率の比を3.0以上とする、ポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムの製造方法。 - 前記横延伸の倍率が5.5〜12.0倍である、請求項6に記載のポリプロピレン系樹脂多孔性フィルムの製造方法。
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