JP2017185647A - 積層多孔性フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、エネルギーや環境関連の分野においては、例えば、ロードレベリング、いわゆるUPS(Uninterruptible Power Supply)等の無停電電源装置、電気自動車等における大型の二次電池の研究開発が進められており、大容量、高出力、高電圧及び優れた長期保存性の観点から、非水電解液二次電池の1種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
また、特許文献3では、耐熱樹脂を特定量以上含むことにより、収縮率を低減できるとしているが、組成物中の半分以上がポリオレフィン樹脂であるため、樹脂組成物中のモルフォロジー構造より、該耐熱樹脂は、ポリオレフィン樹脂からなる海相に島相として分散していると考えられる。このため、実際には、耐熱性の向上が十分に図られているとは言い難い。
さらに、特許文献2及び3に記載の多孔性フィルムは、その製造方法において、添加される希釈剤を多量の洗浄溶媒を用いて洗浄除去する工程を要し、多量の洗浄溶剤の使用は環境上も好ましくなく、また、生産性にも劣るものである。
[1]少なくとも第1層と第2層とが積層された積層多孔性フィルムであって、前記第1層は、結晶融解ピーク温度又はガラス転移温度が170℃以上である熱可塑性樹脂(A)を主成分とする耐熱層であり、前記第2層は、ポリプロピレン系樹脂(B)及びビニル芳香族エラストマー(C)を含有する樹脂組成物(X)を主成分とする多孔層であり、前記ビニル芳香族エラストマー(C)が、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトマスフローレイトが1g/10分以下である、積層多孔性フィルム。
[2]前記熱可塑性樹脂(A)がポリメチルペンテン系樹脂である、上記[1]に記載の積層多孔性フィルム。
[3]前記第1層がフィラー(D)を含む、上記[1]又は[2]に記載の積層多孔性フィルム。
[4]前記ビニル芳香族エラストマー(C)の前記樹脂組成物(X)中の含有量が15〜50質量%である、上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の積層多孔性フィルム。
[5]透気抵抗度が1〜100秒/100mLである、上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の積層多孔性フィルム。
[6]150℃で1時間加熱後の熱収縮率が10%以下である、上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の積層多孔性フィルム。
[7]上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の積層多孔性フィルムの製造方法であって、結晶融解ピーク温度又はガラス転移温度が170℃以上である熱可塑性樹脂(A)を含む第1成分と、ポリプロピレン系樹脂(B)及びビニル芳香族系エラストマー(C)を含む第2成分とを、それぞれ、希釈剤を用いずに溶融混練し、前記第1成分の無孔膜状物と前記第2成分の無孔膜状物との積層無孔膜状物を成形する工程と、前記積層無孔膜状物を少なくとも1つの方向に延伸する工程とを含む、積層多孔性フィルムの製造方法。
[8]上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の積層多孔性フィルムを有する電池用セパレータ。
[9]上記[8]に記載の電池用セパレータを有する電池。
また、本発明の製造方法によれば、簡便かつ効率的に、しかも、環境への悪影響が少ない方法で、前記積層多孔性フィルムを得ることができる。
本発明の積層多孔性フィルムは、少なくとも第1層と第2層とが積層されているものである。第1層は、結晶融解ピーク温度又はガラス転移温度が170℃以上である熱可塑性樹脂(A)を主成分とする耐熱層であり、第2層は、ポリプロピレン系樹脂(B)及びビニル芳香族エラストマー(C)を含有する樹脂組成物を主成分とする多孔層である。そして、ビニル芳香族エラストマー(C)が、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトマスフローレイト(MFR)が1g/10分以下であることを特徴としている。
本発明の積層多孔性フィルムは、このような第1層と第2層とを含む積層構造によって、優れた耐熱性及び透気性の両立が図られたものである。
第1層は、結晶融解ピーク温度又はガラス転移温度が170℃以上である熱可塑性樹脂(A)を主成分とする耐熱層である。
ここで、「熱可塑性樹脂(A)を主成分とする」とは、第1層(耐熱層)の構成成分のうち、熱可塑性樹脂(A)の質量割合が最も多いことを意味し、具体的には、第1層中の50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
積層多孔性フィルムが、このような結晶融解ピーク温度又はガラス転移温度が高い熱可塑性樹脂を主成分とする耐熱層を含むことにより、第2層(多孔層)に耐熱性を付与することができ、積層多孔性フィルムの熱収縮を抑制することができる。なお、積層多孔性フィルムの透気性を確保する観点から、耐熱層である第1層も多孔性を有するものである。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(A)は、結晶融解ピーク温度又はガラス転移温度が170℃以上である。結晶融解ピーク温度及びガラス転移温度の両方が170℃以上であってもよい。
ここで、「結晶融解ピーク温度」とは、JIS K7121:2012に準拠して、示差走査熱量計を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温した際に検出された結晶融解温度のピーク値を指す。また、「ガラス転移温度」とは、JIS K7121:2012に準拠して、示差走査熱量計を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させた際に検出されたDSC(Differential scanning calorimetry)曲線から求めた温度を指す。
結晶融解ピーク温度又はガラス転移温度が170℃以上であれば、第2層(多孔層)に対して優れた耐熱性を付与することができ、該積層多孔性フィルムを電池用セパレータに用いた場合、電池の異常発熱時の高温状態においても、熱収縮を抑制することができる。前記結晶融解ピーク温度又はガラス転移温度は、180℃以上であることが好ましく、より好ましくは190℃以上である。
一方、前記結晶融解ピーク温度又はガラス転移温度の上限は、特に限定されないが、該積層多孔性フィルムの成形加工時における樹脂の劣化の抑制や、電池用セパレータとしての使用時における十分な機械的強度の確保等の観点から、350℃以下であることが好ましく、より好ましくは300℃以下である。
具体例としては、ポリメチルペンテン系樹脂;エチレン−プロピレン−ジエン等のポリオレフィン系エラストマー;ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリエーテル系樹脂;ポリフェニレンスルファイド;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン612等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン系樹脂;メタクリル樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;フッ素系樹脂;ポリエステル系樹脂;アラミド樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、第2層に用いられるポリプロピレン系樹脂(B)との接着性の観点から、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂が好ましく、ポリメチルペンテン系樹脂が特に好ましい。
前記各共重合体の構成単位の由来成分である4−メチル−1−ペンテン以外のα−オレフィンとしては、炭素数2〜20のα−オレフィンが好ましく、具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、1−ヘキサデセン、1−ドデセン、1−テトラドデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記各共重合体においては、前記α−オレフィンに由来する構成単位の含有量(α−オレフィン含有量)は、延伸により熱可塑性樹脂(A)を多孔化させやすくする観点から、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。
なお、前記MFRは、JIS K7210−1:2014に準拠して、温度260℃、荷重5kgの条件で測定した値である。
本発明で用いられるフィラー(D)は、無機フィラー又は有機フィラーのいずれでもよく、また、有機無機ハイブリッド粒子も用いることができる。これらは、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
有機フィラーは、熱可塑性樹脂(A)と比べて、結晶融解ピーク温度又はガラス転移温度が高い樹脂粒子が好ましく、ゲル分率4〜10%程度の架橋樹脂粒子がより好ましい。具体例としては、超高分子量(分子量約100万〜700万)ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等の熱可塑性樹脂;ポリイミド、ポリエーテルイミド、メラミン、ベンゾグアナミン等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
有機無機ハイブリッド粒子の具体例としては、ポリシロキサン架橋構造体からなるシリコーン微粒子等が挙げられる。
これらのうち、該積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いた場合、電解液との反応性が不活性である点から、金属酸化物、有機無機ハイブリッド粒子が好ましく、特に、熱可塑性樹脂(A)との親和性や分散性の観点から、有機無機ハイブリッド粒子が好ましい。
ここで言うフィラー(D)の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定された値である。
第2層は、ポリプロピレン系樹脂(B)及びビニル芳香族エラストマー(C)を含有する樹脂組成物(X)を主成分とする多孔層である。
ここで、「樹脂組成物(X)を主成分とする」とは、第2層(多孔層)の構成成分のうち、樹脂組成物(X)の質量割合が最も多いことを意味し、具体的には、第2層中の50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
第2層がビニル芳香族エラストマー(C)を含んでいることにより、均一な多孔構造を効率的に形成しやすく、また、孔の形状や径の制御が容易となり、透過性に優れた積層多孔性フィルムを得ることができる。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(B)としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、及びプロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記各共重合体の構成単位の由来成分であるプロピレン以外のα−オレフィンの具体例としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記各共重合体においては、前記α−オレフィンに由来する構成単位の含有量(α−オレフィン含有量)は、延伸によりポリプロピレン系樹脂(B)を多孔化させやすくする観点から、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。
ここで、「アイソタクチックペンタッド分率」とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同じ方向に位置する立体構造の割合を意味する。13C−NMRスペクトルのメチル基領域のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位から求められる。なお、メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al.,“Macromolecules” vol.8, Issue 5, pp.687-689 (1975)に記載の方法に準拠するものとする。
同様の観点から、分子量分布を示すパラメータである重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnが1.5〜10.0であることが好ましく、より好ましくは2.0〜8.0、さらに好ましくは2.0〜6.0である。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC法によって求められ、Mw/Mnが1に近いほど分子量分布の幅が狭いことを意味する。
なお、前記MFRは、JIS K7210−1:2014に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。
本発明で用いられるビニル芳香族エラストマー(C)は、温度230℃、荷重2.16kgにおけるMFRが1g/10分以下であり、好ましくは0.5g/10分以下であり、より好ましくは0.2g/10分以下である。
ビニル芳香族エラストマー(C)は、第2層中に分散し、他の樹脂成分との粘度差によってその形状が変化するが、前記MFRが上記範囲内であれば、高温時の流動性が低く、その形状が球状になりやすい。球状で分散したドメインであるビニル芳香族エラストマー(C)は、アスペクト比が大きいドメインに比べて、延伸により多孔構造の均一性が高くなりやすく、フィルム特性の安定性も向上するため好ましい。
さらに、前記MFRが上記範囲内であれば、延伸時に、高い弾性のマトリックスと低い弾性のビニル芳香族エラストマー(C)のドメインとの界面部分に応力が集中しやすくなるため、開孔起点が生じやすく、第2層を多孔化しやすい。
このように、ビニル芳香族エラストマー(C)が開孔に寄与することにより、気孔同士の連通性が高まり、透気性及びイオン透過性に優れた積層多孔性フィルムが得られる。
樹脂組成物(X)には、ポリプロピレン系樹脂(B)及びビニル芳香族エラストマー(C)以外の他の成分として、第2層における多孔構造による透気性を損なわない範囲において、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、着色剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
本発明の積層多孔性フィルムの積層構成は、少なくとも第1層と第2層とが積層されていれば、特に限定されるものではない。耐熱性及び透気性等の本発明の積層多孔性フィルムの効果を損なわない範囲において、第1層及び第2層以外の他の層を積層してもよい。前記他の層としては、具体的には、強度保持層、シャットダウン層(低融解温度樹脂層)等が挙げられる。
全層数も、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されるものではなく、2層であっても、3層以上であってもよい。各層の層数及び厚みも、用途や目的に応じて、適宜調整することができる。
生産性や経済性等の観点からは、2層又は3層構成が好ましく、積層構成の好ましい具体例としては、第1層/第2層の2種2層構成、第1層/第2層/第1層、第2層/第1層/第2層の2種3層構成等が挙げられる。
積層多孔性フィルムの厚みは、十分な透気性を確保する観点から、上限は100μm未満であることが好ましく、より好ましくは60μm未満、さらに好ましくは40μm未満である。一方、下限は、機械的強度や該積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いた場合に十分な絶縁性を確保する等の観点から、3μm以上であることが好ましく、5μm以上がより好ましい。
積層多孔性フィルムの透気性は、透気抵抗度が1〜100秒/100mLであることが好ましく、より好ましくは10〜60秒/100mL、さらに好ましくは20〜55秒/100mLである。
透気抵抗度は、JIS P8117:2009(ガーレー法)に準拠して、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。空気100mLが該積層多孔性フィルムを厚み方向に通過するのに要する時間(秒)を表している。したがって、数値が小さいほど空気が通過しやすいことを示しており、積層多孔性フィルムの厚み方向の気孔同士の連通性が優れていると言える。
透気抵抗度が上記範囲内であれば、多孔構造の気孔同士の連通性が優れていると言え、該積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いた場合、電解液中のセパレータを通過するイオンの移動抵抗が抑制され、良好な電池性能が得られるため好ましい。
なお、積層多孔性フィルムの空孔率は、フィルムの機械的強度の観点から、30〜80%であることが好ましく、より好ましくは40〜70%である。空孔率は、一定の面積の積層多孔性フィルムの実質量W1と、樹脂組成物の密度に基づいて計算される空孔率が0%の場合の質量W0の値から、次式により求められる。
空孔率(%)={(W0−W1)/W0}×100
積層多孔性フィルムは、150℃で1時間加熱後の熱収縮率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。
前記熱収縮率は、耐熱性の指標であり、後述の実施例に記載の方法により測定される。数値が低ければ、該積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いた場合にも、フィルムの位置ずれや収縮が抑制され、耐熱性に優れていると言える。
上記範囲内であれば、該積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いた場合にも、十分な耐熱性を有していると言え、電池が高温となった際の安全性が確保されるため好ましい。
本発明の積層多孔性フィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、公知の手法を用いて、第1層及び第2層を別個に作製した後、両層を積層して積層多孔性フィルムを得る方法でもよく、あるいはまた、第1層及び第2層の積層無孔膜状物を成形した後、この膜状物を多孔化させて積層多孔性フィルムを得る方法でもよい。
本発明の積層多孔性フィルムを効率的に製造する観点から、積層無孔膜状物を成形した後、多孔化する方法がより好ましい。
具体的には、結晶融解ピーク温度又はガラス転移温度が170℃以上である熱可塑性樹脂(A)を含む第1成分と、ポリプロピレン系樹脂(B)及びビニル芳香族系エラストマー(C)を含む第2成分とを、それぞれ、希釈剤を用いずに溶融混練し、第1成分の無孔膜状物と第2成分の無孔膜状物との積層無孔膜状物を成形する工程(1)と、前記積層無孔膜状物を少なくとも1つの方向に延伸する工程(2)とを含む製造方法により、積層多孔性フィルムを製造することが好ましい。より具体的には、後述する実施例に記載されているような方法により製造することが好ましい。
本発明の積層多孔性フィルムは、このように積層無孔膜状物とした後、延伸することにより容易に均一な多孔構造を形成することができるものであるため、上述した湿式法のように希釈剤及びこれを洗浄除去するための洗浄溶剤等の使用並びにこれらの除去工程が不要であり、生産性に優れ、かつ、環境への悪影響が少ない方法により製造可能な積層多孔性フィルムである。
前記溶融混練及び成形は、公知の方法を用いることができ、例えば、押出機を用いて第1成分及び第2成分をそれぞれ溶融混練し、Tダイから共押出しし、キャストロールで冷却固化する押出成形による方法、また、チューブラー法で製造した積層無孔膜状物を切り開いて平面状とする方法等が挙げられる。これらのうち、押出成形による方法がより好ましい。
キャストロールによる冷却固化温度は、膜状物中の結晶比率の向上や製膜安定性等の観点から、80〜150℃であることが好ましく、より好ましくは90〜140℃、さらに好ましくは100〜130℃である。
延伸方法としては、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法等の手法を用いることできる。これらの手法を1種単独で、又は2種以上を併用して、一軸延伸又は二軸延伸を行うことが好ましい。多孔構造の制御の観点からは、二軸延伸がより好ましい。
延伸温度は、樹脂組成物の組成や結晶融解ピーク温度、結晶化度等に応じて適宜調整される。
ここで、「縦延伸」とは、膜状物の流れ方向(MD;Machine Direction)への延伸を意味し、「横延伸」とは、MDに対して垂直方向(TD;Traverse Direction)への延伸を意味する。
縦延伸倍率は、延伸による均一な多孔構造の形成を行う観点から、1.1〜10倍であることが好ましく、より好ましくは1.5〜8.0倍、さらに好ましくは1.5〜4.0倍である。
横延伸倍率は、縦延伸で形成された多孔構造を壊すことなく、十分な透気性を有するものとする観点から、1.1〜10倍であることが好ましく、より好ましくは1.5〜8.0倍、さらに好ましくは1.5〜4.0倍である。
さらに、本発明の積層多孔性フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、用途及び使用目的等に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面加工や、ミシン目加工等を施してもよい。
本発明の積層多孔性フィルムは、上述したように、耐熱性及び透気性に優れており、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の各種蓄電デバイス、中でも、電池用、特にリチウムイオン二次電池用のセパレータ等に好適に用いることができる。
さらに、使い捨て紙オムツ等の体液吸収用パット、手術衣等の医療用材料、ジャンパー、雨着等の衣料用材料、家屋防水材、断熱材等の建築用材料、乾燥剤、使い捨てカイロ等の包装材料、各種フィルター、工業用ろ過膜等の液体処理材料等の資材等、透気性が要求される種々の用途での幅広い利用が期待される。
実施例及び比較例においては、熱可塑性樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)、ビニル芳香族エラストマー(C)もしくは(C’)、フィラー(D)及びその他の成分(E)として、以下に示すものを代表例として用い、下記表1に示す配合組成の第1層と第2層とが積層された積層多孔性フィルムを製造した。
・A−1:ポリメチルペンテン;「TPX RT18」三井化学株式会社製;MFR:26g/10分(260℃、5kg荷重)、結晶融解ピーク温度232℃、Mw:56万
<ポリプロピレン系樹脂(B)>
・B−1:ポリプロピレン;「ノバテックPP FY6HA」日本ポリプロ株式会社製;MFR:2.4g/10分(230℃、2.16kg荷重)、アイソタクチックペンタッド分率97%、Mw:53.9万、Mw/Mn:3.2
<ビニル芳香族エラストマー(C)、(C’)>
・C−1:SEP;「セプトン1001」株式会社クラレ製;スチレン含有量:35質量%、MFR:0.1g/10分(230℃、2.16kg荷重)、Mw:18.6万
・C’−1;SEPS;「セプトン2007」株式会社クラレ製;スチレン含有量:30質量%、MFR:2.4g/10分(230℃、2.16kg荷重)、Mw:9.5万
<フィラー(D)>
・D−1:シリコーン微粒子;「SPT−014」竹本油脂株式会社製;平均粒径0.3μm
・D−2;疎水化処理酸化亜鉛;「FINEX−25−LPT」堺化学工業株式会社製;ハイドロゲンジメチコン表面処理、平均粒径0.06μm
<その他の成分(E)>
・E−1:β晶核剤;2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド;「エヌジェスターNU−100」新日本理化株式会社製
・E−2:酸化防止剤;「IRGANOX B 225」(BASF社製)
第1層を形成するための第1成分として、熱可塑性樹脂(A−1)を用いた。
一方、ポリプロピレン系樹脂(B−1)80質量部と、ビニル芳香族エラストマー(C−1)20質量部とを配合し、二軸押出機に投入し、設定温度240℃で溶融混練した。得られたストランドを水槽で冷却固化し、ペレタイザーでカットし、第2層を形成するための第2成分として、ポリプロピレン系樹脂(B)及びビニル芳香族エラストマー(C)を含有する樹脂組成物(X)のペレットを作製した。
2台の単軸押出機を用いて、第1層を形成するための第1成分を270℃、第2層を形成するための第2成分を230℃で、それぞれ溶融混練後、リップ開度0.8mm、265℃のTダイで、外層(表層及び裏層)が第1層、中間層が第2層となるように共押出成形し、キャストロールに導いて127℃で冷却固化し、積層無孔膜状物を得た。
得られた膜状物を、縦延伸機にて、設定温度20℃のロール間で延伸倍率1.5倍、さらに、設定温度120℃のロール間で延伸倍率2.5倍で延伸した。縦延伸後のフィルムを、横延伸機にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱後、延伸温度145℃、延伸倍率2.0倍で延伸し、155℃で加熱して、積層多孔性フィルムを得た。
実施例1において、配合組成、及び延伸倍率を下記表1に示す条件に変更し、それ以外は実施例1と同様にして、積層多孔性フィルムを得た。
熱可塑性樹脂(A−1)95質量部と、フィラー(D−1)5質量部とを配合し、二軸押出機に投入し、設定温度260℃で溶融混練した。得られたストランドを水槽で冷却固化し、ペレタイザーでカットし、第1層を形成するための第1成分として、熱可塑性樹脂(A)を主成分とする樹脂組成物のペレットを作製した。
同様の方法で、ポリプロピレン系樹脂(B−1)70質量部と、ビニル芳香族エラストマー(C−1)30質量部とを配合し、設定温度を240℃として、第2層を形成するための第2成分として、ポリプロピレン系樹脂(B)及びビニル芳香族エラストマー(C)を含有する樹脂組成物(X)のペレットを作製した。
上記で作製した第1成分及び第2成分の各ペレットを用いて、実施例1と同様にして、積層無孔膜状物を得た後、積層厚みの比、及び延伸倍率を下記表1に示す条件に変更し、それ以外は実施例1と同様にして、積層多孔性フィルムを得た。
実施例5において、配合組成、積層厚みの比、及び延伸倍率を下記表1に示す条件に変更し、それ以外は実施例5と同様にして、積層多孔性フィルムを得た。
ポリプロピレン系樹脂(B−1)100質量部と、β晶核剤(E−1)0.2質量部と、酸化防止剤(E−2)0.1質量部とを配合し、設定温度を240℃として、ポリプロピレン系樹脂(B−1)を主成分とする樹脂組成物のペレットを作製した。
作製したペレットを、単軸押出機を用いて、200℃で溶融混練後、リップ開度0.8mm、200℃のTダイで押出成形し、キャストロールに導いて127℃で冷却固化し、無孔膜状物を得た。
得られた膜状物を、縦延伸機にて、設定温度105℃のロール間で延伸倍率4.5倍で延伸した。縦延伸後のフィルムを、横延伸機にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱後、延伸温度145℃、延伸倍率2.0倍で延伸し、155℃で加熱して、単層多孔性フィルムを得た。
実施例5と同様にして、ポリプロピレン系樹脂(B)及びビニル芳香族エラストマー(C)を含有する樹脂組成物(X)のペレットを作製した。
作製したペレットを、単軸押出機を用いて、200℃で溶融混合後、リップ開度0.8mm、200℃のTダイで押出成形し、キャストロールに導いて127℃で冷却固化し、無孔膜状物を得た。
得られた膜状物を、縦延伸機にて、設定温度20℃のロール間で延伸倍率1.5倍、さらに、設定温度120℃のロール間で延伸倍率3.0倍で延伸した。縦延伸後のフィルムを、横延伸機にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱後、延伸温度145℃、延伸倍率3.0倍で延伸し、155℃で加熱して、単層多孔性フィルムを得た。
上記実施例及び比較例で製造した各多孔性フィルムについて、厚み、透気抵抗度及び熱収縮率を以下のようにして測定した。
目量1/1000mmのダイヤルゲージにて、フィルム面内の任意の10箇所で測定し、その平均値を求めた。
25℃で、大気雰囲気下、JIS P8117:2009に準拠して透気抵抗度を測定した。測定機器は、デジタル型王研式透気度試験機(透気度専用機)(旭精工株式会社製)を用いた。
積層多孔性フィルムを、縦80mm×横80mmに切り出した試料の内側に縦60mm×横60mmの標線を引き、標線の中央部分4箇所に印を付けた。フィルムにMDの方向を明記し、印を付けた箇所のMD及びTDの両方向の標線間距離(L1MD及びL1TD)を測定した。この試料を耐熱ガラス間に挟み、耐熱ガラス上におもりを置いて荷重2g/cm2となるようにした。設定温度150℃の熱風循環式オーブンで1時間加熱した後、印を付けた箇所のMD及びTDの両方向の標線間距離(L2MD及びL2TD)を測定し、下記式により、各方向の150℃で1時間加熱後の熱収縮率を算出した。
MDの収縮率[%]={1−(L2MD/L1MD)}×100
TDの収縮率[%]={1−(L2TD/L1TD)}×100
また、共押出成形により積層無孔膜状物を得る際の第1層の押出温度が高い(270℃)場合であっても、第2層にビニル芳香族系エラストマーを用いることにより、多孔構造の均一性が確保され、積層多孔性フィルムの透気性が優れていることが認められた。
一方、第2層を、ビニル芳香族系エラストマーに代えて、β晶核剤を用いて多孔化した場合(比較例3)は、第1層の高い押出温度により、積層無孔膜状物におけるβ晶の生成が抑制され、延伸後のフィルムに多孔構造のムラや核剤凝集物が生じ、透気性に劣っていた。
Claims (9)
- 少なくとも第1層と第2層とが積層された積層多孔性フィルムであって、
前記第1層は、結晶融解ピーク温度又はガラス転移温度が170℃以上である熱可塑性樹脂(A)を主成分とする耐熱層であり、
前記第2層は、ポリプロピレン系樹脂(B)及びビニル芳香族エラストマー(C)を含有する樹脂組成物(X)を主成分とする多孔層であり、
前記ビニル芳香族エラストマー(C)が、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトマスフローレイトが1g/10分以下である、積層多孔性フィルム。 - 前記熱可塑性樹脂(A)がポリメチルペンテン系樹脂である、請求項1に記載の積層多孔性フィルム。
- 前記第1層がフィラー(D)を含む、請求項1又は2に記載の積層多孔性フィルム。
- 前記ビニル芳香族エラストマー(C)の前記樹脂組成物(X)中の含有量が15〜50質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルム。
- 透気抵抗度が1〜100秒/100mLである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルム。
- 150℃で1時間加熱後の熱収縮率が10%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルム。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルムの製造方法であって、結晶融解ピーク温度又はガラス転移温度が170℃以上である熱可塑性樹脂(A)を含む第1成分と、ポリプロピレン系樹脂(B)及びビニル芳香族系エラストマー(C)を含む第2成分とを、それぞれ、希釈剤を用いずに溶融混練し、前記第1成分の無孔膜状物と前記第2成分の無孔膜状物との積層無孔膜状物を成形する工程と、前記積層無孔膜状物を少なくとも1つの方向に延伸する工程とを含む、積層多孔性フィルムの製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルムを有する電池用セパレータ。
- 請求項8に記載の電池用セパレータを有する電池。
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