JP2017171532A - 炭化珪素単結晶成長用種結晶の製造方法及び炭化珪素単結晶インゴットの製造方法 - Google Patents

炭化珪素単結晶成長用種結晶の製造方法及び炭化珪素単結晶インゴットの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】昇華再結晶法によりSiC単結晶を成長させる際に、種結晶と成長SiC単結晶との界面近傍で発生する貫通らせん転位を抑制して転位密度を低減し、成長初期段階から貫通らせん転位密度の小さいSiC単結晶インゴットが得られるSiC単結晶成長用種結晶の製造方法の提供。【解決手段】昇華再結晶法により種結晶上にSiC単結晶を成長させる際に用いる種結晶の製造方法であって、炭化珪素単結晶インゴットを切断し、切断面を機械研磨した後に、該機械研磨面の表面から少なくとも深さ2μmまでを化学機械研磨により除去するSiC単結晶成長用種結晶の製造方法、及び、前記種結晶を用いたSiC単結晶インゴットの製造方法。【選択図】図3

Description

この発明は、昇華再結晶法により種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる際に用いる種結晶の製造方法、及び、得られた種結晶の成長面に昇華再結晶法により炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶インゴットの製造方法に関する。
炭化珪素(以下、SiCという)は、2.2〜3.3eVの広い禁制帯幅を有するワイドバンドギャップ半導体であり、その優れた物理的、化学的特性から、耐環境性半導体材料として研究開発が行われている。特に近年では、青色から紫外にかけての短波長光デバイス、高周波電子デバイス、高耐圧・高出力電子デバイス等の材料として注目されており、SiCによるデバイス(半導体素子)作製の研究開発が盛んになっている。
SiCデバイスの実用化を進めるにあたっては、大口径のSiC単結晶を製造することが不可欠であり、その多くは、種結晶を用いた昇華再結晶法(改良型レーリー法と呼ばれる)によってバルクのSiC単結晶を成長させる方法が採用されている(非特許文献1参照)。すなわち、坩堝内にSiCの昇華原料を収容し、坩堝の蓋体にはSiC単結晶からなる種結晶を取り付けて、原料を昇華させることで、再結晶により種結晶上にSiC単結晶を成長させる。そして、略円柱状をしたSiCのバルク単結晶(以下、SiC単結晶インゴットと言う)を得た後、一般には、300〜600μm程度の厚さに切り出すことでSiC単結晶基板が製造され、電力エレクトロニクス分野等でのSiCデバイスの作製に供されている。
ところで、SiC単結晶中には、マイクロパイプと呼ばれる成長方向に貫通した中空ホール状欠陥のほか、転位欠陥、積層欠陥等の結晶欠陥が存在する。これらの結晶欠陥はデバイス性能を低下させるため、その低減がSiCデバイスの応用上で重要な課題となっている。このうち、転位欠陥には、貫通刃状貫通転位、基底面転位、及び貫通らせん転位が含まれる。例えば、市販されているSiC単結晶基板では、貫通らせん転位が8×102〜3×103(個/cm2)、貫通刃状転位が5×103〜2×104(個/cm2)、基底面転位が2×103〜2×104(個/cm2)程度存在するとの報告がある(非特許文献2参照)。
近年、SiCの結晶欠陥とデバイス性能に関する研究・調査が進み、貫通らせん転位欠陥がデバイスのリーク電流の原因となることや、ゲート酸化膜寿命を低下させることなどが報告されており(非特許文献3及び4参照)、高性能なSiCデバイスを作製するには、貫通らせん転位密度を低減させたSiC単結晶インゴットが求められる。
Yu. M. Tairov and V. F. Tsvetkov, Journal of Crystal Growth, vol. 52(1981)pp.146〜150 大谷昇、SiC及び関連ワイドギャップ半導体研究会第17回講演会予稿集、2008、p8 Q. Wahab et al. Appl. Phys. Lett 76(2000) 2725 デンソーテクニカルレビューVol. 16 (2011) 90
種結晶を用いた昇華再結晶法によるSiC単結晶インゴットの製造では、種結晶と成長させるSiC単結晶との界面において、成長SiC単結晶側の貫通らせん転位の転位密度が増大する傾向にある。
そこで、本発明の目的は、種結晶と成長SiC単結晶との界面近傍で発生する貫通らせん転位を抑制することで転位密度を低減して、成長初期段階から貫通らせん転位密度の小さいSiC単結晶インゴットが製造できる種結晶の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、昇華再結晶法を用いたSiC単結晶の成長において、種結晶と成長させたSiC単結晶との界面におけるらせん貫通転位増大の影響を抑えるための手段について鋭意検討した。その結果、炭化珪素単結晶インゴットを切断し、切断面を機械研磨して、更に化学機械研磨(CMP、Chemical Mechanical Polishing)によりその表面を一定量除去した種結晶を用いた場合に、昇華再結晶法により該種結晶上にSiC単結晶を成長させることで、貫通らせん転位の発生を抑制できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)昇華再結晶法により種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる際に用いる種結晶の製造方法であって、炭化珪素単結晶インゴットを切断し、切断面を機械研磨した後に、該機械研磨面の表面から少なくとも深さ2μmまでを化学機械研磨により除去することを特徴とする炭化珪素単結晶成長用種結晶の製造方法。
(2)(1)記載の方法で製造した種結晶の成長面に、昇華再結晶法により、炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする炭化珪素単結晶インゴットの製造方法。
本発明によって得られたSiC単結晶成長用の種結晶によれば、昇華再結晶法によりSiC単結晶を成長させる際に、種結晶と成長SiC単結晶との界面近傍における貫通らせん転位の増大を抑制して、デバイスに悪影響を及ぼす貫通らせん転位の密度を低減することができる。また、この種結晶を用いることで、成長初期段階から転位密度の小さいSiC単結晶を成長させることができる。そのため、得られたSiC単結晶インゴットでは、成長初期の領域からもSiC基板を切り出せるようになることから、SiC基板製造の歩留まりを向上させることができるなど、工業的に極めて有用である。
図1は、SiC単結晶インゴットを製造するための単結晶製造装置を示す断面模式図である。 図2(a)、(b)は、実施例及び比較例で得られたSiC単結晶インゴットの種結晶界面近傍での貫通転位密度を評価する際に用いた評価用SiC単結晶基板を切り出す様子を示す模式説明図である。 図3は、実施例及び比較例で得られたSiC単結晶インゴットの成長高さに対する貫通転位密度の変化の様子を示すグラフである。
以下、本発明についてより詳細に説明する。
上述したように、本発明の目的は、昇華再結晶法によりSiC単結晶を成長させる際に、種結晶と成長SiC単結晶との界面近傍で発生する貫通らせん転位を抑制し、SiC単結晶中の転位密度を低減して、成長初期段階から貫通らせん転位密度の小さいSiC単結晶インゴットが得られるようにすることである。
一般に、SiC単結晶成長用の種結晶は、予め得られたSiC単結晶インゴットを切断し、切断面を機械研磨して種結晶を製造している。そのため、種結晶の表面にはこのような加工工程によるダメージ層が形成されていると考えられる。表面にダメージ層を持つ種結晶を高温に加熱すると、前記ダメージ層の歪みの大きな部分から選択的に昇華が起こり、表面に潜傷と呼ばれる凹凸が形成される。この凹凸の部分で結晶成長が開始すると、周囲の成長ステップとの不整合により貫通らせん転位が発生しやすくなる。
ここで、化学機械研磨は新たに種結晶にダメージ層を生じさせず、機械研磨により生成したダメージ層を除去することが可能である。よって、本発明者らは、昇華再結晶法によりSiC単結晶を成長させる前に、種結晶の成長面側を更に化学機械研磨することで、潜傷を発生させる要因となるダメージ層を事前に除去するという発想のもと、本発明に至った。
ところで、例えば特開2014-210687号公報(段落0043)や特開2014-024703号公報(段落0052)等で記載されているように、種結晶を製造する際に化学機械研磨を施す場合もある。しかしながら、これらは表面ダメージ層を除去する目的で化学機械研磨を行っているが、表面ダメージ層の深さをAFM(原子間力顕微鏡)等の表面粗さ観察装置で確認していることなどから、化学機械研磨により取り除く厚みは0.5μm程度であり、その場合には潜傷を発生させる要因となるようなより深いダメージ層を完全に除去するまでには至らない。
そこで、化学機械研磨により種結晶の成長面側をどの深さまで除去すべきかについて数々の実験を試みて検討した結果、機械研磨面後の表面から少なくとも深さ2μmまで除去しないと、本発明の効果である貫通らせん転位密度の低減が起こらないことが分かった。このことから、潜傷を発生させる要因となるようなダメージ層は種結晶の表面から深さ2μm未満程度まで存在していると考えられる。なお、化学機械研磨により除去する深さに上限はないが、化学機械研磨は時間が掛るため、2μmを超えて種結晶の成長面側を必要以上に除去することは工業生産効率化の視点から好ましくない。また、化学機械研磨により除去した量は研磨前後で厚みを比較することで把握することができる。
本発明における化学機械研磨については、公知の手法を採用することができ、例えば、コロイダルシリカ等の極微細懸濁粒子を含むスラリーを使用し、研磨パッドを用いて加工すればよい。また、SiC単結晶を成長させる成長面と反対側の種結晶の裏面については、前記ダメージ層が残っていても結晶成長時の貫通らせん転位密度の生成には影響しないため、化学機械研磨は必須ではないが、例えば黒鉛製の坩堝を形成する黒鉛上蓋内面に種結晶を装着する際に密着性を高めることなどの目的から、種結晶の裏面を更に化学機械研磨して平滑性を高めてもよい。
また、種結晶を製造する際のSiC単結晶インゴットの切断についても、ワイヤーソー等を用いるなどして公知の手法と同様にすることができ、切断面の機械研磨についてもダイヤモンド粒子等を含んだ研磨液を用いるなどして公知の手法と同様にすることができる。なお、本発明における種結晶の製造方法は、得られる種結晶の口径に制限されるものではない。
以下、実施例等に基づき本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1は、本発明の実施例に係るSiC単結晶インゴットを製造するための装置であって、改良レーリー法(昇華再結晶法)による単結晶成長(製造)装置の一例を示す。結晶成長は、黒鉛製の坩堝を形成する黒鉛坩堝本体4に装填されたSiCの昇華原料1を誘導加熱により昇華させ、同じく黒鉛製の坩堝を形成する黒鉛上蓋3に配置されたSiC単結晶基板からなる種結晶2上に再結晶させることにより行われる。
この実施例1では、予め昇華再結晶法により得られたSiC単結晶インゴットをワイヤーソーにより切断して、厚さ1.1mm程度の円盤状厚板に加工した。次に、ダイヤモンド粒子を含んだ研磨液を用いて、上記切断面を機械研磨した。この機械研磨では、ワイヤーソーによる切断面の片側表面が深さ50μm程度研磨されるように加工した。次いで、得られた円盤状薄板の結晶成長面にあたる一方の表面を更に化学機械研磨して、表面から深さ2μmまで除去した。その際、コロイダルシリカ等の極微細懸濁粒子を含むスラリーと研磨パッドを使用して加工した。このようにして、厚さ1.0mm、口径51mmであって、4°のオフ角を有する(000−1)面を結晶成長面として備えた種結晶2を製造した。
上記のようにして得られた種結晶2を用いて、先の図1に示した単結晶成長装置によりSiC単結晶の成長を行い、SiC単結晶インゴットを製造した。ここで、単結晶成長装置において、黒鉛製の坩堝を形成する黒鉛坩堝本体4及び黒鉛上蓋3は、熱シールドのために黒鉛製フェルト5で被膜されており、二重石英管6内部の黒鉛支持棒7の上に設置される。二重石英管6の内部を真空排気装置8によって真空排気した後、高純度Arガス及び窒素ガスを配管9を介してマスフローコントローラ10でAr:窒素=15:1になるように制御しながら流入させ、石英管内圧力(成長雰囲気圧力)を真空排気装置8で調整して80kPaにした。この圧力下において、ワークコイル11に電流を流して温度を上げ、黒鉛上蓋3に取り付けられた種結晶2の温度が2200℃になるまで上昇させた。その後、30分かけて成長雰囲気圧力を1.3kPaに減圧して、黒鉛坩堝本体4に装填されたSiCの昇華原料1を昇華させながら、種結晶2の(000−1)面を結晶成長面とする30時間の結晶成長を行った。
上記のプロセスにより、高さ8mm、口径51mmのSiC単結晶インゴットが得られた。得られたSiC単結晶インゴットについて、先ず、該インゴットから、種結晶の結晶成長面からの高さで表される成長高さ2mmの位置において、種結晶表面に平行に(すなわち4°のオフ角を有するように)評価用基板Aを切り出した。得られた評価用基板Aについて、520℃の溶融KOHに基板の全面が浸るように5分間浸して溶融KOHエッチングを行い、エッチングされた評価用基板Aの表面を光学顕微鏡(倍率:80倍)で観察して転位密度を計測した。ここでは、J. Takahashi et al., Journal of Crystal Growth, 135, (1994), 61-70に記載されている方法に従い、貝殻型ピットを基底面転位、小型の6角形ピットを貫通刃状転位、中型・大型の6角形ピットを貫通らせん転位として、エッチピット形状による転位欠陥を分類し、貫通らせん単位の転位密度を算出した。その結果、評価用基板Aの外周から直径比で内側方向に5%に相当する部分を占めるリング状領域(外周から幅2.55mmの領域)を除いた残りの中心円領域でほぼ一様に転位密度が分散していることを確認した。なお、同様にして、この実施例1で得られた種結晶についても確認したところ、面内に転位密度は一様に分布していた。
次に、図2(a)に示したように、上記で得られたSiC単結晶インゴットを、種結晶2のc軸のオフ方向と反対方向へ4°傾いた方向が結晶のc軸となるように切り出し(図中の斜め太実線が切り出し面を示す)、(0001)面に種結晶と反対方向にオフ角を持つ評価用基板Bを得た。その際、評価用基板Bが種結晶の直径方向中心を通るようにして切り出し、評価用基板Bの表面には、種結晶からなる結晶領域と成長した成長SiC単結晶からなる結晶領域とが含まれるようにして、図2(b)に示したように、評価用基板Bの表面上のa辺と種結晶の直径方向上のb辺とのなす角が8°であり、高さhの直角三角形が形成される位置関係となるようにした。本切り出し方法を用いることにより、成長に従う転位密度の変化を結晶成長方向に対して連続的に観察することが可能となる。また、種結晶2と成長SiC単結晶16との界面17も直接観察可能である。更に、成長方向の変化が実質的に1/sin8°(約7倍)に拡大されるため、より詳細な高精度の転位密度計測を行なうことができる。
得られた評価用基板Bについて、先の評価用基板Aと同様に、520℃の溶融KOHに基板の全面が浸るように5分間浸して溶融KOHエッチングを行い、エッチングされた評価用基板Bの表面を、成長SiC単結晶の高さ変化に沿うように、図2(b)に示したa辺(=h/sin8°)上の測定点を主に2mm(成長方向の高さhの変化がおよそ0.3mmに相当)ごとに光学顕微鏡(倍率:80倍)で観察して転位密度を計測した。結果を表1に示す。なお、表1中の成長高さ(mm)は、種結晶2の結晶成長面からの高さを表す。
Figure 2017171532
(比較例1)
比較例1では、種結晶の結晶成長面に化学機械研磨を行わなかった以外は実施例1と同様にして種結晶を製造した。すなわち、昇華再結晶法により予め得られたSiC単結晶インゴットを実施例1と同様に切断して厚さ1.1mm程度の円盤状厚板に加工し、次いで、実施例1と同様に機械研磨して口径51mm、厚さ1.0mmの円盤状薄板に加工して比較例1に係る種結晶2とした。この種結晶2は、実施例1と同様に4°のオフ角を有する(000−1)面を結晶成長面として備えている。そして、この比較例1に係る種結晶2を用いて、実施例1と同様の条件でSiC単結晶インゴットを製造した。
得られたSiC単結晶インゴットについて、実施例1と同様に(0001)面に種結晶と反対方向にオフ角を持つように切り出して、評価用基板Bを得て、実施例1と同様にKOHエッチングを行ない、光学顕微鏡で転位密度を計測した。結果を表1に示す。
ここで、表1に示した結果について、実施例1及び比較例1における各測定点での成長高さと貫通らせん転位密度との関係をグラフにしたものが図3である。図3のグラフから分かるように、従来法によって製造された比較例1のSiC単結晶インゴットは、成長高さ0.6mmで貫通らせん転位密度が約9000個/cm2であるのに対し、本発明の製造方法を用いて製造された実施例1のSiC単結晶インゴットでは、約2000個/cm2と低い値となっている。さらに成長高さ1.9mmでは比較例1が貫通らせん転位密度が約1000個/cm2であるのに対し、本発明の製造方法を用いて製造された実施例1のSiC単結晶インゴットでは、約200個/cm2まで減少している。特に、種結晶との界面近傍の成長初期は、従来では貫通転位密度が高く、SiC単結晶基板の切り出しには不向きとされていたのに対して、本発明によれば、成長高さ約2mmから種結晶以上の品質のSiC単結晶基板を切り出すことも可能となることが分かる。
1:昇華原料、2:種結晶、3:黒鉛上蓋、4:黒鉛坩堝本体、5:黒鉛製フェルト、6:二重石英管、7:黒鉛支持棒、8:真空排気装置、9:配管、10:マスフローコントローラ、11:ワークコイル。

Claims (2)

  1. 昇華再結晶法により種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる際に用いる種結晶の製造方法であって、炭化珪素単結晶インゴットを切断し、切断面を機械研磨した後に、該機械研磨面の表面から少なくとも深さ2μmまでを化学機械研磨により除去することを特徴とする炭化珪素単結晶成長用種結晶の製造方法。
  2. 請求項1記載の方法で製造した種結晶の成長面に、昇華再結晶法により、炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする炭化珪素単結晶インゴットの製造方法。
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