以下に、図面を参照しつつ、画像形成装置の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
[第1の実施の形態]
<1.画像形成装置の概略的な構成>
図1は、本開示の画像形成装置の一実施の形態である画像形成装置1の外観を示す図である。図2は、画像形成装置1の内部構成を模式的に示す図である。
図1および図2に示されるように、画像形成装置1は、原稿P1から画像を読み取る画像読取部3と、画像が形成される記録紙P2を収納する給紙トレイ4と、給紙トレイ4から給紙された記録紙P2にトナー画像を転写する転写部5と、転写部5で転写されたトナー画像を記録紙P2に定着させる定着部6と、定着部6で定着されて画像が形成された記録紙P2が排紙される排紙トレイ7と、画像形成装置1への操作を受け付ける操作パネル9と、を含む。画像形成装置1の装置本体2では、上部に、画像読取部3が設けられ、下部に、転写部5が設けられる。
画像形成装置1では、排紙トレイ7が、転写部5および定着部6で画像記録されて排紙された記録紙P2を受けるために、転写部5の上側に設けられる。給紙トレイ4が、転写部5の下側に設けられる。給紙トレイ4は、装置本体2に対して挿抜可能である。画像形成装置1では、給紙トレイ4に収納された記録紙P2が装置本体2内部に給紙される。記録紙P2は、上方へと搬送されることによって、給紙トレイ4の上部に配置された転写部5に送られ、転写部5で画像を転写される。定着部6は、記録紙P2に転写された画像を定着する。記録紙P2は、定着部6で処理された後、排紙トレイ7に排紙される。排紙トレイ7は、画像読取部3と転写部5との間の空間(凹みスペース)に設けられている。
画像読取部3は、原稿P1からの画像を読み取るスキャナー部31と、スキャナー部31の上部に設けられるとともにスキャナー部31に原稿P1を1枚ずつ搬送させる自動原稿搬送部(ADF:Auto Document Feeder)32とを含む。装置本体2の正面側(前面側)には、操作パネル9が設けられる。ユーザーは、操作パネル9の表示画面等を見ながらキー操作をすることで、画像形成装置1の各種機能の中から選択した機能について設定操作をしたり、画像形成装置1に作業実行を指示したりできる。
図2を参照して、装置本体2の内部構造について説明する。画像読取部3のスキャナー部31は、上面側にプラテンガラス(不図示)を有する原稿台33と、原稿P1に対して光を照射する光源部34と、原稿P1からの反射光を画像データに光電変換するイメージセンサー35と、反射光をイメージセンサー35上に結像させる結像レンズ36と、原稿P1からの反射光を順次反射させて結像レンズ36に入射させるミラー群37とを含む。光源部34、イメージセンサー35、結像レンズ36およびミラー群37は、原稿台33の内部に設けられる。光源部34およびミラー群37は、原稿台33に対して左右方向に移動可能に構成される。
スキャナー部31の上面側には、ADF32が、設けられる。ADF32は、原稿台33に対して開閉可能であり、原稿載置トレイ38と原稿排出トレイ39とを備えている。ADF32は、原稿台33のプラテンガラス(不図示)上の原稿P1に覆い被さることによって、原稿P1をプラテンガラス(不図示)に密着させることができる。
画像読取部3において、原稿台33のプラテンガラス(不図示)上の原稿P1を読み取る場合、右方向(副走査方向)に移動する光源部34から原稿P1に、光が照射される。原稿P1から反射した反射光は、光源部34と同じく右方向に移動するミラー群37で順次反射されて結像レンズ36に入射し、イメージセンサー35上に結像される。イメージセンサー35は、入射光の強さに応じて画素毎に光電変換を実行して、原稿P1の画像に対応した画像信号(RGB信号)を生成する。
一方、イメージセンサー35が原稿載置トレイ38に載置された原稿P1を読み取る場合、当該原稿P1は、複数のローラー等で構成される原稿搬送機構40によって読取位置に搬送される。スキャナー部31の光源部34およびミラー群37は、原稿台33内部の所定位置に固定される。光源部34により原稿P1の読取位置部分に光が照射され、その反射光がスキャナー部31のミラー群37および結像レンズ36を介してイメージセンサー35上に結像される。その後、イメージセンサー35が、当該反射光を、原稿P1の画像に対応した画像信号(RGB信号)に変換する。その後、原稿P1は原稿排出トレイ39に排出される。
トナー画像を記録紙P2に転写する転写部5は、Y(Yellow)、M(Magenta)、C(Cyan)、K(Key tone)各色のトナー画像を生成する作像部51と、作像部51それぞれの下方に設けられた露光部52と、水平方向に並んだ各色の作像部51と当接することで作像部51から各色のトナー画像が転写される中間転写ベルト53と、作像部51と中間転写ベルト53を挟持するように各色の作像部51それぞれに対して上側に対向する位置に設けられた一次転写ローラー54と、中間転写ベルト53を回動させる駆動ローラー55と、駆動ローラー55の回転が中間転写ベルト53を通じて伝達することで回転する従動ローラー56と、中間転写ベルト53を挟んで駆動ローラー55と対向する位置に設置される二次転写ローラー57と、中間転写ベルト53を挟んで従動ローラー56と対向する位置に設置されるクリーナー部58とを、含む。
作像部51は、中間転写ベルト53の外周面と当接する感光体ドラム61と、感光体ドラム61の外周面をコロナ放電により帯電させる帯電器62と、攪拌して帯電させたトナーを感光体ドラム61の外周面に付着させる現像器63と、トナー画像を中間転写ベルト53に転写した後に感光体ドラム61の外周面に残留するトナーを除去するクリーナー部64と、を含む。このとき、感光体ドラム61は、中間転写ベルト53を挟んで、一次転写ローラー54と対向する位置に設置されるとともに、図2における時計回りの方向に回転する。感光体ドラム61の周囲には、一次転写ローラー54、クリーナー部64、帯電器62、および現像器63が、感光体ドラム61の回転方向に沿って、順番に配置されている。
中間転写ベルト53は、例えば導電性を有する無端状のベルト部材から構成される。中間転写ベルト53は、駆動ローラー55および従動ローラー56に緩みの無い状態で巻き掛けられることで、駆動ローラー55の回転に従って、図2の反時計回りの方向に回動する。中間転写ベルト53の周囲には、中間転写ベルト53の回転方向に沿って、二次転写ローラー57、クリーナー部58、YMCK各色の作像部51それぞれが順番に配置されている。
定着部6は、記録紙P2に転写されたトナー画像を定着させる。定着部6は、記録紙P2上のトナー画像を定着させるために加熱するハロゲンランプなどを備えた加熱ローラー59と、記録紙P2を加熱ローラー59と共に挟持して記録紙P2を加圧する加圧ローラー60とを含む。加熱ローラー59は、電磁誘導によりその表面に渦電流を生じさせることによって、当該加熱ローラー59の表面を加熱されるものであってもよい。
記録紙P2を搬送させる搬送装置は、給紙トレイ4に収納された記録紙P2を最上層から給紙路R1に繰り出す繰り出しローラー81と、繰り出された記録紙P2を給紙路R1に更に送り出す給紙ローラー対82と、給紙ローラー対82により給紙された記録紙P2を主搬送路R0で縦搬送させる搬送ローラー対83と、主搬送路R0における搬送ローラー対83の下流側に配置されて記録紙P2を転写部5に向かって搬送させるタイミングローラー対84と、を含む。主搬送路R0は、画像形成(印刷)の工程にある記録紙P2の主な搬送経路である。給紙路R1は、給紙トレイ4毎に設けられる。各給紙路R1は、主搬送路R0に合流する。給紙路R1は、搬送経路の一例である。
各給紙トレイ4内の記録紙P2は、対応する繰り出しローラー81の回転駆動によって、最上層のものから1枚ずつ、給紙路R1に送り出された後、給紙ローラー対82により主搬送路R0に向けて送り出される。主搬送路R0では、給紙ローラー対82から搬送された記録紙P2が、搬送ローラー対83の回転駆動により、転写部5手前に配置されたタイミングローラー対84に向けて搬送される。タイミングローラー対84は、転写部5でトナー画像を記録紙P2に正常に転写させるため、転写部5でのトナー画像の形成タイミングに同期させて、記録紙P2を転写部5へ搬送する。すなわち、搬送ローラー対83で記録紙をタイミングローラー対84まで搬送すると、タイミングローラー対84を停止した状態とすることで記録紙P2が弛んでループを形成させ、そのループにより用紙スキューを補正してから二次転写ローラー57に搬送される。
主搬送路R0には、搬送ローラー対83の上方(搬送方向下流側)に、搬送ローラー対83により縦搬送された記録紙P2を検出するための搬送センサー(記録紙検出部)85が設置される。タイミングローラー対84の下方(搬送方向上流側)には、タイミングローラー対84手前に到達した記録紙P2の先端を検出するためのタイミング前センサー(記録紙検出部)86が設置される。搬送センサー85およびタイミング前センサー86それぞれの検出信号に基づき、主搬送路R0における用紙搬送およびループ制御が実行される。
主搬送路R0の最下流となる終端部分には、印刷済の記録紙P2を排出する排紙ローラー対91が配置される。印刷済の記録紙P2は、排紙ローラー対91の回転駆動によって排紙トレイ7に排出される。主搬送路R0において、排紙ローラー対91の下方(搬送方向上流側)には、記録紙P2の後端を検出する排紙センサー90が配置されている。これにより、排紙センサー90が記録紙P2の後端を検出することによって、記録紙P2が排紙ローラー対91から排紙トレイ7に正常に排出されたことが確認され得る。
<2.画像形成装置のハードウェア構成>
図3は、画像形成装置1のハードウェア構成を示す図である。画像形成装置1は、図3に示す構成の本体制御部10を含む。本体制御部10は、画像形成装置1を構成する各部を制御する。これにより、画像形成装置1における各種の動作(記録紙P2への印字動作、および、原稿P1からの画像読取動作、など)が実行される。
本体制御部10は、各種演算処理や制御を実行するCPU(Central Processing Unit)101と、制御プログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)102と、演算データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)103と、転写部5で形成させるトナー画像の基となる画像データを生成する画像処理部104と、画像処理部104で得られた画像データを一時的に記憶する画像メモリ105と、画像形成装置1を構成する各部との間で信号の送受信を行う入出力インターフェース106と、を含む。
操作パネル9が受け付けた操作に応じた信号を受信すると、CPU101は、操作パネル9で受け付けた操作に対応する動作を識別する。同様に、本体制御部10は、入出力インターフェース106により、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワーク110を介して外部端末などから送信される信号を受信すると、外部端末で指定された動作を識別する。これにより、CPU101は、操作パネル9または外部端末を介して指定された動作に基づく制御プログラムをROM102から読み出し、該制御プログラムに基づいてCPU101が動作する。
CPU101は、ROM102から読み出した制御プログラムに基づき、画像読取部3、露光部52、転写部5、定着部6、および給紙装置8のそれぞれを駆動制御する画像読取制御部113、露光制御部114、転写制御部115、定着制御部116、および搬送制御部118のそれぞれに信号を出力する。従って、画像形成装置1は、本体制御部10から、画像読取制御部113、転写制御部115、および定着制御部116それぞれに信号が与えられることにより、指定された動作に応じて、画像読取部3、露光部52、転写部5、および定着部6のそれぞれを駆動させる。画像形成装置1は、本体制御部10から搬送制御部118に信号が与えられることで、搬送装置における繰り出しローラー81、およびローラー対82〜84,90を回転駆動させる。
<3.画像形成装置の印刷動作>
次に、画像形成装置1による印刷動作について、以下に説明する。画像形成装置1は、操作パネル9または外部端末によって、印刷動作を行うように指示を受けると、本体制御部10において、CPU101が印刷動作のための制御プログラムをROM102から読み出して、印刷動作のための制御動作を開始する。まず、CPU101は、搬送制御部118を通じて、搬送装置を駆動制御することで、給紙トレイ4から最上層の記録紙P2を繰り出して、主搬送路R0へ送り出す。
CPU101は、主搬送路R1へ送り出された記録紙P2へトナー画像を転写すべく、露光制御部114および転写制御部115に制御信号を与え、露光部52および転写部5を駆動制御する。このとき、CPU101は、画像読取制御部113を通じて画像読取部3で原稿P1より読み取られた画像信号、または、入出力インターフェース106を通じて外部端末より受信した画像信号を、画像処理部103に与える。
これにより、画像処理部103では、与えられた画像信号に基づいて、Y、M、C、K各色のトナー画像を形成するための画像データを生成し、画像メモリ105に記憶させる。画像メモリ105に記憶されたY、M、C、K各色の画像データは、CPU101より読み出されて、露光制御部114に与えられる。従って、露光制御部114が、Y、M、C、K各色の画像データに基づいて、露光部52内の発光素子(不図示)を駆動させることで、Y、M、C、K各色の感光体ドラム61に静電潜像を形成する。即ち、転写制御部115が転写部5を駆動させるため、Y、M、C、K各色の作像部51において、帯電器62によって帯電させた感光体ドラム61の表面に露光部52からレーザー光が照射され、Y、M、C、K各色の画像に対応した静電潜像が形成される。
この静電潜像が形成された感光体ドラム61の表面に、現像器63で帯電したトナーが移り、第1の像担持体となる感光体ドラム61にトナー画像が形成される。そして、感光体ドラム61の表面に担持されたトナー画像が、中間転写ベルト53と接触する際、一次転写ローラー54の静電気力によって、中間転写ベルト53に転写されるため、第2の像担持体となる中間転写ベルト53の表面に、Y、M、C、K各色が重なったトナー画像が形成される。一方、トナー画像を中間転写ベルト53に転写した感光体ドラム61に残った未転写トナーは、クリーナー部64にて掻き取られ、感光体ドラム61上から取り除かれる。
主搬送路R0に搬送された記録紙P2は、その先端がタイミング前センサー86で検出されると、その検出結果が転写制御部115に与えられるため、記録紙P2がタイミングローラー対84に到達したことを、転写制御部115が認識する。転写制御部115は、中間転写ベルト53にトナー画像が転写されるタイミングに合わせて、タイミングローラー対84を動作させる。このとき、中間転写ベルト53に転写されたトナー画像は、駆動ローラー55および従動ローラー56によって中間転写ベルト53が回転することで、二次転写ローラー57と当接する転写位置まで移動し、主搬送路R0上の転写位置まで搬送される記録紙P2に転写される。トナー画像を記録紙P2に転写した中間転写ベルト53に残った未転写トナーは、クリーナー部58にて掻き取られ、中間転写ベルト53上から取り除かれる。
二次転写ローラー57との当接位置でトナー画像が転写された記録紙P2は、加熱ローラー59および加圧ローラー60による定着部6に搬送される。このとき、CPU101は、定着部6に搬送される記録紙P2上のトナー画像を定着させるべく、定着制御部116を通じて定着部6を駆動制御する(STEP123)。即ち、定着制御部116が、加熱ローラー59および加圧ローラー60の回転動作を制御すると同時に、加熱ローラー59の加熱動作を制御する。
これにより、未定着トナー像を載せた記録紙P2は、定着部6の定着ニップ部を通過する際に、加熱ローラー59による加熱および加圧ローラー60による加圧が施されて、未定着トナー像が紙面に定着される。そして、トナー像定着後(片面印刷後)の記録紙P2は、排紙ローラー対91まで搬送されると、排紙ローラー対91により排紙トレイ7に排出される。このとき、排紙センサー90で記録紙P2の後端を検出し、その検出結果が本体制御部10に与えられる。これにより、本体制御部10は、排紙トレイ7に正常に記録紙P2が排出されたことを確認する。
<4.記録紙検出部の構成>
画像形成装置1は、図3に示されるように、搬送経路における記録紙P2の搬送速度等を検出するための記録紙検出部800をさらに含む。本体制御部10のCPU101は、記録紙検出部800の検出出力に基づいて搬送速度等の搬送態様を特定し、特定された態様に基づいて搬送制御部118による搬送の態様を制御する。図4は、記録紙検出部800の構成を示す図である。
図4に示されるように、記録紙検出部800は、記録紙P2に対して光を照射する発光部801と、記録紙P2からの反射光を電気信号に光電変換する受光部802とを含む。CPU101は、発光部801の発光態様を制御する。受光部802は、反射光に基づく信号をCPU101へ出力する。CPU101は、受光部802から入力された信号を処理することにより、記録紙P2の搬送速度等を検出し得る。
発光部801は、搬送経路中の記録紙P2から所定距離(例えば、5〜10mm)および所定の角度をもって設置され、内蔵する光源803からの光を、光学系804を介して記録紙P2上に照射する。受光部802は、搬送経路中の記録紙P2から所定距離(例:7〜12mm)の距離を置いて配置されており、内蔵されているイメージセンサー805が記録紙P2と略平行となるように配置され、記録紙P2表面からの反射光を光学系806を介してイメージセンサー805で受光する。
図5は、記録紙P2表面に対するレーザー光の照射および検出を説明するための図である。図5に示されるように、記録紙P2表面上において、発光部801からの光が照射される照射領域A1内側に、受光部802のイメージセンサー805に結像される検出読取領域B1が形成される。
記録紙検出部800がLED方式センサーによって実現される場合、発光部801が光源803として発光ダイオード(LED)を内蔵し、記録紙P2表面の凹凸等による光の明暗パターンを受光部802が受光する。受光部802では、光学系806を介して、イメージセンサー805表面上に、明暗パターンが結像される。イメージセンサー805が、結像した明暗パターンに基づく電気信号(画像信号)を、検出信号として出力する。明暗パターンは、記録紙P2表面に描かれた文字あるいは模様に限らず、通常の白い紙にも存在する表面の凹凸、紙繊維のパターン、漉きむら等によっても形成される。
イメージセンサー805は、光電変換素子を具備した画素をマトリクス状に配置して構成されている。検出周期は、例えば、100μ秒に設定されている。イメージセンサー805の検出周期は、用紙の種類等に対応させて適宜変更可能であり、例えば、最大80μ秒程度まで変更され得る。イメージセンサー805の画素数は、たとえば、900画素(30×30:1画素=1/800インチ)である。イメージセンサー805における光学変換素子の配列は、マトリクス状である必要はなく、「30×120」等の長方形の配列であってもよい。
記録紙P2からの反射光は、正反射成分と散乱反射成分に分類可能である。このことから、発光部801による光の記録紙P2に対する照射方向を、記録紙P2の法線方向に対して入射角θ(たとえば、16度)だけ傾斜させるとともに、受光部802による受光方向を記録紙P2の法線方向に一致させることで、受光部802が、散乱反射成分を受光することができる。
記録紙検出部800がレーザー方式センサーによって実現される場合、発光部801は、光源803としてレーザーダイオードを内蔵し、受光部802は、記録紙P2表面の凹凸等によるレーザー光の干渉縞パターンを受光する。図6をさらに参照して、レーザー光の干渉縞パターンについて説明する。
図6は、記録紙P2表面へのレーザー光の照射を、詳細に説明するための図である。図6では、拡大図EXにおいて、記録紙P2の表面がさらに詳細に示されている。拡干渉縞パターンは、記録紙P2表面の微妙な凹凸により記録紙P2表面と受光部802との距離に差が生じ、当該距離の差によって記録紙P2の検出読取領域B1の各位置から反射する拡散光に位相差が生じることによって、形成される。記録紙P2表面の凹凸だけでなく、紙繊維のパターン、漉きむら等によっても形成される。レーザー光は、コヒーレントが非常に高いため、画像形成装置1では、微細な凹凸変化であっても検出され得る。
干渉が発生する理由を具体的に説明すると、レーザー光は用紙表面(粗面)に当たるときに、用紙表面の微妙な凹凸により、微妙に用紙表面との距離に差ができ、用紙から反射する拡散光に位相差が生じるためである。この干渉パターンは、用紙表面の状態によって決まり、用紙が静止していれば干渉のパターンも静止し、用紙が移動すれば、干渉パターンも用紙と同速度で移動する。上記干渉パターンの発生要因となる用紙表面の凹凸は、単に面の粗さだけでなく、紙繊維のパターンまた漉きむら等によっても、多種多様に形成される。
本体制御部10(または搬送制御部118)が、記録紙検出部800から出力される検出信号となる電気信号(画像信号)を、イメージセンサー805の検出周期毎に受け、隣接する周期(フレーム)の電気信号の差分に基づいて、記録紙P2の移動量または移動速度(搬送速度)を算出する。
図7は、複数の撮像画像からの記録紙P2の移動量の算出を説明するための図である。図7に示されるように、(状態a)で示されるように、本体制御部10(または搬送制御部118)は、n回目の検出動作により、記録紙検出部800から検出信号Snを受ける。検出信号Snは、記録紙P2のうち、n回目の検出動作が実行されるときに読取領域B1に位置する部分の撮像画像を含む。その後、(状態b)で示されるように、n+1回目の検出動作により、記録紙検出部800から検出信号Sn+1を受ける。検出信号Sn+1は、記録紙P2のうち、n+1回目の検出動作が実行されるときに読取領域B1に位置する部分の撮像画像を含む。「検出信号Snと検出信号Sn+1」は、「複数の撮像画像」の一例である。本体制御部10(または搬送制御部118)は、検出信号Snと検出信号Sn+1とを比較して、同一パターン(明暗パターンまたは干渉稿パターン)PT1の移動量M1を演算し、記録紙P2の移動量または移動速度(搬送速度)を算出する。
記録紙検出部800は、上記構成以外に、レーザードップラー速度計で構成され、記録紙P2からの被測定波の周波数が移動速度に比例して偏移(シフト)するいわゆるドップラー効果を利用して、記録紙P2の移動速度を測定するものとしても構わない。
記録紙検出部800がレーザードップラー速度計によって構成される場合、記録紙検出部800は、二本の照射光を記録紙P2の速度方向で前後となる位置に照射させ、前後それぞれの照射位置から反射された散乱光を、同一の受光部で受けて、記録紙P2の移動速度(搬送速度)を検出する。受光部で受ける散乱光の中には、記録紙P2の速度情報が、光の波長変化という形で含まれている。それぞれの照射光からの散乱光は、前方側では波長が短くなる方向、後方側では長くなる方向に変化しており、記録紙検出部800は、その互いの波長の差をヘテロダイン検波して速度を検出し、本体制御部10または搬送制御部118に出力する。
図8は、イメージセンサー805上に結像される明暗パターンの具体例を説明するための図である。図8では、3段のそれぞれに、記録紙ST1および/または記録紙ST2が示されている。より具体的には、上段は、図7の(状態a)に対応し、第n回目の読取における記録紙P2の位置を示す位置ST1を示す。中段は、図7の(状態b)に対応し、第n+1回目の読取における記録紙P2の位置を示す位置ST2を示す。下段は、位置ST1と位置ST1を対比するために、これらの双方を重ねて示す。
図8において、矢印M1は、記録紙P2の一部の明暗パターンを示し、当該明暗パターンの第n回目の読取における位置を示す。矢印M2は、記録紙P2における矢印M1と同じ部分の明暗パターンを示し、当該明暗パターンの第n+1回目の読取における位置を示す。
第n回目の読取のときから第n+1回目の読取のときまでの間、記録紙P2は、右方向に、位置ST1から位置ST2まで搬送される。これにより、記録紙P2の一部の明暗パターンが、矢印M1の位置から矢印M2の位置まで移動する。図8では、移動量が、移動量N1として示されている。
本実施の形態のCPU101は、位置ST1で示された撮像画像と位置ST2で示された撮像画像から、移動量N1を検出する。より具体的には、CPU101は、図8の下段に示されるように、第n+1回目の読取において得られた撮像画像から、第n回目の読取時に得られた撮像画像の一部(矢印M1)と同じ明暗パターンを有する部分を検索し、当該検索の結果として部分(矢印M2)を取得し、その後、矢印M1と矢印M2の距離を算出する。算出された距離が、移動量N1に対応する。
CPU101は、さらに、移動量N1を、第n回目の読取が行なわれてから第n+1回目の読取が行なわれるまでの時間で割ることにより、記録紙P2の搬送速度を導出する。
CPU101は、さらに、導出された搬送速度と予め定められた搬送速度とを比較することにより、搬送が正常であるか否かを判断することができる。CPU101は、導出された搬送速度と予め定められた搬送速度とを比較する代わりに、算出された移動量N1と予め定められた移動量とを比較することによって、搬送が正常であるか否かを判断することもできる。
本明細書では、移動量算出の原理は、記録紙P2の搬送で記載されたが、ベルト搬送や中間転写ベルトにおいても、同じ原理で、同様説明が可能である。ここでは、詳細な説明は、繰り返されない。
図8等を参照して説明されたように、本実施の形態では、第n+1回目の読取で取得される信号(撮像画像)と第n+1回目の読取で取得される信号(撮像画像)とが比較されることによって、記録紙P2の搬送速度が検出される。第n+1回目の撮像画像は、たとえば、第n回目の撮像画像の次のフレームの撮像画像である。ただし、本実施の形態において、記録紙P2の搬送速度の検出に利用される複数の撮像は、必ずしも連続していなくてもよい。
<5.撮像素子の傾き>
MFP100において、撮像素子(イメージセンサー805)が傾きをもって取り付けられる場合について説明する。図9は、イメージセンサー805が、本来の角度に対して傾いて取り付けられたことによる、撮像画像における影響を説明するための図である。図9に示されたイメージセンサー805の具体的構成の一例は、32画素×128画素程度の画素数を有するセンサーである。この例では、イメージセンサー805において、搬送方向に、当該搬送方向とは交わる方向において配列されるより多くの画素が配列される。なお、画素数についての上記された具体的な数値は、単なる一例である。イメージセンサー805において、画素は、正方形状に配列されていてもよい。
図9では、「移動量センサと搬送物の関係(1)」と「移動量センサと搬送物の関係(2)」とが示されている。「移動量センサと搬送物の関係(1)」では、上段に、記録紙P2とイメージセンサー805の位置関係が示される。図9において、イメージセンサー805は長方形で示されている。図9には、さらに、用紙の搬送方向(FD方向)と、CD方向とが示されている。CD方向は、FD方向に対して垂直の方向である。
「移動量センサと搬送物の関係(1)」は、さらに、イメージセンサー805の撮像範囲AR1,AR2と記録紙P2の位置ST1,ST2との相対的な位置関係を示す。時刻tにおける位置関係は、位置ST1と撮像範囲AR1とによって示されている。時刻t+△tにおける位置関係は、位置ST2と撮像範囲AR2とによって示されている。
撮像範囲AR1,AR2として示されるように、撮像範囲も、長方形状を有する。
「移動量センサと搬送物の関係(1)」では、イメージセンサー805は、撮像範囲AR1,AR2の長方形状が、搬送方向(FD方向)と同じ方向を有する。したがって、時刻tと時刻t+△tのいずれにおいても、撮像範囲AR1,AR2の全域が、位置ST1または位置ST2に含まれる。
一方、「移動量センサと搬送物の関係(2)」では、撮像範囲AR1,AR2の長方形状が、搬送方向(FD方向)と同じ方向の辺を含まない。つまり、撮像範囲AR1,AR2の長方形状のいずれの辺も、搬送方向(FD方向)と交わる。これにより、時刻tでは、撮像範囲AR1の全域が、位置ST1に含まれるが、時刻t+△tでは、撮像範囲AR2の一部が、位置ST2の外側に位置する。
より具体的には、図9の枠FL内に記載されるように、撮像範囲AR1,AR2の長方形状の中の二辺が、搬送方向(FD方向)に対して角度θの角度を有するため、時刻t+△tでは、撮像範囲AR2の一部が、位置ST2の外側に位置する。
図10は、図9の「移動量センサと搬送物の関係(2)」の時刻t+△tの状態をより詳細に説明するための図である。
図10に示されるように、時刻t+△tでは、撮像範囲AR2の一部が記録紙P2の位置ST2の外に位置する。つまり、撮像範囲AR2において記録紙P2の位置ST2内に位置する部分は、時刻tにおいて記録紙P2の位置ST1内に位置する撮像範囲AR1の部分(全域)よりも狭い。時刻tにおいて特徴量の検出対象となる領域は、記録紙P2において、時刻t+△tにおいても特徴量が検出が可能な領域、つまり、時刻t+△tにおける撮像画像に含まれる領域でなければならない。
したがって、「移動量センサと搬送物の関係(2)」のとき(イメージセンサー805の撮像領域の長方形が搬送方向に沿う辺を持たないとき)、つまり、イメージセンサー805の取付角度が搬送方向に沿わない場合、撮像画像において、搬送速度の検出のために特徴量の検出対象とすることができる領域が、「移動量センサと搬送物の関係(1)」と比較して狭くなる。
図11は、イメージセンサー805の傾きについてさらに詳細に説明するための図である。図11の左側に示されるように、撮像素子(イメージセンサー805)が傾いている場合でも、撮像領域から搬送後の特徴量を検出できるときと、図11の右側に示されるように、撮像素子(イメージセンサー805)が傾くことで、搬送後の特徴量が撮像領域外に出てしまう場合に分かれる。このように、搬送前の特徴量の位置と、撮像素子の傾き方向、および、撮像素子の傾き角度により、搬送後の撮像領域に、特徴量の検出対象の領域が入っているかどうかが決まる。
図12は、イメージセンサー805の傾きについてさらに詳細に説明するための図である。撮像素子の傾き情報が無い場合には、図12に示されるように、右回り/左回りどちらに撮像素子が傾いた場合でも搬送後の特徴量が全て撮像領域に入るように特徴量の探索範囲を限定する必要がある。しかし、傾き方向や傾き角度を未知として領域限定を行うためには、最悪の事態を想定して、余裕を持った領域限定を行う必要がある。このため、図12中のハッチングを付された部分として示されるように、非常に広い範囲が、搬送速度の検出のための特徴量の探索/特徴量の検出には使用できなくなる。このように使用できる範囲が狭くなると、検出できる特徴量の数が大きく減ってしまい、少ない特徴量から搬送速度を求めることとなり、速度検出精度が低下する。
また、撮像領域を両側から限定する場合に有効な画素数を増やそうとすると、CD方向(図9参照)に画素数の大きい撮像素子を使用する必要があり、撮像素子のコストが上昇する。さらに、撮像素子の画素数が大きくなると、データ転送量の増加し、これにより、必要なフレームレートを実現できないといった課題が生じ得る。
そこで、本実施の形態の画像形成装置1では、テスト用に記録紙P2を搬送し、当該テスト用の記録紙P2についての複数のタイミングで取得された撮像画像を処理することにより、上記の角度θを求める。そして、当該角度θを用いることにより、それ以降搬送される記録紙P2において、時刻tと時刻t+△tの双方の撮像画像において、撮像対象に含まれる部分のみについて、特徴量を検出する。これにより、少なくとも、データの処理量が抑えられる。
本明細書では、テスト用の記録紙P2を「搬送物」ともいう。「搬送物」の特徴量を用いて特定された角度θを用いて、搬送速度の検出対象となる記録紙P2を、「記録媒体」ともいう。
なお、「搬送物」と「記録媒体」とは、必ずしも分離されていなくともよい。たとえば、連続紙において、その一部が「搬送物」であり、他の一部が「記録媒体」である場合もあり得る。
<6.機能的な構成>
図13は、記録紙P2の搬送速度の検出に関する、画像形成装置1の機能的な構成を説明するための図である。図13には、主に、記録紙検出部800とCPU101の機能が示されている。
図13に示されるように、画像形成装置1は、傾き情報検出部820と、移動量検出部830とを含む。
傾き情報検出部820は、傾き算出部821と、特徴量検索領域限定部822とを含む。傾き算出部821は、イメージセンサー805によって取得された、搬送物(記録紙P2)の撮像画像から、図9等に示された角度θ(傾き情報)を算出する。特徴量検索領域限定部822は、角度θに基づいて、時刻tと時刻t+△tの双方の撮像画像に含まれ得る、記録紙P2の領域を特定する。
移動量検出部830は、表面情報取り込み部831と、移動量算出部832とを含む。表面情報取り込み部831は、記録媒体(記録紙P2)についての複数の撮像画像を取得し、それぞれにおいて特徴量を取得する。移動量算出部832は、表面情報取り込み部831によって特定された特徴量について、同じ特徴量を有する部分の移動量から、記録媒体の移動量を算出する。移動量算出部832は、算出された移動量を搬送制御部118へ出力する。移動量算出部832は、搬送制御部118に、移動量の代わりに移動速度(搬送速度)を出力してもよい。
搬送制御部118は、移動量算出部832から出力された移動量(移動速度)と予め定められた移動量(速度)とを比較し、搬送用の駆動ローラーを回転させるための駆動モーター80の駆動態様を調整する。つまり、搬送制御部118は、記録紙P2について撮像された画像から検出された記録紙P2の搬送速度によって、駆動ローラーをフィードバック制御する。
以上説明された本実施の形態では、傾き情報検出部820が、(1)搬送物についての複数の撮像画像を撮像するステップと、(2)搬送物についての複数の撮像画像のそれぞれから特徴量を検出するステップとを実行する。移動量検出部830が、(3)記録媒体についての複数の撮像画像を撮像するステップと、(4)搬送物についての複数の撮像画像において同じ特徴量を有する部分の移動量から、記録媒体についての複数の撮像画像における、搬送速度を検出するために特徴量を検出する対象となる領域を特定するステップと、記録媒体についての複数の撮像画像における、特定された領域の特徴量を検出することにより、記録媒体の搬送速度を検出するステップとを実行する。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、画像形成装置1において、撮像画像において予め設定された方向の、搬送物についての複数の撮像画像における同じ特徴量を有する部分の移動方向に対する傾きが、傾き情報として特定される。さらに、画像形成装置1では、傾き情報に基づいて、記録媒体についての複数の撮像画像において、搬送経路上の記録媒体の搬送速度を検出するための特徴量の検出範囲が限定される。
図14は、第2の実施の形態の画像形成装置1における処理を説明するための図である。図14の左側は、「傾き情報を使用しない場合」の処理内容を示す。図14の右側は、「傾き情報を使用する場合」の処理内容を示す。
図14の左側に示されるように、撮像素子の傾き情報を使用しない場合には、イメージセンサー805の向き(方向)と記録紙P2の搬送方向との関係が特定されていない。したがって、時刻tにおいて特徴量を検出された部分が、時刻t+△tにおいて、撮像画像のどの方向に進むかを示す情報が特定されていない。このため、CPU101(移動量検出部830)は、どちらに移動しても、時刻t+△tの撮像画像における特徴量の探索対象に、時刻tの撮像画像において特徴量の検出対象となった部分が入るように、CD方向(図9参照)の両側まで、特徴量の探索範囲を広げる必要があった。
一方、図14の右側に示されるように、傾き情報が特定されている場合、CPU101(移動量検出部830)は、傾き情報(撮像素子の傾きが右側または左側のどちらに傾いているかを示す情報)を用いて、特徴量を検出する領域を限定する。傾き情報を用いることにより、特徴量が次フレームで移動する方向を絞り込むことができる。これにより、CPU101(移動量検出部830)は、時刻t+△tの撮像画像において、特徴量の探索対象となる領域の広さを制限できる。たとえば、CPU101(移動量検出部830)は、傾き情報を使用しない場合と比較して、特徴量の探索対象の面積を、半分に減らすことができる。
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態の画像形成装置1では、撮像画像において予め設定された方向の、搬送物についての複数の撮像画像における同じ特徴量を有する部分の移動方向に対する角度が、傾き情報として特定される。傾き情報に基づいて、同じ特徴量を有する部分の移動方向に交わる方向について、記録媒体についての複数の撮像画像における、搬送速度を検出するための特徴量の検出範囲が限定される。図15は、第3の実施の形態の画像形成装置1において実行される処理の内容を説明するための図である。
図15に示されるように、第3の実施の形態の画像形成装置1では、傾き情報検出部820(図13)は、撮像画像における記録紙P2(搬送物)の端部の傾きを、撮像素子の傾き情報として特定する。記録紙P2の端部は、撮像画像を公知の方法によって処理することにより、特定され得る。
移動量検出部830(図13)は、傾き情報において特定される傾きθを用いて、特徴量の探索対象を限定する。より具体的には、撮像素子のCD方向の画素数W、FD方向の画素数H、および、上記の角度θを用いて、CD方向の端部から「W−H*tanθ」画素分については、特徴量の探索対象から除外する。
画像形成装置1は、さらに、撮像画像において搬送物の端部が延在する方向の、撮像画像において予め設定された方向に対する傾きから、傾き情報を特定する。図16は、搬送物の端部が延在する方向の傾きからの傾き情報の特定を説明するための図である。
図16において、画像IMG01は、傾き情報が0°のときの撮像画像の一例である。画像IMG02は、傾き情報が0°ではないときの撮像画像の一例である。画像IMG01,IMG02では、記録紙P2以外の場所を撮像した部分は、ハッチングを付されて示されている。
図16に示されるように、傾き情報検出部820は、撮像画像に対してエッジ処理を施すことにより、記録紙P2(搬送物)の端部を特定する。その後、傾き情報検出部820は、たとえば、特定された記録紙P2の端部が延在する方向と、撮像画像に対して予め定められた方向(たとえば、IMG01またはIMG02の線L1で示される端部が延在する方向)とのなす角を、傾き情報として特定する。
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態では、傾き情報検出部820は、画像形成装置を構成する要素(給紙路R1(図2)を構成する搬送ベルト等のユニット)の交換が行なわれた場合に、傾き情報を更新し、検出範囲の新たな限定のための処理を実行するように構成されている。
CPU101は、たとえば、所与のセンサーによって、搬送ベルトの製造番号を取得する。CPU101は、搬送ベルトの製造番号として取得される情報が変更された場合、当該搬送ベルトが交換されたと判断し、傾き情報を更新するために、新たな傾き情報を生成するための処理を実行する。
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態では、画像形成装置1は、傾き情報の検出のためのモードにおいて、搬送物の表面にテストパターンを付着させ、撮像画像におけるテストパターンの傾きを用いて、傾き情報を特定する。図17は、第5の実施の形態における処理内容を説明するための図である。
図17において、IMG11およびIMG12のそれぞれは、テストパターンを付着された搬送物についての撮像画像の例を示す。より具体的には、IMG11は、傾き情報が0°である場合の撮像画像の一例である。IMG12は、傾き情報が0°ではない場合の撮像画像の一例である。
CPU101は、傾き情報の検出のためのモードでは、転写部5(図2)に、記録紙P2に対してテストパターンを付着させる。その後、CPU101は、記録紙検出部800に、テストパターンを付着させた記録紙P2の画像を撮像させる。その後、CPU101は、撮像画像において、予め定められた方向(たとえば、線L1が延在する方向)に対する、テストパターンが延在する方向のなす角θを特定する。CPU101(傾き情報検出部820)は、当該なす角θを、傾き情報として出力する。
画像形成装置1は、画像形成後の記録紙を裁断するモジュール(後処理モジュール)を備えていてもよい。CPU101は、上記テストパターンを、記録紙P2の、当該後処理モジュールによって記録紙P2の本体から切り離される位置に付着させてもよい。これにより、記録紙P2の画像品質に影響を及ぼさない位置に、テストパターンが付着され得る。
[第6の実施の形態]
第6の実施の形態の画像形成装置1では、互いに交わる2つの方向において、搬送物についての複数の撮像画像において同じ特徴量を有する部分の移動量が特定される。傾き情報は、当該2つの方向のそれぞれにおける移動量を用いて特定される。図18〜図20は、第6の実施の形態における処理内容を説明するための図である。
図18には、搬送物についての撮像画像の一例として、画像IMG21が示されている。第6の実施の形態において、傾き情報検出部820は、撮像画像における2つの方向についての特徴量のパターンの移動量を特定し、当該2つの移動量から、傾き情報を特定する。2つの方向は、第1の方向、および、当該第1の方向に交わる第2の方向として表される。図18では、第1の方向が線L1で示され、第2の方向が線L2で示されている。
図18では、第1の方向の移動量がVyで示され、第2の方向の移動量がVxで示されている。第6の実施の形態では、第1の方向と第2の方向は互いに直交しているが、これらは直交している必要はない。
画像形成装置1において、記録紙P2として連続紙が搬送される場合、または、記録紙P2が蛇行する場合、CD方向(図2)の速度変動が抑えられたシステムでは、搬送方向(FD方向:図2)の速度成分をVfd、CD方向の速度成分をVcdとしたときに、Vfd>0かつVcd≒0となる。このような場合、撮像素子による撮像画像の予め定められた方向が角度θだけ傾いているとき、実際に搬送される速度Vfdは、撮像素子上の座標空間の直交する2方向(X方向、Y方向)に分割することができる。X方向およびY方向は、図18にも示されている。
複数の撮像画像における、ある特徴量を有する部分のX方向の速度Vxは、次の式(1)で表される。
Vx=Vfd*sinθ …(1)
上記特徴量を有する部分の、複数の撮像画像におけるY方向の速度Vyは、次の式(2)で表される。
Vy=Vfd*cosθ …(2)
式(1)および式(2)から、角度θは、次の式(3)で表される。
θ=tan−1(Vx/Vy) …(3)
傾き情報検出部820は、上記の式(1)〜(3)に従って、角度θを導出し、当該角度θを傾き情報として移動量検出部830へ出力する。
図19は、傾き情報検出部820としてのCPU101によって実行される処理のフローチャートである。
図19に示されるように、ステップS102で、CPU101は、撮像素子による撮像画像から、特徴量を抽出する。その後、制御はステップS104へ進む。
ステップS104で、CPU101は、搬送物についての複数の撮像画像において特徴量を検出することにより、当該特徴量を検出した部分についての上記の速度Vxおよび速度Vyを計算する。より具体的には、CPU101は、上記複数の撮像画像において同じ特徴量を有する部分が搬送物の搬送に従って移動したときの速度として、上記の速度Vxおよび速度Vyを計算する。その後、制御はステップS106へ進む。
ステップS106で、CPU101は、ステップS104で計算された速度Vxがほぼ0(0または予め定められた0近傍の値)であるか否かを判断する。CPU101は、速度Vxがほぼ0であると判断すると、ステップS108へ制御を進める。CPU101は、速度Vxがほぼ0というよりは大きい値であると判断すると、ステップS110へ制御を進める。
ステップS110で、CPU101は、次の式(4)に従って値Vfdを計算する。
Vfd=Vx2+Vy2 …(4)
その後、制御はステップS112へ進む。
ステップS112で、CPU101は、上記式(3)、または、次の式(5)もしくは式(6)から、角度θを計算して、図19の処理を終了させる。
sinθ=Vx/Vfd …(5)
cosθ=Vy/Vfd …(6)
記録紙P2の蛇行によってCD方向(図2)において速度変動がある場合、図19の処理は、図20に示されるように変更され得る。図20は、図19の処理の変形例のフローチャートである。記録紙P2が蛇行する場合、複数の撮像画像において特徴量が一致する部分のCD方向の移動量が、一時的に0(または0に近い値)になり得る。蛇行が発生しているときにCD方向の移動量が「0」と特定されないようにするために、図20の処理では、複数のタイミングでVxとVyとが求められる。その後、複数のタイミングのそれぞれで求められたVxとVyの平均値に基づいて、傾き情報(角度θ)が特定される。
より具体的には、図20の処理では、ステップS102とステップS104の制御に従って、ある複数の撮像画像の組合せから、VxとVyが求められる。
求められたVxとVyは、それぞれ、ステップS120で、積算される。
VxとVyの積算は、予め定められた値i回続けられる(ステップS120)。つまり、i個の「複数の撮像画像」からi個の「VxとVy」が求められ、それぞれが積算される。
その後、ステップS124で、Vxの平均値(Vx_ave)およびVyの平均値(Vy_ave)が算出される。
その後、ステップS126で、Vx_aveとVy_aveから、傾き情報として、角度θが算出される。
図20の処理において、i個の「複数の撮像画像」は、1枚の記録紙P2に対応する画像であってもよいし、複数枚の記録紙P2に対応する画像であってもよい。ただし、「複数の撮像画像」は、同一の記録紙P2に対応する画像である。
[第7の実施の形態]
第7の実施の形態の画像形成装置1では、搬送部による記録媒体の搬送速度、および、撮像素子の撮像周期に基づいて、搬送物についての複数の撮像画像における、搬送部による搬送方向についての、搬送速度を検出するための特徴量の検出範囲が特定される。
撮像素子の撮像領域内で、1フレーム間にどの程度特徴量が移動するかは、搬送物の搬送速度と、撮像周期(フレームレート)情報を用いて推測され得る。第7の実施の形態の画像形成装置1において、CPU101は、搬送速度情報と、イメージセンサー805のフレームレートとに基づいて、撮像した画像領域のFD方向のどの範囲から特徴量を探索するかを限定する。第7の実施の形態では、搬送速度とフレームレートとに基づいて、特徴量が存在しないと推測される領域が特徴量の探索範囲から除外される。これにより、偶然に探索したい特徴量と類似した特徴量を有する部分が特定されることによる搬送速度の検出精度の低下が回避され得る。
図21は、第7の実施の形態における、搬送方向(FD方向)についての特徴量の探索範囲の制限態様を説明するための図である。図21に示されるように、第7の実施の形態では、CPU101は、撮像画像IMG31に対して、それ以前に撮像された画像において検出された特徴量と同じ特徴量を有する部分を含むと考えられる範囲が、範囲AR31で示される。画像IMG31において残りの範囲(範囲AR32)は、上記の部分を含まないと考えられる範囲である。
上記のようなFD方向の特徴量の探索領域の限定において、直前のフレームの撮像画像から求められた搬送速度の検出結果が用いられることが好ましい。記録紙の搬送速度は、画像形成装置1における生産性および/または通紙したい用紙の種類によって、決定される。ただし、実際の搬送速度は、用紙のスリップ等の影響で常に変動し得る。
このような速度変動の影響を考慮して、FD方向の特徴量探索範囲の最適化のために、最も新しい速度検出結果を用いて領域限定を行う。つまり、記録媒体についての複数の撮像画像のうち最初の撮像画像は、撮像素子が、搬送物についての複数の撮像画像のうち最後の撮像画像の次のフレームとして撮像した画像であることが好ましい。
[第8の実施の形態]
第8の実施の形態の画像形成装置1では、記録紙P2の搬送においてCD方向(図2)に速度の変動がある場合、Vcd=0のときに設定された特徴量の探索範囲に、速度のばらつき分を考慮した範囲が追加されることが好ましい。このように、速度のばらつき分を考慮して、特徴量の探索範囲が拡げられることにより、突発的な速度変動によって、第1の実施の形態等に従って設定される特徴量の探索範囲から外れてしまう可能性がある部分を、探索範囲内に含めることができる。
図22は、第8の実施の形態における、CD方向における特徴量の探索範囲の拡張を説明するための図である。図22では、撮像画像81において、拡張前の探索範囲の端部が、線L81で示されている。拡張後の探索範囲の端部が、線L82で示されている。線L81と線L82の距離は、ばらつきを表わす値(たとえば、予め定められた時間期間におけるVxの標準偏差)を用いた関数であれば、適宜設定され得る。
[第9の実施の形態]
画像形成装置1では、複数の撮像画像において同じ特徴量を有する部分であると特定されるために、予め定められた相関係数が利用され得る。第9の実施の形態の画像形成装置1では、当該相関係数が、状況に応じて変更され得る。より具体的には、記録媒体についての複数の撮像画像における特徴量の検出対象の部分のうち、後から撮像された方の撮像画像に含まれる可能性の低い部分ほど、同じ特徴量を持つ部分であると判断するための相関係数が高く設定される。
図23は、第9の実施の形態における、相関係数の設定態様を説明するための図である。図23では、記録媒体についての画像IMG91は、記録紙P2に対応する部分AR91と、記録紙P2以外のもの(たとえば、搬送ベルト)に対応する部分AR92とを含む。画像IMG91は、さらに、部分AR91のうち、部分AR92との境界のある一定の領域が、部分AR91Xとして示されている。
第9の実施の形態では、特徴量の探索対象が部分AR1に含まれる場合には、同じ特徴量を持つ部分として特定されるための相関係数の値として第1の値(たとえば0.7)が設定される。一方、特徴量の探索対象が部分AR1に含まれる場合には、同じ特徴量を持つ部分として特定されるための相関係数の値として、第1の値より高い第2の値(たとえば、0.9)が設定される。
撮像素子の撮像領域から特徴量の探索範囲が限定された場合、特徴量の探索範囲の境界にある部分は、搬送時にCD方向の速度変動が発生したとき、撮像領域外に外れてしまう可能性が高い。第9の実施の形態では、記録媒体の撮像画像において、そのような部分と同じ特徴量を有する部分が探索される場合、同じ特徴量を有すると特定されるための相関係数として比較的高い値が設定される。これにより、同じ特徴量を有すると判断される部分が誤って検出されることによる、搬送速度の検出精度の低下が抑制され得る。
今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。