図1には本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の全体構成の概要が示されている。画像形成装置1は、電子写真法によって画像を形成するタンデム式の作像部20を備えたカラープリンタである。ただし、これに限らず、モノクロプリンタ、複写機、複合機、またはファクシミリ機であってもよい。
画像形成装置1は、ローラの回転駆動により搬送路70に沿って搬送される用紙6に画像を形成して排出する。画像形成装置1は、ピックアップローラ40、給紙ローラ41、搬送ローラ42、タイミングローラ43、2次転写ローラ44、定着ローラ45、および排紙ローラ46を備えている。
ピックアップローラ40は、用紙収納部である給紙カセット35から必要枚数の用紙6を1枚ずつ取り出す。給紙ローラ41は、取り出された用紙6を搬送路70へ給紙する。搬送ローラ42は、用紙6をタイミングローラ43へ送る。
タイミングローラ43は、用紙6が到着するときに停止しているように制御され、それによって用紙6の先端部を湾曲させる(ループ形成)。ループ形成により、用紙6のスキューが補正される。その後、タイミングローラ43は、トナー像と用紙6とを位置合わせする所定のタイミングで回転駆動され、用紙6を2次転写ローラ44のニップ部(転写位置)へ送り出す。
2次転写ローラ43は、作像部20の転写ベルト25から用紙6にトナー像を転写させる。定着ローラ44は、トナー像が転写された用紙6に熱と圧力とを加える。排紙ローラ46は、排紙トレイ36に用紙6を排出する。
搬送路70には、タイミングセンサ51および排紙センサ52が設けられている。これらセンサ51,52はそれぞれが配置された位置(センサ位置)における用紙6の有無を検出する。タイミングセンサ51のセンサ位置はタイミングローラ432の上流側近傍であり、排紙センサ52のセンサ位置は排紙ローラ45の上流側近傍である。
また、画像形成装置1は、用紙6の移動を検出する用紙移動検出センサ55を備えている。用紙移動検出センサ55は、電子写真方式により転写ベルト25に形成された画像を用紙6に転写する転写位置の下流側であって画像を用紙6に定着させる定着位置の上流側に配置されている。すなわち、用紙移動検出センサ55のセンサ位置は、搬送路70中の2次転写ローラ44と定着ローラ45との間である。ただし、搬送路70の他の位置に設けてもよいし、複数の位置にそれぞれ設けてもよい。
図2には用紙移動検出センサ55の構成の一例が模式的に示されている。
用紙移動検出センサ55は、所定の検出領域における濃度パターンを撮像するイメージセンサ501、検出領域を照らす発光ユニット502、およびイメージセンサ501と発光ユニット502とを駆動する駆動回路503を備えている。イメージセンサ501および発光ユニット502は、外光の影響を防ぐハウジング504に収められている。イメージセンサ502は例えばCMOSセンサである。発光ユニット502の光源は例えば発光ダイオード(LED)である。
イメージセンサ501は、搬送方向M1に搬送される用紙6の表面と対向する。その対向間隙は例えば5〜12mm程度である。発光ユニット502は、用紙6の地肌の凹凸に応じた影が生じるように、用紙6の表面に対して僅かに傾いた方向の位置から用紙6の表面に照明光を照射する。照明光は用紙6の表面で乱反射し、乱反射した照明光の一部が結像用のレンズにより集光されてイメージセンサ501に入射する。これにより、凹凸に応じた影が濃度パターンとして撮像される。加えて、用紙6に画像が形成されている場合には、凹凸に応じた影および画像が濃度パターンとして撮像される。
また、用紙移動検出センサ55のセンサ位置に用紙6が無いときには、用紙6が有るときと比べてイメージセンサ501に入射する照明光の光量が少ない。それは、例えば検出領域には用紙6を案内する壁面部材が無く、空隙が照明されることになるからである。壁面部材が有ってもその表面の反射率が小さい場合も同様である。したがって、イメージセンサ501からみて、用紙6が無いときに見える背景は用紙6の表面のよりも暗い。このことから、用紙6の端縁が通過するとき、用紙6の表面と背景とが濃淡パターンとして撮像される。
このように、イメージセンサ501は、用紙6の地肌、用紙6の表面に付着したトナー像、および用紙6の先端縁または後端縁について、それらの濃度パターンを撮像することが可能である。
用紙移動検出センサ55の駆動回路503は、イメージセンサ501の出力を処理するプロセッサを有している。このプロセッサは、所定の周期ごとにイメージセンサ501が撮像した濃度パターンを比較することによって用紙6の移動量を検出する。用紙移動検出センサ55は、用紙6の移動量を検出結果として出力するものである。
図3には画像形成装置1の制御システムのハードウェア構成が示されている。
図3のように画像形成装置1は、印刷のための機械的な動作を行うエンジン部100と、印刷ジョブの受付けを含む印刷に関わるデータ処理を行うシステム制御部200とを有している。
エンジン部100は、作像部20、搬送駆動系30、CPU(Central Processing Unit) 101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、および不揮発メモリ104を備えている。
作像部20は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナーのいずれかまたは全部を用いて、モノクロ画像またはカラー画像を形成する。作像部20は、定着ローラ45を加熱するヒータの駆動回路を含んでいる。
搬送駆動系30は、搬送路70に配置された上述の各ローラ40〜46を回転させるモータ、回転力の伝達の断続のためのクラッチ、搬送ガイド爪といった可動部材を作動させるソレノイドなどから構成される。
CPU101は、ROM102に格納されているプログラムを実行することによって、作像部20および搬送駆動系30を制御する。CPU101は、プログラムの実行のワークエリアとしてRAM103を用い、不揮発性メモリ104をデータ保存エリアとして用いる。
CPU101には、搬送路70に配置された上述の各センサ51,52,55から検出信号が入力される。CPU101は、各センサ51,52,55からの検出信号によって用紙5の搬送状態を検知し、作像部20の動作と歩調を合わせて用紙6が移動するように搬送駆動系30を制御する。
システム制御部200は、本発明に関わる構成要素としてCPU201および操作部202を備えている。なお、図示を省略したが、システム制御部200は、CPU201が実行するプログラムを記憶するROM、プログラム実行のワークエリアとなるRAM、外部装置との通信のためのネットワークインタフェースなどを備えている。
CPU201は、外部装置からの印刷ジョブを受け付けると、エンジン部100のCPU101に対して、印刷ジョブにおける設定の内容を通知する。設定の内容は、印刷ページ数、部数、用紙サイズ、および用紙の紙種などである。CPU101とのやり取りで印刷が可能な状態であることを確認した後、CPU201はCPU101に印刷の開始を指示する。そして、作像部20の動作と歩調を合わせて、印刷すべき画像のデータをエンジン部100に転送する。
操作部202は、例えばタッチパネルディスプレイを備えたマンマシンインタフェースである。操作部202は、ユーザが用紙6の紙種を含む各種の動作条件を設定するための画面をタッチパネルディスプレイに表示させ、ユーザが設定した動作条件をCPU201に通知する。
図4には制御システムのCPU101の機能的構成が示されている。
CPU101は、用紙6の搬送速度の制御に関わる構成要素として、紙種取得部110、速度検出部130、およびローラ制御部150を有する。これら構成要素は、CPU101が上述のプログラムを実行することによって実現される機能的要素である。
紙種取得部110は、用紙6の紙種D6を取得する紙種取得手段である。紙種取得部110は、システム制御部200から印刷ジョブの設定の内容を示すジョブ情報DJを受け取り、ジョブ情報DJに基づいて紙種D6を取得する。
速度検出部130は、用紙移動検出センサ55の検出結果に基づいて用紙6の搬送速度V6を検出する速度検出手段である。速度検出部130は、用紙移動検出センサ55に対して所定の周期ごとに検出指令信号S1を送り、検出指令信号S1に対応して用紙移動検出センサ55から出力される移動量Dmを取得する。そして、速度検出部130は、取得した移動量Dmと当該所定の周期とに基づいて搬送速度V6を検出する。このとき、取得した移動量Dmのうち、搬送速度の設定値に基づいた所定の範囲内にある移動量Dmのみを用いて搬送速度V6を検出する。これにより、検出結果が実際の速度とかけ離れた値にならないようにすることができる。
このような速度検出部130は、用紙移動検出センサ55による検出方法またはその検出結果に基く搬送速度V6の検出方法を、紙種取得部110により取得された紙種D6に応じて変更する。
ローラ制御部150は、速度検出部130により検出された搬送速度V6に基づいて上述のローラ40〜46の回転速度を制御するローラ制御手段である。ローラ制御部150は、速度検出部130により検出された搬送速度V6が転写ベルト25の速度と一致するように回転速度を制御する。例えば、定着ローラ45を駆動するモータ31の回転を遅くまたは速くするようにモータ駆動回路32に指示を与える。
さて、画像形成装置1において、用紙6の紙種D6は、「普通紙」と「光沢紙」とに区別される。
「普通紙」とは、用紙移動検出センサ55によって移動を検出する際に、表面の凹凸を用紙の特徴として利用することが可能な用紙6である。つまり、用紙移動検出センサ55によって表面を撮像したときに、得られた撮影画像において表面の凹凸の影が識別可能な濃度パターンとして現れるような用紙6である。普通紙として、コピー用紙(一般に普通紙と呼ばれる)、厚紙、更紙などがある。
「光沢紙」とは、普通紙以外の用紙6であり、移動を検出する際の特徴となる程の凹凸がない平滑な地肌をもつ用紙6である。光沢紙として、写真プリント用紙、OHPシートなどがある。
ユーザによる紙種の設定には、コピー用紙・厚紙・写真プリント用紙・OHPシート・はがき・封筒などの選択肢がある。つまり、使用可能な用紙の紙種として、普通紙と光沢紙とが含まれている。これら選択肢のそれぞれを普通紙または光沢紙に分類したテーブルがあらかじめ例えばROM102に格納されている。紙種取得部110は、ジョブ情報DJから抽出した紙種をこのテーブルを参照して普通紙または光沢紙と判別する。そして、判別の結果を紙種D6として速度検出部130に与える。
画像形成装置1において、用紙移動検出センサ55は、紙種D6が光沢紙である場合に、イメージセンサ501により撮像されたトナー像の濃度パターンを用いて用紙6の移動量を検出する。または、用紙移動検出センサ55は、紙種D6が光沢紙である場合に、イメージセンサ501により撮像された用紙6の先端縁または後端縁の濃度パターンを用いて用紙の移動量を検出する。
画像形成装置1は、用紙6に画像を形成するためのジョブ情報DJに基づき、当該画像によっては用紙移動検出センサ55の検出領域内にトナー像が存在しないことが検知された場合に、検出領域内に用紙6の移動を検出するためのトナー像10(図10参照)を形成する。検出領域とは、イメージセンサ501によって撮像される被写体のうちの撮影画像に映り込む可能性のある撮像領域である。
用紙移動検出センサ55を用紙6の幅方向M2(図6参照)に対して相対移動可能に設けることができる。そのように用紙移動検出センサ55を設けた場合、画像形成装置1は、用紙6に画像を形成するためのジョブ情報DJに基づき、イメージセンサ501によって用紙6の移動量Dmの検出に適したトナー像が撮像されるように、用紙移動検出センサ55を相対移動させる。すなわち、用紙移動検出センサ55および用紙6の片方を一方向へ、またはこれらの両方を互いに反対の方向へ、トナー像が検出領域を通るように移動させる。用紙6の移動は、用紙6の側縁に当接する搬送ガイド部材をずらすものでよい。
用紙移動検出センサ55については、用紙6の幅方向M2の異なる位置に複数個が配置されてもよい。複数個の用紙移動検出センサ55が配置された場合、普通紙と光沢紙とでは異なる用紙移動検出センサ55が選択されて用紙6の搬送速度の検出に用いられる。
図5には用紙移動検出センサ55によって移動を検出する方法の概要が模式的に示されている。
用紙移動検出センサ55は、CPU101からの検出指令信号S1によって検出が指示されるごとに、検出領域内の被写体を撮像して撮影画像9a,9bを得る。各撮影画像9a,9bは、被写体のうちの例えば1辺が1〜2mm程度の矩形の部分の濃淡パターンを撮像したものである。図5において撮影画像9a,9bは10×10画素から構成される。ただし、この画素数は説明のための便宜的な例であって実際の画素数はこれに限らない。画素数が多いほど、より高い分解能の検出が可能になる。
1回目の撮像で撮影画像9aを得ると、用紙移動検出センサ55は、撮影画像9aを1画素ずつ一方向M10へずらした複数の予想画像を作成する。方向M10は、用紙6の搬送方向M1に対応する方向である。そして、用紙移動検出センサ55は、撮影画像9aおよび複数の予想画像のそれぞれにおける所定の位置範囲(例えば中央部)CAの部分を予測パターン90,91,92,93として記憶し、次の検出の指示を待つ。各予測パターン90,91,92,93の元の撮影画像9aに対するずれ量(ずらし画素数)は、順に0、1、2、3である。図示の位置範囲CAは4×4画素のサイズであるが、これに限らない。方向M10の画素数が多いほど、より高い分解能の検出が可能になる。
2回目の撮像で撮影画像9bを得ると、用紙移動検出センサ55は、撮影画像9bから位置範囲CAの部分を実測パターン9bcとして抽出し、この実測パターン9bcと予測パターン90,91,92,93との比較(パターンマッチング)を行う。そして、実測パターン9bcと一致した予測パターンのずれ量を、移動量DmとしてCPU101に送る。なお、図5の例では予測パターン92(ずれ量は2)が実測パターン9bcと一致している。
その後、用紙移動検出センサ55は、前回と同様の手順で、今回の撮影画像9baに対応する複数の予測パターンを記憶する。
3回目以降の撮像時においては2回目の撮像時と同様に、用紙移動検出センサ55は、被写体を撮像し、パターンマッチングを行って移動量Dmを出力し、次の検出のための複数の予測パターンを準備する。
このようにして検出された移動量Dmに基づいて搬送速度V6が算出される。CPU101は、移動量Dmと、既知の画素ピッチ情報と、検出指令信号S1の周期(H)とから搬送速度V6を算出する。画素ピッチ情報は、撮影画像9a,9bの方向M10の画素ピッチ(p)が検出領域においてどれだけの距離(d)に相当するかを示す情報である。搬送速度V6は次の式で表わされる。
V6[ mm/s] =Dm×d[ mm] ×( 1/H[ ms] )×1000
例えば、移動量Dmが2、距離(d)が0.1mm、周期(H)が2msである場合、搬送速度V6は100mm/sと算出される。
なお、他の検出動作として、単一の予測パターン91を記憶し、それと実測パターン9bcとを比較するようにしてもよい。その場合、用紙移動検出センサ55は、上述のように撮影画像9aを1画素ずらして作成した予測パターン91を記憶し、その後に短い周期(例えば80〜100μs)で撮像し、撮影ごとに得られた実測パターン9bcと予測パターン91とを比較する。両者が一致するまで当該周期ごとに比較を繰り返す。
両者が一致すると、用紙移動検出センサ55は、一致した実測パターン9bcを元に予測パターン91を作り直して記憶するとともに、それまでの比較の回数を移動量Dmとして記憶する。つまり、1画素分の距離を移動するのに何周期分の時間を要したかを検出する。こうして記憶される移動量Dmは、比較されるパターンどうしが一致するごとに更新される。そして、CPU101から検出指令信号S1が入力されると、用紙移動検出センサ55は、記憶している最新の移動量Dmを示すデータをCPU101へ出力する。
図6には用紙移動検出センサ55の配置位置の一例が示されている。用紙移動検出センサ55は、2次転写ローラ44と定着ローラ45との間における幅方向M2の中央に配置されている。幅方向M2は搬送方向M1と直交する方向である。
ここで、用紙6の搬送は、最大サイズの用紙6aおよび最小サイズの用紙6bを含むいずれのサイズの用紙6であっても、中央通紙の形式で行われる。中央通紙は、通紙センターを機械センターL1と一致させる形式である。
したがって、用紙移動検出センサ55を幅方向M2の中央に配置することによって、用紙6のサイズにかかわらず、用紙6の幅方向M2の中央部(画像の形成される領域)と用紙移動検出センサ55とが対向することになる。つまり、用紙6上のトナー像の濃度パターンを移動の検出に利用できる確率が大きくなる。
以下、紙種に応じた方法で用紙6の搬送速度V6を検出する動作を中心に画像形成装置1の機能をさらに説明する。
図7には用紙6の搬送速度V6の制御の概要を示すフローチャートが示されている。
画像形成装置1は、印刷ジョブに応じた枚数の用紙6を搬送するとき、用紙6の紙種D6に応じた方法で搬送速度V6を検出し、検出結果をローラの回転駆動の制御にフィードバックする。
紙種D6が速度検出に利用可能な表面凹凸を有するものである場合には(#11でYES)、表面凹凸の影の移動の検出結果に基づいて搬送速度V6を算出する(#12)。そして、算出した搬送速度V6と制御の目標である所定の速度との差に応じてローラの回転速度を変更する(#16)。印刷ジョブが複数枚の用紙6を使用するものであって次に制御するべき用紙6がある場合(#17でNO)、フローはステップ#11に戻る。
一方、紙種D6が速度検出に利用可能な表面凹凸を有するものではない場合(#11でNO)、用紙6に形成される画像(トナー像)が速度検出に利用可能かどうかをチェックする(#13)。利用可能である場合(#13でYES)、画像の移動の検出結果に基づいて搬送速度V6を算出し(#14)、その結果に応じてローラの回転速度を変更する(#16)。
ここで、仮に用紙移動検出センサ55が2次転写ローラ44の上流側に配置されているとすると、画像の移動を検出することはできないので、ステップ#13のチェック結果はNOとなる。用紙移動検出センサ55が2次転写ローラ44の下流側に配置されている場合に、ステップ#13のチェック結果がYESとなる。
ただし、用紙移動検出センサ55の1回の撮像の範囲が微小であるので、用紙6に形成される画像の内容によっては空白しか撮像されない場合が起こり得る。画像形成装置1は、ジョブ情報DJに基づいて画像と検出領域との位置関係を調べる。画像の内容によってはステップ#13のチェック結果がNOになることもある。
用紙6に形成される画像が速度検出に利用可能ではない場合(#13でNO)、用紙6の端縁の移動の検出結果に基づいて搬送速度V6を算出し(#15)、その結果に応じてローラの回転速度を変更する(#16)。
なお、印刷ジョブにおいて紙種の互いに異なる用紙6の使用が設定可能である場合、用紙6ごとにその紙種D6を判断し、速度検出に利用する特徴を切り替えてもよい。
図8には用紙6の搬送速度V6を制御する速度制御処理ルーチンの一例が、図9には用紙移動検出センサ55による移動の検出に係る検出領域550と用紙6に形成される画像8A,8Bとの位置関係の例が、それぞれ示されている。また、図10には移動を検出するためのトナー像10を形成した状態の用紙6が模式的に示されている。
図4をも参照して、図8の速度制御処理ルーチンは、印刷ジョブの実行に際してCPU101によって実行される。
CPU101の紙種取得部110は、ジョブ情報DJから紙種の情報を抽出し、設定された用紙6が普通紙か光沢紙かを示すデータ(紙種D6)を速度検出部130に送る(#110)。
速度検出部130は、紙種D6に基づいて用紙6が普通紙か光沢紙かを判別する(#111)。用紙6が普通紙である場合、用紙移動検出センサ55の動作のモードとして、主に表面凹凸の影の移動を検出するモードを設定する(#112)。すなわち、地肌に応じた影が濃淡パターンとして際立つように照明の光量を設定する。
その後、速度検出部130は、システム制御部200から印刷の開始が指示されるのを待つ(#119)。開始が指示されると(#119でYES)、速度検出部130およびローラ制御部150は、印刷ジョブの最終の用紙6の搬送が終わるまで、次のように搬送速度V6に関わる処理を行う(#120〜#123)。
速度検出部130は、検出指令信号S1によって用紙移動検出センサ55に検出を指示する(#120)。続いて、用紙移動検出センサ55から出力される移動量Dに基づいて用紙6の搬送速度V6を算出する。そして、ローラ制御部150は、速度検出部130によって算出された搬送速度V6が転写位置での転写ベルト25の速度と一致するように、2次転写ローラ44および定着ローラ45の回転速度を補正する(#122)。
用紙6を搬送するべき間(#123でNO)、フローはステップ#120へ戻り、ステップ#120〜#122の処理が所定の周期で繰り返される。すなわち、所定の周期で用紙移動検出センサ55に検出が指示され、検出された移動量Dmに基づいて搬送速度V6が算出され、必要に応じてローラの回転速度が変更される。
用紙6の地肌の濃淡パターンの移動の検出は、基本的には用紙6が用紙移動検出センサ55を通過する期間にわたって行うことができる。したがって、紙種D6が普通紙である場合、用紙移動検出センサ55を通過する期間中の搬送速度V6の変動に対して、逐次に応答するフィードバック制御が可能である。
ステップ#111において用紙6が光沢紙である場合、速度検出部130は、ジョブ情報DJに含まれる印刷するべき画像の画像データに基づいて、用紙6のうちの画像の形成によってトナーが付着する部位を示すトナー位置情報を取得する(#113)。この処理を実行する時点は実際に画像を形成する以前の時点であるので、トナー位置情報は、印刷するべき画像の各画素の描画が予定されている位置の情報である。
なお、トナー位置情報を取得するために画像を記述したページ記述言語を解析しなければならない場合、速度検出部130は、システム制御部200に対してその解析を依頼すればよい。
次に、速度検出部130は、既知の検出領域550の位置とトナー位置情報が示す位置とを比較することによって、トナーの付着する部位が検出領域550を通過するかどうかをチェックする(#114)。
図9を参照して、図9(A)において用紙6に形成される画像8Aは、横書きの文章である。検出領域550は、用紙6の中央を縦断するように延びる細長い領域である。図9(A)の場合、横書きの文章の各行が検出領域550と交差するので、各行の文字列の一部が検出領域550を通過する。すなわち、トナーの付着する部位が検出領域550を通過する。
これに対して、図9(B)において用紙6に形成される画像8Bは、縦書きの文章である。図9(B)の例の場合、縦書きの文章の行間が検出領域550を通過する。すなわち、用紙6の空白部位が検出領域550を通過し、トナーの付着する部位は検出領域550を通過しない。
図8に戻って、ステップ#114でYESである場合、速度検出部130は、用紙移動検出センサ55の動作のモードとして、トナー像の移動を検出するモードを設定する(#115)。すなわち、影の濃淡パターンと比べてトナー像の濃淡パターンは顕著であるので、例えば顕著な濃度パターンを選択的に認識するように照明の光量または受光量のデータ化の閾値を最適化する。また、イメージセンサ501がカラー撮像が可能であって、後述するように速度検出用のトナー像10を形成する場合、トナー像10と同じ色の光の受光量を選択的にデータ化するように用紙移動検出センサ55の動作を設定するようにしてもよい。
フローはステップ#115からステップ#119へ進む。その後は、普通紙の場合と同様に所定の周期で用紙6の移動が検出され、ローラの回転駆動が制御される。ただし、トナー像の濃淡パターンによる速度検出では、用紙6の空白部が用紙移動検出センサ55を通過するときに、移動量Dmが0となる。しかし、実際の移動量は制御目標の速度に対応する値またはそれに近い値であると考えられる。速度検出部130は、このような実際の値とかけ離れた移動量Dmが得られたときには搬送速度V6を算出せず、制御目標に対応した所定範囲内の移動量Dmが得られたときに搬送速度V6を算出する。
ステップ#114でNOである場合、速度検出部130は、速度検出用のトナー像10(図10参照)を形成してよいかどうかを示すユーザ設定の内容をチェックする(#116)。あらかじめユーザによってトナー像10の形成が許可されている場合(#116でYES)、速度検出部130は、速度検出用のトナー像10を形成する処理を行う(#117)。すなわち、システム制御部200に、元の画像8Bにトナー像10を付け加えた画像のデータを作成するように依頼する。
図10の例において、用紙6には画像8bと共に所定のトナー像10が形成されている。トナー像10は、例えば数個の画素からなるドットが分散したパターンとされ、用紙6の幅方向の中央部に全長にわたって形成されている。トナー像10は、目立たないようにするためイエローの像とされている。トナー像10を搬送方向M1に沿って離散的に形成してもよい。
フローはステップ#117からステップ#115へ進み、上述のように用紙移動検出センサ55の動作のモードとしてトナー像の移動を検出するモードが設定される。
ステップ#116でNOである場合、用紙6の地肌もトナー像も速度検出に利用することができない。この場合、速度検出部130は、用紙移動検出センサ55の動作のモードとして、用紙6の端縁の移動を検出するモードを設定する(#118)。すなわち、用紙6の下地と用紙6以外である背景とからなる濃淡パターンの移動を検出し易いように、例えばイメージセンサ501の受光量を2値化して予測パターン90〜92および実測パターン9bcを作成するように設定する。その後、フローは上述のステップ#119へ進む。
以上のように画像形成装置1では、用紙6が普通紙である場合だけでなく光沢紙である場合も、用紙移動検出センサ55を用いて搬送速度V6を検出し、搬送速度V6を従来よりもきめ細かに制御することができる。
特に定着ローラ45は加熱されることからその周速度が変化し易い。この定着ローラ45の回転速度をきめ細かに制御することにより、転写ベルト25の移動速度よりも定着ローラ45の周速度の方が大きいときに生じる転写時の色ずれを低減することができる。
図11には移動を検出するためのトナー像10を形成する位置の変形例が示されている。印刷ジョブで使用される用紙6cが印刷後に端部を切り離すカット紙である場合、切り離されるカット領域604にトナー像10を形成することができる。図11の用紙6cでは、ページ領域603(画像の形成される領域とその周囲の余白)の周囲がカット領域604であり、カット領域604のうちの右端部にトナー像10が形成されている。そして、用紙移動検出センサ55は、トナー像10と対向することができる位置に配置されている。
図12には画像形成装置1の構成の変形例が示されている。図12の画像形成装置1bは、用紙6と用紙移動検出センサ55とを幅方向M2に相対移動させる移動機構58を備えている。そして、エンジン部100のCPU101bは、図4に示したCPU101と同様に紙種取得部110、速度検出部130、およびローラ制御部150を有し、さらに移動機構58を制御する移動制御部120を有している。
図13には図12の画像形成装置1bにおいて実行される速度制御処理ルーチンの例が示されている。図13において、図8のフローチャートと同様の処理には図8と同一のステップ番号が付されている。ここでは、図8と異なる処理について説明する。
用紙6が光沢紙であって、トナーの付着する部位が検出領域550を通過しない場合(#114でNO)、速度検出部130は、移動機構58による相対移動が有効かどうかをチェックする。すなわち、用紙6と用紙移動検出センサ55とを相対移動させることによって、トナーの付着する部位が検出領域550を通過するかどうかをチェックする(#116b)。
ステップ#116bでYESの場合、移動制御部120は、検出領域550を通過するトナー付着部位がより多くなるように、移動機構58を駆動して用紙6および用紙移動検出センサ55の片方または両方を幅方向M2に移動させる(#117b)。この場合、フローはステップ#117bからステップ#115へ進む。
ステップ#116bでNOの場合には、速度制御部130が、用紙移動検出センサ55の動作のモードとして用紙6の端縁の移動を検出するモードを設定する(#118)。その後、フローはステップ#119へ進む。
図14には複数の用紙移動検出センサ55,55bの配置の例が示されている。
2個の用紙移動検出センサ55,55bは、幅方向M2の互いに異なる位置に配置される。一方の用紙移動検出センサ55は用紙6の幅方向M2の中央部と対向する位置に、他の用紙移動検出センサ55bは用紙6の幅方向M2の端部(余白部)と対向する位置に、それぞれ配置される。
これら用紙移動検出センサ55,55bは、紙種D6に応じて使い分けられる。例えば、用紙移動検出センサ55は、用紙6が光沢紙であってトナー像の移動を検出する場合に用いられる。用紙移動検出センサ55bは、用紙6が普通紙であって地肌の影の移動を検出する場合に用いられる。用紙6の端縁の移動を検出する場合、用紙移動検出センサ55,55bのいずれを用いてもよい。
なお、紙種にかかわらず用紙移動検出センサ55,55bの両方を用い、例えばそれらの有効な出力の平均を移動の検出結果としてもよい。3以上の用紙移動検出センサ55を幅方向M2い並べて配置してもよい。
以上の実施形態によれば、従来では速度検出が難しかった紙種でも速度検出が可能となり、紙種によらずに搬送速度をきめ細かに制御することができるので、搬送速度の変動に起因する転写時の色ずれまたは他の画質低下を低減することができる。
上述の実施形態において、用紙移動検出センサ55,55bにおける照明光の照射角度または色、イメージセンサ501に対する結像のピント、検出の周期などの検出条件を紙種に応じて切り替えてもよい。用紙移動検出センサ55,55bの1画素に対応する用紙6上の距離dを印刷の解像度(例えば800dpi)を基準に定めることができる。その他、画像形成装置1,1bの全体的または部分的な構成、用紙移動検出センサ55,55bの構成および動作、制御のフローなどは本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
上述の実施形態では画像形成装置1,1bをプリンタとして説明したが、画像形成装置1,1bは装置内で用紙を搬送するものであればよく、複写機、ファクシミリ機、または複合機であってもよい。画像形成の方式は電子写真式に限らず、インクジェット方式またはそれ以外の方式でもよい。