JP2017167484A - Lidar用選択波長吸収樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】運転支援システムにおけるLidarの精度を高めることのできる選択波長吸収樹脂組成物およびその製造方法を提供する。【解決手段】透明樹脂と、光吸収剤とを有するLidar用選択波長吸収樹脂組成物であって、上記樹脂組成物の厚み1mmに成形した硬化体が、波長380nm以上700nm以下の範囲の平均光透過率が40%以下であり、Lidarで使用するレーザ光の波長における光透過率が70%以上であるようにした。【選択図】図1

Description

本発明は、Lidarの精度を高めるために用いる、特定の波長の光を選択的に吸収する樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
光を用いたリモートセンシング技術の一つに、対象物に対してパルス状にレーザ照射を行い、対象物で反射し、散乱したレーザ光を測定することにより、対象物までの距離や方位を検出するLidar( Laser Imaging Detection and Ranging )がある。このようなLidarは、例えば、車両において、障害物を検知して自動でブレーキをかけたり、周辺車両の速度や車間距離を測定して自車の速度や車間距離を制御したりする、運転支援システムにおいての利用が進んでいる。このような運転支援システムを正常に動作するには、Lidarの検出精度を高めることが必要であるため、例えば、特許文献1では、対象物からの反射光を受光するフォトダイオードの前に、レーザ光の波長を含むその波長近傍の所定の波長のみを通過させ、それ以外の波長の光を抑制または遮断する波長選択フィルタを設け、不要な光を除去している。
特開2014−194380号公報
しかしながら、さらに運転支援システムが発展することが予想されることから、Lidarの精度をより一層高める必要があり、より優れた性能を有する波長選択フィルタの開発が強く求められている。
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、とりわけ運転支援システムにおけるLidarの精度を高めることのできる選択波長吸収樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するため、本発明は、透明樹脂と、光吸収剤とを有するLidar用選択波長吸収樹脂組成物であって、上記樹脂組成物の厚み1mmに成形した硬化体が、波長380nm以上700nm以下の範囲の平均光透過率が40%以下であり、Lidarで使用するレーザ光の波長における光透過率が70%以上であるLidar用選択波長吸収樹脂組成物を第1の要旨とする。
なかでも、上記第1の要旨のLidar用選択波長吸収樹脂組成物のうち、Lidarで使用するレーザ光の波長が、850nm以上950nm以下の範囲および1500nm以上1600nm以下の範囲の少なくとも一方であるものを第2の要旨とし、上記第1の要旨および第2の要旨のLidar用選択波長吸収樹脂組成物のうち、透明樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネートおよびメラミン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種を主成分とするものを第3の要旨とする。そして、上記第1〜3の要旨のLidar用選択波長吸収樹脂組成物のうち、光吸収剤の含有量が、樹脂組成物全体の0.001質量%以上10質量%以下に設定されているものを第4の要旨とし、上記第1〜4の要旨のLidar用選択波長吸収樹脂組成物のうち、光吸収剤として、染料および顔料の少なくとも一方を用いるものを第5の要旨とし、上記第1〜4の要旨のLidar用選択波長吸収樹脂組成物のうち、光吸収剤として、複数の染料を組み合わせて用いるものを第6の要旨とする。さらに、透明樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、光吸収剤とを有するLidar用選択波長吸収樹脂組成物を製造する方法であって、光吸収剤を溶媒に配合して配合物を作製する工程と、上記配合物に透明樹脂、硬化剤、硬化促進剤を含む残りの成分を配合する工程とを有するLidar用選択波長吸収樹脂組成物の製造方法を第7の要旨とする。
本発明者らは、Lidarの検出精度を高めるという課題に着目し、レーザ光の反射光を受光する素子の前に、Lidarで使用するレーザ光の波長およびその波長近傍の波長の光のみを通過させ、それ以外の波長の光を抑制または遮断する波長選択フィルタの性能を高めることについて鋭意研究を行った。その結果、Lidar用の波長選択フィルタを、透明樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、光吸収剤とを有する選択波長吸収樹脂組成物からなるようにし、上記樹脂組成物の厚み1mmに成形した硬化体が、波長380nm以上700nm以下の範囲の平均光透過率が40%以下であり、Lidarで使用するレーザ光の波長における光透過率が70%以上とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達するに至った。
本発明のLidar用選択波長吸収樹脂組成物は、透明樹脂と、光吸収剤とを有しており、上記樹脂組成物の厚み1mmに成形した硬化体が、波長380nm以上700nm以下の範囲の平均光透過率が40%以下であり、Lidarで使用するレーザ光の波長における光透過率が70%以上である。よって、この硬化体を受光素子の前に配置すると、可視光を抑制もしくは遮断するとともに、Lidarで使用するレーザ光だけを選択的に受光素子に届くようにすることができるため、屋外で使用する際の太陽光や車両のヘッドライト等の外因による測定誤差を少なくすることができる。
なかでも、Lidarで使用するレーザ光の波長が、850nm以上950nm以下の範囲および1500nm以上1600nm以下の範囲の少なくとも一方であるものは、より確実に不必要な波長の光を抑制もしくは遮断することができ、よりLidarの測定誤差を少なくすることができる。
そして、透明樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネートおよびメラミン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種を主成分とするものは、とりわけ耐熱性、耐久性に優れたものとなる。
また、光吸収剤の含有量が、樹脂組成物全体の0.001質量%以上10質量%以下に設定されているものは、効率よく可視光を抑制または遮断することができる。
光吸収剤として、染料および顔料の少なくとも一方を用いるものは、可視光領域の光を抑制または遮断することができ、かつその領域より長波長領域においてより良好な光透過性を備えることができる。
光吸収剤として、複数の染料を組み合わせて用いるものは、より確実に、幅広い波長の光を抑制または遮断することができ、かつその領域より長波長領域においてより一層良好な光透過性を備えることができる。
また、透明樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、光吸収剤とを有するLidar用選択波長吸収樹脂組成物を製造する方法であって、光吸収剤を溶媒に配合して配合物を作製する工程と、上記配合物に透明樹脂、硬化剤、硬化促進剤を含む残りの成分を配合する工程とを有するLidar用選択波長吸収樹脂組成物の製造方法は、高濃度に光吸収剤をLidar用選択波長吸収樹脂組成物に配合することが可能となり、かつ光吸収剤の凝集物の生成を抑制することができるため、均一性に優れるLidar用選択波長吸収樹脂組成物を得ることができる。
実施例1〜3および比較例1の樹脂硬化体の透過スペクトル測定による光透過率−波長の関係を示す曲線図である。
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
本発明のLidar用選択波長吸収樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」という)は、透明樹脂と光吸収剤とを有するものであって、必要に応じ、硬化剤、硬化促進剤を用いるものである。この樹脂組成物は、通常、液状、粉末もしくはこれを打錠した形態で用いられる。そして、樹脂組成物の厚み1mmに成形した硬化体が、波長380nm以上700nm以下の範囲の平均光透過率が40%以下であり、Lidarで使用するレーザ光の波長における光透過率が70%以上である。なお、各波長の光透過率は、例えば、分光光度計を用いて測定することができる。そして、特定の範囲の平均光透過率は、その特定範囲を1nmごとに分光光度計で測定した各波長の透過率を平均することによって求めることができる。
本発明において、「主成分」とは、その材料の特性に影響を与える成分の意味であり、その成分の含有量は、通常、材料全体の50質量%以上である。
〔透明樹脂〕
透明樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、メラミン樹脂等を主成分とするものを用いることができる。なかでも、熱による変色が少なく、光に対する安定性が高い点から、エポキシ樹脂を主成分とするものが好ましい。
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、イソシアヌル環骨格を有するエポキシ樹脂、ヒダントインエポキシ樹脂等の含窒素環エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等の脂肪族系炭化水素を骨格に持つエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等の低吸水率硬化体タイプの主流であるエポキシ樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらエポキシ樹脂の中でも、透明性および耐変色性に優れるという点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、イソシアヌル環骨格を有するエポキシ樹脂を単独でもしくは2種以上併用して用いることが好ましい。
上記エポキシ樹脂は、常温で固形でも液状でもよいが、一般に、使用するエポキシ樹脂の平均エポキシ当量が、90〜1000のものが好ましく、また、固形の場合には、軟化点が、160℃以下のものが好ましい。エポキシ当量が小さ過ぎると、エポキシ樹脂組成物の硬化体が脆くなる傾向が見られ、エポキシ当量が大き過ぎると、その硬化体のガラス転移温度(Tg)が低くなり、光半導体受光素子用封止材料に要求される耐熱安定性を満足させることが困難となる傾向がみられるからである。
〔硬化剤〕
透明樹脂としてエポキシ樹脂を主成分とするものを用いる場合に、用いられる硬化剤としては、例えば、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤等があげられる。透明樹脂として、エポキシ樹脂以外のものを主成分とするものを用いる場合には、これらの硬化剤を必ずしも用いなくてもよい。
上記酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これら酸無水物系硬化剤の中でも、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を単独でもしくは2種以上併せて用いることが好ましい。また、酸無水物系硬化剤としては、その分子量が、140〜200程度のものが好ましく、また、無色ないし淡黄色の酸無水物系硬化剤を用いることが好ましい。
また、上記フェノール系硬化剤としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂等のフェノール樹脂、アニリン変性レゾール樹脂、メラミン変性レゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェニレン骨格あるいはジフェニレン骨格等を有するフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のノボラック型フェノールホルムアルデヒド樹脂のような特殊なフェノール樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)等のポリヒドロキシスチレン樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
透明樹脂としてエポキシ樹脂を主成分とするものを用いる場合、エポキシ樹脂と硬化剤との配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、硬化剤におけるエポキシ基と反応可能な活性基(酸無水物基または水酸基)が0.5〜1.5当量に設定することが好ましく、より好ましくは0.7〜1.2当量に設定することである。すなわち、活性基が少な過ぎると、エポキシ樹脂組成物の硬化速度が遅くなるとともに、その硬化体のガラス転移温度(Tg)が低くなる傾向がみられ、逆に活性基が多過ぎると、耐湿性が低下する傾向がみられるからである。
また、上記硬化剤としては、その目的および用途によっては、上記酸無水物系硬化剤およびフェノール系硬化剤以外に、他の硬化剤を用いることができる。このような硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、上記酸無水物系硬化剤をアルコールで部分エステル化したもの、または、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸の硬化剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いてもよく、さらには、上記酸無水物系硬化剤およびフェノール系硬化剤と併せて用いてもよい。例えば、上記カルボン酸の硬化剤を併用した場合には、硬化速度を速めることができ、生産性を向上させることができる。なお、これらの硬化剤を用いる場合においても、その配合割合は、酸無水物系硬化剤およびフェノール系硬化剤を用いた場合の配合割合(当量比)に準じる。
〔硬化促進剤〕
透明樹脂としてエポキシ樹脂を主成分とするものを用いる場合、上記硬化剤とともに用いられる硬化促進剤としては、例えば、以下のものがあげられる。ただし、透明樹脂として、エポキシ樹脂以外のものを主成分とするものを用いる場合には、これらの硬化促進剤を必ずしも用いなくてもよい。硬化促進剤としては、例えば、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−〔2′−メチルイミダゾリル−(1′)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2′−ウンデシルイミダゾリル−(1′)〕−エチル−s−トリアジン、2−ウンデシルイミダゾール、3−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾリン、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール等のイミダゾール類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、N−メチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、N,N−ジメチルアミノシクロヘキサン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアミノベンゼン、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン−5等の3級アミン類、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリブチルホスフィン等のリン系化合物等があげられる。さらに、上記イミダゾール類、3級アミン類、リン系化合物のオニウム塩、金属塩、およびこれらの誘導体等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これら硬化促進剤の中でも、イミダゾール類を用いることが好ましい。
透明樹脂としてエポキシ樹脂を主成分とするものを用いる場合、上記硬化促進剤の配合量は、上記エポキシ樹脂に対して0.01〜8質量%に設定することが好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%である。すなわち、硬化促進剤の配合量が少な過ぎると、充分な硬化促進効果が得られ難く、また配合量が多過ぎると、得られる硬化体が変色する等の問題が顕在化しやすくなるからである。
〔光吸収剤〕
上記透明樹脂とともに用いられる光吸収剤としては、例えば、染料(有機、無機)、顔料(有機、無機)等があげられる。なかでも、Lidarの精度をより高めることができる点から、通常、粒子の表面で光を乱反射する顔料より、このようなことの少ない染料を用いることが好ましい。これらの光吸収剤は単独で、または、二つ以上を組合せて用いることができる。
上記染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリノン染料などが挙げられる。なかでも、樹脂組成物への均一な分散を容易に図ることができることから、油溶性の染料が好ましく、とりわけ、アントラキノン系、アゾアントラキノン系、ジスアゾ系のものが好ましく用いられる。また、染料は顔料に比べとても小さな粒子からなるため、樹脂組成物に均一的に混合することができ、また、硬化体の曇り度(ヘイズ値)を小さくできる点からもLidar用として好ましく用いられる。
上記顔料としては、例えば、アゾ系(溶性アゾ系,不溶性アゾ系)、縮合系、多環系(フタロシアニン系)、スレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリン系などの有機顔料や、、酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青(ウルトラマリン)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、チタンブラック、合成鉄黒等の無機顔料等があげられる。
なかでも、本発明の樹脂組成物には、光吸収剤として、複数の染料を組み合わせて用いることが好ましく、とりわけ、アントラキノン系染料とアゾアントラキノン系染料とを組み合わせて用いることが、幅広い波長の光を抑制または遮断することができ、かつその領域より長波長領域において良好な光透過性を備えることができる点から好ましい。アントラキノン系染料とアゾアントラキノン系染料との併用は、アントラキノン系染料1質量部に対し、アゾアントラキノン系染料0.0001〜10質量部の割合で用いることが好ましく、より好ましくは、アントラキノン系染料1質量部に対し、アゾアントラキノン系染料0.00025〜7質量部の割合で用いることである。
なお、本発明の樹脂組成物では、上記光吸収剤の配合に際して、予め有機溶剤に溶解した状態で配合することが好ましい。
上記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、ギ酸、酢酸、酪酸等の酸系溶剤、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル等のギ酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等の酢酸エステル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル等の酪酸エステル等のエステル系溶剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。特に、工業的に、安価に入手可能であり、樹脂組成物の製造工程中に揮発により除去可能であるという点から、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチルを単独でもしくは2種以上併用したものが好ましく用いられる。なお、上記有機溶剤は、最終的には除去されることが好ましく、加熱混合時に大部分は揮散されるが、減圧処理や粉砕したものを60℃以下で数時間放置する等の処理を行なうことが好ましい。
上記光吸収剤を有機溶剤に配合する際の、有機溶剤での光吸収剤の濃度は、樹脂組成物に対する光吸収剤の配合量とも関係するが、例えば、0.1〜20質量%の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは1〜20質量%である。すなわち、濃度が低過ぎると、必要量の光吸収剤を樹脂組成物に配合するために多量の有機溶剤を必要とするため、後工程において有機溶剤を完全に除去し難くなる傾向がみられ、逆に濃度が高過ぎると、光吸収剤の濃度が高くなり過ぎて飽和状態になり析出するという問題が生じる傾向がみられるからである。
本発明の樹脂組成物には、透明樹脂、光吸収剤、および光吸収剤を有機溶剤に配合する場合には、有機溶剤、必要な場合には、硬化剤、硬化促進剤が用いられるが、可視光を遮光し、かつそれ以上の長波長領域では優れた光透過性を有する樹脂組成物としての特性を補完する目的で、酸化防止剤、劣化防止剤、変性剤、カップリング剤、脱泡剤、レベリング剤、離型剤、上記光吸収剤以外の染料,顔料等の他の添加剤を適宜配合してもよい。
また、上記酸化防止剤、劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物やヒンダートアミン系化合物等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。さらに、上記変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類、アルコール類等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、上記カップリング剤としては、例えば、チタネート系カップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤等のシラン系カップリング等があげられる。また、上記脱泡剤としては、例えば、シリコーン系オイル等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
本発明の樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することにより、液状、粉末状もしくはその粉末を打錠したタブレット状として得ることができる。
液状の樹脂組成物を得るには、例えば、前記の各成分である、透明樹脂等に対して、直接、光吸収剤を所定量添加する方法を採用することができる。または、液状の樹脂組成物の製造方法として、光吸収剤を高濃度に配合することが可能となり、かつ光吸収剤の凝集物の生成を抑制するという点から、予め光吸収剤の一部もしくは全部を樹脂組成物全体の所定の割合となるよう有機溶剤に配合し、この有機溶剤に配合された光吸収剤を、残りの配合成分(透明樹脂等)とともに配合する方法を採用することができる。もしくは、液状の樹脂組成物の製造方法として、光吸収剤を析出させることなく添加可能となるという点から、予め光吸収剤を樹脂組成物全体の所定の割合となるよう透明樹脂等に配合し、この配合物に残りの配合成分を配合する方法を採用することができる。
一方、粉末状、もしくはその粉末を打錠したタブレット状の樹脂組成物を得るには、例えば、前記の各配合成分を所定の割合で適宜配合し、予備混合した後、混練機を用いて混練して溶融混合し、ついで、これを室温まで冷却した後、公知の手段によって粉砕し、必要に応じて打錠する方法を採用することができる。
なお、本発明の樹脂組成物が、エポキシ樹脂を主成分とする液状である場合には、エポキシ樹脂と硬化剤とを別々に保管しておき、使用する直前に混合する、いわゆる2液タイプとして用いることができる。また、本発明の樹脂組成物がエポキシ樹脂を主成分とする粉末状もしくはタブレット状である場合には、上記各配合成分を溶融混合する際に、Bステージ状(半硬化状)としておき、これを使用時に加熱溶融して用いることができる。本発明の樹脂組成物は、熱硬化により硬化体とするもののほかにも、光硬化により硬化体とするようにしてもよい。しかし、加熱による変色が少なく、光に対する安定性が高い点から、熱硬化性樹脂組成物とすることが好ましい。
このようにして得られた本発明の樹脂組成物は、Lidarの精度を高めるため、Lidarの受光素子の前等に配置される波長選択フィルタとして用いることができる。そして、本発明の樹脂組成物を用いて、Lidarの波長選択フィルタを製造する方法としては、特に限定するものではなく、圧縮成形、カレンダー成形、射出成形、押出成形、トランスファー成形、インフレーション成形等の方法により行うことができる。
本発明の樹脂組成物を用いて、シート状あるいはレンズ状等の硬化体を製造することにより、目的とする可視光の透過を抑制または遮光し、かつそれ以上の波長領域では優れた光透過性を有する機能を、硬化体に付与することができる。
本発明の樹脂組成物の硬化体は、先に述べたように、可視光領域の幅広い波長の光の透過を抑制または遮断できるだけでなく、Lidarで使用するレーザ光の波長における光を充分に透過させることができる。具体的には、波長380nm以上700nm以下の範囲の平均光透過率が40%以下であり、30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。なかでも、波長380nm以上700nm以下のすべての範囲で光透光率が40%を超えることがないことがより好ましい。そして、波長850nm以上950nm以下の範囲の平均光透過率または波長1500nm以上1600nm以下の範囲の平均光透過率が70%以上であり、80%以上あることが好ましく、90%以上あることがより好ましい。なかでも、波長850nm以上950nm以下のすべての範囲または波長1500nm以上1600nm以下のすべての範囲において、光透過率が70%を超えることがより好ましい。なお、光透過率は、樹脂組成物硬化体の厚みが1mmの場合における値をいい、上記硬化体の厚みの変動に伴い上記光透過率の範囲は変動するものである。
以下、実施例および比較例をあげて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
下記に示す各成分を準備した。
〔透明樹脂a〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量650)
〔透明樹脂b〕
多官能エポキシ樹脂 TGIC(triglycidylisocyanurate)
〔硬化剤a〕
フタル酸系酸無水物(テトラヒドロ無水フタル酸)
〔硬化促進剤〕
2−エチル−4−メチルイミダゾール
〔有機溶剤〕
アセトン
〔光吸収剤a〕
Optogen NIR-820s(住化カラー社製)
〔光吸収剤b〕
アゾアントラキノン系混合物(Kayaset Black AN)(日本化薬社製)
〔光吸収剤c〕
solvent black3(黒色ジスアゾ染料)
〔実施例1〜3、比較例1〕
後記の表1に示す各成分を同表に示す割合にて配合し、溶融混合することにより目的とする樹脂組成物を作製した。すなわち、実施例1〜3および比較例1については、予め光吸収剤を有機溶剤(アセトン)に配合した後、この配合物を残りの他の配合成分と混合することにより樹脂組成物を作製した。なお、有機溶剤としてのアセトンは、混合時に略全量が揮散除去された。
このようにして得られた樹脂組成物を用い、専用金型(成形部分の厚み0.2mm)にて150℃×4分間のトランスファー成形法により成形し、150℃で3時間の後加熱硬化を行なうことにより硬化体(厚み1mm)を作製した。この硬化体を、分光光度計(日本分光社製、V−670)を用いて透過スペクトルを測定した。その結果〔縦軸:光透過率transmittance(%)−横軸:波長wavelength(nm)の関係を示す曲線図〕を、図1に「Transmittance Curve(1mmt)」として示す。
上記測定結果において、図1から明らかなように、実施例1〜3の硬化体は、いずれも波長380nm〜700nmの範囲での平均光透過率が0%であり、この範囲にある波長の光を確実に吸収していることがわかる。そして、実施例1および2の硬化体は、いずれも波長900nmでの光透過率が80%以上あるため、Lidarで使用するレーザ光の波長が、850nm〜950nmの範囲にある場合に好適に用いることができる。一方、実施例1〜3の硬化体は、いずれも波長1550nmでの光透過性が80%以上あるため、Lidarで使用するレーザ光の波長が、1500nm〜1600nmの範囲にある場合に好適に用いることができる。これに対し、比較例1の硬化体は、波長380nm〜700nmの範囲での平均光透過率が85.6%もあり、Lidar用途には適していないことがわかる。なお、波長380nm〜700nmの範囲での平均光透過率は、上記範囲内の波長の光を1nmごとに分光光度計で透過率を測定し、それらの透過率を平均することによって求めることができる。
Figure 2017167484
つぎに、上記実施例の樹脂組成物を用い、専用金型によりトランスファー成形(条件:150℃×4分間)することにより、Lidar用波長選択フィルタ(幅100mm×長さ200mm×厚み1mm)を作製した。ついで、このLidar用波長選択フィルタを150℃×3時間の後加熱硬化することにより完全硬化させた。得られたLidar用波長選択フィルタは、何ら問題のない信頼性の高いものであった。
本発明の樹脂組成物は、Lidar用波長選択フィルタの材料として用いられるものであって、可視光線を遮光するとともに、Lidarで使用するレーザ光の波長における光透過率が70%以上であるという特性を備えた硬化体を得ることができる。

Claims (7)

  1. 透明樹脂と、光吸収剤とを有するLidar用選択波長吸収樹脂組成物であって、上記樹脂組成物の厚み1mmに成形した硬化体が、波長380nm以上700nm以下の範囲の平均光透過率が40%以下であり、Lidarで使用するレーザ光の波長における光透過率が70%以上であることを特徴とするLidar用選択波長吸収樹脂組成物。
  2. Lidarで使用するレーザ光の波長が、850nm以上950nm以下の範囲および1500nm以上1600nm以下の範囲の少なくとも一方である請求項1記載のLidar用選択波長吸収樹脂組成物。
  3. 透明樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネートおよびメラミン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種を主成分とするものである請求項1または2記載のLidar用選択波長吸収樹脂組成物。
  4. 光吸収剤の含有量が、樹脂組成物全体の0.001質量%以上10質量%以下に設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のLidar用選択波長吸収樹脂組成物。
  5. 光吸収剤として、染料および顔料の少なくとも一方を用いる請求項1〜4のいずれか一項に記載のLidar用選択波長吸収樹脂組成物。
  6. 光吸収剤として、複数の染料を組み合わせて用いる請求項1〜4のいずれか一項に記載のLidar用選択波長吸収樹脂組成物。
  7. 透明樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、光吸収剤とを有するLidar用選択波長吸収樹脂組成物を製造する方法であって、光吸収剤を溶媒に配合して配合物を作製する工程と、上記配合物に透明樹脂、硬化剤、硬化促進剤を含む残りの成分を配合する工程とを有することを特徴とするLidar用選択波長吸収樹脂組成物の製造方法。
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