(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中互いに同一又は同等の部分には同一符号を付す。
本実施形態に係る印刷装置1は、図1及び図2に示すように構成される。印刷装置1は、ユーザが手で持って紙又は箱等の印刷媒体上を滑らすように移動させることで、印刷媒体に印刷対象の画像を印刷することが可能な印刷装置である。このような方式の印刷装置は、手動走査型の印刷装置、ハンディプリンタ又はダイレクトプリンタ等と呼ばれている。
ここで、印刷媒体とは、例えば印刷用紙、ラベル又は段ボール等である。印刷媒体は、記録媒体又は印刷対象物等ともいう。印刷媒体の材質は、紙であることに限らず、例えばフィルム状又は繊維状等、インクを付着させることができるものであればどのようなものであってもよい。印刷媒体の形状は、シート状又はテープ状等のような平面的な形状であることに限らず、箱状又はボトル状等のような立体的な形状であってもよい。言い換えると、据置型の印刷装置のように印刷媒体を搬送する必要がないので、手動走査型の印刷装置は、どのような形状の印刷媒体にも印刷することができる。印刷対象の画像は、例えば文字列、図形、記号、模様又は絵等である。印刷対象の画像は、印刷画像又は印刷パターン等ともいう。
以下、印刷装置1の動きを説明するため、図1及び図2に示す座標系を設定する。図1及び図2に示すように、この座標系のx軸は印刷装置1の幅方向に、y軸は印刷装置1の奥行き方向に、z軸は印刷装置1の高さ方向に、それぞれ平行に設定されている。なお、図中、Gは重力加速度の方向ベクトルである鉛直方向を表す。
図1に示すように、印刷装置1は、ユーザに把持されるグリップ部100と、印刷開始の指示を受け付ける印刷開始ボタン101と、印刷装置1が印刷媒体に接地したことを検出する接地検出部102と、印刷装置1の移動を検出する移動検出部103と、印刷を実行する印刷部104と、を備える。グリップ部100を含む印刷装置1の筐体は、ユーザが手で持ちやすいように四角柱状に形成されている。
印刷開始ボタン101は、印刷装置1の側面に設けられた押圧ボタンであって、印刷開始の指示をユーザから受け付ける。ユーザは、印刷開始ボタンを押圧してから所望の印刷媒体上で印刷装置1を走査させると、印刷媒体への印刷が実行される。逆に、印刷開始ボタンを押圧せずに印刷媒体上で印刷装置1を走査させても、印刷は実行されない。
接地検出部102は、印刷装置1の下部に設けられており、印刷装置1が印刷媒体上に接地されたことを検出する光学センサを備える。具体的に説明すると、接地検出部102は、レーザ光源又はLED(Light Emitting Diode)から印刷媒体の表面へ光を照射し、印刷媒体の表面によって反射された光を光学センサによって読み取り、読み取った光の変化に基づいて印刷装置1が印刷媒体上に接地されたことを検出する。ユーザは、印刷開始ボタン101を押圧してから所望の印刷媒体に印刷装置1を接地させた上で走査させると、印刷媒体への印刷が実行される。逆に、印刷開始ボタン101を押圧していても、接地検出部102によって印刷媒体への接地が検出されない限り、印刷媒体上で印刷装置1を走査させても、印刷は実行されない。
移動検出部103は、印刷装置1の下部に設けられており、印刷装置1が印刷媒体上を移動した際の印刷装置1の移動を検出する光学センサを備える。具体的に説明すると、移動検出部103は、LEDから発せられ、印刷媒体によって反射された光を光学センサによって読み取り、読み取った光の変化に基づいて印刷装置1の移動量と移動の向きとを検出する。なお、本実施形態において、接地検出部102と移動検出部103とは異なる構成であるものとして説明したが、これは一例に過ぎず、移動検出部103が接地検出部102として機能することとしてもよい。すなわち、移動検出部103は、印刷媒体によって反射された光を光学センサで読み取り、読み取った光の変化に基づいて印刷装置1の移動量と移動の向きと共に、印刷装置1の印刷媒体への接地をも検出すればよい。
印刷部104は、印刷装置1の下端部に設けられており、印刷媒体上における装置本体の移動に合わせて、印刷媒体に印刷対象の画像を印刷する印刷手段として機能する。印刷部104は、インクを微滴化し、印刷媒体に対して直接に吹き付けるインクジェット方式で、印刷対象の画像を印刷媒体に印刷する。
図2に示すように、印刷部104は、インクを充填したインクタンク104aと、インクタンク104aに充填されたインクを吐出する印刷ヘッド(インクジェットヘッド)104bと、を備える。インクタンク104aと印刷ヘッド104bとを合わせて、インクカートリッジと呼ぶ。インクカートリッジは、インクが無くなった場合又は異なる色で印刷する場合等、必要に応じてユーザによって交換される。
印刷ヘッド104bは、インクタンク104aに充填されたインクを吐出して、印刷媒体に印刷を実行する印刷機構である。印刷ヘッド104bには、複数のノズルが主走査方向及び副走査方向に沿って配列されている。複数のノズル内のインクは、ヒータによって加熱されることで気泡を生じ、生じた気泡によって、複数のノズルのそれぞれから印刷媒体へ向けて(鉛直下向きに)インクが吐出される。このような原理によって、印刷ヘッド104bは、印刷媒体に印刷対象の画像を印刷する。
図3に、印刷装置1で印刷媒体Pに文字列「ABCDEFG」を印刷する場合の例を示す。図3に示すように、印刷の際、ユーザは、グリップ部100を把持して、印刷装置1の底面を印刷媒体Pに接地させながら、図1において矢印で示す主走査方向に向けて走査させる。すると、移動検出部103によって印刷装置1の移動が検出され、検出された移動に合わせて印刷部104の印刷ヘッド104bからインクが吐出される。その結果、印刷対象の画像が印刷媒体Pに印刷される。
図4に、印刷装置1の電気的構成を示す。図4に示すように、印刷装置1は、CPU(Central Processing Unit:制御部)105と、ROM(Read Only Memory)106と、RAM(Random Access Memory)107と、ユーザインタフェース108と、通信部109と、印刷制御部104cと、電源部110と、加速度センサ111と、角速度センサ112と、計時部113と、を備える。
CPU(制御部)105は、例えばマイクロプロセッサ等であって、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。CPU105は、中央処理装置、中央演算装置又はプロセッサ等とも呼ばれる。CPU105は、命令やデータを転送するための伝送経路であるシステムバス114を介して印刷装置1の各部と接続され、印刷装置1全体を統括制御する。
ROM106は、CPU105が各種処理を実行するために使用する各種プログラム及びデータを格納している。CPU105は、ROM106に格納されているプログラム及びデータに従って動作する。ROM106は、例えば、後述するユーザインタフェース108の表示部に文字、記号及び絵文字等を表示するための表示用データを格納している。
また、ROM106は、図5に示す第1の印刷テーブルTBL1を格納している。第1の印刷テーブルTBL1は、複数の印刷データを、互いに順序付けて格納している。具体的に説明すると、第1の印刷テーブルTBL1においては、図5に示すように、複数の印刷データが、各印刷データの順序を示す順序識別子に対応付けられて格納されている。印刷データは、印刷対象の画像を表す画像データと共に、印刷サイズ等の情報を含むデータである。第1の印刷テーブルTBL1は、例えばPC(Personal Computer)又はスマートフォン等の外部機器(以下、「PC等」という。)において、ユーザからの操作指示を受け付けることによって、生成される。印刷装置1は、第1の印刷テーブルTBL1を、通信部109を介してPC等から予め取得し、ROM106に格納している。
また、ROM106は、後述する第1の変更条件テーブルTBLaを格納している。
図4に戻って、RAM107は、CPU105のワークエリアとして機能する。RAM107は、CPU105が各種処理を実行することにより生成又は取得するデータを記憶する。CPU105は、RAM107にプログラム又はデータを一時的に書き込み、書き込んだプログラム又はデータを適宜参照しながら、各種処理を実行する。また、印刷装置1は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを備える。このような不揮発性メモリ、ROM106及びRAM107を併せて記憶部又はメモリ等ともいう。
ユーザインタフェース108は、例えば入力キー、ボタン、スイッチ、タッチパッド又はタッチパネル等のような入力受付部と、LCD(Liquid Crystal Display)パネル等の表示部と、を備える。ユーザインタフェース108は、入力受付部を介してユーザから各種の操作指示を受け付け、受け付けた操作指示をCPU105へ供給する。また、ユーザインタフェース108は、各種の情報をCPU105から取得して、取得した情報を示す画像を表示部に表示する。
通信部109は、印刷装置1がPC等と通信するためのインタフェースである。通信部109は、例えばUSB(Universal Serial Bus)を介してPC等と通信する。或いは、通信部109は、例えばWi−Fi(Wireless Fidelity)等の無線LAN(Local Area Network)又はBluetooth(登録商標)等の無線通信を介してPC等と通信する。通信部109は、CPU105の制御の下、USB、無線LAN又はBluetooth等を介して、PC等から各種データを取得する。
印刷制御部104cは、印刷時における印刷ヘッド104bからのインクの吐出を制御する。具体的に説明すると、印刷制御部104cは、移動検出部103によって印刷装置1の移動が検出されると、検出された移動に合わせて、RAM107に格納されている印刷データの内容を印刷ヘッド104bに出力する。そして、印刷制御部104cは、内部に設けられたドライバIC(Integrated Circuit)によって印刷ヘッド104bの通電ドットを制御し、印刷ヘッド104bからインクを吐出させる。これにより、印刷が実行される。なお、インクタンク104a、印刷ヘッド104b及び印刷制御部104cを含む構成を印刷部104と呼ぶ。
電源部110は、バッテリ及び電圧検出器等を備え、各部に必要な電源を作り出して供給する。電源部110は、例えばグリップ部100の内部に設けられている。
加速度センサ111は、印刷装置1の加速度を検出する。加速度センサ111は、検出した加速度を示すデータを、CPU105へ供給する。
角速度センサ112は、印刷装置1の角速度を検出する。角速度センサ112は、検出した角速度を示すデータを、CPU105へ供給する。
計時部113は、電源がオフの間も計時を継続するRTC(Real Time Clock)等を備え、日付と時刻とを測定する。計時部113は、時刻の測定結果を示すデータを、CPU105へ供給する。
図6に、印刷装置1の機能的構成を示す。図6に示すように、印刷装置1は、検出部10と、設定部11と、印刷部12と、を備える。CPU105は、ROM106に格納されたプログラムをRAM107に読み出し、そのプログラムを実行して制御することにより、これらの各部として機能する。
検出部10は、印刷装置1の動きを検出する。検出部10の機能は、CPU105が加速度センサ111及び角速度センサ112と協働することによって実現される。検出部10は、検出した印刷装置1の動きを、設定部11へ供給する。
設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1の動きが所定の変更条件を満たしているか否かを判別し、判別の結果に応じて、ROM106に格納されている第1の印刷テーブルTBL1が格納している印刷データのうち何れかを、印刷対象データとして設定する。具体的に説明すると、設定部11は、第1の印刷テーブルTBL1から印刷データを読み出し、印刷対象データとしてRAM107へ格納する。設定部11の機能は、CPU105がROM106と協働することによって実現される。
印刷部12は、設定部11が印刷対象データとして設定した印刷データに従って印刷を実行する。印刷部12は、印刷制御部104cを制御し、移動検出部103によって検出された印刷装置1の移動に合わせて、RAM107に格納されている印刷対象データの内容を印刷ヘッド104bへ出力することにより、印刷を実行する。印刷部12の機能は、CPU105が印刷部104と協働することによって実現される。
以下、図5〜図9を参照して、印刷装置1の機能をより詳細に説明する。
設定部11は、印刷部12が印刷対象データに従って印刷を実行した後、検出部10が検出した印刷装置1の動きが、ROM106に格納されている第1の変更条件テーブルTBLaによって示される変更条件のうち何れかを満たしているか否かを判別する。
図7に、第1の変更条件テーブルTBLaの構造を示す。第1の変更条件テーブルTBLaは、各変更条件の内容を示す内容データと、各変更条件が満たされたと判別された場合に印刷対象データとして設定されるべき印刷データを特定するための特定データと、を互いに対応付けて格納している。図7に示すように、第1の変更条件テーブルTBLaは、印刷対象データとして設定されるべき印刷データの第1の印刷テーブルTBL1における順番を特定するための情報を、特定データとして含んでいる。第1の変更条件テーブルTBLaは、例えばPC等において、ユーザからの操作指示を受け付けることによって、生成される。印刷装置1は、第1の変更条件テーブルTBLaを、通信部109を介してPC等から予め取得し、ROM106に格納している。
例えば、図7の第1の変更条件テーブルTBLaでは、第1変更条件の内容である「印刷装置が左に振られること」を示す内容データが、「直前に印刷に用いた印刷データ」を内容とする特定データに対応付けられている。このため、設定部11は、第1の変更条件テーブルTBLaを参照することにより、印刷装置1を左に振る動きを検出部10が検出したことに応答して、第1変更条件が満たされたと判別する。また、設定部11は、第1変更条件が満たされたと判別すると、第1の変更条件テーブルTBLaを参照することにより、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データを印刷対象データとして設定する。なお、印刷装置1を左に振る動きとは、図8Aに示す、印刷装置1を+y軸方向周りに反時計回りに傾けた後、+y軸方向周りに時計回りに傾けて元の姿勢に戻す動きを指す。すなわち、印刷ミス等の事情により直前に印刷された印刷内容の再印刷を所望するユーザが印刷装置1を左に振ると、印刷装置1は、直前に印刷に用いた印刷データを再度印刷対象データとして設定し、この印刷データに従った印刷を行う。なお、本明細書において時計回り又は反時計回りとは、回転軸の向き(図8の軸を示す矢印の向き)に沿って見たときの回転の向きのことを言う。
また、第1の変更条件テーブルTBLaでは、第2変更条件の内容である「印刷装置が右に振られること」を示す内容データが、「直前に印刷に用いた印刷データから2番目の順序の印刷データ」を内容とする特定データに対応付けられている。このため、設定部11は、第1の変更条件テーブルTBLaを参照することにより、印刷装置1を右に振る動きを検出部10が検出したことに応答して、第2変更条件が満たされたと判別する。また、設定部11は、第2変更条件が満たされたと判別すると、第1の変更条件テーブルTBLaを参照することにより、第1の印刷テーブルTBL1が格納する印刷データのうち、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データから2番目の順序の印刷データを印刷対象データとして設定する。なお、印刷装置1を右に振る動きとは、図8Bに示す、印刷装置1を+y軸方向周りに時計回りに傾けた後、+y軸方向周りに反時計回りに傾けて元の姿勢に戻す動きを指す。
また、第1の変更条件テーブルTBLaでは、第3変更条件の内容である「印刷装置が前に振られること」を示す内容データが、「最初の順序の印刷データ」を内容とする特定データに対応付けられている。このため、設定部11は、第1の変更条件テーブルTBLaを参照することにより、印刷装置1を前に振る動きを検出部10が検出したことに応答して、第3変更条件が満たされたと判別する。また、設定部11は、第3変更条件が満たされたと判別すると、第1の変更条件テーブルTBLaを参照することにより、第1の印刷テーブルTBL1が格納する印刷データのうち、最初の順序の印刷データを印刷対象データとして設定する。なお、印刷装置1を前に振る動きとは、図8Cに示す、印刷装置1を+x軸方向周りに反時計回りに傾けた後、+x軸方向周りに時計回りに傾けて元の姿勢に戻す動きを指す。
設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1の動きが、第1の変更条件テーブルTBLaによって示される変更条件の何れも満たしていないと判別した場合、第1の印刷テーブルTBL1が格納する印刷データのうち、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データの次の順序の印刷データを印刷対象データとして設定する。
すなわち、印刷装置1は、変更条件を満たす動きが検出部10によって検出されない限り、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データを順番に連続して印刷していく。そして、変更条件を満たす動きが検出部10によって検出されると、印刷装置1は、満たされた変更条件に応じて、第1の印刷テーブルTBL1に従って印刷対象データとして設定される印刷データとは異なる印刷データを印刷対象データとして設定し、この印刷データに従って印刷を行う。
以上のような手動走査型の印刷装置1において実行される印刷処理の流れについて、図9に示すフローチャートを参照して、説明する。
印刷装置1は、通信部109を介し、PC等から第1の印刷テーブルTBL1及び第1の変更条件テーブルTBLaを予め取得し、ROM106に格納している。
また、本実施形態では、印刷に先立って、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データのうち、最初の順序の印刷データが、最初に印刷されるべき印刷対象データとして予め設定され、RAM107に格納されているものとする。
印刷の実行を所望するユーザが印刷装置1の電源を投入すると、印刷装置1のCPU105は、図9のフローチャートに示す印刷処理を開始する。
まず、CPU105は、印刷開始ボタン101が押圧されたか否かを判別する(ステップS101)。押圧されていないと判別すると(ステップS101;NO)、処理は後述するステップS107へ移る。
印刷開始ボタン101が押圧されたと判別すると(ステップS101;YES)、CPU105は、印刷装置1の印刷媒体Pへの接地を接地検出部102が検出したか否かを判別する(ステップS102)。印刷媒体Pへの接地を接地検出部102が検出していないと判別すると(ステップS102;NO)、処理はステップS102へ戻り、印刷装置1の印刷媒体Pへの接地を待機する。
印刷媒体Pへの接地を接地検出部102が検出したと判別すると(ステップS102;YES)、CPU105は、印刷装置1の印刷媒体P上での印刷装置1の移動を移動検出部103が検出したか否かを判別する(ステップS103)。印刷装置1の移動を移動検出部103が検出されていないと判別すると(ステップS103;NO)、処理はステップS103へ戻り、移動の検出を待機する。
ユーザは、印刷を開始するための手順として、印刷開始ボタン101を押下し、その後、印刷装置1の底面を印刷媒体Pに接地させながら、装置本体を主走査方向へスライドさせる。
これに応答して、CPU105は、印刷装置1の移動を検出したと判別し(ステップS103;YES)、印刷部12が、検出した移動に合わせて印刷を実行する(ステップS104)。具体的に説明すると、印刷部12は、印刷制御部104cを制御し、移動検出部103によって検出された印刷装置1の移動に合わせて、RAM107に格納されている印刷対象データの内容を印刷ヘッド104bへ出力することにより、印刷を実行する。
印刷部12が印刷を実行した後、CPU105は、印刷対象データに従った印刷が完了したか否かを判別する(ステップS105)。具体的に、CPU105は、RAM107に格納されている印刷対象データの内容を全て印刷ヘッド104bへ出力したか否かを判別することにより、印刷が完了したか否かを判別する。印刷が完了していないと判別すると(ステップS105;NO)、処理はステップS102へ戻り、印刷対象データに従った印刷が完了するまでステップS102〜ステップS105の処理を繰り返す。
印刷対象データに従った印刷が完了したと判別すると(ステップS105;YES)、CPU105は、終了条件が満たされたか否かを判別する(ステップS106)。本実施形態において、終了条件は、ユーザインタフェース108の入力受付部を介してユーザによる印刷終了の操作指示を受け付けることである。CPU105は、終了条件が満たされたと判別すると(ステップS106;YES)、印刷処理を終了する。
終了条件が満たされていないと判別すると(ステップS106;NO)、CPU105は、検出部10として、印刷装置1の動きが検出されたかどうか、及び、その動きの種類を検出する(ステップS107)。ステップS107において検出部10が印刷装置1の動きを検出しなかった場合(ステップS107:NO)、ステップS101の処理へ移る。
ステップS107において検出部10が印刷装置1の動きを検出した場合(ステップS107:YES)、設定部11は、ステップS107において検出部10が検出した印刷装置1の動きが、第1の変更条件テーブルTBLaによって示される変更条件のうち何れかを満たすか否かを判別する(ステップS108)。具体的に説明すると、設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1の動きが、第1変更条件である印刷装置1が左に振られること、第2変更条件である印刷装置1が右に振られること、又は第3変更条件である印刷装置1が前に振られること、のうち何れかを満たすか否かを判別する。
ステップS107において検出部10が検出した印刷装置1の動きが、第1の変更条件テーブルTBLaによって示される変更条件の何れも満たさないと判別すると(ステップS108;NO)、設定部11は、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データのうち、直前のステップS104において印刷部12が印刷に用いた印刷データの次の順序の印刷データを、印刷対象データとして設定する(ステップS110)。その後、処理はステップS101へ戻り、新たに設定された印刷対象データに従って印刷が実行される。すなわち、印刷装置1は、変更条件を満たす動きが検出部10によって検出されない限り、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データを順番に連続して印刷していく。
第1の印刷テーブルTBL1に従って設定される印刷データとは異なる印刷データに従った印刷の実行を所望するユーザは、所望の印刷データを印刷対象データとして印刷装置1に設定させるために、変更条件を満たすように印刷装置1を動かす。
これに応答して、設定部11は、ステップS107において検出部10が検出した印刷装置1の動きが、第1の変更条件テーブルTBLaによって示される変更条件の何れかを満たすと判別し(ステップS108;YES)、第1の変更条件テーブルTBLaに従って、満たされた変更条件に応じた印刷データを印刷対象データとして設定する(ステップS109)。具体的に説明すると、設定部11は、印刷装置1の動きが第1変更条件を満たすと判別した場合、直前のステップS104において印刷部12が印刷に用いた印刷データを印刷対象データとして設定する。また、設定部11は、印刷装置1の動きが第2変更条件を満たすと判別した場合、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データのうち、直前のステップS104において印刷部12が印刷に用いた印刷データを印刷対象データから2番目の順序の印刷データを、印刷対象データとして設定する。また、設定部11は、印刷装置1の動きが第3変更条件を満たすと判別した場合、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データのうち、最初の印刷データを印刷対象データとして設定する。ステップS109の後、処理はステップS101へ戻り、新たに設定された印刷対象データに従って印刷が実行される。
以上説明したように、印刷装置1は、変更条件を満たす印刷装置1の動きを検出部10が検出しない限り、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データを順番に連続して印刷する。印刷装置1は、変更条件を満たす印刷装置1の動きを検出部10が検出すると、検出した変更条件に応じて、第1の印刷テーブルTBL1に従って印刷対象データとして設定される印刷データとは異なる印刷データに従って印刷を行う。
ユーザは、第1の印刷テーブルTBL1に従って印刷対象データとして設定される印刷データとは異なる印刷データに従った印刷の実行を所望する場合には、変更条件を満たすように印刷装置1を動かすことにより、所望の印刷データに従った印刷を実行させることができる。すなわち、印刷装置1によれば、印刷装置1を把持したまま、印刷装置1を動かすことにより所望の印刷データに従った印刷の実行を指示できる。このため、ユーザが印刷装置1を一方の手に把持して印刷媒体P上を移動させることに合わせて実行される印刷の最中に、印刷装置1を他方の手に持ち替え、ボタンやスイッチ等を操作することによって印刷データを変更するという、印刷のための操作手順から逸脱した煩雑な操作を行う必要がない。すなわち、印刷装置1によれば、装置本体の移動に合わせて実行される印刷において、操作効率を向上させることができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態においては、印刷装置1が、単一のデータ系列を含む第1の印刷テーブルTBL1に従って印刷を行うものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎない。印刷装置1は、任意の数のデータ系列を含む印刷テーブルに従って印刷を行うことができる。
以下、印刷装置1が、複数のデータ系列を含む印刷テーブルに従って印刷を行う実施形態について、図10及び図11を参照して説明する。
本実施形態において、ROM106は、図5に示す第1の印刷テーブルTBL1の代わりに、図10に示す第2の印刷テーブルTBL2を格納している。
第2の印刷テーブルTBL2は、データ系列A、データ系列B及びデータ系列Cの3つのデータ系列を含んでいる。各データ系列は、互いに順序付けられた複数の印刷データを含んでいる。すなわち、各データ系列に含まれる印刷データは、それぞれ、各印刷データの順序を示す順序識別子に対応付けられている。第2の印刷テーブルTBL2は、例えばPC等において、ユーザからの操作指示を受け付けることによって、生成される。印刷装置1は、第2の印刷テーブルTBL2を、PC等から通信部109を介して予め取得し、ROM106に格納している。
また、ROM106は、図7に示す第1の変更条件テーブルTBLaの代わりに、図11に示す第2の変更条件テーブルTBLbを格納している。図11に示すように、第2の変更条件TBLbは、変更条件が満たされた場合に印刷対象データとして設定するべき印刷データが属するデータ系列とこのデータ系列におけるこの印刷データの順番とを特定するための情報を、特定データとして含んでいる。第2の変更条件テーブルTBLbは、例えばPC等において、ユーザからの操作指示を受け付けることによって、生成される。印刷装置1は、第2の変更条件テーブルTBLbを、PC等から通信部109を介して予め取得し、ROM106に格納している。
設定部11は、検出部10によって検出された印刷装置1の動きが、第2の変更条件テーブルTBLbによって示される変更条件のうち何れかを満たしているか否かを判別する。
設定部11は、検出部10によって検出された印刷装置1の動きが、第2の変更条件テーブルTBLbによって示される変更条件の何れも満たさないと判別した場合、第2の印刷テーブルTBL2に格納された印刷データのうち、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データと同一のデータ系列に属する、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データの次の順序の印刷データを印刷対象データとして設定する。例えば、直前に印刷部12がデータ系列Aの3番目の印刷データに従った印刷を実行した後、設定部11が、検出された印刷装置1の動きが変更条件の何れも満たさないと判別した場合、設定部11は、データ系列Aの4番目の印刷データを印刷対象データとして設定する。すなわち、本実施形態に係る印刷装置1は、第2の変更条件テーブルTBLbによって示される変更条件を満たす印刷装置1の動きが検出部10によって検出されない限り、同一のデータ系列に属する印刷データを順番に連続して印刷する。
一方、設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1の動きが第1変更条件を満たすと判別した場合、第2の変更条件テーブルTBLbに従い、データ系列Aの最初の順序の印刷データを印刷対象データとして設定する。
また、設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1の動きが第2変更条件を満たすと判別した場合、第2の変更条件テーブルTBLbに従い、データ系列Bが含む、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データと同じ順序の印刷データを印刷対象データとして設定する。例えば、直前に印刷部12がデータ系列Aの7番目の印刷データに従って印刷を実行した後、設定部11が、検出部10が検出した印刷装置1の動きが第2変更条件を満たすと判別した場合、設定部11は、データ系列Bの7番目の印刷データを印刷対象データとして設定する。
また、設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1の動きが第3変更条件を満たすと判別した場合、第2の変更条件テーブルTBLbに従い、データ系列Cが含む、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データから2番目の順序の印刷データを印刷対象データとして設定する。例えば、直前に印刷部12がデータ系列Aの7番目の印刷データに従って印刷を実行した後、設定部11が、検出部10が検出した印刷装置1の動きが第3変更条件を満たすと判別した場合、設定部11は、データ系列Cの9番目の印刷データを印刷対象データとして設定する。
以上説明したように、本実施形態に係る印刷装置1は、検出部10が検出した印刷装置1の動きが何れの変更条件を満たしたかに応じて、複数のデータ系列を含む第2の印刷テーブルTBL2に格納された印刷データのうち互いに異なる印刷データを印刷対象データとして設定する。このため、本実施形態に係る印刷装置1によれば、単一のデータ系列しか含まない第1の印刷テーブルTBL1に従って印刷を行う実施形態1に係る印刷装置1よりも多様な印刷データを印刷対象データとして設定することができるため、自由度の高い印刷が可能になり、利便性を向上させることができる。
なお、本実施形態で説明した第1変更条件、第2変更条件、及び、第3変更条件はあくまでも一例に過ぎず、次のようなものであってよい。
即ち、設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1の動きが、第1変更条件を満たすと判別した場合、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データと同一のデータ系列に属する、最初の順序の印刷データを印刷対象データとして設定し、第2変更条件を満たすと判別した場合、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データと異なるデータ系列に属する、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データと同じ順序の印刷データを印刷対象データとして設定し、第3変更条件を満たすと判別した場合、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データと同一のデータ系列に属する、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データの次の順序の印刷データを印刷対象データとして設定してもよい。この場合、データ系列の切替は、印刷装置1の動きが検出される度、選択可能な全てのデータ系列を順次切り替えるものであってよい。また、第3変更条件を満たすと判別した場合、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データと同一のデータ系列に属する、前の順序の印刷データを印刷対象データとして設定してもよい。
また、本実施形態では、変更条件テーブルによって示される変更条件の何れも満たさないと判別した場合、印刷テーブルに格納された印刷データのうち、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データと同一のデータ系列に属する、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データの次の順序の印刷データを印刷対象データとして設定するものとして説明したが、これは一例に過ぎない。本発明においては、印刷を完了する度に、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データのデータ系列にかかわらず、初期設定された特定のデータ系列に属する、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データの次の順序の印刷データを印刷対象データとして設定するようにしてもよい。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、設定部11は、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データのうち、検出部10によって検出された印刷装置1の動きが変更条件を満たすと判別した場合と変更条件を満たさないと判別した場合とで異なる順番の印刷データを印刷対象データとして設定するものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎない。設定部11は、任意の方法によって印刷対象データを設定することができる。
以下、印刷装置1の動きが変更条件を満たすと判別された場合、所定の方法により生成された印刷データに従って印刷を行う実施形態について、図12を参照して説明する。
本実施形態に係る印刷装置1は、第1実施形態に係る印刷装置1と同様に、図5に示す第1の印刷テーブルTBL1に従って印刷を行う。
本実施形態において、ROM106は、図7に示す第1の変更条件テーブルTBLaの代わりに、図12に示す第3の変更条件テーブルTBLcを格納している。図12に示すように、第3の変更条件テーブルTBLcは、変更条件が満たされた場合に印刷対象データとして設定するべき印刷対象データを生成する方法を示すデータを、特定データとして含んでいる。第3の変更条件テーブルTBLcは、例えばPC等において、ユーザからの操作指示を受け付けることによって、生成される。印刷装置1は、第3の変更条件テーブルTBLcを、PC等から通信部109を介して予め取得し、ROM106に格納している。
設定部11は、検出部10によって検出された印刷装置1の動きが、第3の変更条件テーブルTBLcによって示される変更条件のうち何れかを満たしているか否かを判別する。
設定部11は、検出部10によって検出された印刷装置1の動きが、第3の変更条件テーブルTBLcによって示される変更条件の何れも満たさないと判別した場合、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データのうち、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データの次の順序の印刷データを印刷対象データとして設定する。これにより、本実施形態に係る印刷装置1は、第3の変更条件テーブルTBLcによって示される変更条件を満たす印刷装置1の動きが検出部10によって検出されない限り、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データを順番に連続して印刷する。
一方、設定部11は、検出部10によって検出された印刷装置1の動きが、第3の変更条件テーブルTBLcによって示される変更条件のうち何れかを満たすと判別した場合、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データに、満たされた変更条件に応じた方法で処理を施すことにより印刷データを生成し、生成した印刷データを印刷対象データとして設定する。
例えば、設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1の動きが第1変更条件を満たすと判別した場合、第3の変更条件テーブルTBLcに従い、第1の印刷テーブルTBL1が含む、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データの次の順序の印刷データを取得し、この印刷データの印刷サイズを拡大することによって印刷データを生成して、生成した印刷データを印刷対象データとして設定する。
また、設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1の動きが第2変更条件を満たすと判別した場合、第3の変更条件テーブルTBLcに従い、第1の印刷テーブルTBL1が含む、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データの次の順序の印刷データを取得し、この印刷データの印刷サイズを縮小することによって印刷データを生成して、生成した印刷データを印刷対象データとして設定する。
また、設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1の動きが第3変更条件を満たすと判別した場合、第3の変更条件テーブルTBLcに従い、第1の印刷テーブルTBL1が含む、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データの次の順序の印刷データを取得し、この印刷データの印刷色を赤へ変更することによって印刷データを生成して、生成した印刷データを印刷対象データとして設定する。
以上説明したように、本実施形態に係る印刷装置1は、検出部10によって検出された印刷装置1の動きが変更条件を満たすと判別した場合、第3の変更条件テーブルTBLcに従って第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データに処理を施すことにより生成された印刷対象データに従って印刷を行う。本実施形態によれば、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データに処理を施して種々の印刷データを生成するため、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データのみに従って印刷を行う上記第1実施形態に比べて一層自由度の高い多様な印刷を実行でき、利便性を向上させることができる。
なお、本実施形態では、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データのサイズ及び色を変更することにより、印刷対象データを生成するものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎない。印刷装置1は、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データに任意の方法で処理を施すことにより、印刷対象データを生成することができる。例えば、印刷装置1は、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データが文字列を表している場合、この文字列のフォントを変更することにより印刷対象データを生成してもよい。
また、本実施形態で説明した第3変更条件はあくまでも一例に過ぎず、次のようなものであってよい。
即ち、設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1の動きが、第3変更条件を満たすと判別した場合、第3の変更条件テーブルTBLcに従い、第1の印刷テーブルTBL1が含む、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データの次の順序の印刷データを取得し、この印刷データの印刷色を、直前に印刷した色とは異なる色へ変更することによって印刷データを生成して、生成した印刷データを印刷対象データとして設定してもよい。この場合、印刷色の切替は、印刷装置1の動きが検出される度、印刷可能な全ての印刷色を順次切り替えるものであってよい。
(第4実施形態)
上記第1〜第3実施形態では、印刷装置1が、予め格納された第1の印刷テーブルTBL1又は第2の印刷テーブルTBL2に従って印刷を行うものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎない。印刷装置1は、任意の方法により取得した印刷データに従って印刷を行うことができる。
以下、印刷データを自ら生成する印刷装置1’の機能及び動作を、図13及び図14を参照して説明する。
印刷装置1’は、上記第1実施形態に係る印刷装置1と概ね同様の機械的・電気的構成を備えている。ただし、印刷装置1’のROM106には、印刷装置1のROM106とは異なり、第1の印刷テーブルTBL1が格納されていない。
また、印刷装置1’のROM106には、図7に示す第1の変更条件テーブルTBLaの代わりに、図13に示す第4の変更条件テーブルTBLdが格納されている。図13に示すように、第4の変更条件テーブルTBLdは、変更条件が満たされた場合に印刷対象データとして設定するべき印刷対象データを生成する方法を示すデータを、特定データとして含んでいる。第4の変更条件テーブルTBLdは、例えばPC等において、ユーザからの操作指示を受け付けることによって、生成される。印刷装置1’は、第4の変更条件テーブルTBLdを、PC等から通信部109を介して予め取得し、ROM106に格納している。
図14に、印刷装置1’の機能的構成を示す。印刷装置1’は、印刷装置1と概ね同様の機能的構成を備えているものの、生成部13を備えている点において、印刷装置1とは異なる。印刷装置1’のCPU105は、ROM106に格納されたプログラムをRAM107に読み出し、そのプログラムを実行して制御することにより、生成部13として機能する。
生成部13は、計時部113が測定した日付及び時刻を示すデータを取得し、この日付及び時刻を西暦表示で表す印刷データを生成する。生成部13は、生成した印刷データを、設定部11へ供給する。生成部13の機能は、CPU105が計時部113と協働することによって実現される。
設定部11は、生成部13が生成した印刷データに基づいて印刷対象データを設定する。具体的に説明すると、設定部11は、検出部10によって検出された印刷装置1’の動きが、図13に示す第4の変更条件テーブルTBLdによって示される変更条件のうち何れかを満たすか否かを判別し、この判別結果と、生成部13が生成した印刷データと、に基づいて印刷対象データを設定する。
より具体的に説明すると、設定部11は、検出部10によって検出された印刷装置1’の動きが、第4の変更条件テーブルTBLdによって示される変更条件の何れも満たさないと判別した場合、生成部13が生成した印刷データを印刷対象データとして設定する。この態様によれば、印刷装置1’は、日付及び時刻を西暦表示で印刷する、いわゆるタイムスタンプ印刷を行う。
一方、設定部11は、検出部10によって検出された印刷装置1’の動きが、第4の変更条件テーブルTBLdによって示される変更条件のうち何れかを満たすと判別した場合、第1の印刷テーブルTBL1に格納された印刷データに、満たされた変更条件に応じた方法で処理を施すことにより印刷データを生成し、生成した印刷データを印刷対象データとして設定する。
例えば、設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1’の動きが第1変更条件を満たすと判別した場合、第4の変更条件テーブルTBLdに従い、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データを印刷対象データとして設定する。すなわち、本実施形態では、タイムスタンプ印刷において印刷ミスが発生した際、ユーザが印刷装置1’を左へ振った後に再印刷を行うことにより、再印刷を行った時刻を表す印刷内容ではなく、印刷ミスが発生した際の時刻を合わす印刷内容を印刷することができる。
また、設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1’の動きが第2変更条件を満たすと判別した場合、第4の変更条件テーブルTBLdに従い、生成部13が生成した、日付及び時刻を西暦表示で表す印刷データを和暦表示へ変更することにより印刷データを生成し、生成した印刷データを印刷対象データとして設定する。例えば、「2015年8月6日18時20分」を内容とする印刷データを生成部13が生成した場合、設定部11は、印刷装置1’の動きが第2変更条件を満たすと判別したことに応答して、「平成27年8月6日18時20分」を内容とする印刷データを生成し、印刷対象データとして設定する。
また、設定部11は、検出部10が検出した印刷装置1’の動きが第3変更条件を満たすと判別した場合、第4の変更条件テーブルTBLdに従い、生成部13が生成した、日付及び時刻を西暦表示で表す印刷データを、時刻のみを表示するフォーマットへ変更することにより印刷データを生成し、生成した印刷データを印刷対象データとして設定する。例えば、「2015年8月6日18時20分」を内容とする印刷データを生成部13が生成した場合、設定部11は、印刷装置1’の動きが第3変更条件を満たすと判別したことに応答して、「18時20分」を内容とする印刷データを生成し、印刷対象データとして設定する。
以上説明したように、印刷装置1’は、生成部13が生成した印刷データに従って印刷を実行する。このため、上記第1〜第3実施形態とは異なり、印刷データを予め記憶する必要がなく、メモリ負荷を低減することができる。
なお、本実施形態において、生成部13は、計時部113が測定した日付及び時刻を表す印刷データを生成するものとして説明したが、これは一例に過ぎない。生成部13は、任意の方法によって印刷データを生成できる。例えば、印刷装置1が図示しない撮像部を備え、生成部13は、この撮像部が撮像した画像を表す印刷データを生成することとすればよい。
(第5実施形態)
上記第1〜第4実施形態では、変更条件は、印刷装置1、1’の動きの所定の態様であるものとして説明したが、これは一例に過ぎない。変更条件は、印刷装置1,1’の変形であってもよい。以下、印刷装置1の変形を変更条件とする印刷装置1’’の機能及び動作について、図15〜図17を参照して説明する。
図15に、印刷装置1’’の外観を示す。印刷装置1’’は、上記第1実施形態に係る印刷装置1と概ね同様の機械的構成を備えているものの、グリップ部100の構成が一部異なる。以下、相違点について説明する。
印刷装置1’’のグリップ部100は、図示しない蝶番によって互いに接続された第1部材100aと第2部材100bとによって構成されており、この蝶番を中心として、図16に示すように、折り畳み、変形することができる。
第1部材100aと第2部材100bとは、図示しない係合部によって互いに係合されている。第1部材100aと第2部材100bとが係合部によって係合されている状態においては、グリップ部100を折り畳むことはできない。係合部による係合は、後述する解除ボタン100cを押圧することにより解除できる。
グリップ部100は、解除ボタン100cと、変形センサ100dと、を備えている。
解除ボタン100cは、第2部材100bに設けられた押圧ボタンである。ユーザが解除ボタン100cを押圧すると、係合部による第1部材100aと第2部材100bとの間の係合が解除される。
ユーザは、解除ボタン100cを押圧することによって係合部による係合を解除した状態において、第2部材100bを手で把持して固定し、第1部材100aを手で把持して動かすことにより、図16に示すように、図示しない蝶番を中心としてグリップ部100を折り畳み、変形することができる。
変形センサ100dは、第1部材100aと第2部材100bとの間の接続部に設けられ、第1部材100aと第2部材100bとが離間したことを検出することにより、グリップ100が折り畳まれ、変形したことを検出する。
印刷装置1’’の検出部10は、印刷装置1’’の動きを検出すると共に、印刷装置1’’の変形を検出する。印刷装置1’’の検出部10の機能は、CPU105が、加速度センサ111、角速度センサ112及び変形センサ100dと協働することによって実現される。
印刷装置1’’のROM106は、図7に示す第1の変更条件テーブルTBLaの代わりに、図17に示す第5の変更条件テーブルTBLeを格納している。図17に示すように、第5の変更条件テーブルTBLeは、第1変更条件に対応する内容データとして、印刷装置1’’が変形することを内容とするデータを格納している。第5の変更条件テーブルTBLeは、例えばPC等において、ユーザからの操作指示を受け付けることによって、生成される。印刷装置1’’は、第5の変更条件テーブルTBLeを、PC等から通信部109を介して予め取得し、ROM106に格納している。
印刷装置1’’の設定部11は、第5の変更条件テーブルTBLeに従って、印刷対象データを設定する。すなわち、設定部11は、検出部10が印刷装置1’’の変形を検出したことに応答して、第5の変更条件テーブルTBLeに従って、直前に印刷部12が印刷に用いた印刷データを、印刷対象データとして設定する。
以上説明したように、本実施形態では、印刷装置1’’の動きと共に、印刷装置1’’の変形を変更条件として設定している。本実施形態によれば、ユーザは、ボタン等を操作することなく、印刷装置1’’を変形させることにより所望の印刷データを印刷対象データとして設定できる。すなわち、印刷装置1’’によれば、操作効率を向上させることができる。
なお、本実施形態では、印刷装置1’’を折り畳むものとして説明したが、これは一例に過ぎず、本発明においては、印刷装置1’’による任意の態様の変形を変更条件として設定できる。また、本実施形態では、変形センサ100dが、第1部材100aと第2部材100bとが離間したことを検出することにより、グリップ100が折り畳まれ、変形したことを検出するものとして説明したが、これは一例に過ぎない。変形センサ100dは、任意の方法により、印刷装置1’’の変形を検出することができる。例えば、変形センサ100dは、圧力センサであり、第1部材100aと第2部材100bとの間の接続部に設けられ、第1部材100aと第2部材100bとの間の圧力を検出することにより、グリップ100が折り畳まれ、変形したことを検出してもよい。
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記第1〜第5実施形態では、変更条件として、第1変更条件〜第3変更条件の3つの条件が設定されているものとして説明したが、これは一例に過ぎない。本発明においては、任意の数の条件を変更条件として設定することができる。
また、上記第1〜第4実施形態では、印刷装置1が右、左又は前に振られることが変更条件の内容であるものとして説明したが、これは一例に過ぎない。本発明においては、印刷装置1,1'の動きの任意の態様を、変更条件として設定することができる。例えば、印刷装置1,1’が所定の軌跡を描くように動くことを変更条件として設定してもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、印刷装置1,1’,1’’の移動検出部103は、光学センサによって自装置の移動量を検出した。しかしながら、本発明では、このような光学方式に限らず、どのような方式で移動量を検出してもよい。例えば、移動検出部103は、ロータリーエンコーダによって自装置の移動量を検出する構成とすることもできる。この場合、ロータリーエンコーダは、例えば印刷装置1,1’,1’’の走行に伴って回転するローラの軸に固定され、ローラの回転数と回転速度とを検出することで、印刷装置1の移動量を検出することができる。
また、上記第1〜第5実施形態では、印刷装置1,1’,1’’は、インクジェット方式の印刷装置であった。しかしながら、本発明において、印刷装置1,1’,1’’は、インクジェット方式の印刷装置であることに限らず、例えば感熱方式又は熱転写方式の印刷装置であってもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、第1の印刷テーブルTBL1、第2の印刷テーブルTBL2、第1の変更条件テーブルTBLa、第2の変更条件テーブルTBLb、第3の変更条件テーブルTBLc、第4の変更条件テーブルTBLd及び第5の変更条件テーブルTBLeが、PC等において生成され、通信部109を介して印刷装置1,1’,1’’によって取得されるものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎない。印刷装置1,1’,1’’は、これらのデータを、任意の方法により取得できる。例えば、印刷装置1,1’,1’’は、ユーザインタフェース108の入力受付部を介してユーザからの操作指示を受け付けることによって、自らこれらのデータを生成し、取得してもよい。
また、上記実施形態では、印刷装置1,1’,1’’において、CPU105がROM106に記憶されたプログラムを実行することによって、検出部10、設定部11、印刷部12及び生成部13のそれぞれとして機能した。しかしながら、本発明において、印刷装置1,1’,1’’は、CPUの代わりに、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、各種制御回路等の専用のハードウェアを備え、専用のハードウェアが、検出部10、設定部11、印刷部12及び生成部13のそれぞれとして機能してもよい。この場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた印刷装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存の情報処理装置等を、本発明に係る印刷装置として機能させることもできる。すなわち、上記実施形態で例示した印刷装置1,1’,1’’による各機能的構成を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することで、本発明に係る印刷装置として機能させることができる。
また、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)
印刷装置であって、
前記印刷装置の動き又は変形を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記動き又は変形が第1の条件を満たしていない場合、第1の印刷データに従った印刷を実行した後、第2の印刷データに従った印刷を実行し、前記検出手段によって検出された前記動き又は変形が前記第1の条件を満たした場合、前記第1の印刷データに従った印刷を実行した後、前記第2の印刷データとは異なる第3の印刷データに従った印刷を実行する印刷手段と、
を備える
ことを特徴とする印刷装置。
(付記2)
前記第1の印刷データ、前記第2の印刷データ及び前記第3の印刷データは、複数の印刷データを互いに順序付けて格納している印刷テーブルに格納された印刷データであり、
前記第2の印刷データは、前記印刷テーブルが含む前記第1の印刷データの次の順序の印刷データである
ことを特徴とする付記1に記載の印刷装置。
(付記3)
前記印刷手段は、前記検出手段によって検出された前記動き又は変形が、前記第1の条件とは異なる第2の条件を満たした場合、前記第2の印刷データ及び前記第3の印刷データとは異なる第4の印刷データに従った印刷を実行する
ことを特徴とする付記1又は2に記載の印刷装置。
(付記4)
前記第3の印刷データは、前記第1の印刷データである
ことを特徴とする付記1乃至3のうち何れか一つに記載の印刷装置。
(付記5)
印刷装置の動き又は変形を検出する検出ステップと、
前記検出ステップによって検出された前記動き又は変形が第1の条件を満たしていない場合、第1の印刷データに従った印刷を実行した後、第2の印刷データに従った印刷を実行し、前記検出ステップによって検出された前記動き又は変形が前記第1の条件を満たした場合、前記第1の印刷データに従った印刷を実行した後、前記第2の印刷データとは異なる第3の印刷データに従った印刷を実行する印刷ステップと、
を含む
ことを特徴とする印刷方法。
(付記6)
コンピュータを、
印刷装置の動き又は変形を検出する検出手段、
前記検出手段によって検出された前記動き又は変形が第1の条件を満たしていない場合、第1の印刷データに従った印刷を実行した後、第2の印刷データに従った印刷を実行し、前記検出手段によって検出された前記動き又は変形が前記第1の条件を満たした場合、前記第1の印刷データに従った印刷を実行した後、前記第2の印刷データとは異なる第3の印刷データに従った印刷を実行する印刷手段、
として機能させる
ことを特徴とするプログラム。