JP2017164165A - 乗物内装品の表皮の製造方法 - Google Patents
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Description
シートクッション4においては、シートパッド4Pが、枠状のシートフレーム4F(図示省略)上に配置されてシートカバー4Sで被覆されている。ここでシートパッド4Pは、シート外形をなす上面視で略矩形の部材であり、ポリウレタンフォーム(密度:10kg/m3〜60kg/m3)等の発泡樹脂で形成できる。このシートパッド4Pには、図1を参照して、シート幅方向における中央に、相対的に凹み状とされた天板メイン部4aが形成されている。また天板メイン部4aの左方と右方には、各々、相対的に着座側に突出する天板サイド部4bと、シート側面を形成するカマチ部4cが形成されている。これら天板メイン部4aと天板サイド部4bは、それぞれ着座状態の乗員に接するシートの着座面を構成している。そして左右の天板サイド部4bの前部は湾曲状とされており、例えば左側の天板サイド部4bに設けられた湾曲部位4dでは、その外縁が、シート前方に向かうにつれて次第に右方に湾曲している。
またシートカバー4Sは、本発明の表皮に相当する面材であり、複数の表皮ピースを縫合することで形成されている。例えばシートパッド4Pの湾曲部位4dは、図9を参照して、複数の表皮ピースとしての後述する第一の表皮ピース11と第二の表皮ピース12で被覆されており、これら両表皮ピース11,12は、シートカバー4Sの裏側に配置された互いの縫い代部11a,12a同士で縫合されている。そしてこれら両縫い代部11a,12aには、後述するイセ込み縫い部30が設けられており、このイセ込み縫い部30によって、湾曲部位4dの外縁側を覆うシートカバー部分が盛り上がって立体化されている。この種のイセ込み縫い部30は、例えば公知技術に示した専用ミシンを用いて製造できるのであるが、この種の専用ミシンの導入は、設備投資の関係などから極力避けたいとの要請がある。そこで本実施例においては、後述する第一工程と第二工程によって、イセ込み縫い用の構造を有さないミシンを用いたとしても、シートカバー4Sに対するイセ込み縫い部30の形成を可能にした。以下、各構成について詳述する。
第一の表皮ピース11は、図2を参照して、正面視で扇状の表皮ピースであり、四半円弧状とされた扇沿縁11bと、この扇沿縁11bに沿って設けられた第一縫い代部11aと、一対の上側マーカー11c,11dを有している。ここで第一縫い代部11aは、扇沿縁11bの一端側E1から他端側E2まで延設されている。そしてこの第一縫い代部11aの延びる方向に向けて、後述する図5の第一縫合線SEW1や図8の第二縫合線SEW2が形成されることとなる。また一対の上側マーカー11c,11dは、それぞれ扇沿縁11bを三角状に切欠いた部位であり、後述する複数の隙間部20a〜20nを挟んで扇沿縁11bの両側に分かれて設けられている。
また第二の表皮ピース12は、図7及び図8を参照して、正面視で長方形状の表皮ピースであり、長辺縁12bと、この長辺縁12bに沿って設けられた第二縫い代部12aと、一対の下側マーカー12c,12dを有している。長辺縁12bは、第二の表皮ピース12の長辺をなす部位である。また第二縫い代部12aは、後述する第二工程において、第一縫い代部11aに重ねられた状態で縫合される部位である。また一対の下側マーカー12c,12dは、それぞれ長辺縁12bを三角状に切欠いた部位であり、対応する上側マーカー11c,11dに重ね合わせ可能な適宜の位置に設けられている。
シートカバー4Sの製造に際しては、隣り合う表皮ピース同志を縫合し、さらに特定の表皮ピースの縫い代部に、下記の第一工程及び第二工程によってイセ込み縫い部30を形成する。本実施例においては、第一の表皮ピース11と第二の表皮ピース12を一例として、図2〜図8を参照しつつ、イセ込み縫い部30の形成手法の詳細を説明することとする。そして第一工程と第二工程は、例えばイセ込み縫い用の構造を有さない通常のミシン(図示省略)を用いて行うことができる。この種の通常のミシンとして、第一の表皮ピース11と第二の表皮ピース12を本縫い等で縫合可能な各種の工業用ミシンや家庭用ミシンを例示できる。
第一工程では、図2〜図4を参照して、第一の表皮ピース11の第一縫い代部11aに複数の隙間部20a〜20nを適宜の間隔で形成する(なお図4では、一部の隙間部のみ図示されている)。これら複数の隙間部20a〜20nは、第一の表皮ピース11を厚み方向に貫通する部位であり、一対の上側マーカー11c,11dの間の扇沿縁11b部分に等間隔で配置されている。ここで複数の隙間部20a〜20nの基本構成は略同一であることから、以下に、上側マーカー11d側に設けられた特定の隙間部20bを一例にその詳細を説明する。
さらに第一工程では、図5を参照して、各隙間部20a〜20nにて分割された縫い代部位22a〜22mを、対応する隙間部を詰めながら寄せた状態で維持する。こうすることで第一の表皮ピース11の第一縫い代部11aを縮めてイセ込まれた状態とすることができる。本実施例においては、第一縫合線SEW1によって第一縫い代部11aをイセ込まれた状態とする。この第一縫合線SEW1は、本発明の他の縫合線に相当し、図6に示すように通常のミシンによって上糸Y1と下糸Y2を本縫いすることで形成できる。そして各隙間部20a〜20nに挿通された第一縫合線SEW1の上糸Y1と下糸Y2が交絡しながら引き締まる力を利用して、各縫い代部位22a〜22mを、対応する隙間部を詰めながら寄せた状態で維持することができる。例えば図6を参照して、各縫い代部位22a〜22dには、第一縫合線SEW1の上糸Y1と下糸Y2が刺通された状態で固定されている。また隙間部20b等では、第一縫合線SEW1の上糸Y1と下糸Y2が交絡しながら引き締まっており、この両糸Y1,Y2の引締め力によって、隙間部20bの各縁部23,24が離間寸法L3(L3<L1)に詰められている。こうして隙間部20b等の離間寸法が詰められることで、各縫い代部位22a〜22dが互いに近づく方向に寄せられることとなる。なお上記構成では、第一の表皮ピース11が硬く撓みにくい天然皮革(又は厚手の生地)で構成されていても、各隙間部20a〜20nを詰めることで、第一縫い代部11aを好適なイセ込み量でイセ込み状態としておくことができる。
第二工程では、図8を参照して、第一の表皮ピース11のイセ込まれた第一縫い代部11aを、第二の表皮ピース12の第二縫い代部12aに、第二縫合線SEW2によって縫合してイセ込み縫い部30を形成する。この第二縫合線SEW2は、本発明の縫合線に相当し、通常のミシンによって図示しない上糸と下糸を本縫いすることで形成できる。第二工程の具体的な手順は、第一の表皮ピース11の裏側に第二の表皮ピース12をあてがいながら第一縫い代部11aと第二縫い代部12aを重ねる。そして第一縫い代部11aの各上側マーカー11c,11dの少なくとも一方を、第二縫い代部12aの対応する下側マーカー12c,12dに位置合わせしておく。この状態で通常のミシンを用いて、第一縫い代部11aに沿って第二縫合線SEW2を形成することで、イセ込まれた第一縫い代部11aを第二縫い代部12aに縫合してイセ込み縫い部30を形成することができる。なお第二縫合線SEW2は、第一縫合線SEW1に重ならないように形成されることが好ましく、本実施例においては、第一縫合線SEW1よりも第一縫い代部11aの奥側に形成されている。
図9を参照して、シートパッド4Pをシートカバー4Sで被覆する。このとき第一の表皮ピース11と第二の表皮ピース12を、第二縫合線SEW2を境に展開しつつ、これら展開させた両表皮ピース11,12によってシートパッド4Pの湾曲部位4dを被覆する。第一の表皮ピース11は、着座面となる天板サイド部4bを被覆し、さらに扇沿縁11bが、湾曲部位4dの外縁に沿って配置される。また第二の表皮ピース12は、カマチ部4cを被覆する。そして両表皮ピース11,12の裏側に配置されたイセ込み縫い部30が、湾曲部位4dの外縁に沿って湾曲状とされて配置される。こうして湾曲部位4dを被覆する湾曲したシートカバー部分(扇沿縁11bの配置された部分)を、イセ込み縫い部30によって盛り上げて立体化することにより、シートの見栄えを向上させることができる。
実施例2では、実施例1の構成部材とほぼ同一の基本構成を備える構成については、対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。本実施例では、図10を参照して、乗物内装品としてのドア部40の表皮に本発明を適用した例を説明する。このドア部40は、略矩形の窓部41と、この窓部41の下方で乗物室内側に突出するドアトリム部42を有している。このドアトリム部42は、略長方形状の部材であり、その上面の端部側に湾曲部位44を有している。そしてドアトリム部42の表皮は、ドアトリム部42の上面を被覆する第一の表皮ピース44Sと、ドアトリム部42の側面を被覆する第二の表皮ピース45Sを縫合することで形成されている。そこで本実施例においては、ドアトリム部42の湾曲した端部を盛り上げて立体化するため、対応する表皮の裏側において、第一の表皮ピース44Sと第二の表皮ピース45Sの縫い代部(図示省略)にイセ込み縫い部30を設けることとした。なおドアトリム部42の各表皮ピースの縫い代部は、ドアトリム部42の形状に合わせて適宜の位置でカットして短くしておくことができる。
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
4F シートフレーム
4P シートパッド
4a 天板メイン部
4b 天板サイド部
4c カマチ部
4d 湾曲部位
4S シートカバー
11 第一の表皮ピース
11a 第一縫い代部
11b 扇沿縁
11c,11d 上側マーカー
12 第二の表皮ピース
12a 第二縫い代部
12b 長辺縁
12c,12d 下側マーカー
20a〜20n 隙間部
22a〜22m 縫い代部位(本発明の隙間部にて分割された縫い代部分)
23,24 縁部
25 連結縁部
26 開口部
30 イセ込み縫い部
40 ドア部
41 窓部
42 ドアトリム部
44 湾曲部位
44S 実施例2にかかる第一の表皮ピース
45S 実施例2にかかる第二の表皮ピース
SEW1 第一縫合線(本発明の他の縫合線)
SEW2 第二縫合線(本発明の縫合線)
Claims (6)
- 表皮ピース同士を縫合して表皮を製造するに際して、前記表皮の裏側に配置される前記表皮ピースの縫い代部に、前記表皮の意匠面を盛り上げて立体化させるイセ込み縫い部を形成する乗物内装品の表皮の製造方法において、
第一の表皮ピースの縫い代部に、前記第一の表皮ピースを厚み方向に貫通する隙間部を適宜の間隔で複数形成したのち、前記隙間部にて分割された縫い代部分を、対応する隙間部を詰めながら寄せた状態で維持することにより、前記第一の表皮ピースの縫い代部をイセ込まれた状態とする第一工程と、
前記第一の表皮ピースのイセ込まれた縫い代部を、第二の表皮ピースの縫い代部に、これらの縫い代部に沿って延びる縫合線によって縫合して前記イセ込み縫い部を形成する第二工程とを備えた乗物内装品の表皮の製造方法。 - イセ込み縫い用の構造を有さないミシンを用いて第一工程と第二工程を行うとともに、第一工程においては、前記第一の表皮ピースの縫い代部に沿って他の縫合線を形成することにより、前記隙間部に挿通された前記他の縫合線をなす上糸と下糸が交絡しながら引き締まる力を利用して、前記隙間部にて分割された縫い代部分を、対応する隙間部を詰めながら寄せた状態で維持する請求項1に記載した乗物内装品の表皮の製造方法。
- 前記第一の表皮ピースの切欠き状とされた前記隙間部が、前記第一の表皮ピースの縫い代部が延設されている方向に対して交差する方向に延びている請求項1又は2に記載した乗物内装品の表皮の製造方法。
- 前記第一の表皮ピースの前記隙間部が、その縫い代部の縁で開口する開口部と、前記第一の表皮ピースの縫い代部が延設されている方向に対して交差する方向に延びている一対の縁部と、前記開口部の対面側で前記一対の縁部につながる連結縁部とを有しており、前記一対の縁部が、前記連結縁部によって離間して配置されている請求項3に記載した乗物内装品の表皮の製造方法。
- 湾曲した表皮部分を、前記表皮部分に沿って配置された前記イセ込み縫い部にて盛り上げて立体化させる請求項1〜4のいずれか一項に記載した乗物内装品の表皮の製造方法。
- 前記乗物内装品が乗物用シートであるとともに、前記第一の表皮ピースが、前記乗物用シートの着座面側に配置されている請求項1〜5のいずれか一項に記載した乗物内装品の表皮の製造方法。
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