JP2017162906A - 圧電素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い絶縁耐性および良好な圧電特性を両立させることが可能な圧電素子を提供する。
【解決手段】基板11上に、下部電極12、圧電膜13、および上部電極15をこの順に備える圧電素子10であって、圧電膜13の下部電極12側および上部電極15側の少なくとも一方に絶縁膜14を備え、
圧電膜13が、少なくともPb、Zr、Ti、およびO元素を含む材料からなり、
圧電膜13の膜厚が、400nm以上10μm以下であり、
絶縁膜14が、6.0eV以上のバンドギャップを有し、圧電膜13と異なる材料からなり、
絶縁膜14の少なくとも一方の膜厚が2nm以上であり、かつ、圧電膜13の膜厚に対する絶縁膜14の総膜厚の比が0.5%以下である圧電素子10とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧電素子に関する。
電界印加強度の増減に伴って伸縮する圧電膜と、圧電膜に対して電界を印加する一対の電極(上部電極および下部電極)とを備えた圧電素子は、インクジェット式記録ヘッドに搭載される圧電アクチュエータ等として使用されている。近年、高速化および高精細化のため圧電定数が高い素子が求められている。また、インクジェットヘッドの交換頻度が少ないことが好ましいため実用上充分な耐久性が必要とされている。
圧電膜の圧電材料としては、Pb(Zr,Ti)O(以下、PZTとも記載する。)、およびPZTのAサイトおよびBサイトの少なくとも一方を他元素で置換したPZTの置換系が知られている。Bサイトの元素を置換するドナイオンとして、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、およびW6+等が知られている。このような圧電素子は、PZTよりも圧電性能が向上することが知られている。
また、圧電素子の性能向上のため構造についても種々研究がされ、圧電膜に、圧電膜とは異なる絶縁材料を設ける技術が知られている。例えば、特許文献1には、PZT膜の結晶性を向上させる目的で、PbTiOまたは(Pb,La)TiOなどからなる絶縁層を圧電膜の初期層として設けることが開示されている。
また、特許文献2には、圧電素子の非駆動部に絶縁層を配置し、圧電膜と絶縁層を同一平面にして配線の断線を防ぐ技術が開示されている。
一方、PZTを用いた圧電素子においては、電圧を2倍にすれば圧電変位量が2倍になるため、電圧を印加すればするほど圧電特性は向上するが、電圧を印加し過ぎると絶縁破壊するという問題がある。
絶縁膜における絶縁破壊は、一般的に、電圧印加により、価電子帯から伝導帯に電子が供給され、その電子が加速して電子なだれが発生し、ねずみ算式に電子が増加することで大量に電流が流れ、膜の破壊に至ると考えられる。この電子なだれを抑制することが、圧電膜を用いたデバイスの高い印加電圧を得るために必要と考えられる。
特開2000−285626号公報 特開2011−82681号公報
バンドギャップの大きい材料は絶縁破壊電圧が高いことが知られている。これは、電圧印加時の初期の段階で電子供給が迅速に行われないためと考えられている。しかし、圧電素子においてバンドギャップの大きい材料からなる層を加えると、圧電性能が低下するという問題がある。このため、圧電素子において、絶縁耐性を向上させること、および良好な圧電特性を得ることの両立は容易ではなかった。

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高い絶縁耐性および良好な圧電特性を両立させることが可能な圧電素子を提供することを目的とするものである。
従来、特許文献1に記載の発明のように、圧電膜とは異なる材料の絶縁膜を積層させる場合でも、バンドギャップの大きい材料は、圧電膜への印加電界が低下するため採用されていない。また、特許文献2に記載の発明のように、絶縁膜を導入すると圧電膜への印加電圧は低下するため、駆動領域にまで積極的に絶縁膜は形成されていない。このように、圧電素子の変位量が、圧電素子が組み込まれる装置の機能に直接影響する領域(以下、本明細書においてデバイス機能有効領域とする)には絶縁膜を配置しないことが常識であった。
しかしながら、発明者は、このような常識に反し、デバイス機能有効領域にまでもバンドギャップが大きい特定の絶縁膜を積層することで絶縁耐性が向上し、さらには良好な圧電特性も得られることを見出した。本発明者は、このような常識を覆す知見により本発明を成すに至った。
すなわち、本発明は、基板上に、下部電極、圧電膜、および上部電極をこの順に備える圧電素子であって、
圧電膜の下部電極側および上部電極側の少なくとも一方に絶縁膜を備え、
圧電膜は、少なくともPb、Zr、Ti、およびO元素を含む材料からなり、
圧電膜の膜厚は、400nm以上10μm以下であり、
絶縁膜は、6.0eV以上のバンドギャップを有し、圧電膜と異なる材料からなり、
絶縁膜の少なくとも一方の膜厚は2nm以上であり、かつ、圧電膜の膜厚に対する絶縁膜の総膜厚の比は0.5%以下である。
ここで、圧電膜の膜厚に対する絶縁膜の総膜厚の比は、(絶縁膜の総膜厚/圧電膜の膜厚)×100で表される値である。
絶縁膜は、SiO、Al、MgO、ZrO、およびHfOから選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。ただし、これらの材料の酸素量は絶縁性を維持する範囲内で変動してもよい。
絶縁膜は、Alからなることが最も好ましい。
圧電膜の膜厚は、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。
本発明の圧電素子によれば、高い絶縁耐性と良好な圧電特性を得ることができる。
本発明の圧電素子の一実施形態を示す概略断面図である。 本発明の圧電素子の別の実施形態を示す概略断面図である。 本発明の圧電素子のさらに別の実施形態を示す概略断面図である。 スパッタ装置の一例を示す概略断面図である。 絶縁膜を設けない圧電素子の一実施形態を示す概略断面図である。
[圧電素子]
本発明の圧電素子について、図1を参照しながら説明する。図1は本発明の圧電素子の一実施形態の概略断面図である。
圧電素子10は、基板11、下部電極12、圧電膜13、絶縁膜14、および上部電極15を備える。下部電極12と上部電極15とにより膜厚方向に電界が印加されて、圧電膜13が伸縮する。本実施形態の基板11には、空間17が設けられている。このような圧電素子は、基板11の下部に空間17と連通する小孔を備えた薄板をさらに備え、空間17が圧力室を構成し、小孔が圧力室内の液体を外部に吐出する液体吐出口を構成してなる液体吐出装置のアクチュエータとして用いることができる。
絶縁膜14は、圧電膜13上全面に形成されている。すなわち、デバイス機能有効領域16にも設けられている。デバイス機能有効領域とは、前述したように、圧電素子の変位が、圧電素子が組み込まれてなる装置の機能に直接影響する領域である。例えば、圧電素子を液体吐出装置に用いた場合、デバイス機能有効領域とは、圧電素子の変位が液的吐出機能に影響する領域である空間17に対応する領域である。
また、絶縁膜14は、上部電極が配線部分として機能する領域にあっても、もちろんよい。
以下、本発明の圧電素子の構成要素について詳細に説明する。
(基板11)
基板11としては特に制限なく、シリコン、ガラス、ステンレス、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、SrTiO、アルミナ、サファイヤ、およびシリコンカーバイド等の基板が挙げられる。基板11としては、シリコン基板上にSiO膜とSi活性層とが順次積層されたSOI(Silicon on Insulator)基板等の積層基板を用いてもよい。また、基板と下部電極との間に、格子整合性を良好にするためのバッファ層や、電極と基板との密着性を良好にするための密着層等を設けてもよい。
(下部電極12)
下部電極12は、圧電膜13に電圧を加えるための電極である。下部電極12の主成分としては、特に制限がなくAu、Pt、Ir、IrO、RuO、LaNiO、SrRuO、ITO(Indium Tin Oxide)、TiN等の金属、金属酸化物、または透明導電性材料で構成されている。例えば、Pt電極またはIr電極のような貴金属電極を用いると、良質な圧電膜を作製することができるため好ましい。下部電極12は、隣接する層との密着性を維持するために、Ni、Cr、Ti、またはTiW(チタンタングステン)などの金属層を、下部電極12の基板11側あるいはその反対側、または両方に設けてもよい。密着性を維持できる場合には、必ずしも必要としない。
(上部電極15)
上部電極15は、圧電膜13に電圧を加えるための電極である。上部電極15の主成分としては特に制限がなく、下部電極12で例示した材料、Al、Ta、Cr、Cu、Ir、およびPt等の一般的な半導体プロセスで用いられる電極材料、または、これらの組み合わせが挙げられる。また、上部電極15は、圧電膜13または絶縁膜14との密着性を維持するために、Ni、Cr、Ti、またはTiW(チタンタングステン)などの金属層を設けてもよい。
下部電極12と上部電極15の厚みには特に制限はないが、電極での電圧降下を防ぎ、かつ膜応力による素子破壊を防ぐ観点から、50〜500nmであることが好ましい。
(圧電膜13)
圧電膜13の材料としては、バンドギャップ(以下、Egとも記載する)が6.0eV未満である材料が好ましく一般的なペロブスカイト構造の圧電膜を挙げることができる。
具体的には、下記一般式1で与えられる材料が好ましい。
ABO・・・(一般式1)
AはAサイトの元素であり、Pb、Ba、Sr、Bi、Li、Na、Ca、Cd、Mg、K、およびランタニド元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
BはBサイトの元素であり、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Mg、Sc、Co、Cu、In、Sn、Ga、Zn、Cd、Fe、Ni、Hf、およびAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。Oは酸素元素である。
Aサイト元素、Bサイト元素、および酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。
このような圧電膜材料の中で、圧電性能が高いことから、Pb(Zr,Ti)Oが好ましい。また、Pb(Zr,Ti)OにNb、またはTaなどのドナイオンをドープすると、さらに特性が向上するのでより好ましい。また、PZT系以外では、PbTiO(Eg=3.3eV)、BaTiO(Eg=3.4eV)、およびBiFeO(Eg=2.8eV)等も好ましい。膜の結晶状態については、(100)に結晶配向している、または単結晶膜(エピタキシャル膜)であると性能が向上するため好ましいが、本発明ではこれに限定されない。
また、ペロブスカイト構造以外で圧電性を示す材料として、例えば、LiNbO(Eg=3.7eV)、およびLiTaO(Eg=4.6eV)等のイルメナイト構造のものも好ましい。
なお、AlN(Eg=6.3eV)およびランガサイト系化合物(Eg=6.6eV)などのバンドギャップが6.0eV以上の材料は、材料自身で高耐圧を実現することができるため、本発明による効果は小さいと考えられる。
圧電膜13の成膜方法としては、特に限定されず、スパッタ法、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、およびPLD(Pulse Laser Deposition)法などの気相成長法、ゾルゲル法および有機金属分解法などの液相法、およびエアロゾルデポジション法などが挙げられる。例えば気相成長法で行なうことにより、成膜時の横スジの発生を抑制することができ、耐久性の高い圧電膜を成膜することができる。また、緻密膜を成膜できる観点から、スパッタ法を選択することもできる。
圧電膜13の膜厚は、後述する絶縁膜の膜厚との関係から400nm以上であり、素子小型化の観点から10μm以下である。さらには、本発明の圧電素子は絶縁膜を設けていることから圧電膜での印加電界が大きくなるため、1μm以上の膜厚を有することが好ましい。
(絶縁膜14)
絶縁膜14は、6.0eV以上のバンドギャップを有し、圧電膜13と異なる材料からなるものである。絶縁膜14の材料としては、SiO(Eg=9eV)、Al(Eg=8.6eV)、MgO(Eg=7.5eV)、ZrO(Eg=6.1eV)、およびHfO(Eg=6.1eV)から選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。なかでも、絶縁膜14はAlからなることが最も好ましい。
各々の材料がバンドギャップ6.0eV以上である場合は、これらの混合物でもよい。また、材料のバンドギャップが6.0eV以上であれば、上記材料の一部が別の元素で置換されたもの、パラキシリレン系ポリマーなどからなる有機絶縁膜を用いてもよい。
絶縁膜14は、トンネル効果によるリーク電流の発生を防止する観点から膜厚は2nm以上である。さらに、絶縁破壊に対して効果の高い絶縁膜は、バンドギャップが大きい膜、すなわち誘電率が低い膜となるため、積層すると圧電膜にかかる電圧が低下し、実効的に圧電定数が低下する。このため、絶縁膜の膜厚は薄くする必要がある。このような観点から、圧電膜13の膜厚に対する絶縁膜14の総膜厚の比は、0.5%以下である。
上記実施形態では、絶縁膜14は圧電膜13の上部電極15側に配置したが、図2に示す圧電素子20のように、絶縁膜14を圧電膜13の下部電極12側に配置してもよく、この場合にも上記実施形態の圧電素子と同様に高い絶縁耐性と良好な圧電特性を得ることができる。
このような層構成では、上部電極15にマイナス電圧を印加すると、電子が注入されて下部電極12に向かって走ろうとするが、電子の動きは下の絶縁膜14に制約されて電子が抜けていかないため電流が流れにくく、絶縁破壊に達しにくいと考えられる。
また、図3に示す圧電素子30のように、下部電極12側および上部電極15側の両方に絶縁膜14aおよび14bを設けてもよく、上記実施形態の圧電素子と同様に高い絶縁耐性と良好な圧電特性を得ることができる。圧電膜13の下部電極12側および上部電極15側の両方に絶縁膜(14a,14b)を設ける場合は、絶縁膜14aまたは14bのいずれかの膜厚は、トンネル効果によるリーク電流の発生を防止する観点から2nm以上が必要である。加えて、圧電定数の低下を防止する観点から、圧電膜13の膜厚に対する絶縁膜14aと14bとを合わせた総膜厚の比は0.5%以下である。
また、印加する電圧は、上部電極および下部電極の極性を問わず、最適な圧電変位が得られる電圧を印加することができる。
絶縁膜14は、絶縁膜を薄くする観点から、圧電膜の下部電極12側または上部電極15側に設けることが好ましい。圧電膜13は比較的高温で成膜されることが多いため、圧電膜13の成分が拡散するのを防止する観点から、圧電膜13成膜後の上部電極15側に絶縁膜を設けることがより好ましい。
絶縁膜の成膜方法としては、特に限定されず、スパッタ法、プラズマCVD法、MOCVD法、およびPLD法などの気相成長法、ゾルゲル法および有機金属分解法などの液相法、およびエアロゾルデポジション法などが挙げられる。薄い絶縁膜を付ける観点から、気相法が好ましく用いられる。
本発明の圧電素子は、上部電極15と圧電膜13との間、下部電極12と圧電膜13との間、または上部電極15側および下部電極12側の両方にバンドギャップの高い絶縁膜14を積層することで、初期の電子注入が抑制されるため、絶縁耐圧が向上すると考えられる。
絶縁膜がない圧電素子100(図5参照)では、上部電極104にマイナス電圧を印加した場合、上部電極104付近から絶縁破壊に至らしめる電子が発生し、他の電子と衝突しながらプラス電界である下部電極102に向かって圧電膜103を電子が走り、電子なだれが発生すると考えられる。
(圧電素子の製造方法)
次に、圧電素子の製造方法の一実施形態について図4を参照しながら説明する。図4に、スパッタ装置の一例の概略構成図を示す。
スパッタ装置(高周波スパッタリング装置)200は、基板Bが装着可能である。装着された基板Bを所定温度に加熱することが可能な基板ホルダ211と、ターゲットTが装着可能なターゲットホルダ212とが備えられた真空容器210から概略構成されている。図4における装置では、真空容器210が成膜チャンバとなっている。基板Bは、下部電極が成膜された基板である。
真空容器210内において、基板ホルダ211とターゲットホルダ212とは互いに対向するように離間配置されている。ターゲットホルダ212は真空容器210の外部に配置された高周波(RF)電源213に接続されており、ターゲットホルダ212がプラズマを発生させるためのプラズマ電源(カソード電極)となっている。図4においては、真空容器210内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段214として、高周波電源213およびプラズマ電極(カソード電極)として機能するターゲットホルダ212が備えられている。ターゲットTの組成は、成膜する膜の組成に応じて選定される。
成膜装置200には、真空容器210内にプラズマ化させるガスGを導入するガス導入管217と、真空容器210内のガスの排気Vを行なうガス排出管218が備えられている。ガスGとしては、Ar、またはAr/O混合ガスなどが使用される。
図4においては、真空容器210内の壁面にフローティング壁220を設けてフローティング電位としている。壁面をフローティング電位とすることで、プラズマ電位と同電位となるため、プラズマ成分が真空容器210の壁面に到達しにくくなり、基板Bに対するイオンの衝突エネルギーを高くすることができる。したがって、Pbイオンをペロブスカイト構造(ABO)のAサイトに配置することができ、結晶中の不安定なPbイオンの量を減らすことができるので、形成された圧電膜は高い圧電性能を得ることができる。
図4においては、真空容器210の壁面にフローティング壁を設けてフローティング電位とすることで、基板Bへのイオンの衝突エネルギーを高くしているが、他の方法として、真空容器210内のアノード面積を小さくする、真空容器210の壁面を絶縁体で被覆する、または基板Bのインピーダンスを変化させることにより、制御を行なうこともできる。
圧電膜13上に、絶縁膜14および上部電極15を順次スパッタ装置で積層することによって圧電素子を作製することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、添加剤、物質量とその割合、および操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
[製造例1]
厚み625μmおよび直径150mmのSiウエハ基板上に、スパッタ法により下部電極として20nm厚のTiW膜と150nm厚の(111)Ir膜とを順次成膜した。Ir膜上に、スパッタ法により、Nbが含有されたPZT膜(圧電膜)を約3μm成膜した。蛍光X線法による組成分析の結果、圧電膜中のNb含有比およびZr含有比は、Nb/(Zr+Ti+Nb)=0.12、および、Zr/(Zr+Ti)=0.52であった。
圧電膜上に、スパッタ法によりAl膜(絶縁膜,Eg=8.6eV)を成膜し、さらにその上に上部電極としてIr膜を150nm成膜し、積層体を作製した。ここで、Al膜の膜厚を変化させた積層体から下記の手順により圧電素子を作製し、これらを実施例および比較例として評価した。なお、以下の各表において、絶縁膜が0nmと記載した膜は、成膜しなかった場合を意味する。
<圧電定数の測定>
圧電素子の圧電定数を以下の方法で測定した。
圧電定数の測定は、上記のように作製された積層体を2mm×25mmの短冊状に切断してカンチレバーを作製し、I.Kanno et. al. Sensor and Actuator A 107(2003)68.に記載の方法に従い、−10V±10Vの正弦波の印加電圧で行った。
ここで、以下の製造例1〜5の表において、絶縁膜がない場合(比較例1−1)の圧電定数d31は250pm/Vであり、この値を100%として表記した。
<耐圧の測定>
圧電素子の耐圧を以下の方法で測定した。
上記のように作製した積層体の上部電極であるIr膜をリフトオフ法により直径400μm円形状にパターニングした。下部電極を接地し、上部電極にマイナスの電圧を印加し、1mA以上の電流が流れた電圧の絶対値を10回測定し、その平均値を耐圧と定義した。
<評価>
圧電定数×耐圧を圧電素子の圧電性能として、基準の圧電素子から相対的に評価した。以下の各表において、圧電膜の膜厚に対する絶縁膜の総膜厚の比は、単に、絶縁膜/圧電膜と記載する。
製造例1の評価結果を表1に示す。
表1に示すように、絶縁膜が2nm以上の場合、トンネル効果によるリーク電流が抑制され、絶縁膜の効果が得られるため、絶縁耐圧が高くなる。絶縁膜を厚くすると、絶縁膜/圧電膜が大きくなり、圧電膜にかかる電圧が低下するため圧電定数は下がっていく。しかし一方では、耐圧が上がるため、より電圧が印加できるようになるため、圧電素子としての性能は向上する。また、絶縁膜/圧電膜が0.5%以下の場合、絶縁膜がない素子(比較例1−1)と比較し、圧電性能が向上していることがわかる。
[製造例2]
絶縁膜をZrO(Eg=6.1eV)とした以外は製造例1と同様に圧電素子を作製し、同様に圧電定数および耐圧を測定した。表2に評価結果を示す。
表2に示すように、絶縁膜としてZrOを用いた場合においても、同様に耐圧が向上し、得られる圧電性能が向上することわかった。
[製造例3]
絶縁膜をTiO(Eg=3.0〜3.2eV)とした以外は製造例1と同様に圧電素子を作製し、同様に圧電定数および耐圧を測定した。表3に評価結果を示す。
表3に示すように、本製造例では、絶縁膜としてTiOを用いたが、バンドギャップが3.0〜3.2eVと小さいため、絶縁膜を設けない圧電素子の性能が一番高く、絶縁膜を設ける効果は見られなかった。
[製造例4]
圧電膜の下部電極側に絶縁膜を形成した以外は、製造例1と同様に圧電素子を作製し、同様に圧電定数および耐圧を測定した。
圧電膜を、蛍光X線法による組成分析した結果、Nb含有比およびZr含有比は、Nb/(Zr+Ti+Nb)=0.12、および、Zr/(Zr+Ti)=0.52であった。表4に評価結果を示す。
表4に示すように、圧電膜の下部電極側に絶縁膜を設けた場合であっても、上部電極側に設けた場合と同様に圧電性能が向上することがわかった。
[製造例5]
下部電極側および上部電極側の両方に絶縁膜を形成した以外は、製造例1と同様に圧電素子を作製し、圧電定数および耐圧を測定した。表5に評価結果を示す。
表5に示すように、圧電膜の下部電極側および上部電極側の両方に絶縁膜を設けた場合も、圧電性能が向上することがわかった。また、2つの絶縁膜の一方の厚さが2nm以上であれば圧電性能が向上することがわかった。一方、いずれの絶縁膜も2nm未満の場合(比較例5−1)は、基準より圧電性能が劣った。
[製造例6]
圧電膜を、Pb(Zr,Ti)Oとした以外は製造例1と同様に圧電素子を作製し、圧電定数および耐圧を測定した。蛍光X線法による組成分析の結果、圧電膜のZrとTiの含有比は、Zr/(Zr+Ti)=0.52であった。
絶縁膜を積層しない圧電素子(比較例6−1)を作製し、圧電定数d31を測定したところ、d31=150pm/Vであった。これを基準として評価した。表6に評価結果を示す。
表6に示すように、圧電膜にNbを含まないPb(Zr,Ti)Oであっても性能が向上することが確認できた。
本発明の圧電素子は、インクジェット式記録ヘッド、磁気記録再生ヘッド、MEMS(Micro Electro-Mechanical Systems)デバイス、マイクロポンプ、超音波探触子等に搭載される圧電アクチュエータ、および強誘電体メモリ等の強誘電体素子に好ましく利用できる。
10 圧電素子
11,101 基板
12,102 下部電極
13,103 圧電膜
14,14a,14b 絶縁膜
15,104 上部電極
16 デバイス機能有効領域
17 空間
200 スパッタ装置
210 真空容器
211 基板ホルダ
212 ターゲットホルダ
213 高周波電源
214 プラズマ発生手段
217 ガス導入管
218 ガス排出管
220 フローティング壁
G ガス
V 排気
B 基板

Claims (4)

  1. 基板上に、下部電極、圧電膜、および上部電極をこの順に備える圧電素子であって、
    前記圧電膜の前記下部電極側および前記上部電極側の少なくとも一方に絶縁膜を備え、
    前記圧電膜が、少なくともPb、Zr、Ti、およびO元素を含む材料からなり、
    前記圧電膜の膜厚が、400nm以上10μm以下であり、
    前記絶縁膜が、6.0eV以上のバンドギャップを有し、前記圧電膜と異なる材料からなり、
    前記絶縁膜の少なくとも一方の膜厚が2nm以上であり、かつ、前記圧電膜の膜厚に対する前記絶縁膜の総膜厚の比が0.5%以下である圧電素子。
  2. 前記絶縁膜が、SiO、Al、MgO、ZrO、およびHfOから選ばれる少なくとも一つを含む請求項1記載の圧電素子。
  3. 前記絶縁膜が、Alからなる請求項2記載の圧電素子。
  4. 前記圧電膜の膜厚が、1μm以上10μm以下である請求項1から3いずれか1項記載の圧電素子。
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