JP2017160517A - 窒化鋼部材及び窒化鋼部材の製造方法 - Google Patents
窒化鋼部材及び窒化鋼部材の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2017160517A JP2017160517A JP2016048554A JP2016048554A JP2017160517A JP 2017160517 A JP2017160517 A JP 2017160517A JP 2016048554 A JP2016048554 A JP 2016048554A JP 2016048554 A JP2016048554 A JP 2016048554A JP 2017160517 A JP2017160517 A JP 2017160517A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- phase
- compound layer
- nitriding
- steel member
- nitrided
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Landscapes
- Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
Abstract
Description
CLT÷DLT≧0.04 ・・・(1)
KN1<KN2〜KNx-1、KN2〜KNx-1>KNx ・・・(2)
126.7034−5.68797×10-1×T+8.64682×10-4×T2−4.43596×10-7×T3>KN1
・・・(3)
126.7034−5.68797×10-1×T+8.64682×10-4×T2−4.43596×10-7×T3>KNx>22.2265−1.15×10-1×T+2.03×10-4×T2−1.21466×10-7×T3 ・・・(4)
(ただし、pNH3、pH2は、窒化処理炉内のNH3分圧とH2分圧であり、式(3)と式(4)中の、Tは温度[℃]である。)
<炭素(C)>
Cは、窒化部品の強度確保のために必須の元素であるといえ、0.05%以上の含有量が必要である。一方、Cの含有量が多くなって0.5%を超えると、窒化前の硬さが高くなって被削性の低下をきたすため、Cの含有量は、0.05〜0.5%であることが好ましい。
Siは、脱酸作用を有する。この効果を得るには、0.10%以上のSi含有量が必要である。しかし、Siの含有量が多くなって0.90%を超えると、窒化前の硬さが高くなって被削性が低下するので好ましくない。したがって、Siの含有量は、0.10〜0.90%であることが好ましい。
Mnは、脱酸作用を有する。この効果を得るには、0.3%以上のMn含有量が必要である。しかし、Mnの含有量が多くなって1.65%を超えると、窒化前の硬さが高くなりすぎて被削性が低下するので好ましくない。したがって、Mnの含有量を0.3〜1.65%であることが好ましい。
Niは必ずしも含有していなくてもよい。ただし、Niは、焼入れ性と靱性の向上に資する成分であるので、この観点から含有させてもよい。しかし、あまり多く含有させても、上記効果は飽和に達するのみで徒にコストアップを招くだけではなく、被削性の低下も引き起こすので、好ましくない。したがって、その含有量は2.10%以下に制限することが好ましい。
Crは必ずしも含有していなくてもよい。ただし、Crの含有量が多くなって2.7%を超えると、窒化化合物層の厚さが低下して、本発明を構成するγ’相主体の化合物層の効果が十分に得られなくなる。したがって、Crの含有量は0〜2.7%であることが好ましい。
Moは必ずしも含有していなくてもよい。ただし、Moは、窒化温度で、鋼中のCと結合して炭化物を形成し、窒化後の芯部硬さの向上作用をもたらし、機械部品によっては必要となる元素である。しかし、Moの含有量が多くなって0.50%を超えると、原料コストが高くなるだけでなく、窒化前の硬さが高くなって被削性が低下するので好ましくない。したがって、Moの含有量は0.50%以下であることが好ましい。
Vは必ずしも含有していなくてもよい。ただし、Vを含有させると、Moと同じく、窒化温度で鋼中のCと結合して炭化物を形成し、窒化後の芯部硬さを向上させる作用を有し、また、窒化時に表面から侵入・拡散するNやCと結合して窒化物や炭窒化物を形成し、表面硬さを向上させる作用も有し、場合によっては必要となる元素である。しかし、Vの含有量が多くなって0.40%を超えると、窒化前の硬さが高くなりすぎて被削性が低下するばかりか、熱間鍛造やその後の焼準でマトリックス中にVが固溶しなくなるため、前記の効果が飽和する。したがって、Vの含有量は0〜0.40%であることが好ましい。
Alは必ずしも含有していなくてもよい。ただし、Alの含有量が多くなって1.1%を超えると、窒化化合物層の形成量が低下して、本発明のγ’相主体の化合物層の効果が十分に得られなくなる。したがって、Alの含有量は0〜1.1%であることが好ましい。
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる作用がある。しかし、Sの含有量が0.030%を超えると、粗大なMnSを形成して、熱間鍛造性および曲げ疲労強度が低下する。そのため、Sの含有量は0.002〜0.030%であることが好ましい。より安定して被削性を確保するためには、Sの含有量は0.010%以上であることが好ましい。また、熱間鍛造性および曲げ疲労強度がより重視される用途に適用する部材の場合には、Sの含有量は0.025%以下であることが好ましい。
Pは、鋼に含有される不純物であり、結晶粒界に偏析して鋼を脆化させ、特に、その含有量が0.030%を超えると、脆化の程度が著しくなる場合がある。したがって、本発明においては、不純物中のPの含有量が0.030%以下であることを必要とする。なお、不純物中のPの含有量は0.020%以下であることが好ましい。
本発明で用いる鋼部材は、上記に挙げた各元素の他、残部がFe及びその他の不純物からなる化学組成を有するものである。なお、残部としての「Feおよび不純物」とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石から不可避的に混入する、例えば、銅(Cu)やチタン(Ti)、または、製造環境から不可避的に混入する、例えば、O(酸素)などのFe以外の成分を含むことを意味している。
本発明の窒化鋼部材の特徴は、γ’相主体化合物層が生成する上記に挙げたような鋼材成分からなる鋼部材の表面に、下記の特有の構成の鉄窒素化合物層が形成されていることにある。すなわち、本発明の窒化鋼部材を特徴づける鉄窒素化合物層は、該層中に占めるγ’相とε相の体積割合Vγ’とVεとの関係が、Vγ’/(Vγ’+Vε)で規定される比で表した場合に、その値が0.7以上(γ’相の存在割合が0.7以上)であり、このγ’相主体化合物層の厚さが、13μm〜30μmであり、さらに、前記鉄窒素化合物層が下記式(1)の関係を満たすものであることを特徴とする。
CLT÷DLT≧0.04 ・・・(1)
(ただし、式(1)中のCLTは、ガス窒化処理後の化合物層の厚さ[μm]の値を表わし、DLTは、ガス窒化処理後の窒化拡散層の実用硬化深さ[μm]の値を表わす。)
以下、これらについて説明する。
本発明において、「鉄窒素化合物層」(窒素化合物層或いは単に化合物層とも呼ぶ場合がある)とは、ガス軟窒化処理によって形成された鋼部材表面のγ’相(Fe4N)やε相(Fe2-3N)に代表される鉄の窒素化合物からなる層をいう。ただし、鋼材には、母材に炭素を含有しており、この炭素分の一部が化合物層中にも含有されるため、厳密には炭窒化物である。窒素化合物層は、図7に示したように、表面に層状態として析出している。本発明では、鋼部材(母材)の表面に、これらγ’相、ε相からなる窒化化合物層が、厚さ13〜30μmの範囲で形成されている。なお、ここでいう厚みは、本発明でいうγ’相主体の化合物層の厚みを意味する。鋼部材の表面に鉄窒素化合物層が形成されてなる本発明の窒化鋼部材は、まず、窒素化合物層中に占めるγ’相とε相の体積割合Vγ’とVεの関係が、Vγ’/(Vγ’+Vε)で規定される比で0.7以上であることを要する。すなわち、本発明の窒化鋼部材では、厚みの厚い鉄窒素化合物層を、このようにγ’相を高いレベルで含む構成のγ’相を主体とするものにできたことで、疲労強度や耐摩耗性がより改善される。
上記構成を有する本発明の窒化鋼部材が、疲労強度や耐摩耗性に優れる理由は、次のように考えられる。γ’相の結晶構造はFCC(面心立方晶)であり、12個のすべり系を有するため、結晶構造自体が靭性に富んでいる。さらに、γ’相の結晶構造は微細な等軸組織を形成するため、疲労強度が向上すると考えられる。これに対し、ε相の結晶構造はHCP(六方最密充填)であり、底面すべりが優先されるため、結晶構造自体に「変形しにくく脆い」という性質があると考えられる。このため、本発明の窒化鋼部材では、化合物層を、本発明で規定するγ’相を主体とする構成としたことで、窒化鋼部材の疲労強度が改善できたものと考えられる。
本発明の窒化鋼部材の表面に形成された鉄窒素化合物層は、上記したように、鉄窒素化合物層中に占めるγ’相とε相の体積割合Vγ’とVεの関係が、Vγ’/(Vγ’+Vε)で規定される比で0.7以上であることを要するとしたが、このように規定したのは下記の理由による。前述の通り「窒素化合物層」は、上記したような特性を有するε相(Fe2-3N)やγ’相(Fe4N)等からなる層であるが、化合物層中におけるこれらの相の分布状態は、EBSD(Electron BackScatter Diffraction)によって、化合物層の深さ方向断面のγ’相とε相の相分布解析を、幅100μm×3視野で行った結果(体積比率)から判定する。本発明者らの検討によれば、この体積比率が0.7以上であれば、窒化鋼部材の疲労強度が優れたものとなる。前記体積比率は0.8以上が好ましく、さらには0.9以上であることがより好ましい。本発明の技術的特徴は、γ’相を体積比率が0.7以上という高いレベルで含む構成のγ’相を主体とする鉄窒素化合物層を、下記に述べるように、従来技術において達成できていなかった厚みのものにできたことにある。この結果、このような鉄窒素化合物層が表面に形成された窒化鋼部材は、疲労強度と耐摩耗性により優れた、従来にない特性を示すものとなる。
本発明では、窒化鋼部材の表面に形成された上記したγ’相を高いレベルで含む鉄窒素化合物層の厚みが、13〜30μmであることを規定した。以下、この点について説明する。回転曲げ疲労強度は、化合物層厚さが厚いほど高くなる傾向があるため、化合物層は厚い方が有利である。これに対し、従来の2段ガス窒化法では、先に述べた通り、従来の1段でのガス窒化法に比べて短時間で化合物層の厚みを厚くできるものの、γ’相の体積比率を向上させることができず、1段での従来の処理方法によって形成したγ’相主体の10μm厚の化合物層とほぼ同等程度の回転曲げ疲労強度のものとすることしかできなかった。一方、従来の低KNによる1段でのガス窒化処理では、通常、数μm〜10μm程度の化合物層厚さのものしか得られない。この化合物層厚さは、鋼種や窒化条件に依存するため、これらの点を工夫すれば厚くできるが、その場合でも、低KN域でのガス窒化処理で実用的に実現可能な最大厚さは炭素鋼レベルで13μm程度である。このように、従来技術においては、13μm以上の厚さで、且つ、γ’相比率が0.7以上である、γ’相の体積比率を高めた厚みの厚い化合物層は得られていないことから、本発明で提供する窒化鋼部材の表面に形成された化合物層の厚みの下限値を13μmと規定した。一方、厚みの上限値については、2段窒化法において実用的な窒化時間で、化合物層が最も厚くなりやすい炭素鋼のような鋼種で到達できる点を勘案して、化合物層の厚みの上限値を30μmと規定した。
上記した従来技術では達成できていなかった構成の化合物層を有する本発明の窒化鋼部材は、本発明の窒化鋼部材の製造方法によって安定して得ることができる。本発明の窒化鋼部材の製造方法では、最終の炉内の窒化ポテンシャルKNxでの窒化時間を5〜60分と規定した。以下、この点について説明する。本発明の窒化鋼部材の製造方法で規定しているK1〜KNx-1はε相を含む領域であるが、このとき形成されたε相は、KNxへ雰囲気を変えることでγ’相へ変態する。このときの変態速度は、化合物層中の窒素が雰囲気へ脱窒する速度に律速される。本発明者らの検討によれば、化合物層内部まで十分なγ’相を得るのに必要になるKNxで制御して窒化する保持時間は、温度に応じて変わる。例えば、580℃であれば5分〜20分と保持時間が短くて済むが、500℃の温度では20分〜60分を要する。また、上記保持時間が短いと十分なγ’相が得られない傾向があり、逆に長くなるとγ’相の結晶粒が大きくなる場合があり、その場合には機械的特性の低下を生じる。しがたって、本発明の窒化鋼部材の製造方法では、580℃以上で、短時間でも十分なγ’相が得られる上記保持時間として、その下限値を5分と規定した。また、KNxで制御して窒化する保持時間の上限値については、実用窒化温度の下限値である500℃で十分なγ’相が得られる60分と規定した。より好ましくは、5〜30分程度である。上記した範囲内であれば、保持時間を短くできる580℃以上の窒化温度でも、γ’相中の結晶粒が大きくなることがなく、耐摩耗性などの機械特性を低下させるおそれもない。
CLT÷DLT≧0.04 ・・・(1)
(ただし、式(1)中のCLTは、ガス窒化処理後の化合物層の厚さ[μm]の値を表わし、DLTは、ガス窒化処理後の窒化拡散層の実用硬化深さ[μm]の値を表わす。)
本発明の窒化鋼部材の製造方法は、上記した構成の窒化鋼部材を得るためのものであるが、処理炉内の被処理材に対して、炉内に窒化性ガスを流しながら加熱処理するガス窒化処理する際の処理条件を、下記のように規定したことを特徴とする。すなわち、本発明の窒化鋼部材の製造方法では、ガス窒化処理中雰囲気の窒化ポテンシャルKN=pNH3/pH2 1.5を、最初にKN1とし、続いて窒化ポテンシャルをKN2〜KNx-1、KNxとしてもよいが、最初のKN1は、式(2)と式(3)を同時に満たすことを要する。さらに、最終のKNxは、式(2)と式(4)を同時に満たし、且つ、これらの要件を満たすように制御した最終のKNxでの窒化時間を5〜60分とすることを要する。
KN1<KN2〜KNx-1、KN2〜KNx-1>KNx ・・・(2)
126.7034−5.68797×10-1×T+8.64682×10-4×T2−4.43596×10-7×T3>KN1
・・・(3)
126.7034−5.68797×10-1×T+8.64682×10-4×T2−4.43596×10-7×T3>KNx>22.2265−1.15×10-1×T+2.03×10-4×T2−1.21466×10-7×T3 ・・・(4)
(ただし、pNH3、pH2は、窒化処理炉内のNH3分圧とH2分圧であり、式(3)と式(4)中の、Tは温度[℃]である。)
窒化ポテンシャルKNは、KN=pNH3/pH2 1.5(pNH3,pH2は炉内のアンモニアと水素分圧)で規定されるパラメータであり、例えば、アンモニアやアンモニア分解ガスを用いた場合の演算式は、非特許文献(ディータ・リートケほか著、「鉄の窒化と軟窒化」、アグネ技術センター2013年発行、131ページ)に記載されている。なお、N2ガスなどアンモニアやアンモニア分解ガス以外の複数種のガスを用いる場合も、非特許文献(H.Du、M.A.J.Somers、J.Agren:METALLUGICAL AND MATERIALS TRANSACTIONS A, 31A,200,195−211頁)に記載されている。本発明は、これら従来の演算手法に基づいて計算されたKN値で規定されたものである。
ピット炉の概略図を図2に示し、ピット炉での処理条件の例を図3に示した。図2に示したように、炉内のKNを制御するために、H2センサ21とPLC+KN調整器22、また、各プロセスガスには、それぞれ質量流量計(MFC)23が設定してある。そして、ガス窒化処理の対象となる処理品24は、予め炉内中央に設置して炉内に封入し、炉内を真空に引いた後、N2ガスで炉内を復圧し、その後、一定流量のN2ガスを炉内に流しながら加熱を始める。加熱は、外周に設定されているヒーター(不図示)でレトルト25を外側から加熱し、温度調整は、炉内熱電対26で測定された温度を元に、所望の温度まで温調計により調整される。図2中の27は、撹拌機である。
ストレートスルータイプバッチ炉の概略図を図4に示し、バッチ炉での処理条件の例を図5に示した。図4に示したように、炉内のKNを制御するために、H2センサ41とPLC+KN調整器42、また、各プロセスガスには質量流量計(MFC)43が設定してある点はピット炉と同様である。バッチ炉の場合は、処理品44は予めNH3ガス雰囲気で580℃に加熱された炉内へ扉48を開けることで、炉内へ挿入される。上記した構成のバッチ炉で処理する場合は、例えば、図5に示したように、炉内へ処理品44が挿入された後、プロセスガスをNH3+AXガスへ切替え、所望のKN値(=KN1)になるよう雰囲気制御を始める。先述したピット炉と同様に、最初KN1、次にKN2でガス窒化処理を行った後、雰囲気をKNxへ変更し20分保持することで、先述したピット炉での処理と同様に、本発明で規定した、厚みが厚い、γ’相を高いレベルで含むγ’相が主体の窒化化合物層を形成することができる。図4中の46は熱電対、47は攪拌機、49は冷却槽である。
表2に、それぞれに対するガス窒化処理条件を示した。先に説明したバッチ型又はピット型の炉を用い、いずれも、ガス窒化処理中雰囲気の窒化ポテンシャルKNが、最初KN1、2段目KN2、最終KNxでそれぞれ異なる3段雰囲気処理で行った。実施例の1段目の窒化ポテンシャルKN1は、いずれも、それぞれの合金鋼におけるLehrer線図上〔図1は純鉄のもので、それとは異なる(平岡泰、渡邊陽一著、熱処理、55巻、1号、p.7、「ガス窒化における窒化ポテンシャル制御および熱力学計算手法を活用した低合金鋼の化合物層相構造制御」参照)〕において、α領域またはγ’相領域で実施しており、この間に表面からの脱炭を促進すると共に拡散層の成長を促す。続いて2段目の窒化ポテンシャルKN2はε相か或いはε+γ’の2相域で実施し、この間にε相の速い成長速度を利用した化合物層の厚膜化が行われる。3段目の窒化ポテンシャルKNxは、いずれもγ’相領域で実施し、形成する化合物層厚さや炉の特性に応じて、窒化時間を15〜50分の間で設定した。
(1)小野式回転曲げ疲労試験
図6に示した形状の切欠き試験片を用い、実施例の条件でそれぞれガス窒化処理を施した後、小野式回転曲げ疲労試験(JIS Z 2274)を実施した。試験荷重は鋼材成分に応じて、40kgf又は55kgfの2水準のうちいずれかを選択し、また、回転数は3000rpm共通として実施した。試験結果の評価は、107回転を迎えた場合を合格で○とし、そうでない場合は不合格で×として評価した。
φ20×5mmのコイン状の試験片を用い、実施例の条件でそれぞれガス窒化処理を行い、ガス窒化処理後の試験片の平面部を平面部と垂直に切断し、JIS−0562に従い断面の化合物層の厚さを測定した。
窒化処理を施した鋼材について、断面を機械的に鏡面研磨した後、走査型電子顕微鏡(FEI社製Sirion)に装着された後方散乱電子回折(EBSD)装置(Oxford Instruments社製、Inca Crystal)を用いて、Phase Mapの測定を行った。Phase Mapは、実測された電子回折図形と候補となる相の電子回折図形をマッチングして判定した相を色分けしたものである。図7に、γ’相主体の化合物層とε相主体の化合物層を有するEBSD解析結果の例を示した。図7の上段は、γ’相主体化合物層の顕微鏡写真であり、下段はε相主体化合物層の顕微鏡写真である。それぞれの右欄は、Phase Mapであり、灰色に色分けされた部分がγ’相の部分である。本発明では、このPhase Mapを用い、Vγ’/(Vγ’+Vε)で規定される比を求め、これによって、鉄窒素化合物層中に占めるγ’相とε相との存在割合を比較した。
比較例1〜3では、表2に示したように、それぞれ実施例1、5、9で用いたと同様の鋼材を用い、従来の技術と同様にγ’相領域となる低KN(=0.25)における1段のみのガス窒化処理を行い、得られた窒化鋼材について実施例と同様の試験をした。その結果、表3に示したように、比較例1〜3のいずれの場合も、本発明で規定する化合物層厚さ13μm以上を満たさなかったため、回転曲げ疲労強度の結果は不合格であった。
比較例4〜6では、それぞれ実施例3、5、7で用いたと同様の鋼材を用い、従来技術である2段窒化処理を行った。その結果、表3に示したように、厚みの厚い化合物層を形成できたものの、化合物層中に占めるγ’相の体積比率が5割程度と、本発明で規定するレベルに達していなかったため、回転曲げ疲労強度の結果は不合格であった。
比較例7〜9では、それぞれ実施例3、5、7で用いたと同様の鋼材を用いた。そして、KNを従来の技術でγ’相を形成する0.25にとり、いずれも1段で処理した。そして、化合物層厚さを本発明で規定した13μm以上と厚くするために、比較例7、8では窒化時間を長時間側へ、比較例9では窒化温度を高くして時間を短くしてガス窒化処理を実施した。その結果、表3に示したように、得られた窒化鋼材の鉄窒素化合物層の厚みは本発明で規定した13μm以上を満たすものになったが、本発明で規定した式(1)を満足するものにはならなかった。得られた窒化鋼材について実施例と同様の試験をした結果、表3に示したように、いずれも疲労強度が不合格(55kgf)であった。
Claims (3)
- γ’相主体の化合物層が生成する鋼材成分からなる鋼部材の表面に鉄窒素化合物層が形成されてなる窒化鋼部材であって、
前記鉄窒素化合物層中に占めるγ’相とε相の体積割合をVγ’とVεとし、γ’相の存在割合をVγ’/(Vγ’+Vε)で規定される比で表した場合に、その値が0.7以上であるγ’相主体の化合物層の厚さが13μm〜30μmであり、且つ、前記鉄窒素化合物層は、ガス窒化処理後の化合物層の厚さ[μm]の値をCLTと表し、ガス窒化処理後の窒化拡散層の実用硬化深さ[μm]の値をDLTと表した場合に、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする窒化鋼部材。
CLT÷DLT≧0.04 ・・・(1) - ガス窒化処理炉内の窒化ポテンシャル(KN)を調整しながら、前記炉内の被処理材にガス窒化処理を行って、請求項1に記載の窒化鋼部材を製造するための製造方法であって、
ガス窒化処理中雰囲気の窒化ポテンシャルKN=pNH3/pH2 1.5を、最初にKN1とし、続いて窒化ポテンシャルをKN2〜KNx-1、KNxとしてもよいが、最初のKN1は、式(2)と式(3)を同時に満たし、最終のKNxは、式(2)と式(4)を同時に満たし、且つ、これらの要件を満たすように制御した最終のKNxでの窒化時間を5〜60分とすることを特徴とする窒化鋼部材の製造方法。
KN1<KN2〜KNx-1、KN2〜KNx-1>KNx ・・・(2)
126.7034−5.68797×10-1×T+8.64682×10-4×T2−4.43596×10-7×T3>KN1
・・・(3)
126.7034−5.68797×10-1×T+8.64682×10-4×T2−4.43596×10-7×T3>KNx>22.2265−1.15×10-1×T+2.03×10-4×T2−1.21466×10-7×T3 ・・・(4)
(ただし、pNH3、pH2は、窒化処理炉内のNH3分圧とH2分圧であり、式(3)と式(4)中の、Tは温度[℃]である。) - 前記KN1が、0.05〜0.5であり、且つ、前記KNxが、0.15〜0.5である請求項2に記載の窒化鋼部材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016048554A JP6755106B2 (ja) | 2016-03-11 | 2016-03-11 | 窒化鋼部材及び窒化鋼部材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016048554A JP6755106B2 (ja) | 2016-03-11 | 2016-03-11 | 窒化鋼部材及び窒化鋼部材の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017160517A true JP2017160517A (ja) | 2017-09-14 |
JP6755106B2 JP6755106B2 (ja) | 2020-09-16 |
Family
ID=59853907
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016048554A Active JP6755106B2 (ja) | 2016-03-11 | 2016-03-11 | 窒化鋼部材及び窒化鋼部材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6755106B2 (ja) |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2019098340A1 (ja) * | 2017-11-16 | 2019-05-23 | 日本製鉄株式会社 | 窒化処理部品 |
CN110374192A (zh) * | 2019-08-02 | 2019-10-25 | 上海理工大学 | 正交胶合木组合高层木建筑结构 |
JP2021120471A (ja) * | 2018-04-26 | 2021-08-19 | パーカー熱処理工業株式会社 | 窒化鋼部材並びに窒化鋼部材の製造方法及び製造装置 |
WO2022210878A1 (ja) * | 2021-03-31 | 2022-10-06 | パーカー熱処理工業株式会社 | 鋼部材の窒化処理方法 |
EP4296383A4 (en) * | 2021-02-17 | 2023-12-27 | Parker Netsushori Kogyo Co., Ltd. | NITRIDING PROCESS FOR STEEL ELEMENT |
JP7434018B2 (ja) | 2019-03-29 | 2024-02-20 | Dowaサーモテック株式会社 | 鋼部材の窒化処理方法 |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002241922A (ja) * | 2001-02-21 | 2002-08-28 | Yanmar Diesel Engine Co Ltd | 燃料噴射弁体およびそのガス窒化処理方法 |
WO2012115135A1 (ja) * | 2011-02-23 | 2012-08-30 | Dowaサーモテック株式会社 | 窒化鋼部材およびその製造方法 |
WO2014136307A1 (ja) * | 2013-03-08 | 2014-09-12 | 新日鐵住金株式会社 | 高周波焼入れ部品の素形材及びその製造方法 |
-
2016
- 2016-03-11 JP JP2016048554A patent/JP6755106B2/ja active Active
Patent Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002241922A (ja) * | 2001-02-21 | 2002-08-28 | Yanmar Diesel Engine Co Ltd | 燃料噴射弁体およびそのガス窒化処理方法 |
WO2012115135A1 (ja) * | 2011-02-23 | 2012-08-30 | Dowaサーモテック株式会社 | 窒化鋼部材およびその製造方法 |
WO2014136307A1 (ja) * | 2013-03-08 | 2014-09-12 | 新日鐵住金株式会社 | 高周波焼入れ部品の素形材及びその製造方法 |
Non-Patent Citations (1)
Title |
---|
梅田孝彰、宮部一夫: " 窒化ポテンシャル制御を適用した窒化処理の生産技術開発", KOMATSU TECHNICAL REPORT, vol. 60, no. 167, JPN6019029247, 2014, JP, pages 17 - 23, ISSN: 0004288028 * |
Cited By (12)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2019098340A1 (ja) * | 2017-11-16 | 2019-05-23 | 日本製鉄株式会社 | 窒化処理部品 |
CN111406123A (zh) * | 2017-11-16 | 2020-07-10 | 日本制铁株式会社 | 氮化处理部件 |
JPWO2019098340A1 (ja) * | 2017-11-16 | 2020-12-03 | 日本製鉄株式会社 | 窒化処理部品 |
CN111406123B (zh) * | 2017-11-16 | 2021-11-26 | 日本制铁株式会社 | 氮化处理部件 |
US11371132B2 (en) | 2017-11-16 | 2022-06-28 | Nippon Steel Corporation | Nitrided part |
JP2021120471A (ja) * | 2018-04-26 | 2021-08-19 | パーカー熱処理工業株式会社 | 窒化鋼部材並びに窒化鋼部材の製造方法及び製造装置 |
JP7094540B2 (ja) | 2018-04-26 | 2022-07-04 | パーカー熱処理工業株式会社 | 窒化鋼部材並びに窒化鋼部材の製造方法及び製造装置 |
JP7434018B2 (ja) | 2019-03-29 | 2024-02-20 | Dowaサーモテック株式会社 | 鋼部材の窒化処理方法 |
CN110374192A (zh) * | 2019-08-02 | 2019-10-25 | 上海理工大学 | 正交胶合木组合高层木建筑结构 |
EP4296383A4 (en) * | 2021-02-17 | 2023-12-27 | Parker Netsushori Kogyo Co., Ltd. | NITRIDING PROCESS FOR STEEL ELEMENT |
WO2022210878A1 (ja) * | 2021-03-31 | 2022-10-06 | パーカー熱処理工業株式会社 | 鋼部材の窒化処理方法 |
TWI833179B (zh) * | 2021-03-31 | 2024-02-21 | 日商帕卡熱處理工業股份有限公司 | 鋼構件之氮化處理方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP6755106B2 (ja) | 2020-09-16 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6755106B2 (ja) | 窒化鋼部材及び窒化鋼部材の製造方法 | |
JP6636829B2 (ja) | 窒化鋼部材及び窒化鋼部材の製造方法 | |
JP5994924B2 (ja) | 高周波焼入れ部品の素形材及びその製造方法 | |
JP5123335B2 (ja) | クランクシャフトおよびその製造方法 | |
WO2010064617A1 (ja) | 浸炭窒化部材および浸炭窒化部材の製造方法 | |
JP5449626B1 (ja) | 軟窒化用鋼およびこの鋼を素材とする軟窒化部品 | |
KR101726251B1 (ko) | 연질화용 강 및 연질화 부품 그리고 이들의 제조 방법 | |
JP2010163689A (ja) | オイルテンパー線とその製造方法、及びばね | |
JP6589708B2 (ja) | 浸炭窒化部品 | |
JP2012036495A (ja) | 窒化処理機械部品の製造方法 | |
JP6520347B2 (ja) | 高周波焼入れ部品の素形材、高周波焼入れ部品、及びそれらの製造方法 | |
JP2017171951A (ja) | 鋼部品及びその製造方法 | |
JP4962695B2 (ja) | 軟窒化用鋼及び軟窒化部品の製造方法 | |
JP2010189697A (ja) | クランクシャフトおよびその製造方法 | |
JPH0790363A (ja) | 機械的強度に優れた機械構造部品の製造方法 | |
JP7013833B2 (ja) | 浸炭部品 | |
JP2021113338A (ja) | 鋼部品及びその製造方法 | |
WO2016182013A1 (ja) | 窒化鋼部材及び窒化鋼部材の製造方法 | |
JP7063070B2 (ja) | 浸炭部品 | |
CN109415789B (zh) | Cvt滑轮用钢材、cvt滑轮以及cvt滑轮的制造方法 | |
JP2021167451A (ja) | 肌焼鋼、並びに、高強度部材及びその製造方法 | |
JP7063071B2 (ja) | 浸炭部品 | |
JP6881497B2 (ja) | 部品およびその製造方法 | |
JP6881498B2 (ja) | 部品およびその製造方法 | |
JP2019049032A (ja) | 浸窒処理用鋼材 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20181217 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20191002 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20191008 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20191205 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20200207 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20200623 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20200714 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20200818 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20200825 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6755106 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |