JP2017160279A - 手袋用エラストマー組成物及び強度、剛性に優れた薄手手袋 - Google Patents

手袋用エラストマー組成物及び強度、剛性に優れた薄手手袋 Download PDF

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Abstract

【課題】 改善された引張強度・剛性を備えた硫黄系加硫促進剤及び硫黄架橋剤を含まない薄手の手袋及び該手袋製造用の組成物を提供する。
【課題手段】 本発明のカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーは、エラストマー重量の20〜35重量%のアクリロニトリル残基、3〜8重量%の不飽和カルボン酸残基、及び52〜76.9重量%のブタジエン残基及び残余の非硫黄架橋構造を形成する0.1〜5.0重量%の架橋性化合物を含むカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーであって、該アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物について、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのムーニー粘度(ML(1+4)(100℃))が100〜220であり、エラストマーエマルジョン中の固形物の燃焼ガスの中和滴定法により検出される硫黄元素の含有量が該エラストマー重量の1重量%以下であり、高分子ゲル成分として、テトラヒドロフラン(THF)不溶成分の含有量が当該エマルジョン組成物の全固形分量の65〜90重量%である。
【選択図】なし

Description

本発明は、手袋用エラストマー組成物及び該エラストマー組成物から製造される強度、剛性に優れた薄手手袋に関する。特に、手袋用エラストマー組成物であって、特定の溶剤不溶成分を含有するエラストマー組成物、及び該手袋用エラストマー組成物から製造され、強度、剛性等の機械的特性に優れた薄手手袋に関する。
特開2007−153948号公報(特許文献1)には、手袋製造用のディップ組成物として、加硫促進剤を使用しないアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのラテックス組成物から製造されるディップ成形品の引張強度、伸び等の物性を確保するため、NBR−共重合体ラテックスの分子量とゲル量を規定することが記載されている。具体的には、共重合体ラテックスのフィルムをメチルエチルケトン(MEK)に溶解後に、濾過し、金網に捕捉されたメチルエチルケトン不溶分をゲル含有量として測定することが開示されている。
また、特開2007−177091号公報(特許文献2)には、酸変性ニトリルゴムラテックスのテトラヒドロフラン(THF)可溶分について、重量平均分子量を測定することが記載されている。 酸変性ニトリルゴムラテックスの乾燥フィルムのメチルエチルケトン不溶分含有量が50〜90重量%、かつ、該不溶分のメチルエチルケトン膨潤度が3〜15であるディップ成形用組成物から得られる手袋は、引張強度、伸び、引張応力(300%)などの十分な機械特性と優れた耐久性を有することが開示されている。
一方、例えば、特開平5−247266号公報(特許文献3)には、メチルエチルケトン不溶解分を50重量%以上になるとディップ成形物の風合いが硬くなることは知られている。国際公開WO/2001/053388号(特許文献4)には、メチルエチルケトン不溶解分が50重量%未満であって、硫黄を2〜6重量部含有するディップ成形用組成物から、厚み0.1〜0.3mm程度の薄手の手袋が得られることが開示されている。
特開2007−153948号公報 特開2007−177091号公報 特開平5−247266号公報 国際公開WO/2001/053388号 国際公開WO/2011/068394号 特開2010−144163号公報
本出願人の国際公開WO/2011/068394号(特許文献5)のエマルジョン組成物において、粘度特性が、ディップ成形品として得られる手袋の引張特性と相関があることを見出し、100℃におけるムーニー粘度の範囲として100〜220を規定している(国際公開WO2012/043894号参照)。構造単位としてアクリロニトリル、ブタジエン、及び不飽和カルボン酸を分子鎖に含むカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーにおいて、アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子内の不飽和カルボン酸の末端基と、他の不飽和カルボン酸の反応性末端基とを結合させるとともに(第一の架橋)、第一の架橋において未反応(フリー)のアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の不飽和カルボン酸の末端基と、他のアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の不飽和カルボン酸の末端基を、硫黄系加硫促進剤及び硫黄架橋剤を用いることなく、二価金属化合物、例えば酸化亜鉛等の二価金属イオンを介してイオン結合による架橋を形成し(第二の架橋)、これらの二つの架橋手段により、薄く、柔軟性(500%伸び時の引張応力)があり、破断時の引張強度、伸び等の十分な機械的特性を備えた手袋が得られていた。カルボン酸変性アクリロニトリル共重合体を用いて、グリシジル基やビニル基等の複数の架橋性官能基を含む化合物により架橋結合が形成されたカルボン酸変性アクリロニトリル共重合体エラストマーでは、分子間の架橋密度を増加させてエラストマー分子の網目構造を発現することが難しく、製品手袋の引張強度等の機械的特性及び耐薬品性に劣るものであった(例えば、特開2010−144163号公報参照)。
不飽和カルボン酸を含むアクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸の末端基を他の不飽和カルボン酸の反応性末端基と結合させることにより強度のある架橋を形成する第一の課題について、アクリロニトリルブタジエンエラストマーに付加させた不飽和カルボン酸の末端基を、他の付加させた不飽和カルボン酸の末端基と反応させることにより、結合基を形成させることを提案した。第一段階の架橋では、カルボキシル基、メチロールアミド基、カルボキシル基とジアミンの反応生成物、及びカルボキシル基とアルキルジアミンの反応生成物、及びカルボキシル基とアルキルアルコールの反応生成物から選択される結合が用いられる。
第一段階の架橋とは別に、エラストマー組成物において、アクリロニトリルブタジエンエラストマーの未反応の不飽和カルボン酸の末端基と、他のアクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸の末端基を、架橋剤である硫黄及び加硫促進剤である硫黄化合物を用いることなく、イオン結合による架橋を形成する第二の課題について、アクリロニトリルブタジエンエラストマーの付加させた不飽和カルボン酸の末端基を、アクリロニトリルブタジエンエラストマーの付加させた不飽和カルボン酸の末端基と結合していない残余のアクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸のフリーな状態の末端基を介して2価金属塩によりイオン結合を形成することを提案した。第二段階の架橋では、2価金属イオンからなる架橋剤を含むエマルジョン中でのpH調整等の条件下で処理されると、残余のアクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸のフリーな状態として残されている末端基は、2価金属イオンを介して、他のアクリロニトリルブタジエンエラストマーのフリーな状態にある不飽和カルボン酸の末端基と結合して第二の架橋が形成される。
アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物及び手袋の動的粘弾性特性及び引張特性について以下の事象が認められている。
(1)ガラス転移温度Tgについては、損失正接tanδ(損失弾性率E”/貯蔵弾性率E’の比)の極大点で示され、ガラス転移温度Tgが高くなることは、例えば、不飽和カルボン酸の末端基の結合による分子内架橋により、分子鎖が剛直になるか、例えば、酸化亜鉛等の二価金属イオンを介した分子間架橋により、アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子のより強い絡み合いを意味することがわかった。
(2)架橋密度nについては、室温近傍におけるゴム状領域での貯蔵弾性率E’で示され、貯蔵弾性率E’が高くなれば、架橋密度nが増加すること、架橋点間の分子量が小さくなり、高分子鎖網が密になることがわかった。
(3)貯蔵弾性率E’について、高温度領域側での貯蔵弾性率E’の傾斜度が分子量の指標として知られており、貯蔵弾性率E’の傾斜(温度依存性)により、分子量(分子鎖長)が異なることがわかっている。
以上述べたように、実用上問題のない機械的特性(柔軟性、破断時の引張強度、伸び等)を備えた硫黄架橋剤・硫黄系加硫促進剤を使用しないニトリル手袋が得られており、すでに製品化されている。しかしながら、薄肉化など品質改善を図る上では、さらに良好な特性を達成することが求められている。一般的にアクリロニトリルブタジエンエラストマーの分子量を大きくすると強度が強くなることが知られていることから、本発明者らは、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーの重合度を高めて高分子化することにより引張強度を高めることを試みた。しかし、分子量の指標であるムーニー粘度は増加したにもかかわらず、強度は予想に反してむしろ低下する結果に終わった。原因は、高分子化により亜鉛イオンがエラストマー間に入り込みにくくなり、亜鉛イオンによる分子間架橋が不十分になったためと考えられる。そこで、本発明の課題は、ムーニー粘度が適正な範囲に調整されたカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーを用いた手袋製造用組成物、およびこれにより製造される破断時の引張強度、100%モジュラス等の機械的特性が改善された硫黄系加硫促進剤及び硫黄架橋剤を含まない薄手の手袋を提供することである。
本発明者らは、比較的重合度の低いカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンに、N−メチロールアクリルアミドなどの自己架橋性化合物に加えて、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸のカルボキシル基とエステル結合を形成するポリエチレングリコールを含むエチレングリコール類及びそれらの類似化合物架橋性化合物として導入することにより、適正範囲のムーニー粘度を有するとともに、溶媒として用いられているメチルエチルケトン(MEK)よりも溶解力の高いテトラヒドロフラン(THF)に対する不溶分として定義されるゲル成分の含有量が従来よりも高いエラストマーが得られ、これを用いることによって、破断時の引張強度、100%モジュラス等の機械的特性に優れる硫黄系加硫促進剤及び硫黄架橋剤を含まない薄手の手袋が得られことを見出し本発明に至った。自己架橋性化合物とは未反応の不飽和カルボン酸のカルボキシル基などの置換基がエチレングリコール類及びその類似化合物などのエステル結合により架橋結合されると、分岐構造を有するカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーは、ラダーポリマーのように分枝度が高い分子構造が達成される。自己架橋性化合物だけで第一段階の架橋が形成された直鎖状ポリマーと比較すれば、同じ分子量であっても、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子間の架橋密度も増大すると考えられる。つまり、分子量の指標であるムーニー粘度は、同じ分子量レベルであるから、適正な範囲に調整される一方、分岐度すなわち分子間の架橋密度が増大するにつれて、破断時の引張強度、100%モジュラス等の機械的特性が改善された。
本発明においては、鋭意検討の結果、不飽和カルボン酸の末端基の結合による分子内架橋が形成されたカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の分子間架橋の程度を示すテトラヒドロフラン(THF)不溶分、及び、分子内架橋及び分子間架橋には直接寄与しないアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子であって、不飽和カルボン酸の末端基の結合によるカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の分子内架橋の程度を表すアセトン可溶分を用いて規定される、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーの非硫黄架橋構造を形成する架橋性化合物によりカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーの分子内及び分子間の架橋結合を形成することにより、テトラヒドロフラン(THF)に対する不溶分として定義されるゲル成分の含有量とともに、エマルジョン組成物のムーニー粘度を適正範囲に調整可能であり、硫黄系加硫促進剤及び硫黄架橋剤を含まない薄手の均質な手袋を得ることができる。
不飽和カルボン酸を含むアクリロニトリルブタジエンエラストマーにおいて、アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子内の不飽和カルボン酸の末端基と、他の不飽和カルボン酸の末端基とを架橋性化合物により結合させるとともに(第一の架橋)、第一の架橋において未反応(フリー)のアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の不飽和カルボン酸の末端基と、他のアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の未反応の不飽和カルボン酸の末端基を、硫黄系加硫促進剤及び硫黄架橋剤を用いることなく、2価金属化合物、例えば酸化亜鉛等の2価金属イオンを介してイオン結合による架橋を形成し、あるいはポリエチレングリコール(PEG)を含むエチレングリコール類及びその類似化合物などの多官能エチレングリコール類により共有結合による架橋を形成し(第二の架橋)、これらの二つの架橋手段により架橋されたエラストマー組成物は、良好な動的粘弾性物性を備え、通常の手袋形成手段であるモールド又はフォーマの表面に付着させて架橋硬化させることにより、手袋の特性として、架橋剤である硫黄及び加硫促進剤である硫黄化合物を含まず、厚さが0.05〜0.15mmであり、手袋形成時の手袋膨潤比率が200〜400%であり、引張応力が25〜50MPa、破断時の伸びが400〜650%、伸び100%における引張応力2〜10MPaであるエラストマーからなる手袋が得られる。好ましくは、エラストマー手袋の特性として、手袋形成時の手袋膨潤比率が250〜330%であり、引張応力が35〜50MPa、破断時の伸びが400〜480%、伸び100%における引張応力(モジュラス)が4〜10MPaである。
本発明は、エラストマー重量の20〜35重量%のアクリロニトリル残基、3〜8重量%の不飽和カルボン酸残基、及び52〜76.9重量%のブタジエン残基及び残余の非硫黄架橋構造を形成する架橋性化合物0.1〜5.0重量%を含むカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーであって、該カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物について、100℃にて回転体を用いて測定されるカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのムーニー粘度(ML(1+4)(100℃))が100〜220であって、エラストマーエマルジョン中の固形物の燃焼ガスの中和滴定法により検出される硫黄元素の含有量が該エラストマー重量の1重量%以下であり、高分子ゲル成分として、テトラヒドロフラン(THF)不溶成分の含有量が当該エマルジョン組成物の全固形分量の65〜90重量%である前記カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーである。
前記カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーは、好ましくは、前記カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーにおける不飽和カルボン酸のカルボキシル化された官能基がカルボキシル基、メチロールアミド基、N−メチロールアクリルアミド基を含む化合物、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート(例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、2−ヒドロキシアルキルアクリレートの反応生成物からなる群、及びカルボキシル基とジアミンの反応生成物、カルボキシル基とアルキルジアミンの反応生成物、カルボキシル基とアルキルジアルコールの反応生成物、カルボキシル基とポリエチレングリコール(PEG)を含むエチレングリコール類及びその類似化合物などの多官能エチレングリコールの反応生成物からなる群から選択される一つの架橋性化合物またはこれらの架橋性化合物の組み合わせによるカルボキシル基の架橋結合または不飽和カルボン酸のエステル結合により架橋結合されているカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物である。前記カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸のカルボキシル化された官能基が前記架橋性化合物の結合により架橋結合されるとともに酸化亜鉛を介して架橋結合されているか、あるいは前記架橋性化合物のポリエチレングリコール(PEG)を含むエチレングリコール類及びその類似化合物などの多官能エチレングリコールおよび2価金属酸化物、例えば酸化亜鉛を介して架橋結合されてもよい。
カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物は、高分子量成分として、テトラヒドロフラン(THF)不溶成分の含有量が当該エマルジョン組成物の全固形分量の65〜90重量%、低分子量成分として、当該エマルジョン組成物中の固形分量に対するアセトン可溶成分の含有量が35重量%以下である。好ましくは、前記アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物は、低分子量成分として、当該エマルジョン組成物中の全固形分量に対するアセトン可溶成分の含有量が35重量%未満であり、中間分子量成分として、前記エマルジョン組成物中の全固形分量に対するアセトン不溶且つテトラヒドロフラン(THF)可溶成分の含有量が0.1〜5重量%である。
前記カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物に手袋成形型を浸漬し、当該成形型に付着した前記不溶成分を含有するカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物が架橋硬化したカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーから製造されるエラストマー手袋は、手袋の引張特性として、25MPa〜50MPaの引張強度、400%〜650%の破断伸び、100%伸びにおける引張応力2MPa〜10MPaのモジュラスを有する。
前記不飽和カルボン酸残基を含むカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーから製造される手袋は、非硫黄含有架橋構造の密度を示す架橋密度が1.4〜5.0×10−3mol/cm、好ましくは、1.5〜4.5×10−3mol/cmである。また、トルエン浸漬後の初期手袋重量に対する湿潤重量比を示すトルエン重量膨潤比率が240%〜400%である。
本発明によって、改善された引張強度・剛性を備えた硫黄計加硫促進剤及び硫黄架橋剤を含まない薄手の手袋及び該手袋製造用の組成物を得ることができる。適正な範囲のムーニー粘度を保ちつつ、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分の含有量を高めることが本発明の要点であるが、これが得られる理由は以下のように考えられる。カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸の末端基を形成する反応により分枝が発生するか、又はグラフト重合した後、不飽和カルボン酸(例えば、メタクリル酸)の付加反応によりカルボキシル化されている部分と、隣接するアクリロニトリルブタジエンエラストマーの一方の置換基部分又は他方の置換基部分に同様に付加反応して不飽和カルボン酸モノマーと2価金属イオン、例えば亜鉛イオンにより結合されると、直線状の分子鎖が形成される。しかし、例えばエチレングリコール類及びその類似化合物などのエステル結合により架橋結合されたラダーポリマーのように分枝度が高い分子構造では、直鎖状ポリマーと比較すれば、同じ分子量であっても、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子間の架橋密度も増大すると考えられる。従って、分子量の指標であるムーニー粘度は、同じ分子量レベルであるから、適正な範囲に調整される一方、分岐度すなわち分子間の架橋密度が増大するため、破断時の引張強度、100%モジュラス等の機械的特性が改善された硫黄系加硫促進剤及び硫黄架橋剤を含まない薄手の手袋が得られる。
本発明のエマルジョン組成物のH−NMRスペクトルの測定例を示す図である。 本発明のエマルジョン組成物の乾燥フィルムのFT−IR透過スペクトルの測定例を示す図である。 本発明のエマルジョン組成物のFT−IR吸収スペクトルの測定例を示す図である。 (a)は、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の不飽和カルボン酸の末端基がN−メチロールアクリルアミド同士のアミド結合により分子内架橋を形成することを示す模式図である。(b)は、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の不飽和カルボン酸の末端基がN−メチロールアクリルアミドとカルボキシル基の酸アミド結合により分子内架橋を形成することを示す模式図である。(c)は、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の不飽和カルボン酸の末端基がポリエチレングリコールとカルボキシル基のエステル結合により分子内架橋を形成することを示す模式図である。 本発明のエマルジョン組成物の動的粘弾性の測定例を示す図である。 は、本発明のエマルジョン組成物から得られるエラストマー手袋の動的粘弾性の測定例を示す図である。
不飽和カルボン酸を含むアクリロニトリルブタジエンエラストマーにおいて、アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子内の不飽和カルボン酸の末端基と、他の不飽和カルボン酸の末端基とを結合させるとともに(第一の架橋)、第一段階の架橋において未反応(フリー)のアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の不飽和カルボン酸の末端基と、他のアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の未反応の不飽和カルボン酸の末端基を、硫黄系加硫促進剤及び硫黄架橋剤を用いることなく、2価金属化合物、例えば酸化亜鉛等の2価金属イオンを介してイオン結合による架橋を形成し、あるいはポリエチレングリコール(PEG)を含むエチレングリコール類及びその類似化合物などの多官能エチレングリコール類により共有結合による架橋を形成し(第二の架橋)、これらの二つの架橋手段により架橋されたエラストマー組成物は、良好な動的粘弾性物性を備え、通常の手袋形成手段であるモールド又はフォーマの表面に付着させて架橋硬化させる。
不飽和カルボン酸が導入されたアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子において、アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子内の不飽和カルボン酸の末端基と、同一又は異なるアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子内の他の不飽和カルボン酸の末端基とを結合させること(第一の架橋)により、比較的高分子量にも拘わらず、固有のムーニー粘度範囲、引張特性、フィルム重量膨潤率及び動的粘弾性特性等、良好な特性が認められた。第一の架橋の架橋において未反応(フリー)のアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の不飽和カルボン酸の末端基と、他のアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の未反応の不飽和カルボン酸の末端基を、硫黄系加硫促進剤及び硫黄架橋剤を用いることなく、2価金属化合物の金属イオンを介してイオン結合による架橋を形成し、あるいはポリエチレングリコール(PEG)を含むエチレングリコール類及びその類似化合物などの多官能エチレングリコール類により共有結合による架橋を形成し(第二の架橋)、これらの二つの架橋手段により得られたエラストマー組成物は、手袋形成時に、薄く成形可能であり、手袋特性として十分な引張強度と伸びを備えていた。なお、ポリエチレングリコール(PEG)を含むエチレングリコール類及びその類似化合物ななどの多官能エチレングリコール類は、アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子内の不飽和カルボン酸の末端基と、同一又は異なるアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子内の他の不飽和カルボン酸の末端基とを結合させ、第一の架橋を形成することも可能である。
ここで、第一の架橋を、アクリロニトリルブタジエンエラストマーの分子内架橋と称し、第二の架橋を、1つのアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子と他のアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の分子間架橋(または粒子間架橋)と称する。通常、アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の分子内架橋が形成されて、前記不飽和カルボン酸(例えば、メタクリル酸)が付加されて隣接する一方のアクリロニトリルブタジエンエラストマー部は他方のアクリロニトリルブタジエンエラストマー部の活性化部分との間で分枝が生じたり、グラフト重合したりする状態を介して存在する場合には、これらのアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子が分子間架橋により結合されると、長分子鎖のアクリロニトリルブタジエンエラストマー高分子に成長し、剛直な分子鎖が形成される。
また、アクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸の末端基を形成する反応により分枝が発生するか、又はグラフト重合した後、不飽和カルボン酸(例えば、メタクリル酸)の付加反応によりカルボキシル化されている部分と、隣接するアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の一方のアクリロニトリルブタジエンエラストマー部分又は他方のアクリロニトリルブタジエンエラストマー部分に同様に付加反応して不飽和カルボン酸モノマーと2価金属イオン、例えば亜鉛イオンにより結合されると、剛直な分子鎖が形成され、アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子間の架橋密度も増大する。
本発明において、高分子ゲル成分を定量する溶剤として慣用されているメチルエチルケトン(MEK)よりも溶解度の高いテトラヒドロフラン(THF)に対する溶剤可溶成分を除いたTHF不溶分として定義される高分子ゲル成分の含有量を従来のゲル成分量よりも高くして、破断時の引張強度、剛性等の機械的特性に優れるとともに、適度な柔軟性を備えた硫黄系加硫促進剤及び硫黄架橋剤を含まない薄手の手袋が得られる。
前記アクリロニトリルブタジエンエラストマーは、不飽和カルボン酸の末端基の結合による分子内架橋において、不飽和カルボン酸(例えば、メタクリル酸)の付加反応によりカルボキシル化された部分と隣接するアクリロニトリルブタジエンエラストマーの一方又は他方のブタジエン部分に付加して不飽和カルボン酸の末端基が形成されると、例えば、酸化亜鉛等の2価金属イオンを介したイオン結合による分子間架橋により、架橋密度が増大し、アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子がより強く絡み合うことを意味する。しかし、アクリロニトリルブタジエン分子の不飽和カルボン酸の末端基を形成する反応により連鎖成長反応が停止した状態においては、隣接するアクリロニトリルブタジエン分子の一方又はさらに他方のブタジエン部分との間に2価金属イオンが結合して、イオン結合が形成されると、架橋密度が増加しても、連鎖成長反応が連続している状態と比較すれば、分子間架橋による架橋点間の分子量の増加は抑制される。
本発明において、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマー(以下、「XNBR」という)は、広く、ゴムの主鎖を構成するアクリロニトリルおよびブタジエン、少なくとも一種の不飽和カルボン酸、及び、所望により他の共重合性モノマー、を共重合させて得られるカルボキシル基を含むエラストマーを包含する。また、該カルボキシル基の一部は、誘導体化(例えばエステル、アミド等)されて架橋構造を形成していてよい。該XNBRとしては、テトラヒドロフラン(THF)溶媒に不溶成分のゲル成分量が、65〜90重量%である。該ゲル成分量が前記下限値未満では、薄手手袋にした際の強度が不足し、前記上限値を超えると成形不良が起こり、薄手手袋にした際の強度が不足する。
アクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸の末端基と他のアクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸の末端基との結合による分子内架橋が形成されたアクリロニトリルブタジエンエラストマーについて、未反応(フリー)のアクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸の末端基と他のアクリロニトリルブタジエンエラストマーの未反応の不飽和カルボン酸の末端基を、2価金属化合物の金属イオンを介してイオン結合した分子間架橋が形成された高分子ゲル成分量を示すテトラヒドロフラン(THF)不溶分、アクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸の末端基と他の不飽和カルボン酸の末端基との結合による分子内架橋が形成されたアクリロニトリルブタジエンエラストマーのアセトン可溶分、およびアセトン不溶かつテトラヒドロフラン可溶分(中間成分)を用いて、本発明の不飽和カルボン酸を含むアクリロニトリルブタジエンエラストマー成分を規定する。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸(以下「(メタ)アクリル酸」という)が使用され、好ましくはメタクリル酸が使用される。XNBRは、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、1、3−ブタジエン、及び、必要に応じて架橋構造等を形成するための他の不飽和モノマーを加えてもよい。
他の不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどのエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;及び酢酸ビニル等が挙げられる。
XNBRは、該XNBR重量の20〜35重量%、好ましくは23〜30重量%のアクリロニトリル残基を含む。XNBRは、該XNBR重量の3〜8重量%、好ましくは4〜7重量%の不飽和カルボン酸残基の量を含む。
該XNBR燃焼ガス吸収液の中和滴定法により検出される硫黄元素の含有量が、該XNBR重量の1.0重量%以下である。該定量方法は、XNBR試料0.01gを空気中、1350℃で10〜12分燃焼させて発生する燃焼ガスを、混合指示薬を加えたH2O2水に吸収させ、0.01NのNaOH水溶液で中和滴定する方法である。
アクリロニトリル残基が前記下限値未満では、強度に劣り、前記上限値を超えてはエラストマーの柔軟性が損なわれる傾向がある。不飽和カルボン酸残基の量が前記下限値未満では、後述するニ価イオンによる架橋形成が十分ではなく、前記上限値を超えると架橋形成が過多となり、最終製品であるゴム手袋の物性低下を導く。アクリロニトリル残基の量は、ニトリル基の量を元素分析により求められる窒素原子の量から換算して求めることができる。不飽和カルボン酸残基の量は、カルボキシル基、カルボキシル基由来のカルボニル基を赤外分光(IR)等によって定量することによって、求めることができる。
XNBRの残余は、ブタジエン残基と架橋構造である。ブタジエンとしては、1、3−ブタジエンが好ましい。また、ブタジエン残基の量は、ブタジエン残基、アクリロニトリル残基及び不飽和カルボン酸残基との合計に対して、52〜76.9重量%、好ましくは62〜74重量%、より好ましくは66〜72重量%である。ブタジエン残基の量が上記範囲内において、物性に優れた最終製品を得ることができる。
架橋構造は、非硫黄架橋構造であり、非硫黄架橋構造としては、例えば、有機過酸化物、オキシム等による主鎖間の架橋、酸無水物等のカルボキシル基間の架橋、カルボキシル基と反応性の基、例えばグリシジル基、を有する構成単位を主鎖に導入し、該基とカルボキシル基との反応による架橋等、が挙げられるが、これらの架橋構造に限定されない。
架橋構造は、自己架橋、即ち、別途架橋剤を加えずとも、例えば、水の蒸発あるいは加熱硬化することによって、形成される架橋であることが好ましい。このような自己架橋の例としては、メタクリル酸(MMA)とともに、n−メチロールアクリルアミド(NMAA)単位を導入し、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのカルボキシル化された官能基をn−メチロールアクリルアミド同士あるいはn−メチロールアクリルアミドとカルボキシル基で縮合させたもの、カルボキシル基の自動酸化によるもの、アセトアセトキシ基と不飽和結合のマイケル反応等が挙げられる。
また、架橋剤として、例えば、ポリエポキシド、ポリオール、ポリイミド、モノ及びポリカルボジイミド、ポリイソシアネート、ポリエチレングリコール類等を用いてカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸のカルボキシル化された官能基の架橋を行ってもよい。例えば、2−ヒドロキシアルキルアクリレート(メタクリレート);メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート等を用いてカルボキシル基間の架橋を行ってもよい。カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸のカルボキシル化された官能基とエステル結合を形成する反応物として、上記の自己架橋を形成するn−メチロールアクリルアミド、またはHEMA等に加えて、あるいは単独でポリエチレングリコールを含むエチレングリコール類及びその類似化合物としてエチレングリコール、エチレンオキサイド、またはポリオキシエチレン類のモノマーまたはオリゴマーを、メタクリル酸(MMA)の添加量3〜8重量%の概ね半分程度、1.5〜4重量%が加えることが好ましい。
XNBRは、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、1、3−ブタジエン、必要に応じて架橋構造等を形成するための上記の不飽和モノマー及び架橋剤を、定法に従い、通常用いられる、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等を使用した乳化重合によって、調製することができる。次いで、得られたポリマーを、加熱し、もしくは水を蒸発させる等して、非硫黄架橋工程に付する。但し、該工程は、後述する二価金属イオンによる架橋と同時に、もしくは、該二価イオンを介した架橋後の加熱工程で行ってもよい。
二価金属酸化物は、主として、XNBR中のカルボキシルされた官能基の間をイオン架橋するものである。該二価金属酸化物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の酸化物が挙げられ、酸化亜鉛が好ましい。該二価金属酸化物の含有量は、XNBRエラストマー100重量部に対して、0.5〜4.0重量部であり、好ましくは0.7〜3.0である。
乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエステル、等のカチオン性界面活性剤;及び両性界面活性剤が挙げられ、好ましくは、アニオン性界面活性剤が使用される。
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等を挙げることができる。
分子量調整剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素が挙げられ、t−ドデシルメルカプタン;n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類が好ましい。
得られるXNBRは、ムーニー粘度(ML(1+4)(100℃))が100〜220、好ましくは100〜200である。ムーニー粘度(ML(1+4)(100℃))が前記下限値未満では十分な強度を得ることが難しくなる。前記上限値はムーニー粘度の実際上の測定限界であり、これを超えるものは、粘度が高く成形加工が困難となる。更に、トルエン重量膨潤比率が、240〜400%、好ましくは250〜330%である。該膨潤比率が前記下限値未満では、架橋度が高く、手袋にした際の柔軟性が不足し、前記上限値を超えると強度不足する。
上記エラストマー組成物100phr、2価金属イオン及び架橋剤0.5〜4.0phrを含み、pHを9〜10に調整するためのpH調整剤0.1〜2.0phr、分散剤0.5〜2.0phr、及び水からなり、全固相物質(TSC)の濃度を18〜30重量%となるように添加することにより、該XNBRのエマルジョン組成物を調製することができる。
分散剤としては、アニオン界面活性剤が好ましく、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ポリリン酸エステル、高分子化アルキルアリールスルフォネート、高分子化スルホン化ナフタレン、高分子化ナフタレン/ホルムアルデヒド縮合重合体等が挙げられ、好ましくはスルホン酸塩が使用される。該分散剤には市販品を入手して使用することができる。例えば、TamolNN9104などを用いることができる。その使用量は0.5〜2.0phrである。
pH調整剤としては、通常、水酸化カリウムを用い、その使用量は、通常、組成物100重量部に対して0.1〜2.0重量部である。
上記各成分に加え、各種の添加剤を含むことができる。該添加剤としては、酸化防止剤、顔料等が挙げられる。酸化防止剤として、ヒンダードフェノールタイプの酸化防止剤例えば、WingstayLを用いることができる。また、顔料としては、例えば二酸化チタンが使用される。
適宜、連鎖移動剤、重合開始剤、キレート化剤等を添加してもよい。連鎖移動剤としては、t‐ドデシルメルカプタン等に代表されるメルカプタン類が挙げられる。重合開始剤としては、特に限定されないが過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。キレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等を使用することができる。
第一の架橋では、架橋剤及び加硫化促進剤として硫黄及び硫黄化合物を含まず、一部のアクリロニトリルブタジエンの不飽和カルボン酸に付加させた不飽和カルボン酸の末端基と他のアクリロニトリルブタジエンの不飽和カルボン酸に付加させた不飽和カルボン酸の末端基が結合して架橋されている。残余の不飽和カルボン酸の末端基は他のアクリロニトリルブタジエンの不飽和カルボン酸に付加させた不飽和カルボン酸の末端基が結合した架橋を形成するのではなく、フリーな状態の末端基として、第二の架橋において、2価金属イオン及び架橋剤を介して、フリーな状態にある他のアクリロニトリルブタジエンの不飽和カルボン酸に付加させた不飽和カルボン酸の末端基と結合して架橋を形成する。
本発明のエマルジョン組成物は、XNBRエラストマー成分、二価金属酸化物、分散剤及び各添加剤及び水を、慣用の混合手段、例えば、ミキサー等で混合して作ることができる。該エマルジョン組成物は、その固形分が30〜60重量%、好ましくは35〜55重量%である。
本発明では、上記のエマルジョン組成物を用いて以下の工程により、薄いエラストマー手袋を作成することができる。
(a)モールド又はフォーマを、凝固剤及びゲル化剤としてCa2+イオンを5〜20重量%、好ましくは8〜17重量%含む凝固剤溶液中に浸す工程、ここで、モールド又はフォーマの表面に凝固剤等を付着させる時間は適宜定められ、通常、10〜20秒間程度である。凝固剤溶液は、例えば硝酸カルシウム、塩化カルシウム等の凝固剤またはエラストマーを析出させる効果を有する無機塩等の凝集剤を5〜20重量%水溶液が使用される。
(b)凝固剤が付着したモールド又はフォーマを、50℃〜70℃で乾燥させて、表面全体又は一部を乾燥する工程、
(c)前記工程(b)で乾燥した後のモールド又はフォーマを、上記のエマルジョン組成物中に、1〜60秒間、30℃の温度条件下に浸す工程、ここで、凝固剤が付着したモールド又はフォーマを、エマルジョン組成物中に、1〜60秒間、25℃〜35℃の温度条件下に浸すことにより、エラストマーを製造する組成物を付着させる。
(d)前記工程(c)でエマルジョン組成物が付着されたモールド又はフォーマを、80℃〜120℃で、通常、20〜70秒間乾燥した後、エラストマーが付着されたモールド又はフォーマを水洗して薬剤を除去する工程、ここで、部分的に乾燥されたエラストマーでコーティングされたモールド又はフォーマを、熱水(30℃〜70℃)中で90〜140秒間、水洗(リーチング)する。
(e)前記工程(d)で水洗(リーチング)したモールド又はフォーマを、80℃〜120℃で炉内乾燥する工程、ここで、リーチング工程が終了した後にビーディング(袖巻き加工)工程を実施してもよく、前記モールド又はフォーマを、80℃〜120℃で、250〜300秒間、炉内乾燥する。
(f)前記工程(d)で乾燥した後のモールド又はフォーマを、120℃〜150℃の後加熱(架橋硬化)する工程、ここで、付着したエラストマーが乾燥されたモールド又はフォーマを120℃〜150℃、20〜30分間、加熱硬化する。
これらの工程(a)〜(f)により、薄いエラストマー手袋を製造することができる。本発明の手袋は、厚さが薄いにもかかわらず、優れた強度及び剛性を有する。
以下、本発明について、実施例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜4:表1に示す4種類のX−NBR−A〜Dを調製した。
攪拌機つきの耐圧重合反応器に、イオン交換水120部、アクリロニトリル29重量部、1,3‐ブタジエン63.1重量部、メタクリル酸6重量部(アクリロニトリル、ブタジエン、及び不飽和カルボン酸の合計100重量部)、N‐メチロールアクリルアミド0.3重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル0.4重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、エチレングリコールオリゴマー0.9重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05重量部からなる乳化液を、50℃に保持して12〜24時間反応させ得られた共重合体ラテックスから未反応単量体を除去した後、共重合体ラテックスのpHおよび濃度を調製して、X−NBR‐A〜D(実施例1〜4)を得た。
実施例5〜8
X−NBR‐E(実施例5)は、イオン交換水120部、アクリロニトリル量を25重量部とし、1,3‐ブタジエン66.6重量部、メタクリル酸6重量部、N‐メチロールアクリルアミドを0.4重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル0.6重量部、とし、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、エチレングリコールオリゴマー1.0過硫酸カリウム0.3重量部、およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05重量部からなる乳化液を、50℃に保持して16時間反応して得られた共重合体ラテックスから未反応単量体を除去したものである。X−NBR‐F(実施例6)は、イオン交換水120部、アクリロニトリル量を20重量部とし、1,3‐ブタジエン71.3重量部、メタクリル酸6重量部、N‐メチロールアクリルアミドを0.5重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル0.7重量部、とし、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、エチレングリコールオリゴマー1.0重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05重量部からなる乳化液を、50℃に保持して18時間反応して得られた共重合体ラテックスから未反応単量体を除去したものである。X−NBR‐G(実施例7)は、イオン交換水120部、アクリロニトリル量を35重量部とし、1,3‐ブタジエン54.3重量部、メタクリル酸8重量部、N‐メチロールアクリルアミドを0.5重量部メタクリル酸2−ヒドロキシエチル0.7重量部、とし、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、エチレングリコールオリゴマー1.0重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05重量部からなる乳化液を、50℃に保持して12時間反応して得られた共重合体ラテックスから未反応単量体を除去したものである。X−NBR‐H(実施例8)は、イオン交換水120部、アクリロニトリル量を28重量部とし、1,3‐ブタジエン63.9重量部、メタクリル酸6重量部、N‐メチロールアクリルアミドを0.2重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル0.3重量部、とし、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、エチレングリコールオリゴマー1.4重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05重量部からなる乳化液を、50℃に保持して12時間反応して得られた共重合体ラテックスから未反応単量体を除去したものである。共重合体ラテックスのpHおよび濃度を調製して、X−NBR‐E〜H(実施例5〜8)を得た。
比較例1〜5
X−NBR‐I(比較例1)では、アクリロニトリル28重量部、1,3‐ブタジエン66重量部、メタクリル酸6重量部とし、エチレングリコールオリゴマーを添加しない以外の条件は、実施例1と同様にして、共重合体ラテックス X−NBR‐Iが得られた。X−NBR‐J〜K(比較例2〜3と5)は、イオン交換水120部、アクリロニトリル量を28重量部、1,3‐ブタジエン66重量部、メタクリル酸6重量部とし、N‐メチロールアクリルアミド0.1〜0.3重量部を加え、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05重量からなる乳化液を、30〜40℃に保持し12〜24時間反応させた。また、X−NBR‐Lは、アクリロニトリル量を28重量部とし、N‐メチロールアクリルアミド0.5重量部とし、30℃に保持し24時間反応させて、それ以外の点は、総てX−NBR‐1と同様にして、夫々、調製した。更に比較例4では、市販のNBRエラストマーである日本ゼオン社製のNippol 550を使用して実施した例を併記した。
[実施例1〜8、比較例1〜5]
上記各エラストマーを表1〜2に示すエラストマー分100重量部に対して、表3の添加剤を加えて、ミキサーで攪拌し、エマルジョン組成物を調製した。ただし、実施例8においては表3中の添加物の中で酸化亜鉛の量だけ半分にして添加した。(実施例8では添加する酸化亜鉛量を減らし、エチレングリコール量を増やすため、表3中の添加剤を加える際、酸化亜鉛だけ半分の量にしてエマルジョン組成物を調整した。)
Figure 2017160279
Figure 2017160279
<不飽和カルボン酸残基>
各エラストマーのエマルジョンを乾燥してフィルムを作成した。該フィルムをFT‐IRで測定し、カルボン酸基に由来する吸収波長1699cm‐1とアクリロニトリル基に由来する吸収波長2237cm‐1における吸光度(Abs)を求め、アクリロニトリル残基量及び不飽和カルボン酸残基量を求めた。アクリロニトリル残基量は、予め各エラストマーに内部標準物質としてポリアクリル酸を加えたアクリロニトリル基量が既知の試料から作成した検量線から求めた。不飽和カルボン酸残基量は下記式から求めた。
不飽和カルボン酸残基量(wt%)=[Abs(1699cm‐1)/Abs(2237cm‐1)]/0.2661
上式において、係数0.2661は、不飽和カルボン酸基量とアクリロニトリル基量の割合が既知の複数の試料から検量線を作成して求めた換算値である。
<ムーニー粘度>
硝酸カルシウムと炭酸カルシウムとの4:1混合物の飽和水溶液200mlを室温にて攪拌した状態でラテックスエマルジョンをピペットにより滴下し、固形ゴムを析出させた。得られた固形ゴムを取り出し、イオン交換水約1000mlでの攪拌洗浄を10回繰り返した後、固形ゴムを搾って脱水し、真空乾燥(60℃、72時間)して、測定用ゴム試料を調整した。得られた測定用ゴムをロール温度50℃、ロール間隙約0.5mmの6インチロールにゴムがまとまるまで数回通したものを、JIS K6300‐1:2001 「未加硫ゴム−物理特性、第1部ムーニー粘度計による粘度およびスコ‐チタイムの求め方」に準拠して100℃にて大径回転体を用いて測定した。なお、XNBR‐Jの粘度は、測定温度100℃での測定上限値を超えていた。
<硫黄含有量>
エマルジョン中の固形物0.1gを1350℃で12分間、燃焼炉で燃焼し、発生した燃焼ガスを吸収液(希硫酸1〜滴加えたH2O2水混合液)へ吸収後、0.01NNaOH水を用いて中和滴定して定量した。
<THF不溶成分>
THF(テトラヒドロフラン溶剤)不溶(ゲル)成分は、0.3gのエマルジョン乾燥物(50℃で、24時間減圧乾燥)をTHF溶媒50cc中に浸漬し、溶媒還流温度下で、8時間抽出処理したのち、溶媒可溶成分を除去したフラスコ内残留物を80℃で12時間減圧乾燥してえた残留物を精秤し、下式より算出した。
ゲル成分量(wt%)=(乾燥後残留物量g/初期投入量g)x100
<1H−NMRスペクトル>
図1に、本発明のエマルジョン組成物のH−NMRスペクトルの測定例を示す。試料として、実施例1のエマルジョン組成物を用いて、MeOH可溶部のH−NMRスペクトルを測定装置:日本電子製 EX400型により実測した。測定条件は、観測核:H、溶媒:CDODである。
<FT−IR透過スペクトル>
図2に、本発明のエマルジョン組成物のFT−IR透過スペクトルの測定例を示す。試料として、実施例1のエマルジョン組成物を用いて、CDOD可溶部のFT−IR透過スペクトルを測定装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック製 FT/IR Continuum型により実測した。測定条件は、顕微透過法、分解能4cm−1である。
図3に、本発明のエマルジョン組成物の乾燥フィルムのFT−IR透過スペクトルの測定例を示す。試料として、実施例1のエマルジョン組成物を乾燥させたフィルムを用いて、FT−IR透過スペクトルを測定装置:日本分光製 FT/IR−4200型により実測した。測定条件は、1回反射ATR法、分解能4cm−1である。
Figure 2017160279
表3において、分散剤はアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムであり、抗酸化剤は2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノールであり、着色剤は酸化チタニウムの他に適宜加えられる色材である。
図1の本発明のエマルジョン組成物のH−NMRスペクトルの測定例を示すように、3.5、3.6ppm付近にエチレングリコールオリゴマーの分解スペクトルが観測された。図3の本発明のエマルジョン組成物のFT−IR吸収スペクトルの測定例を示すように、1700cm−1、1730cm−1付近に、それぞれ未反応のカルボキシル基及びカルボン酸エステルを示すピークが観測された。図2の本発明のエマルジョン組成物の乾燥フィルムのFT−IR透過スペクトルの測定例においては、1730cm−1付近に、カルボン酸エステルを示すピークが観測されなかった。
図1〜図3の結果から、不飽和カルボン酸が導入されたアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子において、アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子内の不飽和カルボン酸のカルボキシル基と、同一又は異なるアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子内の他の不飽和カルボン酸のカルボキシル基とが、図4に模式的に示されるように、n−メチロールアクリルアミドに加えて、あるいはエチレングリコールオリゴマーと脱水縮合してエステル化することにより互いに架橋結合されることが推測される。
各組成物を用いて、以下のディッピング法により手袋を製造した。
(1)手袋の型であるフォーマを、洗浄液、次いで冷水で洗浄して乾燥した後、凝固剤である硝酸カルシウムがCa2+イオン濃度が10重量%となる量で水に溶解されている水溶液中に15秒間浸した。
(2)凝固剤が付着したフォーマを60℃で1分程度、部分的に乾燥した。
(3)フォーマを、30℃にした各組成物中に20秒間浸した。
(4)フォーマを組成物から取り出して水で洗浄した後、熱水(50℃)中に140秒間浸した。
(5)組成物の膜で覆われたフォーマを120℃で300秒間乾燥した後、60℃で80秒間維持し、得られた手袋をフォーマから取り外した。
得られた手袋を以下の方法で評価した結果を表4‐1〜4‐2に示す。
Figure 2017160279
Figure 2017160279
<動的粘弾性測定>
図5及び図6に、本発明のエマルジョン組成物及び手袋の動的粘弾性の測定例を示す。試料として、実施例1のエマルジョン組成物を用いて手袋を製作し、エマルジョン組成物の乾燥フィルム及び手袋の動的粘弾性を測定装置:TAINSTRUMENTS製 粘弾性測定装置RSA−3により実測した。測定条件は、測定モード:引張モード、クランプ間距離:10mm、測定周波数:1Hz、測定温度:−130〜150℃、昇温温度:2℃/min.、動的ひずみ:0.1%である。
<トルエン重量膨潤比率>
手袋を常温でトルエンに浸漬し、72時間後の重量を初期重量で除して重量膨潤比率(%)を求めた。重量膨潤比率の算出方法は(膨潤後の試料重量×100/膨潤前の試料重量、単位:%)である。
<手袋の柔軟性>
手袋の柔軟性を、引張り特性により評価した。手袋からダンベル5号試験片を切り出し、A&D社製のTENSILON万能引張試験機「RTC−1310A」を用い、試験速度500mm/min、チャック間75mm、標線間25mmで、引張強度(MPa)、破断時伸び(%)、100%弾性率(MPa)を測定した。
<手袋の架橋度の測定>
JIS K7244‐4:1999「プラスチック―動的機械特性の試験方法―第4部:引張振動―非共振法」に準拠して測定した。測定装置は粘弾性測定装置(TAINSTRUMENTS製 RSA‐3)を用いて、手袋の23℃における動的貯蔵弾性率E’(MPa)を求めた。得られた動的貯蔵弾性率E’(MPa)を下記式(1)に代入することにより架橋密度nを算出した。
n=E’/3RT (1)
ここで、n:架橋密度(mol/cc)、R:気体定数(8.314J/(K・mol))、T:絶対温度(K)、E’:貯蔵弾性率(MPa)である。
表4に示すとおり、実施例1〜7の手袋はいずれも、強度を示す引張強度と剛性を示すモジュラス(100%伸び時の応力(MPa))に優れた。また、実施例8では添加した酸化亜鉛の量を半分に減らし、多官能性エチレングリコールとしてエチレングリコールオリゴマーをその分多く添加したところ、強度を示す引張強度と剛性を示すモジュラスが優れた。これに対して、比較例1〜3はいずれもゲル成分量が少なく、引張強度が劣り、またモジュラス値も不足した。ムーニー粘度およびゲル成分量の少ない市販品から得られた手袋(比較例4)は、引張強度、モジュラス値ともに大きく劣った。ムーニー粘度を高くした組成物から得られた手袋(比較例5)は、引張強度が劣った。
アクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸のカルボキシル基に、不飽和カルボン酸(例えば、メタクリル酸)の付加反応等により架橋されているアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子と、隣接するアクリロニトリルブタジエンエラストマーのカルボキシル化された基に同様に付加してアクリロニトリルブタジエンエラストマー分子間に、2価金属イオン、例えば亜鉛イオンにより分子間架橋結合が形成されると、分枝度が高く、ゲル成分量の大きいエラストマー分子構造になり、ゲル成分量の低いエラストマーと比較すれば、同じ分子量であっても、アクリロニトリルブタジエンエラストマー分子の架橋密度は増大すると考えられる。
本発明によれば、手袋用エラストマー組成物及び該エラストマー組成物から製造される強度、剛性に優れた薄手手袋、特に、特定の溶剤不溶成分を含有するエラストマー組成物、及び該手袋用エラストマー組成物から製造され、強度、剛性等の機械的特性に優れた薄手手袋が得られる。

Claims (7)

  1. エラストマーの20〜35重量%のアクリロニトリル残基、3〜8重量%の不飽和カルボン酸残基、及び52〜76.9重量%のブタジエン残基及び残余の非硫黄含有架橋構造を形成する0.1〜5.0重量%の架橋性化合物を含むカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーであって、該カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物について、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのムーニー粘度(ML(1+4)(100℃))が100〜220であり、該エラストマーエマルジョン中の固形物の燃焼ガスの中和滴定法により検出される硫黄元素の含有量がエラストマー重量の1重量%以下であり、高分子ゲル成分として、テトラヒドロフラン(THF)不溶成分の含有量が当該エマルジョン組成物の全固形分量の65〜90重量%であるカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマー。
  2. カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸のカルボキシル化された官能基がカルボキシル基、メチロールアミド基、N−メチロールアクリルアミド基を含む化合物、2−ヒドロキシアルキルアクリレート、2−ヒドロキシアルキルメタクリレートの反応生成物からなる群、及びカルボキシル基とジアミン、カルボキシル基とアルキルジアミンの反応生成物、カルボキシル基とアルキルジアルコールの反応生成物、またはポリエチレングリコールを含むエチレングリコール類及びそれらの類似化合物などの多官能エチレングリコール、2−ヒドロキシアルキルアクリレート、2−ヒドロキシアルキルメタクリレートの反応生成物からなる群から選択される一つまたはこれらの架橋性化合物の組み合わせによるカルボキシル基の架橋結合または不飽和カルボン酸のエステル結合により架橋結合されていることを特徴とする請求項1に記載のカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物。
  3. 前記カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーの不飽和カルボン酸のカルボキシル化された官能基が前記架橋性化合物の結合により架橋結合されるとともに酸化亜鉛を介して架橋結合されているか、あるいは前記架橋性化合物のポリエチレングリコールを含むエチレングリコール類及びそれらの類似化合物などの多官能エチレングリコールおよび酸化亜鉛を介して架橋結合されている請求項2に記載のカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物。
  4. 前記請求項2又は3に記載のカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物であって、低分子量成分として、当該エマルジョン組成物の全固形分量に対するアセトン可溶成分の含有量が35重量%未満であり、中間分子量成分として、前記エマルジョン組成物中の全固形分量に対するアセトン不溶且つテトラヒドロフラン(THF)可溶成分の含有量が0.1〜5重量%であることを特徴とするカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物。
  5. 請求項2〜4のいずれか1項に記載のカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物から製造されるエラストマー手袋であって、前記不溶成分を含有するカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物の前記不溶成分が架橋硬化した手袋の引張特性として、25MPa〜50MPaの引張強度、400%〜650%の破断伸び、100%伸びにおける2MPa〜10MPaの引張モジュラスを有するエラストマー手袋。
  6. 前記カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物から製造されるエラストマー手袋であって、非硫黄含有架橋構造の密度を示す架橋密度が1.5〜4.5×10−3mol/cmであることを特徴とする請求項5に記載のエラストマー手袋。
  7. 前記カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーのエマルジョン組成物から製造されるエラストマー手袋であって、トルエン浸漬後の初期手袋重量に対する湿潤重量比を示すトルエン膨潤比率が240〜400%であることを特徴とする請求項5又は6に記載のエラストマー手袋。
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