JP2017160089A - ダイヤモンド基板及びダイヤモンド基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ダイヤモンド単結晶から成り、基板の厚み方向における基板最高部と最低部との差分を所定の範囲内に抑制可能になると共に、ドーパントの濃度ムラが抑制可能となるダイヤモンド基板とその基板の製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】下地基板を用意し、その下地基板の片面にダイヤモンド単結晶から成る柱状ダイヤモンドを複数形成し、各柱状ダイヤモンドの先端からダイヤモンド単結晶を成長させ、各柱状ダイヤモンドの先端から成長した各ダイヤモンド単結晶をコアレッセンスしてダイヤモンド基板層を形成し、下地基板からダイヤモンド基板層を分離し、ダイヤモンド基板層からダイヤモンド基板を製造して、ダイヤモンド基板の厚み方向における最高部と最低部との差分を、0μm超485μm以下とすると共に、ダイヤモンド基板の表面のドーパントの濃度ムラを、面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下とする。【選択図】図2
Description
本発明は、ダイヤモンド基板、及びダイヤモンド基板の製造方法に関するものである。
ダイヤモンドは半導体材料として他に類を見ない、優れた特性を数多く備えているため、究極の半導体基板として期待されている。
半導体材料として機能するためには電気抵抗の制御が重要である。ダイヤモンドの導電率の制御方法としては他の半導体材料と同様にドーピングによって導電性を付与することが可能で、その制御技術の開発が進められている。炭素のみからなるダイヤモンド自体は絶縁体だが、ボロンやリンなどのドーパントをドーピングすることで抵抗が制御可能であることが知られている。ダイヤモンドの高い絶縁性とドーピングによる導電性制御を用いた高い絶縁破壊強度を持つ高出力パワーデバイスの研究が進んでいる。将来的にこれらの導電性制御技術が確立され、デバイスを量産する際には量産性が同時に求められる。量産性を高めるためには大型かつ特性の均一性が同時に確保されているダイヤモンド下地基板が必要とされることはこれまでの半導体デバイス開発の歴史を振り返れば当然の流れである。
電気抵抗の均一性はデバイスの信頼性に関わる最も重要な特性の一つである。特にダイヤモンドのキャリア移動度を利用した高速デバイスへの応用が期待されており、下地ダイヤモンド基板は全面にわたって均一なキャリア密度を有していることが求められる。つまり、均一にリンやボロンなどのドーパントがドーピングされている必要がある。即ち、大面積であると同時に、全面にわたり均一にドーピングされているダイヤモンド下地基板が求められる。
従来のダイヤモンドデバイス研究は高温高圧合成法によって作製された単結晶ダイヤモンド製の下地基板を用いていた。しかし、高温高圧合成法で作製された単結晶ダイヤモンドはサイズが小さく、デバイス特性を検証することはできても、その量産性について議論されることはなかった。
しかし、最近ダイヤモンド基板の大型に向けてヘテロエピタキシャル成長技術の開発が進められている。ヘテロエピタキシャル成長技術の一例として、例えば特許文献1に公開されている。特許文献1では、下地基板の片面にダイヤモンド単結晶から成る柱状ダイヤモンドを複数形成し、各柱状ダイヤモンドの先端からダイヤモンド単結晶を成長させ、コアレッセンスして、大型の単結晶ダイヤモンドから成るダイヤモンド基板を作製する技術が公開されている。この方法を用いることでヘテロエピタキシャル成長時に蓄積する応力を柱状ダイヤモンドが折れることにより解放することが可能であり、大型のダイヤモンド基板の実現が可能となった。
ヘテロエピタキシャル成長にはマイクロ波PCVD法(Plasma-enhanced Chemical Vapor Deposition)や直流PCVD法などの成長法が用いられるが、プラズマから与えられる高い熱を逃がすために下地基板であるMgO基板は水冷台の上に設置される。しかし、下地基板に用いられるMgOとダイヤモンドの間の熱膨張係数差や格子定数差などの物性の差に起因してダイヤモンドに反りが発生してしまう。特に大型になればなるほど反りは大きくなる。よって、室温において水冷台と密着するMgO基板を用いた従来のヘテロエピタキシャル成長法では成長中に生じる反りによってMgO基板面内で水冷台と接する場所と接しない場所が発生する。
水冷台と接しない個所はプラズマからの熱を逃がすことができないので、水冷台と接している個所と比べて高温になる。大型になればなるほど基板の反りは大きくなり、MgO基板面内の温度差は大きくなる。その結果、MgO基板面上のダイヤモンド膜表面の温度差が大きくなる。
ダイヤモンド成長中に基板に取り込まれるドーパントの量は成長温度に依存することが知られている。従来のヘテロエピタキシャル成長法を用いると面内の温度が異なるため、場所によってドーパントの濃度が変わってしまう。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ダイヤモンド単結晶から成り、ダイヤモンド基板の厚み方向における最高部と最低部との差分を所定の範囲内(0μm超485μm以下)に抑制可能になると共に、ダイヤモンド基板のドーパントの濃度ムラも所定の範囲内(面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下)に抑制可能となるダイヤモンド基板とその基板の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明のダイヤモンド基板はダイヤモンド単結晶から成り、ダイヤモンド基板の厚み方向における最高部と最低部との差分が、0μm超485μm以下であり、ダイヤモンド基板のドーパントの濃度ムラが面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下であることを特徴とする。
また本発明のダイヤモンド基板の製造方法は、下地基板を用意し、その下地基板の片面にダイヤモンド単結晶から成る柱状ダイヤモンドを複数形成し、各柱状ダイヤモンドの先端からダイヤモンド単結晶を成長させ、各柱状ダイヤモンドの先端から成長した各ダイヤモンド単結晶をコアレッセンスしてダイヤモンド基板層を形成し、下地基板からダイヤモンド基板層を分離し、ダイヤモンド基板層からダイヤモンド基板を製造して、ダイヤモンド基板の厚み方向における最高部と最低部との差分を、0μm超485μm以下とすると共に、ダイヤモンド基板のドーパントの濃度ムラを面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下とすることを特徴とする。
上述した特徴により、本発明に係るダイヤモンド基板及びその製造方法では、柱状ダイヤモンドを用いてダイヤモンド単結晶を成長させ、成長中のダイヤモンド単結晶の反りを低減すると共に、成長形成したダイヤモンド単結晶の厚み方向における最高部と最低部との差分を0μm超485μm以下の範囲内に抑えることが可能となり、冷却台と下地基板との接触が均一になり、面内の温度分布が均一になって、前述のような温度ムラが低減され、全面にわたって成長環境を制御することができた。
成長中のダイヤモンド単結晶の反りを低減出来るので、成長後にそのダイヤモンド単結晶から形成されるダイヤモンド基板の反りも低減可能となる。そのため、基板最高部と最低部との差分を0μm超485μm以下の範囲内に抑えることが可能となり、差分の低減によって基板全面にわたってドーパントの濃度ムラが、面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下となるダイヤモンド基板を実現することができた。
本実施の形態の第一の特徴は、ダイヤモンド基板はダイヤモンド単結晶から成り、ダイヤモンド基板の厚み方向における最高部と最低部との差分が、0μm超485μm以下であり、ダイヤモンド基板のドーパントの濃度ムラが面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下とした。
第二の特徴は、下地基板を用意し、その下地基板の片面にダイヤモンド単結晶から成る柱状ダイヤモンドを複数形成し、各柱状ダイヤモンドの先端からダイヤモンド単結晶を成長させ、各柱状ダイヤモンドの先端から成長した各ダイヤモンド単結晶をコアレッセンスしてダイヤモンド基板層を形成し、下地基板からダイヤモンド基板層を分離し、ダイヤモンド基板層からダイヤモンド基板を製造して、ダイヤモンド基板の厚み方向における最高部と最低部との差分を、0μm超485μm以下とすると共に、ダイヤモンド基板のドーパントの濃度ムラを面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下とした。
これらの構成に依れば、柱状ダイヤモンドを用いてダイヤモンド単結晶を成長させ、成長中のダイヤモンド単結晶の反りを低減すると共に、成長形成したダイヤモンド単結晶の厚み方向における最高部と最低部との差分を0μm超485μm以下の範囲内に抑えることが可能となり、冷却台と下地基板との接触が均一になり、面内の温度分布が均一になって、前述のような温度ムラが低減され、全面にわたって成長環境を制御することができた。
成長中のダイヤモンド単結晶の反りを低減出来るので、成長後にそのダイヤモンド単結晶から形成されるダイヤモンド基板の反りも低減可能となる。そのため、基板最高部と最低部との差分を0μm超485μm以下の範囲内に抑えることが可能となり、差分の低減によって基板全面にわたってドーパントの濃度ムラが、面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下となるダイヤモンド基板を実現することができた。
以下、図1を参照して、本発明に係るダイヤモンド基板を詳細に説明する。本発明に係るダイヤモンド基板の平面方向の形状は方形等でも良い。しかし表面弾性波素子、サーミスタ、半導体デバイス等と云った用途の製造工程での使用が容易という観点から、円形状が好ましい。特に、図1に示すようにオリフラ面(オリエンテーションフラット面)が設けられた円形状が好ましい。
ダイヤモンド基板1(以下、必要に応じて単に「基板1」と記載)の形状が円形状、またはオリフラ面が設けられた円形状の場合、直径は0.4インチ(約10mm)以上が大型化の観点から好ましい。更に実用的な基板での大型化という観点から、直径は2インチ(約50.8mm)以上が好ましく、3インチ(約76.2mm)以上であることがより好ましく、6インチ(約152.4mm)以上であることが更に好ましい。なおダイヤモンド基板1の寸法公差を考慮し、本願では、直径2インチに関しては50.8mmの2%に当たる1.0mmを減算した、直径49.8mm以上〜50.8mmの範囲も2インチに該当すると定義する。
なお、直径の上限値は特に限定されないが、実用上の観点から8インチ(約203.2mm)以下が好ましい。また、一度に沢山の素子やデバイスを製造するために、直径2インチと同等以上の面積を有する、方形のダイヤモンド基板を用いても良い。
また、ダイヤモンド基板1の厚みtは任意に設定可能であるが、自立した基板として3.0mm以下であることが好ましく、素子やデバイスの製造ラインに用いるためには1.5mm以下であることがより好ましく、1.0mm以下が更に好ましい。一方、厚みtの下限値は特に限定されないが、ダイヤモンド基板1の剛性を確保して亀裂や断裂またはクラックの発生を防止するとの観点から、0.05mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。
ここで本発明における「自立した基板」又は「自立基板」とは、自らの形状を保持できるだけでなく、ハンドリングに不都合が生じない程度の強度を有する基板を指す。このような強度を有するためには、厚みtは0.3mm以上とするのが好ましい。またダイヤモンドは極めて硬い材料なので、素子やデバイス形成後の劈開の容易性等を考慮すると、自立基板としての厚みtの上限は3.0mm以下が好ましい。なお、素子やデバイス用途として最も使用頻度が高く、且つ自立した基板の厚みとして、厚みtは0.5mm以上0.7mm以下(500μm以上700μm以下)が最も好ましい。
ダイヤモンド基板1を形成するダイヤモンド結晶は、ダイヤモンド単結晶が望ましい。ダイヤモンド単結晶は、Ia型、Ib型、IIa型、又はIIb型の何れでも良いが、ダイヤモンド基板1を半導体デバイスの基板として用いる場合は、結晶欠陥や歪の発生量又はX線ロッキングカーブの半値全幅の大きさの点から、IIa型がより好ましい。更に、ダイヤモンド基板1は単一のダイヤモンド単結晶から形成することとし、表面2上に複数のダイヤモンド単結晶を結合した結合境界が無いこととする。
ダイヤモンド基板1の表面2には、ラッピング、研磨、又はCMP(Chemical Mechanical Polishing)加工が施される。一方、ダイヤモンド基板1の裏面には、ラッピング且つ/又は研磨が施される。望ましくは、表面2と裏面を同一条件で加工することが、基板としてより一層の平坦性が確保できる点で好ましい。表面2の加工は、主に平坦な基板形状を達成するために施され、裏面の加工は、主に所望の厚みtを達成するために施される。更に表面2の表面粗さRaは、素子やデバイス形成が可能な程度が望ましいので、1nm未満に形成することが好ましく、より好ましくは、原子レベルで平坦となる0.1nm以下に形成することである。Raの測定は、表面粗さ測定機により行う。
ダイヤモンド基板1が単結晶の場合、その表面2の結晶面の面方位は、(111)、(110)、(100)の何れでも良く、これら面方位に限定されない。
ダイヤモンド基板1が、単一のダイヤモンド単結晶から形成されている場合、表面2上に複数のダイヤモンド単結晶を結合した結合境界が無いため、境界部分での結晶品質の劣化が防止される。よって、ダイヤモンド基板1が、単一のダイヤモンド単結晶から形成されている場合、その表面2(特に(100))における、前記のX線によるロッキングカーブの半値全幅(FWHM:full width at half Maximum)は、表面2の全面に亘り300秒以下が実現可能となる。
更に半値全幅を、表面2の全面に亘り100秒以下、或いは更に好ましくは50秒以下とすることも出来る。よって、更に高品質のダイヤモンド基板1を提供することも可能となる。
本実施形態に係るダイヤモンド基板1は外観上、表面2及び裏面が平坦で平行に形成された平板型に成形されているものの、側面から見たときの形状としては、大きく分けて三形態に分けられ、その三形態の何れかの形状を有する。
最初の形態は図2に示すように、ダイヤモンド基板1がその外縁から中央に向かって単調に反っている形態であり、基板1側面から見たときに基板1の中心軸Cから左右対称に単調に反る形態である。ダイヤモンドは極めて硬く難加工性の材料である。しかしダイヤモンド基板1を単調に反らせることにより、研磨加工費を低減させ加工量を低減させることが可能となる。
二番目の形態は図3に示すように、ダイヤモンド基板1がその外縁から中央に向かって非単調に反っている形態であり、基板1側面から見たときに基板1の中心軸Cから左右に非対称且つ非単調に反る形態である。このようにダイヤモンド基板1を非単調に反らせることにより、大きな圧力を掛けて研磨加工を行うことが可能となるため、研磨加工時間を短縮することが出来る。
三番目の形態は図4に示すように、ダイヤモンド基板1がうねりを有する形態である。なお、うねりとは、基板1を側面から見たときに基板1の厚み方向において、凸方向と凹方向の反りが、少なくとも一箇所ずつ現れており、基板全面に凸部と凹部が混在する状態を指すものである。このようにダイヤモンド基板1を、うねりを有する形態とすることにより、反り量自体を小さくすることが出来るので、研磨加工時の基板割れの発生を防止できる。また、大きな圧力を掛けて研磨加工を行うことが可能となるため、研磨加工時間を短縮することが出来る。同時に機能性薄膜(例えば半導体膜など)成膜時の加熱の際に、ダイヤモンド基板面内の温度をより均一にすることが可能となるため、やはり半導体膜の特性の面内ばらつき発生を抑制することが可能となる。
更に本発明のダイヤモンド基板1では、図2〜図4の各反り形態又はうねりを有する形態において、基板1の厚み方向における最高部と最低部との差分を0μm超485μm以下と設定すると共に、ダイヤモンド基板1のドーパントの濃度ムラを、面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下の範囲内とする。
図2のダイヤモンド基板1における差分とは、外縁と中央の反り量ΔHである。即ち図2の基板1の反り形態においては、基板1の中央における裏面箇所が、厚み方向における最高部であり、外縁が最低部となる。
一方、図3のダイヤモンド基板1における差分とは、外縁と前記最高部の反り量ΔHである。図3のダイヤモンド基板1では、最高部が基板の中央とは限らない。図2の基板1の反り形態においては厚み方向における、最高部の裏面箇所と外縁との差分が、反り量ΔHである。
また、図4のダイヤモンド基板1における差分とは、ダイヤモンド基板1の厚み方向におけるうねりに伴う最高部と最低部との差分である。図4のダイヤモンド基板1では厚み方向における、最高部の裏面箇所と最低部の裏面箇所との差分が、反り量ΔHである。
なお、本出願における「厚み方向」とは、ダイヤモンド基板1の最高部の面方向(最高部面箇所の接線方向)に対して垂直な法線方向、と定義する。
また基板1のドーパントの濃度ムラは、面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下である。
本発明のダイヤモンド基板1では、このような反り形態又はうねりを有する形態と、基板1全面に亘るドーパントの濃度ムラを許容する。しかしながら、前記最高部と最低部との差分と、基板1全面のドーパントの濃度ムラを一定範囲に収めることを特徴とする。
このように差分を、0μm超485μm以下に収めることにより、機能性薄膜(例えば半導体膜など)成膜時の加熱の際に、ダイヤモンド基板面内の温度をより均一にすることが可能となるため、やはり半導体膜の特性の面内ばらつき発生を抑制することが可能となる。更に、差分を0μm超485μm以下に収めることで、ダイヤモンド基板1のドーパントの濃度ムラを、面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下に抑制することも出来る。
基板1の差分が485μm超では、ダイヤモンド基板1加熱時にヒータとの距離が局所的に異なるため、基板温度の面内均一性が低下し、やはり半導体膜の特性の面内ばらつき発生を抑制することが不可能となる。従って、ドーパントの濃度ムラも、面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下に抑えることが出来ない。
なおドーパントの濃度ムラは、蛍光X線ホログラフィー、光電子ホログラフィー、二次イオン質量分析(SIMS)、或いは回折イメージング等で測定することにより検出することが出来る。
更に基板1の差分を0μm超130μm以下とすることにより、基板1全面のドーパントの濃度ムラを、面内濃度の中央値の80%以上〜120%以下とすることが可能となる。従って、ダイヤモンド基板1の表面上の全面に形成される半導体膜の特性の面内ばらつき発生を更に抑制することが可能となる。また、同時に機能性薄膜(例えば半導体膜など)成膜時の加熱の際に、ダイヤモンド基板面内の温度をより均一にすることが可能となるため、半導体膜の特性の面内ばらつき発生を抑制することが出来る。
更に基板1の差分を0μm超65μm以下とすることにより、例えば2インチの直径を有するダイヤモンド基板1全面のドーパントの濃度ムラを、面内濃度の中央値の90%以上〜110%以下とすることが可能となる。従って、ダイヤモンド基板1の表面上の全面に形成される半導体膜の特性の面内ばらつき発生を最も抑制することが可能となる。また、同時に機能性薄膜(例えば半導体膜など)成膜時の加熱の際に、ダイヤモンド基板面内の温度をより均一にすることが可能となるため、半導体膜の特性の面内ばらつき発生を抑制することが出来る。
本出願人は、自立したダイヤモンド基板1の作製に当たっては、基板1の反り量(基板1の厚み方向における最高部と最低部との差分)の抑制だけで無く、基板1の表面2の全面に亘るドーパントの濃度ムラの抑制も同時に必要であることを、検証の上見出した。更に、基板1の表面2に形成する半導体膜の特性の面内ばらつき発生の抑制に効果のある前記差分と、ドーパントの濃度ムラのばらつき数値範囲として、0μm超485μm以下及び面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下が有効であることも検証の上見出した。
次に、図5〜図12を参照して、本実施形態に係るダイヤモンド基板の製造方法の実施形態を詳細に説明する。まず、図5に示すように下地基板4を用意する。下地基板4の材質は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(α−Al2O3:サファイア)、Si、石英、白金、イリジウム、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等が挙げられる。
また下地基板4は、少なくとも片面4aが鏡面研磨されたものを用いる。後述するダイヤモンド層の成長工程において、ダイヤモンド層は鏡面研磨された面側(片面4aの面上)に成長形成される。
鏡面研磨は、目安としては表面粗さRaで10nm以下まで研磨することが好ましい。片面4aのRaが10nmを超えると、片面4a上に成長させるダイヤモンド層の品質が悪化してしまう。Raの測定は、表面粗さ測定機により行う。
下地基板4を用意したら、次に片面4aに図6に示すようにダイヤモンド単結晶から成るダイヤモンド層5を成長させて形成する。ダイヤモンド層5の成長方法は特に限定されず、公知の方法が利用できる。成長方法の具体例としては、パルスレーザ蒸着(PLD:Pulsed Laser Deposition)法や、化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法等の気相成長法等を用いることが好ましい。
なおダイヤモンド層5の成長前に、前処理として下地基板4の面上に、イリジウム(Ir)単結晶膜を成膜し、そのIr単結晶膜の上にダイヤモンド層5を成長形成しても良い。
図6に示すダイヤモンド層5の厚みd5は、形成しようとする柱状ダイヤモンドの高さとなるように設定し、30μm以上500μm以下の厚みで成長することが好ましい。
次に図7及び図8に示すように、ダイヤモンド層5から、複数の柱状ダイヤモンド6を形成する。その形成には、エッチングやフォトリソグラフィ、レーザ加工等で柱状ダイヤモンド6を形成すれば良い。
下地基板4に対してダイヤモンド層5はヘテロエピタキシャル成長により形成されるため、ダイヤモンド層5には結晶欠陥が多く形成されるものの、複数の柱状ダイヤモンド6とすることにより欠陥を間引くことが可能となる。
次に、柱状ダイヤモンド6の先端に、ダイヤモンド基板層7を成長させて形成する。各柱状ダイヤモンド6の先端からダイヤモンド単結晶を成長させることにより、どの柱状ダイヤモンド6からも均等にダイヤモンド単結晶の成長を進行させることが出来る。そして、各柱状ダイヤモンド6の高さ方向に対して横方向に成長させることにより、同じタイミングで各柱状ダイヤモンド6から成長されたダイヤモンド単結晶のコアレッセンス(coalescence)を開始させることが可能となる。
各柱状ダイヤモンド6から成長させたダイヤモンド単結晶どうしをコアレッセンスすることで、図9及び図10に示すようにダイヤモンド基板層7を製造する。下地基板4の径に応じて、形成できる柱状ダイヤモンド6の本数も変わり、下地基板4の径が大きくなるに伴い柱状ダイヤモンド6の本数も増やすことが出来る。
更に各柱状ダイヤモンド6間のピッチを、ダイヤモンド単結晶の核どうしの成長と同じ間隔(ピッチ)に設定して、各柱状ダイヤモンドからダイヤモンド単結晶を成長させることにより、ダイヤモンド基板層7の表面の品質が改善され、表面の全面に亘り300秒以下の半値全幅を実現することが可能となる。
更に半値全幅を、表面の全面に亘り100秒以下、或いは更に好ましくは50秒以下とすることも出来る。
なお、柱状ダイヤモンド6の直径とピッチをそれぞれ10μm以下に設定することにより、ダイヤモンド基板層7の表面の品質が改善され、300秒以下の半値全幅が実現可能となった。
ダイヤモンド基板層7の形成後、柱状ダイヤモンド6部分でダイヤモンド基板層7を下地基板4から分離する。本実施形態ではダイヤモンド基板層7の成長時に、下地基板4とダイヤモンド基板層7に発生する反りにより柱状ダイヤモンド6に応力を発生させ、その応力により柱状ダイヤモンド6を破壊し、ダイヤモンド基板7を下地基板4から分離する。
例えば、図11に示すようにMgO単結晶製の下地基板4は、その熱膨張係数及び格子乗数がダイヤモンド単結晶製のダイヤモンド基板層7のそれよりも大きい。従って、ダイヤモンド基板層7の成長後の冷却時において、ダイヤモンド基板層7側に中心部から端部側に向かって、矢印で示すように引張り応力が発生する。引張り応力は、下地基板4とダイヤモンド基板層7との格子定数差によって発生する応力、及び/又は、下地基板4とダイヤモンド基板層7との熱膨張係数差によって発生する。その結果、図8に示すようにダイヤモンド基板層7側が凸状となるように、ダイヤモンド基板層7、下地基板4、及び各柱状ダイヤモンド6全体が反る。
更に、各柱状ダイヤモンド6に大きな引張り応力が加わり、各柱状ダイヤモンド6にクラックが発生する。このクラック発生が進行することにより、図12に示すように柱状ダイヤモンド6が破壊され、ダイヤモンド基板層7が下地基板4から分離される。
ダイヤモンド基板層7の大型化に伴い、ダイヤモンド基板層7で発生する応力が大きくなっても、柱状ダイヤモンド6の破壊によりダイヤモンド基板層7の応力が外部に解放される。従って、ダイヤモンド基板層7へのクラック発生が防止され、この点でも大型のダイヤモンド基板1の製造を可能としている。
更に、下地基板4とダイヤモンド基板層7との格子定数差によって発生する応力、及び/又は、下地基板4とダイヤモンド基板層7との熱膨張係数差によって発生する応力を分離に用いることにより、ダイヤモンド基板層7の成長後に別途、分離のための装置や器具または工程が不必要となる。従って、ダイヤモンド基板1の製造工程の簡略化および分離工程の容易化が可能になる。
なお、柱状ダイヤモンド6の高さ方向を、ダイヤモンド層5及び各柱状ダイヤモンド6を形成するダイヤモンド単結晶の(001)面に対して、垂直な方向に設定することにより、応力付加による柱状ダイヤモンド6の破壊が円滑に進行するので好ましい。
図7〜図13における各柱状ダイヤモンド6のアスペクト比は、ダイヤモンド基板層7の成長時に各柱状ダイヤモンド6が完全に埋まらない値とし、具体的には5以上が望ましい。
また、図6に示すダイヤモンド層5の厚みd5は、形成しようとする柱状ダイヤモンドの高さ分となるように設定し、30μm以上500μm以下の厚みで成長することが好ましい。なお図13に示すように、厚みd5の底部の一部厚みに相当するダイヤモンド層5を残して、柱状ダイヤモンド6を形成しても良い。
更に、各柱状ダイヤモンド6の直径は、サブミクロン〜5μm程度と設定し、高さ方向において柱状ダイヤモンドの中心部分の直径を、両端の先端部分の直径よりも細く形成することが、柱状ダイヤモンド6の破壊をより容易に且つ円滑に進行可能となり、好ましい。
下地基板4からダイヤモンド基板層7を分離後、ダイヤモンド基板層7を研磨して残存する柱状ダイヤモンド6を除去し、スライス、及び円抜き加工して円板を切り出す。更に、その円板にラッピング、研磨、CMP等の種々の加工、及び必要に応じて鏡面研磨を施すことにより、ダイヤモンド基板層7からダイヤモンド基板1を製造する。従って、ダイヤモンド基板層7の厚みd7は、研磨代等を考慮し、前記tよりも若干厚く設定する。
このようにダイヤモンド基板層7からダイヤモンド基板1を製造することにより、対角線が10mm以上または直径0.4インチ以上という大型のダイヤモンド基板1の製造が可能になる。更に、ダイヤモンド基板1の表面2でのX線によるロッキングカーブの半値全幅として、表面2の全面に亘り300秒以下が実現出来るので、高品質のダイヤモンド基板1を提供することが可能となる。
更に半値全幅を、表面2の全面に亘り100秒以下、或いは更に好ましくは50秒以下とすることも出来る。よって、更に高品質のダイヤモンド基板1を提供することも可能となる。
以上、本実施形態に係るダイヤモンド基板1の製造方法では、ダイヤモンド基板層7の成長時及び成長後に、柱状ダイヤモンド6を破壊することで、ダイヤモンド基板層7を下地基板4から分離している。よってダイヤモンド基板層7で応力が発生しても、柱状ダイヤモンド6の破壊によりダイヤモンド基板層7の応力が外部に解放される。従って、ダイヤモンド基板層7での結晶歪みの発生が抑制され、図2〜図4の何れに図示したように、ダイヤモンド基板1の厚み方向における最高部と最低部との差分を、0μm超485μm以下に収めることが可能になり、ダイヤモンド基板1の表面2の全面に亘るドーパントの濃度ムラを、面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下とすることが出来る。
また、柱状ダイヤモンド6の破壊によりダイヤモンド基板層7の応力が外部に解放されるため、ダイヤモンド基板層7及びダイヤモンド基板1へのクラック発生が防止される。
以上により、成長中のダイヤモンド単結晶(ダイヤモンド基板層7)の反りを低減すると共に、成長形成したダイヤモンド単結晶の厚み方向における最高部と最低部との差分を0μm超485μm以下の範囲内に抑えることが可能となり、冷却台と下地基板との接触が均一になり、面内の温度分布が均一になって、温度ムラが低減され、全面にわたって成長環境を制御することができた。成長中のダイヤモンド単結晶の反りを低減出来るので、成長後にそのダイヤモンド単結晶から形成されるダイヤモンド基板1の反りも低減可能となる。
そのため、本発明に係るダイヤモンド基板及びその製造方法では、ダイヤモンド基板1の厚み方向における最高部と最低部との差分を、予め0μm超485μm以下に抑えることが可能となると共に、ダイヤモンド基板1の表面2の全面に亘るドーパントの濃度ムラを面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下に抑制可能となる。従って、ダイヤモンド基板1の表面2上の全面に形成される半導体膜の膜質が、ダイヤモンド基板1のドーパントの濃度ムラから受ける影響を低減することが出来るため、半導体膜の特性の面内ばらつき発生を抑制することも可能となる。同時に機能性薄膜(例えば半導体膜など)成膜時の加熱の際に、ダイヤモンド基板1面内の温度をより均一にすることが可能となるため、やはり半導体膜の特性の面内ばらつき発生を抑制することが可能となる。
1 ダイヤモンド基板
2 ダイヤモンド基板の表面
4 下地基板
5 ダイヤモンド層
6、11 柱状ダイヤモンド
7 ダイヤモンド基板層
4a 下地基板の片面
C ダイヤモンド基板の中心軸
ΔH ダイヤモンド基板の反り量
t ダイヤモンド基板の厚み
d5 ダイヤモンド層の厚み
d7 ダイヤモンド基板層の厚み
2 ダイヤモンド基板の表面
4 下地基板
5 ダイヤモンド層
6、11 柱状ダイヤモンド
7 ダイヤモンド基板層
4a 下地基板の片面
C ダイヤモンド基板の中心軸
ΔH ダイヤモンド基板の反り量
t ダイヤモンド基板の厚み
d5 ダイヤモンド層の厚み
d7 ダイヤモンド基板層の厚み
Claims (14)
- ダイヤモンド基板はダイヤモンド単結晶から成り、
ダイヤモンド基板の厚み方向における最高部と最低部との差分が、0μm超485μm以下であり、
ダイヤモンド基板のドーパントの濃度ムラが面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下であることを特徴とするダイヤモンド基板。 - 前記差分が0μm超130μm以下であり、前記ドーパントの濃度ムラが面内濃度の中央値の80%以上〜120%以下であることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド基板。
- 前記差分が0μm超65μm以下であり、前記ドーパントの濃度ムラが面内濃度の中央値の90%以上〜110%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイヤモンド基板。
- 前記ダイヤモンド基板が、外縁から中央に向かって単調に反っており、
前記差分が外縁と中央の反り量であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のダイヤモンド基板。 - 前記ダイヤモンド基板が、外縁から中央に向かって非単調に反っており、
前記差分が外縁と前記最高部の反り量であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のダイヤモンド基板。 - 前記ダイヤモンド基板がうねりを有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のダイヤモンド基板。
- 前記ダイヤモンド基板の平面方向の形状が方形状、円形状、又はオリフラ面が設けられた円形状であり、
方形状の場合は対角線の長さが10mm以上であり、円形状の場合は直径が0.4インチ以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のダイヤモンド基板。 - 前記対角線の長さが50.8mm以上か、または前記直径が2インチ以上であることを特徴とする請求項7に記載のダイヤモンド基板。
- 前記対角線の長さが50.8mm以上203.2mm以下か、または前記直径が2インチ以上8インチ以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載のダイヤモンド基板。
- 下地基板を用意し、
その下地基板の片面にダイヤモンド単結晶から成る柱状ダイヤモンドを複数形成し、
各柱状ダイヤモンドの先端からダイヤモンド単結晶を成長させ、各柱状ダイヤモンドの先端から成長した各ダイヤモンド単結晶をコアレッセンスしてダイヤモンド基板層を形成し、
下地基板からダイヤモンド基板層を分離し、
ダイヤモンド基板層からダイヤモンド基板を製造して、
ダイヤモンド基板の厚み方向における最高部と最低部との差分を、0μm超485μm以下とすると共に、
ダイヤモンド基板のドーパントの濃度ムラを面内濃度の中央値の50%以上〜150%以下とすることを特徴とするダイヤモンド基板の製造方法。 - 前記差分を0μm超130μm以下とすると共に、前記ドーパントの濃度ムラを面内濃度の中央値の80%以上〜120%以下とすることを特徴とする請求項10に記載のダイヤモンド基板の製造方法。
- 前記差分を0μm超65μm以下とすると共に、前記ドーパントの濃度ムラを面内濃度の中央値の90%以上〜110%以下とすることを特徴とする請求項10又は11に記載のダイヤモンド基板の製造方法。
- 前記下地基板と前記ダイヤモンド基板層との分離を、前記柱状ダイヤモンドに応力を発生させて、前記柱状ダイヤモンドを破壊して行うことを特徴とする請求項10〜12の何れかに記載のダイヤモンド基板の製造方法。
- 前記応力が、前記下地基板と前記ダイヤモンド基板層との格子定数差によって発生する応力、及び/又は、前記下地基板と前記ダイヤモンド基板層との熱膨張係数差によって発生する応力であることを特徴とする請求項13に記載のダイヤモンド基板の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016046478A JP2017160089A (ja) | 2016-03-10 | 2016-03-10 | ダイヤモンド基板及びダイヤモンド基板の製造方法 |
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JP (1) | JP2017160089A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN108663381A (zh) * | 2018-05-09 | 2018-10-16 | 中国科学院长春光学精密机械与物理研究所 | 一种掺铁激光晶体缺陷检测方法和装置 |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH05200271A (ja) * | 1992-01-24 | 1993-08-10 | Sumitomo Electric Ind Ltd | IIb型ダイヤモンド単結晶の育成方法 |
JPH08133893A (ja) * | 1994-11-07 | 1996-05-28 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 自立したダイヤモンドウェハーおよびその製造方法 |
JPH08195367A (ja) * | 1994-06-24 | 1996-07-30 | Sumitomo Electric Ind Ltd | ウエハ−及びその製造方法 |
-
2016
- 2016-03-10 JP JP2016046478A patent/JP2017160089A/ja active Pending
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