JP2017155025A - 脂質組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、保存性が良好であり、体内のプラスマローゲン量を効率的に増加させる脂質組成物を提供することにある。【解決手段】前記課題は、本発明の1−アルキルエーテル型リン脂質を含有し、そして(a)脂質を構成する脂肪酸残基のうち、リン脂質由来のエイコサペンタエン酸(EPA)残基及びドコサヘキサエン酸(DHA)残基の合計量1質量部に対して、リン脂質以外に由来するEPA残基及びDHA残基の合計量が1.8質量部以下であることを特徴とする脂質組成物によって解決することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、脂質組成物に関する。本発明の脂質組成物によれば、生体内のプラスマローゲンを顕著に増加させることができる。
プラスマローゲンとはsn−1位にビニルエーテル結合による炭化水素鎖を持ち、sn−2位には脂肪酸が結合しているグリセロリン脂質のサブクラスであり、アルケニルアシル型リン脂質ともいう。動物では脳、心臓、脾臓などに比較的多く含まれる。極性基はエタノールアミンとコリンがほとんどで、sn−2位にはヒトの場合、アラキドン酸やドコサヘキサエン酸等の多価不飽和脂肪酸に富むこと等が知られている。
プラスマローゲンの機能は未だ不明な点が多いが、プラスマローゲン合成部位であるペルオキシソームに障害を持つペルオキシソーム病では、精神遅滞を初めとする種々の重篤な症状を呈することから、プラスマローゲンが正常な細胞や生体の機能維持に重要な役割を果たしていることが推測される。
また、このような先天的な異常がなくても、血液又はリンパ液中のプラスマローゲンが加齢と共に減少すること、アルツハイマー病患者では脳のプラスマローゲンが減少していること、プラスマローゲンがLDLコレステロールの酸化を抑制すること等、プラスマローゲンが加齢や酸化ストレスが関与する疾病と関係していることが明らかになりつつある(非特許文献1及び非特許文献2)。
つまり、生体内のプラスマローゲンが減少することがさまざまな疾患の原因となっていると考えられている。従って、生体内のプラスマローゲン量を増加させることは種々の疾病の改善、予防に有効と思われることから、血液又はリンパ液中のプラスマローゲンを増加させる方法が求められている。
特に飲食品や経口医薬品は、継続的に且つ簡易に摂取可能なことから、経口摂取により血液又はリンパ液中のプラスマローゲン含量を増加させることができるプラスマローゲン増加剤が提案されている。
現在までに報告されている生体内でプラスマローゲンを増加させる効果のあるものとして、例えば、アルキルグリセロール(非特許文献3及び特許文献1)、プラスマローゲンに富む牛脳リン脂質(非特許文献4)、イノシトール(特許文献2)、コリン型プラスマローゲン(特許文献3)、炭素数16以上の直鎖モノ不飽和脂肪酸化合物(特許文献4)等が開示されている。
しかし、アルキルグリセロール、イノシトール、炭素数16以上の直鎖モノ不飽和脂肪酸化合物摂取によるプラスマローゲン増加は1.5倍程度と弱かった。また、牛脳リン脂質摂取ではプラスマローゲンやコリン型プラスマローゲンの摂取では数倍に増加するが、これらは風味が悪く飲食品に対し多量に添加することが困難であることに加え、酸化安定性が低いため長期保存の飲食品、特に常温保管の飲食品における保存性の低さが問題であった。
米国特許第6177476号明細書 特開2007−51132号公報 特開2009−269865号公報 特開2009−062364号公報 特開2013−053109号公報 特開2013−053110号公報
「オレオサイエンス(Oleoscience)2002年、(日本)第2巻、p.27−36 「オレオサイエンス(Oleoscience)2005年、(日本)第5巻、p.405−415 「リピッド(Lipids)」1991年、(米国)第26巻、p.166−169 「リピッド(Lipids)」2003年、(米国)第38巻、p.1227−1235
本発明者らは、1−アルキルエーテル型リン脂質を投与することによって、生体内のプラスマローゲンが増加することを開示している(特許文献5,6)。しかし、1−アルキルエーテル型リン脂質は腸管吸収率が低く、生体内のプラスマローゲンを増加させる効果に改善の余地があった。
従って、本発明の目的は、保存性が良好であり、体内のプラスマローゲン量を効率的に増加させる脂質組成物を提供することにある。
本発明者は、体内のプラスマローゲンを効率的に増加させることについて、鋭意研究した結果、驚くべきことに、脂質を構成する脂肪酸残基のうち、リン脂質由来のエイコサペンタエン酸(以下、EPAということもある)残基とドコサヘキサエン酸(以下、DHAということもある)残基の合計と、リン脂質以外に由来するEPA残基とDHA残基の合計が特定の条件を満たす脂質組成物を摂取することにより、体内のプラスマローゲンが効率的に増加することを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]1−アルキルエーテル型リン脂質を含有し、そして(a)脂質を構成する脂肪酸残基のうち、リン脂質由来のエイコサペンタエン酸(EPA)残基及びドコサヘキサエン酸(DHA)残基の合計量1質量部に対して、リン脂質以外に由来するEPA残基及びDHA残基の合計量が1.8質量部以下であることを特徴とする脂質組成物、
[2](b)脂質を構成する脂肪酸残基のうち、リン脂質以外に由来するDHA残基及びEPA残基の合計量と、リン脂質以外に由来するω6脂肪酸残基の量との比率([DHA+EPA]/ω6)が0.140以下である、[1]に記載の脂質組成物、
[3](c)リン脂質を構成する脂肪酸残基のうち、1−アルキルエーテル型リン脂質由来のEPA残基及びDHA残基の合計量1質量部に対して、1−アルキルエーテル型リン脂質以外に由来するEPA残基及びDHA残基の合計量が10.0質量部以下である、[1]又は[2]に記載の脂質組成物、
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の脂質組成物を含有するプラスマローゲン増加用飲食品、
[5]カプセル剤である[4]に記載の飲食品、
[6][1]〜[3]のいずれかに記載の脂質組成物を含有するプラスマローゲン増加用医薬組成物、
[7]カプセル剤である[6]に記載の医薬組成物、及び
[8]カプセル剤で投与される、[6]又は[7]に記載の医薬組成物、
に関する。
本発明の脂質組成物によれば、体内のプラスマローゲン量を効率的に増加させることができる。更に、本発明による組成物は保存安定性に優れており、容易に飲食品に混合できる。
本発明の脂質組成物の投与により、リンパ液中のプラスマローゲンが増加することを示したグラフである。
〔1〕脂質組成物
本発明の脂質組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有し、そして(a)脂質を構成する脂肪酸残基のうち、リン脂質由来のエイコサペンタエン酸(EPA)残基及びドコサヘキサエン酸(DHA)残基の合計量1質量部に対して、リン脂質以外に由来するEPA残基及びDHA残基の合計量が1.8質量部以下である。本発明の脂質組成物は、好ましくは(b)脂質を構成する脂肪酸残基のうち、リン脂質以外に由来するDHA残基及びEPA残基の合計量と、リン脂質以外に由来するω6脂肪酸残基の量との比率([DHA+EPA]/ω6)が0.140以下である。本発明の脂質組成物は、より好ましくは、(c)リン脂質を構成する脂肪酸残基のうち、1−アルキルエーテル型リン脂質由来のEPA残基及びDHA残基の合計量1質量部に対して、1−アルキルエーテル型リン脂質以外に由来するEPA残基及びDHA残基の合計量が10.0質量部以下である。
(a)エイコサペンタエン酸(EPA)残基及びドコサヘキサエン酸(DHA)残基の比率
本発明の脂質組成物においては、(a)脂質を構成する脂肪酸残基のうち、リン脂質由来のエイコサペンタエン酸(以下、EPAと称することがある)残基及びドコサヘキサエン酸(以下、DHAと称することがある)残基の合計量1質量部に対して、リン脂質以外に由来するEPA残基及びDHA残基の合計量が1.8質量部以下である。
本発明において、エイコサペンタエン酸(EPA)残基及びドコサヘキサエン酸(DHA)残基等の脂肪酸残基は、リン脂質の場合、sn−1位又はsn−2位に隣接した酸素に結合している基を表し、リン脂質以外の場合、例えば中性脂質では、sn−1位、sn−2位又はsn−3位に隣接した酸素に結合している基を表している。中性脂質には、グリセリンに1つの脂肪酸が結合したモノグリセリド、グリセリンに2つの脂肪酸が結合したジグリセリド、及びグリセリンに3つの脂肪酸が結合したトリグリセリドが含まれるが、動物ではトリグリセリドが多い。なお、本明細書においては特に記載のない場合は、上記脂肪酸残基は脂肪酸から−OHを除いた基を意味するものとする。
本発明の脂質組成物においては、リン脂質由来のEPA残基及びDHA残基の合計量1質量部に対して、リン脂質以外に由来するEPA残基とDHA残基の合計が1.8質量部以下であり、好ましくは1.5質量部以下であり、より好ましくは1.2質量部以下であり、最も好ましくは1.0質量部以下である。リン脂質由来のEPA残基とDHA残基の合計1質量部に対して、リン脂質以外に由来するEPA残基とDHA残基の合計が1.8質量部よりも多いと1−アルキルエーテル型リン脂質の吸収が抑制され、本発明の効果が得られない。リン脂質由来のEPA残基とDHA残基の合計1質量部に対してリン脂質以外に由来するEPA残基とDHA残基の合計が1.8質量部以下であることによって、プラスマローゲンが増加する機構は明確ではないが、脂質を構成する脂肪酸残基としてEPAとDHAが吸収される際にリン脂質由来のEPA及びDHAと、非リン脂質由来のEPA及びDHAとが競合するが、前記条件を満たすことで、リン脂質由来のEPA残基とDHA残基が優勢となると推定される。しかしながら、この推定により、本願発明が限定されるものではない。
(b)リン脂質以外に由来するDHA残基及びEPA残基とω6脂肪酸残基との比率
本発明の脂質組成物においては、限定されるものではないが、好ましくは(b)脂質を構成する脂肪酸残基のうち、リン脂質以外に由来するDHA残基及びEPA残基の合計量と、リン脂質以外に由来するω6脂肪酸残基の量との比率([DHA+EPA]/ω6)が0.140以下である。
ω6脂肪酸は、炭素と炭素の二重結合がω−6位(脂肪酸のメチル末端から6番目の結合)に存在する不飽和脂肪酸である。具体的には、リノール酸、γ−リノレン酸、及びアラキドン酸等を挙げることでき、ベニバナ油、グレープシードオイル、ヒマワリ油、コーン油、大豆油、又はゴマ油などに多く含まれている。
リン脂質以外のDHA残基及びEPA残基とω6脂肪酸残基との比率は、0.140以下であり、好ましくは0.120以下であり、より好ましいは0.100以下であり、更に好ましくは0.80以下であり、最も好ましくは0.060以下である。リン脂質以外に由来するDHA残基及びEPA残基が含まれていても、リン脂質以外に由来するω6脂肪酸残基が一定量以上含まれると、1−アルキルエーテル型リン脂質の吸収阻害が抑制される傾向がみられる。
(c)1−アルキルエーテル型リン脂質由来のEPA残基及びDHA残基と1−アルキルエーテル型リン脂質以外に由来するEPA残基及びDHA残基との比
本発明の脂質組成物においては、限定されるものではないが、好ましくは(c)リン脂質を構成する脂肪酸残基のうち、1−アルキルエーテル型リン脂質由来のEPA残基及びDHA残基の合計量1質量部に対して、1−アルキルエーテル型リン脂質以外に由来するEPA残基及びDHA残基の合計量が10.0質量部以下である。
1−アルキルエーテル型リン脂質由来のEPA残基及びDHA残基は、1−アルキルエーテル型リン脂質のsn−1位及びsn−2位に存在する脂肪酸残基である。1−アルキルエーテル型リン脂質以外に由来するEPA残基及びDHA残基としては、限定されるものではないが、ジアシル型リン脂質及びリゾリン脂質由来のEPA残基及びDHA残基、並びに中性脂質由来のEPA残基及びDHA残基などを挙げることができる。
本発明の脂質組成物においては、1−アルキルエーテル型リン脂質由来のEPA残基及びDHA残基の合計量1質量部に対して、1−アルキルエーテル型リン脂質以外に由来するEPA残基及びDHA残基の合計量が10.0質量部以下であり、好ましくは9.0質量部以下であり、より好ましくは8.0質量部以下であり、更に好ましくは7.0質量部以下であり、最も好ましくは6.0質量部以下である。1−アルキルエーテル型リン脂質以外に由来するEPA残基及びDHA残基の合計量が10.0質量部以下であることにより、更に効率的に生体内のプラスマローゲンを増加させることができる。
《リン脂質》
本発明の脂質組成物には、リン脂質として1−アルキルエーテル型リン脂質が含まれる。1−アルキルエーテル型リン脂質以外のリン脂質として、ジアシル型リン脂質、アルケニルアシル型リン脂質(プラスマローゲン)、スフィンゴリン脂質、及びリゾリン脂質を含んでもよい。
ジアシル型リン脂質は、sn−1位及びsn−2位にエステル結合を有するリン脂質であり、sn−3位の塩基により、コリン型、エタノールアミン型、又はホスファチジン酸型に分類することができる。プラスマローゲンは、sn−1位に、ビニルエーテル結合を有し、sn−2位にはアシル結合を有する脂肪酸残基を有するリン脂質であり、極性基として、エタノールアミン、コリン、又はホスファチジン酸を有している。1−アルキルエーテル型リン脂質及びプラスマローゲンを、まとめてエーテル型リン脂質と称することがある。スフィンゴリン脂質は、スフィンゴシンと脂肪酸が結合したセラミドに塩基やリン酸基が結合したものであり、スフィンゴミエリン等が挙げられる。リゾリン脂質は、リン脂質が有する2本の脂肪酸残基のうち1本を失ったものである.
従って、これらのジアシル型リン脂質、プラスマローゲン、スフィンゴリン脂質、リゾリン脂質、及び1−アルキルエーテル型リン脂質は基本骨格が異なっているが、EPA残基及びDHA残基は、これらのリン脂質に、脂肪酸残基として存在することができる。
(1−アルキルエーテル型リン脂質)
本発明の脂質組成物に含まれる1−アルキルエーテル型リン脂質は、下記一般式(I)で表されるリン脂質である。
[式中、Rは、炭素数1から21の炭化水素基であり、Rは、炭素数1〜26の脂肪酸残基、または水素原子であり、Rはコリン(−CHCHN(CH)、エタノールアミン(−CHCHNH)、セリン(−CH−CH(NH)−COOH)、グリセロール(−CH−CH(OH)−CHOH)、イノシトール(−CH−C(OH))、又は水素原子である]
前記Rの炭化水素基はアルキル基、又はアルケニル基でもよく、具体的には、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、又はヘプタデセル鎖基を挙げることができる。なお、本明細書において、1−アルキルエーテル型リン脂質の「sn−1位の脂肪酸残基」については、脂肪酸からカルボキシル基(−COOH)を除いたものを意味し、具体的には一般式(1)のRとエーテル基の炭素を含む「−CH−R」を意味し、16:0、18:0、又は18:1(炭素数:不飽和結合数)などと表記する。
また、前記Rの脂肪酸残基としては、具体的には、パルミトイル基、オレイル基、アラキドイル基、エイコサペンタエノイル基、又はドコサヘキサエノイル基等を挙げることができる。エイコサペンタエン酸(EPA)残基及びドコサヘキサエン酸(DHA)残基の量は、前記(a)及び(c)の条件を満たすことが好ましい。
なお、本明細書において、1−アルキルエーテル型リン脂質のsn−2位の脂肪酸残基とは、脂肪酸から−OHを除いたものを意味し、16:0、18:1、20:4、又は22:6(炭素数:不飽和結合数)などと表記する。
本発明の脂質組成物においては、1−アルキルエーテル型リン脂質の脂肪酸残基の由来となる脂肪酸が、どの脂肪酸であっても本発明の効果を有するが、好ましくはsn−2位の脂肪酸残基の由来となる脂肪酸のうち10%以上がDHA又EPAであることが好ましく、20%以上がDHA又はEPAであることがより好ましい。
本発明に含まれる1−アルキルエーテル型リン脂質は、グリセリンを1−アルキルエーテルグリセロールに変換し、エステル化やリン酸化を行うことにより、化学合成することも可能であるが、入手の容易性や生産性から、天然物から抽出及び分離したものが好ましい。1−アルキルエーテル型リン脂質を抽出、分離する天然物としては、一般的に1−アルキルエーテル型リン脂質含量が高いことが知られている各種の動物、植物、微生物、例えば、マグロ、イワシなどの魚類、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、タコ、イカなどの頭足類、エビ、フジツボ、オキアミ、カラヌスなどの甲殻類、ウシ、ブタ、ニワトリなどの家禽動物などの、その個体そのもの、その筋肉組織や、脂肪組織、あるいは脳などの神経組織、腸などの内臓組織、更にはその卵などを使用することができる。エーテル型リン脂質中の1−アルキルエーテル型リン脂質含量比が高い天然物であり、組織を分離することなく生体そのものを直接抽出源とすることができ、資源量が豊富であり、入手が容易であることに加え、更にはアスタキサンチンを含有することから保存安定性が良好である脂質組成物を得ることが可能であることから、オキアミを用いることが特に好ましい。
本発明の脂質組成物では、これら各種動物、植物、微生物から、溶剤抽出などによって抽出された、エーテル型リン脂質含有脂質、更には、必要に応じて、前記脂質から液々抽出やカラムクロマトグラフィー、酵素処理などでリン脂質を分離した、リン脂質画分や、更にエーテル型リン脂質を濃縮した濃縮物、また、更に精製した、精製エーテル型リン脂質を使用することができる。例えば、前記各種動物、植物、微生物等の組織からの抽出方法としては、Folch法(Folch et al.:J.Biol.Chem.,226,497−505,1957)、Bligh&Dyer法(Bligh et al.:Can.J.Biochem.Physiol.,37,911−917,1959)、あるいは安全性の高い有機溶媒であるヘキサンや低級アルコールを用いた混合溶媒を用いる方法(Hara et al.:Anal.Biochem.,90(1):420−6,1978、特開2005−179340)、また、安全性が高く、かつ液液抽出の界面分離性が優れるヘキサンとエタノールの混合溶媒を用いる方法(特開2009−227765)などがある。また、抽出効率を高めるために、前記動物組織を脱水処理したものを用いてもよい。
また、前記分離方法としては、アセトン沈殿法(山川民夫監修:生化学実験講座3,脂質の化学(日本生化学会編),p.19−20,1963,東京化学同人)、カラムクロマトグラフィー法(James et al.:Lipids,23,1146−1149,1988)等によるトリグリセリドや部分グリセリドを除去し、エーテル型リン脂質を含むリン脂質画分のみを分離精製することができる。
更に、前記濃縮方法としては、弱アルカリ処理(Hanahan et al.:J.Biol.Chem.236,59−60,1961)、あるいは哺乳動物膵臓由来リパーゼ又は微生物由来のホスホリパーゼA1処理によるジアシル型リン脂質の分解(Woelk et al.:Z Physiol.Chem.354,1265−70,1973)の方法を用いて、エーテル型リン脂質以外のリン脂質を除去することでエーテル型リン脂質を濃縮することができる。
ホスホリパーゼA1を用いて濃縮する場合、具体的には、エーテル型リン脂質含有脂質に対し、ホスホリパーゼA1、好ましくはActinomadura sp.由来のホスホリパーゼA1を添加し、好ましくは少量のジエチルエーテルと弱酸性緩衝液下で、分解反応させ、分解生成物を親水性溶媒と疎水性溶媒の混合溶媒、例えば、ヘキサン/エタノール混合溶媒により再抽出することで得ることができる。
更に詳しく述べると、エーテル型リン脂質含有脂質1gにホスホリパーゼA1を0.1〜2.0U、酢酸緩衝液pH5.0〜6.0を2〜20%、好ましくは5〜10%添加し、30〜60℃で、2〜100時間、攪拌しながら分解反応させる。反応溶液にヘキサン/エタノール/水の混合溶媒、例えばヘキサン65〜90に対し、エタノール5〜20、水4〜10、好ましくはヘキサン75〜85、エタノール10〜18、水5〜8の比の混合溶媒を加えて再抽出することで、ホスホリパーゼA1反応で生じた1−リゾリン脂質は下層の水層に、エーテル型リン脂質は上層のヘキサン層に分離することができる。ここで、上層のヘキサン層を分取し、定法によりヘキサンを除去することで、エーテル型リン脂質以外のリン脂質を除去し、エーテル型リン脂質のみを濃縮することができる。
なお、前記エーテル型リン脂質の濃縮の前又は後、好ましくは後に、トリグリセリドに代表される中性脂質を分画除去し、エーテル型リン脂質含有リン脂質とすることが好ましい。この中性脂質の除去方法としては、アセトン沈殿法やカラムクロマトグラフィーなどの公知の方法を採ることができる。そして、除去した中性脂質を前記(a)、(b)、及び/又は(c)の条件となるように、エーテル型リン脂質含有リン脂質画分に添加することができる。
更には、シリカゲルクロマトグラフィーによってsn−3位の塩基の種類別に濃縮することも可能である。例えば、シリカゲルをヘキサン/エタノール混合溶媒、好ましくは95:5〜60:40の混合溶媒で充填したカラムに、エーテル型リン脂質含有脂質やエーテル型リン脂質含有リン脂質を充填し、同溶媒をカラム体積の2〜8倍量通液させて中性脂質を溶出させた後、ヘキサン/エタノール混合溶媒、好ましくは5:95〜0:100、あるいはエタノール/水の混合溶媒、好ましくは100:0〜95:5をカラム体積の6〜15倍量通液させることにより、エタノールアミン型やホスファチジン酸型を分画することができ、続いてエタノール/水の混合溶媒、好ましくは90:10〜70:30をカラム体積の8〜20倍量通液させることにより、コリン型を分画することができる。
これらの画分に、前記のように中性脂質を前記(a)、(b)、及び/又は(c)の条件となるように、エーテル型リン脂質含有リン脂質画分に添加することができる。
本発明の脂質組成物における1−アルキルエーテル型リン脂質含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上である。
《中性脂質》
リン脂質以外のEPA残基及びDHA残基としては、中性脂質、又は食用油脂部分グリセリドのEPA残基及びDHA残基を挙げることできる。これらのEPA残基及びDHA残基を含む脂質のうち、中性脂質はグリセリン脂肪酸エステルであり、グリセリンに1つの脂肪酸が結合したモノグリセリド、グリセリンに2つの脂肪酸が結合したジグリセリド、及びグリセリンに3つの脂肪酸が結合したトリグリセリドがある。
中性脂質に含まれるEPA残基及びDHA残基は、前記グリセリンに結合したエイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸由来の脂肪酸残基である。
〔2〕飲食品
本発明の飲食品は、前記脂質組成物を含有する。本発明の1−アルキルエーテル型リン脂質を含む脂質組成物を含有する飲食品は、前記の(a)、(b)、及び/又は(c)の条件を満たす脂質組成物を含むこと以外は、公知の飲食品の製造方法を用いて製造することができる。本発明の飲食品は、前記脂質組成物を含有することにより、生体内においてプラスマローゲン含量を増加させることが可能であり、機能性食品又は健康食品(飲料も含む)として用いることができる。また動物には、飼料として与えることができる。本発明の飲食品は、例えば、動物、植物、微生物から、好ましくはオキアミから分離した前記脂質組成物を含むことが好ましい。
本発明の飲食品における前記脂質組成物の含有量は、使用する飲食品により異なるが、成人の場合、脂質組成物として1日当たり10mg〜4g、より好ましくは100mg〜2gを摂取できる量の組成物を飲食物中に含有できれば良い。具体的には、飲食品中0.1〜100質量%であることが好ましい。
なお、本発明における飲食品としては、特に限定されるものではなく、例えば味噌、醤油、めんつゆ、たれ、だし、パスタソース、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャップ、ウスターソース、とんかつソース、又はふりかけ等の調味料、お吸い物の素、カレールウ、ホワイトソース、お茶漬けの素、又はスープの素等の即席調理食品、味噌汁、お吸い物、コンソメスープ、又はポタージュスープ等のスープ類、焼肉、ハム、又はソーセージ等の畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛、佃煮、又は珍味等の水産加工品、漬物等の野菜加工品、ポテトチップス、又は煎餅等のスナック類、食パン、菓子パン、又はクッキー等のベーカリー食品類、煮物、揚げ物、焼き物、カレー、シチュー、グラタン、ごはん、おかゆ、又はおにぎり等の調理食品、パスタ、うどん、又はラーメン等の麺類食品、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、又は風味ファットスプレッド等の油脂加工食品、フラワーペースト、餡等の製菓製パン用素材、パン用ミックス粉、ケーキ用ミックス粉、又はフライ食品用ミックス粉等のミックス粉、チョコレート、キャンディ、ゼリー、アイスクリーム、又はガム等の菓子類、饅頭、又はカステラ等の和菓子類、コーヒー、コーヒー牛乳、紅茶、ミルクティー、豆乳、栄養ドリンク、野菜飲料、食酢飲料、ジュース、コーラ、ミネラルウォーター、又はスポーツドリンク等の飲料、ビール、ワイン、カクテル、又はサワー等のアルコール飲料類、牛乳、ヨーグルト、又はチーズ等の乳や乳製品等が挙げることができる。
〔3〕医薬組成物
本発明の医薬組成物は、本発明の脂質組成物を含有する。本発明の医薬組成物は、前記脂質組成物を含有するため、効率的に血液又はリンパ液中のプラスマローゲンを増加させることが可能である。本発明の脂質組成物を含有する医薬組成物は、前記の(a)、(b)、及び/又は(c)の条件を満たす脂質組成物を含むこと以外は、公知の飲医薬組成物の製造方法を用いて製造することができる。
医薬組成物における、脂質組成物の含有量は、使用する医薬組成物により異なるが、成人の場合、脂質組成物として1日当たり10mg〜4g、より好ましくは100mg〜2gを摂取できる量の組成物を医薬組成物中に含有できれば良い。具体的には、1−アルキルエーテル型リン脂質量は医薬組成物中、0.1〜100質量%であることが好ましく、0.5〜99質量%であることが好ましく、1〜80質量%であることが最も好ましい。
医薬組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質を含む脂質組成物を単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することができる通常の担体又は希釈剤とともに、プラスマローゲンの低下又は消失に起因する疾患の治療及び/又は予防が必要な対象[例えば、動物、好ましくは哺乳動物(特にヒト)]に有効量で投与することができる。
医薬組成物は、プラスマローゲンの濃度を上昇させることのできる物質を含むこともできる。このような物質としては、例えばアルキルグリセロール、イノシトールを挙げることができる。
医薬組成物の投与剤型としては、特に限定がないが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤が好ましく、特にカプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセル等)の形状が好ましい。
経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ブドウ糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリデン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
本発明の医薬組成物を用いる場合の投与量は、例えば、使用する有効成分の種類、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、生上の程度、又は投与方法に応じて適宜決定することができ、経口的に又はカテーテルなどを用いて直接消化管に投与することが可能である。
《カプセル剤》
本発明の脂質組成物、飲食品、及び医薬組成物は、同時に摂取する食品に由来する脂質成分によって吸収に影響を受けることから、脂質組成物のみを摂取することのできる経口剤、中でもカプセル剤は、特に好ましい形態である。
更に、投与形態も医薬品に限定されるものではなく、種々の形態、例えば、機能性食品や健康食品(飲料も含む)、又は飼料として飲食物の形態で与えることも可能である。
(プラスマローゲン)
プラスマローゲンは、LDLコレステロールの酸化を抑制する。LDLコレステロールの酸化は、動脈硬化症を誘導するため、プラスマローゲンを増加させることによって、動脈硬化症を予防又は治療することが可能である。更に、動脈硬化を基礎疾患とする、心筋梗塞及び脳梗塞を予防又は治療することが可能である。更に、加齢及び酸化ストレスがプラスマローゲンにより、抑制されると考えられている。加齢及び酸化ストレスが関与する疾患として癌、動脈硬化症、糖尿病、及びアルツハイマー病があり、プラスマローゲンを増加させることにより、癌、動脈硬化症、糖尿病、及びアルツハイマー病を予防又は治療することが可能である。従って本発明による経口投与剤、飲食品、又は医薬組成物が、予防又は治療することのできるプラスマローゲンの低下又は消失に起因する疾患としては、癌、動脈硬化症、糖尿病、及びアルツハイマー病を挙げることができる。更に加齢を抑制することも可能である。
本発明の脂質組成物、飲食品、又は医薬組成物を生体内に投与、特には経口投与することにより、生体内特にリンパ液や血液中のプラスマローゲンを増加させることが可能である。すなわち、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有する本発明の組成物、飲食品、又は医薬組成物を生体内に投与、特には経口投与することにより、生体内においてプラスマローゲンを増加させる方法を提供することが可能である。
本発明の飲食品や医薬組成物を経口摂取する場合の摂取量は、前記のとおり、例えば成人の場合、1−アルキルエーテル型リン脂質として1日当たり10mg〜4g、より好ましくは100mg〜2gを摂取できる量の脂質組成物を医薬組成物中に含有できる量である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《製造例1:中性脂質画分の製造》
ヘキサン:エタノール(60:40)の混合溶媒108Lに、冷凍ボイルオキアミの捏練品(オキアミCPM−MD、ADEKAファインフーズ)30kgを加えた。10分間攪拌後に、脂質を含むろ液の上層(ヘキサン層)を抽出液として回収した。ヘキサン65Lに、ろ液下層及びろ過残渣を加えた。10分間攪拌後に、同様に脂質画分を含む抽出液を回収した。更に、同じ操作を繰り返して、抽出液を回収した。得られた抽出液を混合し、エバポレーターを使用して溶媒を除去した。1−アルキルエーテル型リン脂質含有脂質として、1.1kgのオキアミ油を得た。
オキアミ油200gにアセトン2.5Lを添加し、4℃で1時間静置した。吸引ろ過により沈殿物をろ過した上清を回収した。上清のアセトンをエバポレーターにて除去し、残渣として得られた113gをオキアミ中性脂質画分とした。
得られたオキアミ油及び中性脂質画分の中性脂質、遊離脂肪酸、ジアシル型リン脂質、1−アルキルエーテル型リン脂質、及びリゾリン脂質の含量を表1に示す。
《製造例2:1−アルキルエーテル型リン脂質画分の製造》
LecitaseUltra(Novozymes)50kUを、48mLのジエチルエーテル及び102.5mLの0.2M酢酸緩衝液(pH5.0)の混合液に混濁した。製造例1で得られたオキアミ油1kgに、前記混合液に混濁したLecitaseUltraを加え、40℃で70時間攪拌することにより反応させた。これに9Lのヘキサン、エタノール、及び水の混合液(80:14:6)を添加した。混合液を10分間攪拌し、上層を回収した。残った下層に、ヘキサン7Lを加え、10分間攪拌して、上層を回収した。更に、同様の操作を繰り返し、上層を回収した。得られた抽出液を合わせて、混合溶媒をエバポレーターによって除去した。975gの残渣が得られた。
300mLのヘキサン/エタノール(80:20)の混合液に、得られた残渣分200gを溶解した。ヘキサン/エタノール(80:20)の混合溶媒でけん濁したシリカゲル(Wakosil200)400gを充填したガラスカラム(100cm×3cm)に、前記溶解液を添加した。ヘキサン/エタノール(80:20)の混合溶媒を4L通液させて中性脂質を溶出した。その後、エタノール8Lを通液させてエタノールアミンリン脂質を溶出させた。次にエタノール/水(80:20)の混合溶媒11Lを通液させてコリンリン脂質を溶出させた。溶出液をエバポレーターで濃縮し、7.2gの1−アルキルエーテル型リン脂質画分を得た。
1−アルキルエーテル型リン脂質画分の中性脂質、遊離脂肪酸、ジアシル型リン脂質、1−アルキルエーテル型リン脂質、及びリゾリン脂質の含量を表1に示す。
《比較例1》
製造例2で得られた1−アルキルエーテル型リン脂質2.8gに大豆油34.2gと造例1で得られたオキアミ中性油脂画分11.5gを添加し、100hPa減圧、60℃下でローテーターにより混合して溶解させ、1−アルキルエーテル型リン脂質の大豆油およびオキアミ中性油脂画分の溶解物を得た。
《実施例1》
製造例2で得られた1−アルキルエーテル型リン脂質4.0gに大豆油37.6gと製造例1で得られたオキアミ中性油脂画分6.9gを添加し、100hPa減圧、60℃下でローテーターにより混合して溶解させ、1−アルキルエーテル型リン脂質の大豆油および製オキアミ中性油脂画分の溶解物を得た。
《比較例2》
製造例2で得られた1−アルキルエーテル型リン脂質4.0gに大豆油24.2gと造例1で得られたオキアミ中性油脂画分20.3gを添加し、100hPa減圧、60℃下でローテーターにより混合して溶解させ、1−アルキルエーテル型リン脂質の大豆油およびオキアミ中性油脂画分の溶解物を得た。
《比較例3》
製造例2で得られた1−アルキルエーテル型リン脂質4.0gに大豆油37.3gと魚油7.2gを添加し、100hPa減圧、60℃下でローテーターにより混合して溶解させ、1−アルキルエーテル型リン脂質の大豆油および魚油の溶解物を得た。
《比較例4》
製造例2で得られた1−アルキルエーテル型リン脂質4.0gに大豆油30.1gと魚油14.4gを添加し、100hPa減圧、60℃下でローテーターにより混合して溶解させ、1−アルキルエーテル型リン脂質の大豆油および魚油の溶解物を得た。
《実施例2》
製造例2で得られた1−アルキルエーテル型リン脂質25.87gに製造例1で得られたオキアミ中性油脂画分22.63gを添加し、100hPa減圧、60℃下でローテーターにより混合して溶解させ、1−アルキルエーテル型リン脂質と中性脂質の混合物を得た。
([リン脂質以外に由来するEPA+DHA]/[リン脂質由来のEPA+DHA]=0.32、[リン脂質以外に由来するDHA+EPA]/[リン脂質以外に由来するω6]=0.023、[1−アルキルエーテル型リン脂質以外に由来するDHA+EPA]/[1−アルキルエーテル型リン脂質由来のDHA+EPA]=4.30)
《比較例5》
大豆油を比較例5とした。
《動物試験(摂食試験)》
5週齢の雄Wistar-ST系ラットを、7群(1群6匹)に分け、飼料及び水を自由に摂取させた。飼料はAIN93Gに準じた精製飼料(基本飼料:大豆油7%を含む)を用いた(表3)。なお、基本飼料は毎日交換し、飲水の水道水は3日毎に交換した。前記条件で7日間飼育した後、基本飼料の大豆油7%の代わりに1−アルキルエーテル型リン脂質の大豆油およびオキアミ中性油脂画分の溶解物を使用した飼料(実施例1、比較例1、2)、1−アルキルエーテル型リン脂質の大豆油および魚油の溶解物を使用した飼料(比較例3、4)、1−アルキルエーテル型リン脂質含量を調製した大豆油溶解物を使用した飼料(実施例2)のいずれかを与え、7日間飼育した。また、そのまま基本飼料を継続して与えた群を(比較例5)とし、血清中のプラスマローゲン量の比較対象とした。
なお、試験期間中、各群のラットの体重増加量及び餌の摂取量への影響は認められなかった。
7日間の給餌後、採血し、その血清画分の脂質を抽出し、血清中のプラスマローゲン含量をLC−MS/MSにより測定し、その結果を表4に記載した。また、比較例5(大豆油のみ)を1とした場合の増加率も示した。
表4からわかるように、基本飼料(比較例5)に対し、1−アルキルエーテル型リン脂質中のDHAおよびEPA量に対してその他の混合脂質中のDHAおよびEPA量が1.8以下に調製した組成物を使用した飼料では(実施例1、2)、血清中のプラスマローゲン量が2倍以上に増加するのに対し、1.8以上の組成物を使用した飼料では(比較例1〜4)、血清中のプラスマローゲン量の増加が小さいことがわかる。
《実施例3》
製造例2で得られた1−アルキルエーテル型リン脂質0.8gに、大豆油3.2g、タウロコール酸0.2gおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)15.8mLを添加し、超音波発生装置(TOMY、UD−201)を用いて2分間処理し、1−アルキルエーテル型リン脂質と大豆油混合物のエマルジョンを得た。
《比較例6》
製造例2で得られた1−アルキルエーテル型リン脂質0.8gに、製造例1で得られたオキアミ中性脂質画分3.2g、タウロコール酸0.2gおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)15.8mLを添加し、超音波発生装置(TOMY、UD−201)を用いて2分間処理し、1−アルキルエーテル型リン脂質とオキアミ中性脂質画分混合物のエマルジョンを得た。
《比較例7》
製造例2で得られた1−アルキルエーテル型リン脂質0.8gに、魚油3.2g、タウロコール酸0.2gおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)15.8mLを添加し、超音波発生装置(TOMY、UD−201)を用いて2分間処理し、1−アルキルエーテル型リン脂質と魚油混合物のエマルジョンを得た。
《リンパ液中のプラスマローゲン増加試験》
10週齢の雄Wistar-ST系ラット(各実施あたり7匹)の十二指腸および胸管にカテーテルを挿入し、実施例3、比較例6、比較例7のいずれかで得られた1−アルキルエーテル型リン脂質含有エマルジョンを投与させた。
30分ごとに回収したリンパ液について、脂質を抽出し、吸収された1−アルキルエーテル型リン脂質量をLC−MS/MSにより測定し、その結果を図1に記載した。
本発明の脂質組成物により、リンパ液中のプラスマローゲンが顕著に増加した。
本発明の脂質組成物は、生体内のプラスマローゲンを増加させることができる。従って、プラスマローゲンが低下することによって起きる疾患に有効である。

Claims (8)

  1. 1−アルキルエーテル型リン脂質を含有し、そして
    (a)脂質を構成する脂肪酸残基のうち、リン脂質由来のエイコサペンタエン酸(EPA)残基及びドコサヘキサエン酸(DHA)残基の合計量1質量部に対して、リン脂質以外に由来するEPA残基及びDHA残基の合計量が1.8質量部以下であることを特徴とする脂質組成物。
  2. (b)脂質を構成する脂肪酸残基のうち、リン脂質以外に由来するDHA残基及びEPA残基の合計量と、リン脂質以外に由来するω6脂肪酸残基の量との比率([DHA+EPA]/ω6)が0.140以下である、請求項1に記載の脂質組成物。
  3. (c)リン脂質を構成する脂肪酸残基のうち、1−アルキルエーテル型リン脂質由来のEPA残基及びDHA残基の合計量1質量部に対して、1−アルキルエーテル型リン脂質以外に由来するEPA残基及びDHA残基の合計量が10.0質量部以下である、請求項1又は2に記載の脂質組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の脂質組成物を含有するプラスマローゲン増加用飲食品。
  5. カプセル剤である請求項4に記載の飲食品。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の脂質組成物を含有するプラスマローゲン増加用医薬組成物。
  7. カプセル剤である請求項6に記載の医薬組成物。
  8. カプセル剤で投与される、請求項6又は7に記載の医薬組成物。
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