JP2017137546A - 金属皮膜の成膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】成膜される陰極ごとの金属皮膜の膜厚のばらつきを抑え、成膜途中において、金属皮膜とこれに接触する固体電解質膜とが一体化することなく、安定して金属皮膜を成膜することができる金属皮膜の成膜方法を提供する。
【解決手段】陽極11と基板Wとの間に、基板Wに接触するように金属イオンが含浸された固体電解質膜13を設置し、陽極11と基板Wとの間に電圧を印加して、基板Wの表面に、金属イオンに由来した金属皮膜Fを成膜する。固体電解質膜13を交換して、交換後の固体電解質膜13を用いて成膜する際に、初回の金属皮膜Fの成膜時には、第1成膜時間T1よりも長く、第2成膜時間T2よりも短い時間で、基板Wの表面に金属皮膜Fを成膜し、その後、基板Wを交換し、それ以降の金属皮膜Fの成膜時には、第2成膜時間T2よりも短い時間で金属皮膜Fを成膜する。
【選択図】図2

Description

本発明は、金属イオンが含浸された固体電解質膜を陰極に接触させて、金属イオンを還元させることにより、金属皮膜を成膜する金属皮膜の成膜方法に関する。
従来から、基板の表面に金属イオンを析出させて金属皮膜を成膜する技術が提案されている。このような技術として、例えば、特許文献1には、以下に示す金属皮膜の成膜方法が提案されている。
この成膜方法では、陽極と陰極との間に、陰極に接触するように金属イオンが含浸された固体電解質膜を設置し、陽極と陰極との間に電圧を印加して、陰極の表面で金属イオンを還元させて金属皮膜を成膜する。
特開2014−185371号公報
しかしながら、特許文献1に示す成膜方法で金属皮膜を成膜した場合、所定の成膜条件において、成膜される陰極ごとに金属皮膜の膜厚にばらつきが生じたり、陰極の表面の成膜途中の金属皮膜と固体電解質膜が一体化してしまったりすることがあり、正常な成膜ができないことがあった。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、成膜される陰極ごとの金属皮膜の膜厚のばらつきを抑え、成膜途中において、金属皮膜とこれに接触する固体電解質膜とが一体化することなく、安定して金属皮膜を成膜することができる金属皮膜の成膜方法を提供することにある。
前記課題を解決すべく、本発明に係る金属皮膜の成膜方法は、陽極と陰極との間に、前記陰極に接触するように金属イオンが含浸された固体電解質膜を設置し、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加して、前記陰極の表面に、前記金属イオンに由来した金属皮膜を成膜する金属皮膜の成膜方法であって、前記金属皮膜の成膜方法は、複数の前記陰極の表面に金属皮膜を成膜後、前記固体電解質膜を交換して、複数の前記陰極の表面に金属皮膜を成膜するものであり、成膜に用いる固体電解質膜と同じ固体電解質膜を用いて、成膜中の前記陽極と前記陰極との間の電気化学インピーダンスを成膜時間の経過ごとに測定する工程と、前記成膜時間ごとの前記電気化学インピーダンスから前記固体電解質膜の抵抗値と、電荷移動抵抗値と、を算出する工程と、前記成膜時間ごとの前記固体電解質膜の抵抗値から、前記固体電解質膜の抵抗値が一定の値となるまでの時間を第1成膜時間として設定する工程と、前記成膜時間ごとの電荷移動抵抗値から、Y軸を電荷移動抵抗値とし、X軸を成膜時間として、X−Y直交座標上にプロットし、これらのプロットした点から、指数関数からなる近似曲線を算出し、前記近似曲線から所定量以上外れて荷電移動抵抗値が上昇した点の成膜時間を第2成膜時間として設定する工程とを含み、前記固体電解質膜を交換して、交換後の前記固体電解質膜を用いて成膜する際に、初回の金属皮膜の成膜時には、前記第1成膜時間よりも長く、前記第2成膜時間よりも短い時間で、前記陰極の表面に金属皮膜を成膜し、その後、前記陰極を交換し、それ以降の金属皮膜の成膜時には、前記第2成膜時間よりも短い時間で、前記陰極の表面に金属皮膜を成膜することを特徴とする。
本発明によれば、固体電解質膜を交換して、交換後の前記固体電解質膜を用いて初回の陰極に成膜する際に、第1成膜時間よりも長い時間で、陰極の表面に金属皮膜を成膜する。これにより、固体電解質膜の金属イオンのイオン交換を完了する(飽和させる)ことができ、それ以降に成膜される金属皮膜の膜厚のばらつきを抑えることができる。一方、第2成膜時間よりも短い成膜時間で、、前記陰極の表面に金属皮膜を成膜するので、金属皮膜とこれに接触する固体電解質膜とが一体化することはない。
初回の成膜後、陰極を交換し、それ以降の金属皮膜の成膜を、第2成膜時間よりも短い時間で行うので、金属皮膜とこれに接触する固体電解質膜とが一体化することはない。
このような結果、成膜される陰極ごとの金属皮膜の膜厚のばらつきを抑え、成膜途中において、金属皮膜とこれに接触する固体電解質膜とが一体化することなく、安定して金属皮膜を成膜することができる。
本発明の実施形態に係る金属皮膜の成膜方法を行うための成膜装置の模式的分解斜視図である。 (a),(b)は、本実施形態に係る金属皮膜の成膜方法を説明するための模式的断面図である。 固相電析セルの模式的分解斜視図である。 図3に示す固相電析セルを用いた第1成膜時間および第2成膜時間を測定する測定装置の模式図である。 (a)〜(f)は、図3に示す固相電析セルにおける、成膜時間ごとの陽極と陰極との間のインピーダンススペクトルの結果を示したグラブである。 (a)〜(e)は、図3に示す固相電析セルにおける、成膜時間ごとの陽極と陰極との間のインピーダンススペクトルの結果を示したグラブである。 (a)は、図5(b)〜(f),図6(a)のインピーダンススペクトルをまとめた図であり、(b)は、図6(a)〜(e)のインピーダンススペクトルをまとめた図である。 (a)は、作用極(陰極)/固体電解質膜界面におけるCole−Coleプロット図であり、(b)は、作用極(陰極)/固体電解質膜界面の等価回路である。 固体電解質膜の抵抗値(Rbulk)と、成膜時間との関係を示したグラブである。 電荷移動抵抗値(Rct)と、成膜時間との関係を示したグラブである。
以下に本発明の実施形態に係る金属皮膜の成膜方法について、以下の図1および2を参照しながら、その詳細を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る金属皮膜の成膜方法を行うための成膜装置1の模式的分解斜視図である。図2(a),(b)は、本実施形態に係る金属皮膜の成膜方法を説明するための模式的断面図である。
1.金属皮膜の成膜装置について
本実施形態では、図1に示すように、基板Wを陰極として、成膜装置1を用いて、基板Wの表面に金属皮膜を成膜する。陰極となる基板Wは、導電性を有した金属材料からなり、たとえば、銅、ニッケル、銀、または金等を挙げることができる。
図1および図2(a)に示すように、成膜装置1は、金属製の陽極11と、陽極11と基板W(陰極)との間において、陽極11の表面に配置された固体電解質膜13と、陽極11と基板Wとの間に電圧を印加する電源部16と、を備えている。固体電解質膜13を基板Wの表面に接触させた状態で、陽極11と基板Wとの間に電源部16で一定電圧を印加することにより、成膜時に、陽極11と基板Wとの間に電流が流れる。
本実施形態では、成膜装置1は、ハウジング15をさらに備えており、図2(a)に示すように、陽極11は、銅、ニッケル、または銀などの金属のイオンを含む溶液(以下、電解液Lという)を陽極11に供給するハウジング15内に収容されている。
陽極11は、板状であり、電解液Lが透過し、かつ固体電解質膜に金属イオンを供給する、多孔質体またはメッシュ(網目状部材)からなる。陽極11の材料としては、成膜すべき金属皮膜と同じ材質の可溶性のであることが好ましい。これにより、金属皮膜の成膜速度を高めることができる。例えば、金属皮膜が銅皮膜である場合には、陽極11の材料に無酸素銅板を用いることが好ましい。
本実施形態では、複数の基板Wの表面に金属皮膜を成膜後、固体電解質膜13を交換して、基板Wの表面に金属皮膜Fを成膜する。固体電解質膜は、上述した電解液Lに接触させることにより、金属イオンを内部に含浸(含有)することができ、電圧を印加したときに基板Wの表面において金属イオン由来の金属を析出できるのであれば、特に限定されるものではない。固体電解質膜13の膜厚は、100〜200μmである。固体電解質膜の材質としては、たとえばデュポン社製のナフィオン(登録商標)などのフッ素系樹脂、炭化水素系樹脂、ポリアミック酸樹脂、旭硝子社製のセレミオン(CMV、CMD、CMFシリーズ)などの陽イオン交換機能を有した樹脂を挙げることができる。
成膜される金属皮膜の金属は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。電解液Lは、上述したように成膜すべき金属皮膜の金属をイオンの状態で含有している液であり、その金属に、例えば、ニッケル、亜鉛、銅、クロム、錫、銀、または鉛からなる群より選択される少なくとも1種または2種以上を用いることができる。
本実施形態に係る成膜装置1は、ハウジング15の上部に、加圧装置18を備えている。加圧装置18は、油圧式または空気式のシリンダなどを挙げることができ、陽極11を介して固体電解質膜13で、下地層Uを押圧する装置である。これにより、図2(b)に示すように、基板Wの表面を固体電解質膜13で均一に加圧しながら、基板Wに金属皮膜Fを成膜することができる。なお、本実施形態では、加圧装置18で基板Wを加圧したが、例えば、電解液Lの液圧を利用して、固体電解質膜13で基板Wを加圧してもよい。
本実施形態に係る成膜装置1は、基板Wを載置する金属台座20を備えており、金属台座20は、電源部16の負極に電気的に接続されている。これにより、基板Wは、電源部16の負極に導通する。一方、電源部16の正極は、ハウジング15に内蔵された陽極11に電気的に接続されている(導通している)。
2.金属皮膜の成膜方法について
まず、本実施形態では、金属皮膜の成膜方法は、複数の基板Wの表面に金属皮膜を成膜後、固体電解質膜を交換して、複数の基板Wの表面に金属皮膜を成膜するものである。以下に、図1に示す成膜装置1の固体電解質膜13を交換した後の金属皮膜の成膜方法について説明する。
まず、交換される固体電解質膜13と同じ材質の固体電解質膜を用いて、以下の工程を行う。具体的には、陽極と陰極との間に一定電圧を作用させ、成膜中の陽極と陰極との間の電気化学インピーダンスを成膜時間の経過ごとに測定する。なお、電気化学インピーダンスの測定は、成膜装置1で行ってもよいが、後述する確認試験に示すように、別途、固相電析セル40を用いて、測定してもよい。電気化学インピーダンスの方法については、以下の確認試験で後述する。
次に、成膜時間ごとの電気化学インピーダンスから固体電解質膜の抵抗値と、電荷移動抵抗値と、を算出する。これらの算出方法も、以下の確認試験で後述する。次に、成膜時間ごとの固体電解質膜の抵抗値から、固体電解質膜の抵抗値が一定の値となるまでの時間を第1成膜時間T1として設定する。なお、第1成膜時間T1の設定方法については、以下の確認試験で後述する。
ここで、後述するように、固体電解質膜の抵抗値は、固体電解質膜の金属イオンのイオン交換の状態に依存し、固体電解質膜の抵抗値が一定値となったときに(第1成膜時間T1よりも長くなったとき)、固体電解質膜のイオン交換が完了した(飽和した)と判断できる。したがって、交換後の固体電解質膜を用いて成膜する際に、初回の金属皮膜の成膜時に、第1成膜時間T1よりも長く成膜すれば、それ以降の成膜時には、固体電解質膜のイオン交換が完了した状態で金属皮膜を成膜することができる。
次に、成膜時間ごとの電荷移動抵抗値から、Y軸を電荷移動抵抗値とし、X軸を成膜時間として、X−Y直交座標上にプロットする。これらのプロットした点から、指数関数からなる近似曲線を算出し、近似曲線から所定量以上外れて荷電移動抵抗値が上昇した点の成膜時間を第2成膜時間T2として設定する。なお、第2成膜時間T2の設定方法は、以下の確認試験で後述する。
ここで、後述する発明者らの確認試験から、近似曲線から所定量以上外れて荷電移動抵抗値が上昇する(すなわち急激に荷電移動抵抗値が上昇する)第2成膜時間T2で、金属皮膜とこれに接触する固体電解質膜とが一体化することがわかった。このことから、金属皮膜の成膜時に、第2成膜時間T2よりも短い時間で成膜すれば、金属皮膜とこれに接触する固体電解質膜とが一体化することはない。
次に、第1成膜時間および第2成膜時間が設定された固体電解質膜13を用いて、金属皮膜を成膜する。まず、固体電解質膜13を新しい固体電解質膜13に交換する。次に、図2(a)に示すように、基板Wを金属台座20に載置する。次に、図2(b)に示すように、加圧装置18を用いて、固体電解質膜13を基板Wに接触させる。これにより、陽極11と基板Wとの間に、基板Wに接触するように固体電解質膜13が設置される。
次に、電源部16で陽極11と基板Wとの間に一定の電圧を作用させる。これにより、固体電解質膜13に含有していた金属イオンが、基板Wの表面で還元されて、基板Wの表面には、金属イオン由来の金属からなる金属皮膜Fを成膜することができる。ここで、交換後の固体電解質膜13を用いて、初回の金属皮膜Fの成膜時には、第1成膜時間T1よりも長く、第2成膜時間T2よりも短い時間で、基板Wの表面に金属皮膜Fを成膜する。
初回の成膜では、第1成膜時間T1よりも長い時間で、基板Wの表面に金属皮膜Fを成膜する。これにより、固体電解質膜13の金属イオンのイオン交換を完了することができ、それ以降に成膜される金属皮膜Fの膜厚のばらつきを抑えることができる。一方、第2成膜時間T2よりも短い成膜時間で、金属皮膜Fを成膜するので、金属皮膜Fとこれに接触する固体電解質膜13とが一体化することはない。
初回の成膜後、成膜装置1の状態を図2(a)の状態に戻し、成膜装置1から金属皮膜Fが成膜された基板Wを取り除き、新たな基板Wを成膜装置1にセットする。そして、同様に、金属皮膜Fを成膜する作業を繰り返す。2回目以降の金属皮膜Fの成膜時には、第2成膜時間T2よりも短い時間で金属皮膜Fを成膜する。これにより、2回目以降の金属皮膜の成膜を、第2成膜時間よりも短い時間で行うので、金属皮膜Fとこれに接触する固体電解質膜13とが一体化することはない。
このような結果、2回目以降の成膜される基板Wごとの金属皮膜Fの膜厚のばらつきを抑え、成膜途中において、金属皮膜Fとこれに接触する固体電解質膜13とが一体化することなく、成膜することができる。
<確認試験>
第1成膜時間T1と第2成膜時間T2の設定方法を、以下の確認試験により説明する。
まず、図3示す固相電析セル40を準備した。固相電析セル40は、リチウムイオン二次電池セル(宝泉(株)製 HSフラットセル 2極測定)を3極測定できるように加工したものである。
具体的には、図3に示すように、固相電析セル40は、上ボディ41と下ボディ42とを備えており、これらの間に配置される、円板状の直径12mの銅箔からなる陽極43および陰極44(古河電気工業(株)製 NC−WS)と、円板状の直径19.5mmの円板状の固体電解質膜45(旭ガラス(株) CSH50)とを打ち抜き加工により準備した。準備した固体電解質膜45を、1Mの硫酸銅(II)水溶液に24時間浸漬し、銅イオンによるイオン交換を準備した。なお、陽極43が対極になり、陰極44が作用極に相当し、上述した基板Wに相当する。
陽極43と固体電解質膜45の間に配置される樹脂ガイド46には、電解液(銅イオンを含む溶液)として、1Mの硫酸銅(II)水溶液を収容し、上ボディ41と陽極43との間には、陽極押え部材47と、陽極押え部材47を介して陽極43を一定の加圧力(具体的には、2.4MPa)で加圧するスプリング48を配置した。なお、上ボディ41と下ボディ42には、シール材49が配置した。
上ボディ41と下ボディ42との間に、陽極43等をセットした状態で、上ボディ41の取付け孔41aに挿通した下ボディ42のシャフト42aに、蝶ナット42bを螺着した。これにより、図4に示す固相電析セル40を作製した。
図4に示すように、固相電析セル40の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定装置として、ポテンショスタット((株)東陽テクニカ製 Solartoron1287)61と、周波数応答解析装置((株)東陽テクニカ製 Solartoron1255B)62と、解析装置63と、を接続し、オシロスコープ64でインピーダンスを測定した。
具体的な条件としては、電位幅10mV、周波数範囲10mHz〜100kHzで、1桁5点で対数掃引し、対極(陽極43)と作用極(陰極44)との間の極間電圧を0.05Vにし、成膜初期過程における電気化学インピーダンスを測定した。
成膜時間は、0秒、5分10秒(310秒)、10分20秒(620秒)、15分30秒(930秒)、20分40秒(1240秒)、25分50秒(1550秒)、31分(1860秒)、36分10秒(2170秒)、41分20秒(2480秒)、46分30秒(2790秒)、51分30秒(3100秒)とした。これらに対応するインピーダンススペクトルを順次、図5(a)〜(f),図6(a)〜(e)に示した。さらに、図7(a)には、図5(b)〜(f),図6(a)のインピーダンススペクトルをまとめて示し、図7(b)には、図5(a)〜(e)のインピーダンススペクトルをまとめて示した。
<結果>
図5(a)に示すように、成膜時間0秒のインピーダンススペクトルでは、誘導性挙動を示す容量性半円が観測された。ここで、高周波側に誘導性挙動が現われる原因としては、(1)ポテンショスタットの応答遅れ、(2)作用極(陰極44)の配線のよれ、(3)作用極(陰極44)の形状(電流が螺旋に流れる)が挙げられる。また、低周波数領域における誘導性挙動は、作用極(陰極44)における化学反応に起因したものである。
これに対して、図5(b)〜(f)および図6(a)〜(e)に示した、各成膜時間のインピーダンススペクトルでは、高周波数領域に、電気二重層容量と荷電移動抵抗値に起因する容量性半円が観測され、低周波数領域に銅イオンの物質輸送(銅の溶解反応と電析反応)に起因する有限拡散の挙動が観測された。
また、図7(a),(b)に示すように、成膜時間が長くなるにつれて、全体のインピーダンスが大きくなることがわかった。
<考察>
作用極(陰極)/固体電解質膜界面は、電解液側に電気二重層が形成されるため、容量性挙動を示し、その容量は、電気二重層容量(Cdl)と呼ばれる。作用極(陰極44)に電位を印加すると、電気二重層に界面電位差がかかり、電荷移動反応の駆動力となる。その電荷移動反応の速度は、電流と比例関係にあり、界面電位差と電流の比は電荷移動抵抗値(Rct)と定義されている。
ここで、一般的に、電荷移動抵抗値(Rct)が小さいと、電荷移動反応が起こり易く、電荷移動抵抗値(Rct)が大きいと、電荷移動反応は起こり難いため、電荷移動抵抗値(Rct)は、電気化学反応の指標として用いられている。
図8(a)は、作用極(陰極)/固体電解質膜界面におけるCole−Coleプロット図であり、図8(b)は、作用極(陰極)/固体電解質膜界面の等価回路である。界面特性は、電気二重層容量(Cdl)と、電荷移動抵抗値(Rct)とに相当し、固体電解質膜45の抵抗値(Rbulk)を直列に配置した等価回路として、電極反応を示すことができる。
ここで、固体電解質膜45の性能が低下(硫酸銅(II)水溶液により固体電解質膜45が銅によりイオン交換され、固体電解質膜の電気抵抗が増加)すると、インピーダンスの軌跡と、実数軸との交点の値が大きくなる。一方、電極性能が低下(作用極の成膜状態が変化し、電気二重層容量(Cdl)が増加)すると、インピーダンススペクトルの大きさが大きくなる。また、電荷移動抵抗値(Rct)および固体電解質膜45の抵抗値(Rbulk)は、印加する電気信号の周波数に依存しない。
本件では、図8(a)に示すように、インピーダンスの軌跡が、高周波側および低周波側極限でそれぞれの実数軸と交わる点を想定し、固体電解質膜45の抵抗値(Rbulk)、固体電解質膜45の抵抗値(Rbulk)+電荷移動抵抗値(Rct)と仮定した。そして、固体電解質膜45の抵抗値(Rbulk)を固体電解質膜45の抵抗値として採用し、図5(a)〜(f),図6(a)〜(e)に示した各成膜時間におけるインピーダンススペクトルにおいて、図8(b)の等価モデルを用いて、固体電解質膜45の抵抗値(Rbulk)と電荷移動抵抗値(Rct)とを分離した。
図9は、固体電解質膜の抵抗値(Rbulk)と、成膜時間との関係を示したグラブである。図10は、電荷移動抵抗値(Rct)と、成膜時間との関係を示したグラブである。なお、図10では、成膜時間ごとの電荷移動抵抗値(Rct)から、Y軸を電荷移動抵抗値(Rct)とし、X軸を成膜時間として、X−Y直交座標上にプロットし、これらのプロットした点から、指数関数からなる近似曲線を算出している。
図9に示すように、固体電解質膜45の抵抗値(Rbulk)は、時間経過とともに、増加し、成膜時間2170秒(36分10秒)を経過すると、一定になることが分かった。固体電解質膜45の抵抗値(Rbulk)が一定になった理由としては、陽極と陰極との間に電圧を印加することにより、固体電解質膜45において、イオン交換していないスルホン酸基の銅イオンの置換が飽和状態になったことが考えられる。
図10に示すように、電荷移動抵抗値(Rct)は、成膜時間2790秒(46分30秒)までは、時間経過とともに、指数関数的に増加し、各成膜時間における、電荷移動抵抗値(Rct)の値は、所定の指数関数の近傍にプロットされる。しかしながら、成膜時間3100秒(51分40秒)の電荷移動抵抗値(Rct)は、急激に増加し、上述した指数関数の近傍には、プロットされない値となった。具体的には、成膜時間3100秒(51分40秒)では、電荷移動抵抗値(Rct)の実際の値は294Ωであり、上述した指数関数で予測される電荷移動抵抗値(Rct)の予測される値は257Ωであり、大きく異なる。すなわち、成膜時間3100秒(51分40秒)では、近似曲線から所定量以上外れて荷電移動抵抗値が上昇している。
また、成膜時間3100秒(51分40秒)では、固体電解質膜45が作用極(陰極44)と強く密着(一体化)し、作用極(陰極44)の表面は、黒色化しており、黒色化の原因は、酸化銅が生成されていたと推定される。
また、銅皮膜には異常に成長した部分は存在しなかったことから、銅皮膜と固体電解質膜45とは、アンカー効果による物理的な密着ではない。すなわち、成膜初期過程において、成膜時間3100秒(51分40秒)を経過すると、以下に示す(A)および(B)の一連の反応式で示すように、成膜された銅が酸化し、銅皮膜の表面と固体電解質膜45の表面のスルホン酸基が化学的に反応したと考えられる。すなわち、アンカー効果による物理的な密着ではなく、化学的な密着により、電解質膜と銅皮膜とが一体化すると考えられる。
(A)2Cu−M+1/2O→CuO−M
(B)R−SOH+1/2CuO−M→R−SO・Cu−M+1/2H
以上から、上述した、第1成膜時間T1=2170秒、第2成膜時間T2=3100秒とすればよい。すなわち、図1に示す成膜装置1に適用し、金属皮膜Fとして銅皮膜を成膜する場合、交換後の新たな固体電解質膜13を用いて定電位(一定電圧)の印加で銅皮膜を成膜する際には、以下のようにして、金属皮膜を成膜する。
具体的には、1回目(初回)の成膜では、第1成膜時間T1よりも長く、第2成膜時間T2よりも短い時間で、銅皮膜を成膜する。これにより、固体電解質膜13のイオン交換を完了することができ、成膜される金属皮膜の膜厚のばらつきを抑え、銅皮膜とこれに接触する固体電解質膜とが一体化することはない。
それ以降(2回目以降)の成膜では、第2成膜時間T2よりも短い時間で成膜すれば、固体電解質膜と銅皮膜が一体化せずに、高品質な銅皮膜を形成することができると考えられる。
1:成膜装置、11:陽極、13:固体電解質膜、15:ハウジング、16:電源部、18:加圧装置、20:金属台座、40:固相電析セル、43:陽極(対極)、44:陰極(作用極)、45:固体電解質膜、T1:第1成膜時間、T2:第2成膜時間、W:基板(陰極)。

Claims (1)

  1. 陽極と陰極との間に、前記陰極に接触するように金属イオンが含浸された固体電解質膜を設置し、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加して、前記陰極の表面に、前記金属イオンに由来した金属皮膜を成膜する金属皮膜の成膜方法であって、
    前記金属皮膜の成膜方法は、複数の前記陰極の表面に金属皮膜を成膜後、前記固体電解質膜を交換して、複数の前記陰極の表面に金属皮膜を成膜するものであり、
    成膜に用いる固体電解質膜と同じ固体電解質膜を用いて、成膜中の前記陽極と前記陰極との間の電気化学インピーダンスを成膜時間の経過ごとに測定する工程と、
    前記成膜時間ごとの前記電気化学インピーダンスから前記固体電解質膜の抵抗値と、電荷移動抵抗値と、を算出する工程と、
    前記成膜時間ごとの前記固体電解質膜の抵抗値から、前記固体電解質膜の抵抗値が一定の値となるまでの時間を第1成膜時間として設定する工程と、
    前記成膜時間ごとの電荷移動抵抗値から、Y軸を電荷移動抵抗値とし、X軸を成膜時間として、X−Y直交座標上にプロットし、これらのプロットした点から、指数関数からなる近似曲線を算出し、前記近似曲線から所定量以上外れて荷電移動抵抗値が上昇した点の成膜時間を第2成膜時間として設定する工程とを含み、
    前記固体電解質膜を交換して、交換後の前記固体電解質膜を用いて成膜する際に、
    初回の金属皮膜の成膜時には、前記第1成膜時間よりも長く、前記第2成膜時間よりも短い時間で、前記陰極の表面に金属皮膜を成膜し、
    その後、前記陰極を交換し、それ以降の金属皮膜の成膜時には、前記第2成膜時間よりも短い時間で、前記陰極の表面に金属皮膜を成膜することを特徴とする金属皮膜の成膜方法。
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