JP2018156921A - アルミ導電部材の製造方法及びアルミ導電部材 - Google Patents

アルミ導電部材の製造方法及びアルミ導電部材 Download PDF

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喜弘 田口
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Sayuri Shimizu
さゆり 清水
和夫 山岸
Kazuo Yamagishi
和夫 山岸
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定男 井上
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勇太 高橋
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Abstract

【課題】アルミニウム又はアルミニウム合金を用いて、接触抵抗及び耐食性に優れたアルミ導電部材をコスト性に優れて製造することができるアルミ導電部材の製造方法及びアルミ導電部材を提供する。【解決手段】アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材とこのアルミ基材の表面に積層された導電層とを備えるアルミ導電部材の製造方法であって、前記アルミ基材の表面をフッ酸とフッ化アンモニウムとを含んだ酸性混合溶液でエッチング処理した後に、炭素粉末とバインダー樹脂とを含んだ導電性塗料を塗布し、熱処理して導電層を形成することを特徴とするアルミ導電部材の製造方法及びアルミ導電部材である。【選択図】なし

Description

この発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材とこのアルミ基材の表面に積層された導電層とを備えるアルミ導電部材の製造方法及びアルミ導電部材に関するものであり、詳しくは、接触抵抗が低く、耐食性に優れたアルミ導電部材をコスト性に優れて製造することができるアルミ導電部材の製造方法及びアルミ導電部材に関する。
近年、地球環境問題やエネルギー問題を解決するエネルギー源として燃料電池が注目されている。燃料電池は、通常、アノード及びカソードからなる一対の電極とこれらの電極間に介装される電解質膜とからなる単位セルを、セパレータを介して複数個積層させてスタックを形成してなる。この際使用されるセパレータは、隣り合い供給される水素と酸素とを確実に分離する機能が求められる。また、スタックの両端には、電流を取り出すのに用いる集電板が配設され、この集電板には、発生した電流を効率的に集電できることが求められる。
そして、これらセパレータや集電板等の導電部材に要求される特性としては、接触抵抗が低いこと、酸性溶液中における耐食性に優れていること、コスト性に優れていることなどである。
例えば、セパレータについては、主に、電極との間での接触抵抗を低減させるのに好都合である黒鉛材料からなる黒鉛製セパレータが使用されている。しかしながら、黒鉛製セパレータは、その材料自体が高価であり、また、靭性に乏しくて脆い材質であることから、水素や酸素が流れるセパレータ流路を形成する際に緻密な機械加工が必要となって、加工コストが高く、しかも、耐衝撃性や耐振動性等にも乏しく、更には、リサイクルも困難であるという問題がある。
そこで、近年においては、アルミニウム材やチタン材等の金属基材を用いて、その表面に金(Au)や白金(Pt)等のメッキを被覆した金属製導電部材が注目を集めている。例えば、特許文献1では、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材の片側表面に、Niめっき皮膜と、Pd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os,及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき皮膜と、Auめっき皮膜とを備えた燃料電池用集電板が提案されている。この燃料電池用集電板はAuめっき皮膜の膜厚を0.01μm〜0.1μmと薄くしても耐食性に優れると共に、接触抵抗の増加を抑えることができる。ところが、Auめっき皮膜の膜厚を従来に比べて薄くできたとしても、材料に起因して集電板の価格を高めてしまうため、更にコスト性を改善することが求められる。
そのため、金や白金等のメッキ皮膜にかわる導電層を得る方法として、例えば、アルカリエッチング処理したアルミニウム合金製セパレータ基材の表面に、黒鉛粉末等の炭素系材料とバインダー樹脂との質量比が所定の範囲である導電性塗料を塗布し、熱圧着して導電層を形成する方法が提案されている(特許文献2)。この炭素系材料を含む導電性塗料を塗布する方法では、アルカリエッチング処理により露出したアルミニウムの第二相化合物と炭素系材料とが接触し、導通パスとなって低い接触抵抗が得られると共に、耐食性も確保できる。しかしながら、この方法では、導電性塗料を塗布したセパレータ基材を一枚ずつ熱圧着して導電層を形成する必要があり、例えば自動車で使用されるような燃料電池のスタックを形成するためには、数百枚のセパレータが使用されることから、これらのセパレータを一枚ずつ熱圧着して製造するにはコストが掛かり、更なる改善をしなければならない。
上記では、燃料電池用のセパレータ及び集電板を例として説明したが、例えばバスバー等の導電部材においても、低接触抵抗と優れた耐食性を有し、コスト性にも優れることが求められる。
特開2013−105629号公報 特開2012−104229号公報
このような状況のもと、本発明者らは、特に熱圧着を行わなくても、コスト性に優れながら、接触抵抗が低く、耐食性にも優れた導電部材を得る方法について鋭意検討した結果、基材としてアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材を用いて、フッ酸とフッ化アンモニウムとを含んだ酸性混合溶液によるエッチング処理を行い、その上に炭素粉末とバインダー樹脂とを含んだ導電性塗料を塗布し、熱処理して導電層を形成することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
したがって、本発明の目的は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材を用いて、接触抵抗及び耐食性に優れたアルミ導電部材をコスト性に優れて製造することができるアルミ導電部材の製造方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材を用いたアルミ導電部材であり、低接触抵抗に加えて優れた耐食性を有し、しかも、コスト性にも優れたアルミ導電部材を提供することにある。
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材とこのアルミ基材の表面に積層された導電層とを備えるアルミ導電部材の製造方法であって、
前記アルミ基材の表面をフッ酸とフッ化アンモニウムとを含んだ酸性混合溶液でエッチング処理した後に、炭素粉末とバインダー樹脂とを含んだ導電性塗料を塗布し、熱処理して導電層を形成することを特徴とするアルミ導電部材の製造方法。
(2)前記酸性混合溶液によるアルミ基材のエッチング処理により、算術平均高さ(Sa)が0.5μm以上2.5μm以下であり、かつ、スキューネス(Ssk)が−0.5以上の梨地面を形成すると共に、この梨地面に観察される長径1μm以上の金属間化合物が単位面積当たり3500個/mm以上の割合で存在する(1)に記載のアルミ導電部材の製造方法。
(3)前記炭素粉末が黒鉛粉末とカーボンブラックとの炭素系混合粉末であり、前記炭素系混合粉末とバインダー樹脂との質量比が40:60〜85:15である(1)又は(2)に記載のアルミ導電部材の製造方法。
(4)前記熱処理は、温度50℃以上250℃以下、及び時間1分以上60分以下の熱処理である(1)〜(3)のいずれかに記載のアルミ導電部材の製造方法。
(5)前記酸性混合溶液によるエッチング処理に先駆けて、アルカリ処理により前記アルミ基材の表面の酸化物除去を行うと共に、前記酸性混合溶液によるエッチング処理後には、酸処理により前記アルミ基材の表面の水酸化物除去を行う(1)〜(4)のいずれかに記載のアルミ導電部材の製造方法。
(6)前記アルミ基材が、1000系アルミニウム製、3000系アルミニウム合金製、又は5000系アルミニウム合金製のアルミ基材である(1)〜(5)のいずれかに記載のアルミ導電部材の製造方法。
(7)前記アルミ導電部材が、燃料電池用のセパレータであるか、又は燃料電池用の集電板である(1)〜(6)のいずれかに記載のアルミ導電部材の製造方法。
(8)アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材とこのアルミ基材の表面に積層された導電層とを備えるアルミ導電部材であって、
前記導電層は炭素粉末とバインダー樹脂とを含んでおり、前記アルミ基材の表面は、算術平均高さ(Sa)が0.5μm以上2.5μm以下であり、かつ、スキューネス(Ssk)が−0.5以上の梨地面を有すると共に、この梨地面に観察される長径1μm以上の金属間化合物が単位面積当たり3500個/mm以上の割合で存在することを特徴とするアルミ導電部材。
(9)前記炭素粉末が黒鉛粉末とカーボンブラックとの炭素系混合粉末であり、前記炭素系混合粉末とバインダー樹脂との質量比が40:60〜85:15である(8)に記載のアルミ導電部材。
(10)前記金属間化合物が、Al−Fe−Si系金属間化合物、Al−Fe−Mn系金属間化合物、又はAl−Mn系金属間化合物の1種又は2種以上を含む(8)又は(9)に記載のアルミ導電部材。
(11)前記アルミ基材の梨地面における少なくとも一部の金属間化合物が、前記導電層内の炭素粉末と電気的に接続されている(8)〜(10)のいずれかに記載のアルミ導電部材。
(12)4端子法により測定した接触抵抗値が、40mΩcm以下である(8)〜(11)のいずれかに記載のアルミ導電部材。
(13)pH3の3質量%酢酸水溶液を用いて、電位掃引速度30mV/minで測定した電気化学的分極特性評価法による分極電流が、1μA/cm以下である(8)〜(12)のいずれかに記載のアルミ導電部材。
(14)前記アルミ導電部材が、燃料電池用のセパレータであるか、又は燃料電池用の集電板である(8)〜(13)のいずれかに記載のアルミ導電部材。
本発明のアルミ導電部材の製造方法によれば、特に熱圧着を行わなくても、コスト性に優れながら、接触抵抗が低く、優れた耐食性を有するアルミ導電部材を得ることができる。
図1は、フッ酸とフッ化アンモニウムとを含んだ酸性混合溶液によってアルミ基材をエッチング処理したときの様子を説明するモデル図である。 図2は、アルミ基材としてJIS規格のA5052アルミニウム合金を用いて酸性混合溶液によってエッチング処理したときの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した表面SEM画像である。 図3は、アルミ導電部材からアルミ基材を剥離して、残った導電層の(A)表面(アルミ基材が接していない側)及び(B)裏面(アルミ基材が接していた側)から撮影した表面SEM画像である。 図4は、実施例4に係る酸性混合溶液によるエッチング処理後のアルミ基材表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した表面SEM画像であって、(A)二次電子像及び(B)反射電子像である。 図5は、実施例10に係る酸性混合溶液によるエッチング処理後のアルミ基材表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した表面SEM画像であって、(A)二次電子像及び(B)反射電子像である。 図6は、比較例4に係るアルカリエッチング処理後のアルミ基材表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した表面SEM画像であって、(A)二次電子像及び(B)反射電子像である。 図7は、比較例7に係るアルカリエッチング処理後のアルミ基材表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した表面SEM画像であって、(A)二次電子像及び(B)反射電子像である。 図8は、実施例11に係る酸性混合溶液によるエッチング処理後のアルミ基材表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した表面SEM画像であって、(A)二次電子像及び(B)反射電子像である。 図9は、実施例11に係る酸性混合溶液によるエッチング処理後のアルミ基材表面について、エネルギー分散型X線分析(EDX)を行った結果であって、(A)図8(a)における結果及び(B)図8(b)における結果である。 図10は、比較例8に係る酸性混合溶液によるエッチング処理後のアルミ基材表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した表面SEM画像であって、(A)二次電子像及び(B)反射電子像である。 図11は、比較例8に係る酸性混合溶液によるエッチング処理後のアルミ基材表面について、エネルギー分散型X線分析(EDX)を行った結果であって、(A)図10(a)における結果及び(B)図10(b)における結果である。 図12は、本発明の酸性混合溶液によるエッチング処理の代わりにアルミ基材をアルカリエッチングしたときの様子を説明するモデル図である。 図13は、アルミ基材としてJIS規格のA5052アルミニウム合金を用いて酸性混合溶液によるエッチング処理の代わりにアルカリエッチング処理したアルミ基材の表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した表面SEM画像である。
以下、本発明のアルミ導電部材の製造方法及びアルミ導電部材について、詳細に説明する。
本発明におけるアルミ導電部材の製造方法では、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材の表面をフッ酸とフッ化アンモニウムとを含んだ酸性混合溶液(以下、単に「酸性混合溶液」ということがある)でエッチング処理した後に、炭素粉末とバインダー樹脂とを含んだ導電性塗料を塗布し、熱処理して導電層を形成してアルミ導電部材を得るようにする。
本発明において、アルミ基材のエッチング処理に用いられるエッチング処理液としては、フッ酸とフッ化アンモニウムとを含んだ酸性混合溶液を用いる。フッ酸とフッ化アンモニウムとを含む酸性混合溶液によりエッチング処理を行うと、アルミ基材中の卑な金属であるアルミニウムが、貴な金属である金属間化合物を残して溶解するため、図1に示すように金属間化合物を山の頂部や裾に有する梨地面が形成されると考えられる。そして、エッチング後のアルミニウムは自然酸化皮膜が形成されやすいのに対し、金属間化合物は自然酸化皮膜が形成され難いため、露出した金属間化合物が後に形成される導電層内の炭素粉末と接触して導通パスとなり、低い接触抵抗が得られるようになると考えられる。
図2には、アルミ基材としてJIS規格のA5052を用いて本発明の酸性混合溶液によるエッチング処理を行ったアルミ基材の表面SEM画像が示されている。このエッチング処理後のアルミ基材の表面は、凹凸形状を有し、図1に示すような梨地面に形成されているのがわかる。後述の実施例で説明するように、梨地面を形成する山の頂部には、アルミ基材に含まれる金属間化合物が露出していることをエネルギー分散型X線分析(EDX)により確認した。
一方、本発明の酸性混合溶液によるエッチング処理の代わりに、特許文献2にあるような水酸化ナトリウム水溶液を用いて、濃度50〜150g/L、浸漬温度40〜60℃、及び浸漬時間1〜3分で浸漬するアルカリエッチング処理を行ったアルミ基材(A5052)の場合には、金属間化合物を中心にその周りのアルミ基材が溶解し、結果的にディンプル(窪み)形状を有したエッチング処理面が形成され、主に金属間化合物はディンプルの中に存在すると考えられる(図12)。図13に、後述の比較例8で用いたアルカリエッチング処理を行ったアルミ基材(A5052)の表面SEM画像を示す。このアルカリエッチング処理後のアルミ基材の表面は、ディンプル形状となり、また、図2に比べて金属間化合物の露出が少なく、金属間化合物がディンプルの中に存在していることが後述の比較例で確認された。そのため、アルカリエッチング処理されたアルミ基材に導電性塗料を塗布して導電層を形成するには、導電性塗料をディンプルの中に侵入させ、金属間化合物と黒鉛粉末とが接触できるように熱圧着をする必要がある。これに対して、本発明の酸性混合溶液によるエッチング処理においては、梨地面の山の頂部や裾に金属間化合物が位置するため、導電性塗料を塗布して熱処理するだけでよく、コスト性に優れる。
本発明のエッチング処理に用いる酸性混合溶液は、一般にアルミニウム展伸材のロール目やダイスマーク等を除去した艶消しで白色仕上げの建材、エクステリア製品等の用途において、アルミニウム表面の梨地仕上げ処理に使用されるものであり、フッ酸を含んだ酸性フッ化アンモニウム溶液であればよい。これらフッ酸とフッ化アンモニウムは、化学式NHF・HFの酸性フッ化アンモニウムであり、0.5mol/L以上1.5mol/L以下の水溶液である。また、この酸性溶液は、極微細な凹凸除去等の目的から、更にリン酸や硫酸、シュウ酸を含むようにしてもよい。このような酸性混合溶液の市販品としては、例えば、奥野製薬工業社製のアルサテンOL-8やアルサテンOL-25の水溶液等が挙げられる。
本発明において、アルミ基材を酸性混合溶液でエッチング処理する処理方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、浸漬法やスプレー法等が挙げられるが、好ましくは浸漬法で行うのがよい。浸漬法の具体的な処理条件としては、例えば、浸漬温度30℃以上60℃以下、好ましくは40℃以上55℃以下、及び浸漬時間0.5分以上20分以下、好ましくは5分以上15分以下の条件であるのがよい。
本発明において、酸性混合溶液によるエッチング処理後のアルミ基材の表面は、算術平均高さ(Sa)が0.5μm以上2.5μm以下、好ましくは1.0μm以上2.0μm以下であり、かつ、スキューネス(Ssk)が−0.5以上、好ましくは−0.3以上の梨地面に形成される。Saが0.5μmより小さいと凹凸が不十分で、接触抵抗が高くなり、2.5μmより大きいと、逆に、大きな凹凸形状により相手材との接触面積が低下して、接触抵抗が増加する。また、Sskが−0.5より小さいと、凸形状の数、大きさが不十分で、接触抵抗が高くなる。ここで、Saとは、下記式(1)で定義される。また、Sskとは平均面を中心とした時の高さ分布の偏り度を表すパラメータであり、下記式(2)で定義される。Ssk>0であると、細かい山が多い表面となり、反対にSsk<0であると細かい谷が多い表面となる。本発明では、アルミ基材と炭素粉末とが接触して導通パスを形成し、低接触抵抗となることから、アルミ基材には細かいピンのような山が多く形成されることが望まれる。そのため、Sskの上限値は特に設けていないが、エッチングによる作用等を考慮すると、実質的には0.3である。
Figure 2018156921
Figure 2018156921
式(2)中のSqは、統計学での標準偏差を表すパラメータであり、平均面をxy面、縦方向をZ軸とし、測定された表面形状曲線をZ(x,y)とし、測定面積をAとする時、下記式(3)で定義される値である。
Figure 2018156921
ここで、後述する比較例8のA5052をアルミ基材として用いてアルカリエッチング処理したアルミ基材においては、Saが0.453μm、Sskが−1.025であり、アルカリエッチング処理では、上記の範囲のSa及びSskを有するアルミ基材を得ることができない。
また、本発明において、アルミ基材の梨地面には、好ましくは長径1μm以上の金属間化合物が単位面積当たり3500個/mm以上、より好ましくは5000の個/mm以上の割合で存在するようにするのがよい。ここで、金属間化合物とは、材料中に含まれる素材金属のアルミニウム(Al)以外の物質(Mn、Fe、Si、Cu、Zn、その他の元素)を含んで当該材料中に形成されるものであって、金属間化合物の形状は板(アルミ基材)の圧延方向に対して概ね2:1の長円形であり、表面SEM画像より観測される粒子径は長辺であると考えられる。そのため表面SEM画像における粒子径が1μmであると観測できれば、表面への突出高さは0.5μmであると推測される。突出高さ0.5μm以上の粒子が導電層内の炭素粉末と導通パスを形成してアルミ基材の抵抗低減に寄与すると考えられるので、表面SEM画像から粒子径1μm以上の金属間化合物の粒子数を計測する。
すなわち、長径1μm以上の金属間化合物が単位面積当たり3500個/mm以上であれば、アルミ基材の表面に形成された導電層内の炭素粉末との間での電気的接続が不十分になることがなく、燃料電池用のセパレータや集電板等のアルミ導電部材として必要な所望の導電性を付与できる。なお、この金属間化合物の単位面積当たりの個数は、単位体積当たりの金属間化合物量、平均粒径と表面からの溶解量を考慮すると、その上限は実質的には10000個/mmであると言える。
本発明において、アルミ導電部材を形成するアルミ基材については、アルミニウム又はアルミニウム合金であれば特に制限されるものではないが、金属間化合物の中でも、Al−Fe−Si系金属間化合物、Al−Fe−Mn系金属間化合物、又はAl−Mn系金属間化合物を含むものは、他の金属間化合物に比べて導電性の点で有利であることが分かっている。そのため、好ましくは、Al−Fe−Si系金属間化合物を有する1000系のアルミニウムや5000系のアルミニウム合金のほか、Al−Fe−Mn系金属間化合物やAl−Mn系金属間化合物を有する3000系のアルミニウム合金等を挙げることができる。また、Si:0.05〜0.10、Fe:0.14〜0.19、Cu:0.01以下、Mn:0.95〜1.05、Mg:0.02以下、及び、残部:アルミニウムである成分組成(wt%)を有するアルミニウム合金(以下、単に「合金A」と呼ぶ。)についても、好適なアルミ基材として挙げることができる。
このようにして酸性混合溶液によるエッチング処理が行われ、表面に金属間化合物が露出したアルミ基材については、次に、その表面に所定の導電性塗料を塗布し、熱処理して導電層を形成する。
本発明においては、導電性塗料はアルミ基材の金属間化合物と導通パスを形成する炭素粉末と、バインダー樹脂とを含む。この炭素粉末は、好ましくは黒鉛粉末であるが、黒鉛粉末にカーボンブラックを配合した炭素系混合粉末でもよく、このうち、黒鉛粉末については、例えば天然黒鉛や人造黒鉛など、その調整手段については特に制限はないが、好ましくは、平均粒径が1〜100μm、より好ましくは3〜30μmに調整された黒鉛粒子であるのがよい。平均粒径が1μmより小さいと得られる塗膜の導電性が乏しくなり、反対に100μmより大きくなると黒鉛が嵩張って塗膜の内部に樹脂が十分充填されない箇所が生じ、耐酸性を悪化させたり、成型性が悪化するおそれがある。
一方、バインダー樹脂については、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂共に使用可能であり、例えばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコン系樹脂等を例示することができ、これらの1種又は2種以上を併用して用いることができる。このうち、燃料電池の場合での発電時の硫酸酸性環境における樹脂の耐酸性の観点からは、好ましくは、エポキシ樹脂又はフェノール樹脂のいずれか一方もしくは両方を混合したものであるのがよい。
炭素粉末とバインダー樹脂の割合としては、アルミ導電部材の用途によっても変化し、導電層として求められる電気導電度によるため一概に特定するのは難しいが、例えば燃料電池のセパレータとして用いる場合であれば、炭素粉末とバインダー樹脂の質量比が40:60〜85:15となるようにするのがよく、好ましくは45:55〜80:20であるのがよい。また、炭素粉末として、黒鉛粉末とカーボンブラックとの炭素系混合粉末を用いる場合には、黒煙粉末とカーボンブラックとの質量比を70:30〜95:5、好ましくは75:25〜90:10の範囲とするのがよく、黒鉛粉末とカーボンブラックとの炭素系混合粉末と、バインダー樹脂との質量比が40:60〜85:15、好ましくは45:55〜80:20の範囲となるようにするのがよい。このような範囲とすることで、緻密な皮膜(導電層)が得られて耐食性に優れると共に、導電層中の炭素粉末同士がより緊密に接触して、導電性に優れたアルミ導電部材となる。
このような導電性塗料の市販品としては、日本黒鉛株式会社製のエブリオーム101P等が例示される。
導電性塗料をエッチング処理後のアルミ基材の表面に塗布する手段については、例えばスクリーン印刷法、浸漬法、ロールコート法、スプレーコート法、静電塗装法等の公知の方法を用いることができ、特に制限されない。
アルミ基材の表面に導電性塗料を塗布した後は、熱処理してバインダー樹脂を硬化させて、アルミ基材の表面に導電層を形成する。この熱処理については、バインダー樹脂の種類などによっても変化するが、例えばフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂を用いる場合には、温度130℃以上170℃以下、好ましくは140℃以上160℃以下、及び時間1分以上30分以下、好ましくは3分以上10分以下の条件で行うのがよい。一方で、例えばエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を用いる場合には、温度50℃以上250℃以下、好ましくは100℃以上200℃以下、及び時間1分以上60分以下、好ましくは3分以上30分以下の条件で行うのがよい。また、導電層の厚みについては、得られるアルミ導電部材の用途等によっても変わるが、例えば燃料電池のセパレータとする場合には、導電性と耐食性を兼備えたコーティングとすることなどを考慮すれば、好ましくは1μm以上50μm以下であるのがよい。1μmより薄いと耐食性が劣るおそれがあり、反対に、50μmより厚いと接触抵抗の増加とセパレータへ適用する際のプレス成型性が劣るおそれがある。
本発明においては、酸性混合溶液によるエッチング処理に先駆けて、アルカリ処理によりアルミ基材の表面の酸化物除去を行うと共に、酸性混合溶液によるエッチング処理後には、酸処理によりアルミ基材の表面の水酸化物除去を行うようにしてもよい。
酸性混合溶液によるエッチング処理に先駆けて行うアルミ基材のアルカリ処理については、アルミ基材の圧延によりできた酸化物を取り除くため等の目的で行われるものであって、通常、脱脂処理されたアルミ基材を処理液に浸漬して行われる。このアルカリ処理に用いられる処理液としては、例えば水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、及び水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ水溶液が用いられる。アルカリ処理の具体的な処理条件としては、特に制限されるものではないが、例えば、濃度5g/l以上60g/L以下、好ましくは45g/l以上55g/L以下のアルカリ水溶液を用い、浸漬温度40℃以上60℃以下、好ましくは45℃以上55℃以下、及び浸漬時間2分以下の条件であるのがよい。浸漬時間が2分より長いと、アルミ基材のアルミニウムの溶出が進み過ぎて、所望の算術平均粗さ(Sa)及びスキューネス(Ssk)の値を有するアルミ基材が得られなくなる。
また、酸性混合溶液によるエッチング処理後のアルミ基材については、スマット除去のための酸処理を行うようにしてもよい。このアルミ基材の酸処理については、フッ化物を含むスマット除去等の目的で行われるものであって、通常、エッチング処理後のアルミ基材を硝酸、硫酸、塩酸、りん酸、しゅう酸等の酸濃度0.5〜50wt%の酸水溶液に浸漬して行われる。また、この酸処理の具体的な処理条件については、エッチング処理によりアルミ基材の表面に生成したスマットを除去し、このスマットに起因する電気的抵抗を除ければよく、特に限定されるものではないが、酸濃度1〜30wt%の酸水溶液、好ましくは酸が硝酸であって、酸濃度3〜20wt%、より好ましくは5〜10wt%の硝酸水溶液を用い、浸漬温度10℃以上40℃以下、好ましくは20℃以上35℃以下及び浸漬時間5秒以上600秒以下、好ましくは15秒以上300秒以下の条件で行うのがよい。
このようにしてアルミ基材の表面に導電層が形成されたアルミ導電部材においては、そのアルミ基材と導電層との間において、アルミ基材の表面に露出した金属間化合物が、導電層内に喰い込んだ状態で存在し、また、導電層内において黒鉛粉末やその他の炭素系材料と電気的に接続され、その結果としてアルミ基材と導電層との間の良好な導電パスとしての機能を発揮し、接触抵抗値が40mΩcm以下、好適には20mΩcm以下、より好適には15mΩcm以下のアルミ導電部材を得ることができる。ここで、接触抵抗値が40mΩcmより高い値であると、例えば燃料電池においては内部抵抗が高くなり、発電時にセル電圧が降下してしまい、大電流での発電が困難になるおそれがある。
ここで、接触抵抗値の測定方法については、4端子法で行うが、その具体的方法については以下の通りである。すなわち、アルミ導電部材を、等方性黒鉛板を介して鏡面仕上げされた真鍮製電極で両側から挟み、荷重を加えながら0.25A/cmの電流を印加して電圧を測定し、下記式により接触抵抗を求めた。
接触抵抗値(mΩcm)=電圧測定値(mV)/〔0.25(A/cm)×電極面積(cm)〕×電極面積(cm)/2
また、本発明では、分極電流が1μA/cm以下、好適には0.1μA/cm以下のアルミ導電部材を得ることができる。分極電流が1μA/cmより高い値であると、得られた導電層がピンホールの無い完全無欠陥であるといえなくなる場合が生じる。ここで、分極電流の測定方法については、電気化学的分極特性評価法で行うが、その具体的方法については以下の通りである。すなわち、pH3の3質量%酢酸水溶液中で、試料(アルミ導電部材)を白金対極に対向させて設置し、照合電極として銀塩化銀電極を使用し、この照合電極を飽和塩化カリウム水溶液に浸漬し、飽和塩化カリウム水溶液と試料との間を塩橋で結び、試料、白金対極、及び銀塩化銀電極をポテンシオスタットに接続し、試料の電位を銀塩化銀電極に対して自然電極電位から酸素発生電位まで電位掃引速度30mV/minでアノード側に走査させ、試料電極に流れるピーク電流を分極電流として測定する方法である。
本発明においては、アルミ基材を酸性混合溶液でエッチング処理することで梨地面が形成されて、その梨地面に金属間化合物が露出し、炭素粉末を含んだ導電性塗料を塗布して、熱処理して導電層が形成されるため、金属間化合物がアルミ基材とその表面に形成された導電層内の炭素粉末との間で良好な導電パスとしての機能を発揮すると共に、導電層内においては炭素粉末同士が互いにより緊密に接触して緻密な導電層が形成され、しかも、導電パスとして機能する金属間化合物はセパレータ基材と導電層との間を強固に結合させる結合材としての機能も発揮するので、単に優れた接触抵抗を有するだけでなく、長期間に亘ってアルミ基材と導電層との間を強固に安定的に接合して耐食性を発揮する。
そして、本発明によって得られたアルミ導電部材は、燃料電池用のセパレータや集電板をはじめ、バスバー等の部材として好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
〔実施例1〕
板厚3mmのアルミニウム合金材(合金A)から3mm×30mm×50mmの大きさのアルミ基材を切り出し、次いで、弱アルカリ水溶液(日本ペイント社製:商品名サーフクリーナー53)中に浸漬温度60℃及び浸漬時間3分の条件で浸漬して脱脂処理を行った。
この脱脂処理後のアルミ基材について、5wt%−水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に、浸漬温度50℃及び浸漬時間30秒の条件でアルカリ処理を行い、次いで、このアルカリ処理後のアルミ基材をフッ酸とフッ化アンモニウムとを含んだ市販の酸性混合溶液(奥野製薬工業社製:商品名アルサテンOL-8)50g/L水溶液に浸漬温度50℃及び浸漬時間4分の条件で浸漬してエッチング処理を行い、このエッチング処理後のアルミ基材の算術平均高さ(Sa)及びスキューネス(Ssk)を調べると共に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、エッチング処理後のアルミ基材表面に存在する金属間化合物の様子を表面SEM画像として撮影し、観察した。結果は、Saが0.504μm、Sskが−0.210であり、また、表面SEM画像から粒子径1μm以上の金属間化合物の粒子数は、3600個/mmであった。ここで、Sa及びSskについては、ISO25178に準拠して、ブルカー・エイエックスエス株式会社製3次元白色干渉型顕微鏡GT-Iを使用して、対物レンズ50倍、内部レンズ2倍で328μm×434μmの範囲を計測した。
次いで、酸性混合溶液によるエッチング処理済みのアルミ基材について、200g/Lの硝酸水溶液を用い、室温下、3分間浸漬する条件でアルミ基材の表面に生成した水酸化物を除去するための酸処理を行った。
その後、室温下の純水に1分間浸漬し、水洗処理を行った。
次に、黒鉛粉末:カーボンブラック:バインダー樹脂=50:8:42の質量比であるエブリオーム101P(日本黒鉛株式会社製)を導電性塗料として用い、上記で水洗処理したアルミ基材に対して、この導電性塗料をスクリーン印刷機で塗装し、150℃にて30分間の条件で熱処理し、アルミ基材の上に厚さ20μmの導電層を形成し、アルミ導電部材を得た。
〔接触抵抗の測定〕
また、上記で得られた酸性混合溶液によるエッチング処理済みアルミ基材を、等方性黒鉛板(G373、厚さ10mm、東海カーボン製)を介して鏡面仕上げされた真鍮製電極で両側から挟み、荷重15kgf/cm2を加えながら0.25A/cm2の電流を印加して電圧を測定し、得られたアルミ導電部材の接触抵抗(mΩ・cm2)を調べた。結果は、26.3/mΩ・cm2であった。また、導電層を形成して得られたアルミ導電部材についても、同様に接触抵抗を調べた結果、15.7/mΩ・cm2であった。
〔エネルギー分散型X線分析(EDX)の測定〕
走査型電子顕微鏡の反射電子像を観察しながら凸部に存在する金属間化合物に対して、付属のエネルギー分散型X線分析を使用して、元素の定性分析を実施し、金属間化合物がAl−Fe−Mn系及びAl−Mn系であることを確認した。
〔分極電流の測定〕
得られたアルミ導電部材について、pH3の3wt%-酢酸水溶液中で試料(アルミ導電部材)を白金対極に対向させて設置し、照合電極として銀塩化銀電極を使用して、この照合電極を飽和塩化カリウム水溶液に浸漬した。そして、飽和塩化カリウム水溶液と各試料との間を塩橋で結び、試料、白金対極、及び銀塩化銀電極をポテンシオスタットに接続し、試料の電位を銀塩化銀電極に対して自然電極電位から酸素発生電位まで電位掃引速度30mV/minでアノード側に走査させ、試料電極に流れるピーク電流を分極電流として測定した。結果は、0.11μA/cmであり十分低く、耐食性が確保できていることが確認された。
〔実施例2〜6及び比較例1〕
弱アルカリ水溶液を用いた脱脂処理後のアルミ基材の酸性混合溶液によるエッチング処理において、エッチング処理をしなかったものを比較例1とし、また、酸性混合溶液の濃度とエッチング時間を25g/L及び4分(実施例2)、75g/L及び4分(実施例3)、75g/L及び10分(実施例4)、100g/L及び4分(実施例5)、100g/L及び10分(実施例6)とした以外は、上記実施例1と同様にして各比較例1と実施例2〜6のアルミ導電部材を作製し、エッチング処理後のアルミ基材における算術平均高さ(Sa)、スキューネス(Ssk)、表面SEM画像、及び金属間化合物の個数(個/mm)と、アルミ導電部材における分極電流(μA/cm)及び接触抵抗(mΩ・cm)を調べた。
エッチング処理後のアルミ基材のSa、Ssk及び金属間化合物の個数と、アルミ導電部材の分極電流及び接触抵抗の結果を、実施例1の結果と共に表1に示し、また、実施例4におけるエッチング処理後のアルミ基材の表面SEM画像について、二次電子像と反射電子像を図4に示す。
アルミ基材の表面の金属間化合物が導電層内に喰い込んだ状態で存在する様子は、導電層をアルミ基材から剥離した際のアルミ基材に接していた側から撮影した表面SEM画像によって確認できる。図3には、実施例4で得たアルミ導電部材からアルミ基材を剥離し、残った導電層について、アルミ基材に接していた側から撮影した表面SEM画像が示されている。これからわかる通り、図3は、頂部に長径3μm程度の金属間化合物が存在する酸性混合溶液によるエッチング処理後のアルミ基材の表面形状(図2)に追随した凹構造となっており、凹部には金属間化合物の喰い込んだ状態で存在した痕跡が見て取れる。
Figure 2018156921
〔実施例7〜12及び比較例2〕
アルミ基材として用いるアルミニウム合金材を板厚3mmのA5052とした以外は、実施例1〜6及び比較例1と同様にして、表2に示した実施例7〜12及び比較例2のアルミ導電部材を得た。エッチング処理後のアルミ基材のSa、Ssk及び金属間化合物の個数と、導電層を形成して得られたアルミ導電部材の分極電流及び接触抵抗の結果を、表2に示し、また、実施例10におけるエッチング処理後のアルミ基材の表面SEM画像について、二次電子像と反射電子像を図5に示す。更に、実施例11のEDX分析の結果を図8及び9に示す。図8及び9によれば、梨地面を形成する山の頂部である(a)では、Alの他にFeやSiのピークが見られ、Al−Fe−Si系金属間化合物が露出しているのがわかる。また、山の裾である(b)では、Alの他にはアルミ基材由来のMgのピークは見られるが、金属間化合物を形成するFeやSiのピークが見られず、金属間化合物が露出していないことが確認できる。
Figure 2018156921
〔比較例3〜8〕
板厚3mmの合金A及びA5052から3mm×30mm×50mmの大きさのアルミ基材を切り出し、次いで、200g/L硝酸水溶液中に室温下で、浸漬時間3分の条件で浸漬して脱脂処理を行った。
この脱脂処理後のアルミ基材について、5wt%−水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に、浸漬温度50℃及び浸漬時間1分(比較例3及び6)、3分(比較例4及び7)、及び5分(比較例5及び8)の条件でアルカリ処理を行い、このアルカリ処理後のアルミ基材の算術平均高さ(Sa)及びスキューネス(Ssk)を調べると共に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、エッチング処理後のアルミ基材表面に存在する金属間化合物の様子を表面SEM画像として撮影し、観察した。このようにして得られたアルカリエッチング処理済みのアルミ基材について、実施例1と同様の酸処理を行った。次いで、実施例1と同様にしてアルミ基材の表面に導電層を形成し、アルミ導電部材を得た。アルミ基材のSa、Ssk及び金属間化合物の個数と、アルミ導電部材の分極電流及び接触抵抗の結果を、表3に示し、また、比較例4及び7におけるエッチング処理後のアルミ基材の表面SEM画像について、二次電子像と反射電子像を図6及び7にそれぞれ示す。更に、比較例8のEDX分析の結果を図10及び11に示す。図10及び11によれば、ディンプル形状の中の(a)では、Alの他にFeやCuのピークが見られ、Al−Fe−Cu系金属間化合物が露出しているのがわかる。また、ディンプルの少ない比較的フラットな部分である(b)では、Alの他にはアルミ基材由来のMgのピークは見られるが、金属間化合物を形成するFeやSiのピークが見られず、金属間化合物が露出していないことが確認できる。
Figure 2018156921

Claims (14)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材とこのアルミ基材の表面に積層された導電層とを備えるアルミ導電部材の製造方法であって、
    前記アルミ基材の表面をフッ酸とフッ化アンモニウムとを含んだ酸性混合溶液でエッチング処理した後に、炭素粉末とバインダー樹脂とを含んだ導電性塗料を塗布し、熱処理して導電層を形成することを特徴とするアルミ導電部材の製造方法。
  2. 前記酸性混合溶液によるアルミ基材のエッチング処理により、算術平均高さ(Sa)が0.5μm以上2.5μm以下であり、かつ、スキューネス(Ssk)が−0.5以上の梨地面を形成すると共に、この梨地面に観察される長径1μm以上の金属間化合物が単位面積当たり3500個/mm以上の割合で存在する請求項1に記載のアルミ導電部材の製造方法。
  3. 前記炭素粉末が黒鉛粉末とカーボンブラックとの炭素系混合粉末であり、前記炭素系混合粉末とバインダー樹脂との質量比が40:60〜85:15である請求項1又は2に記載のアルミ導電部材の製造方法。
  4. 前記熱処理は、温度50℃以上250℃以下、及び時間1分以上60分以下の熱処理である請求項1〜3のいずれかに記載のアルミ導電部材の製造方法。
  5. 前記酸性混合溶液によるエッチング処理に先駆けて、アルカリ処理により前記アルミ基材の表面の酸化物除去を行うと共に、前記酸性混合溶液によるエッチング処理後には、酸処理により前記アルミ基材の表面の水酸化物除去を行う請求項1〜4のいずれかに記載のアルミ導電部材の製造方法。
  6. 前記アルミ基材が、1000系アルミニウム製、3000系アルミニウム合金製、又は5000系アルミニウム合金製のアルミ基材である請求項1〜5のいずれかに記載のアルミ導電部材の製造方法。
  7. 前記アルミ導電部材が、燃料電池用のセパレータであるか、又は燃料電池用の集電板である請求項1〜6のいずれかに記載のアルミ導電部材の製造方法。
  8. アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材とこのアルミ基材の表面に積層された導電層とを備えるアルミ導電部材であって、
    前記導電層は炭素粉末とバインダー樹脂とを含んでおり、前記アルミ基材の表面は、算術平均高さ(Sa)が0.5μm以上2.5μm以下であり、かつ、スキューネス(Ssk)が−0.5以上の梨地面を有すると共に、この梨地面に観察される長径1μm以上の金属間化合物が単位面積当たり3500個/mm以上の割合で存在することを特徴とするアルミ導電部材。
  9. 前記炭素粉末が黒鉛粉末とカーボンブラックとの炭素系混合粉末であり、前記炭素系混合粉末とバインダー樹脂との質量比が40:60〜85:15である請求項8に記載のアルミ導電部材。
  10. 前記金属間化合物が、Al−Fe−Si系金属間化合物、Al−Fe−Mn系金属間化合物、又はAl−Mn系金属間化合物の1種又は2種以上を含む請求項8又は9に記載のアルミ導電部材。
  11. 前記アルミ基材の梨地面における少なくとも一部の金属間化合物が、前記導電層内の炭素粉末と電気的に接続されている請求項8〜10のいずれかに記載のアルミ導電部材。
  12. 4端子法により測定した接触抵抗値が、40mΩcm以下である請求項8〜11のいずれかに記載のアルミ導電部材。
  13. pH3の3質量%酢酸水溶液を用いて、電位掃引速度30mV/minで測定した電気化学的分極特性評価法による分極電流が、1μA/cm以下である請求項8〜12のいずれかに記載のアルミ導電部材。
  14. 前記アルミ導電部材が、燃料電池用のセパレータであるか、又は燃料電池用の集電板である請求項8〜13のいずれかに記載のアルミ導電部材。



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* Cited by examiner, † Cited by third party
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