JP2017132118A - 血液・ウイルスバリア性積層布帛、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)ポリエステル系合成繊維を含む基布の片面に、接着剤層、防水膜及び保護膜がこの順に積層されて含まれる血液・ウイルスバリア性積層布帛であって、前記接着剤層はポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を主成分として含有する硬化型接着剤を含み、かつ厚みが15〜50μmであり、前記防水膜はポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100質量部、及び架橋アクリル微粒子3〜30質量部を含有し、かつ厚みが7〜20μmであり、前記保護膜はポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100質量部、及び耐摩耗性向上剤8〜35質量部を含有する、血液・ウイルスバリア性積層布帛。
(2)前記保護膜の厚みが1〜10μmである、(1)の血液・ウイルスバリア性積層布帛。
(3)前記基布の厚みが40〜100μmであり、前記接着剤層の厚みが前記基布の厚みに対し2/5以下である、(1)又は(2)の血液・ウイルスバリア性積層布帛。
(5)工業洗濯10回分と湿熱滅菌処理10回分との連続処理を1サイクルとして、10サイクル処理後に、ASTM F 1671−07B法に従って評価したウイルスバリア性の判定が合格である、(1)〜(4)の何れかの血液・ウイルスバリア性積層布帛。
本発明の血液・ウイルスバリア性積層布帛(積層布帛)は、ポリエステル系合成繊維を含む基布、接着剤層、防水膜及び保護膜を有する。詳しくは、図1にて示されるように、本発明の血液・ウイルスバリア性積層布帛1は、基布2の片面に、接着剤層3、防水膜4及び保護膜5がこの順に積層されて含まれる。接着剤層、防水膜及び保護膜は、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を主成分として含む。
基布としては、工業洗濯及び湿熱滅菌処理に耐え得る強度を有するものであれば、特に限定されないが、汎用性、及び高温かつ高圧下での耐湿熱性に優れるため、ポリエステル系合成繊維を主たる構成繊維とするものが好ましい。例えば、ポリエステル系合成繊維の混率が90質量%以上、好ましくは100質量%である基布が好ましい。また、軽量性及び風合いの観点から、基布の厚みは40〜100μmであることが好ましく、50〜90μmであることがより好ましい。
防水膜は防水性に寄与するものであり、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を主たる成分として含み、さらに架橋アクリル微粒子を含有する。
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、それ自体が耐熱性及び耐加水分解性などに優れる。そのため、本発明の積層布帛は、工業洗濯及び湿熱滅菌処理に対する耐久性に優れる。
架橋アクリル微粒子は、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂との相溶性に優れるため、防水膜全体の耐久性を向上させる。架橋アクリル微粒子としては、例えば、アクリル酸エステル類、又はメタクリル酸エステル類などを主成分とする重合性モノマーと、架橋性モノマーとを重合反応することにより得られる微粒子が挙げられる。
接着剤層は、基布と防水膜とを接着して積層する。接着剤層に含まれる接着剤は、耐久性の点からポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を主成分とする。接着剤としては、ホットメルト型接着剤、又は溶剤型接着剤等の何れであってもよいが、接着性、工業洗濯及び湿熱滅菌処理後の耐久性、並びに耐剥離性に優れるために硬化型接着剤であることが必須である。ホットメルト型接着剤の好ましい態様としては、空気中の湿気で硬化する(湿気硬化型)接着剤、又は硬化剤とポリカーボネート系ポリウレタン樹脂とからなる2液型接着剤が挙げられる。
本発明の積層布帛においては、防水膜上に、防水性、耐剥離性、耐摩耗性、耐久性向上に寄与する保護膜が形成されている。保護膜は、耐熱性及び耐湿熱性に優れるポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を主成分として含有し、さらに耐摩耗性向上剤を含有する。耐摩耗性向上剤は、保護膜表面において、滑り感、タッチ感及びマット感を向上させるとともに、耐摩耗性を向上させる。耐摩耗性向上剤の具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭化カルシウム、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、若しくはポリテトラフルオロエチレン等からなる微粒子、又はNε−ラウロイル−L−リジン等のような平板状の粉体物が挙げられる。なかでも、架橋アクリル樹脂若しくはポリテトラフルオロエチレンからなる微粒子、又はNε−ラウロイル−L−リジンが好ましく、架橋アクリル樹脂若しくはポリテトラフルオロエチレンからなる微粒子が特に好ましい。
上記のような本発明の血液・ウイルスバリア性積層布帛の製造方法の一例について、以下に説明する。詳しくは、本発明の製造方法としては、まず基布と防水膜とを準備する。そして、基布と防水膜とを接着剤層を介して貼り合わせた後、防水膜上に保護膜を形成する。
経糸及び緯糸としてポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント(84dtex72f)を用い、2/2ツイル織物(経糸密度170本/2.54cm、緯糸密度100本/2.54cm)を製織した。この織物を日華化学株式会社の製精練剤「サンモールFL(商品名)」を1g/L使用して、80℃で20分間精練した。
レザミンCUS−1500 100質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分30質量%のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)
MR−7GC 5質量部
(綜研化学株式会社製、球状で平均粒子径6μmの架橋アクリル微粒子)
トルエン 45質量部
メチルエチルケトン 15質量部
詳しくは、まず下記処方2の接着剤層形成用樹脂組成物(粘度3500mPa・s/25℃、固形分52質量%)を調液した後、離型紙付き防水膜の防水膜表面に、コンマコータにて塗布量65g/m2にて塗布し、90℃で3分間乾燥させた。これにより、厚みが35μmの接着剤層を形成した(接着剤層の厚み/基布の厚み=7/30)。接着剤層と基布とを貼り合わせた後、温度80℃、圧力300kPaで熱圧着し、40℃で4日間の熟成を行って接着剤層を硬化させた。
ラックスキンUD4233−1 100質量部
(セイコー化成株式会社製、固形分60質量%のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)
U−4000 10質量部
(セイコー化成株式会社製、イソシアネート系硬化剤)
UY−5 1質量部
(セイコー化成株式会社製、ジオクチルチン系触媒)
メチルエチルケトン 12質量部
N,N−ジメチルホルムアミド 12質量部
レザミンCUS−1500 100質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分30質量%のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)
アミホープLL 3質量部
(味の素株式会社製、耐摩耗性向上剤としての薄片状Nε−ラウロイル−L−リジンの白色結晶性粉体)
KMR−3TA 3質量部
(綜研化学株式会社製、耐摩耗性向上剤としての球状で平均粒子径3μmの架橋アクリル微粒子)
メチルエチルケトン 70質量部
経糸及び緯糸としてポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント(44dtex48f)を用い、平組織織物(経糸密度160本/2.54cm、緯糸密度120本/2.54cm)を製織した。続いて、この織物を日華化学株式会社製の精練剤「サンモールFL(商品名)」1g/Lを使用し、80℃で20分間精練した。精練後の織物を、ダイスタージャパン株式会社製の分散染料「Dianix Blue UN−SE(商品名)」を0.5%omf使用して130℃で30分間染色した。
<処方4>
レザミンCUS−1500 100質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分30質量%のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)
MR−2G 3質量部
(綜研化学株式会社製、球状で平均粒子径が1μmの架橋アクリル微粒子)
トルエン 50質量部
メチルエチルケトン 15質量部
まず、下記処方5の接着剤形成用樹脂組成物(粘度2500mPa・s/25℃、固形分濃度48質量%)を調液し、離型紙付き防水膜の防水膜表面にコンマコータにて塗布量55g/m2にて塗布し、90℃で3分間の乾燥により、厚みが20μmの接着剤層(接着剤層の厚み/基布の厚み=2/7)を形成した。その後、接着剤層を介して基布と防水膜とを積層し、温度80℃、圧力300kPaで熱圧着し、40℃で3日間の熟成を行い、接着剤層を硬化させた。
ラックスキンUD4233−1 100質量部
(セイコー化成株式会社製、固形分60質量%のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)
U-4000 10質量部
(セイコー化成株式会社製、イソシアネート系硬化剤)
UY−5 1質量部
(セイコー化成株式会社製、ジオクチルチン系触媒)
メチルエチルケトン 20質量部
N,N−ジメチルホルムアミド 15質量部
次いで硬化後に離型紙を剥離した後、実施例1と同様の手法により保護膜(厚み5μm)を形成し、実施例2の血液・ウイルスバリア性積層布帛を得た。
処方3の保護膜形成用樹脂組成物を、下記処方6(粘度4000mPa・s/25℃、固形分21質量%)の保護膜形成用樹脂組成物に変えて、厚みが6μmの保護膜(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100質量部に対して、ポリテトラフルオロエチレン微粒子を27質量部含有)を形成した以外は、実施例2と同様の手法により、実施例3の血液・ウイルスバリア性積層布帛を得た。
レザミンCUS−1500 100質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分30質量%のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)
Fluon L173JE 8質量部
(旭硝子株式会社製、耐摩耗性向上剤としての一次粒子径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン微粒子)
トルエン 60質量部
メチルエチルケトン 20質量部
処方6の保護膜形成用樹脂組成物の塗布量を55g/m2に変更し、厚みが12μmの保護膜を形成した以外は、実施例3と同様の手法により、実施例4の積層布帛を得た。
実施例1において、処方2の接着剤層形成用樹脂組成物の塗布量を20g/m2に変更し、接着剤層の厚みを11μmとした以外は、実施例1と同様の手法により、比較例1の積層布帛を得た。
実施例1において、処方2の接着剤層形成用樹脂組成物の塗布量を100g/m2に変更し、接着剤層の厚みを55μmとした以外は、実施例1と同様の手法により、比較例2の積層布帛を得た。
実施例1において、処方1の防水膜形成用樹脂組成物の塗布量を20g/m2に変更し、防水膜の厚みを5μmとした以外は、実施例1と同様の手法により、比較例3の積層布帛を得た。
実施例1において、処方1の防水膜形成用樹脂組成物の塗布量を110g/m2に変更し、防水膜の厚みを25μmとした以外は、実施例1と同様の手法により、比較例4の積層布帛を得た。
実施例1において、処方1の防水膜形成用樹脂組成物においてMR−7GC(架橋アクリル微粒子)を用いずに防水膜を形成しようとした。しかし、タック感が強過ぎて巻き取れなかったため、その後の工程に付することができず、積層布帛を得ることができなかった。
実施例1において、処方1の防水膜形成用樹脂組成物におけるMR−7GC(架橋アクリル微粒子)の含有量を10質量部に変更し、防水膜(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100質量部に対して架橋アクリル微粒子を33質量部含有)形成した以外は、実施例1と同様の手法により、比較例6の積層布帛を得た。
実施例2において、保護膜を形成しなかった以外は実施例2と同様の手法により、比較例7の積層布帛を得た。
処方6の保護膜形成用樹脂組成物において、Fluon L173JE(耐摩耗向上剤)の含有量を2質量部に変更し、保護膜(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100質量部に対して耐摩耗向上剤を7質量部含有)を形成した以外は、実施例2と同様の手法により、比較例8の積層布帛を得た。
処方6の保護膜形成用樹脂組成物において、Fluon L173JEの量を12質量部に変更し、保護膜(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100質量部に対して耐摩耗向上剤を40質量部含有)を形成した以外は、実施例2と同様の方法により、比較例9の積層布帛を得た。
処方2の接着剤層形成用樹脂組成物において、U−4000(イソシアネート系硬化剤)を含有させなかった以外は、実施例1と同様の手法により、比較例10の積層布帛を得た。
[工業洗濯]
工業洗濯機(株式会社大栄科学精器製作所製、型式;WS−1SE)を用いて、標準的な1回分の洗濯条件「73℃×20分間」を下記条件に変更し、10回分の洗濯とした。
浴比;1:40(1.5kg:60L)
洗剤;ピュア−石鹸(株式会社不動化学製)1g/L、苛性ソーダ0.08g/Lを添加し、pH値を10に調整したものを用いた。
工程;洗い(73℃×200分間)→湯洗(40℃×30分間)→オーバーフローすすぎ(常温×15分間)→脱水→タンブル乾燥(60℃×20分間)
高圧蒸気滅菌器(株式会社平山製作所製、「HV50型」)を用いて、標準的な1回分の滅菌条件「135℃×8分間」を「135℃×80分間」に変更し、10回分の湿熱滅菌処理とした。
前記工業洗濯10回分と前記湿熱滅菌処理10回分との連続処理を、1サイクル(10回分)として処理を行った。
JIS L 1092(高水圧法)に基づいて測定した。なお、防水性の耐久性評価を、10サイクル処理後の耐水圧の値により行った。
JIS L 0849に従って評価した。試験片を幅15cmかつ長さ30cmの大きさに切り出し、摩擦試験機2型の試験片台上に平行に取り付け、4辺をガムテープで固定した。擦子先端に綿布(JIS L 0803規定の3号綿布)を装着して、1.96Nの力で保護膜表面を500回摩耗し、下記基準に基づいて目視評価した。
◎:摩耗損傷がほとんど目立たない。
○:摩耗損傷が少し目立つ。
△:摩耗損傷しているものの、大きく目立つ損傷は認められない。
△−×:損傷が目立つ。
×:摩耗損傷が大きく、膜に穴があくほどの損傷が認められる。
得られた積層布帛に対しハンドリングにて、下記基準に基づいて評価した。
◎:ラミネート商品でありながら風合いが極めて良好である。
○:ラミネート商品でありながら風合いが良好である。
△:ラミネート商品として風合いが普通である。
△-×:ラミネート商品としてやや硬い。
×:ラミネート商品としては硬く、明らかに風合いに劣っている
得られた積層布帛の保護膜面の外観を、下記基準に基づいて評価した。
○:外観品位が極めて良好。
△:外観品位が良好。
×:塗布筋が目立つ。
10サイクル(10Cとも表記する)の連続処理を行い、下記基準に基づき目視判定し、耐剥離性の評価とした。
◎:剥離なし。
○:部分的に少し剥離した。
△:部分的に剥離した。
△−×:ほぼ全面剥離した。
×:全面剥離した。
ASTM F 1670−08B法に基づいて評価した。本発明においては10サイクル後の判定が合格であれば実用に十分耐え得るものであり、好ましいと評価した。
ASTM F 1671−07B法に基づいて評価した。本発明においては、10サイクル後の判定が合格であれば実用に十分耐え得るものであり、好ましいと評価した。
2 基布
3 接着剤層
4 防水膜
5 保護膜
Claims (6)
- ポリエステル系合成繊維を含む基布の片面に、接着剤層、防水膜及び保護膜がこの順に積層されて含まれる血液・ウイルスバリア性積層布帛であって、
前記接着剤層はポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を主成分として含有する硬化型接着剤を含み、かつ厚みが15〜50μmであり、
前記防水膜はポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100質量部、及び架橋アクリル微粒子3〜30質量部を含有し、かつ厚みが7〜20μmであり、
前記保護膜はポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100質量部、及び耐摩耗性向上剤8〜35質量部を含有することを特徴とする、血液・ウイルスバリア性積層布帛。 - 前記保護膜の厚みが1〜10μmであることを特徴とする、請求項1に記載の血液・ウイルスバリア性積層布帛。
- 前記基布の厚みが40〜100μmであり、前記接着剤層の厚みが前記基布の厚みに対し2/5以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の血液・ウイルスバリア積層性布帛。
- 工業洗濯10回分と湿熱滅菌処理10回分との連続処理を1サイクルとして、10サイクル処理後に、ASTM F 1670−08B法に従って評価した人工血液バリア性の判定が合格であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の血液・ウイルスバリア性積層布帛。
- 工業洗濯10回分と湿熱滅菌処理10回分との連続処理を1サイクルとして、10サイクル処理後に、ASTM F 1671−07B法に従って評価したウイルスバリア性の判定が合格であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の血液・ウイルスバリア性積層布帛。
- 請求項1〜5の何れか1項に記載の血液・ウイルスバリア性積層布帛を製造する方法であって、
前記基布と前記防水膜とを、前記接着剤層で貼りあわせた後、前記防水膜上に前記保護膜を形成することを特徴とする、血液・ウイルスバリア性積層布帛の製造方法。
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