JP2017129519A - 運動案内装置の荷重計測システム及び荷重計測方法、並びに運動案内装置の寿命算出方法 - Google Patents

運動案内装置の荷重計測システム及び荷重計測方法、並びに運動案内装置の寿命算出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】使用状態における運動案内装置に働く荷重を高精度に計測することができる運動案内装置の荷重計測システムを提供する。【解決手段】軌道部材11に対する摺動部材12の相対移動方向の位置を検出するための位置検出手段4と、軌道部材11に対する摺動部材12のラジアル方向及び/又は水平方向の相対変位を検出する少なくとも一つのセンサ2a〜2d,3a〜3dと、を設ける。算出手段6は、位置検出手段4が検出した位置情報及び少なくとも一つのセンサ2a〜2d,3a〜3dが検出した変位情報に基づいて、摺動部材12の位置に関連付けられた運動案内装置1の荷重を算出する。【選択図】図1

Description

本発明は、運動案内装置に働く荷重を計測する運動案内装置の荷重計測システム及び荷重計測方法、並びに運動案内装置の寿命算出方法に関する。
運動案内装置は、軌道部材と、軌道部材に複数の転動体を介して相対的に移動可能に組み付けられる摺動部材、を備える。軌道部材に対してキャリッジが相対的に移動すると、これらの間に介在する転動体が転がり運動する。転動体の転がり運動を利用することで、軌道部材に対して摺動部材を軽快に移動させることができる。
運動案内装置は、ロボット、工作機械、半導体・液晶製造装置等の実機に組み込まれ、可動部が線運動するのを案内する。運動案内装置の使用状態において、運動案内装置には荷重(実荷重とも呼ばれる)が働く。この荷重は、運動案内装置の使用条件、例えば可動部の質量、可動部に働く外力の大きさ及び方向、可動部の加減速の大きさ等によって多様に変化する。これらの使用条件以外にも、実機の熱ひずみ、運動案内装置に発生する偏荷重等の使用条件によっても荷重が変化する。特に後者の使用条件は予測することが困難であり、運動案内装置の荷重を高精度に予測するのは困難である。このため、従来から運動案内装置を選定するときは、前者の使用条件から算出した荷重に安全係数を乗じ、安全係数を乗じた荷重に対して余裕のある定格荷重を持つ運動案内装置を選定していた。
使用条件から運動案内装置の荷重を予測する替わりに、使用状態における運動案内装置の荷重を計測する試みがなされている。この試みとして、摺動部材と可動部のテーブル等との間に歪ゲージを挟み、摺動部材に働く荷重を計測する方法や、摺動部材の一対の袖部それぞれに歪ゲージを貼り付け、一対の袖部の歪に基づいて、ひずみ量と荷重との関係を示したグラフを用いて、摺動部材に働く荷重を算出する方法(特許文献1参照)が知られている。
特開2007−263286号公報
しかし、前者の荷重計測方法にあっては、摺動部材と可動部のテーブル等との間に歪ゲージを挟んだ分、可動部の重心が高くなるので、加減速のときに摺動部材に働くモーメントが使用状態のときに比べて大きくなる。このため、使用状態における運動案内装置の荷重を高精度に計測できないという課題がある。
後者の荷重計測方法にあっては、摺動部材にラジアル方向の荷重、水平方向の荷重、あるいはモーメントが働いても、いずれも摺動部材の一対の袖部が開くように変形するので、歪ゲージの出力からどの方向の荷重が働いているかを判断するのが難しいという課題がある。また、運動案内装置のサイズが変更になった場合、その都度ひずみ量と荷重との関係を示したグラフを作成する必要があるという課題もある。
そこで、本発明は、使用状態における運動案内装置に働く荷重を高精度に計測することができる運動案内装置の荷重計測システム及び荷重計測方法、並びに運動案内装置の寿命算出方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、軌道部材に複数の転動体を介して摺動部材が相対移動可能に組み付けられる運動案内装置の荷重計測システムであって、前記軌道部材に対する前記摺動部材の相対移動方向の位置を検出するための位置検出手段と、前記軌道部材に対する前記摺動部材のラジアル方向及び/又は水平方向の変位を検出するための少なくとも一つのセンサと、前記位置検出手段が検出した位置情報及び前記少なくとも一つのセンサが検出した変位情報に基づいて、前記位置に関連付けられた前記運動案内装置の荷重を算出する算出手段と、を備える運動案内装置の荷重計測システムである。
本発明の他の態様は、軌道部材に複数の転動体を介して摺動部材が相対移動可能に組み付けられる運動案内装置の荷重計測方法であって、前記軌道部材に対する前記摺動部材の相対移動方向の位置を検出する工程と、前記軌道部材に対する前記摺動部材のラジアル方向及び/又は水平方向の変位を検出する工程と、検出した位置情報及び検出した変位情報に基づいて、前記位置に関連付けられた前記運動案内装置の荷重を算出する工程と、を備える運動案内装置の荷重計測方法である。
本発明のさらに他の態様は、上記の荷重計測方法を用いて算出した前記運動案内装置の荷重に基づいて、実機の動作パターンにおける前記運動案内装置の平均荷重を算出し、前記平均荷重に基づいて、前記運動案内装置の寿命を算出する運動案内装置の寿命算出方法である。
本発明においては、摺動部材に働く荷重を直接検出するのではなく、軌道部材に対する摺動部材のラジアル方向及び/又は水平方向の変位を検出し、検出した変位に基づいて運動案内装置の荷重を算出する。本発明によれば、摺動部材と可動部のテーブル等との間に歪ゲージを挟む必要がなく、実機の使用状態で運動案内装置の荷重を高精度に計測することができる。また、本発明においては、運動案内装置の荷重を、軌道部材に対する摺動部の相対移動方向の位置に関連付ける。このため、走行中に変動する運動案内装置の荷重を高精度に計測することができる。
本発明の一実施形態の運動案内装置の荷重計測システムの全体図である。 本実施形態の運動案内装置の外観斜視図である。 本実施形態の運動案内装置の水平断面図である。 図4(a)はレールの長さ方向から見た運動案内装置の正面図であり、図4(b)はB部拡大図である。 キャリッジに外力が働くときの、センサの出力の変化を示す図である。 キャリッジ内の玉が接触している部分の、x軸方向の断面図である。 変位5成分が生じる前の内部荷重の状態を示すキャリッジの断面図である。 変位5成分が生じた後の内部荷重の状態を示すキャリッジの断面図である。 キャリッジの位置とキャリッジに働く荷重との関係を示すグラフである。
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態の運動案内装置の荷重計測システムを詳細に説明する。ただし、本発明の運動案内装置の荷重計測システムは種々の形態で具体化することができ、明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
図1は、本実施形態の運動案内装置の荷重計測システムの全体図を示す。符号1が運動案内装置、符号2a〜2d,3a〜3dがセンサ、符号4が位置検出手段としてのリニアエンコーダ、符号5が記録計としてのデータロガー、符号6が算出手段としてのコンピュータである。
<運動案内装置の構成>
まず、運動案内装置1の構成を説明する。運動案内装置1は、軌道部材としてのレール11と、レール11にその長さ方向に移動可能に組み付けられる摺動部材としてのキャリッジ12と、を備える。この実施形態では、レール11が実機のベース7に取り付けられ、キャリッジ12に実機のテーブル8(図8参照)が取り付けられる。実機は、例えば、ロボット、工作機械、半導体又は液晶製造装置等である。テーブル8を含む可動体の直線運動は、運動案内装置1によって案内される。なお、運動案内装置1を上下反転し、キャリッジ12をベース7に取り付け、レール11をテーブル8に取り付けることもできる。可動体はキャリッジ12の上に載せられて、また可動体はキャリッジ12と固定されて、キャリッジ12と一緒に動くものであり、可動体の種類は、限定されない。可動体には、テーブル8が含まれない場合もある。
図2は、運動案内装置1の外観斜視図を示す。説明の便宜上、レール11を水平面に配置し、レール11の長さ方向から見たときの方向、すなわち図2に示すx軸を前後方向、y軸を上下方向、z軸を左右方向として運動案内装置1の構成を説明する。もちろん、運動案内装置1の配置は、このような配置に限られることはない。
レール11の左右の両側それぞれには、転動体転走部としての上下二条の軌道面11aが設けられる。軌道面11aの断面は円弧状である。レール11の上面には、レール11をベース7に締結するための締結部材が通される通し孔11bが長さ方向に一定のピッチで設けられる。
キャリッジ12は、レール11の上面に対向する水平部12−1と、レール11の側面に対向する一対の袖部12−2と、を有し、断面コの字状である。キャリッジ12は、移動方向の中央のキャリッジ本体13と、キャリッジ本体13の移動方向の両端に配置される一対の蓋部材14a,14bと、一対の蓋部材14a,14bの移動方向の両端に配置される一対のセンサ取付け部材15a,15b(図1参照)と、を備える。蓋部材14a,14bは、レール11の上面に対向する水平部14−1と、レール11の側面に対向する一対の袖部14−2と、を有し、断面コの字状である。センサ取付け部材15a,15bも、レール11の上面に対向する水平部15−1と、レール11の側面に対向する一対の袖部15−2と、を有し、断面コの字状である(図4(a)参照)。蓋部材14a,14bは、ボルト等の締結部材によってキャリッジ本体13に締結される。センサ取付け部材15a,15bは、ボルト等の締結部材によってキャリッジ本体13及び/又は蓋部材14a,14bに締結される。なお、図2、図3では、センサ取付け部材15a,15bが省略されている。
図3の運動案内装置1の水平断面図に示すように、キャリッジ本体13には、レール11の四条の軌道面11aに対向する四条の軌道面13aが設けられる。キャリッジ本体13には、各軌道面13aと平行に転動体戻し路としての戻し路13bが設けられる。蓋部材14a,14bには、各軌道面13aと各戻し路13bとを繋げるU字状の方向転換路14cが設けられる。方向転換路14cの内周側は、キャリッジ本体13と一体の断面半円状の内周部13cによって構成される。レール11の軌道面11aとキャリッジ本体13の軌道面13aとの間の負荷転走路、一対の方向転換路14c、戻し路13bによってトラック状の循環路が構成される。循環路には、転動体としての複数の玉16が収容される。レール11に対してキャリッジ12が相対的に移動すると、これらの間に介在する玉16が負荷転走路を転がる。負荷転走路の一端まで転がった玉16は、一方の方向転換路14cに導入され、戻し路13b、他方の方向転換路14cを経由して、負荷転走路の他端に戻る。
<センサの構成>
図1に示すように、センサ2a〜2d,3a〜3dは、例えば静電容量式の変位計であり、レール11に対するキャリッジ12の変位を非接触で検出する(図4(b)の拡大図参照)。上記のように、キャリッジ12の移動方向の両端部には、一対のセンサ取付け部材15a,15bが取り付けられる。一方のセンサ取付け部材15aには、4つのセンサ2a〜2dが取り付けられる。4つのセンサ2a〜2dは、レール11の長さ方向において同一の位置に配置される。他方のセンサ取付け部材15bにも、4つのセンサ3a〜3dが取り付けられる。4つのセンサ3a〜3dは、レール11の長さ方向において同一の位置に配置される。レール11の長さ方向におけるセンサ2a〜2dとセンサ3a〜3dとの間の距離はL1である。なお、4つのセンサ2a〜2dをレール11の長さ方向にずらして配置し、4つのセンサ3a〜3dをレール11の長さ方向にずらして配置することも可能である。
図4は、レール11の長さ方向から見たセンサ取付け部材15aを示す。上記のように、センサ取付け部材15aは、レール11の上面11cに対向する水平部15−1と、レール11の左右側面に対向する一対の袖部15−2と、を有する。水平部15−1には、ラジアル方向の変位を検出する2つのラジアルセンサ2a,2bが配置される。ラジアルセンサ2a,2bは、レール11の上面11cに隙間をあけて向かい合っており、レール11の上面11cまでの隙間を検出する。2つのラジアルセンサ2a,2b間の左右方向における距離はL2である。
一対の袖部15−2には、水平方向の変位を検出する2つの水平センサ2c,2dが配置される。水平センサ2c,2dは、レール11の側面11dに隙間をあけて向かい合っており、側面11dまでの隙間を検出する。
レール11を水平面に配置したと仮定した状態において、ラジアルセンサ2a,2b及び水平センサ2c,2dは、キャリッジ12の上面(取付け面)よりも下方に配置される。キャリッジ12の上面(取付け面)の上にテーブル8を取り付けるためである。センサ2a〜2dのケーブル2a〜2dは、センサ取付け部材15aの袖部15−2から左右方向に引き出される。なお、ケーブル2a〜2dをセンサ取付け部材15aの前面から前方に(紙面に垂直方向に)引き出すこともできる。また、センサ取付け部材15aの上面の高さをキャリッジ12の上面(取付け面)よりも低くし、センサ取付け部材15aの上面とテーブル8との隙間をケーブル2a,2bを引き出す隙間として利用することもできる。
図1に示すセンサ取付け部材15bも、センサ取付け部材15aと同様に、水平部15−1と、一対の袖部15−2と、を有する。水平部15−1には、2つのラジアルセンサ3a,3bが配置される。一対の袖部15−2には、2つの水平センサ3c,3dが配置される。
<リニアエンコーダの構成>
リニアエンコーダ4は、キャリッジ12のx軸方向の位置を検出する。例えば、リニアエンコーダ4は、実機のベース7又はレール11に取り付けられるスケールと、実機のテーブル8又はキャリッジ12に取り付けられ、スケールを読み取るヘッドと、を備える。なお、レール11が移動する場合、リニアエンコーダ4は、レール11のx軸方向の位置を検出する。本発明において、「軌道部材に対する摺動部材の相対移動方向の位置を検出する」には、このようにレール11のx軸方向の位置を検出する場合を含む。また、位置検出手段は、リニアエンコーダに限定されるものではない。例えば、実機のテーブルがボールねじ駆動の場合、位置検出手段として、ボールねじを駆動するモータの角度を検出するロータリーエンコーダを用いることもできる。
<データロガー、コンピュータの構成>
センサ2a〜2d,3a〜3dが検出したキャリッジ12の変位情報は、所定のサンプリング周期毎に記録計であるデータロガー5に記録される。リニアエンコーダ4が検出したキャリッジ12の位置情報も、所定のサンプリング周期毎にデータロガー5に記録される。データロガー5は、記録した変位情報及び位置情報を有線又は無線通信手段を介してコンピュータ6に送信する。データロガー5は、実機の近傍に配置される。コンピュータ6は、実機の近傍又は遠隔地に配置される。
センサ2a〜2d,3a〜3dは、変位の基準として、キャリッジ12から実機の可動部を取り外した無負荷状態におけるレール11に対するキャリッジ12の位置をキャリッジ12が移動中に検出する。また、センサ2a〜2d,3a〜3dは、キャリッジ12に実機の可動部を取り付けた負荷状態におけるレール11に対するキャリッジ12の位置をキャリッジ12が移動中に検出する。負荷状態におけるキャリッジ12の位置と無負荷状態におけるキャリッジ12の位置との差が変位である。センサ2a〜2d,3a〜3dは、無負荷状態及び負荷状態におけるキャリッジ12の位置を変位情報として検出し、データロガー5に送る。
コンピュータ6は、センサ2a〜2d,3a〜3dが検出した無負荷状態及び負荷状態におけるキャリッジ12の位置の差(変位)を算出する。そして、コンピュータ6は、キャリッジ12の変位に基づいて、運動案内装置1(キャリッジ12)に働く荷重を算出する。コンピュータ6は、荷重を算出するにあたって、まず、変位に基づいて、キャリッジ12の変位5成分を算出する。次に、コンピュータ6は、変位5成分に基づいて、複数の玉16それぞれに働く荷重及び接触角を算出する。次に、コンピュータ6は、各玉16の荷重及び接触角に基づいて、キャリッジ12に働く荷重(外力5成分)を算出する。以下にコンピュータが実行する上記の3工程を詳細に説明する。
<キャリッジの変位5成分の算出>
図2に示すように、運動案内装置1にx−y−z座標軸を設定すると、x−y−z座標軸の座標原点に働く荷重は、ラジアル荷重と逆ラジアル荷重の合計であるFと、水平荷重の合計であるFである。キャリッジ12をレール11に押し付ける方向で、図2のy軸の正方向へ働く荷重がラジアル荷重である。その逆の方向、すなわちキャリッジ12をレール11から引き離す方向が逆ラジアル荷重である。キャリッジ12をレール11に対し横へずらす方向で、図2のz軸正負方向へ働く荷重が水平荷重である。
また、x−y−z座標軸まわりのモーメントは、ピッチングモーメントの合計であるMと、ヨーイングモーメントの合計であるMと、ローリングモーメントの合計であるMである。キャリッジ12には、外力として、ラジアル荷重F、ピッチングモーメントM、ローリングモーメントM、水平荷重F、ヨーイングモーメントMが働く。キャリッジ12にこれらの外力5成分が作用すると、キャリッジ12にはそれぞれに対応する変位5成分、すなわちラジアル変位α1(mm)、ピッチング角α2(rad)、ローリング角α3(rad)、水平変位α4(mm)、ヨーイング角α5(rad)が生ずる。
図5は、キャリッジ12に外力が働くときの、センサ2a〜2dの出力の変化を示す。図5中斜線付きの矢印は、出力が変化するセンサであり、図5中白抜きの矢印は、出力が変化しないセンサである。キャリッジ12にラジアル荷重Fが働くとき、キャリッジ12とレール11との間の上下方向の隙間が小さくなる。一方、キャリッジ12に逆ラジアル荷重−Fが働くとき、キャリッジ12とレール11との間の上下方向の隙間が大きくなる。ラジアルセンサ2a,2bは、この上下方向の隙間の変化(変位)を検出する。なお、センサ取付け部材15b(図1参照)に取り付けられるラジアルセンサ3a,3bも、この上下方向の変位を検出する。
キャリッジ12にラジアル荷重F又は逆ラジアル荷重−Fが働くとき、キャリッジ12のラジアル変位α1は、ラジアルセンサ2a,2bが検出した変位をA1,A2、ラジアルセンサ3a,3bが検出した変位をA3,A4とすると、例えば以下の式で与えられる。
(数1)
α1=(A1+A2+A3+A4)/4
キャリッジ12に水平荷重Fが働くとき、キャリッジ12がレール11に対し横へずれ、キャリッジ12の一方の袖部12−2とレール11との間の水平方向の隙間が小さくなり、キャリッジ12の他方の袖部12−2とレール11との間の水平方向の隙間が大きくなる。水平センサ2c,2dは、この水平方向の隙間の変化(変位)を検出する。なお、センサ取付け部材15b(図1参照)に取り付けられる水平センサ3c,3dも、この水平方向の変位を検出する。キャリッジ12の水平変位α4は、水平センサ2c,2dが検出した変位をB1,B2、水平センサ3c,3dが検出した変位をB3,B4とすると、例えば以下の式で与えられる。
(数2)
α4=(B1−B2+B3−B4)/4
キャリッジ12にピッチングモーメントMが働くとき、ラジアルセンサ2a,2bとレール11の間の隙間が大きくなり、ラジアルセンサ3a,3bとレール11との間の隙間が小さくなる。ピッチング角α2が十分に小さいとすると、ピッチング角α2(rad)は、例えば以下の式で与えられる。
(数3)
α2=((A3+A4)/2−(A1+A2)/2)/L1
キャリッジ12にローリングモーメントMが働くとき、ラジアルセンサ2a,3aとレール11の間の隙間が小さくなり、ラジアルセンサ2b,3bとレール11との間の隙間が大きくなる。ローリング角α3が十分に小さいとすると、ローリング角α3(rad)は、例えば以下の式で与えられる。
(数4)
α3=((A1+A3)/2−(A2+A4)/2)/L2
キャリッジ12にヨーイングモーメントMが働くとき、水平センサ2c,3dとレール11の間の隙間が小さくなり、水平センサ2d,3cとレール11との間の隙間が大きくなる。ヨーイング角α5が十分に小さいとすると、ヨーイング角α5(rad)は、例えば以下の式で与えられる。
(数5)
α5=((A1+A4)/2−(A2+A3)/2)/L2
以上により、センサ2a〜2d,3a〜3dが検出する変位に基づいて、キャリッジ12の変位5成分を算出できる。
<各玉に働く荷重及び接触角の算出>
キャリッジ12内の玉16が接触している部分をx軸方向に断面にした状態を図6に示す。図6により、各玉ピッチは、1より少し大きい値をとるκを用いてκDaとし、各玉のx座標が決定され、それをxとする。キャリッジ12内の玉16が転動する部分の長さを2Uとする。2U内に並ぶ玉数を有効玉数といいIとする。キャリッジ12の両端部分には、半径Rで深さがλεとなるようなクラウニング加工と呼ばれるR形状の大きな曲面加工が施されている。
キャリッジ12に外力5成分、すなわちラジアル荷重F、ピッチングモーメントM、ローリングモーメントM、水平荷重F、及びヨーイングモーメントMが働いたときに、キャリッジ12に変位5成分、すなわちラジアル変位α1、ピッチング角α2、ローリング角α3、水平変位α4、ヨーイング角α5が生ずるとして理論式をたてる。
キャリッジ12の玉番号iにおけるキャリッジ12内断面の、変位5成分が生じる前の内部荷重の状態を図7に、変位5成分が生じた後の内部荷重の状態を図8にそれぞれ示す。ここでは、キャリッジ12の玉列番号をj、玉列内の玉番号をiとする。玉径はD、レール11側、キャリッジ12側ともに軌道面と玉16との適合度をf、すなわち軌道面曲率半径はfDとする。また、レール側軌道面曲率中心位置をA、キャリッジ側軌道面曲率中心位置をAとし、それらを結んだ線とz軸とのなす角である接触角の初期状態をγとする。さらに、玉中心間距離を2Uz12、2Uz34、2Uとする。
玉16には予圧が作用している。まず、予圧の原理について説明する。レール11、キャリッジ12の対向する軌道面間に挟まれた部分の寸法は、レール11、キャリッジ12の設計時の寸法及び軌道面の幾何形状によって決まる。そこに入るべき玉径が設計時の玉径であるが、そこに設計時の玉径よりも僅かに大きな寸法Da+λの玉16を組み込むと、玉16と軌道面の接触部はHertzの接触論により、弾性変形をし、接触面を形成し、接触応力を発生させる。そうして発生した荷重が内部荷重であり、予圧荷重である。
図7では、その荷重をP0で表しており、接触部の弾性変形によるレール11、キャリッジ12間の相互接近量をδ0で表している。実際は玉位置が図7の一点鎖線で描いた、レール11、キャリッジ12の軌道面間の中心位置に存在するが、両軌道面の玉16との適合度fは等しいので、玉16の2箇所の接触部に発生するHertzの接触論に基づく諸特性値が同じである。このため、玉16をレール側軌道面位置にずらして描くことにより、レール11、キャリッジ12の軌道面間の相互接近量δ0をわかりやすくしている。
通常、予圧荷重は、キャリッジ1個あたり上側の2列分(又は下側2列分)のラジアル方向荷重として定義しているので、予圧荷重Ppreは次式で表される。
(数6)

Figure 2017129519
次に、この状態から運動案内装置1に外力5成分が作用して、変位5成分が生じた状態を説明する。図8に示すように、座標原点とした運動案内装置1の中心が変位5成分であるラジアル変位α1、ピッチング角α2、ローリング角α3、水平変位α4、ヨーイング角α5によってi番目の玉位置でのレール11とキャリッジ12の相対変位が起きている。
このとき、レール側軌道面曲率中心は動かないが、キャリッジ12が移動するので、キャリッジ側軌道面曲率中心は各玉位置で幾何学的に移動する。その様子はキャリッジ側軌道面曲率中心であるAがA´へ移動するものとして表している。このAがA´へ移動した量をy方向とz方向に分けて考え、y方向に移動した量をδとし、z方向へ移動した量をδとすると、以降添え字はi番目の玉、j番目の玉列を表すものとして、
(数7)
δyij=α1+α2+α3cij
δzij=α4+α5−α3cij
と表すことができる。ここで、z、yは、点Aの座標である。
次に、レール11側とキャリッジ12側の軌道面曲率中心を結んだ線が、玉荷重の法線方向である接触角となるので、初期接触角であったγはβijへと変化し、さらに、この両軌道面曲率中心間距離は、当初のA、A間の距離からA、A´間の距離へと変化する。この両軌道面曲率中心間距離の変化が、玉16の両接触部での弾性変形となり、図7で説明したときと同様に、玉16をレール側軌道面位置にずらして描くことにより、玉16の弾性変形量δijが求まる。
このAr,Ac´間の距離もy方向とz方向とに分けて考え、y方向の距離をVとし、z方向の距離をVとすると、前述のδyij、δzijを用いて、
(数8)
yij=(2f−1)Dsinγ+δyij
zij=(2f−1)Dcosγ+δzij
と表せる。これによりA、A´間の距離は、
(数9)

Figure 2017129519
となり、接触角βijは、
(数10)

Figure 2017129519
となる。以上より玉16の弾性変形量δijは、
(数11)

Figure 2017129519
となる。
ここで、図6で示したキャリッジ12内の玉16が接触している部分をx軸方向に断面にした状態において、クラウニング加工部分に入っている玉16の弾性変形量δijは、キャリッジ12側の軌道面曲率中心のA´がレール側軌道面曲率中心Aから離れる形となっており、その分だけ少なくなる。それはちょうど玉径をそれに見合う形で小さくしたものと同等とみなせるため、その量をλxiとして上式中で差し引いている。
Hertzの接触論により導かれた転動体が玉の場合の弾性接近量を示す式を用いると、弾性変形量δijから転動体荷重Pijが下記の式によって求められる。
(数12)

Figure 2017129519
ここで、Cは非線形のばね定数(N/mm3/2)であり、下記の式で与えられる。
(数13)

Figure 2017129519
ここで、Eは縦弾性係数、1/mはポアソン比、2K/πμはHertz係数である。
以上により、キャリッジ12の変位5成分α1〜α5を用いて、キャリッジ12内のすべての玉16について、接触角、弾性変形量、転動体荷重を式で表すことができたことになる。
なお、上記においては、わかり易くするために、キャリッジ12を剛体として考えた剛体モデル負荷分布理論を使用している。この剛体モデル負荷分布理論を拡張し、キャリッジ12の袖部12−2の変形を加味すべく梁理論を適用したキャリッジ梁モデル負荷分布理論を使用することもできる。さらに、キャリッジ12やレール11をFEMモデルとしたキャリッジ・レールFEMモデル負荷分布理論を使用することもできる。
<荷重(外力5成分)の算出>
あとは、上記の式を使って外力としての5成分、すなわちラジアル荷重F、ピッチングモーメントM、ローリングモーメントM,水平荷重F、ヨーイングモーメントMに関するつり合い条件式をたてればよい。
(数14)
ラジアル荷重Fに関して、

Figure 2017129519
(数15)
ピッチングモーメントMに関して、

Figure 2017129519
(数16)
ローリングモーメントMに関して、

Figure 2017129519
ここで、ωijは、モーメントの腕の長さを表し、次式で与えられる。z、yは、点Arの座標である。

Figure 2017129519
(数17)
水平荷重Fに関して、

Figure 2017129519
(数18)
ヨーイングモーメントMに関して、

Figure 2017129519
以上の式からキャリッジ12に働く荷重(外力5成分)を算出することができる。
<寿命算出>
次に、コンピュータ6は、算出したキャリッジ12の荷重に基づいて、運動案内装置1の寿命を算出する。以下に、運動案内装置1の寿命算出方法を説明する。コンピュータ6が算出したキャリッジ12の荷重は、キャリッジ12の位置に関連付けられている。キャリッジ12の荷重は、横軸にキャリッジ12の位置をとり、縦軸にキャリッジ12の荷重をとると、例えば図9のようにグラフ化される。図9は、実機の1サイクルの動作パターンにおいて、運動案内装置1のラジアル荷重がP、P、Pに変化する例を示す。コンピュータ6は、変動荷重P、P、Pに基づいて、運動案内装置1の走行中の平均荷重を算出する。平均荷重は、例えば以下の式により算出される。
(数19)

Figure 2017129519
ここで、Pは平均荷重(N)、Pは変動荷重(N)、Lはストローク(mm)、LはPを負荷して走行した距離である。同様に、コンピュータ6は、キャリッジ12に働く外力5成分について、運動案内装置1の走行中の平均荷重を算出する。
次に、コンピュータ6は、算出した平均荷重に基づいて、寿命計算に使用する等価荷重を算出する。等価荷重の算出式は、運動案内装置1の型番によって異なり、運動案内装置1の製造メーカによって与えられる。例えば、HSR形(THK社の型番)の運動案内装置1の場合、等価荷重Pは、ラジアル荷重の平均荷重Pと水平荷重の平均荷重Pを用いて、以下の式により算出される。
(数20)
=P+P
次に、コンピュータ6は、例えば以下の式を用いて、定格寿命L(km)を算出する。定格寿命とは、一群の同じ運動案内装置1を同じ条件で個々に運動させたとき、そのうちの90%がフレーキング(金属表面のうろこ状のはく離)をおこすことなく到達できる総走行距離をいう。
(数21)

Figure 2017129519
ここで、Lは定格寿命(km)であり、Cは基本動定格荷重(N)であり、Pは等価荷重(N)である。fは硬さ係数であり、fは温度係数であり、fは接触係数であり、fは荷重係数である。f、f、f、fは、運動案内装置1の製造メーカによって与えられる。例えば、f=f=f=f=1である。
以上に本実施形態の運動案内装置1の荷重計測システムの構成を説明した。本実施形態の運動案内装置1の荷重計測システムによれば以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、キャリッジ12と実機のテーブル8との間に歪ゲージを挟む必要がなく、実機の使用状態で運動案内装置1の荷重(実機に運動案内装置1を組み込んだ状態で運動案内装置1に働く荷重であり、キャリッジ12の上に載る物の重量を含んだ荷重である)をリアルタイムに高精度に計測することができる。また、運動案内装置1の荷重を、レール11に対するキャリッジ12の相対移動方向の位置に関連付けている。このため、走行中に変動する運動案内装置1の荷重を高精度に計測することができる。運動案内装置1の荷重を高精度に計測できれば、過大な定格荷重を持つ運動案内装置1を選定する必要が無くなるし、運動案内装置1の寿命もより正確に予測することができる。
荷重を算出するにあたって、レール11とキャリッジ12との間に介在する複数の玉16の荷重及び接触角を算出するので、高精度に荷重を算出することができる。
ラジアルセンサ2a,2b,3a,3b及び水平センサ2c,2d,3c,3dが、キャリッジ12の移動方向の両端部に取り付けられるセンサ取付け部材15a,15bに配置されるので、ラジアルセンサ2a,2b,3a,3b及び水平センサ2c,2d,3c,3dをキャリッジ12に取り付けるにあたって、キャリッジ12を改造する必要がない。また、玉列全体の変位を見ることができるように、ラジアルセンサ2a,2b,3a,3b同士の距離及び水平センサ2c,2d,3c,3d同士の距離を離すことができるので、キャリッジ12のモーメント変位を高精度に算出することができる。
センサ取付け部材15a,15bが、レール11の上面11cに対向する水平部15−1と、レール11の側面に対向する袖部15−2と、を有するので、ラジアルセンサ2a,2b,3a,3b及び水平センサ2c,2d,3c,3dをセンサ取付け部材15a,15bに容易に配置することができる。
キャリッジ12の変位の基準として、キャリッジ12から実機のテーブル8を取り外した無負荷状態におけるレール11に対するキャリッジ12のラジアル方向及び水平方向の位置を検出し、その後、キャッリジ12に実機のテーブル8を取り付けた負荷状態におけるレール11に対するキャリッジ12のラジアル方向及び水平方向の位置を検出するので、レール11が曲がっていたとしても使用状態におけるキャリッジ12の変位を高精度に検出することができる。
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲でさまざまな実施形態に具現化可能である。
上記実施形態では、キャリッジの変位5成分を算出しているが、キャリッジに働く力又はモーメントが特定できる場合、計算を簡単にするために、キャリッジの変位の1以上4以下の成分を算出することもできる。これにより、センサの個数を減らし、コストの削減を図ることができる。
上記実施形態では、レールを水平面に配置しているが、レールを垂直面に配置することもできるし、傾斜面に配置することもできる。
上記実施形態では、転動体として玉を使用した例を説明したが、転動体としてころを使用することもできる。
キャリッジの移動方向におけるセンサ取付け部材の両端面には、シール、潤滑剤供給装置等のオプション部品を取り付けることもできる。
1…運動案内装置、2a,2b,3a,3b…ラジアルセンサ(センサ)、2c,2d,3c,3d…水平センサ(センサ)、4…リニアエンコーダ(位置検出手段)、5…データロガー(記録計)、6…コンピュータ(算出手段)、11…レール(軌道部材)、12…キャリッジ(摺動部材)、15a,15b…センサ取付け部材、15−1…水平部、15−2…袖部、16…玉(転動体)

Claims (7)

  1. 軌道部材に複数の転動体を介して摺動部材が相対移動可能に組み付けられる運動案内装置の荷重計測システムであって、
    前記軌道部材に対する前記摺動部材の相対移動方向の位置を検出するための位置検出手段と、
    前記軌道部材に対する前記摺動部材のラジアル方向及び/又は水平方向の変位を検出するための少なくとも一つのセンサと、
    前記位置検出手段が検出した位置情報及び前記少なくとも一つのセンサが検出した変位情報に基づいて、前記位置に関連付けられた前記運動案内装置の荷重を算出する算出手段と、を備える運動案内装置の荷重計測システム。
  2. 前記算出手段は、前記荷重を算出するにあたって、前記軌道部材と前記摺動部材との間に介在する前記複数の転動体の荷重及び接触角を算出することを特徴とする請求項1に記載の運動案内装置の荷重計測システム。
  3. 前記少なくとも一つのセンサは、
    前記軌道部材の上面との間のラジアル方向の隙間を検出するラジアルセンサ、及び/又は前記軌道部材の側面との間の水平方向の隙間を検出する水平センサを備え、
    前記ラジアルセンサ及び/又は前記水平センサは、前記摺動部材の前記相対移動方向の両端部に取り付けられるセンサ取付け部材に配置されることを特徴とする請求項2に記載の運動案内装置の荷重計測システム。
  4. 前記センサ取付け部材は、前記軌道部材の上面に対向する水平部と、前記軌道部材の側面に対向する袖部と、を有し、
    前記センサ取付け部材の前記水平部に前記ラジアルセンサが配置され、
    前記センサ取付け部材の前記袖部に前記水平センサが配置されることを特徴とする請求項3に記載の運動案内装置の荷重計測システム。
  5. 前記少なくとも一つのセンサは、
    前記変位の基準として、前記摺動部材から実機の可動部を取り外した無負荷状態における前記軌道部材に対する前記摺動部材の前記ラジアル方向及び/又は前記水平方向の位置を検出し、その後、
    前記摺動部材に前記実機の前記可動部を取り付けた負荷状態における前記軌道部材に対する前記摺動部材の前記ラジアル方向及び/又は前記水平方向の位置を検出することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の運動案内装置の荷重計測システム。
  6. 軌道部材に複数の転動体を介して摺動部材が相対移動可能に組み付けられる運動案内装置の荷重計測方法であって、
    前記軌道部材に対する前記摺動部材の相対移動方向の位置を検出する工程と、
    前記軌道部材に対する前記摺動部材のラジアル方向及び/又は水平方向の変位を検出する工程と、
    検出した位置情報及び検出した変位情報に基づいて、前記位置に関連付けられた前記運動案内装置の荷重を算出する工程と、を備える運動案内装置の荷重計測方法。
  7. 請求項6に記載の荷重計測方法を用いて算出した前記運動案内装置の前記荷重に基づいて、実機の動作パターンにおける前記運動案内装置の平均荷重を算出し、
    前記平均荷重に基づいて、前記運動案内装置の寿命を算出する運動案内装置の寿命算出方法。
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