JP2017125086A - ポリプロピレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
条件(A−1)
成分(A)は、プロピレン単独重合体及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系重合体である。
条件(B−1)
成分(B)は、融点が200℃未満の有機系難燃剤である。
条件(C−1)
成分(C)は、金属酸化物である。
条件(X−1)
成分(X)は、下記の成分(D)及び成分(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種のシリコーン化合物である。
成分(D):ポリプロピレンとシリコーンが化学的に結合したグラフトポリマー。
成分(E):粘度が1000〜50000cStのシリコーンオイル。
条件(X−2)
成分(X)が、成分(E)を含有する。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、条件(A−1)を満足する成分(A)70〜95重量%と、条件(B−1)を満足する成分(B)3〜20重量%と、条件(C−1)を満足する成分(C)2〜10重量%(但し、成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計量は100重量%である。)と、成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計量100重量部に対して、条件(X−1)を満足する成分(X)0.6〜5重量部とを含有することを特徴とするものである。
以下に、本発明に用いられる成分(A)(プロピレン系重合体)の詳細について説明する。本発明に用いられる成分(A)(プロピレン系重合体)は、条件(A−1)を満足するものである。
1−1.条件(A−1)
本発明に用いられる成分(A)は、プロピレン単独重合体及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系重合体である。これらのうち、手触り肌触り感(手触りでの粘着感)や耐傷付き特性を良好にするにはプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体を用いるのが好ましく、なかでもプロピレン−エチレンブロック共重合体は、製造が比較的容易で市販製品の種類も多く、入手が容易であるので、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において手触り肌触り感(手触りでの粘着感)や耐傷付き特性を所望の範囲に調整するのが容易であり、後述の通り成形性の観点からも、好ましく用いられる。
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体としては、具体的に、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテン−1ブロック共重合体、プロピレン−ペンテン−1ブロック共重合体、プロピレン−ヘキセン−1ブロック共重合体、プロピレン−オクテン−1ブロック共重合体のような二元共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1ブロック共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセン−1ブロック共重合体のような三元共重合体などが挙げられ、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1ブロック共重合体などが好ましい。
以下に、成分(A)のその他の物性等について説明する。
成形性の観点から、成分(A)は、融点が通常は100℃以上200℃未満であり、好ましくは130〜170℃であり、160〜165℃であることが更に好ましい。成分(A)の融点をこの様な範囲とすることにより、良好な成形性や難燃性を保つと共に、プロピレン系重合体や後述する有機系難燃剤の劣化に伴う変色を防止し、良好な外観を得ることが可能となる。即ち、融点が100℃未満では成形体とした時に比較的低温で軟化してしまうため、難燃剤を添加し難燃性を付与する用途には適さない場合がある。一方、融点が200℃以上では成形温度が高くなってしまうため、プロピレン系重合体や難燃剤が成形時の熱により劣化し、変色等の原因となる場合がある。また、プロピレン系重合体の融点は、主として、原料として用いられるプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンの種類、共重合比率、MFR等により、適宜制御することができる。なお、本明細書でいう「融点」とは、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter)により、測定された融解ピーク温度である。
なお、上記アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は、13C−NMR(核磁気共鳴法)を用いて測定される値であり、同位体炭素による核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。すなわち、アイソタクチックペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個連続してアイソタクチック結合したプロピレン単位の分率である。具体的には、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中mmmmピークの強度分率をもってアイソタクチックペンタッド単位を測定し、測定には、例えば日本電子社製FT−NMRの270MHzの装置が用いられる。
また、成分(A)として使用可能なプロピレン系重合体は、種々の製品が多くの会社から市販されており、例えば日本ポリプロ社製のノバテックシリーズ等を挙げることができる。これら市販の製品から所望の物性を有する製品を購入し、使用することも可能である。
2−1.条件(B−1)
本発明に用いられる成分(B)は、融点が200℃未満の有機系難燃剤である。成分(B)として使用できる有機系難燃剤としては、一般的にポリオレフィン用の難燃剤として用いられる有機系難燃剤であれば、ハロゲン系、リン系などの種々の有機系難燃剤のうち、融点が200℃未満のものを用いることができる。
また、ハロゲン系難燃剤としては、例えば、ハロゲン化ビスフェノール系化合物、ハロゲン化ビスフェノール−ビス(アルキルエーテル)系化合物等を挙げることができ、これらのうち、融点が200℃未満のものを成分(B)として使用することができる。
これら成分(B)として使用する有機系難燃剤の融点を200℃未満とすることにより、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の成形温度を極端に高温にする必要が無い為、プロピレン系重合体や難燃剤の成形時の熱による劣化を防ぐことができる。即ち、融点が200℃以上では成形温度が高くなってしまうため、プロピレン系重合体や難燃剤が成形時の熱により劣化し、変色等の原因となる場合がある。なお、成分(B)の融点の下限は一般的に30℃である。
また、ハロゲン系難燃剤と共に、リン系難燃剤などのハロゲン系難燃剤に該当しない他の有機系難燃剤を使用することもできる。
これらのハロゲン系難燃剤の中でも、臭素系難燃剤は、難燃効果が高いので、用いられることが多い。
3−1.条件(C−1)
本発明に於いて、成分(C)は金属酸化物であり、所謂難燃助剤と呼ばれるものである。
本発明で成分(C)として用いられる金属酸化物は特に制限されず種々の化合物を使用することが出来るが、中でも、アンチモン化合物が好ましい。アンチモン化合物は、有機系難燃剤(B)と共にポリプロピレン樹脂(A)に配合されることによって、難燃助剤として働き、より効果的に難燃効果を向上させることが可能となる。
具体的なアンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンであり、具体的な金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミ、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。より好ましいアンチモン化合物としては、三酸化アンチモンがあり、通常は平均粒径が30μm以下、好ましくは10μm以下、更に好ましくは1μm以下のものが好適である。平均粒径の下限について特に制限はないが、取扱いの容易さや分散性の観点から、通常0.01μmである。金属酸化物の平均粒子径が30μmより大きい場合には、ポリプロピレン系樹脂(A)に対する分散性が悪くなり、高度な難燃性を得ることが難しくなる傾向となる。
なお、本発明において、アンチモン化合物には、金属アンチモンが含まれるものとする。本発明で用いるアンチモン化合物としては、有機系難燃剤と併用することによって、難燃性の高い相乗効果が得られるという理由から、三酸化アンチモンが好ましい。
また、これらの金属酸化物(C)は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
4−1.条件(X−1)
本発明で用いる成分(X)は、下記の成分(D)及び成分(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種のシリコーン化合物である。これらの成分(D)や成分(E)を用いることにより、良好な防汚性、耐傷つき性という効果を得ることができる。
4−2.成分(D):ポリプロピレンとシリコーンが化学的に結合したグラフトポリマー
成分(D)は、ポリプロピレンとシリコーンが化学的に結合したポリマーである。成分(D)を用いることにより、特に良好な手触り肌触り感という効果を得ることができる。ポリプロピレンとシリコーンが化学的に結合したポリマーは、ポリプロピレン単独重合体のポリプロピレン分子鎖にジメチルシロキサンを化学的に結合することにより得ることが出来る。具体的にはポリプロピレンとジメチルシロキサン、有機過酸化物を溶融混練することにより製造することが可能である。製造方法は公知技術であり、一例として特開平6−16824が挙げられる。ポリプロピレンとシリコーンが化学的に結合したポリマーは、ジメチルシロキサンのかわりにオルガノシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリエイロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルビニルシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニル共重合体等に置き換えた化合物も同等に使用できる。市販品としては、東レ・ダウコーニング社製のBY27−201等が挙げられる。
本発明で用いる成分(E)は、粘度が1000〜50000cStのシリコーンオイルである。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オルガノポリシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリアルキルフェニルシロキサン、ポリアルキル変性シロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリ脂肪酸エステル変性シロキサン等が使用できる。シリコーンオイルの粘度は1000〜50000cStであり、好ましくは1500〜40000cSt、さらに好ましくは5000〜30000cSt、より好ましくは10000〜20000cStである。シリコーンオイルの粘度をこのような範囲にすることにより、難燃性と傷つき性及び防汚性すべてを満たすことが可能となる。即ち、シリコーンオイルの粘度が1000cSt未満になると、成形体表面にブリードしてしまいベタツキ等の不具合が生じる場合がある。また、低分子量成分が増えることにより難燃性の低下も懸念される。シリコーンオイルの粘度が50000cStを超えると、溶融混練時に分散性が悪化する為ペレットと紛体が塊となり、供給ムラ等の不具合が生じるおそれがある。成分(E)として使用できる市販品としては、東レ・ダウコーニング社製SH200−10,000cs、SH200−1,000cs、SH200−50,000cs、信越化学工業(株)社製、KF−96ss−10,000、KF−96ss−1,000、KF−96ss−50,000等が挙げられる。また、上記シリコーンオイルは単独でも使用してもよく2種類以上併用してもよい。
本発明で用いる成分(X)は、成分(E)を含有するのが好ましい。これは、成形体表面の滑り性を成分(E)が向上させることにより、より高い耐傷つき性を付与することが可能となる為である。また、成分(E)は成形体表面の撥水性を向上させる効果も有り、より高い防汚性を付与するという効果もある。
本発明において、各成分の含有量は、成分(A)70〜95重量%と、成分(B)3〜20重量%と、金属酸化物(C)2〜10重量%との範囲(但し、成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計量は100重量%である。)であり、更に、成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計量100重量部に対して、成分(X)0.6〜5重量部とを含有することを必須とする。各成分の配合量をこの様な範囲とすることにより、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体において、非常に高い難燃性と防汚性、傷つき性を発現し、かつ、成形加工時にブリード性を良好に保ち、良好な製品外観を得ることが可能となる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計量100重量部に対して、核剤0.05〜2重量部を更に含むのが好ましく、0.08〜1重量部が更に好ましく、0.1〜0.5重量部がより好ましい。核剤をこの様な範囲で含有することにより、成形体表層の硬さ(所謂、硬度)を向上させることにより耐傷つき性を付与する効果が得られる。即ち、核剤が0.05重量部未満では十分な硬さを付与することが出来ず良好な耐傷つき性が得られない場合がある。また、2重量部を超えると添加量に対して成形体表層の硬さの向上が得られない傾向となり、それ故に経済的に不利となる場合もある。
本発明においては、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(X)や核剤の他に、必要に応じ、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、例えば、発明効果を一層向上させ、他の効果を付与するなどのため、通常用いられる任意添加成分(F)を配合することができる。
具体的には、過酸化物などの分子量降下剤、顔料などの着色剤、フェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤、ヒンダードアミン系などの光安定剤、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、非イオン系などの帯電防止剤、有機金属塩系などの分散剤、窒素化合物などの金属不活性化剤、チアゾール系などの抗菌・防黴剤、可塑剤、中和剤、滑剤、エラストマー(ゴム成分)、成分(C)に該当しない難燃助剤、成分(A)以外のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂やポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂、ガラス繊維、炭素繊維などのフィラー、成分(B)以外の水和金属化合物などの無機系の難燃剤などを挙げることができる。
本発明で使用することができる分子量降下剤として、例えば、各種の有機過酸化物や、分解(酸化)促進剤と称されるものなどが使用でき、なかでも有機過酸化物が好適である。
具体例として、有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチル−ジ−パーアジペート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、メチル−エチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルキュミルパーオキサイド、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシブタン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−サイメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラ−メチルブチルハイドロパーオキサイド及び2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ハイドロパーオキシ)ヘキサンのグループから選ばれる1種または2種以上からなるものを挙げることができる。なお、これらに限定されるものではない。
具体例として、無機系顔料としては、ファーネスカーボン、ケッチェンカーボンなどのカーボンブラック;クロム酸(黄鉛など);モリブデン酸;硫化セレン化物;フェロシアン化物などが挙げられ、有機系顔料としては、難溶性アゾレーキ;可溶性アゾレーキ;不溶性アゾキレート;縮合性アゾキレート;その他のアゾキレートなどのアゾ系顔料;フタロシアニンブルー;フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;アントラキノン;ペリノン;ペリレン;チオインジゴなどのスレン系顔料;染料レーキ;キナクリドン系;ジオキサジン系;イソインドリノン系などが挙げられる。また、メタリック調やパール調にするには、アルミフレーク;パール顔料を含有させることができる。また、染料を含有させることもできる。
具体例としては、ヒンダードアミン化合物として、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合物;ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕;テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート;ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセバケートなどが挙げられ、ベンゾトリアゾール系としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられ、ベンゾフェノン系としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられ、サリシレート系としては、4−t−ブチルフェニルサリシレート;2,4−ジ−t−ブチルフェニル3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
ここで、前記光安定剤と紫外線吸収剤とを併用する方法は、耐候性、耐久性などの向上効果が大きく好ましい。
帯電防止剤として、例えば、非イオン系やカチオン系などの帯電防止剤は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体の帯電防止性の付与、向上に有効である。
1.ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、各成分を前記配合割合で、従来公知の方法で配合し、溶融混練する混練工程を経ることにより製造することができる。
混合は、通常、タンブラー、Vブレンダー、リボンブレンダーなどの混合機器を用いて行い、溶融混練は、通常、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー、撹拌造粒器などの混練機器を用いて(半)溶融混練し造粒する。
本発明の成形体は、前記方法で製造されたポリプロピレン系樹脂組成物を、例えば、射出成形(ガス射出成形、二色射出成形、コアバック射出成形、サンドイッチ射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、シート成形及び中空成形などの周知の成形方法にて成形することによって得ることができる。
各種成形体により家電分野においては、炊飯ジャー、掃除機、洗濯機、冷蔵庫、扇風機、エアコン等の家電部品、住設分野においては化粧台、換気扇、便座、便蓋、及び付属品として使用される機器のハウジング類等の住宅設備用機器部品等の用途として使用することができる。
なお、実施例で用いた評価法、分析の各法および材料は、以下の通りである。
1.成分(A):プロピレン系重合体
(A)−1:日本ポリプロ株式会社製・ノバテックシリーズから、以下の特性を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体を用いた。(プロピレン−エチレンブロック共重合体部分の含量8.0重量%、プロピレン−エチレンブロック共重合体部分におけるエチレン含量55重量%、全体のエチレン含量4.4重量%、全体のMFR30g/10分、全体のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)0.98、全体のQ値(Mw/Mn)4.7)
(B)−1:ハロゲン系難燃剤(鈴裕化学社製、ファイアーカットP−680:[2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル)プロパン]、融点100℃)
(B)−2:ハロゲン系難燃剤(丸菱油化工業社製、ノンネン52:[2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3―ジブロモプロポキシフェニル)スルフォン]、融点60℃)
(B)−3:ハロゲン系難燃剤(アルベマール日本社製、SAYTEX8010:[1,1−(エタン−1,2−ジイル)ビス(ペンタブロモベンゼン)]、融点345℃)
(C)−1:アンチモン系酸化物(鈴裕化学社製、ファイヤーカットAT3(三酸化アンチモン))
4.成分(X):シリコーン化合物
4−1.成分(D):ポリプロピレンとシリコーンが化学的に結合したグラフトポリマー
(D)−1:東レ・ダウコーニング社製、BY27−201(シリコーン含有ポリプロピレン樹脂)
4−2.成分(E):シリコーンオイル
(E)−1:東レ・ダウコーニング社製、SH200−100CS(ポリジメチルシロキサン)、粘度100cSt
(E)−2:東レ・ダウコーニング社製、SH200−1000CS(ポリジメチルシロキサン)、粘度1000cSt
(E)−3:東レ・ダウコーニング社製、SH200−10000CS(ポリジメチルシロキサン)粘度10000cSt
本実施例で用いた任意成分(F)は以下の通りである。
5−1.酸化防止剤
(F)−1:BASF社製、イルガノックス1010(テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェイル)プロピオネート]メタン)
(F)−2:ADEKA社製、PEP36(3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン)
5−2.中和剤
(F)−3:日油社製、カルシウムステアレート
5−3.核剤
(F)−4:ADEKA社製。NA11(2−ヒドロキシ−2−オキソ−4,6,10,12−テトラ−tert−ブチル−1,3,2−ジベンゾ[d,g]ペルヒドロジオキサホスファロシン)
(F)−5:DIC社製、AL−PTBBA(ヒドロキシ−ジ−P−ターシャリブチル安息香酸アルミニウム)
(F)−6:日本タルク社製、5000SMA(含水珪酸マグネシウム))
表1及び表2に記載した所定量の成分(A)と成分(X)とを、ヘンシェルミキサーに投入して1分間予備混合を実施した後、所定量の各成分、成分(B)、成分(C)、及び任意成分(F)を投入し、3分間、充分に撹拌混合を行った。得られた配合組成物を、押出機(日本製鋼社製、径30mm2軸押出機)を用いて、設定温度200℃で溶融混練し、ペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
(1)試験片の成形
上記で得られたペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を、射出成形機(東芝社製IS100)を用い、シリンダ温度190℃から200℃、金型冷却温度40℃の条件にてシート試験片(120×120×3mmt、2mmt)及び燃焼試験片(125×15×3mmt、2mmt、1.5mmt)を各々成形した。
以下の手順で成形時の焼け特性を評価した。
(i)成形温度が210℃の射出成形機のシリンダ内にポリプロピレン系樹脂組成物を10分間滞留させる。
(ii)定常成形(成形機と成形条件、試験片サイズを記載要)し、試験片を作製(1サイクル1min)。
(iii)試験片を目視で確認し、以下の判定基準に従い判定した。
(判定基準)
○:変色が確認できない。
×:変色が確認できる。
上記燃焼試験片を用い、UL−94規格に準拠して、難燃性を評価した。
以下の手順で撥水性を評価した。
(i)上記シート試験片上に1μlの蒸留水を滴下する。
(ii)1分間放置。
(iii)液面の接触角を測定し、以下の判定基準に従い判定した。
(判定基準)
○:接触角が90度以上である。
×:接触角が90度未満である。
以下の手順で耐傷付き性を評価した。
(i)5fingerで試験を実施した。
・試験片=上記のシート試験片(120×120×2t(mm))。
・引掻試験器=ROCKWOOD SYSTEMS AND EQUIPMENT社製 「SCRATCH & MAR TESTER」
・測定方法=上記試験器を用い、下記荷重にて、形状(曲率半径0.5mm、ボール状)加工を施した引掻先端にて、引掻速度=100mm/分にて引掻いた。
(ii)試験荷重0.6N、2N、3N、6N、10Nで実施し、その後の表面観察で白化が認められない最大の荷重について読み取り下記の判定基準に従い判定した。表面観察は、傷の形態を試験片に対して90度の角度で目視判定し、傷の白化が目立ち始める荷重を測定する。n数は10とし、その平均値を前記荷重とする。なお、試験温度は23℃である。
(判定基準)
○:ポリプロピレン単独より最大荷重が大きい。
△:ポリプロピレンと同等。
×:ポリプロピレン単独より最大荷重が小さい。
上記のシート試験片をJIS K7212−Bに準拠し、下記判定基準に従って判定した。即ち、ギアオーブン(株式会社東洋精機製作所製)を用いて70℃で168時間加熱処理し、23℃で24時間状態調整した後、手触りでの粘着感を評価した。
(判定基準)
○:粘着感が感じられない。
△:やや粘着感が感じられる。
×:べたべたした粘着感が感じられる。
上記のシート試験片(120×120×3mmt)を50℃のギアオーブン(株式会社東洋精機製作所製)に72時間放置し熱処理を行った。72時間後のシート試験片の表面を目視で観察しブリード物の有無を確認し、下記判定基準にて判定した。
(判定基準)
○:試験片表面にブリード物が確認できない。
×:試験片表面にブリード物を確認できる。
上記のシート試験片(120×120×2mmt)を厚さ6mmtとなるよう3枚重ね、JIS K 7202−2に準じて評価を実施した。
ポリプロピレン系樹脂及び各配合成分を表1に示す割合で配合し、溶融混練し、ペレット化し、物性評価を行った。結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂、各配合成分及び任意成分として核剤を表2に示す割合で配合し、溶融混練し、ペレット化し、物性評価を行った。これらの結果と実施例1の結果を表2に示す。
(1)実施例1〜10:
実施例1〜10の評価結果(表1)から、成分(X)(成分(D)及び成分(E))を添加することにより、良好な撥水性・耐傷付き性を付与できることが確認できる。また、成分(X)(成分(D)及び成分(E))を添加しても、難燃性の低下、表面触感(ベタツキ性)、ブリード性の悪化等を生じない事も確認できる。
(2)実施例11〜13
実施例11〜13の評価結果(表2)から、成分(F)−4〜(F)−6(核剤)を添加することにより、実施例1と比較して表面硬度を更に向上させ、耐傷つき性が更に良好となる事が確認できる。
(3)比較例1〜6:
比較例1から粘度が1000cStに満たない成分(E)を添加した場合、表面触感を著しく低下させることが確認できる。比較例2から成分(C)が所定量添加されない場合、十分な難燃性を発現できず、本願の効果を満たせないことが確認できる。比較例3から成分(X)(成分(D)及び成分(E))を所定量以上添加した場合、難燃樹脂組成物の滑り性が著しく高くなってしまうことにより、製造時に溶融した樹脂がシリンダ内で滑ってしまうためにシリンダ内で前進せず、原料供給口で滞留してしまう事により原料の供給が出来なくなり、製造ができなかった。比較例4から成分(D)が所定量を満たさない場合、十分な撥水性を発現しない事が確認できた。比較例5から成分(B)が所定量以上の場合、成分(B)の有機系難燃剤が製品表面にブリードしてしまう事によりブリード性の悪化や難燃剤の分解により成形時に変色する不具合が生じた。比較例6から融点が200℃以上の成分(B)を用いた場合、未溶融の難燃剤が製品表面浮き出てしまうことにより、著しく撥水性を低下させる事が確認できた。また、製品厚みが薄い物では十分な難燃性を発現できないことも確認できた。
Claims (5)
- 下記の条件(A−1)を満足する成分(A)70〜95重量%と、下記の条件(B−1)を満足する成分(B)3〜20重量%と、下記の条件(C−1)を満足する成分(C)2〜10重量%(但し、成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計量は100重量%である。)と、成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計量100重量部に対して、下記の条件(X−1)を満足する成分(X)0.6〜5重量部とを含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(A−1)
成分(A)は、プロピレン単独重合体及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系重合体である。
条件(B−1)
成分(B)は、融点が200℃未満の有機系難燃剤である。
条件(C−1)
成分(C)は、金属酸化物である。
条件(X−1)
成分(X)は、下記の成分(D)及び成分(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種のシリコーン化合物である。
成分(D):ポリプロピレンとシリコーンが化学的に結合したグラフトポリマー。
成分(E):粘度が1000〜50000cStのシリコーンオイル。 - 成分(X)が、下記の条件(X−2)を満足する請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(X−2)
成分(X)が、成分(E)を含有する。 - ポリプロピレン系樹脂組成物が、成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計量100重量部に対して、核剤0.05〜2重量部を更に含む請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
- 成分(A)が、プロピレン−エチレンブロック共重合体である請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
- 請求項1乃至4の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
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