JP2017122307A - トンネル施工方法 - Google Patents
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Description
地山面の閉合に使用する支保工は、地山面に沿って建て込まれた鋼製支保工と、地山面に吹き付けられた吹付けコンクリートと、必要に応じて施工された補助工(例えば先受けフォアポーリング等)とを備えている。
吹付けコンクリートは、ミキサー車等により坑内に搬入したベースコンクリートに対して、急結剤を添加して吹き付けられている(例えば、特許文献1参照)。
ところが、小断面トンネルでは、ミキサー車によるコンクリートの坑内運搬は困難であった。
そのため、小断面トンネルでは、トンネル内にレールを敷設し、このレールを走行するトロッコ等により運搬する場合がある。
また、トンネルの断面形状を大きくすることで、必要な機材を設置する場所と、ミキサー車等の運搬車両が走行する走行路を確保する場合があった。
また、コンクリート運搬機械類の大きさに合わせてトンネルを大断面化することは、施工に手間と時間がかかるとともに、不経済である。
さらに、コンクリートは、吹付けコンクリートの施工に合わせて坑内に搬入するため、タイミングの見極めが難しいとともに、予想外に軟弱地盤が露出することによって急遽吹付けコンクリートを施工する必要が生じた場合には、間に合わないおそれがある。
このような観点から、本発明は、簡易かつ安価にコンクリートを搬入することができ、かつ、切羽へコンクリートを常時供給することが可能なトンネル施工方法を提案することを課題とする。
請求項2に記載の発明は、前記圧送管内に残留させるセメント系材料が硬化することがないように、前記支保工程の終了前から、遅延剤が混合されたセメント系材料をポンプ圧送することを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、前記支保工程は、地山面にセメント系材料を吹き付ける一次吹付け作業と、前記セメント系材料の表面に沿って鋼製支保工を建て込む鋼製支保工設置作業と、前記鋼製支保工同士の間にセメント系材料を吹き付ける二次吹付け作業と、を備えており、前記鋼製支保工設置作業では、前記圧送管内にセメント系材料を残留させておくことを特徴としている。
ここで、本明細書において、「セメント系材料」とは、固化材としてセメントが混合された材料であって、コンクリートやモルタル等をいう。
請求項4に記載の発明は、前記圧送管内にセメント系材料を残留させる時間に応じて、前記遅延剤の添加量を調整することを特徴としている。
請求項2に記載のトンネル施工方法によれば、支保工程の終了前に遅延剤が混合されたセメント材料をポンプ圧送しておくため、支保工程後の掘削工程を実施している間、圧送管内に残留させたセメント系材料が硬化することを防止することができる。
また、コンクリートをポンプ圧送することで、ミキサー車等の運搬車両等を利用する場合に比べて、作業員の手間や人数を削減することができる。また、トンネル坑内で運搬車両や施工機械等が行き違うことによる事故の危険性がない。さらに、運搬車両の排気ガスによって坑内環境が悪化することもない。
ここで、「遅延剤」とは、セメント系材料の凝結を遅延させる混和剤であって、いわゆる凝結遅延剤(硬化遅延剤)の他、AE減水剤、AE減水剤(遅延型)等も含むものとする。
請求項3に記載のトンネル施工方法によれば、鋼製支保工設置作業中に、圧送管内にセメント系材料を残留させておくため、二次吹付け作業における吹付け作業を効率的に実施できる。
請求項4に記載の発明によれば、必要な分だけ遅延剤を添加するため、経済的に圧送管内にセメント系材料のフレッシュ性状を保持できる。
本実施形態では、立坑の底部に設けられた坑口から横方向に掘進することによりトンネルを構築する。なお、トンネルは必ずしも立坑を利用して構築する必要はなく、例えば、斜面に形成された坑口から掘進してもよい。
本実施形態のトンネル施工方法は、図1に示すように、掘削工程S1と、支保工程S2とを備えている。
また、本実施形態では、全断面掘削工法を採用する。トンネルの掘削工法は限定されるものではない。トンネル掘削工法には、例えば、ベンチカット工法や導坑先進工法等がある。
本実施形態のトンネル1の支保工2は、図2および図3に示すように、地山面に吹き付けられた吹付けコンクリート3、トンネル軸方向に対して所定のピッチで設けられた鋼製支保工4、鋼製支保工同士の間においてトンネル周方向に間隔をあけて打設された複数本のロックボルト5,5,…により構成されている。なお、支保工2の構成は限定されるものではなく、地山等級に応じて適宜設定すればよい。また、必要に応じて先受け工等の補助工法を併用してもよい。
一次吹付け作業S21では、露出した地山面に吹付けコンクリート3(一次吹付け31)を吹き付ける。
吹付けコンクリート3は、図4に示すように、圧送管7を介して坑外から切羽K近傍までポンプ圧送されたコンクリート(ベースコンクリート)Cに、急結剤Tを添加した上で吹き付ける。本実施形態では、地上部に配設されたポンプ8を利用して、地上部から切羽K近傍までコンクリートCを圧送する。コンクリートCには、現場内または現場外のコンクリートプラントPにおいて製造されたものを使用する。なお、コンクリートCの圧送に使用するポンプ8には、立坑Sの底部に設けられた吸引ポンプを使用することもできる。コンクリートポンプ8の設置個所および構成は限定されるものではない。
所定の厚さの吹付けコンクリート3(一次吹付け31)を地山面に吹付けたら、コンクリートCのポンプ圧送を停止して、鋼製支保工設置作業S22を開始する。
本実施形態では、混和剤(遅延剤)を使用して、コンクリートのフレッシュ性状保持性を高める。なお、コンクリートのフレッシュ性状保持性を高める方法は遅延剤の添加に限定されない。例えば、セメント量を減らしたり、高炉スラグ、石灰石微粉末、低熱ポルトランドセメント、フライアッシュ等の混和材を用いることでコンクリートのフレッシュ性状保持性を高めることができる。また、圧送管を冷やすことで、セメントの凝結の遅延化を図ることができる。
圧送管内7に残留させる遅延剤入りのコンクリートCは、鋼製支保工設置作業S22の作業時間(1〜2時間)以上、フレッシュ性状を保持できる配合とする。本実施形態では、コンクリートCに投入する遅延剤の添加量を、鋼製支保工設置作業S22の作業時間に応じて調整する。
本実施形態では、遅延剤として、いわゆる凝結遅延剤を採用するが、遅延剤として使用する混和剤はこれに限定されるものではない。例えば、AE減水剤、AE減水剤(遅延型)をがある。
本実施形態では、遅延剤を含まないコンクリートから遅延剤入りのコンクリートへの切り換えを、切羽Kからの指示により行う。切羽Kでは、吹付けに必要なコンクリート量と、圧送管7内のコンクリート量とを把握して、遅延剤入りのコンクリートへの切り換えのタイミングを指示する。切羽Kからの指示方法は限定されるものではなく、例えば、電話、無線、口頭等により連絡を行う。また、切羽Kに配合切り換え手段に接続されたスイッチを設けて置くことで、配合の変更を機械的に制御する手段がある。なお、遅延剤を含まないコンクリートから遅延剤入りのコンクリートへの切り換え方法は、これらの方法に限定するものではない。
また、切羽Kでは、圧送管7から排出されたコンクリートCを、目視により確認することで、圧送管7内が遅延剤入りのコンクリートCにより充填されたか否かを確認する。また、遅延剤入りコンクリートCによる圧送管7内の充填の確認方法は、例えば、圧送管7から排出されたコンクリートを確認、あるいは、圧送管7の内容積と投入量との比較により確認、ポンプストロークや圧送時間によって管理してもよい。
鋼製支保工4の建て込みは、圧送管7内に遅延剤入りのコンクリートCを残留させた状態で実施する。
二次吹付け32に使用するコンクリート(吹付けコンクリート3)は、一次吹付け作業S21で使用したものと同様に、圧送管7を介して坑外から切羽K近傍までポンプ圧送されたベースコンクリートCに、急結剤を添加した上で吹き付ける。このとき、コンクリートポンプ8から圧送管7に供給されるコンクリートCは、遅延剤を含まないコンクリートである。
二次吹付け作業S23では、まず、圧送管7内に残留している遅延剤を含むコンクリート(ベースコンクリート)Cで二次吹付け32の施工を行う。続いて、コンプリートポンプから圧送された遅延剤を含まないコンクリート(ベースコンクリート)Cで二次吹付けを行う。そして、二次吹付け32の吹付け終了前から、再び遅延剤が混合されたコンクリートCをポンプ圧送する。圧送する遅延剤入りのコンクリートの量は、圧送管7の容積と同等する。そのため、ロックボルト打設作業S24中および掘削工程S1中の圧送管7内は、遅延剤が混合されたコンクリートCのみが残留した状態となる。こうすることで、圧送管内に残留されたコンクリートが圧送管7内で硬化することを防止する。
なお、圧送管7内に残留させる遅延剤入りのコンクリートCは、ロックボルト打設作業S24の作業時間に掘削工程S1の作業時間を加えた時間(例えば、4〜9時間)以上の間、フレッシュ性状を保持できる配合とする。本実施形態では、コンクリートCに投入する遅延剤の添加量を、ロックボルト打設作業S24の作業時間に掘削工程S1の作業時間を加えた時間に応じて調整する。また、時間の設定には余裕時間を追加して、作業遅延等があった場合にコンクリートが硬化してしまわないように、リスク管理とすることなど、他の要因も含めることができる。
所定の厚さの吹付けコンクリート3を吹付けたら、ベースコンクリートCのポンプ圧送を停止して、ロックボルト打設作業S24を開始する。
ロックボルト5は、トンネル周方向に対して、所定の間隔をあけて複数本打設する。なお、ロックボルト5の長さ、ボルト径、打設ピッチ等は限定されるものではなく、地山等級に応じて適宜設定すればよい。
同様に、掘削工程S1および支保工程S2を繰り返すことにより所定延長のトンネル1を構築する。
また、圧送管7を介してコンクリートCを輸送するため、運搬車両により輸送が困難な小断面トンネルや、急勾配を有するトンネル等であっても、ミキサー車等のいわゆるコンクリート運搬機械を使用することなく、切羽KまでコンクリートCを輸送することができる。すなわち、トンネル1の断面形状、縦断勾配、平面線形等に限定されることなく、効率的にコンクリートを切羽Kまで輸送することができる。
また、コンクリートをポンプ圧送することで、ミキサー車等の運搬車両等を利用する場合に比べて、作業員の手間や人数を削減することができる。また、トンネル坑内で運搬車両や施工機械等が行き違うことによる事故の危険性がない。さらに、運搬車両の排気ガスによって坑内環境が悪化することもない。
また、ポンプ圧送するコンクリートは、配管距離や骨材等の材料に応じた適切な配合を選定することで、材料分離等が生じることがなく、所望の品質を保持したまま切羽に輸送できる。
コンクリートは、配合を変更することなく、遅延剤の有無および添加量のみで、圧送管内での滞留時間を調整しているため、コンクリート製造時の手間が増えることがない。なお、遅延剤の添加量等は、施工サイクルに応じて適宜設定すればよい。
遅延剤を使用することで、コンクリートの初期強度の低下が懸念される場合には、急結剤の添加量を増やすことによって対応すればよい。
また、掘削工程から支保工程への切り替えを早期に行うことができるため、連続的な施工が可能となり、工期短縮化が可能である。
また、段取り替え毎に圧送管内を清掃する必要がないため、清掃に要する手間や時間を省略することができる。また、段取り替え毎に圧送管内に残留するコンクリートを処分する必要がないため、経済的である。
前記実施形態では、吹付けコンクリートを一次吹付けと二次吹付けとの2回に分けて吹付けるものとしたが、吹付けコンクリートの施工回数は限定されるものではなく、例えば1回のみの場合もある。
また、前記実施形態では、鋼製支保工を設置する場合について説明したが、鋼製支保工は必要が無ければ設けない。
また、前記実施形態では、ロックボルトを施工する場合について説明したが、例えば、AGF工法等の補助工法を採用する場合には、ロックボルトを省略する場合があり、ロックボルトは必須ではない。
前記実施形態では、遅延剤が混合されていないコンクリートと、遅延剤が混合されたコンクリートとを交互に圧送する場合について説明したが、遅延剤が混合されたコンクリートのみを圧送する場合もある。
2 支保工
3 吹付けコンクリート(セメント系材料)
31 一次吹付け
32 二次吹付け
4 鋼製支保工
5 ロックボルト
6 支圧板
7 圧送管
8 コンクリートポンプ
S1 掘削工程
S2 支保工程
S21 一次吹付け作業
S22 鋼製支保工設置作業
S23 二次吹付け作業
Claims (4)
- 地山を掘削する掘削工程と、
地山の掘削により露出した地山面にセメント系材料を吹き付ける支保工程と、を繰り返すトンネル施工方法であって、
前記支保工程では、圧送管を介してポンプ圧送されたセメント系材料を吹き付け、
前記掘削工程では、前記圧送管内にセメント系材料を残留させておくことを特徴とする、トンネル施工方法。 - 前記圧送管内に残留させるセメント系材料が硬化することがないように、前記支保工程の終了前から、遅延剤が混合されたセメント系材料をポンプ圧送することを特徴とする、請求項1に記載のトンネル施工方法。
- 前記支保工程は、
地山面にセメント系材料を吹き付ける一次吹付け作業と、
前記セメント系材料の表面に沿って鋼製支保工を建て込む鋼製支保工設置作業と、
前記鋼製支保工同士の間にセメント系材料を吹き付ける二次吹付け作業と、を備えており、
前記鋼製支保工設置作業では、前記圧送管内にセメント系材料を残留させておくことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のトンネル施工方法。 - 前記圧送管内にセメント系材料を残留させる時間に応じて、前記遅延剤の添加量を調整することを特徴とする、請求項2に記載のトンネル施工方法。
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