以下、実施の形態について、説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る電池用活物質(以下「活物質」という場合もある)は、炭素質物、及び前記炭素質物中に分散される金属あるいは前記金属の酸化物からなる活物質であり、前記活物質の断面より観察される空孔の面積率が2%以上16%以下であり、かつ前記空孔の重心間距離の標準偏差を前記空孔の重心間距離の平均で割った値である分散度が0.7以下である。
以下、実施形態の説明として、非水電解質電池の負極の活物質合剤層に用いる活物質として説明するが、実施形態の活物質は正極の活物質合剤層に用いる活物質にも用いることができる。 実施形態で用いられる金属は、リチウムの挿入脱離を行うものであり、Si、Sn、Al、In、Ga、Pb、Ti、Ni、Mg、W、Mo、およびFeから選択される少なくとも1種の元素を用いることができる。これらは、1種類でもよく、また2種類以上の金属の合金であっても良い。さらには、この金属又は合金の酸化物であっても金属又は金属の合金と同様に用いることができる。これら金属、合金、金属酸化物、金属合金酸化物を選択する理由は、Liの吸蔵量が多く、高容量化が可能なためである。これら元素の中でも、特にSi(ケイ素)が好ましい。
以下、金属元素として、ケイ素を例に挙げ説明する。
ケイ素は、結晶性のケイ素を含む。具体的な電池用活物質の例としては、炭素質物中に、酸化ケイ素物相と、酸化ケイ素相中に結晶性ケイ素を有するケイ素相と、を有する複合体粒子が挙げられる。電池用活物質の酸化ケイ素相は、炭素質物中に分散して存在し、炭素質物と複合化されている。また、ケイ素相は、酸化ケイ素相中に分散し、酸化ケイ素相と複合化されている。
活物質の平均一次粒径は例えば0.5μm以上100μm以下で、BET比表面積は0.5m2/g以上40m2/g以下の粒子である。活物質の粒径および比表面積はリチウムの挿入脱離反応の速度に影響し、負極特性に大きな影響をもつが、この範囲の値であれば安定して特性を発揮することができるためである。活物質の平均一次粒径はさらに0.5μm以上50μm以下が好ましく、さらに好ましくは1μm以上30μm以下である。また、BET比表面積はさらに0.5m2/g以上30m2/g以下が好ましく、さらに好ましくは1m2/g以上15m2/g以下である。BET比表面積はBET(Brunauer−Emmett−Teller)法により測定される。
負極活物質のケイ素相はリチウムを吸蔵放出する際の膨張収縮が大きく、この応力を緩和するためにできるだけ微細化されて分散されていることが好ましい。具体的な一例としては、平均直径が数nmのクラスターから、大きくても200nm以下の粒子サイズにて分散されていることが好ましい。
炭素質物中に、酸化ケイ素物相と、酸化ケイ素相中に結晶性ケイ素を有するケイ素相と、を有する複合体粒子の場合、酸化ケイ素相は非晶質、結晶質などの構造とるが、ケイ素相に結合しこれを包含または保持する形で活物質粒子中に偏りなく分散されていることが好ましい。しかしながら、この酸化ケイ素に保持された微結晶ケイ素は、充放電時にリチウムを吸蔵放出して体積変化を繰り返すうちに互いに結合して結晶子サイズ成長が進み、容量低下および初回充放電効率の原因となる。そこで本発明では酸化ケイ素相のサイズを小さくかつ均一にすることで、微結晶ケイ素の結晶子サイズの成長を阻害できる為、充放電サイクルによる容量劣化を抑制し、寿命特性が向上されている。この酸化ケイ素相の好ましい平均直径サイズは、50nm以上1000nm以下の範囲である。この範囲より大きいと微結晶ケイ素のサイズ成長の抑制効果が得られない。また、この範囲より小さい場合には活物質作製の際に酸化ケイ素相 の分散が難しくなるとともに、活物質としての導電性の低下によるレート特性の低下や初回充放電容量効率の低下等の問題が生じる。さらに好ましくは、50nm以上500nm未満であり、さらに好ましくは50nm以上200nm以下である。この範囲であると特に良好な寿命特性を得ることが出来る。
また、活物質全体として良好な特性を得るためには、酸化ケイ素相のサイズは均一であることが好ましく、体積分での16%累積径をd16%、84%累積径をd84%としたときに(d84%−d16%)/2で表される標準偏差に対して、(標準偏差/平均サイズ)の値が1.0以下であることが好ましく、さらに0.5以下であると優れた寿命特性をえることができる。
ケイ素相、酸化ケイ素相、炭素質物相の比率は、ケイ素相と酸化ケイ素相の合計のケイ素と炭素のモル比が0.2≦Si原子数/炭素原子数≦2の範囲であることが好ましい。ケイ素相と酸化ケイ素相のケイ素原子数の量的関係はモル比が0.6≦ケイ素相のケイ素原子数/酸化ケイ素相のケイ素原子数≦1.5であることが、負極活物質として大きな容量と良好なサイクル特性を得ることができるため望ましい。
酸化ケイ素であることは、実施形態の活物質を具備する負極を製造し、作製した負極をイオンミリング法で薄片化した後、TEM−EDX法(TEM:Transmission Electron Microscope(透過型電子顕微鏡)、EDX:Energy Dispersive X−ray Spectrometry(エネルギー分散型X線分光法))を用いることにより確認できる。
具体的には、TEMによる活物質内部の観察で酸化ケイ素粒子と酸化ケイ素粒子以外の部分を把握し、EDXにより酸化ケイ素粒子の部分に対し点分析での元素組成分析を行う。このような方法により、前記酸化ケイ素が非晶質であっても確認が可能である。分析条件は、たとえば加速電圧が200kV、ビーム径は約1nmが適している。1つの珪素酸化物粒子に対する10か所以上の点分析において、SiとOが検出され、かつSiに対するOのモル比の平均が0より大きく2以下であれば、この粒子は組成式SiOx(0<x≦2)で表される酸化ケイ素粒子であると判定する。点分析を行う10か所は辺縁部を含めランダムに選ばれ、たとえばケイ素粒子の表面が酸化され酸化ケイ素の被覆層を形成している形態の場合にケイ素の部分のみを選ぶことがないようにする。このような酸化ケイ素粒子の粒径は、上記のようにTEMにより活物質を観察し、得られた画像で無作為に選んだ10以上の酸化ケイ素粒子のそれぞれに対し、無作為に選んだ10の方向のサイズの平均値を算出したものである。ただし、電池性能に影響を及ぼさない程度で、この粒径範囲から外れるケイ素含有粒子が含まれることは許容される。
酸化ケイ素粒子中に珪素が含まれる場合は結晶質であることが望ましく、ケイ素粒子の粒径は1nm以上80nm以下であることが望ましい。結晶質が望ましいのはリチウムの挿入脱離が進みやすいからである。1nmより小さければ、充放電サイクルで他の結晶ケイ素と結合し粒成長するためサイクル特性が下がりやすくなり、80nmより大きければ、リチウムの吸蔵放出が結晶ケイ素全体では起きにくくなる。このような結晶ケイ素の粒径は、上記のようにTEMにより活物質を観察し、ケイ素含有粒子の中で珪素の結晶格子が見られる部分を結晶珪素とし、得られた画像で無作為に選んだ10以上の結晶珪素のそれぞれに対し、無作為に選んだ10の方向のサイズの平均値を算出したものである。ただし、電池性能に影響を及ぼさない程度で、この粒径範囲から外れる結晶珪素が含まれることは許容される。
活物質の粉末X線回折測定におけるSi(220)面の回折ピークの半値幅は、1.5°以上8.0°以下であることが好ましい。Si(220)面の回折ピーク半値幅はケイ素相の結晶粒が成長するほど小さくなり、ケイ素相の結晶粒が大きく成長するとリチウムの挿入脱離に伴う膨張収縮に伴い活物質粒子に割れ等を生じやすくなるが、このため半値幅が1.5°以上8.0°以下の範囲内であればこの様な問題が表面化することを避けられる。
ケイ素相は、リチウムの挿入脱離に伴い、膨張と収縮を行う。この膨張収縮に伴い、相が結合し相の大きさが粗大となるとサイクル特性が低下しやすいという性質がある。サイクル特性の低下を防ぐために、上記以外に、立方晶ジルコニア添加などの手段を講じても良い。
本発明の第1実施形態の酸化ケイ素相は、ケイ素相の膨張収縮を緩和する。酸化ケイ素相としては、非晶質、低晶質、結晶質などの構造とるSiOx(1<x≦2)の化学式で表される化合物が挙げられる。
また、Li4SiO4などのリチウムシリケートが、酸化ケイ素相の表面または内部に分散されていてもよい。
ケイ素相および酸化ケイ素相を覆う構造炭素質物中にSiO2前駆体およびリチウム化合物が添加してもよい。これらの物質を炭素質物中に加えることで一酸化珪素から生成するSiO2と炭素質物の結合が強固になると共に、リチウムイオン導電性に優れるLi4SiO4が酸化ケイ素相中に生成する。SiO2前駆体としては、シリコンエトキシド等のアルコキシドが挙げられる。リチウム化合物としては、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、シュウ酸リチウム、塩化リチウムなどが挙げられる。例えば前記活物質とリチウム塩を混合して熱処理を行うことにより、酸化珪素とリチウム塩の反応を起こしリチウムシリケートを形成させることができる。リチウム塩としては、水酸化リチウム、酢酸リチウム、酸化リチウム、炭酸リチウムなどが融点の低さあるいは反応速度の速さによりリチウムシリケーと形成が均一になりやすい点から望ましい。被覆物中には、他の添加物例えば炭化珪素、リン原子、ホウ素原子が含まれていても構造維持の点から良い。
活物質における炭素質物相は、フラン樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などを形成する樹脂系有機材料を焼成することにより得られる。また、これら樹脂系有機材料にナフタレン系材料を加えても良い。ナフタレン系材料を加えることで、 炭素質物成分の容量並びに効率が向上する利点があるからである。具体的には、1-ナフトール、2-ナフトール、3-メチル-1-ナフトール、3-メチルナフタレン-2-オール、3-メトキシ-2-ナフトール、1-アミノ-4-ナフトール、2-アミノ-1-ナフトール、5-アミノ-1-ナフトール、6-アミノ-1-ナフトール、1-(ジメチルアミノメチル)-2-ナフトール、5-アミノ-2-ナフトール、7-アミノナフタレン-2-オール、8-メチルナフタレン-1-オール、4-ブロモ-1-ナフトール、3-ブロモ-2-ナフトール、2,4-ジブロモ-1-ナフトール、1,6-ジブロモ-2-ナフトール、4-クロロ-1-ナフトール、2,4-ジクロロ-1-ナフトール、1-クロロナフタレン-2-オール、6-アミノ-1-ナフトール、2-メチルナフタレン-1-オール、4-メチル-1-ナフトール、5,6,7,8-テトラヒドロ-1-ナフトール、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフトール、5,8-ジヒドロ-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、6-メトキシ-1-ナフトール、酢酸1-ナフチル、1'-ヒドロキシ-2'-アセトナフトン、1-ナフトアルデヒド、4-(ジメチルアミノ)-1-ナフトアルデヒド、2-ナフトアルデヒド、1-ナフタレンアセトニトリル、1,3-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、2,7-ナフタレンジオール、1,4-ナフタレンジメタノール、2,3-ナフタレンジメタノール、1-ナフタレンメタノール、2-ナフタレンメタノール、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、およびその誘導体や金属塩である。これらを樹脂系有機材料に混合するに際し、予めホルムアルデヒド、あるいはヘキサミンと反応させた化合物として混合する事も出来る。
前記炭素質物には、導電性を付与するため導電性炭素質物を混合する。導電性炭素質物としては、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、アモルファス炭素とアセチレンブラックからなる群から選ばれる1種類以上を用いることができる。導電性炭素質物は、1つ又は数種から構成することが出来る。導電性炭素質物の形状としては、粒状、鱗片状、繊維状など特に問わない。
前記活物質は多孔質構造を有しており、前記活物質断面より観察される空孔の面積率が2%以上16%以下であり、前記空孔の重心間距離の標準偏差を前記空孔の重心間距離の平均で割った値である分散度が0.7以下である。このような多孔質構造を有することにより、ケイ素相の充放電に伴う膨張収縮による応力を活物質粒子として緩和する。空孔の面積率が2%より低い場合は、応力緩和効果が望めず、逆に16%より高いと粒子の強度が小さくなり、充放電サイクル中に電極崩壊を引き起こす恐れが出てくる。また分散度が0.7を超えると粒子内に不均一な応力が発生しやすくなり、こちらも電極崩壊に繋がる恐れがあり好ましくない。空孔の面積率は、3%以上15%以下が好ましく、さらに好ましくは4%以上〜10%以下である。また、分散度は、0.6以下が好ましく、さらに好ましくは0.5以下である。
空孔の面積率や分散度は、例えば負極活物質断面の電子顕微鏡写真を撮影し、画像解析により求めることができる。具体的には、これらケイ素/炭素質物複合体粒子の空孔は、試験電極をイオンミリングによる断面出しを行い、その電子顕微鏡画像より画像解析ソフトを用いて評価できる。画像解析ソフトとしては、旭化成エンジニアリング株式会社製、「A像くん」(旭化成エンジニアリング株式会社登録商標)などがあげられる。本発明の範囲については、30000倍の顕微鏡画像をランダムに5点取得し、それぞれを画像解析ソフトを用いて、前記顕微鏡画像における任意の視野領域内の空孔の面積率、空孔の分散度(前記空孔の重心間距離の標準偏差を前記空孔の重心間距離の平均で割った値)を求め、得られた値の平均である。
なお、測定対象たる活物質が非水電解質電池の活物質として含まれている場合は、以下のように前処理を行う。
まず、非水電解質電池を放電して、正極活物質の結晶からリチウムイオンが完全に離脱した状態に近い状態にする。次に、アルゴンを充填したグローブボックス中で非水電解質電池を分解して電極を取り出す。取り出した電極を、適切な溶媒で洗浄して減圧乾燥する。溶媒としては、例えば、エチルメチルカーボネートなどを用いることができる。
前記空孔の平均空孔径は200nm以下であることが好ましい。平均空孔径が200nmを超えると粒子の強度が小さくなり、上記と同様の問題が発生する。平均空孔径は10nm以上100nm以下が好ましい。次に、第1実施形態に係る電池用活物質の製造方法について説明する。
電池用活物質は、原料であるケイ素、あるいはケイ素−酸化ケイ素原料と、黒鉛および炭素前駆体からなる有機材料を固相あるいは液相における力学的処理、攪拌処理等により混合、焼成処理を経て合成しし複合体を形成することができる。
ケイ素−酸化ケイ素原料を用いる場合はSiOX(0.8≦X≦1.5)を用いることが好ましい。特にSiO(X≒1)を用いることが、ケイ素相と酸化ケイ素相の量的関係を好ましい比率とする上で望ましい。また、SiOXは混合の際に粉砕してもよいが、処理時間短縮のため、及び均一なサイズの酸化ケイ素相を形成するために予め微粉末としてものを用いることが好ましく、連続式ボールミルや遊星ボールミル等を用いてこのような微粉末を得ることができる。この場合SiOXの一次粒径は平均して50nm以上1000nm以下であることが好ましい。さらに好ましくは平均一次粒径が100nm以上500nm未満であり、粒径のばらつきの少ないSiOXを用いるとよい。粒径が50nm未満であると凝集力が強すぎて、活物質内の分散性が劣化することによるサイクル性の低下を招く。一方、1000nmを超えると、充放電時の体積変化に伴う応力に耐え切れず、粒子が微粉化することで導電パスが切れ、こちらもサイクル性が悪化する。
なお、SiOXは不均化反応によりケイ素の結晶が生成することで、ケイ素相と酸化ケイ素相の2相に分離する。X=1のとき反応は下の式(1)で表される。
2SiO → Si + SiO2 ・・・(1)
この不均化反応は800℃より高温で進行し、微小なケイ素相と酸化ケイ素相に分離する。反応温度が上がるほどケイ素相の結晶は大きくなり、Si(220)のピークの半値幅は小さくなる。好ましい範囲の半値幅が得られる焼成温度は850℃以上1600℃以下の範囲である。焼成時間は、1時間から12時間程度の間であることが好ましい。
一方、ケイ素を用いる場合の一次粒径は平均して10nm以上1000nm以下であることが好ましい。さらに好ましくは平均一次粒径が20nm以上200nm未満であり、粒径のばらつきの少ないSiを用いるとよい。
導電性炭素質物としては、グラファイト、コークス、低温焼成炭、ピッチ、CNFなどの炭素材料および炭素材料前駆体のうち少なくとも一種を用いることが出来る。特に、ピッチなど加熱により溶融するものは力学的なミル処理中には溶融して複合化が良好に進まないため、コークス・グラファイトなど溶融しないものと混合して使用すると良い。
力学的な複合化処理としては、例えば、ターボミル、ボールミル、メカノフュージョンやディスクミルなどを挙げることが出来る。
力学的な複合化処理の運転条件は機器ごとにことなるが、十分に粉砕・複合化が進行するまで行なうことが好ましい。しかしながら、複合化の際に出力を上げすぎる、あるいは時間を掛けすぎるとケイ素と炭素が反応してリチウムの挿入反応に対し不活性な炭化珪素が生成する。そのため、処理の条件は、粉砕・複合化が十分進行し、かつ炭化珪素の生成が起こらない適度な条件を定める必要がある。
混合攪拌処理は例えば各種攪拌装置、ボールミル、ビーズミル装置およびこれらの組み合わせにより行うことができる。微粒子のケイ素系粒子と炭素質物の前駆体である有機樹脂および炭素材との複合化は分散媒を用いた液中で液相混合を行う。分散媒としては有機溶媒、水等を用いることができるが、ケイ素系粒子と炭素材および前記有機樹脂の双方と良好な親和性をもつ液体を用いることが好ましい。具体例として、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコール、ブタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエンなどを挙げることができる。また、有機樹脂は微粒子のケイ素系粒子と均一に混合するために混合段階で液体あるいは分散媒に可溶であるものが好ましく、液体であり容易に重合可能なモノマーあるいはオリゴマーであると特に好ましい。例えば、前記に挙げたフラン樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などを形成する樹脂系有機材料が挙げられる。また、これら樹脂系有機材料にナフタレン系材料を加えても良い。これらを樹脂系有機材料に混合するに際し、予めホルムアルデヒド、あるいはヘキサミンと反応させた化合物として混合する事も出来る。
これら混合を行った材料を、固化あるいは硬化工程を経て所望の温度で焼成処理を施すことにより、負極活物質であるSiOX−炭素質物複合化物、あるいはSi−炭素質物複合化物を形成する。
本実施形態の活物質中に所望の空孔を形成する手法として、焼成時に分解・蒸発する低分子化合物を加えておく方法や最終的に除去可能なナノ粒子を分散混合するようなテンプレート的な方法など様々なプロセスで行うことが可能であり特に問わないが、最も簡単な方法としては、負極活物質前駆体組成物を均一混合する分散溶媒を系内に残存した状態で焼成工程を行うことでも形成可能である。溶媒の残存量としては、前駆体中の0.1%以上5%以下の範囲で所望の多孔質構造が得られる。
以上のような製造方法により本実施形態に係る活物質が得られる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る電池用電極は、第1実施形態に係る電池用活物質を含むものである。以下、実施形態の説明として、電池用電極は、負極として説明するが、実施形態の電池用電極は正極にも用いることができる。また、電極は、非水電解質二次電池に用いるものとして説明するが、実施形態の電極は、様々な電池に用いることができる。
図1は、第1実施形態に係る電池用電極を負極として用いた概念図である。図1に示すように、第1実施形態の負極100は、集電体101と負極合剤層102とを含む。負極合剤層102は集電体101上の表面に配置形成された活物質粒子を含む合剤の層である。負極合剤層102は、負極活物質と、導電材と結着剤とを含む。結着剤は、負極合剤層102と集電体を接合する。
導電剤は、負極100の導電性を高める効果があり、負極合剤層102中に分散して存在することが好ましい。導電剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。導電剤は、鱗片状、破砕状、繊維状等の形状のものが用いられる。これらの導電剤は、1種を単独で用いられるか、または、2種以上を組み合わせて用いられる。導電剤もLiの挿入脱離を行うことができる場合が多いが、その充放電容量は本発明の活物質と比較して小さい。本発明ではLiの挿入脱離を主として担い、チタン酸化物あるいはチタン複合酸化物と前記酸化物中に分散された珪素酸化物粒子を含む活物質とし、上記物質を導電剤とする。
結着剤は、分散された負極活物質の間隙を埋めて、負極活物質と導電剤を結着させ、また、負極活物質と負極集電体101とを結着させる。結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリル酸、アルギン酸やセルロースなどの多糖類およびその誘導体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。これらの中でも、負極集電体101との結着力が高く、負極活物質同士の結着力を高められる点から、イミド骨格を有するポリイミド等のポリマーがより好ましい。結着剤は、1種を単独で用いられるか、または、2種以上を組み合わせて用いられる。2種以上を組み合わせて用いる場合、負極活物質同士の結着に優れた結着剤と、負極活物質と負極集電体101との結着に優れた結着剤との組み合わせや、硬度の高い結着剤と柔軟性に優れる結着剤との組み合わせを採用することにより、負極100の寿命特性を向上することができる。
負極合剤層102の厚さは1.0μm以上150μm以下の範囲であることが望ましい。従って負極集電体101の両面に担持されている場合は負極合剤層102の合計の厚さは2.0μm以上300μm以下の範囲となる。片面の厚さのより好ましい範囲は30μm以上100μm以下である。この範囲であると大電流放電特性とサイクル寿命は大幅に向上する。
負極合剤102の負極活物質、導電剤および結着剤の配合割合は、負極活物質粒子が57質量%以上95質量%以下、導電剤が3質量%以上20質量%以下、結着剤が2質量%以上40質量%以下の範囲にすることが、良好な大電流放電特性とサイクル寿命を得られるために好ましい。
実施形態の集電体101は、負極合剤層102と結着する導電性の部材である。集電体101としては、多孔質構造の導電性基板か、あるいは無孔の導電性基板を用いることができる。これら導電性基板は、例えば、銅、ステンレスまたはニッケルから形成することができる。集電体の厚さは5μm以上20μm以下であることが望ましい。この範囲内であると電極強度と軽量化のバランスがとれるからである。
実施形態の結着剤は、負極合剤層102と集電体101を接合しているが、アミノ基を置換基として有するアゾール化合物等によって負極合剤層102と集電体101を接合する形態でもよい。
次に、実施形態の負極100の製造方法について説明する。
先ず、負極活物質、導電剤及び結着剤を汎用されている溶媒に懸濁してスラリーを調製する。スラリーを集電体101に塗布し、乾燥し、その後、プレスを施すことにより負極100が作製される。なお、プレスの圧力によって、集電体101への負極活物質の埋め込み度合いを調節することができる。プレスの圧力は、0.2kN/cmより低いと負極集電体101に対する負極活物質の埋め込みがあまり生じないため好ましくない。また、プレス圧力が10kN/cmより高いと、負極活物質や集電体101が割れる等の破損が生じるため好ましくない。従って、スラリーを乾燥させた負極活物質層102のプレス圧力は、0.5kN/cm以上5kN/cm以下が好ましい。なお、ここで言うプレス圧力はローラープレス機を用いた場合の数値であり、プレス時に測定される圧力[kN]を、負極合剤層の幅[cm]で除した値である。負極合剤層の幅とは、ローラープレス機のロール軸に対し平行な方向の長さであり、たとえば上から見て長方形をした負極合剤層が斜めにローラープレス機に通された場合は、代表的な長さを採用するものとする。
本実施形態に係る非水電解質電池用負極によれば、上述の第1の実施形態に係る非水電解質電池用活物質を用いて形成されているので、この負極を適用した非水電解質電池の高容量およびでありつつサイクル特性が向上する。
(第3実施形態)
第3実施形態に係る非水電解質電池を説明する。
第3実施形態に係る非水電解質電池は、正極と、第2実施形態の非水電解質電池用電極よりなる負極と、非水電解質とを具備する。
以下に、図2および図3に示す非水電解質二次電池(非水電解質二次電池)200について説明する。図2は第3実施形態の非水電解質電池の断面概念図、図3は図2中に示すA部の拡大断面概念図である。
図2に示す非水電解質電池200は、扁平状の捲回電極群201が、外装材202内に収納されて構成されている。外装材202は、ラミネートフィルムを袋状に形成したものでもよく、金属製の容器であってもよい。また、扁平状の捲回電極群201は、外側、すなわち外装材202側から、負極203、セパレータ204、正極205、セパレータ204の順で積層された積層物を渦巻状に捲回し、プレス成型することにより形成される。最外層に位置する電極は負極203であり、この負極203は、負極集電体203aの電池内面側の片面のみに負極合剤層203bが形成された構成を有する。最外層以外の負極203は、負極集電体203aの両面に負極合剤層203bが形成された構成を有する。また、正極205は、正極集電体205aの両面に正極合剤層205bが形成された構成を有する。なお、セパレータ204に代えて、上述したゲル状の非水電解質を用いてもよい。
図4に示す捲回電極群201は、その外周端近傍において、負極端子206が最外周の負極203の負極集電体203aに電気的に接続されている。正極端子207は内側の正極205の正極集電体205aに電気的に接続されている。これらの負極端子206及び正極端子207は、外装材202の外部に延出されるか、外装材202に備えられた取り出し電極に接続される。
以下、非水電解質電池200の構成部材である負極、正極、非水電解質、セパレータ、外装材、負極端子および正極端子について詳細に説明する。
(1)負極
負極としては、上述の第2の実施形態に係る電池用電極よりなる負極が用いられる。
(2)正極
正極は、正極集電体と、この正極集電体の片面もしくは両面に形成され、正極活物質、導電剤および結着剤を含む正極合剤層とを備える。導電剤および結着剤は、任意成分である。
前記正極合剤層の片面の厚さは1μm〜150μmの範囲であることが電池の大電流放電特性とサイクル寿命の保持の点から望ましい。好ましくは、30μm以上120μm以下である。従って正極集電体の両面に担持されている場合は正極合剤の合計の厚さは2μm〜300μmの範囲となることが望ましい。片面のより好ましい範囲は30μm〜120μmである。この範囲であると大電流放電特性とサイクル寿命は向上する。
正極合剤は、正極活物質と正極活物質同士を結着する結着剤の他に導電剤を含んでいてもよい。
正極活物質としては、種々の酸化物、例えば二酸化マンガン、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム含有コバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物(例えばLiNi0.8Co0.2O2)、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMn2O4、LiMnO2)を用いると非水電解質二次電池は高電圧が得られるために好ましい。
導電剤は、正極活物質の集電性能を高めて、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑える。導電剤としてはアセチレンブラック、カーボンブラック、人工黒鉛、天然黒鉛、炭素繊維、導電性ポリマーなどを挙げることができる。導電剤の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。
結着材の具体例としては例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ弗化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を用いることができる。
正極活物質、導電剤および結着剤の配合割合は、正極活物質80質量%以上95質量%以下、導電剤3質量%以上20質量%以下、結着剤2質量%以上7質量%以下の範囲にすることが、良好な大電流放電特性とサイクル寿命を得られるために好ましい。
正極集電体は、正極合剤層と結着する導電性の部材である。正極集電体としては、多孔質構造の導電性基板かあるいは無孔の導電性基板を用いることができる。集電体の厚さは5μm以上20μm以下であることが望ましい。この範囲であると電極強度と軽量化のバランスがとれるからである。
次に、正極の製造方法について説明する。
まず正極は、例えば活物質、導電剤及び結着剤を汎用されている溶媒に懸濁してスラリーを調製し、このスラリーを集電体に塗布し、乾燥し、その後、プレスを施すことにより作製される。正極205はまた活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成して正極層とし、これを集電体上に形成することにより作製されてもよい。
(3)非水電解質
非水電解質としては非水電解液、電解質含浸型ポリマー電解質、高分子電解質、あるいは無機固体電解質を用いることができる。
非水電解液は、非水溶媒(有機溶媒)に電解質を溶解することにより調製される液体状電解液で、電極群中の空隙に保持される。
非水溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC)とPCやECより低粘度である非水溶媒(以下第2溶媒と称す)との混合溶媒を主体とする非水溶媒を用いることが好ましい。
第2溶媒としては、例えば鎖状カーボンが好ましく、中でもジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン(BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、トルエン、キシレンまたは、酢酸メチル(MA)等が挙げられる。これらの第2溶媒は、単独または2種以上の混合物の形態で用いることができる。特に、第2溶媒は、このドナー数があまり大きいと、Liイオンとの結合が強くなりすぎ、Liイオン伝導度を下がるため、ドナー数が16.5以下であることがより好ましい。
第2溶媒の粘度は、25℃において2.8cp以下であることが好ましい。第1溶媒と第2溶媒の混合溶媒中のエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートの配合量は、体積比率で1.0%以上80%以下であることが好ましい。より好ましいエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートの配合量は体積比率で20%以上75%以下である。この第2溶媒の体積比があまり小さいと非水電解液の粘度が高くなるためにLiイオン伝導度が下がり、一方、第2溶媒の体積比があまり大きいとPCやECの働きが阻害されLiイオン伝導度が下がるため、前記範囲が好ましい。
非水電解液に含まれる電解質としては、例えば過塩素酸リチウム(LiClO4)、六弗化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウ弗化リチウム(LiBF4)、六弗化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO2)2]等のリチウム塩(電解質)が挙げられる。これらの中でもLiPF6、LiBF4を用いるのが好ましい。
電解質の非水溶媒に対する溶解量は、0.5mol/L以上2.0mol/L以下とすることが望ましい。電解質の溶解量があまり小さいとイオンの移動が起きにくくなるためLiイオン伝導度が下がり、一方電解質の溶解量があまり2.0mol/Lを超えると非水電解液の粘度が高くなるためにLiイオン伝導度が下がるからである。
(4)セパレータ
セパレータは、正極と負極の間に配置される。
非水電解液を用いる場合、および電解質含浸型ポリマー電解質を用いる場合においてはセパレータを用いることができる。セパレータは多孔質セパレータを用いる。セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、、セルロース、またはポリ弗化ピニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を用いることができる。中でも、ポリエチレンか、あるいはポリプロピレン、または両者からなる多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であるため、二次電池の安全性を向上できるため好ましい。
セパレータの厚さは、30μm以下にすることが好ましい。厚さが30μmを越えると、正負極間の距離が大きくなって内部抵抗が大きくなる恐れがある。また、厚さの下限値は、5μmにすることが好ましい。厚さを5μm未満にすると、セパレータの強度が著しく低下して内部ショートが生じやすくなる恐れがある。厚さの上限値は、25μmにすることがより好ましく、また、下限値は1.0μmにすることがより好ましい。
セパレータは、120℃の条件で1時間おいたときの熱収縮率が20%以下であることが好ましい。熱収縮率が20%を超えると、加熱により短絡が起こる可能性が大きくなる。熱収縮率は、15%以下にすることがより好ましい。
セパレータは、多孔度が30%以上70%以下の範囲であることが好ましい。これは次のような理由によるものである。多孔度を30%未満にすると、セパレータ204において高い電解質保持性を得ることが困難になる恐れがある。一方、多孔度が60%を超えると十分なセパレータ204強度を得られなくなる恐れがある。多孔度のより好ましい範囲は、35%以上70%以下である。
セパレータは、空気透過率が500秒/100cm3以下であると好ましい。空気透過率が500秒/100cm3を超えると、セパレータにおいて高いリチウムイオン移動度を得ることが困難になる恐れがある。また、空気透過率の下限値は、30秒/100cm3である。空気透過率を30秒/100cm3未満にすると、十分なセパレータ強度を得られなくなる恐れがあるからである。
空気透過率の上限値は300秒/100cm3にすることがより好ましく、また、下限値は50秒/100cm3にするとより好ましい。(
(5)外装材
正極、負極および非水電解質が収容される外装材としては、金属製容器や、ラミネートフィルム製外装容器が用いられる。
金属製容器は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金等、鉄、ステンレス等からなる金属缶で角形、円筒形の形状のものが用いられる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。合金中に鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属が含まれる場合、その量は100質量ppm以下にすることが好ましい。アルミニウム合金からなる金属製容器は、アルミニウムからなる金属製容器よりも強度が飛躍的に増大するため、金属製容器の厚さを薄くすることができる。その結果、薄型で軽量かつ高出力で放熱性に優れた非水電解質二次電池を実現することができる。
ラミネートフィルムは、例えば、アルミニウム箔を樹脂フィルムで被覆した多層フィルム等が挙げられる。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子化合物が用いられる。また、ラミネートフィルムの厚さは、0.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は、99.5%以上であることが好ましい。
外装材の形状は、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、及びボタン型から選択できる。外装材の例には、電池寸法に応じて、例えば携帯用電子機器等に積載される小型電池用外装材、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池用外装材などが含まれる。
ラミネートフィルムは、樹脂層間に金属層を介在した多層フィルムが用いられる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を用いることができる。
ラミネートフィルムからなる外装材を備えた非水電解質二次電池を製造する際は、負極端子および正極端子が接続された捲回電極群を、開口部を有する袋状の外装材に装入し、液状非水電解質を外装材の開口部から注入し、外装材の開口部を負極端子及び正極端子を挟んだ状態でヒートシールすることにより捲回電極群及び液状非水電解質を完全密封させる。
また、金属容器からなる外装材を備えた非水電解質二次電池を製造する際は、負極端子および正極端子が接続された捲回電極群を、開口部を有する金属容器に装入し、液状非水電解質を外装材の開口部から注入し、さらに、金属容器に蓋体を装着して開口部を封口させる。
(6)負極端子
負極端子としては、例えば、リチウムに対する電位が1V以上3V以下の範囲において電気的安定性と導電性とを備える材料を用いることができる。具体的には、アルミニウムまたはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子206は、負極集電体203aとの接触抵抗を低減するために、負極集電体203aと同様の材料であることが好ましい。
(7)正極端子
正極端子としては、リチウムに対する電位が3V以上4.25Vの範囲において電気的安定性と導電性とを備える材料を用いることができる。具体的には、アルミニウムまたはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料であることが好ましい。 また、本実施形態に係る非水電解質二次電池は、上記の正極および負極からなる電極群に電気的に接続されるリードをさらに具備することができる。本実施形態に係る非水電解質二次電池は、例えば、2つのリードを具備することもできる。その場合、一方のリードは、正極集電タブに電気的に接続され、他方のリードは、負極集電タブに電気的に接続される。
リードの材料としては、特に限定されないが、例えば、正極集電体および負極集電体と同じ材料が用いられる。
本実施形態に係る非水電解質二次電池は、上記のリードに電気的に接続され、上記の外装材から引き出された端子をさらに具備することもできる。本実施形態に係る非水電解質二次電池は、例えば、2つの端子を具備することもできる。その場合、一方の端子は、正極集電タブに電気的に接続されたリードに接続され、他方の端子は、負極集電タブに電気的に接続されたリードに接続される。
第3の実施形態に係る非水電解質電池は、前述した図2および図3に示す構成のものに限らず、例えば、積層型電極群が外装材内に収納されて構成を用いることもできる。積層型電極群は、正極と負極とを、その間にセパレータを介在させながら交互に積層した構造を有する。
正極は複数枚存在し、それぞれが正極集電体と、正極集電体の両面に担持された正極活物質含有層とを備える。
負極は複数枚存在し、それぞれが負極集電体と、負極集電体の両面に担持された負極活物質含有層とを備える。
各負極の負極集電体は、一辺が負極から突出している。突出した負極集電体は、帯状の負極端子に電気的に接続されている。帯状の負極端子の先端は、外装材から外部に引き出されている。また、正極の正極集電体は、負極集電体の突出辺と反対側に位置する辺が正極から突出している。正極から突出した正極集電体は、帯状の正極端子に電気的に接続されている。帯状の正極端子の先端は、負極端子とは反対側に位置し、外装材の辺から外部に引き出されている。
これらの積層型電極群を用いた非水電解質二次電池を構成する各部材の材質、配合比、寸法等は、図2および図3において説明した非水電解質二次電池200の各構成部材と同様の構成である。
以上説明した本実施形態によれば、非水電解質電池を提供することができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る電池パックを説明する。
第4実施形態に係る電池パックは、上記第3実施形態に係る非水電解質二次電池(即ち、単電池)を一以上有する。電池パックに複数の単電池が含まれる場合、各単電池は、電気的に直列、並列、或いは、直列と並列に接続して配置される。
図4の概念図及び図5のブロック図を参照して電池パック300を具体的に説明する。図4に示す電池パック300では、単電池301として図4に示す扁平型非水電解液電池200を使用している。
複数の単電池301は、外部に延出した負極端子302及び正極端子303が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ304で締結することにより組電池305を構成している。これらの単電池301は、互いに電気的に直列に接続されている。
プリント配線基板306は、負極端子302及び正極端子303が延出する単電池301側面と対向して配置されている。プリント配線基板306には、図5に示すようにサーミスタ307、保護回路308及び外部機器への通電用端子309が搭載されている。なお、組電池305と対向する保護回路基板306の面には組電池305の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
正極側リード310は、組電池305の最下層に位置する正極端子303に接続され、その先端はプリント配線基板306の正極側コネクタ311に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード312は、組電池305の最上層に位置する負極端子302に接続され、その先端はプリント配線基板306の負極側コネクタ313に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ311、313は、プリント配線基板306に形成された配線314、315を通して保護回路308に接続されている。
サーミスタ307は、単電池305の温度を検出するために用いられ、その検出信号は保護回路308に送信される。保護回路308は、所定の条件で保護回路308と外部機器への通電用端子309との間のプラス側配線316a及びマイナス側配線316bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ307の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単電池301の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池301もしくは単電池301全体について行われる。個々の単電池301を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池301中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図4及び図5の場合、単電池301それぞれに電圧検出のための配線317を接続し、これら配線317を通して検出信号が保護回路308に送信される。
正極端子303及び負極端子302が突出する側面を除く組電池305の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート318がそれぞれ配置されている。
組電池305は、各保護シート318及びプリント配線基板306と共に収納容器319内に収納される。すなわち、収納容器319の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート318が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板306が配置される。組電池305は、保護シート318及びプリント配線基板306で囲まれた空間内に位置する。蓋320は、収納容器319の上面に取り付けられている。
なお、組電池305の固定には粘着テープ304に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
図4、図5では単電池301を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続しても、または直列接続と並列接続を組み合わせてもよい。組み上がった電池パックをさらに直列、並列に接続することもできる。
以上記載した本実施形態によれば、上記第3実施形態における優れた充放電サイクル性能を有する非水電解質二次電池を備えることにより、優れた充放電サイクル性能を有する電池パックを提供することができる。
なお、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途は、大電流を取り出したときに優れたサイクル特性を示すものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用が挙げられる。特に、高温特性の優れた非水電解質二次電池を用いた電池パックは車載用に好適に用いられる。
以下に具体的な実施例を挙げ、その効果について述べる。
(実施例1)
次のような条件でSiOの粉砕、混練および複合体の形成、Arガス中での焼成を行い、負極活物質を得た。
SiOの粉砕は次のように行った。原料SiO粉を連続式ビーズミル装置にてビーズ径0.5μmのビーズを用いエタノールを分散媒として所定の時間、粉砕処理を行った。さらにこのSiO粉末を遊星ボールミルで0.1μmボールを用いてエタノールを分散媒として粉砕を行い粉砕しSiO微粉末を作製した。
引き続き、微粉砕処理により得られた一酸化ケイ素粉末、3μmの黒鉛粉末を、次のような方法で炭素質物と複合化した。レゾール樹脂3.0gとエタノール5gの混合液にSiO粉末を2.8g、黒鉛粉末を0.1g、平均直径180nmの炭素繊維0.01gを加え混練機にて混練処理しスラリー状とした。混錬後80℃/1hでエタノールを蒸散後、150℃のオーブンに投入し2時間硬化反応させて炭素複合体を得た。なお、エタノール蒸散後の段階で重量減少を熱重量測定装置により計測したところ、80℃で0.9%であった。
引き続いて上記ケイ素/炭素複合体を1100℃で3h、Arガス中にて焼成し、室温まで冷却後、粉砕し20μm径の篩をかけて篩下に負極活物質を得た。
得られた負極活物質に平均径3μmのグラファイト15質量%、SBR樹脂3.5質量%、カルボキシメチルセルロース5質量%を分散媒として水を用いて混練し厚さ12μmの銅箔上にギャップ80μmで塗布して100℃で2時間乾燥し、2.0kNにて圧延した後、所定のサイズに裁断した試料を、100℃で12時間、真空乾燥し、試験電極とし、以下に説明する充放電試験、測定を行い、充放電特性および物性を評価した。また、これらケイ素/炭素質物複合体粒子の空孔は、上述した通り、試験電極をイオンミリングによる断面出しを行い、その電子顕微鏡画像より画像解析ソフトを用いて評価した。
(充放電試験)
対極および参照極を金属Li、電解液をLiPF6(1M)のEC・DEC(体積比EC:DEC=1:2)溶液とした電池をアルゴン雰囲気中で作製し充放電試験を行った。充放電試験の条件は、参照極と試験電極間の電位差0.01Vまで1mA/cm2の電流密度で充電、さらに0.01Vで16時間の定電圧充電を行い、放電は1mA/cm2の電流密度で1.5Vまで行った。さらに、参照極と試験電極間の電位差0.01Vまで1mA/cm2の電流密度で充電、1mA/cm2の電流密度で1.5Vまで放電するサイクルを50回行い、1サイクル目に対する100サイクル目の放電容量の維持率を測定した。
(実施例2)
平均粒径約40nmのケイ素微粒子3.3g、導電性炭素質物として3μmの黒鉛粉末0.1g、および有機樹脂成分レゾール樹脂3.0gをエタノール5g中に加え、混練機にて混練処理し、得られた混合スラリーを80℃/1hでエタノールを蒸散後、150℃のオーブンに投入し2時間硬化反応させて炭素複合体を得た。なお、エタノール蒸散後の段階で重量減少を熱重量測定装置により計測したところ、80℃で1.0%であった。
引き続いて上記ケイ素/炭素複合体を1100℃で3h、Arガス中にて焼成し、室温まで冷却後、粉砕し20μm径の篩をかけて篩下に負極活物質を得た。
得られた負極活物質試料に平均径3μmのグラファイト15質量%、ポリイミド8質量%を分散媒としてN−メチルピロリドンを用いて混練し、厚さ12μmの銅箔上にギャップ80μmで塗布して2.0kNにて圧延した後、250℃で2時間、Arガス中にて熱処理し、所定のサイズに裁断した後、100℃で12時間、真空乾燥し、試験電極とした以外は実施例1と同様の評価を行った。
(実施例3)
本実施例は、実施例1と同様の材料、製造方法で作成した電池であるが、製造過程で、溶媒をアセトンに変えることにより、空孔面積が3%、分散度が0.44、となった以外は実施例1と同様の電池を製造した。
(実施例4)
本実施例は、実施例1と同様の材料、製造方法で作成した電池であるが、製造過程で、溶媒をブタノールに変えることにより、空孔面積が15%、分散度が0.57、となった以外は実施例1と同様の電池を製造した。
(比較例1)
実施例1と同様の組成で混合スラリーを作製し、80℃/3hでエタノールを蒸散後、150℃のオーブンに投入し2時間硬化反応させて炭素複合体を得た。なお、エタノール蒸散後の段階で重量減少を熱重量測定装置により計測したところ、80℃で0.1%以下であった。
得られたケイ素/炭素複合体を負極活物質前駆体として、実施例1と同様に電極の作製、並びに充放電試験を行った。
(比較例2)
実施例2と同様の組成で混合スラリーを作製し、80℃/3hでエタノールを蒸散後、150℃のオーブンに投入し2時間硬化反応させて炭素複合体を得た。なお、エタノール蒸散後の段階で重量減少を熱重量測定装置により計測したところ、80℃で0.1%以下であった。
得られたケイ素/炭素複合体を負極活物質前駆体として、実施例1と同様に電極の作製、並びに充放電試験を行った。
以下の実施例と比較例に関して、表1にまとめた。また実施例2のSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)の観察よる活物質断面画像を図6に、比較例2の活物質断面画像を図7に掲載する。
(比較例3)
本比較例は、比較例1と同様の材料、製造方法で作成した電池であるが、製造過程で、150℃のオーブン投入時間を1時間に短縮することにより、空孔面積が19%、分散度が0.85、となった以外は比較例1と同様の電池である。
表1に挙げた結果から本発明の負極は良好なサイクル特性を有することが理解される。すなわち、図6,7の比較として、活物質が緻密な比較例は、実施例に比べて、充放電が進むに従い負極活物質の破壊などの不具合で導電パスが遮断され、そのためサイクル特性が低下した。
以上、実施形態について説明したが、実施形態はこれらに限られず、特許請求の範囲に記載の発明の要旨の範疇において様々に変更可能である。また、実施する形態は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。