JP2017116037A - 一方向クラッチ - Google Patents

Abstract

【課題】引きずりトルクを低減しながら、ブロックベアリングの焼き付きを抑え、耐久性を向上した一方向クラッチを提供する。【解決手段】外輪２と外輪２に対して径方向内側に離隔して配置された内輪３との間に配置され、外輪２と内輪３の所定方向の相対回転を妨げるトルク伝達機構と、トルク伝達機構と共に外輪２と内輪３との間に配置され、外輪２と内輪３とを同心に保つブロックベアリング６と、を有し、ブロックベアリング６は外輪２又は内輪３に摺接する摺動面６ｆを備え、摺動面６ｆの少なくとも一部が粗面であるものとする。【選択図】 図１

Description

本発明は、自動車や産業機械など駆動装置内でトルク伝達やバックストップ等のための部品として使用される一方向クラッチに関するものである。

一方向クラッチは、例えば、環状の外輪と外輪の内側に離隔して外輪と同心に配置された環状の内輪との間に配置され、外輪の内周面と外輪の外周面に噛み合うことで内輪と外輪の所定方向の相対回転を防ぐ複数のスプラグと、スプラグを保持する保持器と、スプラグを外輪と内輪との間で噛み合う方向に付勢するスプリングと、からなる。一方向クラッチは、このような構成により、内輪と外輪が中心軸線を中心として相対的に一方向で空転し、その逆方向では回転トルクを伝達するトルク伝達機構である。

自動車の自動変速機における変速機構として用いられる一方向クラッチとしては、外内輪の同心性を保つために外内輪間に軸受機能を有する環状のエンドベアリングを備えた一方向クラッチがある（例えば特許文献１）。

エンドベアリングを用いた一方向クラッチは、潤滑油を確保するため潤滑性低下には効果はあるが、外内輪とエンドベアリングとの間で軸受面の周方向に潤滑油膜が発生する。この潤滑油膜の発生は油の粘性抵抗として空転時の引きずりトルクをもたらす問題がある。この空転時の引きずりトルクは、自動車における駆動抵抗の一部であり、自動車の燃費向上やＣＯ２排出規制に関する環境貢献への観点から、クラッチ機構としての低減すべき課題である。

そこで、軸受機能を発揮する部材をエンドベアリングからブロックベアリングに変更することで、潤滑油膜の発生が周方向で断続的となり潤滑油膜のせん断性を向上させ、粘性抵抗を低下させることで空転時の引きずりトルクを低減する提案がなされている（例えば、特許文献２）。

実開昭５９−１０１０２１号公報 特許第５４０５３８７号公報

しかしながら、所定の回転数を超える高速回転環境下においては、潤滑油膜のせん断性が向上することで油膜切れが生じ、ブロックベアリングと内外輪のそれぞれ軸方向に接する摺動面との間で焼き付きが発生し、一方向クラッチとして耐久性が低下する問題がある。

油膜切れを抑制するために油膜を確保する形状、例えば溝やディンプル（孔）をブロックベアリングの摺動面へ設けることは、油の粘性抵抗が増え引きずりトルクが高くなる問題がある。

また、前記形状をブロックベアリングの摺動面に設けることは、軸受面として面圧が上昇して焼き付き発生により軸受性能を確保できない懸念がある。

本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、引きずりトルクを低減しながら、ブロックベアリングの焼き付きを抑え、耐久性を向上した一方向クラッチを提供することを目的とする。

上記課題を解決するため、本発明は、
外輪と前記外輪に対して径方向内側に離隔して配置された内輪との間に配置され、前記外輪と前記内輪の所定方向の相対回転を妨げるトルク伝達機構と、
前記トルク伝達機構と共に前記外輪と前記内輪との間に配置され、前記外輪と前記内輪とを同心に保つブロックベアリングと、を有し、
前記ブロックベアリングは前記外輪又は前記内輪の軸方向面に接する摺動面を備え、
前記摺動面の少なくとも一部が粗面であることを特徴とする一方向クラッチを提供する。

好ましくは、前記摺動面の粗さをＲａとしたとき、以下の条件を満足する。
０．２０≦Ｒａ≦１．７５

本発明によれば、引きずりトルク低減に影響しないレベルでブロックベアリングの摺動面に焼き付きを抑える油膜を確保することが可能となり、高速回転環境下におけるブロックベアリングの焼き付きを抑制し、一方向クラッチとして耐久性を向上することができる。

本願の実施形態に係る一方向クラッチと内外輪との組合せによる正面図である。 本願の実施形態に係る一方向クラッチの図１に示すＡ部を拡大した部分拡大図である。 本願の実施形態に係るブロックベアリングを示す斜視図である。

以下、本願の実施形態に係る一方向クラッチを、図面を参照しながら詳細に説明する。図１は本願の実施形態に係る一方向クラッチと内外輪との組合せ１００の正面図である。図１において、外輪２と内輪３の間の図示は上側の一部のみ行い、その他の部分の図示を省略している。図２は一方向クラッチの図１に示すＡ部を拡大した部分拡大図である。なお、本願においては、特に記載がない限り、「径方向」、「周方向」、「軸方向」は、それぞれ一方向クラッチと内外輪との組合せ１００の径方向、周方向、軸方向を指すものとする。

図１中に示す一方向クラッチは、環状の外輪２と外輪２の径方向内側に離隔して配置された環状の内輪３との間に配置され、外輪２と内輪３に噛み合うことでトルクを伝達する複数のスプラグ４と、外輪２と内輪３の間でスプラグ４に起き上がりモーメントを与えるリボンスプリング５と、軸受機能を有し、外輪２と内輪３とを同心に保持するブロックベアリング６と、内輪３とリボンスプリング５との間でスプラグ４とブロックベアリング６を保持する内側保持器７と、外輪２とリボンスプリング５との間でスプラグ４とブロックベアリング６を保持する外側保持器８と、を有している。

外輪２は、径方向外側の面から径方向外側に突出した突起２ａを、周方向に等間隔で１２個備えている。突起２ａは、図１の図面の奥行き方向（軸方向）において、外輪２の寸法と略同じ寸法を有している。

内輪３は、外輪２よりも径が小さく、内輪３の外周面は外輪２の内周面から離隔しており、外輪２との間に環状の空間を形成している。外輪２と内輪３との間の空間にはスプラグ４とリボンスプリング５からなるトルク伝達機構が収容されている。内輪３の径方向内側は軸方向に貫通した空洞となっている。

スプラグ４は、図２に示すように、中央部がくびれたひょうたん形をしており、円周方向に略等間隔に複数配置されている。本実施形態としては、このようにひょうたん形のスプラグ４とリボンスプリング５を用いて外輪２と内輪３の相対回転を阻止するトルク伝達機構の例を示しているが、本発明は、この他、トルク伝達用に円筒ころを使用するトルク伝達機構を用いた一方向クラッチにも適用できる。

リボンスプリング５は、内側保持器７と外側保持器８との間に配置されている。リボンスプリング５は、スプラグ４に起き上がりモーメントを与える。即ち、リボンスプリング５は、スプラグ４の長手方向（図１における長手方向）を一方向クラッチの径方向に近付ける向きにスプラグ４を回転させ、スプラグ４が外輪２の内周面と内輪３の外周面に接するように付勢する。リボンスプリング５は、径方向に貫通した開口を周方向に複数有しており、スプラグ４とブロックベアリング６はその開口を通して配置されている。

ブロックベアリング６は、周方向に略等間隔に複数配置されており、外輪２と内輪３の距離を保ち、外輪２と内輪３とを同心状態に維持する。ブロックベアリング６の詳細については後述する。

内側保持器７は、概略円筒状をしており、径方向に貫通した開口を周方向に複数有する。内側保持器７は、リボンスプリング５と内輪３との間に配置されている。スプラグ４とブロックベアリング６は内側保持器７の開口を通して配置されている。内側保持器７は、スプラグ４とブロックベアリング６の径方向内側部分の移動を制限する。

外側保持器８は、内側保持器７よりも径が大きい概略円筒状をしており、径方向に貫通した開口を周方向に複数有する。外側保持器８は、外輪２とリボンスプリング５との間に配置されている。スプラグ４とブロックベアリング６は外側保持器８の開口を通して配置されている。スプラグ４はブロックベアリング６の間に周方向で同数ずつ配置されている。外側保持器８は、スプラグ４とブロックベアリング６の径方向外側部分の移動を制限する。

図３は本実施形態のブロックベアリング６を示す斜視図である。

ブロックベアリング６は、径方向外側（図の上側）から順に、周方向及び軸方向に延びる板状の第１凸部６ａと、第１凸部６ａの周方向の一方の端部から軸方向の全長にわたって径方向内側に延びる第１結合部６ｂと、第１結合部６ｂの径方向内側の部分から軸方向の全長にわたって第１凸部６ａと同じ周方向に延びる第２凸部６ｃと、第１結合部６ｂと同じ側の第２凸部６ｃの部分から軸方向の全長にわたって径方向内側に延びる第２結合部６ｄと、第２結合部６ｄの径方向内側の部分から軸方向の全長にわたって第１、第２凸部６ａ、６ｃと同じ周方向に延びる第３凸部６ｅと、から一体に構成されている。第１凸部６ａは第２凸部６ｃよりも長く周方向に延びており、第３凸部６ｅは第１凸部６ａよりも長く周方向に延びている。第１凸部６ａ、第１結合部６ｂ、第２凸部６ｃ、第２結合部６ｄ、及び、第３凸部６ｅの軸方向の寸法は等しい。ブロックベアリング６は、一方向クラッチの正面側及び裏面側において、軸方向に略垂直な平面状をしている。ブロックベアリング６は含油焼結合金などから形成することができる。

第３凸部６ｅの径方向内側の面は内輪３の外周面の軸方向面に接する摺動面６ｆとなっている。摺動面６ｆには追加工によって粗さが形成されている。粗さを形成する加工方法は特に限定されず、一般に知られている切削、バレル等、あらゆる方法で加工することができる。

摺動面６ｆの表面粗さＲａは条件式「０．２０≦Ｒａ≦１．７５」を満たすことが好ましい。表面の粗さがＲａが０．２０より下の数値では焼き付きが発生しやすく、表面粗さＲａが１．７５より上の数値では、形成加工上、ブロックベアリング６の他の形状を崩してしまい強度不足となりやすい。また、寸法精度も確保できなくなる。

次に、上記実施形態に係る一方向クラッチの評価試験の結果を示す。以下の表１に評価試験の条件を示す。

以下の表２に従来品と比較した試験結果を示す。試験後における一方向クラッチの確認は、ブロックベアリング６の軸受機能、一方向クラッチの機能における状態が問題ないかを判断した。

具体的な判断材料として、ブロックベアリング６については摺動面６ｆの摩耗量を確認した。摩耗量の閾値としては、限界値を「0.062mm」とした。この数字以上であれば、軸偏心となるため、一方向クラッチの機能保証の一つであるロールオーバートルクが低下するため、一方向クラッチの機能が満足しなくなる。また、ブロックベアリング６の摺動面６ｆにおける外観上の焼き付き有無を目視で確認した。判定は摺動面６ｆに焼き付きが確認できれば不良、焼きつきが無ければ良好という基準である。なお、表２の従来品、本実施形態それぞれ、試験数Ｎ＝５とし、数値は最大値を表記した。

上記表２により、本実施形態に係る一方向クラッチは、摺動面６ｆの摩耗量が機能に影響のない範囲内にあり、外観上も焼付きが無いことから、効果があることが分かる。

以上のように、本実施形態によれば、引きずりトルクを低減し、ブロックベアリング６の焼付きを抑え、耐久性を向上した一方向クラッチを提供することができる。

なお、本願発明は上記実施形態に限られず、種々の変更・改良が可能である。例えば、本実施形態においては、軸受機能を発揮するブロックベアリング６の摺動面６ｆは内輪３の外周面に摺接するが、外輪２の内周面に摺接するものとすることもできる。また、内輪３の外周面と外輪２の内周面の両面に摺接するものとすることもできる。いずれの場合も、摺動面を粗面とすれば良い。

また、ブロックベアリング６の摺動面６ｆの全面を粗面とする事が望ましいが、摺動面６ｆの一部のみを粗面とすることもできる。

１００ 一方向クラッチと内外輪との組合せ
２ 外輪
２ａ 突起
３ 内輪
４ スプラグ
５ リボンスプリング
６ ブロックベアリング
６ａ 第１凸部
６ｂ 第１結合部
６ｃ 第２凸部
６ｄ 第２結合部
６ｅ 第３凸部
６ｆ 摺動面
７ 内側保持器
８ 外側保持器

Claims (2)

1. 外輪と前記外輪に対して径方向内側に離隔して配置された内輪との間に配置され、前記外輪と前記内輪の所定方向の相対回転を妨げるトルク伝達機構と、
   前記トルク伝達機構と共に前記外輪と前記内輪との間に配置され、前記外輪と前記内輪とを同心に保つブロックベアリングと、を有し、
   前記ブロックベアリングは前記外輪又は前記内輪の軸方向面に接する摺動面を備え、
   前記摺動面の少なくとも一部が粗面であることを特徴とする一方向クラッチ。
2. 前記摺動面の粗さをＲａとしたとき、以下の条件を満足することを特徴とする請求項１に記載の一方向クラッチ。
   ０．２０≦Ｒａ≦１．７５

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