JP2021008928A - スラスト転がり軸受用保持器 - Google Patents

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Yuki Ogawa
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Abstract

【課題】希薄潤滑化または潤滑油低粘度化が進む環境であっても、潤滑性能が改善された保持器を提供する。【解決手段】スラストころ軸受用保持器10は、周方向に間隔を空けて配置される複数の柱部15,15と、周方向に隣り合う柱部同士間に位置するポケット14と、複数の柱部の径方向端部と結合するリング部16,17とを備える。柱部にはポケットに向かって突出しポケットから転動体が抜け落ちることを規制するころ止め突起19が設けられる。柱部の軸方向端面は、抜け止め突起から遠い周方向中央領域15cと、ころ止め突起に近い周方向縁領域15dとを含む。周方向縁領域15dには、周方向に間隔を空けて並列配置される複数の溝21,23が設けられる。【選択図】図6

Description

本発明は、スラスト転がり軸受の保持器に関する。
スラスト針状ころ軸受の保持器として、例えば特許文献1および特許文献2に記載の保持器が知られている。これら特許文献を代表して特許文献1につき説明すると、スラスト針状ころ軸受の軸方向に指向する保持器端面のうち、柱部の軸方向側面には凹部が形成される。スラスト針状ころ軸受が保持器案内形式である場合、希薄潤滑環境下において凹部に油が溜まるので、焼き付きが防止されるというものである。
特開2016−001026号公報 特開2008−101764号公報
しかし、上記従来のような保持器にあっては、さらに改善すべき点があることを本発明者は見いだした。つまり柱部の軸方向側面に形成される凹部が、柱部の周方向中央に配置されており、ポケットから離れている。また凹部が大きく深いため、凹部に貯留する油が凹部に留まり続け、排出され難い。このため、油がポケットへ供給され難く、ポケットに保持される転動体と抜け止め突起との接触箇所で油膜切れが生じる懸念がある。昨今では回転抵抗や攪拌抵抗の低減を目的として、油の粘性が低くなってきているため、油膜切れの懸念がさらに大きくなる。
本発明は、上述の実情に鑑み、希薄潤滑化または潤滑油低粘度化が進む環境であっても、従来よりも潤滑性能が改善された保持器を提供することを目的とする。
この目的のため本発明によるスラスト転がり軸受用保持器は、周方向に間隔を空けて配置される複数の柱部と、周方向に隣り合う柱部同士間に位置するポケットと、複数の柱部の径方向端部と結合するリング部とを備え、柱部にはポケットに向かって突出しポケットから転動体が抜け落ちることを規制する抜け止め突起が設けられ、柱部の軸方向端面は抜け止め突起から遠い周方向中央領域と抜け止め突起に近い周方向縁領域とを含み、周方向縁領域には周方向に間隔を空けて並列配置される複数の溝が設けられる。
かかる本発明によれば、複数の溝が潤滑油を保持することから、各抜け止め突起の近傍に複数の保油溝が設けられることになる。このため、スラスト転がり軸受が回転を再開する際に、複数の溝から隣の抜け止め突起に油を供給して、希薄潤滑環境下でも、または潤滑油低粘度化が進む環境下でも、抜け止め突起と転動体との接触箇所に潤滑油を供給し易い。また周方向に間隔を空けて複数の溝を有することから、抜け止め突起近傍に1本の溝のみ設ける構造に比べ、転動体の転動面に多くの潤滑油を長時間に渡り供給できる。また周方向縁領域に複数の溝を集中して設けることから、各溝の溝深さが浅くなる。したがって溝に貯留する油が溝に留まり続け難く、抜け止め突起へ向けて周方向に排出され易い。なお複数の溝は、各ポケットの周方向両側に設けられることが好ましいが、各ポケットの周方向片側のみに設けられてもよい。また複数の溝は、保持器の両側の軸方向端面に設けられることが好ましいが、片方の端面のみに設けられてもよい。溝は、保持器の内径側から外径側までおおよそ径方向に延びていればよく、保持器の半径直線と一致して延びる必要はない。
溝は抜け止め突起に近いほど好ましい。本発明の好ましい局面として、径方向に延びて柱部の周方向中央を通る基準直線に関し、複数の溝のうちポケットに最も近い溝とポケットとの周方向間隔は、複数の溝のうちポケットから最も遠い溝と基準直線との間の周方向間隔よりも小さい。かかる局面によれば、柱部の周方向中央から遠い側であって、抜け止め突起に近い側に複数の保油溝が設けることができるので、溝に貯留された潤滑油を抜け止め突起に一層供給し易い。
これら保油溝の溝深さは特に限定されないが、本発明のより好ましい局面として複数の溝のうちポケットに近い方の溝の溝深さが、ポケットから遠い方の溝の溝深さよりも浅くされる。かかる局面によれば、溝深さが浅い方が溝を潤滑油で満たし易く、ごく少量の潤滑油でポケット側の溝を優先的に満たすことができ、容易に抜け止め突起と転動体との接触箇所に潤滑油を供給できる。
これら保油溝の溝長さは特に限定されないが、本発明のさらに好ましい局面として、複数の溝のうちポケットに近い方の溝の径方向長さが、ポケットから遠い方の溝の径方向長さ以下にされる。かかる局面によれば、ポケット側の溝の容量を柱部中央側の溝の容量よりも小さくすることができるので、ポケット側の溝へ潤滑油を供給し易い。
本発明の一局面としてリング部は、複数の柱部の内径端部と結合する内径リング部と、複数の柱部の外径端部と結合する外径リング部を含み、これら内径リング部と、柱部と、外径リング部は環状のリング板部を含み、内径リング部および柱部の内径端部は環状の内周縁板部をさらに含み、外径リング部および柱部の外径端部は環状の外周縁板部をさらに含み、内周縁板部および外周縁板部は内径側および外径側に互いに離れるようリング板部からみて軸方向一方および軸方向他方に互い違いに配置され、内周縁板部はリング板部の内周縁から連続して外径側に延びリング板部の内径領域と重なり、外周縁板部はリング板部の外周縁から連続して内径側に延びリング板部の外径領域と重なり、抜け止め突起および複数の溝は内周縁板部および外周縁板部にそれぞれ設けられる。かかる局面によれば、内/外周縁板部の仕上がり形状の形状精度に関わらずポケットを精度良く打ち抜き加工することが可能となる。また本局面によれば、抜け止め突起を適宜配置し得て、針状ころよりもころ長が短いいわゆる短小ころを安定して保持することが可能になり、短小ころが保持器から不用意に脱落することを防止できる。また本局面によれば、薄い板材を使用して保持器を軽量化することが可能となり、スラスト転がり軸受の軽量化および省スペース化に資する。本局面では、内周縁板部および外周縁板部が保持器軸線方向一方側および他方側に互い違いに曲げ返されている。あるいは他の局面として、内周縁板部および外周縁板部はともに保持器軸線方向同じ側に曲げ返されてもよい。
このように本発明によれば、柱部の周方向縁領域、つまり抜け止め突起の周方向近傍、に溝を設け保持器に油溜まりの役割を担わせる事で、溝から隣のポケットに油を供給して、希薄潤滑環境下でも、抜け止め突起と転動体との接触部に潤滑油を供給し易い。したがって、軌道輪の焼付きや、転動体の表面起点型の損傷を抑制することができる。
本発明のスラスト転がり軸受を具備する遊星歯車機構を示す模式的な正面図である。 本発明のスラスト転がり軸受を具備する遊星歯車機構を示す模式的な断面図である。 本発明の一実施形態になるスラスト転がり軸受を示す全体図である。 同実施形態のスラスト転がり軸受を示す断面図である。 保持器を取り出して示す拡大断面図である。 保持器を取り出して示す拡大正面図である。 保持器を取り出して示す拡大背面図である。 図5中D−D断面で保持器のポケットを切断し、断面を矢の方向にみた状態を示す拡大断面図である。 図5中E−E断面で保持器のポケットを切断し、断面を矢の方向にみた状態を示す拡大断面図である。 本発明の変形例になる保持器を示す拡大断面図である。 変形例の保持器を示す拡大正面図である。 変形例の保持器を示す拡大背面図である。 本発明の他の実施形態になる保持器を示す拡大断面図である。 他の実施形態の保持器を示す拡大正面図である。 他の実施形態の保持器を示す拡大背面図である。 図13中D―D断面で保持器のポケットを切断し、断面を矢の方向にみた断面図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明のスラスト転がり軸受を具備する遊星歯車機構を示す模式的な正面図である。図2は、図1の遊星歯車機構を示す模式的な断面図である。自動変速機に内蔵される遊星歯車機構91は、内歯を有し外周を取り囲むリングギア92と、外歯を有しリングギア92の中心に配置されるサンギア93と、外歯を有しリングギア92とサンギア93の間に配置される複数のピニオンギア94(プラネタリギアともいう)とを有する。ピニオンギア94は、リングギア92およびサンギア93と噛合する。ピニオンギア94の中心には係合穴95が形成される。ピニオンギア94は、係合穴95に通されるピニオンシャフト96(図2)によって回転可能に支持される。そして、各々のピニオンシャフト96はキャリア97(図2)に連結される。
上記サンギア93、キャリア97、リングギア92のうち、一つを固定し、残る二つの一方から回転を遊星歯車機構91に入力し、他方から回転を出力することにより、減速または増速を行うことができる。具体的には、サンギア93を固定し、リングギア92から入力を行なうと、キャリアから低回転高トルクの動力が出力され、逆に、キャリアから動力を入力すると、リングギア92から高回転低トルクの動力が出力される。なお一例として図2では、リングギア92を自動変速機のケース98に固定している。サンギア93の中心孔には第1軸90が挿通固定される。キャリア97は第2軸99と一体結合する。第1軸90および第2軸99間の回転伝達は、遊星歯車機構91によって変速される。
図2中、ピニオンギア94の軸方向端面と相手部材のキャリア97の間には、本発明のスラスト転がり軸受10が配置される。あるいは図示しない変形例として、サンギア93の軸方向端面と相手部材のキャリア97の間には、本発明のスラスト転がり軸受が配置される。ピニオンギア94は、スラスト転がり軸受10により、軸方向に対向する相手部材から伝達されるアキシアル荷重を支持しつつ、回転自在とされる。サンギア93も同様である。
なお図示はしなかったが、本発明のスラスト転がり軸受は、自動車のエンジンと自動変速機の間に介在するトルクコンバータにも適用され得る。
図3は、本発明の一実施形態になるスラスト転がり軸受を拡大して示す全体図であり、軸受の軸方向からみた状態を表す。図4は、同実施形態のスラスト転がり軸受を示す断面図であり、図3中A―Aで断面として矢の方向にみた状態を表す。A―A断面は、軸線Oを含む平面である。スラスト転がり軸受10は、1対の内輪11pおよび外輪11qと、これら内輪11pおよび外輪11q間に介在する複数のころ12(転動体)と、ころ12を保持する保持器13とを備える。本実施形態のスラスト転がり軸受10は、スラストころ軸受である。スラスト転がり軸受10は、図1に示すように軸線O方向のアキシアル荷重を伝達しながら相対回転する2部材間に介在する。なお、以下の説明では、スラスト転がり軸受10において、スラスト転がり軸受10の中心軸(軸線O)に沿った方向を「軸方向」、中心軸(軸線O)に直交する方向を「径方向」、中心軸(軸線O)を中心とする円弧に沿った方向を「周方向」と呼ぶ。
内輪11pおよび外輪11qは、スラスト転がり軸受10の軸方向に互いに向き合う平坦な軌道面11a,11bと、各軌道面に立設される鍔部11c,11dをそれぞれ有する。軌道面11a,11bを構成する板材は軌道盤ともいい、平坦に形成される。
鍔部11cは、軌道面11aの内周縁から立ち上がる環状壁である。鍔部11cの先端には、周方向に間隔を空けて複数の内径側爪部11eが設けられる。内径側爪部11eはカシメ加工により形成されて外径側に突出し、保持器13を抱える。これにより保持器13は内輪11pからの分離を防止される。
鍔部11dは、軌道面11bの外周縁から立ち上がる環状壁である。鍔部11dの先端には、周方向に間隔を空けて複数の外径側爪部11fが設けられる。外径側爪部11fは折り曲げ形成されて内径側に突出し、保持器13を抱える。これにより保持器13は外輪11qからの分離を防止される。
複数のころ12は、軸線O回りに間隔を空けて配置される。各ころ12は、保持器13の各ポケット14に保持され、軌道面11a,11bを転動する。ころ12は、針状ころよりも短い、いわゆる短小ころである。ころ12の長さ寸法は、ころ12の外径寸法の1.0倍以上2.0倍以下の範囲である。言い換えると、ころ12の外径寸法(ころ直径)φcところ長lcは以下の関係を満足する。
[式1]φc≦lc≦2φc
図5は、保持器13を取り出して示す拡大断面図であり、軸線Oを含む平面で保持器13を切断し、切断面を周方向からみた状態を表す。図6は、保持器13を取り出して示す拡大正面図であり、保持器13の一方端面を図5の矢B方向(軸方向)にみた状態を表す。図7は、保持器13を取り出して示す拡大背面図であり、保持器13の他方端面を図5の矢C方向(軸方向)にみた状態を表す。
保持器13は、周方向に間隔を空けて配置される複数の柱部15と、周方向に隣り合う柱部同士間に位置するポケット14と、複数の柱部15の内径方向端部と結合する内径リング部16と、複数の柱部15の外径方向端部と結合する外径リング部17とを備える。
図8は、図5中D−D断面で保持器13のポケット14を切断し、断面を矢の方向(径方向)にみた状態を示す拡大断面図である。図9は、図5中E−E断面で保持器13のポケット14を切断し、断面を矢の方向(径方向)にみた状態を示す拡大断面図である。なおD−D断面およびE−E断面は、軸線Oと平行な平面である。参考のため図8および図9には保持器13の板厚方向中心線Cjを示す。
柱部15には、ポケット14に向かって突出するころ止め突起19,20が設けられる。1対のころ止め突起19,19は、保持器13の軸方向一方で、ポケット14を挟んで周方向に対向配置される。1対のころ止め突起20,20は、保持器13の軸方向他方で、ポケット14を挟んで周方向に対向配置される。ポケット14の周方向寸法はころ12の直径よりも大きいが、ころ止め突起19,19同士の間隔はころ12の直径よりも小さい。ころ止め突起20,20同士の間隔も同様である。これによりころ止め突起19は、ポケット14に設置されるころ12が軸方向一方へ抜け出すことを抑制する。同様にころ止め突起20は、ころ12が軸方向他方へ抜け出すことを抑制する。かくしてころ12はポケット14に保持される。
図6および図7に示すように柱部15の軸方向端面は、ころ止め突起19,20から遠い周方向中央領域15cと、ころ止め突起19,20に近い周方向縁領域15dとを含む。周方向縁領域15dには、周方向に間隔を空けて並列配置される複数の溝21,23および溝22,24が設けられる。図面の煩雑さを避けるため、図6ではころ止め突起20が図略され、図7ではころ止め突起19が図略される。本実施形態の溝21,23は互いに平行に真っ直ぐに延びる。あるいは図示しない変形例として、溝21,23の間隔が不均一であってもよい。例えば溝21,23の間隔は、内径側から外径側へ向かうほど大きくなってもよい。ころ止め突起19と溝21の並列関係、溝22,24の並列関係、およびころ止め突起20と溝22の並列関係も同様である。
溝21〜24はプレス加工や切削加工などにて得る事ができ、保持器13の軸方向両端面に設けられる。あるいは図示しない変形例として、溝21,23のみ、あるいは溝22,24のみ、というように保持器13の軸方向片側に設けられる。
溝22,24は溝21,23と同様であるので、説明の重複を避けるべく以下に溝21,23を代表的に説明する。図6および図8に示すように軸方向一方の端面に形成される溝21,23は、ポケット14に最も近い溝21と、ポケット14から最も遠い溝23とを含む。溝21,23は、ころ止め突起19に沿って互いに平行に延びている。また溝21,23の径方向位置は、ころ止め突起19の径方向位置と重なる。
柱部15の周方向中央を通る基準直線Cpに関し、複数の溝21,23のうちポケット14に最も近い溝21とポケット14との周方向間隔は、複数の溝のうちポケット14から最も遠い溝23と基準直線Cpとの周方向間隔よりも小さい。
図8に示すように、複数の溝21,23のうち、ポケット14に近い方の溝21の溝深さは、ポケット14から遠い方の溝23の溝深さよりも浅くされる。
図6に示すように複数の溝21,23は、略径方向に延びる条溝であり、具体的にはポケット14の壁面に形成される突条であるころ止め突起19と平行に延びる。ポケット14に近い方の溝21の径方向長さ(溝長さ)は、ポケット14から遠い方の溝23の径方向長さと同じにされる。あるいは図示しない変形例として、溝21の径方向長さは、溝23の径方向長さよりも短くされる。またころ止め突起19の径方向長さは、溝21の径方向長さ以下にされる。
なお本実施形態の1つの周方向縁領域15dに設けられる複数の溝は、溝21,22の2本のみであるが、図示しない変形例として3本以上の溝を設けてもよい。図7および図9に示すように、潤滑環境下、有端の各溝21〜24には潤滑油が貯留する。
本実施形態のスラストころ軸受10が回転すると、図8に矢Rrで示すように保持器13も周方向に回転することから、矢Fで示すようにころ止め突起19よりも回転方向に位置する溝21に貯留する潤滑油が回転方向と反対方向に移動して、ころ止め突起19に供給される。次に図8に矢G,Fで示すように溝23に貯留する潤滑油が周方向に移動して溝21を通過し、ころ止め突起19に供給される。したがってころ止め突起19ところ12(図4)との接触箇所に潤滑油を供給し易く、希薄潤滑化または潤滑油低粘度化が進む環境であっても、従来よりも潤滑性能が改善される。
また本実施形態によれば、柱部15の周方向中央を通る基準直線Cpから遠い側であって、ころ止め突起19,20に近い側に複数の溝21〜24が設けることができるので、溝21〜24に貯留された潤滑油をころ止め突起19,20に一層供給し易い。
また本実施形態によれば、溝深さが浅い方の溝21,22が深い方の溝23,24よりも潤滑油で満たされ易く、ごく少量の潤滑油でポケット側の溝21,22を優先的に満たすことができ、容易にころ止め突起19,20ところ12との接触箇所に潤滑油を供給できる。
また図示しない変形例として、柱中央側の溝23,24がポケット側の溝21,22より径方向に長いと、ポケット側の溝へ潤滑油を供給し易い。
次に保持器13の構造につき補足説明する。
保持器13は厚み一定の平坦な環状の鋼板から形成される。保持器13の板厚方向(軸方向)にみて、保持器13は軸線Oを取り囲むように環状である。保持器13は、円板状のリング板部25、内周縁板部26、および外周縁板部27を有する。これら3枚の内周縁板部26、リング板部25、および、外周縁板部27は、この順序で軸方向(板厚方向)に積み重なるよう配置される。外周縁板部27は、リング板部25の外径領域と重なる。内周縁板部26は、リング板部25の内径領域と重なる。
リング板部25は、内径リング部16と、柱部15と、外径リング部17に跨っている。内周縁板部26は、内径リング部16と、柱部15の内径端部に跨っているが、外径リング部17には達しておらず、櫛歯形状である。外周縁板部27は、柱部15の外径端部と、外径リング部17に跨っているが、内径リング部16には達しておらず、櫛歯形状である。
図5に示すように、内周縁板部26および外周縁板部27はそれぞれ、リング板部25の外/内周縁から連続しており、軸線O方向に対して互いに反対方向に折り曲げられてなる。具体的には、内周縁板部26が軸線O方向一方へ折り曲げ形成されるのに対し、外周縁板部27が軸線O方向他方へ折り曲げ形成される。保持器13は、リング板部25を鋼板1枚分とし、内周縁板部26を鋼板1枚分とし、外周縁板部27を鋼板1枚分として、全体で鋼板を3枚分重ねた厚みを有する。ただし内周縁板部26および外周縁板部27は軸線O方向から視て重なっていない。このため保持器13は鋼板3枚分の厚み箇所を局所的に有していない。
図5に示すように内周縁板部26よりも外径側、かつリング板部25よりも軸方向一方には空間S1が確保される。また外周縁板部27よりも内径側、かつリング板部25よりも軸方向他方には空間S2が確保される。潤滑油が空間S1,S2を流れることにより、スラストころ軸受10の通油性が向上する。また内径側爪部11e(図4)が空間S1に位置し、外径側爪部11f(図4)が空間S2に位置することができる。
本実施形態の内周縁板部26は、リング板部25の軸線O方向一方面に接触するが、図示しない変形例として、リング板部25と内周縁板部26の間に軸方向に開いた隙間があってもよい。外周縁板部27はリング板部25の軸線O方向他方面に接触するが、図示しない変形例として、リング板部25と外周縁板部27の間に軸方向に開いた隙間があってもよい。
内周縁板部26の先端縁は外周縁板部27の先端縁よりも保持器内径側にずらされている。なお鋼板3枚分の厚み寸法、つまり保持器13の軸方向寸法は、ころ12の直径よりも小さいこと勿論である。
リング板部25、内周縁板部26、および外周縁板部27にはポケット14が打ち抜き形成される。このためリング板部25はポケット14に面するポケット壁面25wを有し、内周縁板部26はポケット14に面するポケット壁面26wを有し、外周縁板部27はポケット14に面するポケット壁面27wを有する。
図8および図9に示すようにポケット14を挟んで、ポケット壁面25w,25wは周方向に対面する。ポケット壁面26w,27wも同様である。周方向一方のポケット壁面25w,26w,27wと、対向する周方向他方のポケット壁面25w,26w,27wの間隔、つまりポケット14の周方向寸法は、ころ12(図4)の寸法よりも大きい。
ころ止め突起19および溝21,23は、内周縁板部26の外径端部に設けられる。ころ止め突起20および溝22,24は、外周縁板部27の内径端部に設けられる。溝21〜24の溝深さは、材料基板厚、本実施形態では内周縁板部26の板厚、の50%、あるいは材料基板厚の40〜60%に含まれる所定値にされる。あるいはスラストころ軸受10の使用条件により、材料基板厚の10〜80%に含まれる所定値にされる。
溝21〜24の溝深さの割合別に、保持器の各種効果をまとめた表を以下に示す。
Figure 2021008928
溝21〜24は条溝であり、本実施形態では図6に示すように、溝21,23の内径側の一方端が、柱部15の軸方向端面で終了し、何らかの空間や凹部と接続していない。これに対し溝21,23の外径側の他方端が、内周縁板部26の外周縁まで突き抜けており、空間S1(図5)と接続する。また図7に示すように溝22,24の外径側の一方端が、柱部15の軸方向端面で終了し、何らかの空間や凹部と接続していない。これに対し溝22,24の内径側の他方端が、外周縁板部27の内周縁まで突き抜けており、空間S2(図5)と接続する。
本実施形態によれば、内周縁板部26および外周縁板部27の仕上がり形状の形状精度に関わらずポケット14を精度良く打ち抜き加工することが可能となる。また本実施形態によれば、内周縁板部26および外周縁板部27を備えることから、内周縁板部26および外周縁板部27にころ止め突起19,20を適宜配置して、ころ止め突起19,20の配置を適切にすることができる。したがって、ころ12が針状ころよりもころ長が短いいわゆる短小ころであっても、安定して保持することが可能になり、短小ころが保持器13から不用意に脱落することを防止できる。
また本実施形態によれば、薄い板材を使用して保持器を軽量化することが可能となり、スラスト転がり軸受の軽量化および省スペース化に資する。本局面では、内周縁板部26および外周縁板部27が軸方向一方側および他方側に互い違いに曲げ返されている。
また本実施形態によれば、環状の円板に関し、内/外周縁を軸方向一方/他方に互い違いに曲げて保持器にすることにより、内輪11p1枚と保持器13ところ12の一体化、または内輪11p、外輪11q2枚と保持器13ところ12の一体化において、保持器13と内輪11p・外輪11qの引っかけ代(図5の空間S1,S2)が設定し易くなるという効果と、内輪11p・外輪11qに設けられる鍔部11c,11dの鍔高さを低く設計でき、保持器13と軌道面11a,11b間の油路を広く確保でき通油性に優れる(図6,7)。
次に本実施形態の変形例を説明する。
図10は本発明の変形例を示す拡大断面図である。図11は、変形例の保持器を示す拡大正面図であり、保持器の一方端面を図10の矢B方向(軸方向)にみた状態を表す。図12は、変形例の保持器を示す拡大背面図であり、保持器の他方端面を図10の矢C方向(軸方向)にみた状態を表す。この変形例につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。なお、図10中D―D断面を矢の方向にみた断面形状は、図8と同様であるのでそちらを参照されたい。また図10中E―E断面を矢の方向にみた断面形状は、図9と同様であるのでそちらを参照されたい。
この変形例では図10に示すように、リング板部25が平坦ではなく、内径領域と外径領域が段違いになるよう、段差28が形成される。段差28は少なくとも板厚3枚分に跨る。これによりリング板部25の内径領域と外径領域は、板厚1枚以上離れる。
軸方向位置に関し、内周縁板部26の軸方向位置と外周縁板部27の軸方向位置は、重なるよう配置される。具体的には、内周縁板部26と外周縁板部27は、同じ軸方向位置に配置される。
ころ止め突起19および溝21,23は、リング板部25の内径領域に設けられる。ころ止め突起20および溝22,24は、リング板部25の外径領域に設けられる。溝21〜24は条溝であり、図11に示すように溝21,23の内径側の一方端は、柱部15の軸方向端面で終了し、何らかの空間や凹部と接続していない。これに対し溝21,23の外径側の他方端は、段差28まで突き抜けており、空間S1(図10)と接続する。また図12に示すように溝22,24の外径側の一方端は、柱部15の軸方向端面で終了し、何らかの空間や凹部と接続していない。これに対し溝22,24の内径側の他方端は、段差28まで突き抜けており、空間S2(図10)と接続する。
図10〜図12に示す変形例も、前述した実施形態と同様に、複数の溝21〜24から隣のポケット14に潤滑油を供給して、希薄潤滑環境下でも、ころ止め突起19,20ところ12との接触箇所に潤滑油を供給することができる。
次に本発明の他の実施形態を説明する。
図13は、本発明の他の実施形態になる保持器を示す拡大断面図である。図14は、他の実施形態の保持器を示す拡大正面図であり、保持器の一方端面を図13の矢B方向(軸方向)にみた状態を表す。図15は、他の実施形態の保持器を示す拡大背面図であり、保持器の他方端面を図13の矢C方向(軸方向)にみた状態を表す。他の実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。図16は、図13のD―D断面を矢の方向(径方向)にみた断面図である。なお図13のE―E断面を矢の方向にみた断面図は、図16と同様であるのでそちらを参照されたい。
他の実施形態では図13に示すように、内周縁板部26および外周縁板部27が、互い違いではなく、軸方向同じ向きに折り曲げられて形成される。リング板部25は平坦であるため、保持器全体の板厚は鋼板2枚分になる。内周縁板部26および外周縁板部27の間には環状の空間S3が介在する。
軸方向位置に関し、内周縁板部26の軸方向位置と外周縁板部27の軸方向位置は、重なるよう配置される。具体的には、内周縁板部26と外周縁板部27は、同じ軸方向位置に配置される。
ころ止め突起19および溝21,23は、内周縁板部26の外径端部に設けられる。ころ止め突起20および溝22,24は、外周縁板部27の内径端部に設けられる。溝21〜24は条溝であり、図14に示すように溝21,23の内径側の一方端は、柱部15の軸方向端面で終了し、何らかの空間や凹部と接続していない。これに対し溝21,23の外径側の他方端は、内周縁板部26の外周縁まで突き抜けており、空間S3(図13)と接続する。また図15に示すように溝22,24の外径側の一方端は、柱部15の軸方向端面で終了し、何らかの空間や凹部と接続していない。これに対し溝22,24の内径側の他方端は、外周縁板部27の内周縁まで突き抜けており、空間S3(図13)と接続する。
図13〜図16に示す他の実施形態も、前述した実施形態と同様に、複数の溝21〜24から隣のポケット14に潤滑油を供給して、希薄潤滑環境下でも、ころ止め突起19,20ところ12との接触箇所に潤滑油を供給することができる。
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば上述した1の実施形態から一部の構成を抜き出し、上述した他の実施形態から他の一部の構成を抜き出し、これら抜き出された構成を組み合わせてもよい。
10 スラストころ軸受、 11a,11b 軌道面、
11c,11d 鍔部、 11e 内径側爪部、
11f 外径側爪部、 11p 内輪、 11q 外輪、
12 ころ、 13 保持器、 14 ポケット、
15 柱部、 15c 周方向中央領域、 15d 周方向縁領域、
16 内径リング部、 17 外径リング部、
19,20 ころ止め突起(抜け止め突起)、 21,22,23,24 溝、
25 リング板部、 26 内周縁板部、 27 外周縁板部。

Claims (5)

  1. 周方向に間隔を空けて配置される複数の柱部と、周方向に隣り合う前記柱部同士間に位置するポケットと、前記複数の柱部の径方向端部と結合するリング部とを備え、
    前記柱部には、前記ポケットに向かって突出し前記ポケットから転動体が抜け落ちることを規制する抜け止め突起が設けられ、
    前記柱部の軸方向端面は、前記抜け止め突起から遠い周方向中央領域と、前記抜け止め突起に近い周方向縁領域とを含み、
    前記周方向縁領域には、周方向に間隔を空けて並列配置される複数の溝が設けられる、スラスト転がり軸受用保持器。
  2. 径方向に延びて前記柱部の周方向中央を通る基準直線に関し、
    前記複数の溝のうち前記ポケットに最も近い溝と前記ポケットとの周方向間隔は、前記複数の溝のうち前記ポケットから最も遠い溝と前記基準直線との間の周方向間隔よりも小さい、請求項1に記載のスラスト転がり軸受用保持器。
  3. 前記複数の溝のうち、前記ポケットに近い方の溝の溝深さが、前記ポケットから遠い方の溝の溝深さよりも浅くされる、請求項1または2に記載のスラスト転がり軸受用保持器。
  4. 前記複数の溝のうち、前記ポケットに近い方の溝の径方向長さが、前記ポケットから遠い方の溝の径方向長さ以下にされる、請求項1〜3のいずれかに記載のスラスト転がり軸受用保持器。
  5. 前記リング部は、前記複数の柱部の内径端部と結合する内径リング部と、前記複数の柱部の外径端部と結合する外径リング部を含み、
    前記内径リング部と、前記柱部と、前記外径リング部は、環状のリング板部を含み、
    前記内径リング部と、前記柱部の内径端部は、環状の内周縁板部をさらに含み、
    前記外径リング部と、前記柱部の外径端部は、環状の外周縁板部をさらに含み、
    前記内周縁板部および前記外周縁板部は、内径側および外径側に互いに離れるよう、前記リング板部からみて軸方向一方および軸方向他方に互い違いに配置され、
    前記内周縁板部は、前記リング板部の内周縁から連続して外径側に延び前記リング板部の内径領域と重なり、
    前記外周縁板部は、前記リング板部の外周縁から連続して内径側に延び前記リング板部の外径領域と重なり、
    前記抜け止め突起および前記複数の溝は、前記内周縁板部および前記外周縁板部にそれぞれ設けられる、請求項1〜4のいずれかに記載のスラスト転がり軸受用保持器。
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