JP2017114975A - ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】シリカの分散性とゴムの補強性を両立するゴム組成物の提供。【解決手段】ジエン系ゴム、シリカ、Mn=1000〜10000のポリシルセスキオキサンを含有するゴム組成物において、ポリシルセスキオキサンが、(A)メルカプトシラン化合物と、(B)ビニルシラン化合物及び/又は(メタ)アクリロキシシラン化合物と、(C)式(1)で表されるシラン化合物と、の縮合物であって、これら成分のケイ素原子当たりのモル比での縮合比率をそれぞれa、b及びcとして、0<a<1、0<b≦0.50、0<c<1、a+b+c=1を満足する。[R1〜R3の少なくとも1つはアルコキシ基;m=1〜12;n=1又は2;XはSk(kは2〜6)、H、エポキシ官能基、−SCOR5(R5はアルキル)又はSR4(R4はジイソブチレン骨格、リモネン骨格、β−ピネン骨格又はβ−ミルセン骨格を有する基]【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
一般に、ゴム組成物には、シリカやカーボンブラックなどの補強性充填剤が配合される。補強性充填剤は、充填量を多くすると、ゴム中での分散不良などの問題が生じやすい。そのため、補強性充填剤とゴムとの双方に反応する種々のシランカップリング剤が用いられている。しかし、従来のシランカップリング剤では、シリカの分散性向上による低発熱性能と、補強効果をバランスよく改良することは難しい。例えば、シリカの分散性を大幅に改良可能なシランカップリング剤も市販されているが、ゴム硬度の低下などの課題がある。
特許文献1には、ゴム組成物に配合するシリカの分散助剤としてアルコキシ変性シルセスキオキサンが開示されている。この文献は、配合中や加工中におけるアルコールの放出を減らすために、シリカと反応するためのアルコキシシリル基を比較的少量含ませることを開示する。アルコキシ変性シルセスキオキサンとして、具体的には、アルキルアルコキシシラン化合物を縮合させたものや、シリカとともにジエン系ゴムにも結合させるために、ブロック化されたメルカプトシラン化合物などの硫黄を含むシラン化合物をアルキルシラン化合物とともに縮合させたものが開示されている。また、特許文献2には、特許文献1に記載のものにおいて、更にタイヤ性能を改良するために、アミノシラン化合物を加えて縮合させた、アミノアルコキシ変性シルセスキオキサンが開示されている。
特許文献3には、シリカの分散性及び加工性を改良するために、スルフィド基を含むポリシロキサンをシランカップリング剤として配合することが開示されており、具体的には、スルフィドシラン化合物とアルキルシラン化合物との縮合物、スルフィドシラン化合物とアルキルシラン化合物とメルカプトシラン化合物との縮合物が開示されている。
特許文献4には、シランカップリング剤として用いられるブロックされたメルカプトシラン化合物の、ゴム組成物配合中での揮発性有機化合物の放出を低減するために、その縮合物を配合することが開示されており、具体的には、ブロックされたメルカプトシラン化合物の縮合物、ブロックされたメルカプトシラン化合物とアルキルシラン化合物との縮合物が開示されている。
以上のようにシラン化合物の縮合物をゴム組成物に配合することは提案されているが、メルカプトシラン化合物と、ビニルシラン化合物と、メルカプト基及びビニル基を有しない他のシラン化合物と、の縮合物からなるポリシルセスキオキサンを配合することは開示されていない。
特表2008−537740号公報 特開2010−059411号公報 WO2014/002750 特表2005−523924号公報
本発明の実施形態は、シリカの分散性とゴムの補強性を両立することができるゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムと、シリカと、数平均分子量が1000〜10000のポリシルセスキオキサンを含有し、前記ポリシルセスキオキサンが、(A)メルカプトシラン化合物と、(B)ビニルシラン化合物及び(メタ)アクリロキシシラン化合物からなる群より選択される少なくとも一種と、(C)下記式(1)で表されるシラン化合物からなる群より選択される少なくとも一種と、の縮合物であって、(A)成分、(B)成分及び(C)成分のケイ素原子当たりのモル比での縮合比率をそれぞれa、b及びcとして、0<a<1、0<b≦0.50、0<c<1、及びa+b+c=1を満足するものである。
式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、少なくとも1つはアルコキシ基である。mは1〜12の整数を表す。nは1又は2を表し、n=2のとき、Xは−Sk−を表し、ここで、kは2〜6の整数を表す。n=1のとき、Xは、水素原子、エポキシ官能基、−SR4、又は−SCOR5を表し、ここで、R5は炭素数1〜12のアルキルを表し、R4は下記式(2)〜(6)で表される基のいずれかである。
式(2)〜(6)中、丸印を付した部位が、−SR4中のSとの結合部位である。
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、該ゴム組成物を用いてなるものである。
本実施形態によれば、シリカの分散性とゴムの補強性を両立することができる。
一実施形態に係るポリシルセスキオキサンのランダム構造を示す図 T1、T2及びT3構造を示す図
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
本実施形態に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムに、シリカと、数平均分子量が1000〜10000である特定のポリシルセスキオキサンを配合してなるものである。
[ジエン系ゴム]
ゴム成分としてのジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられ、これらはいずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、NR、BR及びSBRからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
上記で列挙した各ジエン系ゴムの具体例には、その分子末端又は分子鎖中において、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、及びエポキシ基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基が導入されることで、当該官能基により変性された変性ジエン系ゴムも含まれる。変性ジエン系ゴムとしては、変性SBR及び/又は変性BRが好ましい。本実施形態において、ジエン系ゴムは、未変性ジエン系ゴム単独でもよく、変性ジエン系ゴム単独でもよく、変性ジエン系ゴムと未変性のジエン系ゴムとのブレンドでもよい。一実施形態において、ジエン系ゴム100質量部中、変性SBRを20質量部以上含んでもよく、変性SBRを20〜80質量部と未変性ジエン系ゴム(例えば、SBR、BR及びNRから選択される少なくとも一種)を80〜20質量部含むものでもよい。
[シリカ]
補強性充填剤としてのシリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)を用いてもよい。シリカのコロイダル特性も、特に限定されず、例えば、BET法による窒素吸着比表面積(BET)が150〜250m2/gであるものを用いてもよく、180〜230m2/gのものを用いてもよい。なお、シリカのBETはISO 5794に記載のBET法に準拠し測定される。
シリカの配合量は、特に限定されず、例えば、ジエン系ゴム100質量部に対して、20〜150質量部でもよく、30〜100質量部でもよく、40〜80質量部でもよい。
補強性充填剤としては、シリカとともに、カーボンブラック、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、クレー、又は、タルクなどの各種無機充填剤を併用してもよい。これらの中でも、シリカと併用する補強性充填剤としてはカーボンブラックが好ましい。なお、シリカを含む補強性充填剤の総配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、30〜180質量部でもよく、30〜120質量部でもよく、40〜100質量部でもよい。他の補強性充填剤を併用する場合、シリカを主成分とすること、すなわち、補強性充填剤の50質量%以上がシリカであることが好ましい。
[ポリシルセスキオキサン]
本実施形態に係るゴム組成物には、数平均分子量(Mn)が1000〜10000のポリシルセスキオキサンであって、(A)メルカプトシラン化合物と、(B)ビニルシラン化合物及び(メタ)アクリロキシシラン化合物からなる群より選択される少なくとも一種と、(C)式(1)で表されるシラン化合物からなる群から選択される少なくとも一種と、の縮合物であるポリシルセスキオキサンが配合される。かかるポリシルセスキオキサンを配合することにより、シリカの分散性とゴムの補強性を両立できる。その理由は、次のように考えられる。すなわち、該ポリシルセスキオキサンは、分子内にメルカプト基と、ビニル基及び/又は(メタ)アクリロイル基を有することで、ゴムの加硫工程中に、エン−チオール反応を起こして分子内架橋し、これにより補強性微粒子となって、高い補強効果を発揮すると考えられる。また、分子内にシラノール基とメルカプト基を有することから、シリカ分散剤としての効果を発揮すると考えられる。
本実施形態に係るポリシルセスキオキサンは、上記(A)、(B)及び(C)の3成分のシラン化合物を加水分解縮合して得られる、図1に示すようなランダム構造を持つ、ランダム型ポリシルセスキオキサンである。図1中のRは、上記各成分に由来する有機基である。
(A)成分のメルカプトシラン化合物としては、分子内にメルカプト基を持つアルコキシシランが挙げられ、一実施形態として下記式(7)で表されるメルカプトアルコキシシランが挙げられる。
式(7)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のアルキル基であり、少なくとも1つはアルコキシ基であり、好ましくは2つ以上がアルコキシ基であり、更に好ましくは3つともアルコキシ基である。アルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。pは、1〜12の整数を表し、好ましくは2〜5の整数である。−Cp2p−は、炭素数1〜12のアルキレン基(アルカンジイル基)を示し、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが好ましいものとして例示され、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、好ましくは直鎖状である。
メルカプトシラン化合物の具体例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシラン、11−メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらはいずれか1種を用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(B)成分のビニルシラン化合物としては、分子内にビニル基を持つアルコキシシランが挙げられ、一実施形態として下記式(8)で表されるビニルアルコキシシランが挙げられる。また、(メタ)アクリロキシシラン化合物としては、分子内に(メタ)アクリロキシ基を持つアルコキシシランが挙げられ、一実施形態として下記(9)で表される(メタ)アクリロキシアルコキシシランが挙げられる。ここで、(メタ)アクリロキシとは、アクリロキシ及びメタクリロキシのうちの一方又は両方を意味する。
式(8)中、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のアルキル基であり、少なくとも1つはアルコキシ基であり、好ましくは2つ以上がアルコキシ基であり、更に好ましくは3つともアルコキシ基である。アルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。Q1は、構造内にエーテル結合(−O−)を含んでもよい炭素数1〜12の2価の基であり、vは0又は1である。(Q1vは、より好ましくは−Cq2q−で表され、ここでqは0〜5の整数を表し、好ましくは0〜2の整数である。q≧1の場合、−Cq2q−で表されるアルキレン基は直鎖状でも分岐状でもよく、好ましくは直鎖状である。
式(9)中、R31、R32及びR33は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のアルキル基であり、少なくとも1つはアルコキシ基であり、好ましくは2つ以上がアルコキシ基であり、更に好ましくは3つともアルコキシ基である。アルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。Q2は、構造内にウレタン結合(−O−CO−NH−)を含んでもよい炭素数1〜10の2価の基である。Q2は、より好ましくは−Cr2r−で表され、ここでrは1〜10の整数を表し、好ましくは2〜5の整数である。−Cr2r−で表されるアルキレン基は直鎖状でも分岐状でもよく、好ましくは直鎖状である。Gは、水素原子又はメチル基である。
ビニルシラン化合物の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリロキシウンデシルトリメトキシシランなどが挙げられる。また、(メタ)アクリロキシシラン化合物の具体例としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、O−(メタクリロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタンなどが挙げられる。これらはいずれか1種を用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(C)成分のシラン化合物は下記式(1)で表されるアルコキシシランである。
式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のアルキル基であり、少なくとも1つはアルコキシ基であり、好ましくは2つ以上がアルコキシ基であり、更に好ましくは3つともアルコキシ基である。アルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。
式(1)において、mは1〜12の整数を表し、好ましくは2〜10の整数であり、−Cm2m−で表されるアルキレン基は直鎖状でも分岐状でもよい。また、nは1又は2を表す。
n=2のとき、Xは−Sk−を表し、ここで、kは2〜6の整数を表し、好ましくは2〜4の整数である。この場合、式(1)のアルコキシシランは、スルフィドシラン化合物であり、具体例としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィドなどが挙げられる。これらはいずれか1種を用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
n=1のとき、Xは、水素原子、エポキシ官能基、−SR4、又は−SCOR5を表す。
Xが水素原子の場合、式(1)のアルコキシシランは、アルキルアルコキシシラン化合物であり、具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらはいずれか1種を用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
Xがエポキシ官能基である場合、式(1)のアルコキシシランは、エポキシアルコキシシラン化合物である。ここで、エポキシ官能基とは、エポキシ基を有する基を意味し、具体的には、エポキシ基、グリシドキシ基、エポキシシクロヘキシル基などが挙げられる。エポキシアルコキシシラン化合物の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシランなどが挙げられ、これらはいずれか1種を用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
Xが−SR4である場合、式(1)のアルコキシシランは、スルフィド含有シラン化合物である。ここで、R4は下記式(2)〜(6)で表される基からなる群より選択され、これらの基を有するスルフィド含有シラン化合物は、いずれか1種を用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
式(2)〜(6)中、丸印を付した部位が、−SR4中のSとの結合部位である。
式(2)で表される基はジイソブチレン骨格を有する基であり、式(3)で表される基はリモネン骨格を有する基であり、式(4)で表される基はβ−ピネン骨格を有する基であり、式(5)及び式(6)で表される基はβ−ミルセン骨格を有する基である。これらのスルフィド含有シランは、ジイソブチレン、リモネン、ピネン、ミルセンの炭素−炭素二重結合とメルカプトシラン化合物のメルカプト基とのエン−チオール反応により合成することができる。エン−チオール反応に際しては、アゾ化合物、有機過酸化物などのラジカル発生剤を反応触媒として用いることが好ましい。
Xが−SCOR5の場合、式(1)のアルコキシシランは、保護化メルカプトシラン化合物である。ここで、R5は、炭素数1〜12のアルキルを表し、より好ましくは炭素数2〜8のアルキル基である。保護化メルカプトシラン化合物の具体例としては、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらはいずれか1種を用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(C)成分について、以上の通り列挙した各シラン化合物は、いずれか1種を用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係るポリシルセスキオキサンは、上記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分のケイ素原子当たりのモル比での縮合比率を、それぞれa、b及びcとして、0<a<1、0<b≦0.50、0<c<1、及びa+b+c=1を満足するものである。縮合物が(A)成分と(B)成分からなることにより、ポリシルセスキオキサンの分子内にメルカプト基とビニル基/(メタ)アクリロイル基が導入されるので、エン−チオール反応による分子内架橋により補強効果が発揮されると考えられる。また、(A)成分と(B)成分だけでなく、(C)成分も含むことにより、反応性を抑えて、シリカの分散性を向上することができる。より好ましくは、0.10≦a≦0.70、0.10≦b≦0.45、0.10≦c≦0.70であり、更に好ましくは、0.20≦a≦0.50、0.20≦b≦0.40、0.20≦c≦0.50である。
本実施形態に係るポリシルセスキオキサンの数平均分子量(Mn)は、1000〜10000の範囲内である。数平均分子量が10000以下であることにより、分子量分布が大きくなるのを抑えて、低発熱性能などのゴム物性が低下するのを抑えることができる。ポリシルセスキオキサンの数平均分子量は、1200〜8000であることが好ましく、より好ましくは1300〜6000であり、更に好ましくは1500〜5000である。
本実施形態に係るポリシルセスキオキサンにおいて、(A)、(B)及び(C)の3成分のシラン化合物としては、上記のように1官能や2官能のものが含まれてもよいが、好ましくは3官能シラン化合物を主成分とすることであり、ポリシルセスキオキサンを構成する全シラン化合物のうち、80モル%以上が3官能シラン化合物であることが好ましく、より好ましくは90モル%以上が3官能シラン化合物であり、更に好ましくは100モル%が3官能シラン化合物である。
一実施形態において、ポリシルセスキオキサンは、下記式(10)で表されるものであってもよい。
式(10)中、W1は下記式(11)で表され、W2は下記式(12)で表され、W3は下記式(13)で表される。なお、W1、W2及びW3の各構成単位は、シロキサン結合(Si−O−Si)により連結されるが、その連結順序はランダム結合であり、式(11)〜(13)に示される9つの構成単位は無秩序に配列する。すなわち、式(10)〜(13)は、ポリシルセスキオキサンの組成を示したものであり、各構成単位の結合順序を示したものではない。
1は、−Cp2p−SHを表し、ここで、pは1〜12の整数を表す。Z1は、上記式(7)の化合物の一部であり、そのため、pは、より好ましくは2〜5の整数を表す。
2は、−(Q1v−CH=CH2及び−Q2−O−C(=O)−CG=CH2からなる群より選択される少なくとも一種であり、ここで、Q1は、構造内にエーテル結合(−O−)を含んでもよい炭素数1〜12の2価の基であり、vは0又は1である。また、Q2は、構造内にウレタン結合(−O−CO−NH−)を含んでもよい炭素数1〜10の2価の基である。Gは水素原子又はメチル基を表す。
2は、上記式(8)及び/又は式(9)で表される化合物の一部である。そのため、(Q1vは、より好ましくは−Cq2q−で表され、ここでqは0〜5の整数を表し、より好ましくは0〜2の整数を表す。また、Q2は、より好ましくは−Cr2r−で表され、ここでrは1〜10の整数を表し、より好ましくは2〜5の整数を表す。
3は、−Cm2m−X1を表し、ここで、mは1〜12の整数を表す。X1は、−S0.5k−、水素原子、エポキシ官能基、−SR4、及び−SCOR5からなる群より選択される少なくとも一種である。kは2〜6の整数を表す。R5は炭素数1〜12のアルキルを表す。R4は前記式(2)〜(6)で表される基からなる群より選択される少なくとも一種である。
3は、上記式(1)の化合物の一部であり、そのため、mは、より好ましくは2〜10の整数を表す。X1において、−S0.5k−は、式(1)中のポリスルフィド結合−Sk−の半分を示す。これは、上記式(1)でn=2の場合に、スルフィドシラン化合物の2つのアルコキシシリル基がそれぞれ式(13)の各構成単位となり、当該2つの構成単位間でポリスルフィド結合−Sk−を分け合っていることを示す。ここで、kは、より好ましくは2〜4の整数を表す。また、X1において、エポキシ官能基としては上記の通りエポキシ基、グリシドキシ基、エポキシシクロヘキシル基などが挙げられる。また、−SCOR5中のR5は、より好ましくは炭素数2〜8のアルキルを表す。
式(10)〜(13)において、a、b、c、a1、a2、a3、b1、b2、b3、c1、c2及びc3はモル分率を表し、a=a1+a2+a3、b=b1+b2+b3、c=c1+c2+c3であり、0<a<1、0<b≦0.50、0<c<1、及びa+b+c=1である。
より詳細には、a1、a2、a3は、(A)成分のメルカプトシラン化合物由来の各構成単位のモル分率であり、a(=a1+a2+a3)は、上記(A)成分の縮合比率に等しい。そのため、好ましくは0.10≦a≦0.70、より好ましくは0.20≦a≦0.50である。ここで、0≦a1<1、0≦a2<1、0≦a3<1である。なお、a1、a2及びa3のモル分率を持つ各構成単位は、この順に、後述するT3、T2及びT1構造に対応しており、通常T1構造はほとんど存在しないので、例えばa3<0.05でもよく、a3<0.02でもよい。
また、b1、b2、b3は、(B)成分のシラン化合物由来の構成単位のモル分率であり、b(=b1+b2+b3)は、上記(B)成分の縮合比率に等しい。そのため、好ましくは0.10≦b≦0.45、より好ましくは0.20≦b≦0.40である。ここで、0≦b1≦0.50、0≦b2≦0.50、0≦b3≦0.50である。なお、b1、b2及びb3のモル分率を持つ各構成単位は、この順に、後述するT3、T2及びT1構造に対応しており、通常T1構造はほとんど存在しないので、例えばb3<0.05でもよく、b3<0.02でもよい。
また、c1、c2、c3は、(C)成分のシラン化合物由来の構成単位のモル分率であり、c(=c1+c2+c3)は、上記(C)成分の縮合比率に等しい。そのため、好ましくは0.10≦c≦0.70、より好ましくは0.20≦c≦0.50である。ここで、0≦c1<1、0≦c2<1、0≦c3<1である。なお、c1、c2及びc3のモル分率を持つ各構成単位は、この順に、後述するT3、T2及びT1構造に対応しており、通常T1構造はほとんど存在しないので、例えばc3<0.05でもよく、c3<0.02でもよい。
一実施形態において、ポリシルセスキオキサンは、29Si−NMRスペクトルより得られる、−53〜−56ppmのT1構造、−57〜−62ppmのT2構造、及び−64〜−72ppmのT3構造のピーク面積比が、0.50≦(T1+T2)/T3≦1.50を満足することが好ましい。図2に示すように、T1構造は1つのケイ素原子が1つのシロキサン結合(Si−O−Si)に関与している構造であり、T2構造は1つのケイ素原子が2つのシロキサン結合に関与している構造であり、T3結合は1つのケイ素原子が3つのシロキサン結合に関与している構造である。本実施形態のポリシルセスキオキサンでは、T1構造はほとんど存在せず、実質的にT2構造とT3構造からなるが、T3構造のピーク面積に対する、T1構造のピーク面積とT2構造のピーク面積の和の比(T1+T2)/T3が、上記のように0.50以上1.50以下であることが好ましい。このような比を持つことにより、一定量のシラノール基を保持しつつ、ポリシルセスキオキサンとして上記の分子量を持たせることができるので、低発熱性能を発揮するシリカの分散性向上効果を高めつつ、優れた補強効果を発揮することができる。上記の比(T1+T2)/T3は、0.70以上であることが好ましく、また1.40以下であることが好ましい。
ポリシルセスキオキサンの合成方法は、特に限定されない。例えば、上記3成分のシラン化合物に水及び触媒を加えて混合することにより、これらシラン化合物のアルコキシシリル基が加水分解してシラノール基が生成した後、シラノール基同士の縮合によりシロキサン結合が生成されて、ポリシルセスキオキサンが合成される。触媒としては、特に限定されず、例えば、塩酸や硫酸などの酸性触媒、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基性触媒などが挙げられる。水は、3成分のシラン化合物のアルコキシシリル基を全て加水分解できるように、ケイ素原子に結合した全アルコキシ基の合計モル数に相当するモル数で加えることが好ましい。
ポリシルセスキオキサンの配合量は、特に限定されず、例えば、シリカ100質量部に対して、0.1〜30質量部でもよく、1〜25質量部でもよく、3〜20質量部でもよい。
[任意成分、他]
本実施形態に係るゴム組成物には、上記の各成分の他に、任意成分として、シランカップリング剤、オイル、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
シランカップリング剤としては、上記ポリシルセスキオキサン以外の汎用のシランカップリング剤を用いることができ、例えば、上記ポリシルセスキオキサンの原料として列挙したスルフィドシラン化合物、メルカプトシラン化合物、及び保護化メルカプトシラン化合物などが挙げられ、これらはいずれか1種又は2種以上を組合せて用いてもよい。シランカップリング剤の配合量は、シリカ質量の1〜20質量%でもよく、3〜15質量%でもよい。
加硫剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄成分が挙げられ、特に限定するものではないが、その配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、第一混合段階で、ゴム成分に対し、フィラーとともに、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
このようにして得られたゴム組成物は、タイヤ用、防振ゴム用、コンベアベルト用などの各種ゴム部材に用いることができる。好ましくは、タイヤ用であり、乗用車用タイヤ、トラックやバスの大型タイヤなど各種用途、各種サイズの空気入りタイヤのトレッド部、サイドウォール部、ビード部、タイヤコード被覆用ゴムなどタイヤの各部位に適用することができる。すなわち、該ゴム組成物は、常法に従い、例えば、押出加工によって所定の形状に成形され、他の部品と組み合わせてグリーンタイヤを作製した後、該グリーンタイヤを例えば140〜180℃で加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。これらの中でも、タイヤのトレッド用配合として用いることが特に好ましい。すなわち、好ましい一実施形態に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物からなるトレッドを備えた空気入りタイヤである。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<ポリシルセスキオキサンの合成>
使用した原料は以下の通りである。
・イソオクテン:東京化成工業(株)製
・3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン:東京化成工業(株)製
・2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル):和光純薬工業(株)製
・ビニルトリエトキシシラン:信越化学工業(株)製「KBE−1003」
・リモネン:東京化成工業(株)製
・β−ピネン:東京化成工業(株)製
・β−ミルセン:東京化成工業(株)製
・トリエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)シラン:東京化成工業(株)製
・3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン:モメンティブ社製
・オクチルトリエトキシシラン:信越化学工業(株)製「KBE−3083」
・トリエトキシ(3−メタクリロイルオキシプロピル)シラン:東京化成工業(株)製
・ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、エボニック社製「Si75」
数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)での測定により、ポリスチレン換算にて求めた。詳細には、測定試料は各サンプル0.2mgをTHF1mLに溶解させたものを用いた。(株)島津製作所製「LC−20DA」を使用し、測定試料をフィルター透過後、温度40℃、流量0.7mL/分でカラム(Polymer Laboratories社製「PL Gel3μm Guard×2」)を通し、Spectra System社製「RI Detector」で検出した。
[合成例1:ポリシルセスキオキサン1]
50gのイソオクテン、106.2gの3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2.12gの2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)および300mLのトルエンをナスフラスコ内で混合し、窒素ガスで30分間バブリングした後、60℃で3時間反応させた。その後、反応溶液を濃縮し、148gの淡黄色の液体を得た(収率:95質量%)。生成物は下記式で表されるシラン化合物(スルフィド含有シラン1)である(1H−NMR及び13C−NMRにより確認)。
100g(0.28モル)のスルフィド含有シラン1、67.9g(0.28モル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、54.2g(0.28モル)のビニルトリエトキシシラン、及び46.2g(2.56モル)の蒸留水をナスフラスコ内で混合し、さらに35%塩酸水溶液0.30gを滴下し、室温で3時間攪拌した。その後、70℃で24時間攪拌したのち、得られた反応溶液を濃縮、ろ過して144gの淡黄色液体(上記3種のシラン化合物の縮合物であるポリシルセスキオキサン1)を得た(収率:65質量%)。得られたポリシルセスキオキサン1のMnは1820であった。また、GPC測定により実質的に全てのシラン化合物が反応していたため、各成分の縮合比率(組成比:モル比)は、投入原料のモル比と同一視でき、すなわち、a/b/c=0.33/0.33/0.33である。また、29Si−NMR分析(NMR装置としてBruker社製のAVANCE400を用い、測定モードは29Si−NMR,CP−MAS法)により、NMRスペクトルを得て、T1、T2及びT3構造の各ピーク面積から面積比(T1+T2)/T3を算出したところ、1.12であった。
[合成例2:ポリシルセスキオキサン2]
150gの3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、85.7gのリモネン、8.99gの2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、及び300mLのトルエンをナスフラスコ内で混合し、窒素ガスで30分間バブリングした後、70℃で6時間反応させた。反応溶液を濃縮し、227gの無色の液体を得た(収率:97質量%)。生成物は下記式で表されるシラン化合物(スルフィド含有シラン2)である(1H−NMR及び13C−NMRにより確認)。
100g(0.27モル)のスルフィド含有シラン2、63.6g(0.27モル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、50.7g(0.27モル)のビニルトリエトキシシラン、及び43.2g(2.40モル)の蒸留水をナスフラスコ内で混合し、さらに35%塩酸水溶液0.27gを滴下し室温で3時間攪拌した。その後、70℃で24時間攪拌したのち、得られた反応溶液を濃縮、ろ過して146gの透明な液体(上記3種のシラン化合物の縮合物であるポリシルセスキオキサン2)を得た(収率:68質量%)。得られたポリシルセスキオキサン2のMn、各成分の縮合比率a/b/c、及び(T1+T2)/T3は、下記表1に記載の通りであった。
[合成例3:ポリシルセスキオキサン3]
合成例2のスルフィド含有シラン2の合成において、85.7gのリモネンを85.7gのβ−ピネンに置き換え、その他は合成例2と同様にして、218gの無色の液体を得た(収率:92.5質量%)。生成物は下記式で表されるシラン化合物(スルフィド含有シラン3)である(1H−NMR及び13C−NMRにより確認)。
合成例2のポリシルセスキオキサン2の合成において、100g(0.27モル)のスルフィド含有シラン2を、100g(0.27モル)のスルフィド含有シラン3に置き換え、その他は合成例2と同様にして、144gの無色の液体(スルフィド含有シラン3と3−メルカプトプロピルトリエトキシシランとビニルトリエトキシシランの縮合物であるポリシルセスキオキサン3)を得た(収率:67質量%)。得られたポリシルセスキオキサン3のMn、各成分の縮合比率a/b/c、及び(T1+T2)/T3は、下記表1に記載の通りであった。
[合成例4:ポリシルセスキオキサン4]
合成例2のスルフィド含有シラン2の合成において、85.7gのリモネンを85.7gのβ−ミルセンに置き換え、その他は合成例2と同様にして、222gの無色の液体を得た(収率:94質量%)。生成物は下記式で表される2つのシラン化合物の混合物(スルフィド含有シラン4)である(1H−NMR及び13C−NMRにより確認)。
合成例2のポリシルセスキオキサン2の合成において、100g(0.27モル)のスルフィド含有シラン2を、100g(0.27モル)のスルフィド含有シラン4に置き換え、その他は合成例2と同様にして、139gの無色の液体(スルフィド含有シラン4と3−メルカプトプロピルトリエトキシシランとビニルトリエトキシシランの縮合物であるポリシルセスキオキサン4)を得た(収率:65質量%)。得られたポリシルセスキオキサン4のMn、各成分の縮合比率a/b/c、及び(T1+T2)/T3は、下記表1に記載の通りであった。
[合成例5:ポリシルセスキオキサン5]
100g(0.36モル)のトリエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)シラン、85.6g(0.36モル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、68.4g(0.36モル)のビニルトリエトキシシラン、及び58.2g(3.23モル)の蒸留水をナスフラスコ内で混合し、さらに35%塩酸水溶液0.37gを滴下し、室温で3時間攪拌した。その後、70℃で12時間攪拌した後、得られた反応溶液を濃縮、ろ過して178gの透明な液体(上記3種のシラン化合物の縮合物であるポリシルセスキオキサン5)を得た(収率:70質量%)。得られたポリシルセスキオキサン5のMn、各成分の縮合比率a/b/c、及び(T1+T2)/T3は、下記表1に記載の通りであった。
[合成例6:ポリシルセスキオキサン6]
100g(0.27モル)の3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、65.5g(0.27モル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、52.3g(0.27モル)のビニルトリエトキシシラン、及び44.5g(2.47モル)の蒸留水をナスフラスコ内で混合し、さらに35%塩酸水溶液0.29gを滴下し、室温で3時間攪拌した。その後、70℃で24時間攪拌した後、得られた反応溶液を濃縮、ろ過して148gの透明な液体(上記3種のシラン化合物の縮合物であるポリシルセスキオキサン6)を得た(収率:68質量%)。得られたポリシルセスキオキサン6のMn、各成分の縮合比率a/b/c、及び(T1+T2)/T3は、下記表1に記載の通りであった。
[合成例7:ポリシルセスキオキサン7]
100g(0.36モル)のオクチルトリエトキシシラン、86.2g(0.36モル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、68.8g(0.36モル)のビニルトリエトキシシラン、及び58.6g(3.25モル)の蒸留水をナスフラスコ内で混合し、さらに35%塩酸水溶液0.48gを滴下し、室温で3時間攪拌した。その後、70℃で24時間攪拌した後、得られた反応溶液を濃縮、ろ過して179gの透明な液体(上記3種のシラン化合物の縮合物であるポリシルセスキオキサン7)を得た(収率:70質量%)。得られたポリシルセスキオキサン7のMn、各成分の縮合比率a/b/c、及び(T1+T2)/T3は、下記表1に記載の通りであった。
[合成例8:ポリシルセスキオキサン8]
100g(0.27モル)の3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、65.5g(0.27モル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、79.8g(0.27モル)のトリエトキシ(3−メタクリロイルオキシプロピル)シラン、33.4g(0.07モル)のビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、及び52.0g(2.89モル)の蒸留水をナスフラスコ内で混合し、さらに35%塩酸水溶液0.29gを滴下し、室温で3時間攪拌した。その後、70℃で36時間攪拌した後、得られた反応溶液を濃縮、ろ過して181gの淡黄色の液体(上記4種のシラン化合物の縮合物であるポリシルセスキオキサン8)を得た(収率:65質量%)。得られたポリシルセスキオキサン8のMn、各成分の縮合比率a/b/c、及び(T1+T2)/T3は、下記表1に記載の通りであった。
[合成例9:ポリシルセスキオキサン9(比較例)]
100g(0.27モル)の3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、65.5g(0.27モル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、76.0g(0.27モル)のオクチルトリエトキシシラン((C)成分として使用)、及び44.5g(2.47モル)の蒸留水をナスフラスコ内で混合し、さらに35%塩酸水溶液0.29gを滴下し、室温で3時間攪拌した。その後、70℃で24時間攪拌した後、得られた反応溶液を濃縮、ろ過して169gの透明な液体(上記3種のシラン化合物の縮合物であるポリシルセスキオキサン9)を得た(収率:70質量%)。得られたポリシルセスキオキサン9のMn、各成分の縮合比率a/b/c、及び(T1+T2)/T3は、下記表1に記載の通りであった。
[合成例10:ポリシルセスキオキサン10(比較例)]
100g(0.27モル)の3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、65.5g(0.27モル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、130.7g(0.69モル)のビニルトリエトキシシラン、及び66.8g(3.71モル)の蒸留水をナスフラスコ内で混合し、さらに35%塩酸水溶液0.42gを滴下し、室温で3時間攪拌した。その後、70℃で24時間攪拌した後、得られた反応溶液を濃縮、ろ過して190gの透明な液体(上記3種のシラン化合物の縮合物であるポリシルセスキオキサン10)を得た(収率:64質量%)。得られたポリシルセスキオキサン10のMn、各成分の縮合比率a/b/c、及び(T1+T2)/T3は、下記表1に記載の通りであった。
[合成例11:ポリシルセスキオキサン11(比較例)]
100g(0.27モル)の3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、65.5g(0.27モル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、52.3g(0.27モル)のビニルトリエトキシシラン、44.5g(2.47モル)の蒸留水をナスフラスコ内で混合し、さらに30%水酸化ナトリウム水溶液0.37gを滴下し、室温で3時間攪拌した。その後、70℃で72時間攪拌した後、得られた反応溶液を濃縮、ろ過して148gの透明な液体(上記3種のシラン化合物の縮合物であるポリシルセスキオキサン11)を得た(収率:68質量%)。得られたポリシルセスキオキサン11のMn、各成分の縮合比率a/b/c、及び(T1+T2)/T3は、下記表1に記載の通りであった。
<ゴム組成物の評価>
バンバリーミキサーを使用し、下記表2に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表2中の各成分の詳細は、以下の通りである。
・未変性SBR:ランクセス株式会社製「VSL5025−0HM」
・変性SBR:アミノ基及びアルコキシ基末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、JSR株式会社製「HPR350」
・BR:宇部興産株式会社製「BR150B」
・シランカップリング剤1:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニック社製「Si69」
・シランカップリンク剤2:メルカプトシラン化合物、エボニック社製「Si363」
・ポリシルセスキオキサン1〜11:合成例1〜11で合成したもの
・シリカ:東ソー・シリカ株式会社製「ニップシールAQ」(BET=205m2/g)
・カーボンブラック:三菱化学株式会社製「ダイアブラックN341」
・オイル:昭和シェル石油株式会社製「エキストラクト4号S」
・亜鉛華:三井金属鉱業株式会社製「亜鉛華1号」
・老化防止剤:住友化学株式会社製「アンチゲン6C」
・ステアリン酸:花王株式会社製「ルナックS−20」
・ワックス:日本精鑞株式会社製「OZOACE0355」
・硫黄:鶴見化学工業株式会社製「5%油入微粉末硫黄」
・加硫促進剤:住友化学株式会社製「ソクシノールCZ」
得られた各ゴム組成物について、160℃×20分で加硫して所定形状の試験片を作製し、硬度と低発熱性能を評価した。
各評価方法は以下の通りである。
・硬度 :JIS K6253に準拠したタイプAデュロメータを使用し、23℃で硬度を測定し、比較例1の値を100とした指数で示した。指数が大きいほど、硬度が高く、補強性能に優れることを示す。
・低発熱性能:東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz、静歪10%、動歪1%、温度60℃で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で示した。指数が小さいほど、tanδが小さく、従って発熱しにくく、タイヤとしての低燃費性能に優れることを示す。
結果は、表1に示す通りである。汎用のスルフィドシランカップリング剤を配合したコントロールである比較例1に対し、シリカ分散効果の高いシランカップリング剤を配合した比較例2には、低発熱性能は改良されたものの、ゴム硬度が低下した。一方、比較例3では、ポリシルセスキオキサンを用いたものの、ビニル基を持たないものであったため、ゴム硬度の低下が大きかった。比較例4では、用いたポリシルセスキオキサンのビニル基の含有量が多すぎて、低発熱性能の改良効果が不十分であった。比較例5では、用いたポリシルセスキオキサンの分子量が大きすぎて、低発熱性能の改良効果が不十分であった。
これに対し、特定のポリシルセスキオキサン1〜8を配合した実施例1〜13では、ゴム硬度の過度な低下を抑えながら、低発熱性能が顕著に改善されており、シリカの分散性とゴムの補強性を両立することができた。

Claims (4)

  1. ジエン系ゴムと、シリカと、数平均分子量が1000〜10000のポリシルセスキオキサンを含有し、
    前記ポリシルセスキオキサンが、(A)メルカプトシラン化合物と、(B)ビニルシラン化合物及び(メタ)アクリロキシシラン化合物からなる群より選択される少なくとも一種と、(C)下記式(1)で表されるシラン化合物からなる群より選択される少なくとも一種と、の縮合物であって、(A)成分、(B)成分及び(C)成分のケイ素原子当たりのモル比での縮合比率をそれぞれa、b及びcとして、0<a<1、0<b≦0.50、0<c<1、及びa+b+c=1を満足する、
    ゴム組成物。
    (式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、少なくとも1つはアルコキシ基である。
    mは1〜12の整数を表す。
    nは1又は2を表し、n=2のとき、Xは−Sk−を表し、ここで、kは2〜6の整数を表す。n=1のとき、Xは、水素原子、エポキシ官能基、−SR4、又は−SCOR5を表し、ここで、R5は炭素数1〜12のアルキルを表し、R4は下記式(2)〜(6)で表される基のいずれかである。
    式(2)〜(6)中、丸印を付した部位が、−SR4中のSとの結合部位である。)
  2. 前記ポリシルセスキオキサンが下記式(10)で表されるポリシルセスキオキサンである、請求項1記載のゴム組成物。
    (式中、W1は下記式(11)で表され、W2は下記式(12)で表され、W3は下記式(13)で表され、
    1は、−Cp2p−SHを表し、ここで、pは1〜12の整数を表し、
    2は、−(Q1v−CH=CH2及び−Q2−O−C(=O)−CG=CH2からなる群より選択される少なくとも一種であり、ここで、Q1は、構造内にエーテル結合を含んでもよい炭素数1〜12の2価の基を表し、vは0又は1を表し、Q2は、構造内にウレタン結合を含んでもよい炭素数1〜10の2価の基を表し、Gは水素原子又はメチル基を表し、
    3は、−Cm2m−X1を表し、ここで、mは1〜12の整数を表し、X1は、−S0.5k−、水素原子、エポキシ官能基、−SR4、及び−SCOR5からなる群より選択される少なくとも一種であり、kは2〜6の整数を表し、R5は炭素数1〜12のアルキルを表し、R4は前記式(2)〜(6)で表される基からなる群より選択される少なくとも一種であり、
    a=a1+a2+a3、b=b1+b2+b3、c=c1+c2+c3であり、0<a<1、0<b≦0.50、0<c<1、及びa+b+c=1である。)
  3. 前記ポリシルセスキオキサンは、29Si−NMRスペクトルより得られる、−53〜−56ppmのT1構造、−57〜−62ppmのT2構造、及び−64〜−72ppmのT3構造のピーク面積比が、0.50≦(T1+T2)/T3≦1.50を満足する、請求項1又は2記載のゴム組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いてなる空気入りタイヤ。
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