本発明は、両軸受リール、及び両軸受リールのスプールに、関する。
従来の両軸受リールでは、スプールの軽量化を図るために、スプールの糸巻胴部には、複数の孔部が形成されている(特許文献1を参照)。詳細には、このスプールでは、複数の孔部が、1対のフランジ部の間において糸巻胴部に全体的に設けられている。
一方で、バックラッシュを防止するために、磁力によってスプールを制動するスプール制動装置が、提案されている(特許文献2、3を参照)。このスプール制動装置では、スプールを通過する磁束数に応じて、スプールの制動力を変化させている。
特開2001−145445号公報
特開2014−200227号公報
特開平10−309158号公報
特許文献1の両軸受リールでは、スプールの糸巻胴部には複数の孔部が全体的に形成されているので、このスプールを特許文献2のように制動するためには特許文献3のように、有底筒状の導電体をスプールと一体回転させる必要があった。このため、孔部を設けて軽量化(慣性低減)しても、導電体の重量(慣性)が増加してしまうため、スプールを十分に制動することが難しかった。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、スプールの軽量化を図ることができ、且つスプールに対して制動力を適切に付与できる両軸受リールを、提供することにある。
(1)本発明の一側面に係る両軸受リールは、リール本体と、ハンドルと、スプールと、スプール制動部とを、備える。ハンドルは、リール本体に回転自在に装着される。スプールは、ハンドルの回転に連動して回転可能なように、リール本体に設けられる。スプールは、糸巻胴部と、1対のフランジ部とを、有する。糸巻胴部は、有孔筒部と、非有孔筒部とを、有する。有孔筒部は、少なくとも1つの孔部を有する。非有孔筒部は、有孔筒部と一体に形成される。1対のフランジ部は、糸巻胴部の両端部に各別に設けられる。スプール制動部は、リール本体に設けられる。スプール制動部は、少なくとも非有孔筒部に磁力を作用させることによって、スプールを制動可能である。
本両軸受リールでは、糸巻胴部が有孔筒部を有しているので、スプールの軽量化を図ることができる。また、スプール制動部の磁力を、糸巻胴部の非有孔筒部に作用させているので、スプールに対して制動力を適切に付与できる。
(2)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、スプール制動部が、非有孔筒部の内周面に対向可能にリール本体に設けられる。これにより、上記の効果に加えて、両軸受リールの小型化を図ることができる。
(3)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、有孔筒部の内周面には、径方向内側に突出するリブ部が、形成されている、これにより、有孔筒部に孔部が設けられたとしても、有孔筒部の強度及び剛性を確保することができる。また、有孔筒部に孔部が設けられたとしても、有孔筒部及び非有孔筒部の間における強度差及び剛性差を、小さくすることができる。すなわち、有孔筒部及び非有孔筒部の間の変形量の差を、抑制することができる。
(4)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、リブ部は、有孔筒部の内周面において周方向に延びる環状リブである。これにより、有孔筒部及び非有孔筒部の間の変形量の差を、より効果的に抑制することができる。
(5)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、非有孔筒部の内周面が、小径部と、小径部より大径の大径部とを、有する。スプール制動部は、小径部に対向可能にリール本体に設けられる。
この場合、非有孔筒部の内周面における小径部と大径部との境界を基準として、小径部に作用するスプール制動部の磁力を管理することができる。すなわち、スプールに対して制動力を適切に付与できる。
(6)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、非有孔筒部の内周面が、周方向に延びる段差部を、さらに有する。段差部は、小径部及び大径部を接続する、このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
(7)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、小径部が段差部を介して大径部に接続され、大径部が一方のフランジ部に連続的に形成される。このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
(8)本発明の一側面に係る両軸受リールのスプールは、筒状の糸巻胴部と、1対のフランジ部とを、備える。糸巻胴部の外周には、釣り糸が巻き付けられる。1対のフランジ部は、糸巻胴部の両端部に各別に設けられる。
ここで、糸巻胴部は、有孔筒部と、非有孔筒部とを、有する。有孔筒部は、1対のフランジ部の一方側に設けられる。有孔筒部は、外周に貫通孔を有する。非有孔筒部は、1対のフランジ部の他方側に設けられる。このような構成において、糸巻胴部の非有孔筒部の内周面に磁力式のスプール制動部を対向させれば、軽量化を図ることができるとともに、有底筒状の導電体を追加することなくスプールに対して制動力を適切に付与できる。
本発明によれば、スプールの軽量化を図ることができ、且つスプールに対して制動力を適切に付与できる。
本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図。
リール本体内部の構成を示す断面図。
スプールの断面図及び側面図。
スプールの部分拡大断面図。
スプール及びスプール制動機構の拡大断面図。
スプール及びスプール制動機構の拡大断面図(第2筒部が軸方向に移動した場合)。
スプール制動機構の分解斜視図。
<両軸受リールの構成>
図1に本発明の一実施形態が採用された両軸受リールを示す。図1及び図2に示すように、両軸受リールは、リール本体1と、ハンドル3と、スプール5と、スプール制動機構7とを、備えている。
以下では、釣り糸を前方に繰り出す方向を"前方"、釣り糸を前方に繰り出す方向とは反対の方向を"後方"と、表現することがある。また、リール本体1が釣り竿に装着される側を"下方"、リール本体1が釣り竿に装着される側とは反対の方向を"上方"と、表現することがある。
また、スプール軸16が延びる方向、ピニオンギア36が延びる方向、及び螺軸23が延びる方向は、実質的に同じ方向である。このため、これらの方向を、以下では"軸方向"と表現することがある。なお、スプール軸16、ピニオンギア36、及び螺軸23は、後述する。
(リール本体)
リール本体1は、図2に示すように、フレーム4と、第1側カバー9及び第2側カバー11と、フレーム4の上部に装着されたサムレスト13(図1を参照)とを、有している。
フレーム4は、第1側板15と、第2側板17と、複数の連結部(図示しない)とを、有している。第1側板15及び第2側板17は、所定の間隔を開けて互いに対向するように配置されている。詳細には、第1側板15はハンドル3とは反対側に設けられ、第2側板17はハンドル3側に設けられている。第1側板15及び第2側板17には、スプール5を配置可能な開口15a,17aが、形成されている。複数の連結部は、第1側板15及び第2側板17を連結する。
開口15aには、ブレーキケース19が固定されている。ブレーキケース19は、有底筒状のケース部材である。ブレーキケース19は、第1側板15の開口15aに、例えばバヨネット構造によって、装着される。また、開口15aには、キャスティング時のバックラッシュを抑えるためのスプール制動機構7が、ブレーキケース19を介して、配置される。
第1側カバー9は、ハンドル3とは反対側において、フレーム4例えば第1側板15に、装着されている。第2側カバー11は、ハンドル3側において、フレーム4例えば第2側板17に、着脱自在に装着されている。第1側カバー9及びブレーキケース19の間には、スプール制動機構7を操作するための操作つまみ63が、配置される。
フレーム4には、スプール5と、レベルワインド機構21と、クラッチ操作レバー26と、が配置されている。
レベルワインド機構21は、スプール5に釣り糸を均一に巻き付けるための機構である。レベルワインド機構21は、ガイド筒22と、螺軸23と、ラインガイド24とを、有している。ガイド筒22は、ラインガイド24を、軸方向に案内する。ガイド筒22は、第1側板15及び第2側板17の間に固定される。螺軸23は、ガイド筒22内に回転自在に配置される。螺軸23には螺旋状溝が形成されており、螺旋状溝にはラインガイド24が噛み合っている。
この構成によって、螺軸23がギア機構25(後述する)によって回転させられると、ラインガイド24が、ガイド筒22に沿って往復移動する。これにより、ラインガイド24に挿通された釣り糸が、スプール5に均一に巻き付けられる。
クラッチ操作レバー26は、第1側板15及び第2側板17の間において、スプール5の後方に配置されている。クラッチ操作レバー26は、上下方向にスライド可能に構成されている。クラッチ操作レバー26は、クラッチカム(図示しない)を介して、クラッチ係脱機構27(後述する)を作動可能である。
フレーム4及び第2側カバー11の間には、ギア機構25と、クラッチ係脱機構27と、クラッチ機構29と、ドラグ機構31と、キャスティングコントロール機構33とが、配置されている。
ギア機構25は、ハンドル3からの回転力を、スプール5及びレベルワインド機構21に伝える。ギア機構25は、駆動ギア35と、ピニオンギア36と、第1ギア37と、第2ギア38とを、有している。
駆動ギア35は、駆動軸30に対して、一体回転可能且つ相対回転可能に、装着されている。詳細には、駆動ギア35は、ドラグ機構31によって、駆動軸30に対して、一体回転したり相対回転したりする。ピニオンギア36は、第2側板17に回転可能に支持されている。ピニオンギア36は、スプール軸16に軸方向に移動自在に装着されている。ピニオンギア36は、実質的に筒状に形成されている。ピニオンギア36の中心には、スプール軸16が挿通される。
ピニオンギア36は、駆動ギア35に噛み合う。第1ギア37は、螺軸23の端部に固定されている。第2ギア38は、駆動軸30に回転不能に固定され、第1ギア37に噛み合う。この構成によって、駆動軸30が回転すると、第2ギア38に噛み合う第1ギア37が回転する。すると、この第1ギア37の回転によって、螺軸23が回転する。これにより、上述したように、レベルワインド機構21が作動する。
クラッチ係脱機構27は、クラッチ操作レバー26の操作に応じて、クラッチ機構29の係脱を行う。クラッチ係脱機構27は、クラッチヨーク39を有している。クラッチ係脱機構27は、クラッチ操作レバー26の操作により、クラッチヨーク39をスプール軸16の軸芯と平行に移動させる。これにより、クラッチ機構29がオフになり、スプール5が回転自在になる。また、クラッチ係脱機構27は、駆動軸30が糸巻き取り方向に回転すると、クラッチ機構29が自動的にオンになるように、クラッチヨーク39を移動させる。
クラッチ機構29は、駆動軸30及びスプール軸16の連結と、駆動軸30及びスプール軸16の連結解除を行う。クラッチ機構29は、ピニオンギア36の噛合部36bと、スプール軸16を径方向に貫通するクラッチピン16aとから、構成される。
ここで、ピニオンギア36は、歯部36aと、噛合部36bと、くびれ部36cとを、有している。歯部36aは、ピニオンギア36の一端部に設けられ、駆動ギア35に噛み合う。噛合部36bは、ピニオンギア36の他端部に設けられる。噛合部36bには、クラッチピン16aに係合可能な凹部が、形成されている。くびれ部36cは、歯部36aと噛合部36bとの間に、設けられている。くびれ部36cには、クラッチ係脱機構27のクラッチヨーク39が係合している。
クラッチピン16aは、噛合部36bの凹部に係合可能である。例えば、クラッチ係脱機構27のクラッチヨーク39によってピニオンギア36がスプール軸16に沿って移動すると、噛合部36bの凹部がクラッチピン16aから離脱する。すると、駆動軸30及びスプール軸16の連結が、解除される。この場合、駆動軸30からの回転は、スプール5に伝達されない。すなわち、この状態が、クラッチオフ状態である。
一方で、駆動軸30が糸巻き取り方向に回転すると、クラッチピン16aが噛合部36bの凹部に係合する。すると、駆動軸30及びスプール軸16が、連結される。この場合、駆動軸30からの回転は、スプール5に伝達される。すなわち、この状態が、クラッチオン状態である。なお、通常状態は、クラッチオン状態である。
ドラグ機構31は、糸繰り出し時にスプール5を制動する。詳細には、ドラグ力を超える力で釣り糸が引っ張られた場合、ドラグ機構31が作動し、スプール5は糸繰り出し方向に回転する。
ドラグ機構31は、スタードラグ32と、摩擦機構34とを有する。スタードラグ32は、ドラグ力を調節するためのものである。詳細には、スタードラグ32を回転させることによって、摩擦機構34の押圧状態が変化し、ドラグ力が調節される。
摩擦機構34は、複数の制動板から構成される。摩擦機構34は、ワンウェイクラッチ43、及び駆動ギア35の間に配置される。例えば、ドラグ力を超える力で釣り糸が引っ張られ、スプール5が糸繰り出し方向に回転した場合、摩擦機構34が作動し、駆動ギア35は駆動軸30に対して相対回転する。
キャスティングコントロール機構33は、スプール軸16の両端を挟持することによって、スプール5を制動する。キャスティングコントロール機構33は、キャップ40と、第1摩擦プレート41と、第2摩擦プレート42とを、備えている。第1摩擦プレート41及び第2摩擦プレート42は、スプール軸16の両端に接触して、スプール軸16を挟持する。例えば、キャップ40が回転された場合、第1摩擦プレート41及び第2摩擦プレート42によってスプール軸16を挟持する挟持力が、調整される。これにより、スプール5の制動力が調整される。
(ハンドル)
ハンドル3は、リール本体1に回転可能に設けられている。詳細には、図1及び図2に示すように、ハンドル3は、リール本体1の側方に配置され、リール本体1に回転自在に装着されている。ハンドル3には、駆動軸30が一体回転可能に装着されている。駆動軸30は、第2側板17及び第2側カバーに、回転可能に支持されている。ここでは、駆動軸30は、軸受を介して第2側板17に回転可能に支持され、ワンウェイクラッチ43を介して第2側カバーに回転可能に支持されている。ワンウェイクラッチ43は、糸繰り出し方向の駆動軸30の回転を規制し、糸巻き取り方向の駆動軸30の回転を許可する。ワンウェイクラッチ43は、第2側カバー11に装着され、駆動軸30を支持する。この場合、ハンドル3の回転すなわち駆動軸30の回転は、ワンウェイクラッチ43及びドラグ機構31を介して、駆動ギア35に伝達され、スプール5が回転する。
(スプール)
スプール5は、例えばアルミニウム合金製であり、非磁性の導電体である。図1及び図2に示すように、スプール5は、ハンドル3の回転に連動して回転可能なように、リール本体1に設けられる。図3に示すように、スプール5は、糸巻胴部51と、1対のフランジ部59と、装着部61とを、有している。
以下では、1対のフランジ部59の一方、例えばハンドル3側のフランジ部を、第1フランジ部59aと表現することがある。また、1対のフランジ部59の他方、例えばハンドル3とは反対側のフランジ部を、第2フランジ部59bと表現することがある。
糸巻胴部51の外周には、釣り糸が巻き付けられる。糸巻胴部51は、実質的に筒状に形成されている。糸巻胴部51は、有孔筒部52と、非有孔筒部53とを、有する。
有孔筒部52は、スプール5の軽量化(慣性低減)に寄与する部分である。有孔筒部52は、少なくとも第1フランジ部59a側に、設けられる。ここでは、図3に示すように、有孔筒部52は、第1フランジ部59aの近傍と、第1フランジ部59a及び第2フランジ部59bの軸方向間の中央部とから、構成される。
具体的には、有孔筒部52は、第1本体部54と、複数の孔部54aと、リブ部54bとを、有する。第1本体部54は、実質的に筒状に形成されている。第1本体部54は、ハンドル3側の糸巻胴部51を、形成する。第1本体部54は、第1フランジ部59aに一体に形成され、且つ非有孔筒部53の第2本体部55(後述する)に一体に形成される。
第1本体部54の外周面には、釣り糸が巻き付けられる。第1本体部54の内周面は、非有孔筒部53の第2本体部55の内周面に、接続される。すなわち、第1本体部54の内周面は、第2本体部55の内周面と連続的に形成されている。また、第1本体部54の内周面は、第1フランジ部59aの外面に連続的に接続されている。
複数の孔部54aそれぞれは、第1本体部54を内周面から外周面に向けて貫通する貫通孔である。すなわち、複数の孔部54aそれぞれは、径方向に貫通する貫通孔である。複数の孔部54aは、第1本体部54に設けられている。具体的には、複数の孔部54aは、軸方向において、第1フランジ部59a及び第2フランジ部59bの間の中央部から、第1フランジ部59aまでの範囲で、第1本体部54の周方向に形成されている。言い換えると、複数の孔部54aは、装着部61のウェブ部61b(後述する)の両側、装着部61のウェブ部61bの径方向外側、及び第1フランジ部59aの近傍において、第1本体部54の周方向に形成されている。
なお、有孔筒部52(第1本体部54)の範囲は、複数の孔部54aが設けられた範囲に対応している。詳細には、第1フランジ部59aから最も離れた孔部54aの内周面によって、有孔筒部52及び非有孔筒部53の境界が定義されている。図3では、この境界を破線で示している。
リブ部54bは、有孔筒部52の内周面に、設けられている。ここでは、リブ部54bは、環状に形成されている。具体的には、リブ部54bは、軸方向に隣接する孔部54aの間に配置される。リブ部54bは、有孔筒部52の内周面例えば第1本体部54の内周面から、径方向内側に向けて突出するように、第1本体部54に形成されている。また、リブ部54bは、第1本体部54の内周面において周方向に延びるように、第1本体部54に形成されている。
非有孔筒部53は、スプール制動機構7の磁力によって制動される部分である。図3及び図4に示すように、非有孔筒部53は、第2フランジ部59b側に設けられる。
具体的には、非有孔筒部53は、第2本体部55と、小径部56と、大径部57と、段差部58とを、有している。第2本体部55は、実質的に筒状に形成されている。第2本体部55は、ハンドル3とは反対側の糸巻胴部51を、形成する。第2本体部55は、第1本体部54と一体に形成され、且つ第2フランジ部59bに一体に形成される。
第2本体部55の外周面には、釣り糸が巻き付けられる。すなわち、上述した第1本体部54の外周面及び第2本体部55の外周面によって、糸巻胴部51の外周面が形成される。第2本体部55の内周面は、有孔筒部52の第2本体部55の内周面に、接続される。すなわち、第2本体部55の内周面は、第1本体部54の内周面と連続的に形成されている。
具体的には、第2本体部55の内周面は、小径部56と、大径部57と、段差部58とから、構成される。小径部56は、第2本体部55の内周面を形成する。小径部56は、段差部58を介して大径部57に接続される。また、小径部56は、第1本体部54の内周面に接続される。ここでは、小径部56の内径は、第1本体部54の内径と同径である。
小径部56には、スプール制動機構7が対向可能である。ここでは、小径部56及び段差部58によって形成される隅角部Pが、小径部56に作用するスプール制動機構7の磁力を管理する基準として用いられる。
例えば、隅角部Pは、糸巻胴部51の内周面すなわち小径部56において、周方向に延びている。この隅角部Pによって、糸巻胴部51の内周面における小径部56の基準線が、定義される。ここで、小径部56は、軸方向に同径に形成されている。このため、小径部56において磁束が通過する面積(磁束の通過面積)を、隅角部Pを基準として、容易に管理することができる。例えば、磁束の通過面積は、隅角部Pを基準として、小径部56の軸方向長さに応じて増加するので、スプール5に対する制動力の変化を、安定させることができる。
なお、糸巻胴部51の内周面に隅角部Pを設けない場合は、小径部56の基準を定義することが難しい。この場合、例えば、糸巻胴部51の内周面の両端側には、湾曲部が設けられる。また、両端の湾曲部の間には、同径部が設けられる。この構成では、湾曲部の形成時に、湾曲部及び同径部の境界の位置が、軸方向にばらつくおそれがある。これにより、同径部における磁束の通過面積が、隅角部Pを設ける場合と比較して安定しづらい。すなわち、スプール5に対する制動力の変化を、安定させることが難しい。
大径部57は、小径部56より大径に形成されている。大径部57は、第2本体部55の内周面を形成する。大径部57は、段差部58を介して小径部56に接続される。大径部57は、第2フランジ部59bの外面に、連続的に接続されている。
段差部58は、小径部56及び大径部57を接続する部分である。段差部58は、周方向に延び、小径部56及び大径部57の間において第2本体部55の内周面を形成する。詳細には、段差部58は、小径部56から大径部57に向けて拡径し、第2本体部55の内周面を形成する。
図3に示すように、第1及び第2フランジ部59a,59bは、実質的に皿状に形成されている。第1及び第2フランジ部59a,59bは、糸巻胴部51の両端部に各別に設けられている。詳細には、第1及び第2フランジ部59a,59bそれぞれは、糸巻胴部51の端部から径方向外方に延びるように、糸巻胴部51の端部に一体に形成されている。なお、ここでは、糸巻胴部51の外周面を含む曲面より径方向外側の部分を、第1及び第2フランジ部59a,59bと定義している。第1及び第2フランジ部59a,59bと、糸巻胴部51との境界が、図4に破線で示されている。
図3に示すように、装着部61は、ボス部61aと、ウェブ部61bとを、有している。ボス部61aは、実質的に筒状に形成されている。ボス部61aは、スプール軸16に装着される。詳細には、ボス部61aは、固定手段例えばセレーション結合により、スプール軸16に回転不能に固定されている。ウェブ部61bは、実質的に円環状に形成されている。ウェブ部61bは、ボス部61aと糸巻胴部51とを連結する。詳細には、ウェブ部61bは、ボス部61aの外周面と糸巻胴部51の内周面とに一体に形成されている。
図2及び図3に示すように、スプール軸16は、スプール5と一体回転可能なようにスプール5に装着される。スプール軸16は、第2側板17を貫通して第2側カバー11に延びている。スプール軸16の一端部は、軸受を介して、第2側カバー11に回転自在に支持されている。また、スプール軸16の他端部は、軸受を介して、ブレーキケース19に回転自在に支持されている。さらに、上述したように、スプール軸16は、一端部及び他端部の間において、スプール5(装着12cのボス部61a)に固定されている。これにより、スプール軸16は、スプール5とともに、回転する。
(スプール制動機構)
スプール制動機構7は、磁力を用いてスプール5を制動可能である。詳細には、スプール制動機構7は、スプール5の回転方向と逆方向の力をスプール5に付加して、スプール5を制動する。ここでは、スプール制動機構7は、スプール5の回転方向と逆方向の力を、少なくともスプール5の非有孔筒部53に付加して、スプール5を制動する。
図2に示すように、スプール制動機構7は、リール本体1に設けられる。詳細には、図5及び図6に示すように、スプール制動機構7は、ブレーキケース19を介して、リール本体1に設けられる。ブレーキケース19は、筒部19aと、複数の貫通孔19bとを、有している。筒部19aには、スプール制動機構7が、設けられる。筒部19aの内周部には、スプール軸16を支持するための軸受が、設けられている。複数の貫通孔19bには、スプール制動機構7を操作するための操作つまみ63(後述する)が、係合している。
図5から図7に示すように、スプール制動機構7は、磁性体71と、筒状の第1筒部73と、筒状の第2筒部75と、ばね部材77と、抜け止め部材79とを、有している。なお、この場合、スプール制動機構7をスプール制動部の一例と考えてもよいし、磁性体71をスプール制動部の一例と考えてもよい。
磁性体71は、スプール5に磁力を作用させることにより、スプール5の回転を制動する。磁性体71は、例えば複数の磁石71aから、構成されている。複数の磁石71aとしては、例えば永久磁石が用いられる。
複数の磁石71aは、第2筒部75の外周部に固定されている。ここでは、複数の磁石71aが、周方向に所定の間隔を隔てて、第2筒部75の外周部に固定されている。
図4から図6に示すように、複数の磁石71aは、スプール5における糸巻胴部51の内周面に対向可能に設けられている。詳細には、複数の磁石71aは、糸巻胴部51における非有孔筒部53の内周面に対向可能に設けられている。より詳細には、複数の磁石71aは、非有孔筒部53の小径部56に対向可能に設けられている。
図5及び図6に示すように、第1筒部73は、ブレーキケース19の筒部19aの外周部に装着される。詳細には、第1筒部73の内周部が、ブレーキケース19の筒部19aの外周部に装着される。具体的には、図7に示すように、第1筒部73は、被係合部73aを有する。被係合部73aには、第2筒部75の係合部75a(後述する)が、係合する。例えば、被係合部73aは、凹状に形成されている。
図5及び図6に示すように、第2筒部75は、第1筒部73の外周部に装着される。詳細には、第2筒部75は、第1筒部73の外周部に対して、相対回転可能且つ軸方向移動可能に装着される。具体的には、図7に示すように、第2筒部75は、係合部75aを有する。係合部75aは、第2筒部75の内周部に、設けられている。係合部75aは、第1筒部73に形成された被係合部73aに、係合し案内される。詳細には、係合部75aが被係合部73aに係合しながら移動すると、第2筒部75及び複数の磁石71aが、第1筒部73に対して、相対回転しながら軸方向に移動する。
図5から図7に示すように、ばね部材77は、第2筒部75を付勢するための部材である。詳細には、ばね部材77は、第2筒部75をブレーキケース19側(図5及び図6の左側)に付勢する。ばね部材77は、抜け止め部材79と第2筒部75との間に配置される。ばね部材77は、例えば円錐コイルばねである。ばね部材77は、磁石71aによって吸着されないように、例えばSUS303等の非磁性材料を用いて形成されている。
抜け止め部材79は、ばね部材77を抜け止めするための部材である。抜け止め部材79は、第1筒部73に装着される。具体的には、第1筒部73の雌ねじ部に抜け止め部材79の雄ねじ部を螺合させることによって、抜け止め部材79が第1筒部73に装着される。
このようなスプール制動機構7では、スプール5の回転に応じて、スプール5の制動力が調整される。詳細には、複数の磁石71aとスプール5の糸巻胴部51(非有孔筒部53の小径部56)とが径方向において対向した状態において、スプール5が回転した場合に、スプール5の回転数(回転速度)に応じて、スプール5の制動力が調整される。
具体的には、スプール5が磁石71aの磁界に配置された状態において、スプール5が回転すると、スプール5の回転数に応じた渦電流が発生する。この渦電流の発生によって、スプール5には、回転方向と逆方向の力が付与される。これにより、スプール5は、回転速度に応じて制動される。
すると、スプール5の制動力に対応する反力が、第2筒部75に作用する。この反力によって、第2筒部75が、第1筒部73に対して回転する。この第2筒部75の回転量に応じて、係合部75aが被係合部73aに沿って移動する。すると、第2筒部75及び磁石71aが、第1筒部73に対して回転しながら軸方向に移動する。
これにより、スプール5の糸巻胴部51(非有孔筒部53の小径部56)と磁石71aとの対向面積が変化し、スプール5の制動力が変化する。なお、対向範囲は、径方向においてスプール5の糸巻胴部51(非有孔筒部53の小径部56)が磁石71aに対向している部分の面積に、対応している。
操作つまみ63は、スプール5の初期制動力を設定するためのものである。図5及び図6に示すように、操作つまみ63は、円形のつまみ部63aと、複数の押圧部63bとを、有している。つまみ部63aは、第1側カバー9に形成された開口9aから露出している。複数の押圧部63bそれぞれは、つまみ部63aから突出している。複数の押圧部63bそれぞれは、貫通孔19bに挿通され、第1筒部73を押圧可能に第1筒部73に当接している。
つまみ部63aは、開口9aに回転自在に支持されている。つまみ部63aは、つまみ部63aの回転を押圧部63bの軸方向移動に変換するカム機構(図示しない)を、含んでいる。これにより、つまみ65aを時計回りに回すと、押圧部63bによって第1筒部73が押圧され、第1筒部73、第2筒部75、及び磁石71aが、スプール5に向けて軸方向(図3右側)に移動する。この結果、スプール5を通過する磁束数が増加して、スプール5に対する初期制動力が強くなる。
一方で、つまみ部63aを反時計回りに回すと、第1筒部73、第2筒部75、及び磁石71aが、スプール5から離反するように軸方向(図3左側)に移動する。この結果、スプール5を通過する磁束数が減少して、スプール5に対する初期制動力が弱くなる。
<両軸受リールの動作>
ここでは、リールの動作について説明する。通常状態では、クラッチヨーク39は内方に押されておりクラッチオンの状態である。この結果、ハンドル3からの回転力は、駆動軸30、駆動ギア35、ピニオンギア36、及びスプール軸16を介して、スプール5に伝達される。すなわち、ハンドル3を回転すると、スプール5が糸巻き取り方向に回転する。
キャスティングを行う場合には、バックラッシュを抑えるために、操作つまみ63を回動させて、初期制動力を調整する。全体の制動力を抑えたい場合には、操作つまみ63を反時計回りに回して、磁石71aをスプール5から遠ざければよい。操作つまみ63を反時計回りに回転させると、カム作用によって、磁石71aがスプール5から離反する方向に移動する。これにより、スプール5を通過する磁束の数が、減少して、全体の制動力が弱くなる。
一方で、全体の制動力を大きくしたい場合には、操作つまみ63を時計回りに回して、磁石71aをスプール5に近づければよい。操作つまみ63を時計回りに回転させると、カム作用によって、スプール5に接近する方向に磁石71aが移動する。これにより、スプール5を通過する磁束の数が、増加して、全体の制動力が強くなる。
続いて、クラッチ操作レバー26が下方に押されると、クラッチ操作レバー26の移動によりクラッチヨーク39がハンドル3側に移動し、ピニオンギア36が同方向に移動する。この結果、クラッチオフ状態となる。このクラッチオフ状態では、駆動軸30からの回転は、スプール5及びスプール軸16に伝達されず、スプール5は自由に回転可能になる。クラッチオフ状態において、スプールをサミングしながら、スプール軸16が鉛直面に沿うようにリールを軸方向に傾けて釣竿を振ると、ルアーが投げられ、スプール5が糸繰り出し方向に回転する。
磁石71aがスプール5の糸巻胴部51(非有孔筒部53の小径部56)に対向した状態において、スプール5が回転すると、スプール5に制動力が作用する。このようにスプール5が制動されている状態では、第2筒部75には、制動力に応じた反力が、作用する。そして、この反力によって第2筒部75が回転すると、係合部75aは被係合部73aによって案内され移動する。すると、第2筒部75及び磁石71aが、ハンドル3側(図4右側)に向かって軸方向に移動する。
ここで、スプール5の回転数(回転速度)が増加すると、制動力に応じた反力も大きくなる。すると、第2筒部75及び磁石71aが、スプール5の糸巻胴部51の内周部に向かって移動する。これにより、スプール5に作用する磁束数が、増加し、スプール5に対する制動力が強くなる。一方で、スプール5の回転数(回転速度)が減少するにつれて、制動力に応じた反力は小さくなる。すると、第2筒部75及び磁石71aは、ばね部材77によって、ハンドル3から離反するように、軸方向に移動させられる。これにより、スプール5に作用する磁束数が、減少し、スプール5に対する制動力が弱くなる。このように、スプール5の回転に応じて、スプール5の制動力が、自動的に調節される。
<まとめ>
(1)両軸受リールは、リール本体1と、ハンドル3と、スプール5と、スプール制動機構7とを、備える。ハンドル3は、リール本体1に回転自在に装着される。スプール5は、ハンドル3の回転に連動して回転可能なように、リール本体1に設けられる。スプール5は、糸巻胴部51と、1対のフランジ部59(第1及び第2フランジ部59a,59b)とを、有する。糸巻胴部51は、有孔筒部52と、非有孔筒部53とを、有する。有孔筒部52は、少なくとも1つの孔部54aを有する。非有孔筒部53は、有孔筒部52と一体に形成される。1対のフランジ部59は、糸巻胴部51の両端部に各別に設けられる。スプール制動機構7は、リール本体1に設けられる。スプール制動機構7は、少なくとも非有孔筒部53に磁力を作用させることによって、スプール5を制動可能である。
両軸受リールでは、糸巻胴部51が有孔筒部52を有しているので、スプール5の軽量化を図ることができる。また、スプール制動機構7の磁力を、糸巻胴部51の非有孔筒部53に作用させているので、スプール5に対して制動力を適切に付与できる。
(2)両軸受リールでは、スプール制動機構7が、非有孔筒部53の内周面に対向可能にリール本体1に設けられる。これにより、上記の効果に加えて、両軸受リールの小型化を図ることができる。
(3)両軸受リールでは、有孔筒部52の内周面には、径方向内側に突出するリブ部54bが、形成されている、これにより、有孔筒部52に孔部54aが設けられたとしても、有孔筒部52の強度及び剛性を確保することができる。また、有孔筒部52に孔部54aが設けられたとしても、有孔筒部52及び非有孔筒部53の間における強度差及び剛性差を、小さくすることができる。すなわち、有孔筒部及び非有孔筒部の間の変形量の差を、抑制することができる。
(4)両軸受リールでは、リブ部54bは、有孔筒部52の内周面において周方向に延びる環状リブである。これにより、有孔筒部52及び非有孔筒部53の間の変形量の差を、より効果的に抑制することができる。
(5)両軸受リールでは、非有孔筒部53の内周面が、小径部56と、小径部56より大径の大径部57とを、有する。スプール制動機構7は、小径部56に対向可能にリール本体1に設けられる。
この場合、非有孔筒部53の内周面における小径部56と大径部57との境界を基準として、小径部56に作用するスプール制動機構7の磁力を管理することができる。すなわち、スプール5に対して制動力を適切に付与できる。
(6)両軸受リールでは、非有孔筒部53の内周面が、周方向に延びる段差部58を、さらに有する。段差部58は、小径部56及び大径部57を接続する、このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
(7)両軸受リールでは、小径部56が段差部58を介して大径部57に接続され、大径部57が一方のフランジ部59(第2フランジ部59b)に連続的に形成される。このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
(8)両軸受リールのスプール5は、筒状の糸巻胴部51と、1対のフランジ部59とを、備える。糸巻胴部51の外周には、釣り糸が巻き付けられる。1対のフランジ部59は、糸巻胴部51の両端部に各別に設けられる。
ここで、糸巻胴部51は、有孔筒部52と、非有孔筒部53とを、有する。有孔筒部52は、1対のフランジ部59の一方側(第1フランジ部59a側)に設けられる。
有孔筒部52は、外周に孔部54aを有する。非有孔筒部53は、1対のフランジ部59の他方側(第2フランジ部59b側)に設けられる。このような構成において、糸巻胴部51の非有孔筒部53の内周面に磁性体71(磁石71a)を対向させれば、軽量化を図ることができるとともに、従来技術のような有底筒状の導電体を追加することなくスプール5に対して制動力を適切に付与できる。
<他の実施形態>
(a)前記実施形態では、複数の磁石71aが、第2筒部75の外周部に周方向に間隔を隔てて配置されているが、磁石71aの数や間隔は任意に設定可能である。
(b)前記実施形態では、第2筒部75の軸方向への移動量を、十分に確保するために、ばね部材77が円錐コイルばねである場合の例を示したが、ばね部材77は、外形が一定のコイルばねであってもよい。
(c)前記実施形態では、糸巻胴部51の内周面において、小径部56及び大径部57の間には、段差部58が設けられる場合の例を示した。これに代えて、小径部56及び大径部57の間に、環状溝部を設けてもよい。この場合、小径部56及び溝部の壁部によって形成される隅角部Pが、小径部56に作用するスプール制動機構7の磁力を管理する基準として用いることができる。
(d)前記実施形態では、複数の孔部54aが、軸方向において、1対のフランジ部59の軸方向間の中央部から第1フランジ部59aまでの範囲に、形成される場合の例を、示した。複数の孔部54aの形成範囲は、前記実施形態に限定されない。例えば、複数の孔部54aが、少なくとも第1フランジ部59a側の近傍に配置されていれば、複数の孔部54aの形成範囲は、どのように設定してもよい。例えば、複数の孔部54aは、1対のフランジ部59の軸方向間の中央部には形成せずに、第1フランジ部59aの近傍にのみ形成してもよい。
(e)前記実施形態では、リブ部54bが、有孔筒部53(第1本体部54)の内周面において環状に形成される場合の例を示したが、リブ部54bの形状は、どのように形成してもよい。例えば、リブ部54bは、有孔筒部53(第1本体部54)の内周面において、周方向に断続的に形成されていてもよい。
(f)前記実施形態では、1つのリブ部54bが有孔筒部53(第1本体部54)の内周面に形成される場合の例を示したが、リブ部54bの数は、どうのように設定してもよい。例えば、複数のリブ部54bを、有孔筒部53(第1本体部54)の内周面に軸方向に並べて形成してもよい。
(g)前記実施形態では、スプール制動機構7において磁性体71(磁石71a)を軸方向に移動させることによって、スプール5に対する制動力が、調整される場合の例を示したが、スプール制動機構7の構成は、他の構成であってもよい。例えば、磁性体71(磁石71a)を図4及び図6の位置で固定し、磁性体71(磁石71a)を径方向に移動させたり、磁性体71(磁石71a)及び非有孔筒部53の径方向間において筒状の遮蔽板を軸方向に移動させたりしてもよい。この場合、段差部58を設けることなく、非有孔筒部を通過する磁束数を、調整することができる。
本発明は、両軸受リールに広く適用できる。
1 リール本体
3 ハンドル
5 スプール
7 スプール制動機構
51 糸巻胴部
52 有孔筒部
53 非有孔筒部
54a 孔部
54b リブ部
56 小径部
57 大径部
58 段差部
59 フランジ部
本発明は、両軸受リールに関する。
従来の両軸受リールでは、スプールの軽量化を図るために、スプールの糸巻胴部には、複数の孔部が形成されている(特許文献1を参照)。詳細には、このスプールでは、複数の孔部が、1対のフランジ部の間において糸巻胴部に全体的に設けられている。
一方で、バックラッシュを防止するために、磁力によってスプールを制動するスプール制動装置が、提案されている(特許文献2、3を参照)。このスプール制動装置では、スプールを通過する磁束数に応じて、スプールの制動力を変化させている。
特開2001−145445号公報
特開2014−200227号公報
特開平10−309158号公報
特許文献1の両軸受リールでは、スプールの糸巻胴部には複数の孔部が全体的に形成されているので、このスプールを特許文献2のように制動するためには特許文献3のように、有底筒状の導電体をスプールと一体回転させる必要があった。このため、孔部を設けて軽量化(慣性低減)しても、導電体の重量(慣性)が増加してしまうため、スプールを十分に制動することが難しかった。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、スプールの軽量化を図ることができ、且つスプールに対して制動力を適切に付与できる両軸受リールを、提供することにある。
(1)本発明の一側面に係る両軸受リールは、リール本体と、ハンドルと、スプールと、スプール制動部とを、備える。ハンドルは、リール本体に回転自在に装着される。スプールは、ハンドルの回転に連動して回転可能なように、リール本体に設けられる。スプールは、糸巻胴部と、1対のフランジ部とを、有する。糸巻胴部は、有孔筒部と、非有孔筒部とを、有する。有孔筒部は、少なくとも1つの孔部を有する。非有孔筒部は、有孔筒部と一体に形成される。1対のフランジ部は、糸巻胴部の両端部に各別に設けられる。スプール制動部は、リール本体に設けられる。スプール制動部は、少なくとも非有孔筒部に磁力を作用させることによって、スプールを制動可能である。
本両軸受リールでは、糸巻胴部が有孔筒部を有しているので、スプールの軽量化を図ることができる。また、スプール制動部の磁力を、糸巻胴部の非有孔筒部に作用させているので、スプールに対して制動力を適切に付与できる。
(2)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、スプール制動部が、非有孔筒部の内周面に対向可能にリール本体に設けられる。これにより、上記の効果に加えて、両軸受リールの小型化を図ることができる。
(3)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、有孔筒部の内周面には、径方向内側に突出するリブ部が、形成されている、これにより、有孔筒部に孔部が設けられたとしても、有孔筒部の強度及び剛性を確保することができる。また、有孔筒部に孔部が設けられたとしても、有孔筒部及び非有孔筒部の間における強度差及び剛性差を、小さくすることができる。すなわち、有孔筒部及び非有孔筒部の間の変形量の差を、抑制することができる。
(4)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、リブ部は、有孔筒部の内周面において周方向に延びる環状リブである。これにより、有孔筒部及び非有孔筒部の間の変形量の差を、より効果的に抑制することができる。
(5)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、非有孔筒部の内周面が、小径部と、小径部より大径の大径部とを、有する。スプール制動部は、小径部に対向可能にリール本体に設けられる。
この場合、非有孔筒部の内周面における小径部と大径部との境界を基準として、小径部に作用するスプール制動部の磁力を管理することができる。すなわち、スプールに対して制動力を適切に付与できる。
(6)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、非有孔筒部の内周面が、周方向に延びる段差部を、さらに有する。段差部は、小径部及び大径部を接続する、このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
(7)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、小径部が段差部を介して大径部に接続され、大径部が一方のフランジ部に連続的に形成される。このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図。
リール本体内部の構成を示す断面図。
スプールの断面図及び側面図。
スプールの部分拡大断面図。
スプール及びスプール制動機構の拡大断面図。
スプール及びスプール制動機構の拡大断面図(第2筒部が軸方向に移動した場合)。
スプール制動機構の分解斜視図。
<両軸受リールの構成>
図1に本発明の一実施形態が採用された両軸受リールを示す。図1及び図2に示すように、両軸受リールは、リール本体1と、ハンドル3と、スプール5と、スプール制動機構7とを、備えている。
以下では、釣り糸を前方に繰り出す方向を"前方"、釣り糸を前方に繰り出す方向とは反対の方向を"後方"と、表現することがある。また、リール本体1が釣り竿に装着される側を"下方"、リール本体1が釣り竿に装着される側とは反対の方向を"上方"と、表現することがある。
また、スプール軸16が延びる方向、ピニオンギア36が延びる方向、及び螺軸23が延びる方向は、実質的に同じ方向である。このため、これらの方向を、以下では"軸方向"と表現することがある。なお、スプール軸16、ピニオンギア36、及び螺軸23は、後述する。
(リール本体)
リール本体1は、図2に示すように、フレーム4と、第1側カバー9及び第2側カバー11と、フレーム4の上部に装着されたサムレスト13(図1を参照)とを、有している。
フレーム4は、第1側板15と、第2側板17と、複数の連結部(図示しない)とを、有している。第1側板15及び第2側板17は、所定の間隔を開けて互いに対向するように配置されている。詳細には、第1側板15はハンドル3とは反対側に設けられ、第2側板17はハンドル3側に設けられている。第1側板15及び第2側板17には、スプール5を配置可能な開口15a,17aが、形成されている。複数の連結部は、第1側板15及び第2側板17を連結する。
開口15aには、ブレーキケース19が固定されている。ブレーキケース19は、有底筒状のケース部材である。ブレーキケース19は、第1側板15の開口15aに、例えばバヨネット構造によって、装着される。また、開口15aには、キャスティング時のバックラッシュを抑えるためのスプール制動機構7が、ブレーキケース19を介して、配置される。
第1側カバー9は、ハンドル3とは反対側において、フレーム4例えば第1側板15に、装着されている。第2側カバー11は、ハンドル3側において、フレーム4例えば第2側板17に、着脱自在に装着されている。第1側カバー9及びブレーキケース19の間には、スプール制動機構7を操作するための操作つまみ63が、配置される。
フレーム4には、スプール5と、レベルワインド機構21と、クラッチ操作レバー26と、が配置されている。
レベルワインド機構21は、スプール5に釣り糸を均一に巻き付けるための機構である。レベルワインド機構21は、ガイド筒22と、螺軸23と、ラインガイド24とを、有している。ガイド筒22は、ラインガイド24を、軸方向に案内する。ガイド筒22は、第1側板15及び第2側板17の間に固定される。螺軸23は、ガイド筒22内に回転自在に配置される。螺軸23には螺旋状溝が形成されており、螺旋状溝にはラインガイド24が噛み合っている。
この構成によって、螺軸23がギア機構25(後述する)によって回転させられると、ラインガイド24が、ガイド筒22に沿って往復移動する。これにより、ラインガイド24に挿通された釣り糸が、スプール5に均一に巻き付けられる。
クラッチ操作レバー26は、第1側板15及び第2側板17の間において、スプール5の後方に配置されている。クラッチ操作レバー26は、上下方向にスライド可能に構成されている。クラッチ操作レバー26は、クラッチカム(図示しない)を介して、クラッチ係脱機構27(後述する)を作動可能である。
フレーム4及び第2側カバー11の間には、ギア機構25と、クラッチ係脱機構27と、クラッチ機構29と、ドラグ機構31と、キャスティングコントロール機構33とが、配置されている。
ギア機構25は、ハンドル3からの回転力を、スプール5及びレベルワインド機構21に伝える。ギア機構25は、駆動ギア35と、ピニオンギア36と、第1ギア37と、第2ギア38とを、有している。
駆動ギア35は、駆動軸30に対して、一体回転可能且つ相対回転可能に、装着されている。詳細には、駆動ギア35は、ドラグ機構31によって、駆動軸30に対して、一体回転したり相対回転したりする。ピニオンギア36は、第2側板17に回転可能に支持されている。ピニオンギア36は、スプール軸16に軸方向に移動自在に装着されている。ピニオンギア36は、実質的に筒状に形成されている。ピニオンギア36の中心には、スプール軸16が挿通される。
ピニオンギア36は、駆動ギア35に噛み合う。第1ギア37は、螺軸23の端部に固定されている。第2ギア38は、駆動軸30に回転不能に固定され、第1ギア37に噛み合う。この構成によって、駆動軸30が回転すると、第2ギア38に噛み合う第1ギア37が回転する。すると、この第1ギア37の回転によって、螺軸23が回転する。これにより、上述したように、レベルワインド機構21が作動する。
クラッチ係脱機構27は、クラッチ操作レバー26の操作に応じて、クラッチ機構29の係脱を行う。クラッチ係脱機構27は、クラッチヨーク39を有している。クラッチ係脱機構27は、クラッチ操作レバー26の操作により、クラッチヨーク39をスプール軸16の軸芯と平行に移動させる。これにより、クラッチ機構29がオフになり、スプール5が回転自在になる。また、クラッチ係脱機構27は、駆動軸30が糸巻き取り方向に回転すると、クラッチ機構29が自動的にオンになるように、クラッチヨーク39を移動させる。
クラッチ機構29は、駆動軸30及びスプール軸16の連結と、駆動軸30及びスプール軸16の連結解除を行う。クラッチ機構29は、ピニオンギア36の噛合部36bと、スプール軸16を径方向に貫通するクラッチピン16aとから、構成される。
ここで、ピニオンギア36は、歯部36aと、噛合部36bと、くびれ部36cとを、有している。歯部36aは、ピニオンギア36の一端部に設けられ、駆動ギア35に噛み合う。噛合部36bは、ピニオンギア36の他端部に設けられる。噛合部36bには、クラッチピン16aに係合可能な凹部が、形成されている。くびれ部36cは、歯部36aと噛合部36bとの間に、設けられている。くびれ部36cには、クラッチ係脱機構27のクラッチヨーク39が係合している。
クラッチピン16aは、噛合部36bの凹部に係合可能である。例えば、クラッチ係脱機構27のクラッチヨーク39によってピニオンギア36がスプール軸16に沿って移動すると、噛合部36bの凹部がクラッチピン16aから離脱する。すると、駆動軸30及びスプール軸16の連結が、解除される。この場合、駆動軸30からの回転は、スプール5に伝達されない。すなわち、この状態が、クラッチオフ状態である。
一方で、駆動軸30が糸巻き取り方向に回転すると、クラッチピン16aが噛合部36bの凹部に係合する。すると、駆動軸30及びスプール軸16が、連結される。この場合、駆動軸30からの回転は、スプール5に伝達される。すなわち、この状態が、クラッチオン状態である。なお、通常状態は、クラッチオン状態である。
ドラグ機構31は、糸繰り出し時にスプール5を制動する。詳細には、ドラグ力を超える力で釣り糸が引っ張られた場合、ドラグ機構31が作動し、スプール5は糸繰り出し方向に回転する。
ドラグ機構31は、スタードラグ32と、摩擦機構34とを有する。スタードラグ32は、ドラグ力を調節するためのものである。詳細には、スタードラグ32を回転させることによって、摩擦機構34の押圧状態が変化し、ドラグ力が調節される。
摩擦機構34は、複数の制動板から構成される。摩擦機構34は、ワンウェイクラッチ43、及び駆動ギア35の間に配置される。例えば、ドラグ力を超える力で釣り糸が引っ張られ、スプール5が糸繰り出し方向に回転した場合、摩擦機構34が作動し、駆動ギア35は駆動軸30に対して相対回転する。
キャスティングコントロール機構33は、スプール軸16の両端を挟持することによって、スプール5を制動する。キャスティングコントロール機構33は、キャップ40と、第1摩擦プレート41と、第2摩擦プレート42とを、備えている。第1摩擦プレート41及び第2摩擦プレート42は、スプール軸16の両端に接触して、スプール軸16を挟持する。例えば、キャップ40が回転された場合、第1摩擦プレート41及び第2摩擦プレート42によってスプール軸16を挟持する挟持力が、調整される。これにより、スプール5の制動力が調整される。
(ハンドル)
ハンドル3は、リール本体1に回転可能に設けられている。詳細には、図1及び図2に示すように、ハンドル3は、リール本体1の側方に配置され、リール本体1に回転自在に装着されている。ハンドル3には、駆動軸30が一体回転可能に装着されている。駆動軸30は、第2側板17及び第2側カバーに、回転可能に支持されている。ここでは、駆動軸30は、軸受を介して第2側板17に回転可能に支持され、ワンウェイクラッチ43を介して第2側カバーに回転可能に支持されている。ワンウェイクラッチ43は、糸繰り出し方向の駆動軸30の回転を規制し、糸巻き取り方向の駆動軸30の回転を許可する。ワンウェイクラッチ43は、第2側カバー11に装着され、駆動軸30を支持する。この場合、ハンドル3の回転すなわち駆動軸30の回転は、ワンウェイクラッチ43及びドラグ機構31を介して、駆動ギア35に伝達され、スプール5が回転する。
(スプール)
スプール5は、例えばアルミニウム合金製であり、非磁性の導電体である。図1及び図2に示すように、スプール5は、ハンドル3の回転に連動して回転可能なように、リール本体1に設けられる。図3に示すように、スプール5は、糸巻胴部51と、1対のフランジ部59と、装着部61とを、有している。
以下では、1対のフランジ部59の一方、例えばハンドル3側のフランジ部を、第1フランジ部59aと表現することがある。また、1対のフランジ部59の他方、例えばハンドル3とは反対側のフランジ部を、第2フランジ部59bと表現することがある。
糸巻胴部51の外周には、釣り糸が巻き付けられる。糸巻胴部51は、実質的に筒状に形成されている。糸巻胴部51は、有孔筒部52と、非有孔筒部53とを、有する。
有孔筒部52は、スプール5の軽量化(慣性低減)に寄与する部分である。有孔筒部52は、少なくとも第1フランジ部59a側に、設けられる。ここでは、図3に示すように、有孔筒部52は、第1フランジ部59aの近傍と、第1フランジ部59a及び第2フランジ部59bの軸方向間の中央部とから、構成される。
具体的には、有孔筒部52は、第1本体部54と、複数の孔部54aと、リブ部54bとを、有する。第1本体部54は、実質的に筒状に形成されている。第1本体部54は、ハンドル3側の糸巻胴部51を、形成する。第1本体部54は、第1フランジ部59aに一体に形成され、且つ非有孔筒部53の第2本体部55(後述する)に一体に形成される。
第1本体部54の外周面には、釣り糸が巻き付けられる。第1本体部54の内周面は、非有孔筒部53の第2本体部55の内周面に、接続される。すなわち、第1本体部54の内周面は、第2本体部55の内周面と連続的に形成されている。また、第1本体部54の内周面は、第1フランジ部59aの外面に連続的に接続されている。
複数の孔部54aそれぞれは、第1本体部54を内周面から外周面に向けて貫通する貫通孔である。すなわち、複数の孔部54aそれぞれは、径方向に貫通する貫通孔である。複数の孔部54aは、第1本体部54に設けられている。具体的には、複数の孔部54aは、軸方向において、第1フランジ部59a及び第2フランジ部59bの間の中央部から、第1フランジ部59aまでの範囲で、第1本体部54の周方向に形成されている。言い換えると、複数の孔部54aは、装着部61のウェブ部61b(後述する)の両側、装着部61のウェブ部61bの径方向外側、及び第1フランジ部59aの近傍において、第1本体部54の周方向に形成されている。
なお、有孔筒部52(第1本体部54)の範囲は、複数の孔部54aが設けられた範囲に対応している。詳細には、第1フランジ部59aから最も離れた孔部54aの内周面によって、有孔筒部52及び非有孔筒部53の境界が定義されている。図3では、この境界を破線で示している。
リブ部54bは、有孔筒部52の内周面に、設けられている。ここでは、リブ部54bは、環状に形成されている。具体的には、リブ部54bは、軸方向に隣接する孔部54aの間に配置される。リブ部54bは、有孔筒部52の内周面例えば第1本体部54の内周面から、径方向内側に向けて突出するように、第1本体部54に形成されている。また、リブ部54bは、第1本体部54の内周面において周方向に延びるように、第1本体部54に形成されている。
非有孔筒部53は、スプール制動機構7の磁力によって制動される部分である。図3及び図4に示すように、非有孔筒部53は、第2フランジ部59b側に設けられる。
具体的には、非有孔筒部53は、第2本体部55と、小径部56と、大径部57と、段差部58とを、有している。第2本体部55は、実質的に筒状に形成されている。第2本体部55は、ハンドル3とは反対側の糸巻胴部51を、形成する。第2本体部55は、第1本体部54と一体に形成され、且つ第2フランジ部59bに一体に形成される。
第2本体部55の外周面には、釣り糸が巻き付けられる。すなわち、上述した第1本体部54の外周面及び第2本体部55の外周面によって、糸巻胴部51の外周面が形成される。第2本体部55の内周面は、有孔筒部52の第2本体部55の内周面に、接続される。すなわち、第2本体部55の内周面は、第1本体部54の内周面と連続的に形成されている。
具体的には、第2本体部55の内周面は、小径部56と、大径部57と、段差部58とから、構成される。小径部56は、第2本体部55の内周面を形成する。小径部56は、段差部58を介して大径部57に接続される。また、小径部56は、第1本体部54の内周面に接続される。ここでは、小径部56の内径は、第1本体部54の内径と同径である。
小径部56には、スプール制動機構7が対向可能である。ここでは、小径部56及び段差部58によって形成される隅角部Pが、小径部56に作用するスプール制動機構7の磁力を管理する基準として用いられる。
例えば、隅角部Pは、糸巻胴部51の内周面すなわち小径部56において、周方向に延びている。この隅角部Pによって、糸巻胴部51の内周面における小径部56の基準線が、定義される。ここで、小径部56は、軸方向に同径に形成されている。このため、小径部56において磁束が通過する面積(磁束の通過面積)を、隅角部Pを基準として、容易に管理することができる。例えば、磁束の通過面積は、隅角部Pを基準として、小径部56の軸方向長さに応じて増加するので、スプール5に対する制動力の変化を、安定させることができる。
なお、糸巻胴部51の内周面に隅角部Pを設けない場合は、小径部56の基準を定義することが難しい。この場合、例えば、糸巻胴部51の内周面の両端側には、湾曲部が設けられる。また、両端の湾曲部の間には、同径部が設けられる。この構成では、湾曲部の形成時に、湾曲部及び同径部の境界の位置が、軸方向にばらつくおそれがある。これにより、同径部における磁束の通過面積が、隅角部Pを設ける場合と比較して安定しづらい。すなわち、スプール5に対する制動力の変化を、安定させることが難しい。
大径部57は、小径部56より大径に形成されている。大径部57は、第2本体部55の内周面を形成する。大径部57は、段差部58を介して小径部56に接続される。大径部57は、第2フランジ部59bの外面に、連続的に接続されている。
段差部58は、小径部56及び大径部57を接続する部分である。段差部58は、周方向に延び、小径部56及び大径部57の間において第2本体部55の内周面を形成する。詳細には、段差部58は、小径部56から大径部57に向けて拡径し、第2本体部55の内周面を形成する。
図3に示すように、第1及び第2フランジ部59a,59bは、実質的に皿状に形成されている。第1及び第2フランジ部59a,59bは、糸巻胴部51の両端部に各別に設けられている。詳細には、第1及び第2フランジ部59a,59bそれぞれは、糸巻胴部51の端部から径方向外方に延びるように、糸巻胴部51の端部に一体に形成されている。なお、ここでは、糸巻胴部51の外周面を含む曲面より径方向外側の部分を、第1及び第2フランジ部59a,59bと定義している。第1及び第2フランジ部59a,59bと、糸巻胴部51との境界が、図4に破線で示されている。
図3に示すように、装着部61は、ボス部61aと、ウェブ部61bとを、有している。ボス部61aは、実質的に筒状に形成されている。ボス部61aは、スプール軸16に装着される。詳細には、ボス部61aは、固定手段例えばセレーション結合により、スプール軸16に回転不能に固定されている。ウェブ部61bは、実質的に円環状に形成されている。ウェブ部61bは、ボス部61aと糸巻胴部51とを連結する。詳細には、ウェブ部61bは、ボス部61aの外周面と糸巻胴部51の内周面とに一体に形成されている。
図2及び図3に示すように、スプール軸16は、スプール5と一体回転可能なようにスプール5に装着される。スプール軸16は、第2側板17を貫通して第2側カバー11に延びている。スプール軸16の一端部は、軸受を介して、第2側カバー11に回転自在に支持されている。また、スプール軸16の他端部は、軸受を介して、ブレーキケース19に回転自在に支持されている。さらに、上述したように、スプール軸16は、一端部及び他端部の間において、スプール5(装着12cのボス部61a)に固定されている。これにより、スプール軸16は、スプール5とともに、回転する。
(スプール制動機構)
スプール制動機構7は、磁力を用いてスプール5を制動可能である。詳細には、スプール制動機構7は、スプール5の回転方向と逆方向の力をスプール5に付加して、スプール5を制動する。ここでは、スプール制動機構7は、スプール5の回転方向と逆方向の力を、少なくともスプール5の非有孔筒部53に付加して、スプール5を制動する。
図2に示すように、スプール制動機構7は、リール本体1に設けられる。詳細には、図5及び図6に示すように、スプール制動機構7は、ブレーキケース19を介して、リール本体1に設けられる。ブレーキケース19は、筒部19aと、複数の貫通孔19bとを、有している。筒部19aには、スプール制動機構7が、設けられる。筒部19aの内周部には、スプール軸16を支持するための軸受が、設けられている。複数の貫通孔19bには、スプール制動機構7を操作するための操作つまみ63(後述する)が、係合している。
図5から図7に示すように、スプール制動機構7は、磁性体71と、筒状の第1筒部73と、筒状の第2筒部75と、ばね部材77と、抜け止め部材79とを、有している。なお、この場合、スプール制動機構7をスプール制動部の一例と考えてもよいし、磁性体71をスプール制動部の一例と考えてもよい。
磁性体71は、スプール5に磁力を作用させることにより、スプール5の回転を制動する。磁性体71は、例えば複数の磁石71aから、構成されている。複数の磁石71aとしては、例えば永久磁石が用いられる。
複数の磁石71aは、第2筒部75の外周部に固定されている。ここでは、複数の磁石71aが、周方向に所定の間隔を隔てて、第2筒部75の外周部に固定されている。
図4から図6に示すように、複数の磁石71aは、スプール5における糸巻胴部51の内周面に対向可能に設けられている。詳細には、複数の磁石71aは、糸巻胴部51における非有孔筒部53の内周面に対向可能に設けられている。より詳細には、複数の磁石71aは、非有孔筒部53の小径部56に対向可能に設けられている。
図5及び図6に示すように、第1筒部73は、ブレーキケース19の筒部19aの外周部に装着される。詳細には、第1筒部73の内周部が、ブレーキケース19の筒部19aの外周部に装着される。具体的には、図7に示すように、第1筒部73は、被係合部73aを有する。被係合部73aには、第2筒部75の係合部75a(後述する)が、係合する。例えば、被係合部73aは、凹状に形成されている。
図5及び図6に示すように、第2筒部75は、第1筒部73の外周部に装着される。詳細には、第2筒部75は、第1筒部73の外周部に対して、相対回転可能且つ軸方向移動可能に装着される。具体的には、図7に示すように、第2筒部75は、係合部75aを有する。係合部75aは、第2筒部75の内周部に、設けられている。係合部75aは、第1筒部73に形成された被係合部73aに、係合し案内される。詳細には、係合部75aが被係合部73aに係合しながら移動すると、第2筒部75及び複数の磁石71aが、第1筒部73に対して、相対回転しながら軸方向に移動する。
図5から図7に示すように、ばね部材77は、第2筒部75を付勢するための部材である。詳細には、ばね部材77は、第2筒部75をブレーキケース19側(図5及び図6の左側)に付勢する。ばね部材77は、抜け止め部材79と第2筒部75との間に配置される。ばね部材77は、例えば円錐コイルばねである。ばね部材77は、磁石71aによって吸着されないように、例えばSUS303等の非磁性材料を用いて形成されている。
抜け止め部材79は、ばね部材77を抜け止めするための部材である。抜け止め部材79は、第1筒部73に装着される。具体的には、第1筒部73の雌ねじ部に抜け止め部材79の雄ねじ部を螺合させることによって、抜け止め部材79が第1筒部73に装着される。
このようなスプール制動機構7では、スプール5の回転に応じて、スプール5の制動力が調整される。詳細には、複数の磁石71aとスプール5の糸巻胴部51(非有孔筒部53の小径部56)とが径方向において対向した状態において、スプール5が回転した場合に、スプール5の回転数(回転速度)に応じて、スプール5の制動力が調整される。
具体的には、スプール5が磁石71aの磁界に配置された状態において、スプール5が回転すると、スプール5の回転数に応じた渦電流が発生する。この渦電流の発生によって、スプール5には、回転方向と逆方向の力が付与される。これにより、スプール5は、回転速度に応じて制動される。
すると、スプール5の制動力に対応する反力が、第2筒部75に作用する。この反力によって、第2筒部75が、第1筒部73に対して回転する。この第2筒部75の回転量に応じて、係合部75aが被係合部73aに沿って移動する。すると、第2筒部75及び磁石71aが、第1筒部73に対して回転しながら軸方向に移動する。
これにより、スプール5の糸巻胴部51(非有孔筒部53の小径部56)と磁石71aとの対向面積が変化し、スプール5の制動力が変化する。なお、対向範囲は、径方向においてスプール5の糸巻胴部51(非有孔筒部53の小径部56)が磁石71aに対向している部分の面積に、対応している。
操作つまみ63は、スプール5の初期制動力を設定するためのものである。図5及び図6に示すように、操作つまみ63は、円形のつまみ部63aと、複数の押圧部63bとを、有している。つまみ部63aは、第1側カバー9に形成された開口9aから露出している。複数の押圧部63bそれぞれは、つまみ部63aから突出している。複数の押圧部63bそれぞれは、貫通孔19bに挿通され、第1筒部73を押圧可能に第1筒部73に当接している。
つまみ部63aは、開口9aに回転自在に支持されている。つまみ部63aは、つまみ部63aの回転を押圧部63bの軸方向移動に変換するカム機構(図示しない)を、含んでいる。これにより、つまみ65aを時計回りに回すと、押圧部63bによって第1筒部73が押圧され、第1筒部73、第2筒部75、及び磁石71aが、スプール5に向けて軸方向(図3右側)に移動する。この結果、スプール5を通過する磁束数が増加して、スプール5に対する初期制動力が強くなる。
一方で、つまみ部63aを反時計回りに回すと、第1筒部73、第2筒部75、及び磁石71aが、スプール5から離反するように軸方向(図3左側)に移動する。この結果、スプール5を通過する磁束数が減少して、スプール5に対する初期制動力が弱くなる。
<両軸受リールの動作>
ここでは、リールの動作について説明する。通常状態では、クラッチヨーク39は内方に押されておりクラッチオンの状態である。この結果、ハンドル3からの回転力は、駆動軸30、駆動ギア35、ピニオンギア36、及びスプール軸16を介して、スプール5に伝達される。すなわち、ハンドル3を回転すると、スプール5が糸巻き取り方向に回転する。
キャスティングを行う場合には、バックラッシュを抑えるために、操作つまみ63を回動させて、初期制動力を調整する。全体の制動力を抑えたい場合には、操作つまみ63を反時計回りに回して、磁石71aをスプール5から遠ざければよい。操作つまみ63を反時計回りに回転させると、カム作用によって、磁石71aがスプール5から離反する方向に移動する。これにより、スプール5を通過する磁束の数が、減少して、全体の制動力が弱くなる。
一方で、全体の制動力を大きくしたい場合には、操作つまみ63を時計回りに回して、磁石71aをスプール5に近づければよい。操作つまみ63を時計回りに回転させると、カム作用によって、スプール5に接近する方向に磁石71aが移動する。これにより、スプール5を通過する磁束の数が、増加して、全体の制動力が強くなる。
続いて、クラッチ操作レバー26が下方に押されると、クラッチ操作レバー26の移動によりクラッチヨーク39がハンドル3側に移動し、ピニオンギア36が同方向に移動する。この結果、クラッチオフ状態となる。このクラッチオフ状態では、駆動軸30からの回転は、スプール5及びスプール軸16に伝達されず、スプール5は自由に回転可能になる。クラッチオフ状態において、スプールをサミングしながら、スプール軸16が鉛直面に沿うようにリールを軸方向に傾けて釣竿を振ると、ルアーが投げられ、スプール5が糸繰り出し方向に回転する。
磁石71aがスプール5の糸巻胴部51(非有孔筒部53の小径部56)に対向した状態において、スプール5が回転すると、スプール5に制動力が作用する。このようにスプール5が制動されている状態では、第2筒部75には、制動力に応じた反力が、作用する。そして、この反力によって第2筒部75が回転すると、係合部75aは被係合部73aによって案内され移動する。すると、第2筒部75及び磁石71aが、ハンドル3側(図4右側)に向かって軸方向に移動する。
ここで、スプール5の回転数(回転速度)が増加すると、制動力に応じた反力も大きくなる。すると、第2筒部75及び磁石71aが、スプール5の糸巻胴部51の内周部に向かって移動する。これにより、スプール5に作用する磁束数が、増加し、スプール5に対する制動力が強くなる。一方で、スプール5の回転数(回転速度)が減少するにつれて、制動力に応じた反力は小さくなる。すると、第2筒部75及び磁石71aは、ばね部材77によって、ハンドル3から離反するように、軸方向に移動させられる。これにより、スプール5に作用する磁束数が、減少し、スプール5に対する制動力が弱くなる。このように、スプール5の回転に応じて、スプール5の制動力が、自動的に調節される。
<まとめ>
(1)両軸受リールは、リール本体1と、ハンドル3と、スプール5と、スプール制動機構7とを、備える。ハンドル3は、リール本体1に回転自在に装着される。スプール5は、ハンドル3の回転に連動して回転可能なように、リール本体1に設けられる。スプール5は、糸巻胴部51と、1対のフランジ部59(第1及び第2フランジ部59a,59b)とを、有する。糸巻胴部51は、有孔筒部52と、非有孔筒部53とを、有する。有孔筒部52は、少なくとも1つの孔部54aを有する。非有孔筒部53は、有孔筒部52と一体に形成される。1対のフランジ部59は、糸巻胴部51の両端部に各別に設けられる。スプール制動機構7は、リール本体1に設けられる。スプール制動機構7は、少なくとも非有孔筒部53に磁力を作用させることによって、スプール5を制動可能である。
両軸受リールでは、糸巻胴部51が有孔筒部52を有しているので、スプール5の軽量化を図ることができる。また、スプール制動機構7の磁力を、糸巻胴部51の非有孔筒部53に作用させているので、スプール5に対して制動力を適切に付与できる。
(2)両軸受リールでは、スプール制動機構7が、非有孔筒部53の内周面に対向可能にリール本体1に設けられる。これにより、上記の効果に加えて、両軸受リールの小型化を図ることができる。
(3)両軸受リールでは、有孔筒部52の内周面には、径方向内側に突出するリブ部54bが、形成されている、これにより、有孔筒部52に孔部54aが設けられたとしても、有孔筒部52の強度及び剛性を確保することができる。また、有孔筒部52に孔部54aが設けられたとしても、有孔筒部52及び非有孔筒部53の間における強度差及び剛性差を、小さくすることができる。すなわち、有孔筒部及び非有孔筒部の間の変形量の差を、抑制することができる。
(4)両軸受リールでは、リブ部54bは、有孔筒部52の内周面において周方向に延びる環状リブである。これにより、有孔筒部52及び非有孔筒部53の間の変形量の差を、より効果的に抑制することができる。
(5)両軸受リールでは、非有孔筒部53の内周面が、小径部56と、小径部56より大径の大径部57とを、有する。スプール制動機構7は、小径部56に対向可能にリール本体1に設けられる。
この場合、非有孔筒部53の内周面における小径部56と大径部57との境界を基準として、小径部56に作用するスプール制動機構7の磁力を管理することができる。すなわち、スプール5に対して制動力を適切に付与できる。
(6)両軸受リールでは、非有孔筒部53の内周面が、周方向に延びる段差部58を、さらに有する。段差部58は、小径部56及び大径部57を接続する、このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
(7)両軸受リールでは、小径部56が段差部58を介して大径部57に接続され、大径部57が一方のフランジ部59(第2フランジ部59b)に連続的に形成される。このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
(8)両軸受リールのスプール5は、筒状の糸巻胴部51と、1対のフランジ部59とを、備える。糸巻胴部51の外周には、釣り糸が巻き付けられる。1対のフランジ部59は、糸巻胴部51の両端部に各別に設けられる。
ここで、糸巻胴部51は、有孔筒部52と、非有孔筒部53とを、有する。有孔筒部52は、1対のフランジ部59の一方側(第1フランジ部59a側)に設けられる。
有孔筒部52は、外周に孔部54aを有する。非有孔筒部53は、1対のフランジ部59の他方側(第2フランジ部59b側)に設けられる。このような構成において、糸巻胴部51の非有孔筒部53の内周面に磁性体71(磁石71a)を対向させれば、軽量化を図ることができるとともに、従来技術のような有底筒状の導電体を追加することなくスプール5に対して制動力を適切に付与できる。
<他の実施形態>
(a)前記実施形態では、複数の磁石71aが、第2筒部75の外周部に周方向に間隔を隔てて配置されているが、磁石71aの数や間隔は任意に設定可能である。
(b)前記実施形態では、第2筒部75の軸方向への移動量を、十分に確保するために、ばね部材77が円錐コイルばねである場合の例を示したが、ばね部材77は、外形が一定のコイルばねであってもよい。
(c)前記実施形態では、糸巻胴部51の内周面において、小径部56及び大径部57の間には、段差部58が設けられる場合の例を示した。これに代えて、小径部56及び大径部57の間に、環状溝部を設けてもよい。この場合、小径部56及び溝部の壁部によって形成される隅角部Pが、小径部56に作用するスプール制動機構7の磁力を管理する基準として用いることができる。
(d)前記実施形態では、複数の孔部54aが、軸方向において、1対のフランジ部59の軸方向間の中央部から第1フランジ部59aまでの範囲に、形成される場合の例を、示した。複数の孔部54aの形成範囲は、前記実施形態に限定されない。例えば、複数の孔部54aが、少なくとも第1フランジ部59a側の近傍に配置されていれば、複数の孔部54aの形成範囲は、どのように設定してもよい。例えば、複数の孔部54aは、1対のフランジ部59の軸方向間の中央部には形成せずに、第1フランジ部59aの近傍にのみ形成してもよい。
(e)前記実施形態では、リブ部54bが、有孔筒部53(第1本体部54)の内周面において環状に形成される場合の例を示したが、リブ部54bの形状は、どのように形成してもよい。例えば、リブ部54bは、有孔筒部53(第1本体部54)の内周面において、周方向に断続的に形成されていてもよい。
(f)前記実施形態では、1つのリブ部54bが有孔筒部53(第1本体部54)の内周面に形成される場合の例を示したが、リブ部54bの数は、どうのように設定してもよい。例えば、複数のリブ部54bを、有孔筒部53(第1本体部54)の内周面に軸方向に並べて形成してもよい。
(g)前記実施形態では、スプール制動機構7において磁性体71(磁石71a)を軸方向に移動させることによって、スプール5に対する制動力が、調整される場合の例を示したが、スプール制動機構7の構成は、他の構成であってもよい。例えば、磁性体71(磁石71a)を図4及び図6の位置で固定し、磁性体71(磁石71a)を径方向に移動させたり、磁性体71(磁石71a)及び非有孔筒部53の径方向間において筒状の遮蔽板を軸方向に移動させたりしてもよい。この場合、段差部58を設けることなく、非有孔筒部を通過する磁束数を、調整することができる。
本発明は、両軸受リールに広く適用できる。
1 リール本体
3 ハンドル
5 スプール
7 スプール制動機構
51 糸巻胴部
52 有孔筒部
53 非有孔筒部
54a 孔部
54b リブ部
56 小径部
57 大径部
58 段差部
59 フランジ部
本発明は、両軸受リール、及び両軸受リールのスプールに関する。
従来の両軸受リールでは、スプールの軽量化を図るために、スプールの糸巻胴部には、複数の孔部が形成されている(特許文献1を参照)。詳細には、このスプールでは、複数の孔部が、1対のフランジ部の間において糸巻胴部に全体的に設けられている。
一方で、バックラッシュを防止するために、磁力によってスプールを制動するスプール制動装置が、提案されている(特許文献2、3を参照)。このスプール制動装置では、スプールを通過する磁束数に応じて、スプールの制動力を変化させている。
特開2001−145445号公報
特開2014−200227号公報
特開平10−309158号公報
特許文献1の両軸受リールでは、スプールの糸巻胴部には複数の孔部が全体的に形成されているので、このスプールを特許文献2のように制動するためには特許文献3のように、有底筒状の導電体をスプールと一体回転させる必要があった。このため、孔部を設けて軽量化(慣性低減)しても、導電体の重量(慣性)が増加してしまうため、スプールを十分に制動することが難しかった。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、スプールの軽量化を図ることができ、且つスプールに対して制動力を適切に付与できる両軸受リールを、提供することにある。
(1)本発明の一側面に係る両軸受リールは、リール本体と、ハンドルと、スプールと、スプール制動部とを、備える。ハンドルは、リール本体に回転自在に装着される。スプールは、ハンドルの回転に連動して回転可能なように、リール本体に設けられる。スプールは、糸巻胴部と、1対のフランジ部とを、有する。糸巻胴部は、有孔筒部と、非有孔筒部とを、有する。有孔筒部は、少なくとも1つの孔部を有する。非有孔筒部は、有孔筒部と一体に形成される。1対のフランジ部は、糸巻胴部の両端部に各別に設けられる。スプール制動部は、リール本体に設けられる。スプール制動部は、少なくとも非有孔筒部に磁力を作用させることによって、スプールを制動可能である。
本両軸受リールでは、糸巻胴部が有孔筒部を有しているので、スプールの軽量化を図ることができる。また、スプール制動部の磁力を、糸巻胴部の非有孔筒部に作用させているので、スプールに対して制動力を適切に付与できる。
(2)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、スプール制動部が、非有孔筒部の内周面に対向可能にリール本体に設けられる。これにより、上記の効果に加えて、両軸受リールの小型化を図ることができる。
(3)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、有孔筒部の内周面には、径方向内側に突出するリブ部が、形成されている、これにより、有孔筒部に孔部が設けられたとしても、有孔筒部の強度及び剛性を確保することができる。また、有孔筒部に孔部が設けられたとしても、有孔筒部及び非有孔筒部の間における強度差及び剛性差を、小さくすることができる。すなわち、有孔筒部及び非有孔筒部の間の変形量の差を、抑制することができる。
(4)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、リブ部は、有孔筒部の内周面において周方向に延びる環状リブである。これにより、有孔筒部及び非有孔筒部の間の変形量の差を、より効果的に抑制することができる。
(5)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、非有孔筒部の内周面が、小径部と、小径部より大径の大径部とを、有する。スプール制動部は、小径部に対向可能にリール本体に設けられる。
この場合、非有孔筒部の内周面における小径部と大径部との境界を基準として、小径部に作用するスプール制動部の磁力を管理することができる。すなわち、スプールに対して制動力を適切に付与できる。
(6)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、非有孔筒部の内周面が、周方向に延びる段差部を、さらに有する。段差部は、小径部及び大径部を接続する、このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
(7)本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、小径部が段差部を介して大径部に接続され、大径部が一方のフランジ部に連続的に形成される。このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
(8)本発明の一側面に係る両軸受リールのスプールは、リール本体に設けられたスプール制動部による磁力によって回転が制動される。この両軸受リールのスプールは、外周に釣り糸が巻き付けられる筒状の糸巻胴部と、糸巻胴部の両端部に各別に設けられる1対のフランジ部と、を備えている。そして、糸巻胴部は、1対のフランジ部の一方側に設けられ且つ外周に貫通孔を有する有孔筒部と、1対のフランジ部の他方側に設けられスプール制動部の磁力が作用する非有孔筒部とを、有する。
本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図。
リール本体内部の構成を示す断面図。
スプールの断面図及び側面図。
スプールの部分拡大断面図。
スプール及びスプール制動機構の拡大断面図。
スプール及びスプール制動機構の拡大断面図(第2筒部が軸方向に移動した場合)。
スプール制動機構の分解斜視図。
<両軸受リールの構成>
図1に本発明の一実施形態が採用された両軸受リールを示す。図1及び図2に示すように、両軸受リールは、リール本体1と、ハンドル3と、スプール5と、スプール制動機構7とを、備えている。
以下では、釣り糸を前方に繰り出す方向を"前方"、釣り糸を前方に繰り出す方向とは反対の方向を"後方"と、表現することがある。また、リール本体1が釣り竿に装着される側を"下方"、リール本体1が釣り竿に装着される側とは反対の方向を"上方"と、表現することがある。
また、スプール軸16が延びる方向、ピニオンギア36が延びる方向、及び螺軸23が延びる方向は、実質的に同じ方向である。このため、これらの方向を、以下では"軸方向"と表現することがある。なお、スプール軸16、ピニオンギア36、及び螺軸23は、後述する。
(リール本体)
リール本体1は、図2に示すように、フレーム4と、第1側カバー9及び第2側カバー11と、フレーム4の上部に装着されたサムレスト13(図1を参照)とを、有している。
フレーム4は、第1側板15と、第2側板17と、複数の連結部(図示しない)とを、有している。第1側板15及び第2側板17は、所定の間隔を開けて互いに対向するように配置されている。詳細には、第1側板15はハンドル3とは反対側に設けられ、第2側板17はハンドル3側に設けられている。第1側板15及び第2側板17には、スプール5を配置可能な開口15a,17aが、形成されている。複数の連結部は、第1側板15及び第2側板17を連結する。
開口15aには、ブレーキケース19が固定されている。ブレーキケース19は、有底筒状のケース部材である。ブレーキケース19は、第1側板15の開口15aに、例えばバヨネット構造によって、装着される。また、開口15aには、キャスティング時のバックラッシュを抑えるためのスプール制動機構7が、ブレーキケース19を介して、配置される。
第1側カバー9は、ハンドル3とは反対側において、フレーム4例えば第1側板15に、装着されている。第2側カバー11は、ハンドル3側において、フレーム4例えば第2側板17に、着脱自在に装着されている。第1側カバー9及びブレーキケース19の間には、スプール制動機構7を操作するための操作つまみ63が、配置される。
フレーム4には、スプール5と、レベルワインド機構21と、クラッチ操作レバー26と、が配置されている。
レベルワインド機構21は、スプール5に釣り糸を均一に巻き付けるための機構である。レベルワインド機構21は、ガイド筒22と、螺軸23と、ラインガイド24とを、有している。ガイド筒22は、ラインガイド24を、軸方向に案内する。ガイド筒22は、第1側板15及び第2側板17の間に固定される。螺軸23は、ガイド筒22内に回転自在に配置される。螺軸23には螺旋状溝が形成されており、螺旋状溝にはラインガイド24が噛み合っている。
この構成によって、螺軸23がギア機構25(後述する)によって回転させられると、ラインガイド24が、ガイド筒22に沿って往復移動する。これにより、ラインガイド24に挿通された釣り糸が、スプール5に均一に巻き付けられる。
クラッチ操作レバー26は、第1側板15及び第2側板17の間において、スプール5の後方に配置されている。クラッチ操作レバー26は、上下方向にスライド可能に構成されている。クラッチ操作レバー26は、クラッチカム(図示しない)を介して、クラッチ係脱機構27(後述する)を作動可能である。
フレーム4及び第2側カバー11の間には、ギア機構25と、クラッチ係脱機構27と、クラッチ機構29と、ドラグ機構31と、キャスティングコントロール機構33とが、配置されている。
ギア機構25は、ハンドル3からの回転力を、スプール5及びレベルワインド機構21に伝える。ギア機構25は、駆動ギア35と、ピニオンギア36と、第1ギア37と、第2ギア38とを、有している。
駆動ギア35は、駆動軸30に対して、一体回転可能且つ相対回転可能に、装着されている。詳細には、駆動ギア35は、ドラグ機構31によって、駆動軸30に対して、一体回転したり相対回転したりする。ピニオンギア36は、第2側板17に回転可能に支持されている。ピニオンギア36は、スプール軸16に軸方向に移動自在に装着されている。ピニオンギア36は、実質的に筒状に形成されている。ピニオンギア36の中心には、スプール軸16が挿通される。
ピニオンギア36は、駆動ギア35に噛み合う。第1ギア37は、螺軸23の端部に固定されている。第2ギア38は、駆動軸30に回転不能に固定され、第1ギア37に噛み合う。この構成によって、駆動軸30が回転すると、第2ギア38に噛み合う第1ギア37が回転する。すると、この第1ギア37の回転によって、螺軸23が回転する。これにより、上述したように、レベルワインド機構21が作動する。
クラッチ係脱機構27は、クラッチ操作レバー26の操作に応じて、クラッチ機構29の係脱を行う。クラッチ係脱機構27は、クラッチヨーク39を有している。クラッチ係脱機構27は、クラッチ操作レバー26の操作により、クラッチヨーク39をスプール軸16の軸芯と平行に移動させる。これにより、クラッチ機構29がオフになり、スプール5が回転自在になる。また、クラッチ係脱機構27は、駆動軸30が糸巻き取り方向に回転すると、クラッチ機構29が自動的にオンになるように、クラッチヨーク39を移動させる。
クラッチ機構29は、駆動軸30及びスプール軸16の連結と、駆動軸30及びスプール軸16の連結解除を行う。クラッチ機構29は、ピニオンギア36の噛合部36bと、スプール軸16を径方向に貫通するクラッチピン16aとから、構成される。
ここで、ピニオンギア36は、歯部36aと、噛合部36bと、くびれ部36cとを、有している。歯部36aは、ピニオンギア36の一端部に設けられ、駆動ギア35に噛み合う。噛合部36bは、ピニオンギア36の他端部に設けられる。噛合部36bには、クラッチピン16aに係合可能な凹部が、形成されている。くびれ部36cは、歯部36aと噛合部36bとの間に、設けられている。くびれ部36cには、クラッチ係脱機構27のクラッチヨーク39が係合している。
クラッチピン16aは、噛合部36bの凹部に係合可能である。例えば、クラッチ係脱機構27のクラッチヨーク39によってピニオンギア36がスプール軸16に沿って移動すると、噛合部36bの凹部がクラッチピン16aから離脱する。すると、駆動軸30及びスプール軸16の連結が、解除される。この場合、駆動軸30からの回転は、スプール5に伝達されない。すなわち、この状態が、クラッチオフ状態である。
一方で、駆動軸30が糸巻き取り方向に回転すると、クラッチピン16aが噛合部36bの凹部に係合する。すると、駆動軸30及びスプール軸16が、連結される。この場合、駆動軸30からの回転は、スプール5に伝達される。すなわち、この状態が、クラッチオン状態である。なお、通常状態は、クラッチオン状態である。
ドラグ機構31は、糸繰り出し時にスプール5を制動する。詳細には、ドラグ力を超える力で釣り糸が引っ張られた場合、ドラグ機構31が作動し、スプール5は糸繰り出し方向に回転する。
ドラグ機構31は、スタードラグ32と、摩擦機構34とを有する。スタードラグ32は、ドラグ力を調節するためのものである。詳細には、スタードラグ32を回転させることによって、摩擦機構34の押圧状態が変化し、ドラグ力が調節される。
摩擦機構34は、複数の制動板から構成される。摩擦機構34は、ワンウェイクラッチ43、及び駆動ギア35の間に配置される。例えば、ドラグ力を超える力で釣り糸が引っ張られ、スプール5が糸繰り出し方向に回転した場合、摩擦機構34が作動し、駆動ギア35は駆動軸30に対して相対回転する。
キャスティングコントロール機構33は、スプール軸16の両端を挟持することによって、スプール5を制動する。キャスティングコントロール機構33は、キャップ40と、第1摩擦プレート41と、第2摩擦プレート42とを、備えている。第1摩擦プレート41及び第2摩擦プレート42は、スプール軸16の両端に接触して、スプール軸16を挟持する。例えば、キャップ40が回転された場合、第1摩擦プレート41及び第2摩擦プレート42によってスプール軸16を挟持する挟持力が、調整される。これにより、スプール5の制動力が調整される。
(ハンドル)
ハンドル3は、リール本体1に回転可能に設けられている。詳細には、図1及び図2に示すように、ハンドル3は、リール本体1の側方に配置され、リール本体1に回転自在に装着されている。ハンドル3には、駆動軸30が一体回転可能に装着されている。駆動軸30は、第2側板17及び第2側カバーに、回転可能に支持されている。ここでは、駆動軸30は、軸受を介して第2側板17に回転可能に支持され、ワンウェイクラッチ43を介して第2側カバーに回転可能に支持されている。ワンウェイクラッチ43は、糸繰り出し方向の駆動軸30の回転を規制し、糸巻き取り方向の駆動軸30の回転を許可する。ワンウェイクラッチ43は、第2側カバー11に装着され、駆動軸30を支持する。この場合、ハンドル3の回転すなわち駆動軸30の回転は、ワンウェイクラッチ43及びドラグ機構31を介して、駆動ギア35に伝達され、スプール5が回転する。
(スプール)
スプール5は、例えばアルミニウム合金製であり、非磁性の導電体である。図1及び図2に示すように、スプール5は、ハンドル3の回転に連動して回転可能なように、リール本体1に設けられる。図3に示すように、スプール5は、糸巻胴部51と、1対のフランジ部59と、装着部61とを、有している。
以下では、1対のフランジ部59の一方、例えばハンドル3側のフランジ部を、第1フランジ部59aと表現することがある。また、1対のフランジ部59の他方、例えばハンドル3とは反対側のフランジ部を、第2フランジ部59bと表現することがある。
糸巻胴部51の外周には、釣り糸が巻き付けられる。糸巻胴部51は、実質的に筒状に形成されている。糸巻胴部51は、有孔筒部52と、非有孔筒部53とを、有する。
有孔筒部52は、スプール5の軽量化(慣性低減)に寄与する部分である。有孔筒部52は、少なくとも第1フランジ部59a側に、設けられる。ここでは、図3に示すように、有孔筒部52は、第1フランジ部59aの近傍と、第1フランジ部59a及び第2フランジ部59bの軸方向間の中央部とから、構成される。
具体的には、有孔筒部52は、第1本体部54と、複数の孔部54aと、リブ部54bとを、有する。第1本体部54は、実質的に筒状に形成されている。第1本体部54は、ハンドル3側の糸巻胴部51を、形成する。第1本体部54は、第1フランジ部59aに一体に形成され、且つ非有孔筒部53の第2本体部55(後述する)に一体に形成される。
第1本体部54の外周面には、釣り糸が巻き付けられる。第1本体部54の内周面は、非有孔筒部53の第2本体部55の内周面に、接続される。すなわち、第1本体部54の内周面は、第2本体部55の内周面と連続的に形成されている。また、第1本体部54の内周面は、第1フランジ部59aの外面に連続的に接続されている。
複数の孔部54aそれぞれは、第1本体部54を内周面から外周面に向けて貫通する貫通孔である。すなわち、複数の孔部54aそれぞれは、径方向に貫通する貫通孔である。複数の孔部54aは、第1本体部54に設けられている。具体的には、複数の孔部54aは、軸方向において、第1フランジ部59a及び第2フランジ部59bの間の中央部から、第1フランジ部59aまでの範囲で、第1本体部54の周方向に形成されている。言い換えると、複数の孔部54aは、装着部61のウェブ部61b(後述する)の両側、装着部61のウェブ部61bの径方向外側、及び第1フランジ部59aの近傍において、第1本体部54の周方向に形成されている。
なお、有孔筒部52(第1本体部54)の範囲は、複数の孔部54aが設けられた範囲に対応している。詳細には、第1フランジ部59aから最も離れた孔部54aの内周面によって、有孔筒部52及び非有孔筒部53の境界が定義されている。図3では、この境界を破線で示している。
リブ部54bは、有孔筒部52の内周面に、設けられている。ここでは、リブ部54bは、環状に形成されている。具体的には、リブ部54bは、軸方向に隣接する孔部54aの間に配置される。リブ部54bは、有孔筒部52の内周面例えば第1本体部54の内周面から、径方向内側に向けて突出するように、第1本体部54に形成されている。また、リブ部54bは、第1本体部54の内周面において周方向に延びるように、第1本体部54に形成されている。
非有孔筒部53は、スプール制動機構7の磁力によって制動される部分である。図3及び図4に示すように、非有孔筒部53は、第2フランジ部59b側に設けられる。
具体的には、非有孔筒部53は、第2本体部55と、小径部56と、大径部57と、段差部58とを、有している。第2本体部55は、実質的に筒状に形成されている。第2本体部55は、ハンドル3とは反対側の糸巻胴部51を、形成する。第2本体部55は、第1本体部54と一体に形成され、且つ第2フランジ部59bに一体に形成される。
第2本体部55の外周面には、釣り糸が巻き付けられる。すなわち、上述した第1本体部54の外周面及び第2本体部55の外周面によって、糸巻胴部51の外周面が形成される。第2本体部55の内周面は、有孔筒部52の第2本体部55の内周面に、接続される。すなわち、第2本体部55の内周面は、第1本体部54の内周面と連続的に形成されている。
具体的には、第2本体部55の内周面は、小径部56と、大径部57と、段差部58とから、構成される。小径部56は、第2本体部55の内周面を形成する。小径部56は、段差部58を介して大径部57に接続される。また、小径部56は、第1本体部54の内周面に接続される。ここでは、小径部56の内径は、第1本体部54の内径と同径である。
小径部56には、スプール制動機構7が対向可能である。ここでは、小径部56及び段差部58によって形成される隅角部Pが、小径部56に作用するスプール制動機構7の磁力を管理する基準として用いられる。
例えば、隅角部Pは、糸巻胴部51の内周面すなわち小径部56において、周方向に延びている。この隅角部Pによって、糸巻胴部51の内周面における小径部56の基準線が、定義される。ここで、小径部56は、軸方向に同径に形成されている。このため、小径部56において磁束が通過する面積(磁束の通過面積)を、隅角部Pを基準として、容易に管理することができる。例えば、磁束の通過面積は、隅角部Pを基準として、小径部56の軸方向長さに応じて増加するので、スプール5に対する制動力の変化を、安定させることができる。
なお、糸巻胴部51の内周面に隅角部Pを設けない場合は、小径部56の基準を定義することが難しい。この場合、例えば、糸巻胴部51の内周面の両端側には、湾曲部が設けられる。また、両端の湾曲部の間には、同径部が設けられる。この構成では、湾曲部の形成時に、湾曲部及び同径部の境界の位置が、軸方向にばらつくおそれがある。これにより、同径部における磁束の通過面積が、隅角部Pを設ける場合と比較して安定しづらい。すなわち、スプール5に対する制動力の変化を、安定させることが難しい。
大径部57は、小径部56より大径に形成されている。大径部57は、第2本体部55の内周面を形成する。大径部57は、段差部58を介して小径部56に接続される。大径部57は、第2フランジ部59bの外面に、連続的に接続されている。
段差部58は、小径部56及び大径部57を接続する部分である。段差部58は、周方向に延び、小径部56及び大径部57の間において第2本体部55の内周面を形成する。詳細には、段差部58は、小径部56から大径部57に向けて拡径し、第2本体部55の内周面を形成する。
図3に示すように、第1及び第2フランジ部59a,59bは、実質的に皿状に形成されている。第1及び第2フランジ部59a,59bは、糸巻胴部51の両端部に各別に設けられている。詳細には、第1及び第2フランジ部59a,59bそれぞれは、糸巻胴部51の端部から径方向外方に延びるように、糸巻胴部51の端部に一体に形成されている。なお、ここでは、糸巻胴部51の外周面を含む曲面より径方向外側の部分を、第1及び第2フランジ部59a,59bと定義している。第1及び第2フランジ部59a,59bと、糸巻胴部51との境界が、図4に破線で示されている。
図3に示すように、装着部61は、ボス部61aと、ウェブ部61bとを、有している。ボス部61aは、実質的に筒状に形成されている。ボス部61aは、スプール軸16に装着される。詳細には、ボス部61aは、固定手段例えばセレーション結合により、スプール軸16に回転不能に固定されている。ウェブ部61bは、実質的に円環状に形成されている。ウェブ部61bは、ボス部61aと糸巻胴部51とを連結する。詳細には、ウェブ部61bは、ボス部61aの外周面と糸巻胴部51の内周面とに一体に形成されている。
図2及び図3に示すように、スプール軸16は、スプール5と一体回転可能なようにスプール5に装着される。スプール軸16は、第2側板17を貫通して第2側カバー11に延びている。スプール軸16の一端部は、軸受を介して、第2側カバー11に回転自在に支持されている。また、スプール軸16の他端部は、軸受を介して、ブレーキケース19に回転自在に支持されている。さらに、上述したように、スプール軸16は、一端部及び他端部の間において、スプール5(装着12cのボス部61a)に固定されている。これにより、スプール軸16は、スプール5とともに、回転する。
(スプール制動機構)
スプール制動機構7は、磁力を用いてスプール5を制動可能である。詳細には、スプール制動機構7は、スプール5の回転方向と逆方向の力をスプール5に付加して、スプール5を制動する。ここでは、スプール制動機構7は、スプール5の回転方向と逆方向の力を、少なくともスプール5の非有孔筒部53に付加して、スプール5を制動する。
図2に示すように、スプール制動機構7は、リール本体1に設けられる。詳細には、図5及び図6に示すように、スプール制動機構7は、ブレーキケース19を介して、リール本体1に設けられる。ブレーキケース19は、筒部19aと、複数の貫通孔19bとを、有している。筒部19aには、スプール制動機構7が、設けられる。筒部19aの内周部には、スプール軸16を支持するための軸受が、設けられている。複数の貫通孔19bには、スプール制動機構7を操作するための操作つまみ63(後述する)が、係合している。
図5から図7に示すように、スプール制動機構7は、磁性体71と、筒状の第1筒部73と、筒状の第2筒部75と、ばね部材77と、抜け止め部材79とを、有している。なお、この場合、スプール制動機構7をスプール制動部の一例と考えてもよいし、磁性体71をスプール制動部の一例と考えてもよい。
磁性体71は、スプール5に磁力を作用させることにより、スプール5の回転を制動する。磁性体71は、例えば複数の磁石71aから、構成されている。複数の磁石71aとしては、例えば永久磁石が用いられる。
複数の磁石71aは、第2筒部75の外周部に固定されている。ここでは、複数の磁石71aが、周方向に所定の間隔を隔てて、第2筒部75の外周部に固定されている。
図4から図6に示すように、複数の磁石71aは、スプール5における糸巻胴部51の内周面に対向可能に設けられている。詳細には、複数の磁石71aは、糸巻胴部51における非有孔筒部53の内周面に対向可能に設けられている。より詳細には、複数の磁石71aは、非有孔筒部53の小径部56に対向可能に設けられている。
図5及び図6に示すように、第1筒部73は、ブレーキケース19の筒部19aの外周部に装着される。詳細には、第1筒部73の内周部が、ブレーキケース19の筒部19aの外周部に装着される。具体的には、図7に示すように、第1筒部73は、被係合部73aを有する。被係合部73aには、第2筒部75の係合部75a(後述する)が、係合する。例えば、被係合部73aは、凹状に形成されている。
図5及び図6に示すように、第2筒部75は、第1筒部73の外周部に装着される。詳細には、第2筒部75は、第1筒部73の外周部に対して、相対回転可能且つ軸方向移動可能に装着される。具体的には、図7に示すように、第2筒部75は、係合部75aを有する。係合部75aは、第2筒部75の内周部に、設けられている。係合部75aは、第1筒部73に形成された被係合部73aに、係合し案内される。詳細には、係合部75aが被係合部73aに係合しながら移動すると、第2筒部75及び複数の磁石71aが、第1筒部73に対して、相対回転しながら軸方向に移動する。
図5から図7に示すように、ばね部材77は、第2筒部75を付勢するための部材である。詳細には、ばね部材77は、第2筒部75をブレーキケース19側(図5及び図6の左側)に付勢する。ばね部材77は、抜け止め部材79と第2筒部75との間に配置される。ばね部材77は、例えば円錐コイルばねである。ばね部材77は、磁石71aによって吸着されないように、例えばSUS303等の非磁性材料を用いて形成されている。
抜け止め部材79は、ばね部材77を抜け止めするための部材である。抜け止め部材79は、第1筒部73に装着される。具体的には、第1筒部73の雌ねじ部に抜け止め部材79の雄ねじ部を螺合させることによって、抜け止め部材79が第1筒部73に装着される。
このようなスプール制動機構7では、スプール5の回転に応じて、スプール5の制動力が調整される。詳細には、複数の磁石71aとスプール5の糸巻胴部51(非有孔筒部53の小径部56)とが径方向において対向した状態において、スプール5が回転した場合に、スプール5の回転数(回転速度)に応じて、スプール5の制動力が調整される。
具体的には、スプール5が磁石71aの磁界に配置された状態において、スプール5が回転すると、スプール5の回転数に応じた渦電流が発生する。この渦電流の発生によって、スプール5には、回転方向と逆方向の力が付与される。これにより、スプール5は、回転速度に応じて制動される。
すると、スプール5の制動力に対応する反力が、第2筒部75に作用する。この反力によって、第2筒部75が、第1筒部73に対して回転する。この第2筒部75の回転量に応じて、係合部75aが被係合部73aに沿って移動する。すると、第2筒部75及び磁石71aが、第1筒部73に対して回転しながら軸方向に移動する。
これにより、スプール5の糸巻胴部51(非有孔筒部53の小径部56)と磁石71aとの対向面積が変化し、スプール5の制動力が変化する。なお、対向範囲は、径方向においてスプール5の糸巻胴部51(非有孔筒部53の小径部56)が磁石71aに対向している部分の面積に、対応している。
操作つまみ63は、スプール5の初期制動力を設定するためのものである。図5及び図6に示すように、操作つまみ63は、円形のつまみ部63aと、複数の押圧部63bとを、有している。つまみ部63aは、第1側カバー9に形成された開口9aから露出している。複数の押圧部63bそれぞれは、つまみ部63aから突出している。複数の押圧部63bそれぞれは、貫通孔19bに挿通され、第1筒部73を押圧可能に第1筒部73に当接している。
つまみ部63aは、開口9aに回転自在に支持されている。つまみ部63aは、つまみ部63aの回転を押圧部63bの軸方向移動に変換するカム機構(図示しない)を、含んでいる。これにより、つまみ65aを時計回りに回すと、押圧部63bによって第1筒部73が押圧され、第1筒部73、第2筒部75、及び磁石71aが、スプール5に向けて軸方向(図3右側)に移動する。この結果、スプール5を通過する磁束数が増加して、スプール5に対する初期制動力が強くなる。
一方で、つまみ部63aを反時計回りに回すと、第1筒部73、第2筒部75、及び磁石71aが、スプール5から離反するように軸方向(図3左側)に移動する。この結果、スプール5を通過する磁束数が減少して、スプール5に対する初期制動力が弱くなる。
<両軸受リールの動作>
ここでは、リールの動作について説明する。通常状態では、クラッチヨーク39は内方に押されておりクラッチオンの状態である。この結果、ハンドル3からの回転力は、駆動軸30、駆動ギア35、ピニオンギア36、及びスプール軸16を介して、スプール5に伝達される。すなわち、ハンドル3を回転すると、スプール5が糸巻き取り方向に回転する。
キャスティングを行う場合には、バックラッシュを抑えるために、操作つまみ63を回動させて、初期制動力を調整する。全体の制動力を抑えたい場合には、操作つまみ63を反時計回りに回して、磁石71aをスプール5から遠ざければよい。操作つまみ63を反時計回りに回転させると、カム作用によって、磁石71aがスプール5から離反する方向に移動する。これにより、スプール5を通過する磁束の数が、減少して、全体の制動力が弱くなる。
一方で、全体の制動力を大きくしたい場合には、操作つまみ63を時計回りに回して、磁石71aをスプール5に近づければよい。操作つまみ63を時計回りに回転させると、カム作用によって、スプール5に接近する方向に磁石71aが移動する。これにより、スプール5を通過する磁束の数が、増加して、全体の制動力が強くなる。
続いて、クラッチ操作レバー26が下方に押されると、クラッチ操作レバー26の移動によりクラッチヨーク39がハンドル3側に移動し、ピニオンギア36が同方向に移動する。この結果、クラッチオフ状態となる。このクラッチオフ状態では、駆動軸30からの回転は、スプール5及びスプール軸16に伝達されず、スプール5は自由に回転可能になる。クラッチオフ状態において、スプールをサミングしながら、スプール軸16が鉛直面に沿うようにリールを軸方向に傾けて釣竿を振ると、ルアーが投げられ、スプール5が糸繰り出し方向に回転する。
磁石71aがスプール5の糸巻胴部51(非有孔筒部53の小径部56)に対向した状態において、スプール5が回転すると、スプール5に制動力が作用する。このようにスプール5が制動されている状態では、第2筒部75には、制動力に応じた反力が、作用する。そして、この反力によって第2筒部75が回転すると、係合部75aは被係合部73aによって案内され移動する。すると、第2筒部75及び磁石71aが、ハンドル3側(図4右側)に向かって軸方向に移動する。
ここで、スプール5の回転数(回転速度)が増加すると、制動力に応じた反力も大きくなる。すると、第2筒部75及び磁石71aが、スプール5の糸巻胴部51の内周部に向かって移動する。これにより、スプール5に作用する磁束数が、増加し、スプール5に対する制動力が強くなる。一方で、スプール5の回転数(回転速度)が減少するにつれて、制動力に応じた反力は小さくなる。すると、第2筒部75及び磁石71aは、ばね部材77によって、ハンドル3から離反するように、軸方向に移動させられる。これにより、スプール5に作用する磁束数が、減少し、スプール5に対する制動力が弱くなる。このように、スプール5の回転に応じて、スプール5の制動力が、自動的に調節される。
<まとめ>
(1)両軸受リールは、リール本体1と、ハンドル3と、スプール5と、スプール制動機構7とを、備える。ハンドル3は、リール本体1に回転自在に装着される。スプール5は、ハンドル3の回転に連動して回転可能なように、リール本体1に設けられる。スプール5は、糸巻胴部51と、1対のフランジ部59(第1及び第2フランジ部59a,59b)とを、有する。糸巻胴部51は、有孔筒部52と、非有孔筒部53とを、有する。有孔筒部52は、少なくとも1つの孔部54aを有する。非有孔筒部53は、有孔筒部52と一体に形成される。1対のフランジ部59は、糸巻胴部51の両端部に各別に設けられる。スプール制動機構7は、リール本体1に設けられる。スプール制動機構7は、少なくとも非有孔筒部53に磁力を作用させることによって、スプール5を制動可能である。
両軸受リールでは、糸巻胴部51が有孔筒部52を有しているので、スプール5の軽量化を図ることができる。また、スプール制動機構7の磁力を、糸巻胴部51の非有孔筒部53に作用させているので、スプール5に対して制動力を適切に付与できる。
(2)両軸受リールでは、スプール制動機構7が、非有孔筒部53の内周面に対向可能にリール本体1に設けられる。これにより、上記の効果に加えて、両軸受リールの小型化を図ることができる。
(3)両軸受リールでは、有孔筒部52の内周面には、径方向内側に突出するリブ部54bが、形成されている、これにより、有孔筒部52に孔部54aが設けられたとしても、有孔筒部52の強度及び剛性を確保することができる。また、有孔筒部52に孔部54aが設けられたとしても、有孔筒部52及び非有孔筒部53の間における強度差及び剛性差を、小さくすることができる。すなわち、有孔筒部及び非有孔筒部の間の変形量の差を、抑制することができる。
(4)両軸受リールでは、リブ部54bは、有孔筒部52の内周面において周方向に延びる環状リブである。これにより、有孔筒部52及び非有孔筒部53の間の変形量の差を、より効果的に抑制することができる。
(5)両軸受リールでは、非有孔筒部53の内周面が、小径部56と、小径部56より大径の大径部57とを、有する。スプール制動機構7は、小径部56に対向可能にリール本体1に設けられる。
この場合、非有孔筒部53の内周面における小径部56と大径部57との境界を基準として、小径部56に作用するスプール制動機構7の磁力を管理することができる。すなわち、スプール5に対して制動力を適切に付与できる。
(6)両軸受リールでは、非有孔筒部53の内周面が、周方向に延びる段差部58を、さらに有する。段差部58は、小径部56及び大径部57を接続する、このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
(7)両軸受リールでは、小径部56が段差部58を介して大径部57に接続され、大径部57が一方のフランジ部59(第2フランジ部59b)に連続的に形成される。このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
(8)両軸受リールのスプール5は、筒状の糸巻胴部51と、1対のフランジ部59とを、備える。糸巻胴部51の外周には、釣り糸が巻き付けられる。1対のフランジ部59は、糸巻胴部51の両端部に各別に設けられる。
ここで、糸巻胴部51は、有孔筒部52と、非有孔筒部53とを、有する。有孔筒部52は、1対のフランジ部59の一方側(第1フランジ部59a側)に設けられる。
有孔筒部52は、外周に孔部54aを有する。非有孔筒部53は、1対のフランジ部59の他方側(第2フランジ部59b側)に設けられる。このような構成において、糸巻胴部51の非有孔筒部53の内周面に磁性体71(磁石71a)を対向させれば、軽量化を図ることができるとともに、従来技術のような有底筒状の導電体を追加することなくスプール5に対して制動力を適切に付与できる。
<他の実施形態>
(a)前記実施形態では、複数の磁石71aが、第2筒部75の外周部に周方向に間隔を隔てて配置されているが、磁石71aの数や間隔は任意に設定可能である。
(b)前記実施形態では、第2筒部75の軸方向への移動量を、十分に確保するために、ばね部材77が円錐コイルばねである場合の例を示したが、ばね部材77は、外形が一定のコイルばねであってもよい。
(c)前記実施形態では、糸巻胴部51の内周面において、小径部56及び大径部57の間には、段差部58が設けられる場合の例を示した。これに代えて、小径部56及び大径部57の間に、環状溝部を設けてもよい。この場合、小径部56及び溝部の壁部によって形成される隅角部Pが、小径部56に作用するスプール制動機構7の磁力を管理する基準として用いることができる。
(d)前記実施形態では、複数の孔部54aが、軸方向において、1対のフランジ部59の軸方向間の中央部から第1フランジ部59aまでの範囲に、形成される場合の例を、示した。複数の孔部54aの形成範囲は、前記実施形態に限定されない。例えば、複数の孔部54aが、少なくとも第1フランジ部59a側の近傍に配置されていれば、複数の孔部54aの形成範囲は、どのように設定してもよい。例えば、複数の孔部54aは、1対のフランジ部59の軸方向間の中央部には形成せずに、第1フランジ部59aの近傍にのみ形成してもよい。
(e)前記実施形態では、リブ部54bが、有孔筒部53(第1本体部54)の内周面において環状に形成される場合の例を示したが、リブ部54bの形状は、どのように形成してもよい。例えば、リブ部54bは、有孔筒部53(第1本体部54)の内周面において、周方向に断続的に形成されていてもよい。
(f)前記実施形態では、1つのリブ部54bが有孔筒部53(第1本体部54)の内周面に形成される場合の例を示したが、リブ部54bの数は、どうのように設定してもよい。例えば、複数のリブ部54bを、有孔筒部53(第1本体部54)の内周面に軸方向に並べて形成してもよい。
(g)前記実施形態では、スプール制動機構7において磁性体71(磁石71a)を軸方向に移動させることによって、スプール5に対する制動力が、調整される場合の例を示したが、スプール制動機構7の構成は、他の構成であってもよい。例えば、磁性体71(磁石71a)を図4及び図6の位置で固定し、磁性体71(磁石71a)を径方向に移動させたり、磁性体71(磁石71a)及び非有孔筒部53の径方向間において筒状の遮蔽板を軸方向に移動させたりしてもよい。この場合、段差部58を設けることなく、非有孔筒部を通過する磁束数を、調整することができる。
本発明は、両軸受リールに広く適用できる。
1 リール本体
3 ハンドル
5 スプール
7 スプール制動機構
51 糸巻胴部
52 有孔筒部
53 非有孔筒部
54a 孔部
54b リブ部
56 小径部
57 大径部
58 段差部
59 フランジ部