JP2017107707A - 透明電極、及び、有機電子デバイス - Google Patents

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孝敏 末松
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隼 古川
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健 波木井
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Abstract

【課題】有機電子デバイスの効率の向上と信頼性の向上とが可能な透明電極を提供する。
【解決手段】基板と、樹脂を含む下地層と、下地層上に形成された第1金属酸化物層と、第1金属酸化物層上に形成された第2金属酸化物層とを備える透明電極であって、第2金属酸化物層の体積抵抗率が、10−1Ωcm以上10+4Ωcm以下であり、水蒸気透過度が0.01g/(m・24h)以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、透明電極、及び、透明電極を用いた有機電子デバイスに係わる。
近年、有機エレクトロルミネッセン素子(以下、「有機EL素子」ともいう。)や有機太陽電池といった有機電子デバイスには、大型化、軽量化、フレキシブル化等が要求されている。特に大型な有機電子デバイスには、高い発光効率や発電効率が求められるとともに、電気抵抗の低い透明電極が求められている。
従来、有機EL素子では高い発光効率を得るために、光取り出し構造をもつ下地層が有効であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、透明電極としては、透明基板上に真空蒸着法やスパッタリング法により形成されるインジウム−スズの複合酸化物(SnO−In:Indium Tin Oxide:ITO)膜を用いた透明電極(以下、「ITO透明電極」ともいう)が、その導電性や透明性といった特性上の利点から広く使用されてきた。
しかしながら、フレキシブルなPET基板等の透明樹脂基板上にITO透明電極を作製した構成では、ガラス基板上にITO透明電極を作製した構成よりも、電気抵抗が高くなる。このため、ITO透明電極は、大型の有機電子デバイスに用いることができない。
透明電極の電気抵抗の低減を目指す中で、基板上に金属細線パターンと面電極化層を印刷や塗布方式により作製し、電流の面均一性と高い導電性を併せ持つ透明電極が検討されている(例えば、特許文献2参照)。
金属細線パターンの形成方法としては、銀や金、銅などのナノ粒子を含む金属ナノ粒子分散液を印刷描画し、その後、金属ナノ粒子同士を焼成する方法が知られている(例えば、特許文献3、4参照)。しかしながら、金属ナノ粒子分散液は、低温での焼成や、焼成後の金属細線パターンの電気抵抗を低くするために、バインダーを用いないか、少量にとどめるといった方法で作製されている場合が多い。そのため、金属ナノ粒子分散液を用いた金属細線パターンは基板への密着性が低く、剥離しやすいといった問題がある。金属細線パターンの密着性を高める方法として、基板上と金属細線パターンの間に下地層を設置する方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
また、有機電子デバイスの効率向上のために、ITO透明電極上に、酸化インジウム、酸化亜鉛及び酸化スズ等を含む金属酸化物層を積層する構成の電極が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
特開2004−296437号公報 米国特許出願公開第2010/0255323号明細書 特開2007−332347号公報 特開2010−265543号公報 特開2007−169604号公報 特開2006−54199号公報
しかしながら、有機電子デバイスに、高い発光効率を得るための光取り出し構造をもつ下地層や、金属細線パターンの基板との密着性を高めるための下地層を備えた透明電極を用いると、高温・高湿雰囲気下での保存性の劣化が生じるという課題があった。上記の下地層による保存性の劣化の一因として、下地層から発生する残存溶媒や未反応物が有機機能層に影響することが考えられる。
また、ITO透明電極上に、酸化インジウム、酸化亜鉛及び酸化スズ等を含む金属酸化物層を積層する構成の電極では、金属酸化物層の抵抗が10+5Ωcm以上と高いため、有機電子デバイスの効率向上に課題がある。また、それらの構造に下地層を併用しても、金属酸化物層にバリア性が足りないため、上記の高温・高湿雰囲気下での保存性の劣化という課題を解決することはできない。
本発明の透明電極は、基板と、樹脂を含む下地層と、下地層上に形成された第1金属酸化物層と、第1金属酸化物層上に形成された第2金属酸化物層とを備える。そして、第2金属酸化物層の体積抵抗率が、10−1Ωcm以上10+4Ωcm以下であり、水蒸気透過度が0.01g/(m・24h)以下である。
また、本発明の有機電子デバイスは、少なくとも上記透明電極と有機機能層とを備える。
本発明によれば、効率の向上と信頼性の向上とが可能な透明電極、及び、有機電子デバイスを提供することができる。
透明電極の概略構成を示す図である。 有機EL素子の概略構成を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.透明電極
2.有機電子デバイス(有機エレクトロルミネッセンス素子)
〈1.透明電極〉
透明電極は、基板と、下地層と、下地層上に形成された第1金属酸化物層と、第1金属酸化物層上に形成された第2金属酸化物層とを備える。透明電極では、第1金属酸化物層と第2金属酸化物層とにより、透明導電層が形成される。
透明導電層において、第1金属酸化物層は、主に導電性を担保するための導電層である。このため、第1金属酸化物層の体積抵抗率は、10−5Ωcm以上10−3Ωcm以下であることが好ましい。第1金属酸化物層の導電性が上記範囲であることにより、透明電極に十分な導電性を与えることができる。
第1金属酸化物層の膜厚は、使用する金属酸化物の体積抵抗、金属細線パターンの有無にもよるが、10nm以上500nm以下が好ましく、さらに100nm以上300nm以下が好ましい。膜厚が10nm未満では金属酸化物層が連続膜とならず、所望の導電性が得られない。膜厚が500nmを超えると、フレキシブル基板に用いた場合に、屈曲による割れが発生する場合がある。
上記のような高い導電性を有し、透明性の高い金属酸化物としては、IZO、IGO、IWZO、GZO、IGZO、及び、ZnOが挙げられる。このため、第1金属酸化物層としては、IZO、IGO、IWZO、GZO、IGZO、及び、ZnOから選ばれる1種類以上を含むことが好ましい。さらに好ましくは、第1金属酸化物層がIZO、IGO、IWZO、GZO、IGZO、及び、ZnOのみから構成されることが好ましい。
また、透明導電層において、第2金属酸化物層は、導電性とともにガスバリア性が要求される層である。このため、第2金属酸化物層は、体積抵抗率が10−1Ωcm以上10+4Ωcm以下であり、且つ、水蒸気透過度が0.01g/(m・24h)以下である。なお、第2金属酸化物層の水蒸気透過度は、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された値(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)である。このような導電性とガスバリア性を有する金属酸化物としては、IZO、ZTO、SnO、及び、SnOが挙げられる。このため、第2金属酸化物層は、IZO、ZTO、SnO、及び、SnOから選ばれる1種類以上を含むことが好ましい。さらに好ましくは、IZO層、ZTO層、又は、SnO層とSnO層との積層膜であることが好ましい。IZO層、ZTO層やSnO層とSnO層との積層膜は、導電性とともに高いガスバリア性をしているため、有機電子デバイスの信頼性の向上や、透明電極の導電性の低下の抑制が可能となる。
第2金属酸化物層がガスバリア性を有することにより、下地層に残存する溶媒や、下地層中の未反応物に起因して発生するアウトガス等の不純物が、この第2金属酸化物層により遮断される。従って、第2金属酸化物層上に有機層が形成された有機電子デバイスにおいても、下地層で発生した不純物が第2金属酸化物層で遮断され、有機層への不純物による悪影響を抑制することができる。この結果、有機電子デバイスの高温・高湿雰囲気下での保存性の劣化を抑制できる。
さらに、第2金属酸化物層の体積抵抗率が10−1Ωcm以上10+4Ωcm以下であることにより、素子の電圧上昇が起きず、有機電子デバイの効率を阻害しない。
特に、第2金属酸化物層は、厚さを薄く形成することにより、厚さ方向の導電性を阻害しにくい構成とすることが好ましい。第2金属酸化物層は、充分なガスバリア性が確保できれば、厚さを小さくする方が、有機電子デバイスの効率に有利である。
第2金属酸化物層の厚さは10nm以上500nm以下であることが好ましい。膜厚が10nm未満では、金属酸化物層は連続膜とならず、所望のガスバリア性が得られない。膜厚が500nmを超えると厚さ方向の導電性を阻害される場合がある。
また、透明電極は、下地層と第1金属酸化物層との間に、金属細線パターンを備えていてもよい。金属細線パターンを有することにより、透明電極の面方向の導電性が向上する。このため、透明電極の導電性が向上する。また、金属細線パターンは下地層上に形成することにより、下地層と金属細線パターンとの密着性が向上する。このため、導電層の剥離防止に効果的であり、透明電極をロール状に巻回した際にも、金属細線パターンの剥離を抑制することができる。
また、下地層は、樹脂、又は、樹脂と酸化物粒子とから構成されることが好ましい。下地層が酸化物粒子を含むことにより、下地層の膜強度、伸縮性、屈折率等の物性の調節が容易となる。また、下地層が酸化物粒子を含むことにより、金属細線パターンや透明導電層の密着性が向上する。このような、下地層の物性を調整するために用いる酸化物粒子は、10nm以上300nm以下であることが好ましい。
また、下地層に、上述の密着性向上とともに、光取り出し機能を付与することもできる。下地層に光取り出し機能を付与するためには、酸化物粒子として、樹脂よりも屈折率の高く、粒径が200nm以上1000nm以下の光散乱粒子を用いることが好ましい。光散乱粒子となる樹脂よりも屈折率が高い酸化物粒子としては、TiO粒子やZrO粒子を用いることが好ましい。酸化物粒子の屈折率が樹脂よりも高いと、下地層において屈折率差による光散乱を発生させることができる。従って、透明電極を有機EL素子等の発光素子に適用した際に、下地層が光取出し構造となり、有機EL素子の光取り出し効率が向上し、発光効率が向上する。
[透明電極の構成]
図1に、本実施の形態の透明電極の概略構成図を示す。図1に示す透明電極10は、基板11と、下地層15と、第1金属酸化物層13及び第2金属酸化物層14から構成される透明導電層12とを備える。また、下地層15と第1金属酸化物層13との間に、金属細線パターン18を備える。
透明電極10では、基板11側から順に下地層15、金属細線パターン18、第1金属酸化物層13、第2金属酸化物層14が設けられていればよく、これら以外の層が設けられていてもよい。このため、図1に示す透明電極10では、基板11の下地層15及び透明導電層12が設けられている面(第1主面)側において、基板11と下地層15との間にガスバリア層17が設けられている。ガスバリア層17は、基板11上であって、透明導電層12や下地層15より、基板11側に設けられている。
また、基板11の下第1主面と反対側の面(第2主面)側に粒子含有層16を備える。
粒子含有層16は、透明電極10の透明導電層12が形成される側の面(表面)と反対側の面(裏面)において、最も外側の層に配置されることが好ましい。
透明電極10は、この透明電極10が適用される有機電子デバイスにおいて、下地層15よりも第2金属酸化物層14が、有機電子デバイスの有機層側に設けられる。すなわち、下地層15と有機層との間に第2金属酸化物層14が介在する。このように、ガスバリア性を有する第2金属酸化物層14が下地層15と有機層との間に介在することにより、下地層15で発生するアウトガス等の不純物が、第2金属酸化物層14により遮断される。この結果、透明電極10が適用された有機電子デバイスの信頼性が向上する。
[透明導電層:第1金属酸化物層]
透明導電層12を構成する第1金属酸化物層13は、金属細線パターン18の表面を覆うように基板11又は下地層15の一主面上に設けられている。
第1金属酸化物層13は、体積抵抗率が10−5Ωcm以上1×10−3Ω・cm以下の導電性の高い金属酸化物を用いて形成される。体積抵抗率は、JIS K 7194−1994の導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法に準拠して測定されたシート抵抗と、膜厚を測定して求めることができる。膜厚は接触式表面形状測定器(例えばDECTAK)や光干渉表面形状測定器(例えばWYKO)を用いて測定できる。
また、第1金属酸化物層13は、透明電極10の透明導電層12において、導電性を担保する役割を有する観点から、金属細線パターン18を有する場合、シート抵抗が10000Ω/sq.以下であることが好ましく、2000Ω/sq.以下であることがより好ましく、金属細線パターンがない場合、シート抵抗が50Ω/sq.以下であることが好ましく、20Ω/sq.以下であることがより好ましい。
第1金属酸化物層13に使用できる金属酸化物としては、透明性、及び、導電性に優れる材料であれば、特に限定されない。第1金属酸化物層13に使用できる金属酸化物としては、例えば、ITO(スズドープ酸化インジウム)、IZO(酸化インジウム・酸化亜鉛)、IGO(ガリウムドープ酸化インジウム)、IWZO(酸化インジウム・酸化スズ)、ZnO(酸化亜鉛)、GZO(Gaドープ酸化亜鉛)、IGZO(インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物)等が挙げられる。
特に、第1金属酸化物層13に使用できる金属酸化物としては、IZO、IGO、IWZOが好ましい。なかでも、IZOとしては、重量比In:ZnO=80〜95:5〜20で表される組成が好ましい。IGOとしては、重量比In:Ga=70〜95:5〜30で表される組成が好ましい。IWZOとしては、重量比In:WO:ZnO=95〜99.8:0.1〜2.5:0.1〜2.5で表される組成が好ましい。
なお、透明電極10において、第1金属酸化物層13は複数設けられていてもよい。第1金属酸化物層13が連続して積層されている構成や、第2金属酸化物層14やその他の層が層間に配置されて第1金属酸化物層13が積層された構成であってもよい。このような構成であっても、第1金属酸化物層13と第2金属酸化物層14とにより透明電極10の透明導電層12が構成されていればよい。
[透明導電層:第2金属酸化物層]
第2金属酸化物層14は、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)が、0.01g/(m・24h)以下の高いガスバリア性を有する金属酸化物により構成される。
また、第2金属酸化物層14は、第1金属酸化物層13と共に透明導電層12を構成する導電層であるため、ガスバリア性とともに充分な導電性が要求される。但し、透明導電層12において、導電性を第1金属酸化物層13で担保する構成であるため、第2金属酸化物層14には、第1金属酸化物層13ほどの導電性は要求されない。このため、第2金属酸化物層14は第1金属酸化物層13よりも導電性が低くてよく、第2金属酸化物層14の体積抵抗率は10−1Ωcm以上10+4Ωcm以下である。
また、第2金属酸化物層14によるガスバリア性を考慮すると、第2金属酸化物層14の厚さを大きくすると、ガスバリア性が向上しやすい。
一方、透明電極10の面方向の導電性は、第1金属酸化物層13や金属細線パターン18で十分に確保することができる。このため、第2金属酸化物層14の導電性や抵抗率については、第1金属酸化物層13から第2金属酸化物層14上に設けられる有機電子デバイスの有機層及び対向電極に対して電圧を印加する際に、考慮する必要がある。すなわち、第1金属酸化物層13よりも抵抗の大きい第2金属酸化物層14の厚さが小さい方が、第1金属酸化物層13と有機層との間での抵抗が減少するため、有機電子デバイスを阻害しない。の効率が向上する。
従って、第2金属酸化物層14の厚さは、ガスバリア性が確保できる限り、厚さが小さい方が好ましい。このように、第2金属酸化物層14のガスバリア性と導電性を考慮すると、第2金属酸化物層14の厚さは、10〜500nmの範囲内とすることが好ましい。
第2金属酸化物層14に使用できる金属酸化物としては、ガスバリア性に優れ、且つ、透明性と導電性とを有する材料であれば、特に限定されない。第2金属酸化物層14に使用できる金属酸化物としては、例えば、IZO、ZTO(亜鉛錫複合酸化物)、SnO、及び、SnO等が挙げられる。特に、ZTOの単独構造による第2金属酸化物層14や、SnOとSnOの複合酸化物による第2金属酸化物層14を挙げることができる。ZTOとしては、重量比ZnO:SnO=50〜90:50〜10で表される組成が好ましい。SnOとSnOの複合酸化物としては重量比SnO:SnO=10〜50:90〜50で表される組成が好ましい。また、SnOとSnOの複合酸化物では、ドープ材として、Sbを用いることが好ましく、SnO/SnOに対して重量比で0.5〜5.0質量%含まれることが好ましい。
なお、透明電極10において、第2金属酸化物層14は複数設けられていてもよい。また、第第2金属酸化物層14を1金属酸化物層13に対して基板11側に配置させてもよい。第1金属酸化物層13上において、第2金属酸化物層14が連続して積層されている構成や、第1金属酸化物層13やその他の層が層間に配置されて第2金属酸化物層14が積層された構成であってもよい。具体的には、第1金属酸化物層13の両主面側に第2金属酸化物層14が形成され、第2金属酸化物層14により第1金属酸化物層13が挟持された構成とすることもできる。また、第2金属酸化物層14少なくとも1層は、透明電極10の最表面に配置されていることが好ましい。このような構成であっても、透明電極10の最上層に第2金属酸化物層14が形成され、第1金属酸化物層13と第2金属酸化物層14とにより透明電極10の透明導電層12が構成されていればよい。
[金属酸化物層の形成方法]
上述の第1金属酸化物層13及び第2金属酸化物層14は、従来の金属酸化物層を成膜する場合と同様にして、各種のスパッタリング法やイオンプレーティング法等によって成膜することができる。
第1金属酸化物層13及び第2金属酸化物層14を形成するスパッタリング法としては、例えば、DCスパッタリング、RFスパッタリング、DCマグネトロンスパッタリング、RFマグネトロンスパッタリング、ECRプラズマスパッタリング、イオンビームスパッタリング等を用いることができる。
また、スパッタリング法では、下記に示すような様々な条件を検討することで、IZOのように組成は同じでも、導電性とガスバリア性を調節することが可能である。
例えば、第1金属酸化物層13及び第2金属酸化物層14は、スパッタリングの際のターゲット基板間距離を50〜100mmとし、スパッタリングガス圧を0.5〜1.5Paとして、直流マグネトロンスパッタリング法により成膜することができる。
ターゲット基板間距離については、ターゲット基板間距離が50mmよりも短くなると、堆積するスパッタ粒子の運動エネルギーが大きくなるため、基板11の受けるダメージが大きくなってしまう。また、膜厚も不均一となり膜厚分布が悪くなる。ターゲット基板間距離が100mmより長いと、膜厚分布はよくなるが、堆積するスパッタ粒子の運動エネルギーが低くなりすぎ、拡散による緻密化が起きにくく、金属酸化物層の密度が低くなるため好ましくない。
スパッタリングガス圧については、スパッタリングガス圧が0.5Paより低いと堆積するスパッタ粒子の運動エネルギーが大きくなるため、基板11の受けるダメージが大きくなってしまう。スパッタリングガス圧が1.5Paより高いと、成膜速度が遅くなるだけでなく、堆積するスパッタ粒子の運動エネルギーが低くなりすぎて、拡散による緻密化が起きず、金属酸化物層の密度が低くなるため好ましくない。
[下地層]
下地層15は、透明導電層12や金属細線パターン18を形成するための下地となる層である。下地層15は、少なくとも樹脂を含んで形成されることがこのましい。さらに、樹脂とともに酸化物粒子を含んで形成されることが好ましい。下地層15が樹脂とともに酸化物粒子を含むことにより、透明導電層12や金属細線パターン18の密着性が向上する。
また、下地層15には、透明導電層12や金属細線パターン18の密着性向上以外の機能を付与することもできる。密着性以外の機能としては、光取出し機能を有することが好ましい。下地層15に光取出し機能を付与するためには、樹脂とともに、樹脂よりも屈折率の高い酸化物粒子を含むことが好ましい。この樹脂よりも屈折率の高い酸化物粒子が下地層15内で光散乱粒子として機能することにより、下地層15での光散乱が発生し、下地層15に光取出し機能が付与される。
下地層15の厚さは、10〜1000nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは20〜300nmの範囲内である。下地層15の層厚が10nm以上であると、下地層15自体が連続膜となり表面が平滑になり、有機電子デバイスへの影響がすくない。一方、下地層15の厚さが1000nm以下であると、下地層15に起因する透明電極10の透明性の低下や下地層15に由来する吸着ガスを減らすことができ、金属細線パターンの抵抗悪化を抑制することができる。また、下地層15の厚さが1000nm以下であれば、透明電極10を屈曲した際の下地層15に破損を抑制することができる。
また、下地層15が光取りだし機能を有する場合、下地層15は、散乱を生じるための光路長を確保するためにある程度厚い必要があるが、一方で吸収によるエネルギーロスを生じない程度に薄い必要がある。この場合には、例えば、下地層15を100〜1000nmの範囲、好ましくは200〜1000nmの範囲内に形成する。
下地層15の透明性は、用途によって任意に選択することができるが、透明性が高いほど透明電極10への適用が良好となり、用途拡大の観点で好ましい。下地層15の全光線透過率としては、少なくとも40%以上、好ましくは50%以上である。全光線透過率は、分光光度計等を用いた公知の方法に従って測定することができる。
(樹脂)
下地層15を構成する樹脂は、単独で、又は、酸化物粒子とともに下地層15を形成できれば特に限定されない。例えば、単量体の繰り返し構造を持つ公知の天然高分子材料や、合成高分子材料を使用することができる。これらは、有機高分子材料、無機高分子材料、有機無機ハイブリッド高分子材料、及び、これらの混合物等を使用することができ、樹脂中の酸化物粒子の分散状態、塗布膜の各種物性等により選定することができる。これらの樹脂は、2種以上混合して使用することもできる。
上記樹脂は、公知の方法により合成することができる。天然高分子材料は、天然原料からの抽出や、セルロース等のように微生物により合成することができる。合成高分子は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合、開環重合、重縮合、付加重合、付加縮合及びこれらのリビング重合等で得ることができる。
また、これらの樹脂は、単独重合体でも共重合体でも良く、不斉炭素を有するモノマーを使用する場合、ランダム、シンジオタックチック、アイソタックチックのいずれかの規則性を持つことができる。また、共重合体の場合、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等の形態をとることができる。
樹脂の形態は、樹脂自体が液体でも固体でもよい。また、樹脂は、溶媒に溶解しているか、溶媒中に均一に分散していることが好ましい。さらに、樹脂は、水溶性樹脂、又は、水分散性樹脂であってもよい。
また、樹脂は紫外線・電子線によって硬化する電離放射線硬化型樹脂や、熱により硬化する熱硬化性樹脂であってよく、ゾル−ゲル法により作製される樹脂であってもよい。さらに、樹脂は架橋していてもよい。
上述の樹脂において、天然高分子及び合成高分子は、大木道則、大沢利昭、田中元治、千原秀昭編「化学大辞典」(東京化学同人、1989年刊)1551及び769ページのそれぞれの項に記載されているものを一例として使用することができる。
具体的には、天然高分子材料としては、天然有機高分子材料が好ましく、綿、麻、セルロース、絹、羊毛などの天然繊維や、ゼラチンなどのたんぱく質、天然ゴムなどを挙げることができる。合成高分子材料としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリケトン樹脂などを挙げることができる。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ4−メチルペンテン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリシクロペンテン、ポリノルボルネンなどを挙げることができる。 ポリアクリル樹脂としては、例えば、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。 ポリビニル樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリイソブチルビニルエーテルなどを挙げることができる。
ポリエーテル樹脂としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリアルキレングリコールなどを挙げることができる。
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレートなどを挙げることができる。
ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11などを挙げることができる。
フッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレンなどを挙げることができる。
なお、上述の水溶性樹脂とは、25℃の水100gに0.001g以上溶解する樹脂を意味する。溶解の度合いは、ヘイズメータ、濁度計等で測定することができる。水溶性樹脂の色は特に限定されないが、透明であることが好ましい。また、水溶性樹脂の数平均分子量は、3000〜2000000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは4000〜500000の範囲内、更に好ましくは5000〜100000の範囲内である。
水溶性樹脂の数平均分子量、分子量分布の測定は、一般的に知られているゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行うことができる。使用する溶媒は、バインダーが溶解すれば特に限りはないが、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、CHClが好ましく、より好ましくはTHF、DMFであり、更に好ましくはDMFである。また、測定温度も特に制限はないが、40℃であることが好ましい。
水溶性樹脂としては、具体的には、天然高分子材料、合成高分子材料として、アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、フッ素系等の樹脂が挙げられ、例えば、カゼイン、デンプン、寒天、カラギーナン、セスロース、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、水溶性ポリビニルブチラール等のポリマーを挙げることができる。
上述の水分散性樹脂とは、水系溶剤に均一分散可能なものであり、水系溶剤中に凝集せずに、樹脂からなるコロイド粒子が分散している樹脂を意味する。コロイド粒子の大きさ(平均粒径)は、一般的に1〜1000nmの範囲内程度である。上記のコロイド粒子の平均粒径は、光散乱光度計により測定することができる。
また、上記水系溶剤とは、蒸留水及び脱イオン水などの純水のみならず、酸、アルカリ、塩等を含む水溶液、含水の有機溶媒、更には親水性の有機溶媒等の溶媒であることを意味し、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。水分散性樹脂は、透明であることが好ましい。また、水分散性樹脂は、フィルムを形成する媒体であれば、特に限定はない。水分散性樹脂としては、例えば、水性アクリル系樹脂、水性ウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ポリアミド樹脂、水性ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
水性アクリル樹脂は、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸−スチレンの重合体、又は、その他のモノマーとの共重合体からなる。また、水系溶媒への分散性を付与する機能を担う酸部分がリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等のイオンと対塩を形成したアニオン性、窒素原子を有するモノマーとの共重合体からなり、窒素原子が塩酸塩等を形成したカチオン性、ヒドロキシ基やエチレンオキシド等の部位を導入したノニオン系があるが、好ましくはアニオン性である。
水性ウレタン樹脂としては、水分散型ウレタン樹脂、アイオノマー型水性ウレタン樹脂(アニオン性)等がある。水分散型ウレタン樹脂には、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂があり、好ましくはポリエステル系ウレタン樹脂である。また、光学用途への使用では、芳香環を持たない無黄変イソシアネートを用いることが好ましい。
アイオノマー型水性ウレタン樹脂には、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂等があり、好ましくはポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂である。
水性ポリエステル樹脂は、多塩基酸成分とポリオール成分とから合成される。
多塩基酸成分とは、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリンジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、セバチン酸、ドデカン二酸等であり、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよく、特に好適に用いることのできる多塩基酸成分としては、工業的に多量に生産されており、安価であることなどから、テレフタル酸やイソフタル酸が特に好ましい。
ポリオール成分として代表的なものを挙げれば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールなどであり、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよく、特に好適に用いることのできるポリオール成分としては、工業的に量産され、安価であり、しかも、樹脂被膜の耐溶剤性や耐候性が向上するなど、諸性能にバランスがとれていることから、エチレングリコール、プロピレングリコールあるいはネオペンチルグリコールが特に好ましい。
無機高分子材料としては、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリシラン、ポリゲルマン、ポリスタナン、ボラジン系ポリマー、ポリメタロキサン、ポリシラザン、チタンオリゴマー、シランカップリング剤などを挙げることができる。ポリシロキサンとしては、具体的に、シリコーン、シルセスキオキサン、シリコーン樹脂などを挙げることができる。
有機無機ハイブリッド高分子材料としては、ポリカルボシラン、ポリシリレンアリレン、ポリシロール、ポリホスフィン、ポリホスフィンオキシド、ポリ(フェロセニルシラン)、シルセスキオキサンを基本骨格としたシルセスキオキサン誘導体、樹脂にシリカを複合化させた樹脂などを挙げることができる。
シルセスキオキサンを基本骨格としたシルセスキオキサン誘導体としては、具体的に、光硬化型SQシリーズ(東亞合成株式会社)、コンポセランSQ(荒川化学株式会社)、Sila−DEC(チッソ株式会社)などを挙げることができる。また、樹脂にシリカを複合化させた樹脂としては、具体的に、コンポセランシリーズ(荒川化学)などを挙げることができる。
また、樹脂としては、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等の硬化性樹脂を用いることができる。電離放射線硬化型樹脂とは、電離放射線硬化型樹脂組成物の通常の硬化方法、すなわち、電子線又は紫外線の照射によって硬化することができる樹脂である。
例えば、電子線硬化の場合には、コックロフワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される10〜1000keVの範囲内、好ましくは30〜300keVの範囲内のエネルギーを有する電子線等が使用される。
紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。紫外線照射装置としては、具体的には、100〜230nmの範囲内の真空紫外線を発する希ガスエキシマランプが挙げられる。エキシマランプは、光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域の単一波長でエネルギーを照射するため、照射光自体による照射対象物の温度上昇を抑えられる特徴を持っている。
熱硬化型樹脂とは、加熱により硬化する樹脂であり、樹脂内には架橋剤が含まれていることがより好ましい。熱硬化型樹脂の加熱方法としては、従来公知の加熱方法を用いることができ、ヒータ加熱、オーブン加熱、赤外線加熱、レーザー加熱などを用いることができる。
また、下地層15に用いる樹脂には、N(窒素)原子やS(硫黄)原子を含有する低分子化合物を添加してもよい。N(窒素)原子やS(硫黄)原子を下地層15に添加することで、金属細線パターン18と下地層15との密着性が向上する。
さらに、下地層15に用いる樹脂には、表面エネルギー調整剤を添加してもよい。表面エネルギー調整剤を添加することで、金属細線パターン18と下地層15との密着性、金属細線パターンの線幅等を調整できる。
(酸化物粒子)
下地層15を構成する酸化物粒子は、透明電極10への適用が可能であれば特に限定されない。樹脂に酸化物粒子を添加することで、下地層15の膜強度、伸縮性、屈折率等の物性を適宜調節でき、さらに金属細線パターンとの密着性も向上する。酸化物粒子としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、スズ、バリウム、タンタル等の金属の酸化物を挙げることができる。特に、酸化物粒子は、酸化チタン又は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムのいずれかであることが好ましい。
酸化物粒子の平均粒径は、10〜300nmの範囲内であることが好ましく、特に10〜100nmの範囲内であることが、透明電極10に好適に用いることができるため好ましい。平均粒径が上記の範囲内にある酸化物粒子を用いると下地層15の表面に十分な凹凸を作ることができ、金属細線パターンとの密着性が向上する。平均粒径が300nm以下であると表面が平滑になり、有機電子デバイスへの影響が少ない。
酸化物粒子の平均粒径は、光散乱方式を用いた市販の測定装置を使用して簡便に計測することが可能である。具体的には、ゼータサイザー1000(マルバーン社製)を用いて、レーザードップラー法により25℃、サンプル希釈液量1mlにて測定した値を用いることができる。
酸化物粒子は、下地層15中に10〜70vol%含まれていることが好ましく、20〜60vol%含まれていることがより好ましい。
上述の酸化チタン微粒子としては、特開昭59−223231号公報、特開平10−265223号公報、特開2009−179497号公報、特開2010−058047号公報、特開2008−303126号公報、国際公開第2001/016027号等に記載の合成方法や、「酸化チタン−物性と応用技術」(清野学著、技報堂出版(株)、p.255〜258)を参考にして合成することができる。
また、酸化物粒子は、分散液とした場合の分散性や安定性向上の観点から、表面処理を施したものを用いてもよい。酸化物粒子に表面処理を行う場合において、表面処理の具体的な材料としては、酸化ケイ素や酸化ジルコニウム等の異種無機酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、オルガノシロキサン、ステアリン酸等の有機酸等が挙げられる。これら表面処理材は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。中でも、分散液の安定性の観点から、表面処理材としては、異種無機酸化物及び金属水酸化物のうち少なくとも一方であることが好ましく、金属水酸化物がより好ましい。
また、下地層15は、酸化物粒子以外の無機化合物を含有していてもよい。無機化合物とは、一般に理解されているように有機化合物以外の化合物であり、具体的には、単純な一部の炭素化合物と、炭素以外の元素で構成される化合物である。下地層15を構成する無機化合物の代表的な例としては、前述の金属酸化物のほか、金属、炭化物、窒化物、ホウ化物等を挙げることができる。
(酸化物粒子;光散乱粒子)
下地層15に光取出し機能を付与する場合には、下地層15に酸化物粒子として光散乱粒子を含ませることが好ましい。下地層15に含まれる樹脂と、樹脂よりも高い屈折率を有する光散乱粒子との屈折率差を利用して、混合物による光散乱を発生させることができる。
下地層15に光取出し機能を付与する場合、透明電極10を透過する光の極大波長のうち最も短い極大波長において、平均屈折率nsが好ましくは1.5以上2.5未満、より好ましくは1.6以上2.3未満の範囲内であることが好ましい。このような混合系の下地層15の平均屈折率nsは、各々の素材固有の屈折率に混合比率を乗じた合算値により算出される計算屈折率である。
下地層15に含まれる樹脂の屈折率nbは、1.9未満であり、1.6未満であることが特に好ましい。そして、光散乱粒子の屈折率npは樹脂よりも高く、1.5以上3.0以下であり、1.8以上3.0以下であることが好ましく、2.0以上3.0以下であることが特に好ましい。屈折率np及びnbとは、単独の素材で形成されている場合は、単独の素材の屈折率であり、混合系の場合は、各々の素材固有の屈折率に混合比率を乗じた合算値により算出される計算屈折率である。なお、屈折率の測定は、25℃の雰囲気下でアッベ屈折率計(ATAGO社製、DR−M2)を用いて行うことができる。
また、下地層15において導波光の散乱機能の向上には、光散乱粒子と樹脂との屈折率差を大きくする構成、層厚を厚くする構成、及び、粒子密度を大きくする構成等が考えられる。この中で最も他の性能への悪影響が小さいため、光散乱粒子と樹脂との屈折率差を大きくする構成が好ましい。
樹脂の屈折率nbと光散乱粒子の屈折率npとの屈折率差|nb−np|は、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。樹脂と光散乱粒子との屈折率差|nb−np|は、0.03以上あれば樹脂と光散乱粒子との界面で散乱効果が発生する。また、屈折率差|nb−np|が大きいほど、界面での屈折が大きくなり、散乱効果が向上する。なお、散乱とは、下地層15の単層でのヘイズ値(全光線透過率に対する散乱透過率の割合)が20%以上を示す状態を表す。下地層15の単層でのヘイズ値が20%以上であれば、光散乱性(光取り出し効率)を向上させることができる。
ヘイズ値とは、(i)膜中の組成物の屈折率差による影響と、(ii)表面形状による影響とを受けて算出される物性値である。すなわち、表面粗さを一定未満に抑えてヘイズ値を測定することにより、上記(ii)による影響を排除したヘイズ値が測定されることとなる。具体的には、ヘイズメータ(日本電色工業(株)製、NDH−5000等を用いて測定することができる。
光散乱粒子は、平均粒子径が200nm以上1000nm以下であることが好ましい。下地層15においては、例えば、光散乱粒子の粒子径を調整することにより、散乱性を向上させることができる。具体的には、可視光域のMie散乱を生じさせる領域以上の粒子径を有する透明な粒子を用いることが好ましい。光散乱粒子の平均粒子径が200nm以上であることにより、散乱性を向上させることができる。
一方、光散乱粒子は、粒子径が大きいほど下地層15の粗さが大きくなる。下地層15の粗さが大きくなると、透明導電層12の表面の平滑性が低下しやすい。透明導電層12の表面の平滑性が低いと、透明電極10を有機電子デバイスに組み込んだ際に、不良発生の原因となり、有機電子デバイスの信頼性が低下しやすい。例えば、透明電極10を有機EL素子の透明電極に適用した場合には、電流リークによる整流比の悪化や、粒塊の突起部分に電流が集中し、この部分において短絡しやすい等の不具合が発生する。
また、下地層15に複数の種類の粒子が用いられる場合、上記の光散乱粒子を除くその他の粒子としては、平均粒子径が100nm〜1000nmの範囲内の粒子を少なくとも1種含み、かつ3000nm以上の粒子を含まないことが好ましい。特に、200nm〜1000nmの範囲内の粒子を少なくとも1種含み、且つ、1000nmを超える粒子を含まないことが好ましい。
高屈折率粒子の平均粒子径は、例えば、日機装社製ナノトラックUPA−EX150といった動的光散乱法を利用した装置や、電子顕微鏡写真の画像処理により測定することができる。
光散乱粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、高屈折率を有する無機微粒子として、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、スズ、アンチモン等の中から選ばれる少なくとも一つの酸化物からなる無機酸化物粒子が挙げられる。無機酸化物粒子としては、具体的には、ZrO、TiO、BaTiO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITO、SiO、ZrSiO、ゼオライト等が挙げられる。特に、TiO、及び、ZrOは屈折率が高いため、光散乱粒子として好ましい。また、TiOが特に好ましく、ルチル型のTiOが、触媒活性が低いため下地層15や隣接した層の耐候性が高くなり、更に屈折率が高いことから好ましい。
また、これらの光散乱粒子は、下地層15に含有させるために、後述の分散液とした場合の分散性や安定性向上の観点から、表面処理を施して用いるか、あるいは表面処理を施さずに用いるかを選択することができる。
表面処理を行う場合、表面処理の具体的な材料としては、酸化ケイ素や酸化ジルコニウム等の異種無機酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、オルガノシロキサン、ステアリン酸等の有機酸等が挙げられる。これら表面処理材は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。中でも、分散液の安定性の観点から、表面処理材としては、異種無機酸化物及び/又は金属水酸化物が好ましく、金属水酸化物がより好ましい。
無機酸化物粒子が、表面処理材で表面被覆処理されている場合、その被覆量(一般的に、この被覆量は、粒子の質量に対する当該粒子の表面に用いた表面処理材の質量割合で示される。)は、0.01〜99質量%であることが好ましい。当該範囲内とすることで、表面処理による分散性や安定性の向上効果を十分に得ることができ、また、下地層15の高屈折率により光取り出し効率を向上させることができる。
上記高屈折率を有する光散乱粒子は、第1金属酸化物層13との界面に接触又は近接するように配置されるのが好ましい。これにより、隣接する層内で全反射が起きたときに下地層15に染み出してくるエバネッセント光を粒子で散乱させることができ、光取り出し効率が向上する。
光散乱粒子の下地層15における含有量は、体積充填率で、1.0〜70%の範囲内であることが好ましく、5.0〜50%の範囲内であることがより好ましい。これにより、下地層15と隣接する層との界面において、屈折率の密度に分布を作ることができ、光散乱量を増加させて光取り出し効率を向上させることができる。
下地層15の形成方法としては、例えば、層媒体(バインダー)が樹脂材料の場合、媒体となる樹脂材料(ポリマー)溶液(溶媒としては、粒子の溶解しないものを用いる)に上記光散乱粒子を分散し、基板11上に塗布することで形成する。
これらの光散乱粒子は、実際には、多分散粒子であることや規則的に配置することが難しいことから、局部的には回折効果を有するものの、多くは拡散により光の方向を変化させて光取り出し効率を向上させる。
(下地層の形成方法)
次に、準備した基板11上に、下地層15を形成する。下地層15は、溶媒に樹脂と酸化物粒子を分散することで下地層形成用分散液を作製し、この下地層形成用分散液を基板上に塗布することで形成する。
下地層形成用分散液に用いる分散溶媒には特に制限はないが、樹脂の析出と酸化物粒子の凝集が起こらない溶媒を選択することが好ましい。分散性の観点から、樹脂と酸化物粒子とを混合した液を超音波処理やビーズミル処理といった方法で分散させ、フィルター等でろ過することが、塗布乾燥後の基板上に金属酸化物の凝集物が発生することを防ぐことができるため好ましい。
下地層15の形成方法は、任意の適切な方法を選択することができ、例えば、塗工方法として、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷、スクリーン印刷法、インクジェット印刷等の各種印刷方法に加えて、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等の各種塗布法を用いることができる。
下地層15を所定のパターンに形成する場合には、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法を用いることが好ましい。
下地層15は、基板11上に上記塗工法を成膜した後、温風乾燥や赤外線乾燥等の公知の加熱乾燥法や、自然乾燥により乾燥して形成する。加熱乾燥を行なう場合の温度は、使用する基板11に応じて適宜選択することができる。200℃以下の温度で行なうことが好ましい。また、後述のように選択する樹脂によっては、紫外線等の光エネルギーによる硬化や、基板11へのダメージの少ない熱硬化等の処理を行ってもよい。
また、下地層形成用分散液に用いる分散溶媒として、水等のヒドロキシ基を有する極性溶媒や、沸点が200℃以下の低沸点溶媒を選択する場合は、乾燥方法として光源のフィラメント温度が1600〜3000℃の範囲内にある赤外線ヒータを用いることが好ましい。ヒドロキシ基が赤外線ヒータから発せられる特定の波長に吸収を持つため、溶媒の乾燥が可能となる。一方、基板11としてポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)に対しては、赤外線ヒータから発せられる特定の波長の吸収が少ないため、基板11に対する熱ダメージが少ない。
ヒドロキシ基を有する極性溶媒としては、水(蒸留水、脱イオン水などの純水が好ましい)の他、メタノールやエタノール等のアルコール系溶媒、グリコール類、グリコールエーテル類、及び、水とアルコールの混合溶媒等が挙げられる。グリコールエーテル類系有機溶媒としては、具体的には、例えば、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなどが挙げられる。また、アルコール系有機溶媒としては、具体的には、例えば、上述のメタノール、エタノールの他、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ジアセトンアルコール、ブトキシエタノールなどが挙げられる。
[基板]
基板11は、高い光透過性を有していれば、特に制限はない。例えば樹脂基板、樹脂フィルム等が好適に挙げられるが、生産性の観点や軽量性と柔軟性といった性能の観点から透明樹脂フィルムを用いることが好ましい。
基板11として使用できる樹脂としては特に制限はなく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を単独で使用してもよいし、複数を併用してもよい。
また、基板11は、未延伸フィルムでもよいし、延伸フィルムでもよい。
基板11は透明性が高いと、透明電極10を電子デバイスの透明電極として使用することができるため好ましい。透明性が高いとは、JIS K 7361−1:1997(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が50%以上であることをいい、80%以上であるとより好ましい。
基板11は、基板11上に形成されるガスバリア層17や下地層15等との密着性を高めるため、表面活性化処理が施されていてもよい。また、耐衝撃性を高めるため、ハードコート層が設けられていてもよい。表面活性化処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等が挙げられる。ハードコート層の材料としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等が挙げられ、なかでも紫外線硬化型樹脂を好ましく使用できる。
[金属細線パターン]
透明電極10を構成する金属細線パターン18は、透明導電層12と共に用いられ、第1金属酸化物層13による透明電極10の面方向の導電性を、さらに向上させるための構成である。金属細線パターン18は、金属を主成分とし、導電性を得ることができる程度の金属の含有比率で形成されている。金属細線パターン18中の金属の比率は、好ましくは50質量%以上である。
透明電極10を構成する金属細線パターン18は、金属材料を含有し、下地層15上に開口部を有するようにパターン状に形成されている。開口部とは、透明な基板を用いた場合、金属細線パターン18を有さない部分であり、金属細線パターン18の透光性部分である。
金属細線パターン18のパターン形状には特に制限はない。金属細線パターン18のパターン形状としては、例えば、ストライプ状(平行線状)、格子状、ハニカム状、ランダムな網目状等が挙げられるが、透明性の観点から、特にストライプ状であることが好ましい。
また、基板11として透明な基板を用いる場合、開口部が占める割合、すなわち開口率は透明性の観点から80%以上であることが好ましい。例えば、線幅100μm、線間隔1mmのストライプ状パターンの開口率は、およそ90%である。
金属細線パターン18の線幅は、好ましくは10〜200μmの範囲内であり、更に好ましくは10〜100μmの範囲内である。金属細線パターン18の線幅が10μm以上で所望の導電性が得られ、また、200μm以下とすることで透明電極の透明性が向上する。また、ストライプ状、格子状のパターンにおいては、金属細線パターン18の間隔は、0.5〜4mmの範囲内であることが好ましい。
金属細線パターン18の高さ(厚さ)は、0.1〜5.0μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜2.0μmの範囲内であることがより好ましい。金属細線パターン18の高さが0.1μm以上で所望の導電性が得られ、また、5.0μm以下とすることで有機電子デバイスに用いる場合に、その凹凸差が機能層の層厚分布に与える影響を軽減できる。
[金属細線パターンの形成方法]
金属細線パターン18は、金属又は金属の形成材料が配合された金属インク組成物を調製し、塗布した後、乾燥処理や焼成処理等の後処理を適宜選択して行い、形成することが好ましい。
(金属インク組成物)
金属インク組成物に配合される金属(単体金属又は合金)としては、粒子状又は繊維状(チューブ状、ワイヤ状等)であることが好ましく、金属ナノ粒子であることがより好ましい。また、金属原子(元素)を有し、分解等の構造変化によって金属を生じる、金属の形成材料から形成されていることが好ましい。金属インク組成物中の金属及び金属の形成材料は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
金属ナノ粒子に使用される金属としては、例えば、金、銀、銅及び白金等の金属あるいは、これらを主成分とした合金等が挙げられる。これらの中でも、光の反射率が優れ、得られる有機電子デバイスの効率をより一層向上できる観点から、金及び銀が好ましい。これらの金属または合金は、いずれか1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
金属インク組成物としては、金属ナノ粒子の表面を保護剤で被覆し、溶媒に安定して独立分散させた構成の金属コロイドや金属ナノ粒子分散液であることが好ましい。
金属インク組成物における金属ナノ粒子の平均粒径としては、原子スケールから1000nm以下のものが好ましく適用できる。特に、金属ナノ粒子は、平均粒径が3〜300nmの範囲内であるものが好ましく、5〜100nmの範囲内であるものがより好ましく用いられる。特に、平均粒径3〜100nmの範囲内の銀ナノ粒子が好ましい。また、金属ナノワイヤとは、幅が1nm以上1000nm未満、好ましくは1〜100nmである銀ワイヤが好ましい。
ここで、金属ナノ粒子及び金属コロイドの平均粒子径、金属ナノワイヤの幅は透過電子顕微鏡(TEM)を用いて、上記分散体中の金属ナノ粒子の粒子径、金属ナノワイヤの幅を測定して求めることができる。例えば、TEMの画像で観察される粒子のうち、重なっていない独立した300個の金属ナノ粒子の粒子径を計測して、平均粒子径を算出することができる。
金属コロイドにおいて、金属ナノ粒子の表面を被覆する保護剤としては、有機π接合配位子が好ましい。金属ナノ粒子に有機π共役系配位子がπ接合することにより、金属コロイドに導電性が付与される。
上記有機π接合配位子としては、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体及びポルフィリン誘導体からなる群から選ばれる一種または二種以上の化合物が好ましい。
また、上記有機π接合配位子としては、金属ナノ粒子への配位や、分散媒中での分散性を向上させるために、置換基としてアミノ基、アルキルアミノ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ホスフィン基、ホスフォン酸基、スルフォン酸基、ハロゲン基、セレノール基、スルフィド基、セレノエーテル基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、及び、これらの塩から選ばれる少なくとも1種の置換基を有することが好ましい。
また、有機π接合配位子として、国際公開第2011/114713号パンフレットに記載の有機π共役系配位子を用いることができる。
上記有機π接合配位子の具体的な化合物としては、下記のOTAN、OTAP、及び、OCANから選ばれる1種または2種以上が好ましい。
OTAN: 2,3,11,12,20,21,29,30−オクタキス[(2−N,N−ジメチルアミノエチル)チオ]ナフタロシアニン
OTAP: 2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス[(2−N,N−ジメチルアミノエチル)チオ]フタロシアニン
OCAN:2,3,11,12,20,21,29,30−ナフタロシアニンオクタカルボン酸
有機π接合配位子を含有する金属ナノ粒子分散液の調製方法としては、液相還元法があげられる。また、本実施形態の有機π接合配位子の製造及び有機π接合配位子を含有する金属ナノ粒子分散液の調製は、国際公開第2011/114713号の段落[0039]〜[0060]に記載の方法に準じて行なうことができる。
金属コロイドの平均粒子径は、通常は3nm以上500nm以下であり、好ましくは5nm以上50nm以下である。金属コロイドの平均粒子径が上記範囲内であると、粒子間の融着が起こり易くなり、得られる金属細線パターン18の導電性を向上させることができる。
金属ナノ粒子分散液において、金属ナノ粒子の表面を被覆する保護剤としては、200℃以下の低い温度にて配位子がはずれる保護剤を用いることが好ましい。これにより、低温又は低エネルギーにより、保護剤がはずれ、金属ナノ粒子の融着がおき、導電性を付与できる。
具体的には特開2013−142173公報、特開2012−162767号公報、特開2014−139343号公報、特許第5606439号などに記載の金属ナノ粒子分散液が例として挙げられる。
金属の形成材料としては、例えば、金属塩、金属錯体、有機金属化合物(金属−炭素結合を有する化合物)等を挙げることができる。金属塩及び金属錯体は、有機基を有する金属化合物及び有機基を有しない金属化合物のいずれでもよい。金属インク組成物に金属の形成材料を用いることで、材料から金属が生じ、この金属を含む金属細線パターン18が形成される。
金属銀の形成材料としては、「AgX」で表される銀化合物と、アンモニウムカルバメート系化合物とを反応させて作製された有機銀錯体化合物を用いることが好ましい。「AgX」において、nは1〜4の整数であり、Xは酸素、硫黄、ハロゲン、シアノ、シアネート、カーボネート、ニトレート、ニトライト、サルフェート、ホスフェート、チオシアネート、クロレート、パークロレート、テトラフルオロボレート、アセチルアセトネート、及び、カルボキシレートで構成された群から選択される置換基である。
上記銀化合物としては、例えば、酸化銀、チオシアネート化銀、シアン化銀、シアネート化銀、炭酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、硫酸銀、燐酸銀、過塩素酸銀、四フッ素ボレート化銀、アセチルアセトネート化銀、酢酸銀、乳酸銀、及び、シュウ酸銀透等を挙げることができる。銀化合物としては、酸化銀や炭酸銀を使用することが反応性や後処理面で好ましい。
アンモニウムカルバメート系化合物としては、例えば、アンモニウムカルバメート、エチルアンモニウムエチルカルバメート、イソプロピルアンモニウムイソプロピルカルバメート、n−ブチルアンモニウムn−ブチルカルバメート、イソブチルアンモニウムイソブチルカルバメート、t−ブチルアンモニウムt−ブチルカルバメート、2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルヘキシルカルバメート、オクタデシルアンモニウムオクタデシルカルバメート、2−メトキシエチルアンモニウム2−メトキシエチルカルバメート、2−シアノエチルアンモニウム2−シアノエチルカルバメート、ジブチルアンモニウムジブチルカルバメート、ジオクタデシルアンモニウムジオクタデシルカルバメート、メチルデシルアンモニウムメチルデシルカルバメート、ヘキサメチレンイミニウムヘキサメチレンイミンカルバメート、モルホリウムモルホリンカルバメート、ピリジニュムエチルヘキシルカルバメート、トリエチレンジアミニウムイソプロピルバイカルバメート、ベンジルアンモニウムベンジルカルバメート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウムトリエトキシシリルプロピルカルバメート等を挙げることができる。上記アンモニウムカルバメート系化合物のうち、1次アミン置換されたアルキルアンモニウムアルキルカルバメートは、反応性及び安定性面で2次または3次アミンより優れるため好ましい。
上記有機銀錯体化合物は、特開2011−48795号公報に記載の方法により作製することができる。例えば、上記銀化合物の1種以上と、上記アンモニウムカルバメート系化合物の1種以上とを、窒素雰囲気の常圧または加圧状態で、溶媒を使用せずに直接反応させることができる。また、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール類、エチレングリコール、グリセリンのようなグリコール類、エチルアセテート、ブチルアセテート、カルビトールアセテートのようなアセテート類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、メチルエチルケトン、アセトンのようなケトン類、ヘキサン、ヘプタンのような炭化水素系、ベンゼン、トルエンのような芳香族、そしてクロロホルムやメチレンクロライド、カーボンテトラクロライドのようなハロゲン置換溶媒等の溶媒を使用して反応させることができる。
有機銀錯体化合物の構造は「Ag[A]」で表すことができる。なお、「Ag[A]」において、Aは上記アンモニウムカルバメート系化合物であり、mは0.7〜2.5である。
上記有機銀錯体化合物は、メタノールのようなアルコール類、エチルアセテートのようなエステル類、テトラヒドロフランのようなエーテル類溶媒など、有機銀錯体化合物を製造する溶媒を含む多様な溶媒によく溶ける。このため、有機銀錯体化合物は、金属インク組成物として、塗布やプリンティング工程に容易に適用可能である。
また、金属銀の形成材料としては、式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀が例示できる。カルボン酸銀は、式「−COOAg」で表される基を有していれば特に限定されない。例えば、式「−COOAg」で表される基の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよい。また、カルボン酸銀中の式「−COOAg」で表される基の位置も特に限定されない。
カルボン酸銀としては、特開2015−66695号公報に記載のβ−ケトカルボン酸銀、及び、カルボン酸銀(4)からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。なお、金属銀の形成材料としては、β−ケトカルボン酸銀及びカルボン酸銀(4)だけではなく、これらを包括する、式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀を用いることができる。
また、金属インク組成物に金属の形成材料として上記カルボン酸銀を含む場合、カルボン酸銀と共に、炭素数25以下のアミン化合物及び第4級アンモニウム塩、アンモニア、並びにアミン化合物又はアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩からなる群から選択される一種以上の含窒素化合物が配合されていることが好ましい。
アミン化合物としては、炭素数が1〜25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、第4級アンモニウム塩は、炭素数が4〜25である。アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基「−NH」を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
(金属細線パターンの形成方法)
次に、金属細線パターン18の形成方法について説明する。金属細線パターン18は、金属インク組成物を用いて形成する。金属細線パターン18の形成方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法が利用できる。この従来公知の金属細線パターン18の形成方法としては、例えば、フォトリソ法、塗布法、印刷法を応用した方法等を利用できる。
金属インク組成物は、上述の金属ナノ粒子と、溶媒とを含有し、分散剤、粘度調整剤、バインダー等の添加剤が含有されてもよい。金属ナノ粒子含有組成物に含有される溶媒としては特に制限はないが、中赤外線照射により効率的に溶媒を揮発できる点で、OH基を有する化合物が好ましく、水、アルコール、グリコールエーテルが好ましい。
金属ナノ粒子含有組成物に用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ファルネソール、デデカジエノール、リナロール、ゲラニオール、ネロール、ヘプタジエノール、テトラデセノール、ヘキサデセネオール、フィトール、オレイルアルコール、デデセノール、デセノール、ウンデシレニルアルコール、ノネノール、シトロネロール、オクテノール、ヘプテノール、メチルシクロヘキサノール、メントール、ジメチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキセノール、テルピネオール、ジヒドロカルベオール、イソプレゴール、クレゾール、トリメチルシクロヘキセノール、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘプタンジオール、プロパンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
印刷法により金属ナノ粒子含有組成物のパターンを形成する場合には、一般的に電極パターン形成に使われる方法が適用可能である。具体的な例として、グラビア印刷法については特開2009−295980号公報、特開2009−259826号公報、特開2009−96189号公報、特開2009−90662号公報記載の方法等が、フレキソ印刷法については特開2004−268319号公報、特開2003−168560号公報記載の方法等が、スクリーン印刷法については特開2010−34161号公報、特開2010−10245号公報、特開2009−302345号公報記載の方法等が、インクジェット印刷法については特開2011−180562号公報、特開2000−127410号公報、特開平8−238774号公報記載の方法等が例として挙げられる。
フォトリソ法により金属ナノ粒子含有組成物のパターンを形成する場合には、具体的には、下地層15上の全面に、印刷又は塗布にて金属インク組成物を形成し、後述する乾燥処理及び焼成処理を行った後、公知のフォトリソ法を用いて、エッチングすることにより、所望のパターンに加工する。
次に、基板11上に塗布された金属ナノ粒子含有組成物の乾燥処理を行なう。乾燥処理は、公知の乾燥法を用いて行うことができる。乾燥法としては、例えば、空冷乾燥、温風等を用いた対流伝熱乾燥、赤外線等を用いた輻射電熱乾燥、ホットプレート等を用いた伝導伝熱乾燥、真空乾燥、マイクロ波を用いた内部発熱乾燥、IPA蒸気乾燥、マランゴニ乾燥、ロタゴニ乾燥、凍結乾燥等を用いることができる。
加熱乾燥では、50〜200℃の温度範囲で、基板11の変形がない温度で行なうことが好ましい。基板11の表面温度が、50〜150℃となる条件で加熱することがより好ましい。基板にPET基板を用いる場合は、100℃以下の温度範囲で加熱することが特に好ましい。焼成時間は温度や使用する金属ナノ粒子の大きさにもよるが、10秒〜30分の範囲内であることが好ましく、生産性の観点から、10秒〜15分の範囲内であることがより好ましく、10秒〜5分の範囲内であることが特に好ましい。
乾燥処理においては、赤外線照射による乾燥処理を行なうことが好ましい。特に、波長制御赤外線ヒータ等により特定の波長領域を選択的に照射することが好ましい。特定の波長領域を選択的に用いることにより、基板11の吸収領域のカットや、金属インク組成物の溶媒に有効な特定の波長を選択的に照射することができる。特に光源のフィラメント温度が1600〜3000℃の範囲内にある赤外線ヒータを用いることが好ましい。
次に、乾燥させた金属インク組成物のパターンの焼成処理を行なう。なお、金属インク組成物に含まれる金属組成物の種類(例えば、上述のπ接合有機配位子を有する銀コロイド等)によっては、乾燥処理で十分導電性が発現するため、焼成工程を行わなくてもよい。
金属インク組成物のパターンの焼成は、フラッシュランプを用いた光照射(フラッシュ焼成)により行なうことが、透明電極10の導電性の向上のため好ましい。フラッシュ焼成で用いられるフラッシュランプの放電管としては、キセノン、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の放電管を用いることができるが、キセノンランプを用いることが好ましい。
フラッシュランプの好ましいスペクトル帯域としては、240〜2000nmの範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、フラッシュ焼成による基板11の熱変形等のダメージが少ない。
フラッシュランプの光照射条件は任意であるが、光照射エネルギーの総計が0.1〜50J/cmの範囲内であることが好ましく、0.5〜10J/cmの範囲内であることがより好ましい。光照射時間は、10μ秒〜100m秒の範囲内が好ましく、100μ秒〜10m秒の範囲内がより好ましい。また、光照射回数は1回でも複数回でも良く、1〜50回の範囲で行うのが好ましい。これらの好ましい条件範囲でフラッシュ光照射を行うことにより、基板11にダメージを与えることなく金属細線パターンを形成できる。
基板11に対するフラッシュランプ照射は、基板11の金属インク組成物のパターンが形成されている側から行なうことが好ましい。基板11が透明な場合には、基板11側から照射してもよく、基板11の両面から照射してもよい。
また、フラッシュ焼成の際の基板11の表面温度は、基板11の耐熱温度や、金属インク組成物に含まれる溶媒の分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、金属インク組成物の分散性や酸化性等の熱的挙動などを考慮して決定すればよく、室温以上200℃以下で行うことが好ましい。
フラッシュランプの光照射装置は上記の照射エネルギー、照射時間を満足するものであればよい。また、フラッシュ焼成は大気中で行ってもよいが、必要に応じ、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。
[ガスバリア層]
透明電極10が適用される有機ELデバイス等の有機電子デバイスは、デバイス内部に微量の水分や酸素が存在すると容易に性能劣化が生じてしまう。このため、基板11を通してデバイス内部に水分や酸素が侵入することを防止するため、水分や酸素に対して高い遮蔽能を有するガスバリア層17を設けることが好ましい。また、基板上に予めガスバリア層17が形成されたガスバリアフィルムを、透明電極10の基板11として用いることもできる。
ガスバリア層17の組成や構造及びその形成方法には特に制限はなく、シリカ等の無機化合物による層を真空蒸着やCVD法により形成することができる。例えば、以下に示すケイ素含有ポリマー改質層や、ケイ素化合物層、遷移金属酸化物層を、単独又は組み合わせてガスバリア層17を構成することができる。
(ケイ素含有ポリマー改質層)
ガスバリア層17に適用されるケイ素含有ポリマー改質層は、繰り返し構造中にケイ素と酸素(Si−O)、ケイ素と窒素(Si−N)等の結合を有するケイ素含有ポリマーを改質処理することによって形成される。なお、改質処理によりケイ素含有ポリマーをシリカ等に転化させるが、ケイ素含有ポリマーの全てを改質する必要はなく、少なくとも一部、例えば紫外線照射面側が改質されていればよい。
ケイ素含有ポリマー改質層の厚さは、目的に応じて適宜設定することができるが、一般的には、10nm〜10μmの範囲内とすることができる。
ケイ素含有ポリマーの具体例としては、繰り返し構造中に、Si−O結合を有するポリシロキサン(ポリシルセスキオキサンを含む)、Si−N結合を有するポリシラザン、Si−O結合とSi−N結合の両方を含むポリシロキサザン等が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用することができる。また、異なる種類のケイ素含有ポリマーの層を積層することもできる。
ポリシロキサンは、繰り返し構造中に、−〔RaSiO1/2〕−、−〔RbSiO〕−、−〔RcSiO3/2〕−、−〔SiO〕−等を含む。Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子、1〜20の炭素原子を含むアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、アリール基(例えばフェニル基、不飽和アルキル基)等の置換基を表す。
ポリシルセスキオキサンは、上記ポリシロキサンのなかでもシルセスキオキサンと同じ構造を繰り返し構造中に含む化合物である。シルセスキオキサンは、上記−[RcSiO3/2]−で表される構造を有する化合物である。
ポリシラザンの構造は、下記一般式(A)で表すことができる。
−[Si(R)(R)−N(R)]− ・・・一般式(A)
〔上記一般式(A)において、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基又はアルコキシ基を表す。〕
上記一般式(A)中のR、R及びRの全てが水素原子であるポリシラザンが、パーヒドロポリシラザンである。パーヒドロポリシラザンは、緻密な膜が得られる点で好ましい。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と、6員環及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は、数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体又は固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。
一方、上記一般式(A)において、Siと結合する水素原子の一部がアルキル基等で置換されたポリシランがオルガノポリシラザンである。オルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基によって下層の基板11との密着性が向上し、かつ硬くてもろい特性を有するポリシラザンに靭性を付与することができるため、膜を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられるという利点がある。したがって、用途に応じて適宜、パーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択するか、又は両者を混合して使用する。
ポリシロキサザンは、繰り返し構造中に、−[(SiH(NH)]−と−[(SiHO]−で表される構造を含む。n、m及びrは、それぞれ独立に、1〜3を表す。
低温でセラミック化するポリシラザンの他の例としては、上記一般式(A)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザンに、ケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5−238827号公報参照)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−122852号公報参照)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−240208号公報参照)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6−299118号公報参照)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6−306329号公報参照)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7−196986号公報参照)等が挙げられる。
ケイ素含有ポリマー改質層は、上述したケイ素含有ポリマーを含有する塗布液を用いて塗膜を形成し、当該塗膜に改質処理を施すことにより形成することができる。
塗膜の形成方法としては、ロールコート法、フローコート法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、バーコート法、流延成膜法、インクジェット法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗布液の調製には、ポリシラザンと容易に反応するアルコール系有機溶媒又は水分を含む有機溶媒の使用を避けることが好ましい。したがって、塗布液の調製に使用できる有機溶媒としては、例えば脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類等が挙げられる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素類、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素類、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、ポリシラザンの溶解度や有機溶媒の蒸発速度等の特性に合わせて選択し、複数の有機溶媒を混合してもよい。
塗布液としては、ポリシラザンを有機溶媒中に溶解させた市販品を使用することができる。使用できる市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ社製のアクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。
塗布液は、改質処理を促進する観点から、触媒を含有することもできる。
触媒としては、塩基性触媒が好ましく、例えばN,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等のアミン触媒、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒、N−複素環式化合物等が挙げられる。
塗布液におけるケイ素含有ポリマーの含有量は、形成するケイ素含有ポリマー改質層の厚さや塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35.0質量%の範囲内であることが好ましい。
形成した塗膜には、塗膜中の有機溶媒を除去する観点から、加熱による乾燥処理を施すことができる。
加熱時の温度は、50〜200℃の範囲内とすることができる。加熱時間は、基板11の変形等を防ぐため、短時間に設定することが好ましい。例えば、ガラス転移温度が70℃のポリエチレンテレフタレートを基板11に用いる場合、乾燥処理時の温度は樹脂フィルムの変形を防止するため、150℃以下に設定することができる。
また、形成した塗膜に、塗膜中の水分を取り除く観点から、低湿度環境に維持して除湿する乾燥処理を施すこともできる。
低湿度環境における湿度は温度により変化するので、温度と湿度の関係は露点温度の規定により決定することができる。好ましい露点温度は4℃以下(温度25℃/湿度25%)で、より好ましい露点温度は−8℃(温度25℃/湿度10%)以下、さらに好ましい露点温度は−31℃(温度25℃/湿度1%)以下である。水分を取り除きやすくするため、減圧乾燥してもよい。減圧乾燥における圧力は常圧〜0.1MPaの範囲内で選ぶことができる。
塗膜の改質処理の方法としては、基板11へのダメージが少ない公知の方法を使用することができ、低温処理が可能なプラズマ処理、オゾン処理、紫外線又は真空紫外線の照射処理等を用いることができる。なかでも、真空紫外線の照射処理は、ケイ素含有ポリマー改質層を形成してから遷移金属酸化物層を形成するまでの間の環境の影響によってガスバリア性が低下しにくいことから、好ましい。
真空紫外線照射処理は、ケイ素含有ポリマーを構成する原子間結合力より大きい100〜200nmの波長範囲にある真空紫外光の光エネルギーを用い、原子間の結合を光量子プロセスと呼ばれる、光子のみによる作用により直接切断するとともに、活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、約200℃以下の比較的低温の環境下でシリカ等に転化させる処理である。
真空紫外光の光源としては、100〜200nmの波長の光を発生させるものであればよく、照射波長が、約172nmの希ガスエキシマランプ(例えば、エム・ディ・コム社製のXeエキシマランプ MODEL:MECL−M−1−200)、約185nmの低圧水銀蒸気ランプ、200nm以下の中圧及び高圧水銀蒸気ランプ等が挙げられる。
エキシマランプの特徴としては、単一波長の光を放射し、発光効率が極めて高いこと、放射する光が短波長で照射対象の温度を低温状態に保てること、瞬時の点灯及び点滅が可能であること等が挙げられ、熱の影響を受けやすい基板11にも適用しやすい光源である。
特に、Xeエキシマランプが放射する172nmという短い単一波長の真空紫外光は、酸素の吸収係数が大きく、微量な酸素から高濃度の活性酸素又はオゾンを発生させ、有機物の結合の解離能力が高いことから、短時間での改質処理を可能とする。
真空紫外線の照射条件は、ケイ素含有ポリマー改質層より下の基板11等を劣化させない範囲内で設定すればよい。
例えば、紫外線の照射時間は、基板11や塗布液の組成、濃度等にもよるが、一般に0.1秒〜10分の範囲内であり、0.5秒〜3分の範囲内であることが好ましい。 なお、均一に紫外線を照射する観点から、光源からの紫外線を反射板で反射させた反射光をケイ素含有ポリマー改質層の塗膜に照射することが好ましい。
真空紫外線の照度は、1mW/cm〜10W/cmの範囲内とすることができる。1mW/cm以上であれば、改質効率が向上し、10W/cm以下であれば、塗膜に生じ得るアブレーション、基板11のダメージ等を低減することができる。
真空紫外線の照射エネルギー量(照射量)は、0.1〜10.0J/cmでの範囲内にすることができる。この範囲であれば、過剰な改質によるクラックの発生、基板11の熱変形等を防止することができ、生産性も向上する。
真空紫外線照射処理は、バッチ処理でも連続処理でもよい。バッチ処理の場合、真空紫外線の光源を備える紫外線焼成炉(例えば、アイグラフィクス社製の紫外線焼成炉)において処理することができる。連続処理の場合、基板11を搬送して真空紫外線の光源を備えるゾーン内で連続的に紫外線を照射すればよい。
真空紫外線照射時の反応には酸素が必要であるが、真空紫外線は酸素による吸収があり、改質効率が低下しやすいことから、できる限り酸素濃度及び水蒸気濃度の低い雰囲気内で真空紫外線の照射を行うことが好ましい。例えば、真空紫外線照射時の酸素濃度は、10〜20000体積ppm(0.001〜2体積%)の範囲内とすることができる。水蒸気濃度は、好ましくは1000〜4000体積ppmの範囲内である。
上記雰囲気の調整には、乾燥不活性ガス、特にコストの観点から乾燥窒素ガスを用いることが好ましい。酸素濃度の調整は、室内に導入する酸素ガス及び不活性ガスの流量比を調整することにより、行うことができる。
(ケイ素化合物層)
ガスバリア層17としては、ガスバリア性をより高める観点から、ケイ素含有ポリマー改質層の下に、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、炭化ケイ素等のケイ素化合物を含有するケイ素化合物層をさらに配置することもできる。
遷移金属酸化物層と隣接する層がケイ素含有ポリマー改質層であれば、このケイ素含有ポリマー改質層よりも下層を、ケイ素化合物層とケイ素含有ポリマー改質層の多層構造とすることもできる。多層構造によって、透明電極10に浸入するガスに対するガスバリア性をより高めることができ、導電性能の安定性をさらに高めることができる。
ケイ素化合物層は、酸化ケイ素を原料とする真空蒸着法、ケイ素を含むターゲットを用いたマグネトロンスパッタ法、イオンプレーティング法の他、ポリシラザン等のケイ素含有ポリマー改質層に用いられるケイ素含有ポリマー(例えば、ヘキサメチルジシロキサン、パーヒドロポリシラザン等)、二酸化ケイ素等を原料としてプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法等により形成することができる。
(遷移金属酸化物層)
遷移金属酸化物層は、ケイ素含有ポリマー改質層上に、遷移金属酸化物を用いて形成されている。遷移金属酸化物層がケイ素含有ポリマー改質層と隣接することによりケイ素含有ポリマー改質層の酸化を抑制し、ケイ素含有ポリマー改質層とともに非常に高いガスバリア性を発揮することができる。
遷移金属酸化物層に使用される遷移金属酸化物は、元素周期表における第3族から第12族までの金属の酸化物であり、そのうちの1種を単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。
より高い安定性を得る観点からは、遷移金属酸化物が、元素周期表における第5族の金属の酸化物であることが好ましい。第5族の金属としては、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)等が挙げられる。
なかでも、遷移金属酸化物が、酸化ニオブであることが好ましい。酸化ニオブが用いられた遷移金属酸化物層とケイ素含有ポリマー改質層とを組み合わせた透明電極10は、導電性能の安定性が向上するだけでなく、入射光の透過率の角度依存性を減らすことができる。これは、低屈折率層と高屈折率層を積層させることで、光の多重干渉を生じさせ、反射率が低減すること、また屈折率差による光学的な挙動が変化していること等が要因と推察される。
遷移金属酸化物層における遷移金属酸化物の含有量は、50〜100質量%の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、遷移金属酸化物層中の遷移金属がケイ素含有ポリマー改質層との相互作用により、十分なガスバリア性を得ることができる。
遷移金属酸化物層の形成方法としては、遷移金属と酸素との組成比の調整がしやすいことから、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)法、プラズマCVD法等のCVD法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法等が挙げられる。なかでも、下層へのダメージがなく、生産性が高いスパッタ法が好ましい。
スパッタ法としては、2極スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、デュアルマグネトロン(DM;Dual Magnetron)スパッタ法、反応性スパッタ法、イオンビームスパッタ法、電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)スパッタ法等を用いることができ、このうちの1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用しもよい。
ターゲットの印加方式はターゲット種に応じて適宜選択することができる。DC(直流)方式又はDM方式の場合には、そのターゲットに遷移金属を用い、酸素を原料ガスとして導入することにより、遷移金属酸化物の薄膜を形成することができる。RF(高周波)方式の場合は、遷移金属酸化物のターゲットを用いることができる。不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等を用いることができ、なかでもArが好ましい。
遷移金属酸化物層は、単層であってもよいし、2層以上の多層構造であってもよい。多層構造の場合、各層に用いられる遷移金属酸化物は同じであってもよいし、異なっていてもよい。遷移金属酸化物層の厚さは、位置によらず均一なガスバリア性を発揮する観点から、1〜200nmの範囲内にあることが好ましい。
[ガスバリア層形成工程]
透明電極10の作製においては、必要に応じて基板11上にガスバリア層17を形成してもよい。ガスバリア層17の形成は、上述の透明導電層12、及び、下地層15の形成前に行なう。
ガスバリア層17の形成は、上述のケイ素含有ポリマー改質層、ケイ素化合物層、遷移金属酸化物層を、単独又は組み合わせて真空蒸着やCVD法により形成することが好ましい。ケイ素含有ポリマー改質層、ケイ素化合物層、及び、遷移金属酸化物層の形成方法は、それぞれ上述の方法や条件を用いることができる。
[粒子含有層]
粒子含有層16は、基板11において、透明導電層12が形成される面(表面)と反対側の面(裏面)に設けられる。透明電極10を重ねた際や、長尺の透明電極10をロール状に巻回した際のように、透明電極10同士が直接接触する状態となった場合において、透明電極10が粒子含有層16を有することにより、帯電や、透明電極10同士の固着等を抑制することができる。
透明電極10において、粒子含有層16は、粒子とバインダー樹脂とから構成される。粒子含有層16は、バインダー樹脂100質量部に対して、粒子を1〜900質量部の範囲で含有することが好ましい。
(粒子)
粒子含有層16を構成する粒子は、無機微粒子、無機酸化物粒子、導電性ポリマー粒子、導電性カーボン微粒子等が好ましい。なかでも、ZnO、TiO、SnO、Al、In、MgO、BaO、MoO、V等の酸化物粒子、及び、SiO等の無機酸化物粒子が好ましい。特に、SnO、SiOが好ましい。
(バインダー樹脂)
粒子含有層16を構成するバインダー樹脂としては、例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、またはセルロースナイトレート等のセルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、またはコポリブチレン/テレ/イソフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、またはポリビニルベンザール等のポリビニルアルコール誘導体、ノルボルネン化合物を含有するノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂もしくはアクリル樹脂とその他樹脂との共重合体を用いることができるが、特にこれら例示する樹脂材料に限定されるものではない。この中では、セルロース誘導体或いはアクリル樹脂が好ましく、さらにアクリル樹脂が最も好ましく用いられる。
バインダー樹脂としては、重量平均分子量が40万以上で、ガラス転移温度が80〜110℃の範囲内にある上記熱可塑性樹脂が、光学特性及び形成する粒子含有層16の品質の点で好ましい。
ガラス転移温度は、JIS K 7121に記載の方法で求めることができる。ここで使用するバインダー樹脂は、粒子含有層を構成する全樹脂質量の60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、必要に応じて活性線硬化性樹脂、あるいは熱硬化樹脂を適用することもできる。
(粒子含有層の形成方法)
透明電極10の作製においては、必要に応じて基板11上(裏面側)に粒子含有層16を形成してもよい。粒子含有層16の形成は、上述の透明導電層12、下地層15、及び、ガスバリア層17の形成前に行なう。
粒子含有層16の形成では、上述の粒子とバインダー樹脂とを、適当な有機溶剤に溶解して、溶液状態の粒子含有層形成用塗布液を調製し、これら湿式塗布方式により、基板11上に塗布及び乾燥して、粒子含有層16を形成する。
粒子含有層形成用塗布液の調製に用いる有機溶剤としては、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類などを適宜混合して使用することができるが、有機溶剤は、特にこれらに限定されるものではない。
炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられ、アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられ、ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、エステル類としては、例えば、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチル等が挙げられ、グリコールエーテル(炭素数1〜4)類としては、例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(略称:PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、またはプロピレングリコールモノ(炭素数1〜4)アルキルエーテルエステル類としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、その他の溶媒として、例えば、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。特にこれらに限定されるものではないが、これらを適宜混合した溶媒も好ましく用いられる。
粒子含有層形成用塗布液を基板11上に塗布する方法として、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ロールコート、グラビアコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、カーテンコート、押し出しコート、あるいは米国特許第2681294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート方法等が挙げられる。これら湿式塗布方法を適宜用いることにより、基板11上に、乾燥膜厚が、0.1〜20μmの範囲内、好ましくは0.2〜5μmの範囲内の粒子含有層16を形成することができる。
〈2.有機電子デバイス(有機エレクトロルミネッセンス素子)〉
次に、上述の透明電極を用いた有機電子デバイスの一例として、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の実施形態について説明する。本実施形態の有機EL素子は、上述の透明電極を一方の電極(透明電極)とし、この透明電極上に、発光ユニットと他方の電極(対向電極)とが設けられた構成である。このため、以下の有機EL素子の説明では、上述の透明電極と同じ構成については、詳細な説明を省略する。
[有機EL素子の構成]
本実施形態の有機EL素子の構成を図2に示す。図2に示す有機EL素子20は、透明電極10と、対向電極22とを備え、この電極間に有機機能層として発光ユニット21が設けられている。透明電極10は、上述の図1と同様の構成である。
ここで、「発光ユニット」とは、少なくとも、各種有機化合物を含有する、発光層、正孔輸送層、電子輸送層等の有機機能層を主体として構成される発光体(単位)をいう。発光体は、陽極と陰極とからなる一対の電極の間に挟持されており、当該陽極から供給される正孔(ホール)と陰極から供給される電子とが当該発光体内で再結合することにより発光する。なお、有機EL素子は、所望の発光色に応じて、当該発光ユニットを複数備えていてもよい。
透明電極10の透明導電層12と対向電極22とで発光ユニット21が挟持されている部分のみが、有機EL素子20における発光領域となる。そして、有機EL素子20は、発生させた光(以下、発光光hと記す)を、少なくとも透明電極10の基板11側から取り出すボトムエミッション型として構成されている。なお、透明(透光性)とは波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。主成分とは、構成全体の中で占める割合が最も高い成分である。
また、有機EL素子20において、透明電極10の透明導電層12及び対向電極22の端部には、図示しない取り出し電極が設けられている。透明電極10の透明導電層12及び対向電極22と外部電源(図示略)とは、取り出し電極を介して、電気的に接続される。
有機EL素子20の層構造が限定されることはなく、一般的な層構造であってよい。例えば、透明電極10の透明導電層12がアノード(すなわち陽極)として機能し、対向電極22がカソード(すなわち陰極)として機能する場合、発光ユニット21は、透明電極10の透明導電層12側から順に正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層を積層した構成が例示されるが、このうち、少なくとも有機材料を用いて構成された発光層を有することが必須である。正孔注入層及び正孔輸送層は、正孔輸送注入層として設けられてもよい。電子輸送層及び電子注入層は、電子輸送注入層として設けられてもよい。また、これらの発光ユニット21のうち、例えば、電子注入層は無機材料で構成されていてもよい。
発光ユニット21は、これらの層の他にも正孔阻止層や電子阻止層等が必要に応じて必要箇所に積層されていてもよい。さらに、発光層は、各波長領域の発光光を発生させる各色発光層を有し、これらの各色発光層を、非発光性の補助層を介して積層させた構造としてもよい。補助層は、正孔阻止層、電子阻止層として機能してもよい。さらに、カソードである対向電極22も、必要に応じた積層構造であってもよい。
また、有機EL素子20は、少なくとも1層の発光層を含む発光ユニット21を複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば、以下の構成を挙げることができる。
陽極/第1発光ユニット/中間コネクタ層/第2発光ユニット/中間コネクタ層/第3発光ユニット/陰極
ここで、上記第1発光ユニット、第2発光ユニット、及び、第3発光ユニットは全て同じであっても、異なっていてもよい。また、二つの発光ユニットが同じであり、残る一つが異なっていてもよい。複数の発光ユニット21は、直接積層されていても、中間コネクタ層を介して積層されていてもよい。
中間コネクタ層は、一般的に中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料構成を用いることができる。中間コネクタ層に用いられる材料としては、例えば、ITO(インジウム・錫酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO、TiN、ZrN、HfN、TiO、VO、CuI、InN、GaN、CuAlO、CuGaO、SrCu、LaB、RuO、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi等の2層膜や、SnO/Ag/SnO、ZnO/Ag/ZnO、Bi/Au/Bi、TiO/TiN/TiO、TiO/ZrN/TiO等の多層膜、またC60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、これらに限定されない。
発光ユニット21内の好ましい構成としては、例えば、上記の代表的な素子構成で挙げた構成から、陽極と陰極とを除いたもの等が挙げられるが、これらに限定されない。
タンデム型有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号明細書、米国特許第7420203号明細書、米国特許第7473923号明細書、米国特許第6872472号明細書、米国特許第6107734号明細書、米国特許第6337492号明細書、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号公報、特許第3496681号公報、特許第3884564号公報、特許第4213169号公報、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられる。
[電極]
有機EL素子20は、透明電極10の透明導電層12と対向電極22とからなる一対の電極に挟持された発光ユニット21を有する。透明電極10の透明導電層12と対向電極22とは、いずれか一方が有機EL素子20の陽極となり、他方が陰極となる。
また、図2に示す有機EL素子20では、透明電極10の透明導電層12が透明導電材料により構成され、対向電極22が高反射材料により構成されている。なお、有機EL素子20が両面発光型の場合には、対向電極22も透明導電材料により構成される。
[対向電極]
有機EL素子20において、対向電極22を陽極として用いる場合には、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。陽極を構成可能な電極物質の具体例としては、Au、Ag等の金属、CuI、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。陽極側から発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましい。また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.以下が好ましい。膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nmの範囲内、好ましくは10〜200nmの範囲内で選ばれる。
また、有機EL素子20において、対向電極22を陰極として用いる場合には、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物が電極物質として用いられる。
陰極は、発光ユニット21に電子を供給する陰極(カソード)として機能する電極膜である。陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物やアルミニウム等が好適である。
陰極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μmの範囲内、好ましくは50〜200nmの範囲内で選ばれる。また、陰極として上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
[取り出し電極]
取り出し電極は、透明電極10の透明導電層12と外部電源とを電気的に接続するものであって、その材料としては特に限定されるものではなく公知の素材を好適に使用できるが、例えば、3層構造からなるMAM電極(Mo/Al・Nd合金/Mo)等の金属膜を用いることができる。
[封止部材]
有機EL素子20は、有機材料等を用いて構成された発光ユニット21の劣化を防止することを目的として、図示しない封止部材で封止されていてもよい。封止部材は、有機EL素子20の上面を覆う板状(フィルム状)の部材であって、接着部によって基板11側に固定される。また、封止部材は、封止膜であってもよい。このような封止部材は、有機EL素子20の電極端子部分を露出させ、少なくとも発光ユニット21を覆う状態で設けられている。また、封止部材に電極を設け、有機EL素子20の電極端子部分と、封止部材の電極とを導通させる構成でもよい。
板状(フィルム状)の封止部材としては、具体的には、ガラス基板、ポリマー基板、金属基板等が挙げられ、これらの基板さらに薄型のフィルム状にして用いてもよい。ガラス基板としては、特に、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属基板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブデン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
特に、素子を薄膜化できるということから、封止部材としてポリマー基板や金属基板を薄型のフィルム状にして使用することが好ましい。
また、基板材料は、凹板状に加工して封止部材として用いてもよい。この場合、上述した基板部材に対して、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等の加工が施され、凹状が形成される。
さらに、フィルム状としたポリマー基板は、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下であることが好ましい。
また、封止部材を基板11側に固定する接着部は、有機EL素子20を封止するためのシール剤として用いられる。接着部としては、具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。
また、接着部としては、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
封止部材と透明電極10との接着部分への接着部の塗布は、市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
なお、有機EL素子を構成する有機材料は、熱処理により劣化する場合がある。このため、接着部は、室温(25℃)から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、接着部中に乾燥剤を分散させておいてもよい。
また、板状の封止部材と透明電極10と間に隙間が形成される場合、この間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
一方、封止部材として封止膜を用いる場合、有機EL素子20における発光ユニット21を完全に覆い、かつ有機EL素子20の電極端子部分を露出させる状態で、透明電極10上に封止膜が設けられる。
このような封止膜は、無機材料や有機材料を用いて構成される。特に、水分や酸素等、有機EL素子20における発光ユニット21の劣化をもたらす物質の浸入を抑制する機能を有する材料で構成される。このような材料としては、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等の無機材料が用いられる。さらに、封止膜の脆弱性を改良するために、これら無機材料からなる膜とともに、有機材料からなる膜を用いて積層構造としてもよい。
これらの膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
[保護部材]
また、有機EL素子20を機械的に保護するために、保護膜又は保護板等の保護部材(図示省略)を設けてもよい。保護部材は、有機EL素子20及び封止部材を、透明電極10とで挟む位置に配置される。特に封止部材が封止膜である場合には、有機EL素子20に対する機械的な保護が十分ではないため、このような保護部材を設けることが好ましい。
以上のような保護部材は、ガラス板、ポリマー板、これよりも薄型のポリマーフィルム、金属板、これよりも薄型の金属フィルム、又はポリマー材料膜や金属材料膜が適用される。このうち、特に、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
なお、上述の説明では、透明電極を適用した有機電子デバイスの一例として、透明電極を透明電極に適用した有機EL素子について説明しているが、透明電極は有機光電変換素子やその他の有機電子デバイスにも、透明電極を透明電極として適用可能である。
[有機電子デバイスの製造方法]
次に、図2に示す有機EL素子20の製造方法の一例を説明する。
まず、上述の製造方法により透明電極10を作製する。
次に、透明電極10の透明導電層12上に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に成膜し、発光ユニット21を形成する。これらの各層の成膜方法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法又はスピンコート法が特に好ましい。さらに、層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。これらの各層の成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度1×10−6〜1×10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、層厚0.1〜5μmの範囲内で、各条件を適宜選択することが好ましい。
発光ユニット21を形成した後、この上部に対向電極22を、蒸着法やスパッタ法などの適宜の成膜法によって形成する。この際、対向電極22は、発光ユニット21によって透明電極10の透明導電層12に対して絶縁状態を保ちつつ、発光ユニット21の上方から基板11の周縁に端子部分を引き出した形状にパターン形成する。これにより、有機EL素子20が得られる。また、その後には、有機EL素子20における取り出し電極及び対向電極22の端子部分を露出させた状態で、少なくとも発光ユニット21を覆う封止部材を設ける。
以上により、透明電極10上に所望の有機EL素子20が得られる。このような有機EL素子20の作製においては、1回の真空引きで一貫して発光ユニット21から対向電極22まで作製するのが好ましいが、途中で真空雰囲気から基板11を取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
〈試料101の透明電極・有機EL素子の作製〉
[樹脂基板]
樹脂基板として、株式会社きもと製のクリアハードコート付きポリエチレンテレフタレート(PET/CHC)フィルム(G1SBF、厚さ125μm、屈折率1.59、以下CHC-PETフィルムと称する)を準備した。
[ガスバリア層]
次に、上記樹脂基板の表面(導電層を形成する側の面)上に、ガスバリア層を作製した。
放電プラズマ化学気相成長装置(アプライドマテリアルズ社製プラズマCVD装置 Precision5000)に、樹脂基板をセットし、ロールtoロールで連続搬送させた。次に、成膜ローラー間に磁場を印加するとともに、各成膜ローラーに電力を供給して、成膜ローラー間にプラズマを発生させ、放電領域を形成した。次に、形成した放電領域に、成膜ガスとして、原料ガスであるヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と反応ガスである酸素ガス(放電ガスとしても機能する)の混合ガスを、ガス供給管から供給し、下記条件にて、層厚120nmのガスバリア層を成膜した。
(成膜条件)
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン、HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
反応ガス(O)の供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.8m/min
[下地層A]
上述の樹脂基板のガスバリア層を形成した面上に、コンポセランSQ105(荒川化学株式会社製)と多官能アクリレート タイク(日本化成株式会社製)を用いて下地層を形成した。
コンポセランSQ105と1当量の多官能アクリレート タイク(日本化成株式会社製)とを混合し、固形分が0.2%になる量の重合開始剤イルガキュア184(BASF社製)を混合して、メチルイソブチルケトン(MIBK)で固形分3%の希釈液を作製した。これをスピンコーターを用いて2000rpmで成膜後、上述の赤外線照射装置で乾燥した。その後、封止内に下地層が収まるように外周部をふき取り、UV硬化(膜厚30μm、254nmでの積算光量250mJ/cm)を行い、膜厚300nmの下地層を作製した。
[透明導電層;第1金属酸化物層]
次に、上記樹脂基板の下地層を形成した面上に、導電層(第1金属酸化物層)としてITO(In:SnO=90:10(重量比))膜を、300nmの厚さで作製した。ITO膜は、アネルバ社のL−430S−FHSスパッタ装置を用い、Ar:20sccm、O:1sccm、スパッタ圧:0.25Pa、室温下、ターゲット側電力:1000W、ターゲット−基板距離:86mmで、RFスパッタにて作製した。
以上の方法により、試料101の透明電極を作製した。
[発光ユニット・対向電極の作製]
次に、作製した試料101の透明電極上に、発光ユニット及び対向電極等を形成して有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を作製した。
まず、真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、有機機能層の各層を構成する下記に示す材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、化合物M−2の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板に蒸着し、膜厚40nmの正孔注入輸送層を形成した。
次に、化合物BD−1及び化合物H−1を、化合物BD−1が5%の濃度になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、膜厚15nmの青色発光を呈する蛍光発光層を形成した。
次に、化合物GD−1、化合物RD−1及び化合物H−2を、化合物GD−1が17%、RD−1が0.8%の濃度になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、膜厚15nmの黄色を呈するリン光発光層を形成した。
その後、化合物E−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚30nmの電子輸送層を形成した。
以上により、有機機能層を作製した。
さらに、LiFを膜厚1.5nm形成した後に、アルミニウムを110nm蒸着して対向電極と、取り出し電極を形成した。
有機EL素子の作製に使用した化合物M−2、化合物BD−1、化合物H−1、化合物E−1、化合物GD−1、RD−1、及び、化合物H−2の構造を以下に示す。
Figure 2017107707
(封止:接着剤組成物の調製)
ポリイソブチレン系樹脂(A)として「オパノールB50(BASF製、Mw:34万)」100質量部、ポリブテン樹脂(B)として「日石ポリブテン グレードHV−1900(新日本石油社製、Mw:1900)」30質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(C)として「TINUVIN765(BASF・ジャパン製、3級のヒンダードアミン基を有する)」0.5質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)として「IRGANOX1010(BASF・ジャパン製、ヒンダードフェノール基のβ位が二つともターシャリーブチル基を有する)」0.5質量部、及び環状オレフィン系重合体(E)として「Eastotac H−100L Resin(イーストマンケミカル.Co.製)」50質量部を、トルエンに溶解し、固形分濃度約25質量%の接着剤組成物を調製した。
(封止:封止部材の作製)
まず、厚さ100μmのアルミニウム(Al)箔が張り合わされた厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し封止部材とした。次に、調製した上記接着剤組成物の溶液を乾燥後に形成される接着層の厚さが20μmとなるように封止部材のアルミニウム側(ガスバリア層側)に塗工し、120℃で2分間乾燥させて接着層を形成した。次に、形成した接着層面に対して、剥離シートとして、厚さ38μmの剥離処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面を貼付して、封止部材を作製した。
上述の方法で作製した封止部材を、窒素雰囲気下24時間以上放置した。
放置後、剥離シートを除去し、80℃に加熱した真空ラミネーターで有機発光素子の陰極を覆う形でラミネートした。さらに、120℃で30分加熱し、封止部材により、有機EL素子を封止した。
以上の工程により、発光エリアを有する、試料101の有機EL素子を作製した。
〈試料102の透明電極・有機EL素子の作製〉
透明導電層として、第1金属酸化物層を200nmの厚さで形成し、さらに、第1金属酸化物層上に第2金属酸化物層を形成した以外は、試料101と同様の方法で試料102の透明電極及び有機EL素子を作製した。第2金属酸化物層の作製は、下記の方法で行なった。
[透明導電層;第2金属酸化物層]
第1金属酸化物層上に、導電層(第2金属酸化物層)としてZTO(SnO:ZnO=30:70(重量比))膜を、100nmの厚さで作製した。ZTO膜は、アネルバ社のL−430S−FHSスパッタ装置を用い、Ar:20sccm、O:1.5sccm、スパッタ圧:0.25Pa、室温下、ターゲット側電力:1000W、ターゲット−基板距離:86mmで、RFスパッタにて作製した。
〈試料103の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料102の透明電極の作製において、第2金属酸化物層をITO(重量比In:SnO=90:10)で形成した以外は、試料102と同様の方法で試料103の透明電極及び有機EL素子を作製した。第2金属酸化物層の作製は、ITOのターゲットを用いて、試料101のITO成膜条件を用いて、室温下で行なった。
〈試料104の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料102の透明電極の作製において、下地層を下記の方法で形成した以外は、試料102と同様の方法で試料104の透明電極及び有機EL素子を作製した。
[下地層B]
屈折率2.4、平均粒径0.25μmのTiO粒子(テイカ(株)製、JR600A)と樹脂溶液(ラサ工業社製 230AL(有機無機ハイブリッド樹脂))との固形分比率を50体積%/50体積%とし、2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と2−メチル−2,4−ペンタンジオール(PD)との溶媒比が、20質量%/40質量%/40質量%である有機溶媒中での固形分濃度が12質量%となるように調製した。
上記の固形分(有効質量成分)に対し、0.4質量%の添加剤(ビックケミージャパン株式会社製 Disperbyk−2096)を加え、10ml量の比率で処方設計した。
具体的には、上記TiO粒子と溶媒及び添加剤を、TiO粒子に対し10%の質量比で混合し、常温(25℃)で冷却しながら、超音波分散機(エスエムテー社製 UH−50)に、マイクロチップステップ(エスエムテー社製 MS−3 3mmφ)の標準条件で10分間分散を加え、TiOの分散液を作製した。
次に、TiO分散液を100rpmで撹拌しながら、樹脂溶液を少量ずつ混合添加し、添加完了後、500rpmまで撹拌速度を上げ、10分間混合した後、疎水性PVDF0.45μmフィルター(ワットマン社製)にて濾過し、目的の下地層用塗布液を得た。
上記塗布液をインクジェット塗布法にて、プラスチックフィルム基板上に塗布した後、簡易乾燥(70℃、2分)し、更に、後述する波長制御IRで基板温度80℃未満の出力条件で5分間乾燥処理を実行した。
次に、下記改質処理条件にて硬化反応を促進し、層厚300nmの下地層を得た。このようにして、屈折率nが1.8の下地層を作製した。
(改質処理装置)
装置:株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL MECL−M−1−200
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
(改質処理条件)
エキシマランプ光強度:130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離:2mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:20.0%
照射エネルギー:8J/cm
〈試料105の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料104の透明電極の作製において、第2金属酸化物層をITO(重量比In:SnO=90:10)で形成した以外は、試料104と同様の方法で試料105の透明電極及び有機EL素子を作製した。第2金属酸化物層の作製は、ITOのターゲットを用いて、試料101のITO成膜条件を用いて、室温下で行なった。
〈試料106の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料102の透明電極の作製において、下地層と第1金属酸化物層との間に、下記の方法で金属細線パターンを形成した以外は、試料102と同様の方法で試料106の透明電極及び有機EL素子を作製した。
[金属細線パターン]
下地層上に、金属インク組成物として銀ナノ粒子分散液(FlowMetal SR6000、バンドー化学株式会社製)をインクジェット印刷法を用いて、50μm幅、1mmピッチで格子状に塗布してパターン形成した。インクジェット印刷法としては、インク液滴の射出量が4plのインクジェットヘッドを使用し、塗布速度と射出周波数を調整して、パターンを印刷した。インクジェット印刷装置としては、インクジェットヘッド(コニカミノルタ社製)を取り付けた卓上型ロボットShotmaster−300(武蔵エンジニアリング社製)を用い、インクジェット評価装置EB150(コニカミノルタ社製)にて制御した。
次に、赤外線照射装置(アルティメットヒーター/カーボン,明々工業株式会社製)に、波長3.5μm以上の赤外線を吸収する石英ガラス板2枚を取り付け、ガラス板間に冷却空気を流した波長制御赤外線ヒータを用いて、形成した金属インク組成物のパターンの乾燥処理を行った。
次に、250nm以下の短波長カットフィルターを装着したキセノンフラッシュランプ2400WS(COMET社製)を用いて、光照射エネルギーの総計が3.5J/cmのフラッシュ光を、照射時間2m秒で金属インク組成物のパターン側から1回照射して。乾燥後の金属インク組成物のパターンの焼成処理を行った。
〈試料107の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、第2金属酸化物層の厚さを200nm以外は、試料106と同様の方法で試料107の透明電極及び有機EL素子を作製した。
〈試料108の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、第2金属酸化物層の厚さを50nmとした以外は、試料106と同様の方法で試料108の透明電極及び有機EL素子を作製した。
〈試料109の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、第2金属酸化物層の厚さを30nmとした以外は、試料106と同様の方法で試料109の透明電極及び有機EL素子を作製した。
〈試料110の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、第2金属酸化物層の厚さを10nmとした以外は、試料106と同様の方法で試料110の透明電極及び有機EL素子を作製した。
〈試料111の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、第2金属酸化物層をZTOではなく、SnO/SnO/Sbからなる複合酸化物を、厚さ100nmで形成した以外は、試料106と同様の方法で試料112の透明電極及び有機EL素子を作製した。第2金属酸化物層の作製は、ZTOターゲットの代わりにSnO/SnO/Sbターゲット(重量比SnO:SnO:Sb=30:67.5:2.5)を用いて、室温下で行なった。
〈試料112の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料111の透明電極の作製において、第2金属酸化物層の厚さを30nmとした以外は、試料111と同様の方法で試料112の透明電極及び有機EL素子を作製した。
〈試料113の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料111の透明電極の作製において、第2金属酸化物層の厚さを10nmとした以外は、試料111と同様の方法で試料113の透明電極及び有機EL素子を作製した。
〈試料114の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、第2金属酸化物層をIZOで形成した以外は、試料106と同様の方法で試料114の透明電極及び有機EL素子を作製した。第2金属酸化物層の作製は、以下の方法で行った。
[透明導電層;第2金属酸化物層]
第1金属酸化物層上に、導電層(第2金属酸化物層)としてIZO(重量比In:ZnO=90:10)膜を、100nmの厚さで作製した。ZTO膜は、アネルバ社のL−430S−FHSスパッタ装置を用い、Ar:20sccm、O:3sccm、スパッタ圧:0.25Pa、室温下、ターゲット側電力:1000W、ターゲット−基板距離:86mmで、RFスパッタにて作製した。
〈試料115の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、第1金属酸化物層を厚さ200nmのIGO(重量比In:Ga=90:10)で形成した以外は、試料106と同様の方法で試料115の透明電極及び有機EL素子を作製した。第1金属酸化物層の作製は、IGOのターゲットを用いて、試料101のITO成膜条件を用いて、室温下で行なった。
〈試料116の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、第1金属酸化物層を厚さ200nmのIWZO(重量比In:WO:ZnO=98.5:1.0:0.5)で形成した以外は、試料106と同様の方法で試料116の透明電極及び有機EL素子を作製した。第1金属酸化物層の作製は、IWZOのターゲットを用いて、室温下で行なった。
〈試料117の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、第1金属酸化物層を厚さ200nmのGZO(重量比ZnO:Ga=94.3:5.7)で形成した以外は、試料106と同様の方法で試料117の透明電極及び有機EL素子を作製した。第1金属酸化物層の作製は、GZOのターゲットを用いて、試料101のITO成膜条件を用いて、室温下で行なった。
〈試料118の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、第1金属酸化物層を厚さ200nmのIGZO(In:Ga:Zn:O=1:1:1:4(at%比))で形成した以外は、試料106と同様の方法で試料118の透明電極及び有機EL素子を作製した。第1金属酸化物層の作製は、IGZOのターゲットを用いて、試料101のITO成膜条件を用いて、室温下で行なった。
〈試料119の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、第1金属酸化物層を厚さ200nmのAlドープZnOで形成した以外は、試料106と同様の方法で試料119の透明電極及び有機EL素子を作製した。第1金属酸化物層の作製は、AlドープZnOのターゲットを用いて、試料101のITO成膜条件を用いて、室温下で行なった。
〈試料120の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、金属インク組成物のパターンの焼成処理を、クリーンオーブンを用いて行なった以外は、試料106と同様の方法で試料120の透明電極及び有機EL素子を作製した。クリーンオーブンを用いた焼成処理は、クリーンオーブン内に試料を載置し、120℃で30分の熱処理を行なった。
〈試料121の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料104の透明電極の作製において、TiO粒子の代わりに平均粒径0.5μmのZrO粒子(第一稀元素化学工業社製)を用いて下地層を作製し、下地層と第1金属酸化物層との間に、試料106と同様の方法で金属細線パターンを形成し、試料120と同様の方法で、金属インク組成物のパターンの焼成処理を行い、試料121の透明電極及び有機EL素子を作製した。
〈試料122の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料101の透明電極の作製において、ガスバリア層を形成せず、基板(CHC−PET)上に直接下地層を形成した以外は、試料101と同様の方法で試料122の透明電極及び有機EL素子を作製した。
〈試料123の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料102の透明電極の作製において、ガスバリア層を形成せず、基板(CHC−PET)上に直接下地層を形成し、ZTOの膜厚を500nmとした以外は、試料102と同様の方法で試料123の透明電極及び有機EL素子を作製した。
〈試料124の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料102の透明電極の作製において、基板をガラス基板とし、ガラス上に直接下地層を形成した以外は、試料102と同様の方法で試料124の透明電極及び有機EL素子を作製した。ガラスは無アルカリガラスを用いた。
〈試料125の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、第2金属酸化物層の代わりに、厚さ100nmのSiOを用いた無機酸化物層を作製した以外は、試料106と同様の方法で試料125の透明電極及び有機EL素子を作製した。
〈試料126の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において下地層Aの替わりに下記の方法で下地層Cを作製した以外は、試料106と同様の方法で試料126の透明電極及び有機EL素子を作製した。
[下地層C]
ポリメントNK―100PM(アミノエチル化アクリルポリマー)を、超純水で希釈し、固形分3%の希釈液を作製した。この希釈液を、スピンコーターを用いて2000rpmで成膜した後、上述の赤外線照射装置で乾燥した。その後、UV硬化(膜厚30μm、254nmでの積算光量250mJ/cm)を行い、膜厚300nmの下地層Cを作製した。
〈試料127の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、下地層Aの替わりに下記の方法で下地層Dを作製した以外は、試料106と同様の方法で試料127の透明電極及び有機EL素子を作製した。
[下地層D]
特開2014−135364の実施例6の樹脂と添加剤の組成比で、固形分3%となるように調液した。これをスピンコーターを用いて2000rpmで成膜後、上述の赤外線照射装置で乾燥した。その後、UV硬化(特開2014−135364の実施例6のエネルギー)を行い、膜厚300nmの下地層Dを作製した。
〈試料128の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料126の透明電極の作製において、第2金属酸化物層を積層しない以外は、試料126と同様の方法で試料128の透明電極及び有機EL素子を作製した。
〈試料129の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料127の透明電極の作製において、第2金属酸化物層を積層しない以外は、試料127と同様の方法で試料129の透明電極及び有機EL素子を作製した。
〈試料130の透明電極・有機EL素子の作製〉
上述の試料106の透明電極の作製において、樹脂基板の裏面(導電層を形成しない側の面)上に粒子含有層を作製したした以外は、試料106と同様の方法で試料130の透明電極及び有機EL素子を作製した。
[粒子含有層]
粒子含有層は、下記の方法でコロイダルシリカ含有単量体を調整した後、このコロイダルシリカ含有単量体から、粒子含有層調製液を調整した。そして、粒子含有層調製液を用いて粒子含有層を形成した。
(コロイダルシリカ含有単量体の調整)
溶媒として酢酸エチルを用いて分散したコロイダルシリカ(SiO成分30質量%、平均粒子径20nm、日産化学(株)製)の130質量部に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(略称:MOI、分子量155、昭和電工(株)製)の30質量部と、触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫(略称:DBTDL)を0.1質量部加えて、室温で24時間撹拌した。赤外分光法(IR)によりイソシアネート基の反応の確認を行い、エバボレーターで溶媒である酢酸エチルを除去して、コロイダルシリカ含有単量体を得た。
(粒子含有層調製液の調整)
上記で製造したコロイダルシリカ含有単量体(不揮発分:36質量%)の100質量部に、Li/CFSO のメチルエチルケトン溶液(不揮発分:50質量%、三光化学工業(株)製)の5質量部を混合して撹拌した。開始剤としては、Irgacure907(BASFジャパン社製)を1質量部加え、粒子含有層調製液を調製した。
(粒子含有層の形成)
次に、樹脂基板上に、調製した粒子含有層調製液を、硬化後の厚さが10μmとなる条件で、塗布及び乾燥した。この後、80W/cmの水銀灯を用い、300mJの条件で紫外線照射処理を行い、粒子含有層を形成した。
〈評価〉
特に断りの無い限り、以下の測定条件は23℃55%RHである。
[シート抵抗・体積抵抗]
各試料の透明電極のシート抵抗値の測定は、作製した透明電極の第2金属酸化物層(試料125は無機酸化物層)の表面に、三菱化学アナリテック社製の抵抗率計「ロレスタEP MCP−T360」を接触させてシート抵抗値(Ω/sq.)を測定し、これを各試料の透明電極の抵抗(Ω/sq.)とした。
また、第1金属酸化物層、及び、第2金属酸化物層(試料125は無機酸化物層)の体積抵抗率の測定は、上述の各試料と同じ条件で第1金属酸化物層、又は、第2金属酸化物層(試料125は無機酸化物層)の単膜をCHC-PET上に200nmで作製し、抵抗率計「ロレスタEP MCP−T360」を接触させてシート抵抗を測定、さらに接触式表面形状測定器(DECTAK)にて膜厚を測定し、シート抵抗値と膜厚から、体積抵抗値(Ω・cm)を求めた。
[水蒸気透過率]
CHC-PET上にそれぞれの試料と同じ条件、膜厚で成膜した第2金属酸化物単膜を作製し、JIS K 7129−1992に準拠した方法で、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにて測定した。
[整流比]
作製した各試料の有機EL素子について、整流比を下記のように評価した。
各有機EL素子をそれぞれ10個ずつ準備し、順電圧と逆電圧(+4V/−4V)の電圧を印加したときの電流値を測定し、下記の計算式により整流比を算出した上で平均値を求め、以下の指標で整流比として評価した。大面積化に対応するためには、下記のランクで2以上のレベルであることが必須で、3以上のレベルであることが好ましい。
整流比=+4V印加時の電流値/−4V印加時の電流値
(評価)
○:整流比が1.0×10以上
△:整流比が1.0×10以上1.0×10未満
×:整流比が1.0×10未満
[サーモ保存性]
各試料の有機EL素子のそれぞれ10個用意し、これらを高温高湿環境(温度60℃、湿度90%)下で300時間保存した後の発光個数(n/10個)として評価した。保存中においては、各発光素子を、輝度が1000cdになる駆動電圧で駆動させた。発光個数(n/10個)は、各10個の試料の有機EL素子のうち、300時間の保存後にも発光が確認された個数であり、10に近いほど好ましい。
◎:10個
○:7個以上9個以下
△:3個以上6個以下
×:3個未満
[効率]
各試料の有機EL素子に対し、室温(約23〜25℃の範囲内)で、2.5mA/cmの定電流密度条件下による点灯を行い、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタオプティクス社製)を用いて、各有機EL素子の発光輝度を測定し、当該電流値における発光効率(外部取り出し効率)を求めた。なお、各試料の発光効率は、試料101の有機EL素子の発光効率を100とする相対値として表す。
◎:120以上
○:85以上120未満
×:85未満
下記表1に、試料101〜126の透明導電部材の主要な構成、及び、各評価結果を示す。
Figure 2017107707
表1に示すように、第2金属酸化物層としてZTOを用いた試料102及び試料104は、サーモ保存性、整流比が良好である。これに対し、第2金属酸化物層を有していない試料101では、サーモ保存性、整流比が悪い。また、第2金属酸化物層としてITOを用いた試料103及び試料105も、サーモ保存性、整流比が悪い。
これは、試料103及び試料105の第2金属酸化物層の水蒸気透過率が0.01g/(m・24h)以上なのに対して、試料102、試料104の第2金属酸化物層の水蒸気透過率が0.01g/(m・24h)以下であることに起因すると考えられる。すなわち、第2金属酸化物層の水蒸気透過率が0.01g/(m・24h)以下であることにより、下地層等から発生した不純物に対して第2金属酸化物層がガスバリア層として機能し、有機EL素子の発光ユニットへ影響を抑制し、信頼性を向上させることができる。さらに、整流比に差が見らえたのは、第1金属酸化物層にITOを用いたため、表面に微小な凹凸が生じたためと考えられる。一方、その整流比が第2金属酸化物を積層することで、微小な凹凸が埋まり、整流比が改善したと考えられる。
また、試料104及び試料105に示すように、下地層がTiO粒子を有することにより、有機EL素子の発光効率が向上する。同様に、試料121に示すように、下地層がZrO粒子を有することにより、有機EL素子の発光効率が向上する。従って、第2金属酸化物としてガスバリア性の高い金属酸化物を有する透明電極の構成においても、有機EL素子として下地層にTiO粒子やZrO粒子のような光散乱粒子を有することにより、発光効率の向上が可能となる。
また、試料106に示すように、下地層と第1金属酸化物層との間に金属細線パターンを有する場合にも、第2金属酸化物層として水蒸気透過率が0.01g/(m・24h)以下のZTOを有することにより、サーモ保存性が良好である。同様に、試料120に示すように、金属細線パターンの焼成方法を変えた場合にも、サーモ保存性が良好である。
さらに、ZTOからなる第2金属酸化物層の厚さを試料106から変更した試料107〜109でも、十分にサーモ保存性が良好である。一方で、第2金属酸化物層の厚さが10nmの試料110では、水蒸気透過率が1g/(m・24h)と高いことから、サーモ保存性が悪化している。
同様に、第2金属酸化物層として、SnO/SnO/アンチモンの積層構造を用いた試料111〜113においても、第2金属酸化物層にZTOを用い、膜厚を変えた場合と同様の傾向がみられる。
また、試料114〜119のように第1金属酸化物層に用いる材料をそれぞれ変更した場合においても、第2金属酸化物層として水蒸気透過率が0.01g/(m・24h)以下のZTOを有することにより、サーモ保存性や整流比が良好である。
基板として、ガスバリア層を有していない構成の試料122〜123では、第2金属酸化物層を有していない試料122のサーモ保存性が悪く、第2金属酸化物層として500nmのZTOを設けた試料123のサーモ保存性がよい。これは、ZTOからなる第2金属酸化物層が、厚膜化により、ガスバリア性の高い層となり、外部からの不純物に対してもガスバリア性を示した結果と考えている。
試料125のように、第2金属酸化物層の替わりにSiOによる無機酸化物層を設けた構成では、抵抗が高く、導電層として機能しないため、有機EL素子の各評価を測定することができなかった。SiOによる無機酸化物層では、水蒸気透過率の低さからガスバリア層としての機能が高いことはわかるが、導電性が低く、透明電極としては適用することができない。すなわち、透明電極においては、ガスバリア層とともにある程度の導電性を有することが必要とされる。
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
10 透明電極、11 基板、12 透明導電層、13 第1金属酸化物層、14 第2金属酸化物層、15 下地層、16 粒子含有層、17 ガスバリア層、18 金属細線パターン、20 有機EL素子、21 発光ユニット、22 対向電極

Claims (8)

  1. 基板と、
    樹脂を含む下地層と、
    前記下地層上に形成された第1金属酸化物層と、
    前記第1金属酸化物層上に形成された第2金属酸化物層と、を備え、
    前記第2金属酸化物層の体積抵抗率が、10−1Ωcm以上10+4Ωcm以下であり、且つ、水蒸気透過度が0.01g/(m・24h)以下である
    透明電極。
  2. 前記下地層と前記第1金属酸化物層との間に、金属細線パターンを備える請求項1に記載の透明電極。
  3. 前記第1金属酸化物層が、ITO、IZO、IGO、IWZO、GZO、IGZO、及び、ZnOから選ばれる1種類以上を含む請求項1又は2に記載の透明電極。
  4. 前記第2金属酸化物層が、IZO、ZTO、SnO、及び、SnOから選ばれる1種類以上を含む請求項1から3のいずれかに記載の透明電極。
  5. 前記下地層が、樹脂と、酸化物粒子とを含む請求項1から4のいずれかに記載の透明電極。
  6. 前記酸化物粒子として、TiO粒子及びZrO粒子から選ばれる1種類以上を含む請求項5に記載の透明電極。
  7. 前記基板がガスバリア層付の樹脂基板である請求項1から6のいずれかに記載の透明電極。
  8. 透明電極と、有機機能層とを備え、
    前記透明電極が、
    基板と、
    樹脂を含む下地層と、
    前記下地層上に形成された第1金属酸化物層と、
    前記第1金属酸化物層上に形成された第2金属酸化物層と、を有し、
    前記第2金属酸化物層の体積抵抗率が、10−1Ωcm以上10+4Ωcm以下であり、且つ、水蒸気透過度が0.01g/(m・24h)以下である
    有機電子デバイス。
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