[光学積層体]
(1)光学積層体の構成
図1に示されるように、本発明の一実施形態である光学積層体400は、偏光子11を含む偏光板10と、帯電防止層30と、粘着剤層40と、金属含有層60とを前記の順で含む。なお、光学積層体400は、金属含有層60の粘着剤層40の積層された表面と反対側の表面上に配置された透光性基板70を含むことができる。光学積層体400は、偏光板10と、帯電防止層30と、粘着剤層40とを含む、粘着剤層付帯電防止性偏光板300の粘着剤層40を、透光性基板70の表面に形成された金属含有層60の表面に貼り合わせて形成することができる。この光学積層体400において金属含有層60は、透光性基板70の全面にわたって形成されている。帯電防止性偏光板100は、偏光板10と、その一方の表面に積層される帯電防止層30とを備えるものである。
また、図2に示されるように、光学積層体500は、粘着剤層40と金属含有層60との間に、オーバーコート層50を含んでいてもよい。この場合、光学積層体500は、粘着剤層付帯電防止性偏光板300の粘着剤層40を、金属含有層60の表面に積層されたオーバーコート層50の表面に貼り合わせて形成することができる。この光学積層体500において金属含有層60は透光性基材70の全面にわたって形成されている。
偏光板10の他方の表面、すなわち帯電防止層30とは反対側の表面は、特に限定されないが、例えば、さらに帯電防止層31が積層されていてもよい。
(2)偏光板
偏光板10とは、少なくとも偏光子11を含む偏光素子であり、通常はその片面又は両面に貼合される保護フィルム21,22をさらに含む。図示を省略しているが、偏光子11と保護フィルム21,22との貼合は、接着剤を用いて行うことができる。
偏光板10は、保護フィルム21,22に加えて、偏光子11とは異なる光学機能を有するフィルムのような他の光学フィルムや、光学層のようなフィルム上に付加される層を含むこともできる。保護フィルムを含む各種光学フィルムは、接着剤層又は粘着剤を介して貼合することができる。
(2−1)偏光子
偏光子11は、その吸収軸に平行な振動面をもつ直線偏光を吸収し、吸収軸に直交する(透過軸と平行な)振動面をもつ直線偏光を透過する性質を有する吸収型の偏光子であることができ、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させた偏光フィルムを好適に用いることができる。偏光子11は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程;ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程;二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程;及び、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を含む方法によって製造できる。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体の例は、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、及びアンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等を含む。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は通常、85〜100mol%程度であり、98mol%以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール又はポリビニルアセタール等を用いることもできる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は通常、1000〜10000程度であり、1500〜5000程度が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準拠して求めることができる。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光子11(偏光フィルム)の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚みは、例えば10〜150μm程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前又はホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行ってもよい。
一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤や水を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は通常、3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法としては、例えば、該フィルムを二色性色素が含有された水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
ヨウ素による染色処理としては通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり0.01〜1重量部程度であることができる。ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり0.5〜20重量部程度であることができる。また、この水溶液の温度は、20〜40℃程度であることができる。一方、二色性有機染料による染色処理としては通常、二色性有機染料を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。二色性有機染料を含有する水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含有していてもよい。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり1×10-4〜10重量部程度であることができる。この水溶液の温度は、20〜80℃程度であることができる。
二色性色素による染色後のホウ酸処理としては通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液は、ヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり2〜15重量部程度であることができる。この水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり0.1〜15重量部程度であることができる。この水溶液の温度は、50℃以上であることができ、例えば50〜85℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は通常、5〜40℃程度である。
水洗後に乾燥処理を施して、偏光子11が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。偏光子11の厚みは、帯電防止性偏光板の薄型化の観点から、25μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。偏光子11の厚みは通常、2μm以上である。
偏光子11は、基材フィルム上にポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を塗工し、乾燥させてポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、このポリビニルアルコール系樹脂層が形成された基材フィルムをポリビニルアルコール系樹脂層と共に延伸し、次いで二色性色素による染色処理を施し、基材フィルムを剥離除去する方法によっても、製造することができる。基材フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。延伸処理は通常、一軸延伸である。この方法は、厚みの薄い、例えば厚み7μm以下の偏光子を容易に作製し得る点で、好ましい。
(2−2)保護フィルム
偏光子11の片面又は両面に積層することができる保護フィルム21,22は、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等からなるフィルムであることができる。なお本明細書において「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂及びメタクリル系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。その他の「(メタ)」を付した用語においても同様である。
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
セルロース系樹脂とは、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等の原料セルロースから得られるセルロースの水酸基における水素原子の一部又は全部がアセチル基、プロピオニル基及び/又はブチリル基で置換された、セルロース有機酸エステル又はセルロース混合有機酸エステルをいう。例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、及びそれらの混合エステル等からなるものが挙げられる。中でも、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位を含む重合体である。該重合体は、典型的にはメタクリル酸エステルを含む重合体である。好ましくはメタクリル酸エステルに由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して、50重量%以上含む重合体である。(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、他の重合性モノマー由来の構成単位を含む共重合体であってもよい。この場合、他の重合性モノマー由来の構成単位の割合は、好ましくは全構成単位に対して、50%以下である。
(メタ)アクリル系樹脂を構成し得るメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましい。メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアルキル基の炭素数が1〜8であるメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。(メタ)アクリル系樹脂において、メタクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂を構成し得る上記他の重合性モノマーとしては、アクリル酸エステル、及びその他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を挙げることができる。他の重合性モノマーは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。アクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。(メタ)アクリル系樹脂において、アクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
その他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、エチレン、プロピレン、スチレン等のビニル系化合物や、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物が挙げられる。その他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル樹脂は、保護フィルムの耐久性を高め得ることから、主鎖に環構造を有していてもよい。環構造は、無水グルタル酸構造及び無水コハク酸構造等の環状酸無水物構造;グルタルイミド構造及びコハクイミド構造等の環状イミド構造;ブチロラクトン及びバレロラクトン等ラクトン環構造等が好ましい。
保護フィルム21,22は、位相差フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。また、位相差発現層の少なくとも一方に熱可塑性樹脂(例えば、(メタ)アクリル樹脂)を積層し、延伸したものも位相差フィルムとすることもできる。保護フィルム21,22の少なくともいずれか一方は、その外面(偏光子11とは反対側の面)に、ハードコート層、防眩層、光拡散層、位相差層(1/4波長の位相差値を持つ位相差層等)、反射防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)又は光学層を備えるものであってもよい。
保護フィルム21,22の厚みは1〜100μm程度であることができるが、強度や取扱性等の観点から5〜60μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。この範囲内の厚みであれば、偏光子11を機械的に保護し、湿熱環境下に曝されても偏光子11が収縮せず、安定した光学特性を保つことができる。
保護フィルムは、偏光子11の片面のみに貼合されていてもよいし、偏光子11の両面に貼合されていてもよい。
偏光子11の両面に保護フィルム21,22が貼合される場合においてこれらの保護フィルムは、同種の熱可塑性樹脂で構成されていてもよいし、異種の熱可塑性樹脂で構成されていてもよい。また、厚みが同じであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、同じ位相差特性を有していてもよいし、異なる位相差特性を有していてもよい。
保護フィルム21,22は、例えば接着剤層を介して偏光子11に貼合することができる。接着剤層を形成する接着剤としては、水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤又は熱硬化性接着剤を用いることができ、好ましくは水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤である。
水系接着剤としては、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂やウレタン樹脂を用いた接着剤組成物が挙げられる。
水系接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、ポリビニルアルコール系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン、ビニルエーテル、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。接着剤に用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、適度の重合度を有していることが好ましく、例えば、4重量%濃度の水溶液としたときに、粘度が4〜50mPa・secの範囲内、さらには6〜30mPa・secの範囲内にあることがより好ましい。
また、変性されたポリビニルアルコール系樹脂も好ましく用いることができる。好適な変性ポリビニルアルコール系樹脂として、アセトアセチル基変性されたポリビニルアルコール系樹脂、アニオン変性されたポリビニルアルコール系樹脂、カチオン変性されたポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。このような変性されたポリビニルアルコール系樹脂を用いれば、接着剤層の耐水性を向上させる効果が得られやすい。
本発明に用いられる水系接着剤はもちろん、上記した変性ポリビニルアルコール系樹脂を2種以上含むものであってもよく、また、未変性のポリビニルアルコール系樹脂(具体的には、ポリ酢酸ビニルの完全又は部分ケン化物)及び上記した変性ポリビニルアルコール系樹脂の両方を含むものであってもよい。
水系接着剤を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、市販品の中から適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、(株)クラレから販売されている“PVA−117H”、“KL−318、“KM−118”及び“CM−318”、日本合成化学工業(株)から販売されている“ゴーセノール NH−20”、“ゴーセファイマーZ”シリーズ、“ゴーセファイマー K−210”及び“ゴーセナール T−330”(以上、いずれも商品名)などを挙げることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水系接着剤には、架橋剤を含有させることができる。架橋剤となりうる化合物を官能基別に掲げると、イソシアナト基(−NCO)を分子内に少なくとも2個有するイソシアネート化合物;エポキシ基(橋かけの−O−)を分子内に少なくとも2個有するエポキシ化合物;モノ−又はジ−アルデヒド;有機チタン化合物;マグネシウム、カルシウム、鉄、ニッケル、亜鉛及びアルミニウムの如き二価又は三価金属の無機塩;グリオキシル酸の金属塩;メチロールメラミンなどがある。
これらの架橋剤のなかでも、上述した水溶性のポリアミドエポキシ樹脂をはじめとするエポキシ化合物や、アルデヒド類、メチロールメラミン、グリオキシル酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩などが好適に用いられる。
架橋剤は、ポリビニルアルコール系樹脂とともに水に溶解して接着剤を形成していることが好ましい。ただ、以下に述べるとおり、水溶液中での架橋剤量はわずかでよいので、水に対して例えば、少なくとも0.1重量%程度の溶解度を有するものであれば、架橋剤として使用できる。もちろん、一般に水溶性と呼ばれる程度の水に対する溶解度を有する化合物のほうが、本発明に用いる架橋剤としては好適である。
架橋剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂の種類などに応じて適宜設計されるものであるが、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常5〜60重量部程度、好ましくは10〜50重量部である。この範囲で架橋剤を配合すると、良好な接着性が得られる。架橋剤の配合量が多くなりすぎると、架橋剤の反応が短時間で進行し、接着剤が早期にゲル化する傾向にあり、その結果、ポットライフが極端に短くなって工業的な使用が困難になる。
水系接着剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、シランカップリング剤、可塑剤、帯電防止剤、微粒子など、従来公知の適宜の添加剤を配合することもできる。
水系接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合、適当な接着剤の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系接着剤に好適に用いられる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を偏光子と保護フィルムの間の接着剤層に用いることは、例えば、特開2005−070140号公報、特許第4432487号公報及び特開2005−208456号公報に記載されている。
上記活性エネルギー線硬化性接着剤とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することで硬化する接着剤をいう。硬化性接着剤は、その硬化様式により分類すると、上記硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を含むカチオン重合型接着剤、上記硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合型接着剤、カチオン重合性化合物及びラジカル重合性化合物の双方を含むハイブリッド型硬化性接着剤等が挙げられる。カチオン重合性化合物の具体例は、分子内に1個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、分子内に1個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物、ビニル化合物を含む。また、ラジカル重合性化合物の具体例は、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物、ビニル化合物を含む。活性エネルギー線硬化性接着剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、増感剤、増感助剤、レベリング剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱重合開始剤などの従来公知の適宜の添加剤を配合することができる。
活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子11と保護フィルム21,22とを貼合した後、必要に応じて乾燥工程を行い、次いで活性エネルギー線を照射することによって活性エネルギー線硬化性接着剤を硬化させる硬化工程を行う。従って、活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合、接着剤層はその硬化物層である。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する紫外線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。
乾燥又は硬化後に得られる接着剤層の厚さは、通常0.01〜5μm程度であるが、水系接着剤を用いた場合は1μm以下とすることができる。一方、活性エネルギー線硬化性接着剤を用いた場合でも、3μm以下とするのが好ましく、2μm以下とするのがより好ましく、1μm以下とするのがさらに好ましい。接着剤層が薄すぎると、接着が不十分になるおそれがあり、一方で接着剤層が厚すぎると、偏光板の外観不良を生じる可能性がある。
偏光子11と保護フィルム21,22とを貼合するにあたっては、接着性を高めるために、これらの少なくともいずれか一方の貼合面にケン化処理、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理等を施すことができる。
偏光子11の両面に保護フィルムが貼合される場合においてこれらの保護フィルムを貼合するための接着剤は、同種の接着剤あってもよいし異種の接着剤であってもよい。
(2−3)他の光学フィルム
帯電防止性偏光板100は、偏光子11及び保護フィルム21,22以外の他の光学フィルムを含むことができ、その代表例は輝度向上フィルム及び位相差フィルムである。他の光学フィルムは、粘着剤層や接着剤層を介して積層することができる。
(3)帯電防止層
帯電防止層30は、静電気による光学積層体400,500の性能への影響を抑制するなどの目的で用いられる。帯電防止層30を形成する材料としては、例えば、導電性ポリマー、金属微粒子、金属酸化物微粒子、又は金属等をコーティングした微粒子のような、導電性の微粒子、電解質塩とオルガノポリシロキサンからなるイオン導電性組成物、イオン性化合物、各種の界面活性剤(カチオン性、アニオン性及び両性の界面活性剤)、などが挙げられる。帯電防止層30がこれらの材料を含むことにより、帯電防止層30の電気抵抗が低下するので、帯電防止層30、ひいては光学積層体400,500に帯電防止性能を付与することができる。
導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン、パラ位もしくはメタ位で結合したポリフェニレン、2価の基を介してフェニル基が繋がった高分子(例えば、−CH=CH−を介してフェニル基が繋がったポリフェニレンビニレン、−S−を介してフェニル基が繋がったポリフェニレンサルファイド、−O−を介してフェニル基が繋がったポリフェニレンオキサイドが挙げられる。)、五員環を構成する元素がCとH以外の元素を一つ含み2,5位で繋がった高分子(例えば、NHを含む五員環が2,5位で繋がったポリピロール、Sを含む五員環が2,5位で繋がったポリチオフェン、Oを含む五員環が2,5位で繋がったポリフラン、Seを含む五員環が2,5位で繋がったポリセレノフェン、Teを含む五員環が2,5位で繋がったポリテルロフェンが挙げられる。)、芳香族アミン類を重合して得られる高分子(例えば、ポリアニリン、ポリアミノピレンが挙げられる。)、ポリスチレンスルホン酸などが挙げられる。これらのなかで好ましくは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールであり、より好ましくは、ポリアニリン、ポリチオフェンである。導電性ポリマーの市販品としては、例えば、ナガセケムテックス(株)製の「デナトロン」(登録商標)、日産化学工業(株)製の「ORMECON」(登録商標)、H.C.Stark(株)製の「CLEVIOUS」、信越ポリマー(株)製の「セプルジーダ」(登録商標)、バイエル(株)製の「バイトロン」などがある。
導電性の微粒子としては、例えば、銀粉、銅粉、ニッケル粉、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)、アンチモンドープした酸化錫(ATO)、スズドープした酸化インジウム(ITO)などを用いることができる。
イオン導電性組成物は、例えば、電解質塩と下記式で示されるオルガノポリシロキサンからなる。
式中、R11は1価の有機基、R12〜R14はアルキレン基、R15は水素又は1価の有機基を表す。mは0〜100の整数、nは1〜100の整数である。−(−Si(R11R11)O−)−単位と−(−Si(R11R12)O−)−単位の配列順序は任意である。a及びbはそれぞれ0〜100の整数であり、同時に0であることはない。−(−R13O−)−と−(−R14O−)−の配列順序は任意である。
電解質塩としては、その陽イオンが周期律表第I族又は第II族に属する金属の陽イオンである電解質塩が挙げられる。陽イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等の陽イオンが挙げられる。
イオン性化合物は、例えば、無機カチオン又は有機カチオンと、無機アニオン又は有機アニオンとを有する化合物である。
無機カチオンとしては、例えば、リチウムカチオン〔Li+〕、ナトリウムカチオン〔Na+〕、カリウムカチオン〔K+〕のようなアルカリ金属イオンや、ベリリウムカチオン〔Be2+〕、マグネシウムカチオン〔Mg2+〕、カルシウムカチオン〔Ca2+〕のようなアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。
有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン等が挙げられる。
無機アニオンとしては、例えば、クロライドアニオン〔Cl-〕、ブロマイドアニオン〔Br-〕、ヨーダイドアニオン〔I-〕、テトラクロロアルミネートアニオン〔AlCl4 -〕、ヘプタクロロジアルミネートアニオン〔Al2Cl7 -〕、テトラフルオロボレートアニオン〔BF4 -〕、ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF6 -〕、パークロレートアニオン〔ClO4 -〕、ナイトレートアニオン〔NO3 -〕、ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF6 -〕、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF6 -〕、ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF6 -〕、ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF6 -〕、ジシアナミドアニオン〔(CN)2N-〕等が挙げられる。
有機アニオンとしては、例えば、アセテートアニオン〔CH3COO-〕、トリフルオロアセテートアニオン〔CF3COO-〕、メタンスルホネートアニオン〔CH3SO3 -〕、トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CF3SO3 -〕、p−トルエンスルホネートアニオン〔p−CH3C6H4SO3 -〕、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン〔(FSO2)2N-〕、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)2N-〕、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CF3SO2)3C-〕、ジメチルホスフィネートアニオン〔(CH3)2POO-〕、(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン〔F(HF)n -〕(nは1〜3程度)、チオシアンアニオン〔SCN-〕、パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔C4F9SO3 -〕、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(C2F5SO2)2N-〕、パーフルオロブタノエートアニオン〔C3F7COO-〕、(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)(CF3CO)N-〕、パーフルオロプロパン−1,3−ジスルホネートアニオン〔-O3S(CF2)3SO3 -〕、カーボネートアニオン〔CO3 2-〕等が挙げられる。上記したアニオン成分の中でも、フッ素原子を含むアニオン成分は、帯電防止性の点で有利である。
イオン性化合物の具体例は、上記カチオン成分とアニオン成分の組み合わせから適宜選択することができる。有機カチオンを有するイオン性化合物の例を有機カチオンの構造ごとに分類して掲げると、次のようなものが挙げられる。
ピリジニウム塩:
N−ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−オクチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−オクチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−ブチル−4−メチルルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−デシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ドデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−テトラデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ヘキサデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ドデシル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−テトラデシル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ベンジル−2−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ベンジル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−オクチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−オクチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−ブチル−4−メチルルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
イミダゾリウム塩:
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム p−トルエンスルホネート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム メタンスルホネート、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド。
ピロリジニウム塩:
N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
4級アンモニウム塩:
テトラブチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
テトラブチルアンモニウム p−トルエンスルホネート、
(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ジメチルホスフィネート。
また、無機カチオンを有するイオン性化合物の例を挙げると、次のものがある。
リチウム ブロマイド、
リチウム ヨーダイド、
リチウム テトラフルオロボレート、
リチウム ヘキサフルオロホスフェート、
リチウム チオシアネート、
リチウム パークロレート、
リチウム トリフルオロメタンスルホネート、
リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
リチウム ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、
リチウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド、
リチウム p−トルエンスルホネート、
ナトリウム ヘキサフルオロホスフェート、
ナトリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
ナトリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
ナトリウム p−トルエンスルホネート、
カリウム ヘキサフルオロホスフェート、
カリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
カリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
カリウム p−トルエンスルホネート。
これらのイオン性化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
帯電防止層30は、例えば、イオン性化合物、導電性微粒子、導電性高分子などをそれぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。またもちろん、イオン性化合物に分類される帯電防止剤を2種以上組み合わせて用いることもできるし、導電性微粒子に分類される帯電防止剤を2種以上組み合わせて用いることもできるし、導電性高分子に分類される帯電防止剤を2種以上組み合わせて用いることもできる。
帯電防止層30は、帯電防止剤として加水分解性有機珪素化合物及びその縮重合体の少なくとも一方を含むことができる。帯電防止層30が、帯電防止剤として加水分解性有機珪素化合物及びその縮重合体の少なくとも一方を含むことによっても、帯電防止層30は帯電防止性能を有することができる。
加水分解性有機珪素化合物は、非加水分解性の有機基と加水分解性の有機又は無機の基がケイ素原子に結合した化合物であるか、加水分解性の有機基がケイ素原子に結合した化合物であり、ここで、有機基は、炭素原子が結合位置にあるものであってもよいし、他の原子が結合位置にあるものであってもよい。加水分解性有機珪素化合物は、具体的には、次の式:
Si(T1)q(T2)4−q
で示すことができる。式中、T1は水素原子又は非加水分解性の有機基を表し、T2は加水分解性の基を表し、qは0〜3の整数を表す。
上記式においてT1で表される非加水分解性の有機基として、典型的には、炭素数1〜4程度のアルキル基、炭素数2〜4程度のアルケニル基、フェニル基のようなアリール基などが挙げられる。またT2で表される加水分解性の基としては、例えば、メトキシ基やエトキシ基のような炭素数1〜5程度のアルコキシ基、アセトキシ基やプロピオニルオキシ基のようなアシロキシ基、塩素原子や臭素原子のようなハロゲン原子、トリメチルシリルアミノ基のような置換シリルアミノ基などが挙げられる。加水分解性有機珪素化合物は、具体的には、アルコキシシラン化合物、ハロゲン化シラン化合物、アシロキシシラン化合物、シラザン化合物などであることができる。これらの加水分解性有機珪素化合物は、上記式におけるT1又はT2の一部として、アリール基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、フルオロアルキル基などの置換基を有していてもよい。
具体的な加水分解性有機珪素化合物としては、例えば、メチルトリクロロシランのようなハロゲン化シラン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランのようなアルコキシシラン化合物、ヘキサメチルジシラザンのようなシラザン化合物などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
加水分解性有機珪素化合物として、上記のような加水分解性有機珪素化合物が部分的に加水分解された加水分解生成物を用いてもよい。また、加水分解性有機珪素化合物として、前記加水分解生成物を縮合して、オリゴマー又はポリマーとなった多量体を用いてもよい。これらの加水分解生成物や多量体は、加水分解性有機珪素化合物に、塩酸、リン酸、酢酸、硫酸のような酸、又は水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウムのような塩基を加えることにより、生成させることができる。
帯電防止剤として、上記のような加水分解性有機珪素化合物を加水分解、重縮合反応させて得られる縮重合体を用いてもよい。前記加水分解性有機珪素化合物を加水分解する方法は、従来法に従えばよい。即ち、所定量の有機溶媒中に加水分解性有機珪素化合物を、所定の固形分濃度が要求される量を溶解して均一な溶液とし、触媒の存在下に加水分解すればよい。また、有機溶媒を使用しない場合は、水と触媒の均一溶液に、加水分解性有機珪素化合物を所定の固形分濃度が要求される量を添加して加水分解すればよい。一般的には、酸又はアルカリ触媒の存在下に、所望の加水分解率に要求される量の水を添加して加水分解すればよい。前記した加水分解用の触媒としては、塩酸、リン酸、硫酸、酢酸のような酸、例えばLiOH、NaOH、KOHなどの塩基性の水酸化物触媒があり、加水分解性有機珪素化合物に対して0.01〜10重量%が使用される。加水分解の反応温度は、室温から50℃の温度で十分であり、また反応時間は反応温度、触媒量により異なるが、一般には1〜24時間である。以上の加水分解反応により加水分解性有機珪素化合物の縮重合体が調製される。なお、周知のように加水分解性有機珪素化合物の縮重合体は塗布面でゲル化するとき、表面に水酸基を含有するシラノール基(Si−OH)を多く有するようになり、これが静電防止性能の発現に有効なものとなる。また、加水分解性有機珪素化合物の縮重合体は加水分解により調製されるため、該縮重合体の末端基にはOH基が含まれ、これも静電防止性能の発現に有効なものとなる。
加水分解性有機珪素化合物及びその縮重合体は、それぞれ単独で用いてもよいし、加水分解性有機珪素化合物とその縮合体との混合物の状態で用いてもよい。帯電防止剤として使用し得る加水分解性有機珪素化合物やその縮合体は、例えばコルコート(株)から販売されている。
帯電防止層30の厚みは、10nm以上1000nm以下であることができるが、帯電防止性偏光板100の薄膜化の観点から、好ましくは、800nm以下である。帯電防止層30の厚みが10nm未満であると、密着性、帯電防止性、強度が十分でないことがあり、1000nmを超えると、密着性や透明性が十分でなく、ひび割れなどの不良が発生する可能性もある。
帯電防止層30は、例えば、帯電防止剤を含む塗工液を偏光板10の表面に塗布することによって形成できる。塗工液には通常、帯電防止剤や溶剤(水も含む)、必要に応じて(メタ)アクリル化合物のような熱又は活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性樹脂が含まれる。偏光板10の表面には、必要に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理などの活性化処理を行っても良い。これにより、帯電防止層30と偏光板10の密着性の向上や、塗工液の偏光板10への濡れ性が良好となる。
溶剤は、塗工液の濃度や粘度、塗工層の膜厚などを調整するために使用される。用いる溶剤は、適宜選択すればよいが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールのようなアルコール類、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、3−メトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール類、ジアセトンアルコールのようなケトール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル類などが挙げられる。溶剤の使用量は、偏光板10の材質、形状、塗布方法、目的とする被膜の膜厚などに応じて適宜選択されるが、通常は、帯電防止剤の合計量100重量部に対し、20〜10000重量部程度である。
偏光板10の表面に塗工液を塗布する方法としては、例えば、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ディッピングコート法、フローコート法、スピンコート法、ダイコート法、キャスト転写法、スプレーコート法などが挙げられる。
次いで、塗工層を乾燥させてもよい。乾燥温度は、溶剤や被着体の種類によるが、通常、25〜120℃、より好ましくは30〜110℃程度である。また、乾燥後又は乾燥前の塗工層を加熱することにより、加水分解性有機珪素化合物を加水分解、縮合させてもよい。加熱温度は通常50〜120℃程度であり、また加熱時間は通常1分〜5時間程度である。塗工層が溶剤を含有する場合、加熱処理は、塗膜が溶剤を含有した状態のまま行ってもよいし、溶剤を揮発させた後に行ってもよい。
(4)粘着剤層
粘着剤層40は、帯電防止性偏光板100を隣接する部材(金属含有層60やオーバーコート層50等)に貼着するための役割を果たす。
粘着剤層40を形成するために用いる粘着剤組成物としては、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤組成物、ウレタン系粘着剤組成物、シリコーン系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤組成物、ポリアミド系粘着剤組成物、ポリエーテル系粘着剤組成物、フッ素系粘着剤組成物、ゴム系粘着剤組成物等が挙げられる。中でも、透明性、粘着力、信頼性、リワーク性等の観点から、(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
(メタ)アクリル系粘着剤組成物のベースポリマーとして好適に用いることができる(メタ)アクリル系樹脂の具体例は、下記式(I):
で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を主成分とする(50重量%以上含有する)重合体である(メタ)アクリル系樹脂(A−1)である。
式(I)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1〜10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数7〜21のアラルキル基を表す。R2は、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基であることが好ましい。
式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、その具体例は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ラウリルのようなアルキル部分が直鎖状のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチルのようなアルキル部分が分枝状のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ラウリルのようなアルキル部分が直鎖状のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソオクチルのようなアルキル部分が分枝状のメタクリル酸アルキルエステル等を含む。(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル部分の炭素数は、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6である。
R2がアルコキシ基で置換されたアルキル基である場合、すなわち、R2がアルコキシアルキル基である場合における式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの具体例は、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル等を含む。上記アルコキシアルキル基におけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6である。上記アルコキシアルキル基におけるアルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜4である。R2が炭素数7〜21のアラルキル基である場合における式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの具体例は、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル等を含む。上記アラルキル基の炭素数は、好ましくは7〜11である。
式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましく、アクリル酸アルキルエステルを含むことがより好ましく、アクリル酸n−ブチルを含むことがさらに好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、これを構成する全単量体中、アクリル酸n−ブチルを50重量%以上含むことが好ましい。勿論、アクリル酸n−ブチルに加えて、それ以外の式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルを併用することもできる。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は通常、上記式(I)の(メタ)アクリル酸エステルと、極性官能基を有する単量体に代表される少なくとも1つの他の単量体との共重合体である。極性官能基を有する単量体は、極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物であることが好ましい。極性官能基としては、遊離カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基をはじめとする複素環基等を挙げることができる。
極性官能基を有する単量体の具体例は、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレートのような遊離カルボキシル基を有する単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルのような(メタ)アクリル酸の水酸基含有アルキルエステルや、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような多官能アルコールと(メタ)アクリル酸との不完全エステル化物等の水酸基を有する単量体;アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、ビニルピリジン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,5−ジヒドロフランのような複素環基を有する単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートのような複素環とは異なるアミノ基を有する単量体等を含む。極性官能基を有する単量体は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記の中でも、(メタ)アクリル系樹脂(A−1)の反応性の観点から、(メタ)アクリル系樹脂(A−1)を構成する極性官能基含有単量体の1つとして、水酸基を有する単量体を用いることが好ましい。水酸基を有する単量体に加えて、他の極性官能基を有する単量体、例えば、遊離カルボキシル基を有する単量体を併用することも有効である。粘着剤層40と帯電防止性偏光板100との密着性や粘着剤層40の耐久性の観点から、水酸基を有する単量体は、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸の水酸基含有アルキルエステルであることがより好ましい。(メタ)アクリル酸の水酸基含有アルキルエステルにおけるアルキル部分の炭素数は、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6である。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環とを有する単量体(ただし、上記式(I)で表される単量体及び上記極性官能基を有する単量体に該当するものは除く。)に由来する構成単位をさらに含んでいてもよい。好適な例として芳香環を有する(メタ)アクリル酸系化合物を挙げることができる。芳香環を有する(メタ)アクリル酸系化合物の好適な例は、下記式(II):
で表されるフェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステルのようなアリールオキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。フェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステル等の分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環とを有する単量体は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
上記式(II)において、R3は水素原子又はメチル基を表し、nは1〜8の整数を表し、R4は水素原子、アルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。R4がアルキル基である場合、その炭素数は1〜9程度であることができ、アラルキル基である場合、その炭素数は7〜11程度、またアリール基である場合、その炭素数は6〜10程度であることができる。
式(II)中のR4を構成する炭素数1〜9のアルキル基としては、メチル、ブチル、ノニル等が、炭素数7〜11のアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル等が、炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル、トリル、ナフチル等が、それぞれ挙げられる。
式(II)で表されるフェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステルの具体例は、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−フェノキシエトキシ)エチル、エチレンオキサイド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸2−(o−フェニルフェノキシ)エチル等を含む。中でも、フェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(o−フェニルフェノキシ)エチル及び/又は(メタ)アクリル酸2−(2―フェノキシエトキシ)エチルを含むことが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、その固形分全体量を基準に、上記式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を、好ましくは60〜99.9重量%、より好ましくは80〜99.6重量%の割合で含有し、極性官能基を有する単量体に由来する構成単位を、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.4〜10重量%の割合で含有し、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環とを有する単量体に由来する構成単位を、好ましくは0〜40重量%、より好ましくは6〜12重量%の割合で含有することができる。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル、極性官能基を有する単量体、及び分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環とを有する単量体以外の単量体(以下、「その他の単量体」ともいう。)に由来する構成単位を含んでいてもよい。その他の単量体の具体例は、分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、スチレン系単量体に由来する構成単位、ビニル系単量体に由来する構成単位、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位、(メタ)アクリルアミドモノマーに由来する構成単位等を含む。その他の単量体は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
脂環式構造は、炭素数が通常5以上、好ましくは5〜7程度である。脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例は、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルフェニル、α−エトキシアクリル酸シクロヘキシル等を含む。
スチレン系単量体の具体例は、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレンのようなアルキルスチレン;フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレンのようなハロゲン化スチレン;ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼン等を含む。
ビニル系単量体の具体例は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニルのような脂肪酸ビニルエステル;塩化ビニル、臭化ビニルのようなハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンのようなハロゲン化ビニリデン;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾールのような含窒素芳香族ビニル;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンのような共役ジエン単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を含む。
分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体の具体例は、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのような分子内に2個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのような分子内に3個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体等を含む。
(メタ)アクリルアミド化合物の具体例は、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(5−ヒドロキシペンチル)(メタ)アクリルアミド、N−(6−ヒドロキシヘキシル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)(メタ)アクリルアミド、N−〔2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチル〕(メタ)アクリルアミド、2−アクリロイルアミノ−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、N−(メトキシメチル)アクリルアミド、N−(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(1−メチルエトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(1−メチルプロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−メチルプロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド〔別名:N−(イソブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド〕、N−(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(1,1−ジメチルエトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−エトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−プロポキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−〔2−(1−メチルエトキシ)エチル〕(メタ)アクリルアミド、N−〔2−(1−メチルプロポキシ)エチル〕(メタ)アクリルアミド、N−〔2−(2−メチルプロポキシ)エチル〕(メタ)アクリルアミド〔別名:N−(2−イソブトキシエチル)(メタ)アクリルアミド〕、N−(2−ブトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−〔2−(1,1−ジメチルエトキシ)エチル〕(メタ)アクリルアミド等を含む。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、その固形分全体の量を基準に、その他の単量体に由来する構成単位を、通常0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%の割合で含有する。
粘着剤層と隣接する部材との密着性の観点から、(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が50万以上であることが好ましく、60万以上であることがより好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(A−1)のMwは、通常170万以下である。
(メタ)アクリル系粘着剤組成物のベースポリマーは、(メタ)アクリル系樹脂(A−1)を2種以上含んでいてもよい。また当該ベースポリマーは、(メタ)アクリル系樹脂(A−1)に加えて、これとは異なる(メタ)アクリル系樹脂、例えば、式(I)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を有し、かつ極性官能基を有さない(メタ)アクリル系樹脂(A−2)や、上記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を主成分とし、Mwが0.5万〜12万の範囲にある(メタ)アクリル系樹脂(A−3)等を含むことができる。
粘着剤組成物は、架橋剤(B)をさらに含有していてもよい。架橋剤は、(メタ)アクリル系樹脂のようなベースポリマー中の特に極性官能基含有単量体に由来する構成単位と反応し、ベースポリマーを架橋させる化合物である。具体的には、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート系化合物等が例示される。これらのうち、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物及びアジリジン系化合物は、ベースポリマー中の極性官能基と反応し得る官能基を分子内に少なくとも2個有する。架橋剤(B)は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
イソシアネート系化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(−NCO)を有する化合物である。イソシアネート系化合物の具体例は、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等を含む。また、これらのイソシアネート化合物に、グリセロールやトリメチロールプロパンのようなポリオールを反応させたアダクト体や、イソシアネート化合物を二量体、三量体等にしたものも架橋剤(B)となり得る。
エポキシ系化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ系化合物の具体例は、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を含む。
アジリジン系化合物は、エチレンイミンとも呼ばれる1個の窒素原子と2個の炭素原子とからなる3員環の骨格を分子内に少なくとも2個有する化合物である。アジリジン系化合物の具体例は、ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、イソフタロイルビス−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン−トリス−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリス−β−アジリジニルプロピオネート等を含む。
金属キレート化合物の具体例は、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム及びジルコニウム等の多価金属に、アセチルアセトンやアセト酢酸エチルが配位した化合物等を含む。
架橋剤(B)は、ベースポリマー(2種以上用いる場合はそれらの合計)の固形分100重量部に対して、通常0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で含有される。架橋剤(B)の含有量が0.05重量部以上であると、粘着剤層の耐久性が向上する傾向にある。
粘着剤層40は、帯電防止剤を含み得る。帯電防止剤として、金属微粒子、金属酸化物微粒子、又は金属等をコーティングした微粒子のような、導電性の微粒子、電解質塩とオルガノポリシロキサンからなるイオン導電性組成物、イオン性化合物などを用いることができる。
粘着剤層40がイオン性化合物を含む場合、イオン性化合物は、ベースポリマー(2種以上用いる場合はそれらの合計)の固形分100重量部に対して、好ましくは0.1〜8重量部、より好ましくは0.2〜5重量部の割合で配合される。イオン性化合物の含有量が0.2重量部以上であることは、帯電防止性の向上に有利であり、8重量部以下であることは、粘着剤層の耐久性向上に有利である。ただし、粘着剤層付帯電防止性偏光板300をオンセル方式のタッチ入力式液晶表示装置に適用する場合には、粘着剤層40に含まれるイオン性化合物に起因するタッチ入力素子の金属含有層の腐食を抑制するために、イオン性化合物の含有量は、ベースポリマーの固形分100重量部に対して、0.2重量部以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1重量部以下、さらに好ましくは0.05重量部以下、特に好ましくは0.01重量部以下である。
粘着剤組成物には、必要に応じて、他の成分を配合することもできる。配合し得る他の成分として、シランカップリング剤、架橋触媒、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー、ベースポリマー以外の樹脂、有機ビーズ等の光拡散性微粒子、防錆剤などが挙げられる。また、粘着剤組成物に紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層を形成した後に紫外線を照射して硬化させ、より硬い粘着剤層とすることも有用である。
防錆剤としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、その他のトリアゾール系化合物;ベンゾチアゾール系化合物、その他のチアゾール系化合物;ベンゾイミダゾール系化合物、その他のイミダゾール系化合物;イミダゾリン系化合物;キノリン系化合物;ピリジン系化合物;ピリミジン系化合物;インドール系化合物;アミン系化合物;ウレア系化合物;ナトリウムベンゾエート;ベンジルメルカプト系化合物;ジ−sec−ブチルスルフィド;フェニルスルホキサイドなどが挙げられる。
粘着剤組成物は、防錆剤を含有していてもよいが、その含有量はできるだけ少ないことが好ましく、粘着剤組成物を構成するベースポリマー(2種以上用いる場合はそれらの合計)の固形分100重量部に対する防錆剤の含有量は、通常15重量部以下であり、0.01重量部以下、理想的には0(ゼロ)であることが好ましい。
粘着剤組成物は通常、有機溶剤を含有させることによって配合成分を溶解又は分散させた粘着剤液として調製される。有機溶剤は、ベースポリマーの種類に応じて選択されることが好ましい。有機溶剤の具体例は、トルエン、キシレンのような芳香族系炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、ペンタンのような脂肪族系炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類を含む。粘着剤液中のベースポリマーの濃度は、通常3〜40重量%である。
粘着剤層40を帯電防止層30上に形成する方法としては、例えば、基材としてセパレートフィルムを用い、上記の粘着剤組成物を塗布して粘着剤層40を形成し、得られる粘着剤層40を帯電防止層30の表面に移設する方法、帯電防止層30の表面に上記の粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層40を形成し、その粘着剤40の外面にセパレートフィルムを貼り合わせる方法などが採用される。また、1枚のセパレートフィルム上に粘着剤層40を形成した後、さらにその粘着剤層40の上に別のセパレートフィルムを貼合して、両面セパレートフィルム型粘着剤シートとすることもできる。このような粘着剤シートは、必要な時期に片側のセパレートフィルムを剥がし、帯電防止層30へ貼合される。
セパレートフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリプロピレン又はポリエチレンのような各種の樹脂から構成され得るフィルムを基材とし、この基材の粘着剤層40との接合面に、シリコーン処理のような離型処理が施されたものであることができる。
粘着剤液を塗布し、溶剤を乾燥させて得られる粘着剤層40は、例えば、温度23℃、相対湿度65%の環境下で1〜20日程度熟成され、架橋剤の反応が十分に進行した後、液晶セルやタッチ入力素子等への貼着に用いられる。
粘着剤層40の厚みは、10〜45μmであるのが好ましく、さらには15〜35μmであるのがより好ましい。粘着剤層40の厚みが45μm以下であることは、隣接する部材との密着性に有利である。またその厚みが10μm以上であると、隣接する部材の寸法変化に対する粘着剤層40の追随性が良好となる。
(5)金属含有層
金属含有層60としては、ITO(インジウム・錫の酸化物)、錫・アンチモンの酸化物等の薄膜や、アルミニウム、金、銀、銅、チタン、パラジウム、クロム、ニッケル、タングステン、白金、鉄、インジウム、スズ、イリジウム、ロジウム、ネオジウム、モリブデン、又はこれらの合金などの金属の薄膜からなる金属含有層を用いることができる。中でも、優れた導電率及び低コストの観点から、アルミニウム、金、銀、銅、チタン、パラジウム、クロム、ニッケル、タングステン、白金、鉄、インジウム、スズ、イリジウム、ロジウム、ネオジウム、モリブデン、又はこれらの合金などの金属の薄膜からなる金属含有層を用いることが好ましい。金属含有層60は、透光性基板70上の全面にわたって形成された連続膜であってもよいし、メタルメッシュで構成される金属配線層であってもよい。
金属含有層60の形成方法は特に限定されず、透光性基板70の表面に、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を利用して形成することができる。また、金属含有層60の形成方法として、インクジェット印刷法、グラビア印刷法も挙げられる。金属含有層60は、金属箔を加工して得られた金属含有層60を設けることにより形成することもできる。
スパッタリング法により形成された金属含有層60は、例えば金属箔を加工して得られた金属含有層60に比べて一般に、耐腐食性に劣る傾向にあるが、本発明の光学積層体は、このようなスパッタリング法により形成された金属含有層であっても、腐食を抑制できる。このため、本発明の光学積層体は、金属含有層60がスパッタリング法により形成されたものである場合に、特に有効である。
金属含有層60の厚みは、薄型化の点で、好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.8μm以下であり、通常は0.01μm以上である。このような厚みの金属含有層60であっても、本発明の光学積層体では金属含有層60の腐食を抑えることができる。
金属含有層60がメタルメッシュで構成される金属含有配線層である場合、その線幅は通常、10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下であり、通常は0.5μm以上である。このような線幅の狭い金属含有層60であっても、本発明の光学積層体は金属含有層60の腐食を抑えることができる。
本発明の光学積層体によれば、金属含有層60が、例えば厚み3μm以下であり線幅10μm以下である金属含有配線層(メタルメッシュ)や、厚み3μm以下であり線幅10μm以下であり、スパッタリング法により形成された金属含有配線層(メタルメッシュ)であっても、その腐食を抑えることができる。
また、光学積層体400,500をオンセル方式のタッチ入力式液晶表示装置などに適用する場合、金属含有層60として、透光性基板70上に、金属を微細なメッシュ状に加工して形成されるメタルメッシュを用いることもできる。メタルメッシュを形成する金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、チタン、パラジウム、クロム、ニッケル、タングステン、白金、鉄、インジウム、スズ、イリジウム、ロジウム、ネオジウム、モリブデン、又はこれらの合金等を用いることができる。
メタルメッシュを形成する金属として、これらの金属の中でも、優れた導電性及びコストの点から、アルミニウム、銅、銀、又はこれらから選択される1種以上の金属を含む合金が好ましい。メタルメッシュを構成する金属成分は、アルミニウム、銅及び/又は銀が主成分であること、すなわち、これらの合計含有量が30重量%以上、さらには50重量%以上であることが好ましい。
金属含有層60がメタルメッシュである場合、金属含有層60は単層構造であってもよいし、2層又は3層以上の多層構造であってもよい。多層構造の金属含有層(メタルメッシュ)としては、例えばモリブデン/アルミニウム/モリブデンで示される3層構造の金属含有層(メタルメッシュ)が挙げられる。
金属含有層60とともに、ITO等の金属酸化物からなる透明電極層を有していてもよい。
図3に示す光学積層体600のように、金属含有層60が、所定の形状にパターンニングされた金属配線層(メタルメッシュ)である場合において、この金属配線層の上に直接、粘着剤層40を積層するときには、粘着剤層40は、金属含有層60に接触せずに、その下の透光性基板70に直接接触する部分を有していてもよい。
金属含有層60が、アルミニウム、銅、銀、鉄、スズ、ニッケル及びインジウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む場合、イオン性化合物を含む粘着剤層40とともに用いられると、光学積層体400,500,600の使用に伴い、金属含有層60が腐食するおそれがある。本発明に係る光学積層体400,500,600によれば、帯電防止層30を含むため、粘着剤層40がイオン性化合物を含まない構成としたり、粘着剤層40中のイオン性化合物の含有量を大幅に低減したりことができ、これにより金属含有層60の腐食を防止することが可能となる。
(6)オーバーコート層
オーバーコート層50は、透明電極層60を保護する機能を有する。オーバーコート層50は、透明電極層60の性能を損なわないものであれば、公知の硬化性樹脂のいずれも用いることができる。オーバーコート層50を構成する樹脂としては、例えば、保護フィルム21,22と偏光子11との間の接着剤層に用いられる、活性エネルギー線硬化性接着剤と同様の樹脂が挙げられる。具体的には、多官能(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物から構成することができる。
(7)透光性基板
透光性基板70としては、ガラス基板を用いることができる。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラスなどがある。透光性基板70は、タッチ入力式液晶表示装置における液晶セルを構成する透明基板であることができる。
(8)液晶表示装置
本発明に係る光学積層体は、タッチ入力式液晶表示装置に組み込んで使用することができる。タッチ入力式液晶表示装置は、アウトセル型であってもよいし、オンセル型であってもよいし、インセル型であってもよい。タッチ入力の動作方式は、抵抗膜方式であってもよいし、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式などの静電容量方式であってもよい。本発明の光学積層体は、タッチ入力式液晶表示装置を構成する液晶セルの視認側に配置されていてもよいし、背面側(通常はバックライト側)に配置されていてもよく、視認側及び背面側の両方に配置されていてもよい。液晶セルの駆動方式は特に限定されるものではなく、TN方式、VA方式、IPS方式、マルチドメイン方式、OCD方式などが挙げられる。
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。以下、使用量ないし含有量を表す「部」及び「%」は、特に断りのない限り重量基準である。
[光学積層体の作製]
(偏光子の作製)
厚み30μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を乾式延伸により約5倍に縦一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100である28℃の水溶液に60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100である72℃の水溶液に300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥処理を行って、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚み11μmの偏光子を得た。
<保護フィルムの用意>
保護フィルムA:日本ゼオン(株)製の環状ポリオレフィン系樹脂フィルム(厚み23μm)を用意した。
保護フィルムB:表面にケン化処理が施された、コニカミノルタオプト(株)製のトリアセチルセルロースフィルム(厚み25μm)を用意した。
<帯電防止層用塗工液の用意>
帯電防止層用塗工液#1:加水分解性有機珪素化合物を含む塗工液(コルコート(株)製の「コルコートN−103X」、固形分濃度2重量%、溶媒:2−プロパノール(40重量%)、1−ブタノール(50重量%)、エタノール(4重量%)、水(4重量%))を用意した。
帯電防止層用塗工液#2:ポリチオフェン系導電性ポリマーを含む溶液(綜研化学(株)製の「ベラゾールWED−SM」、固形分濃度1.5%、溶媒は水)と、ポリビニルアルコール水溶液(固形分濃度6.2%)を、1:3の割合で混合して塗工液を作製した。塗工液中の固形分濃度は2.5%である。
帯電防止層用塗工液#3:ポリチオフェン系導電性ポリマーを含む溶液(ナガセケムテックス(株)製の「デナトロンP−502RG」、固形分濃度4%、溶媒は水)を、希釈液(水と2−プロパノールとを体積比2:8で含む)に、11倍希釈となるように混合して塗工液を作製した。塗工液中の固形分濃度は0.36%である。
<粘着剤層の用意>
粘着剤層#7:両面にセパレートフィルムが貼合された粘着剤層(リンテック(株)製、厚み25μm)を用意した。
粘着剤層#A:粘着剤層#Aを以下の手順で用意した。
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル81.8部、アクリル酸ブチル70.4部、アクリル酸メチル20.0部、アクリル酸2−フェノキシエチル8.0部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1.0部、及びアクリル酸0.6部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら、内温を55℃に上げた。その後、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル0.14部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加1時間後に、アクリル樹脂の濃度が35%になるよう、添加速度17.3部/hrで酢酸エチルを連続的に反応容器内へ加えながら、内温54〜56℃で12時間保温し、最後に酢酸エチルを加えて、アクリル樹脂の濃度が20%となるように調節した。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが142万、Mw/Mnが5.2であった。これをアクリル樹脂Aとする。
上記アクリル樹脂Aの固形分100部に対し、以下のイオン性化合物2.0部、架橋剤0.5部(固形分)及びシラン系化合物0.5部をそれぞれそこに示す量混合し、さらに固形分濃度が13%となるように酢酸エチルを添加して、粘着剤組成物とした。
(イオン性化合物)
N−オクチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート(下式の構造を有し、融点44℃である。)。
(架橋剤)
コロネートL:日本ポリウレタン(株)社製のトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)。
(シラン系化合物)
KBM−403:信越化学工業(株)社製の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(液体)。
得られた粘着剤組成物を、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック(株)社製の「PLR−382052」;以下、セパレートフィルムとも記す。)の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して、シート状の粘着剤層#Aを得た。
<水系接着剤の調製>
アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製の「ゴーセファイマーZ−200」、4%水溶液の粘度=12.4mPa・sec、ケン化度=99.1モル%)を純水に溶解し、10%濃度の水溶液を調製した。このアセトアセチル基変性ポリビニルアルコール水溶液と、架橋剤となるグリオキシル酸ナトリウムとを、前者:後者の固形分重量比が 1:0.1となるように混合し、さらに水100部に対してアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールが2.5部となるように純水で希釈して、水系接着剤を調製した。
<金属含有層付透光性基板の用意>
ガラス基板の表面に、厚み500nmのアルミニウム層が形成されたものを用意した。
<実施例1>
次の手順で、図1と同様の層構成を有する光学積層体400を作製した。まず、偏光子11の両面に、上記水系接着剤を23℃の雰囲気下で塗布し、一方の接着剤塗布面には、コロナ処理を施した保護フィルムAを、他方の接着剤塗布面には、コロナ処理を施した保護フィルムBを、それぞれのコロナ処理面が偏光子11との貼合面となるように、貼付装置(フジプラ(株)製の「LPA3301」)を用いて貼合した。これを80℃で5分乾燥して、偏光板を作製した。
次に、保護フィルムAの露出表面にコロナ処理を施し、上記帯電防止層用塗工液を、乾燥後厚みが180nmとなるように塗工機(バーコーター、第一理化(株)製)を用いて塗工後、カプトン粘着テープを用いてガラスに貼合した。これを、庫内温度120℃のオーブンに1分間投入した後、オーブンから取り出して、温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間静置した。これにより、保護フィルムAの表面に帯電防止層30が形成された。
次に、粘着剤層40として粘着剤層#7のセパレートフィルムの一方を剥離除去した後、剥離によって露出した粘着剤層40の表面に、上記の帯電防止層30を貼合して、粘着剤層付帯電防止性偏光板300を作製した。
次に、粘着剤層#7のもう一方のセパレートフィルムを剥離除去した後、剥離によって露出した粘着剤層40の表面に上記の金属含有層付透光性基板(主面にアルミニウム層である金属含有層60が形成された透光性基板70)を、その金属含有層60側で貼合し、温度50℃、圧力5kg/cm2(490.3kPa)で20分間圧着処理を行って、光学積層体を作製した。
<実施例2>
帯電防止層用塗工液#1に代えて、帯電防止層用塗工液#2を、乾燥後厚みが225nmとなるように塗工した他は、実施例1と同様の方法で光学積層体を作製した。
<実施例3>
帯電防止層用塗工液#1に代えて、帯電防止層用塗工液#3を、乾燥後厚みが324nmとなるように塗工した他は、実施例1と同様の方法で光学積層体を作製した。
<実施例4>
次の手順で、図2と同様の層構成を有する光学積層体500を作製した。実施例1と同様の方法で、粘着剤層付帯電防止性偏光板300を作製した。金属含有層付透光性基板(主面にアルミニウム層である金属含有層60が形成された透光性基板70)の金属含有層60上に、厚み2μmのアクリル系樹脂からなるオーバーコート層を形成し、透光性基板70と金属含有層60とオーバーコート層50との積層体を得た。
粘着剤層#7のもう一方のセパレートフィルムを剥離除去した後、剥離によって露出した粘着剤層40の表面に上記の積層体を、そのオーバーコート層50側で貼合し、温度50℃、圧力5kg/cm2(490.3kPa)で20分間圧着処理を行って、光学積層体を作製した。
<比較例1>
実施例1と同様の方法で偏光板を作製した。次に、偏光板の保護フィルムAの表面に、粘着剤層#Aのセパレートフィルムと反対側の面(粘着剤面)をラミネーターにより貼り合わせたのち、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生して、粘着剤層付偏光板を得た。
次に、粘着剤層#Aのセパレートフィルムを剥離除去した後、剥離によって露出した粘着剤層の表面に上記の金属含有層付透光性基板(主面にアルミニウム層である金属含有層60が形成された透光性基板70)を、その金属含有層60側で貼合し、温度50℃、圧力5kg/cm2(490.3kPa)で20分間圧着処理を行って、光学積層体を作製した。
<比較例2>
保護フィルム22の表面に帯電防止層30を形成しない他は、実施例1と同様の方法で積層体を作製した。
[評価]
(表面抵抗)
粘着剤層40を貼合する前の偏光板の表面(帯電防止層30の表面又は保護フィルム22の表面)、及び粘着剤層40を貼合した後であって金属含有層付透光性基板を貼合する前の粘着剤層付偏光板の表面(セパレートフィルムを剥がした状態の粘着剤層40の表面)について、三菱化学アナリテック社製「Hirest−up MCP−HT450」を用いて表面抵抗値を測定した。測定温度は23℃、相対湿度は50%とした。結果を表1に示す。
(アルミニウム層の腐食)
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた光学積層体を庫内温度80℃、相対湿度90%のオーブンに72時間投入した。光学積層体を取り出した後、アルミニウム層(金属含有層)から粘着剤層付偏光板を剥離除去し、アルミニウム層の腐食を目視にて確認した。アルミニウム層の表面が白濁又は孔食が発生しているものを腐食と判断した。結果を表1に示す。
実施例1〜4においては、アルミニウム層の腐食が防止され、かつ表面抵抗値が比較例1と同程度まで低減された。
<実施例5>
金属含有層付透光性基板として無アルカリガラス基板の表面に厚み約200nmのアルミニウム層(金属含有層)をスパッタリング法により積層させたガラス基板(ジオマテック社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を作製した。
<実施例6>
金属含有層付透光性基板として無アルカリガラス基板の表面に厚み約200nmのアルミニウム層(金属含有層)をスパッタリング法により積層させたガラス基板(ジオマテック社製)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、光学積層体を作製した。
<実施例7>
金属含有層付透光性基板として無アルカリガラス基板の表面に厚み約200nmのアルミニウム層(金属含有層)をスパッタリング法により積層させたガラス基板(ジオマテック社製)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、光学積層体を作製した。
<比較例3>
金属含有層付透光性基板として無アルカリガラス基板の表面に厚み約200nmのアルミニウム層(金属含有層)をスパッタリング法により積層させたガラス基板(ジオマテック社製)を用いたこと以外は比較例1と同様にして、光学積層体を作製した。
<実施例8>
金属含有層付透光性基板として無アルカリガラス基板の表面に厚み約200nmの銀合金(銀を主成分とし、パラジウム及び銅を含む合金、APC)層(金属含有層)をスパッタリング法により積層させたガラス基板(ジオマテック社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を作製した。
<実施例9>
金属含有層付透光性基板として無アルカリガラス基板の表面に厚み約200nmの銀合金(銀を主成分とする合金)層(金属含有層)をスパッタリング法により積層させたガラス基板(ジオマテック社製)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、光学積層体を作製した。
<実施例10>
金属含有層付透光性基板として無アルカリガラス基板の表面に厚み約200nmの銀合金(銀を主成分とする合金)層(金属含有層)をスパッタリング法により積層させたガラス基板(ジオマテック社製)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、光学積層体を作製した。
(金属含有層の腐食の評価)
(1)実施例5〜実施例7及び比較例3で得られた光学積層体を庫内温度80℃、相対湿度90%のオーブン中に72時間投入した。その後、光学積層体を大気中に取り出し、放冷させ、背面側からバックライトで照明しながら目視(肉眼)により、光学積層体の金属含有層の状態を観察して、金属含有層に孔食、すなわち、0.1mm以上の径の孔の発生が見られないものを腐食「なし」として、孔食(0.1mm以上の径の孔の発生)が見られたものを腐食「あり」として、それぞれ評価した。結果を表2に示す。
(2)実施例8〜実施例10で得られた光学積層体を庫内温度80℃、相対湿度90%のオーブン中に160時間投入し、その後、大気中に取り出し、放冷させ、背面側からバックライトで照明しながら目視(肉眼)により、光学積層体の金属含有層の状態を観察して、金属含有層に孔食、即ち0.1mm以上の径の孔の発生が見られないものを腐食「なし」として、孔食(0.1mm以上の径の孔の発生)が見られたものを腐食「あり」として、それぞれ評価した。結果を表3に示す。