JP2015059215A - 光学フィルム用接着剤、積層光学フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
光学フィルム11,12は、液晶表示装置等のディスプレイの形成に用いられるものであれば、その種類は特に制限されず、例えば、位相差フィルム(光学補償フィルム)、偏光子、偏光子保護フィルム、輝度向上フィルム、反射板等が挙げられる。第一の光学フィルム11と第二の光学フィルム12の組み合わせとしては、偏光子と偏光子保護フィルム、偏光子と位相差フィルム、偏光子と輝度向上フィルム等が挙げられる。また、複屈折特性の異なる複数の位相差フィルムの組み合わせにより、単層の位相差板では実現困難な高度な光学補償を行い得る積層位相差板を形成することもできる。
第一の光学フィルム11と第二の光学フィルム12とは、接着層21を介して貼り合わせられる。本発明において、光学フィルムを貼り合わせるための接着層21として、有機ケイ素化合物層が用いられる。有機ケイ素化合物層は、シランカップリング剤を含有する接着剤を硬化することにより形成される。本発明の接着剤に用いられるシランカップリング剤は、例えば、下記一般式(I)で表される化合物である。
アミノ系シランカップリング剤は、上記一般式(I)において、置換基Xが下記式(II)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物である。
エポキシ系シランカップリング剤は、上記一般式(I)において、置換基Xが下記式(III)、(IV)または(V)で表されるエポキシ基含有有機ケイ素化合物である。
本発明の接着剤は、アミノ系シランカップリング剤とエポキシ系シランカップリング剤とを、8:92〜60:40のモル比で含有することが好ましい。アミノ系シランカップリング剤のみを含有する場合や、エポキシ系シランカップリング剤の含有量が過度に小さい場合は、硬化後の接着剤の耐水性が不十分となる傾向がある。一方、エポキシ系シランカップリング剤のみを含有する場合や、アミノ系シランカップリング剤の含有量が過度に小さい場合は、硬化後の接着剤の初期接着性が不十分となる傾向がある。これに対して、アミノ系シランカップリング剤とエポキシ系シランカップリング剤とを上記の含有量比で併用することにより、初期接着性と耐水性とを兼ね備える接着層(有機ケイ素化合物層)が得られる。接着剤中のアミノ系シランカップリング剤とエポキシ系シランカップリング剤との比は、モル比で、10:90〜55:45がより好ましく、15:85〜50:50がさらに好ましく、20:80〜45:55が特に好ましく、25:75〜40:60が最も好ましい。
本発明において、アミノ系シランカップリング剤とエポキシ系シランカップリング剤とを所定の比率で併用することにより、初期接着性と耐水性が両立できる理由は定かではないが、例えば、アミノ系シランカップリング剤は、その分子構造に起因して、光学フィルム表面の分子間に入り込みやすく、主に光学フィルムと接着層の界面の密着性向上に寄与していると考えられる。また、エポキシ系シランカップリング剤が架橋剤として作用して、接着層の強度が高められ、耐水性の向上に寄与していると考えられる。
本発明の接着剤は、上記のシランカップリング剤を溶媒中に溶解することによって調製できる。溶媒は特に限定されないが、シランカップリング剤の溶解度が高く、かつ硬化が促進されることから、アルコール系溶媒や酸性の水系溶媒が好ましい。接着剤中のシランカップリング剤の濃度は特に限定されず、接着剤溶液の粘度や塗布性等を考慮して適宜に決定され、一般には、0.1〜10重量%程度である。
第一の光学フィルム11上に、上記の接着剤を塗布して塗膜を形成した後、必要に応じて接着剤の溶媒を乾燥し、その上に第二の光学フィルム12を積層し、接着剤を硬化することによって、積層光学フィルムが得られる。
第一の光学フィルム上に接着剤を塗布する方法は特に限定されず、第一の光学フィルムを接着剤中に浸漬する方法(ディップコーティング法)、カーテンコーティング法、スプレーコーティング法、バーコーティング法、ロッドコーティング法、ロールコーティング法、ダイコーティング法等の公知の方法を適宜用いることができる。
第一の光学フィルム11上に接着剤を塗布して塗膜を形成した後、必要に応じて溶媒の乾燥が行われる。乾燥方法は特に限定されないが、加熱乾燥が好ましい。加熱温度や時間は、シランカップリング剤の濃度や溶媒の種類等に応じて適宜に設定される。なお、加熱温度が過度に高い場合や、乾燥時間が過度に長い場合は、第二の光学フィルムとの積層前に、シランカップリング剤が完全に硬化され、接着性が低下する傾向がある。そのため、接着剤を塗布後の乾燥は、シランカップリング剤の硬化が過度に進行しない程度、例えば加熱温度35〜120℃程度、加熱時間30秒〜10分程度の範囲で行われることが好ましい。
第一の光学フィルム上に形成された接着剤の塗膜上に、第二の光学フィルムが積層され貼り合わせられる。貼り合わせ前に、第二の光学フィルムの表面に、コロナ処理、プラズマ処理、ケン化処理、低圧UV処理等の活性化処理が行われてもよい。特に、第二の光学フィルムが、極性基を有していない材料からなる場合は、コロナ処理、プラズマ処理等の活性化により、表面に水酸基等の極性基が導入されることが好ましい。
第一の光学フィルムと第二の光学フィルムとを積層後に、接着剤の塗膜の硬化が行われる。硬化方法は特に限定されないが、加熱による硬化が好ましい。加熱温度や時間は、適宜に設定され得るが、アルコキシ基の加水分解によって生じたアルコールを蒸発させて系外に排出できるように、加熱温度および時間が設定されることが好ましい。接着剤の硬化のための加熱は、例えば、加熱温度40〜150℃程度、加熱時間1分〜20分程度の範囲で行われることが好ましい。
上記により得られた積層光学フィルムは、液晶表示装置等のディスプレイの形成に好適に用いられる。なお、図1では、第一の光学フィルム11と第二の光学フィルム12の2層が積層された積層光学フィルムが図示されているが、さらに他の光学フィルム等が積層されてもよい。例えば、偏光板は、一般に、偏光子の両面に偏光子保護フィルムを備える3層構成である。この場合、偏光子と一方の偏光子保護フィルムとの貼り合わせに、本発明の接着剤が用いられてもよく、偏光子と両方の偏光子保護フィルムとの貼り合わせに本発明の接着剤が用いられてもよい。
(接着剤溶液の調製)
アミノ系シランカップリング剤(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン;信越化学工業製、製品名「KBM−603」、分子量:222.4)とエポキシ系シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;信越化学工業製、製品名「KBM−403」、分子量:236.3)とを10:90の重量比(11:89のモル比)で、イソプロパノール中に添加し、シランカップリング剤濃度(合計)が0.5重量%の接着剤溶液を調製した。
厚み18μmの環状ポリオレフィンフィルムの表面にコロナ処理を施した後、コロナ処理面上に、ワイヤーバー(#3;ウェット塗布厚み約5μm)を用いて、上記の接着剤溶液を塗布し、50℃のオーブン中で、3分間加熱乾燥させた。その後、ロールラミネータを用いて、接着剤溶液の塗膜上に、厚み5μmのポリトリフルオロスチレンフィルム(以下、「ポリスチレン系フィルム」と記載する)を貼り合わせ、50℃のオーブン中で5分加熱して、シランカップリング剤を硬化させ、積層光学フィルムを得た。
上記実施例1の接着剤溶液の調製において、アミノ系シランカップリング剤(KBM−603)とエポキシ系シランカップリング剤(KBM−403)の比を、表1に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、厚み18μmの環状ポリオレフィンフィルムと厚み5μmのポリスチレン系フィルムとが、接着層を介して貼り合わせられた積層光学フィルムを作製した。
(紫外線硬化型接着剤の調製)
ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA):35重量部、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA;東亜合成社製、製品名「ARONIX M−220」):25重量部、およびアクリロイルモルホリン(ACMO):40重量部を、室温で1時間撹拌した。その後、光重合開始剤として、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(BASF社製、製品名「イルガキュア907」):3重量部、および2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製、製品名「DETX−S」):1.5重量部を添加し、さらにアミノ系シランカップリング剤として、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製、製品名「KBM−602」):1重量部を添加して、紫外線硬化型接着剤組成物を調製した。
厚み18μmの環状ポリオレフィンフィルムの表面にコロナ処理を施した後、コロナ処理面上に、ワイヤーバー(#0)を用いて、上記の紫外線硬化型接着剤組成物を塗布し、塗膜上に厚み5μmのポリ(トリフルオロスチレン)フィルムを貼り合わせ、コンベア式UV照射装置を用いて紫外線を照射して、接着剤組成物を硬化させ、積層光学フィルムを得た。
HEAA:20重量部、TPGDA:40重量部、ACMO:40重量部、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM):7重量部、および重量平均分子量約1600のアクリルオリゴマー(東亜合成社製、製品名「ARUFON UP−1190」):12.5重量部を、50℃で1時間撹拌した。その後、光重合開始剤として、イルガキュア907:3重量部、およびDETX−S:1.5重量部を添加し、さらにKBM−602:1重量部を添加して、紫外線硬化型接着剤組成物を調製した。この紫外線硬化型接着剤組成物を用いて、上記比較例5と同様にして、積層光学フィルムを得た。
上記各実施例および比較例の積層光学フィルムの接着層の厚みは、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。積層光学フィルムの初期接着性および耐水性は、以下の方法により評価した。
<初期接着性>
接着剤の硬化から1日経過後に、積層光学フィルムのポリ(トリフルオロスチレン)フィルム側の面に10×10(100)マスの碁盤目状に切れ込みを入れ、旧JIS−K5400の碁盤目試験に準じて、剥離試験を行い、ポリ(トリフルオロスチレン)フィルムが剥離されずに残存したマス目の割合(碁盤目残面積)を、画像処理によって算出した。
<耐水性>
接着剤の硬化から1日経過後に、積層光学フィルムを常温水に浸漬し、一定時間経過後に水から取出し、取出し直後に試料端部を爪で引っ掻き、剥がれの有無を目視で確認した。
アミノ系シランカップリング剤として、KBM−603に代えて、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業製、製品名「KBM−602」、分子量:206.4)を用い、上記実施例1,3および比較例1〜4と同様に、アミノ系シランカップリング剤とエポキシ系シランカップリング剤(KBM−403)の比を変更して、厚み18μmの環状ポリオレフィンフィルムと厚み5μmのポリスチレン系フィルムとが、接着層を介して貼り合わせられた積層光学フィルムを作製した。これらの実施例および比較例の接着剤中のシランカップリング剤の含有量、硬化後の接着層の厚み、ならびに積層光学フィルムの初期接着性および耐水性の評価結果を、表2に示す。なお、表2では、上記比較例2の結果もあわせて示している。
エポキシ系シランカップリング剤として、KBM−403に代えて、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業製、製品名「KBM−402」、分子量:220.3)を用い、上記実施例1,3および比較例1〜4と同様に、アミノ系シランカップリング剤(KBM−603)とエポキシ系シランカップリング剤の比を変更して、厚み18μmの環状ポリオレフィンフィルムと厚み5μmのポリスチレン系フィルムとが、接着層を介して貼り合わせられた積層光学フィルムを作製した。これらの実施例および比較例の接着剤中のシランカップリング剤の含有量、硬化後の接着層の厚み、ならびに積層光学フィルムの初期接着性および耐水性の評価結果を、表3に示す。なお、表3では、上記比較例1の結果もあわせて示している。
20 有機ケイ素化合物層(接着層)
100 積層光学フィルム
Claims (6)
- 光学フィルムの貼り合わせに用いられる接着剤であって、
アミノ系シランカップリング剤とエポキシ系シランカップリング剤とを、8:92〜60:40のモル比で含有する溶液からなる接着剤。 - 第一の光学フィルムと第二の光学フィルムとが、請求項1に記載の接着剤の硬化物からなる有機ケイ素化合物層を介して貼り合わせられている、積層光学フィルム。
- 前記有機ケイ素化合物層の膜厚が500nm以下である、請求項2に記載の積層光学フィルム。
- 前記第一の光学フィルムおよび前記第二の光学フィルムの少なくともいずれか一方が、環状ポリオレフィンフィルムである、請求項2または3に記載の積層光学フィルム。
- 第一の光学フィルム上に、請求項1に記載の接着剤を塗布して塗膜を形成する工程;
前記接着剤の塗膜上に、第二の光学フィルムを積層する工程;および
前記接着剤の塗膜を硬化する工程、
を有する、積層光学フィルムの製造方法。 - 第一の光学フィルム上に前記接着剤を塗布する前に、第一の光学フィルム表面に活性化処理が行われる、請求項5に記載の積層光学フィルムの製造方法。
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