JP2017103020A - 活物質複合粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、電池抵抗を低減することができる活物質複合粒子を提供することを課題とする。【解決手段】本発明においては、負極活物質と、上記負極活物質の表面を被覆するLiイオン伝導性酸化物とを有する活物質複合粒子であって、上記負極活物質が炭素材料であり、上記Liイオン伝導性酸化物が、Li元素、C元素、B元素、O元素から構成されることを特徴とする活物質複合粒子を提供することにより、上記課題を解決する。【選択図】図1

Description

本発明は、電池抵抗を低減することができる活物質複合粒子に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム電池が注目を浴びている。
現在市販されているリチウム電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造が必要となる。これに対し、電解液を固体電解質層に変えて、電池を全固体化したリチウム電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。
このような全固体電池の分野においては、現在、様々な試みがなされているが、その中の1つとして、活物質と固体電解質との界面に着目し、固体電池の性能の向上を図る試みがなされている。
例えば、特許文献1には、負極活物質(例えば、炭素材料)の表面がリチウムイオン伝導性固体(例えば、リン酸リチウム結晶)で被覆されている全固体リチウム電池が開示されている。この技術は、負極の不可逆容量を減らすことによって放電容量の低下を抑制可能な全固体リチウム電池を提供することを目的としている。
特許文献2には、固体電解質の材料に着目し、導電率が大きく、かつ化学的に安定なリチウムイオン導電性固体電解質として、Li2+x1−x+y3+2y(0.03≦x≦0.7、0≦y≦0.2)が開示されている。
また、特許文献3には、正極活物質の表面がリチウムイオン伝導性酸化物(例えば、リチウムとチタンを含有する酸化物)で被覆されている全固体リチウム電池が開示されている。この技術は、正極活物質と硫化物系固体電解質との界面に、リチウムイオン伝導性酸化物層を介在させることにより、高抵抗層の形成を効果的に抑制することができ、出力特性に優れた全固体リチウムイオン電池を提供することを目的としている。
特開2015−118815号公報 特開平05−054712号公報 国際公開公報2007/004590号
全固体電池の分野においては、上述のように、電池性能を向上させるために様々な試みがなされているが、特許文献1における負極の不可逆容量の低減、ならびに、特許文献3における正極の抵抗低減のみでは不十分であり、電池抵抗が大きく、経時に伴い徐々に電池抵抗が増加するといった問題をさらに解消することが望まれる。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電池抵抗を低減することができる活物質複合粒子を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明においては、負極活物質と、上記負極活物質の表面を被覆するLiイオン伝導性酸化物とを有する活物質複合粒子であって、上記負極活物質が炭素材料であり、上記Liイオン伝導性酸化物層が、Li元素、C元素、B元素、O元素から構成されることを特徴とする活物質複合粒子を提供する。
本発明によれば、負極活物質の表面にLiイオン伝導性酸化物を有することで、負極活物質および固体電解質の反応を抑制することができ、電池抵抗を低減することができる。また、経時において負極活物質および固体電解質が徐々に反応することを抑制し、経時に伴う電池抵抗の増加を抑制することができる。
本発明は、電池抵抗を低減することができる活物質複合粒子を提供することができるという効果を奏する。
本発明の活物質複合粒子の一例を示す概略断面図である。 一般的な全固体リチウム電池の一例を示す概略断面図である。 実施例および比較例で得られた活物質複合粒子のSEM像である。 前駆体コート活物質のTG/DTA測定の結果である。 実施例および比較例で得られた活物質複合粒子を用いた評価用電池に対する耐久試験前後の電池抵抗を表わすグラフである。 実施例および比較例で得られた活物質複合粒子を用いた評価用電池に対する耐久試験後の容量維持率を表わすグラフである。 実施例および比較例で得られた活物質複合粒子を用いた評価用電池に対する耐久試験後のクーロン効率を表わすグラフである。
以下、本発明の活物質複合粒子について、詳細に説明する。
図1は、本発明の活物質複合粒子の一例を示す概略断面図である。図1に示される活物質複合粒子10は、負極活物質1と、負極活物質1の表面を被覆するLiイオン伝導性酸化物2とを有する活物質複合粒子10であって、負極活物質1が炭素材料であり、Liイオン伝導性酸化物層2が、Li元素、C元素、B元素、O元素から構成される。
本発明によれば、負極活物質の表面にLiイオン伝導性酸化物を有することで、負極活物質および固体電解質の反応を抑制することができ、電池抵抗を低減することができる。また、経時において負極活物質および固体電解質が徐々に反応することを抑制し、経時に伴う電池抵抗の増加を抑制することができる。
電池抵抗を低減できる理由は、以下のように推測される。すなわち、負極活物質(炭素材料)と固体電解質(例えば、硫化物固体電解質)とが接すると、両者の化学ポテンシャルの差が大きいため、界面に高抵抗層が形成されると考えられる。Li元素、C元素、B元素、O元素から構成されるLiイオン伝導性酸化物は、炭素元素を含む化合物であるため、炭素材料と反応しにくい。また、上記Liイオン伝導性酸化物は、電子伝導性が低いため、固体電解質(例えば、硫化物固体電解質)と反応したとしても固体電解質と接するごく僅かな表面領域のみであり、継続的な反応が起こりにくいと考えられる。したがって、例えば、Li2+x1−xの組成を、Liイオン伝導性が大きくなるようにxの範囲を設定し、負極活物質の表面を被覆することにより、所望のLiイオン伝導性を保ちつつ、負極活物質と固体電解質との化学ポテンシャルの差を小さくすることができ、界面抵抗を低減することができる。
なお、特許文献1では、負極活物質(例えば、炭素材料)の表面がリチウムイオン伝導性固体(例えば、リン酸リチウム結晶)で被覆されている全固体リチウム電池が開示されている。具体的には、負極活物質の表面をリチウムイオン伝導性固体で被覆することにより負極と固体電解質との反応を抑制することができ、負極の不可逆容量を減らすことによって、放電容量の低下を抑制可能な全固体リチウム電池に関する。しかしながら、後述するように、特許文献1のLiイオン伝導性酸化物として、仮に、Li元素、C元素、B元素、O元素から構成されるLiイオン伝導性酸化物を用いても、不可逆容量の低減やクーロン効率の向上はできないことが示唆された。
以下、本発明の活物質複合粒子について、構成ごとに説明する。
1.Liイオン伝導性酸化物
本発明におけるLiイオン伝導性酸化物は、負極活物質の表面を被覆しており、Li元素、C元素、B元素、O元素から構成されるものである。
上記Liイオン伝導性酸化物は、負極活物質および固体電解質の反応を抑制することができ、電池抵抗を低減することができる。また、経時において負極活物質および固体電解質が徐々に反応することを抑制し、経時に伴う電池抵抗の増加を抑制することができる。
本発明におけるLiイオン伝導性酸化物は、通常、Li元素、C元素、B元素、O元素から構成される。Liイオン伝導性酸化物は、Li元素、C元素、B元素、O元素のみから構成されていてもよく、さらに他の元素を含有していてもよい。Liイオン伝導性酸化物に含まれるLi元素、C元素、B元素、O元素の合計の割合は、例えば、50mol%以上であり、70mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましい。
Liイオン伝導性酸化物の組成は、特に限定されないが、例えば、Li2+x1−x(0<x<1)であることが好ましい。上記xは、通常、0より大きく、0.2以上であることが好ましい。一方、上記xは、通常、1未満であり、0.7以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。
Liイオン伝導性酸化物は、単一の結晶相を有する酸化物であってもよく、複数の結晶相を有する酸化物であってもよい。また、Liイオン伝導性酸化物は、LiCO構造の固溶体であってもよい。Liイオン伝導性酸化物は、負極活物質の表面において、粒子状で存在していてもよく、膜状で存在してもよい。膜状のLiイオン伝導性酸化物は、例えば、粒状のLiイオン伝導性酸化物が溶融することで得られる。また、Liイオン伝導性酸化物は、結晶質であってもよく、非晶質であってもよい。
Liイオン伝導性酸化物の厚さは、例えば、1nm〜100nmの範囲内であり、1nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。Liイオン伝導性酸化物の平均厚さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察(例えば、n≧100)等により測定し、平均値として算出することができる。
また、Liイオン伝導性酸化物の被覆率は、より高いことが好ましく、例えば、50%以上であり、80%以上であることが好ましい。また、上記被覆率が100%であってもよい。上記被覆率は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、X線光電子分光法(XPS)等を用いて測定することができる。
2.負極活物質
本発明における負極活物質は、炭素材料であれば特に限定されないが、黒鉛材料、つまり、グラファイトであることが好ましい。具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、天然黒鉛と人造黒鉛の混合物、人造黒鉛で被覆した天然黒鉛等挙げることができる。中でも、アモルファスコートしたグラファイトが好ましい。
アモルファスコートしたグラファイトは、黒鉛表面を結晶質炭素で被覆した構造を有する黒鉛/炭素複合型材料であり、黒鉛粒子の嵩密度が高く、結晶性炭素により表面積が減少し、表面の反応性が低下するという特徴を有するからである。また、重量当りかつ容積当りの放電容量が大きく、初期効率が高く、固体電解質との反応性も天然黒鉛より低く、安定性の高い炭素材料であるからである。
上記負極活物質の形状は、特に限定されるものではないが、例えば球状を挙げることができる。負極活物質の平均粒径(D50)は、例えば、1nm以上であり、10nm以上であってもよく、100nm以上であってもよい。一方、負極活物質の平均粒径(D50)は、例えば、50μm以下であり、20μm以下であってもよい。
3.活物質複合粒子
本発明の活物質複合粒子は、負極活物質と、負極活物質の表面を被覆するLiイオン伝導性酸化物とを有するものであり、負極活物質と固体電解質との間に介在することにより、負極活物質および固体電解質の反応を抑制することができ、電池抵抗を低減することができる。また、経時において負極活物質および固体電解質が徐々に反応することを抑制し、経時に伴う電池抵抗の増加を抑制することができる。
本発明の活物質複合粒子は、固体電解質と接触した状態で用いられることが好ましい。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質を挙げることができる。硫化物固体電解質としては、例えば、LiS−P、LiS−P−LiI、LiS−P−LiO、LiS−P−LiO−LiI、LiS−SiS、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiBr、LiS−SiS−LiCl、LiS−SiS−B−LiI、LiS−SiS−P−LiI、LiS−B、LiS−P−Z(ただし、m、nは正の数。Zは、Ge、Zn、Gaのいずれか。)、LiS−GeS、LiS−SiS−LiPO、LiS−SiS−LiMO(ただし、x、yは正の数。Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれか。)等を挙げることができる。なお、上記「LiS−P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。硫化物固体電解質は、非晶質であってもよく、結晶質であってもよい。
また、本発明の活物質複合粒子は、通常、全固体リチウム電池に用いられる。そのため、活物質複合粒子を負極に用いた全固体電池を提供することもできる。
以下、全固体リチウム電池およびその構成について説明する。
(1)全固体リチウム電池
図2は、全固体リチウム電池の一例を示す概略断面図である。図2における全固体リチウム電池20は、通常、正極活物質を含有する正極層11と、負極活物質を含有する負極層12と、正極層11および負極層12との間に形成された固体電解質層13と、正極層11の集電を行う正極集電体14と、負極層12の集電を行う負極集電体15とを有する。また、負極層12は、上述した活物質複合粒子を含有する。また、負極層に含有される活物質複合粒子は、負極層および固体電解質層の少なくとも一方に含まれる固体電解質と接する。
また、上記全固体リチウム電池は、一次電池であってもよく、二次電池であってもよいが、中でも二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば、車載用電池等として有用だからである。
(2)負極層
全固体リチウム電池の負極層は、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していてもよい。また、負極層は、通常、本発明の活物質複合粒子を含有する層である。
(3)正極層
全固体リチウム電池の正極層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していてもよい。正極活物質は、酸化物活物質であることが好ましい。一般的に高容量だからである。酸化物活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、LiNi1/3Mn1/3Co1/3、マンガン酸リチウム(LiMn)、Li1+xMn2−x−y(x+y=2、M=Al、Mg、Co、Fe、Ni、およびZnから選ばれる少なくとも1種)で表わされる異種元素置換Li−Mnスピネル、チタン酸リチウム(LiおよびTiを含む酸化物)、リン酸金属リチウム(LiMPO、M=Fe、Mn、Co、およびNiから選ばれる少なくとも1種)、遷移金属酸化物(例えば、酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)等)、硫化チタン(TiS)、炭素材料(例えば、グラファイト、ハードカーボンなど)、リチウムコバルト窒化物(LiCoN)、リチウムシリコン酸化物(LiおよびSiを含む酸化物)、リチウム金属(Li)、リチウム合金(例えば、LiM;M=Sn、Si、Al、Ge、Sb、P等)、リチウム貯蔵性金属間化合物(例えば、MgおよびMを含む貯蔵性金属間化合物;M=Sn、Ge、Sb等、および、NおよびSbを含む貯蔵性金属間化合物;N=In、Cu、Mn等)、および、これらの誘導体等が挙げられる。
なお、正極活物質の表面は、コート層で被覆されていてもよい。正極活物質と固体電解質との反応を効果的に抑制できるからである。コート層の材料としては、例えば、LiNbO、LiPO、LiPON等のLiイオン伝導性酸化物を挙げることができる。
(4)固体電解質層
全固体リチウム電池の固体電解質層は、負極層および正極層の間に形成される層である。固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含有する層であり、必要に応じて、結着材をさらに含有していてもよい。固体電解質は、硫化物固体電解質であることが好ましい。硫化物固体電解質については、上述した内容と同様である。
(5)その他の構成
全固体リチウム電池は、通常、正極層の集電を行う正極集電体、および、負極層の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができる。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができる。
4.活物質複合粒子の製造方法
本発明の活物質複合粒子を製造する方法は、負極活物質表面にLiイオン伝導性酸化物を形成できる方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、負極活物質の表面に、Liイオン伝導性酸化物の前駆体溶液を塗工して前駆体層を形成した後、前駆体層を熱処理してLiイオン伝導性酸化物を形成する。これにより、本発明の活物質複合粒子が得られる。
(1)前駆体溶液
本発明におけるLiイオン伝導性酸化物の前駆体溶液は、Li元素、C元素、B元素、O元素を含有する材料から構成される。
Li元素、C元素、B元素、O元素を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、得られるLiイオン伝導性酸化物の組成がLi2+x1−x(0<x<1)となるように、材料およびその配合割合を決定することが好ましい。Li源およびC源としては、例えば、炭酸リチウムを挙げることができる。B源としては、例えば、ホウ酸、酸化ホウ素を挙げることができる。
(2)塗工方法
負極活物質の表面に前駆体溶液を塗工する方法は、所望の前駆体層が得られる方法であれば、特に限定されるものではない。塗工方法の一例としては、負極活物質への前駆体溶液の塗工、および塗工された前駆体溶液の乾燥を同時に行う方法を挙げることができる。このような塗工方法としては、例えば、流動層コーティング法、スプレードライヤー法等を挙げることができる。流動層コーティング法では、均一な前駆体層を形成される。気流温度(ガス流温度)は、例えば、40℃〜100℃の範囲内である。流動層コーティング装置としては、例えば、パウレックス製マルチプレックス、フロイント産業製フローコーター等を挙げることができる。塗工方法の他の方法としては、前駆体溶液中に負極活物質を浸漬し、その後、溶媒を乾燥する方法を挙げることができる。
(3)熱処理
熱処理温度は、目的とするLiイオン伝導性酸化物を形成可能な温度であれば、特に限定されるものではないが、例えば、前駆体を構成する材料の融点以上であることが好ましい。例えば、前駆体を構成する材料が炭酸リチウムとホウ酸から構成される場合、炭酸リチウムの融点以上であることが好ましい。一方、上記熱処理温度は、Liイオン伝導性酸化物の融点以下であることが好ましい。上記熱処理温度は、前駆体使用する材料およびLiイオン伝導性酸化物の組成の違いにより異なるため、TE/DTA測定等を行い、適宜、熱処理温度を決定することが好ましい。熱処理温度は、例えば700℃〜800℃の範囲内である。一方、熱処理時間は、例えば、30分間〜48時間の範囲内である。熱処理雰囲気は、酸素を含有しない雰囲気であることが好ましく、例えば、アルゴン等の不活性ガス雰囲気を挙げることができる。熱処理方法としては、例えば、焼成炉を用いた方法等を挙げることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(前駆体溶液の調製)
イオン交換水に炭酸リチウム、ホウ酸をそれぞれ0.16mol/kg、0.03mol/kgの濃度となるように加え、常温にて撹拌溶解し、前駆体溶液を得た。
(前駆体コート活物質の作製)
得られた前駆体溶液2000gを、転動流動層コーティング装置(MP−01、パウレック社製)を用いて、負極活物質(アモルファスコートしたグラファイト)1kgに対して噴霧乾燥した。運転条件は、吸気ガス:窒素、吸気温度:120℃、吸気風量:0.4m/min、ローター回転数:400rpm、噴霧速度:4.5g/minとした。これにより、活物質の表面に前駆体層を形成し、前駆体コート活物質を得た。
(熱処理温度の決定)
前駆体コート活物質について、アルゴン雰囲気下(ガス流量:200ml/min)で、TG/DTA(理学電機社製)を用い、温度走査速度:5℃/min、測定温度範囲:25℃〜1000℃の条件で、TG/DTA(熱重量・示差熱)測定を行った。
TG−DTA測定結果を図4に示す。
前駆体コート活物質は、加熱により以下に示す化学反応を起こすと考えられる。
(1+x/2)LiCO+xHBO → Li2+x1−x+3x/2CO+3x/2HO 反応式(1)
TG/DTA測定の結果、DTA曲線において、700℃にリチウムイオン伝導性酸化物の生成に帰属されるに発熱ピークの開始点が出現することを見出した。TG曲線においては、700℃において急激な重量減少が起こっており、これは、上記反応式(1)に示すように、リチウムイオン伝導性酸化物の生成により生じる二酸化炭素および水の重量分に相当することを見出した。したがって、TG曲線およびDTA曲線から、700℃以上の領域においてリチウムイオン伝導性酸化物の結晶が得られることが分かった。
また、DTA曲線において、780℃付近に、リチウムイオン伝導性酸化物の溶融に帰属される発熱ピークの開始点が出現することを見出した。TG曲線においては、780℃付近において重量減少率が変化しており、減少し続けていることから、リチウムイオン導電性酸化物の分解が起こり、分解により生じた二酸化炭素の質量に相当することを見出した。したがって、TG曲線およびDTA曲線から、780℃以上の領域においてリチウムイオン導電性酸化物の溶融物が得られることが分かった。
(熱処理)
得られた前駆体コート活物質を、アルゴンガス中にて700℃、5時間の条件で熱処理を行うことにより、活物質複合粒子を得た。
なお、上記活物質複合粒子のLiイオン伝導性酸化物の組成は、Li2.20.80.2であった。
[実施例2]
熱処理条件の温度を800℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして、活物質複合粒子を得た。
[比較例1]
負極活物質(アモルファスコートしたグラファイト)の表面に前駆体層を形成せずに用い、比較用サンプルとした。
[評価1]
実施例1、2で得られた活物質複合粒子および比較例1の負極活物質を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。その結果、図3(a)〜(c)に示すように、実施例1(図3(a))では、負極活物質表面にリチウムイオン伝導性酸化物が粒子状に形成されており、実施例2(図3(b))では、負極活物質表面にリチウムイオン伝導性酸化物が溶融し被覆していることが分かった。実施例1および実施例2と、比較例1(図3(c))とを比較しても、負極活物質の表面がLiイオン伝導性酸化物層で被覆されている様子が確認された。
(評価用電池の作製)
実施例1、2で得られた活物質複合粒子および比較例1の負極活物質を用いて評価用電池を作製した。
まず、正極活物質NCM(LiNi1/3Mn1/3Co1/3)と硫化物固体電解質(LiPS)とを6:4(体積比)の割合で混合した。得られた混合物に、導電化材としてVGCF(昭和電工製)を3%(重量比)、およびバインダーとしてブチレンラバー(JSR製)を0.7%(重量比)混合し、ヘプタン中に投入して正極スラリーを調製した。上記正極スラリーを超音波ホモジナイザーで分散させた後、アルミニウム箔上に塗工し、100℃、30分間乾燥させ、正極集電体上に正極層を形成した後、1cmで打ち抜き、正極側電極とした。
次に、得られた活物質複合粒子と上記硫化物固体電解質とを6:4(体積比)の割合で混合した。得られた混合物に、バインダーとしてブチレンラバーを1.2%(重量比)、ヘプタン中に投入し、負極スラリーを調製した。超音波ホモジナイザーで分散させた後、銅箔へ塗工し、100℃、30分間乾燥させ、負極集電体上に負極層を形成した後、1cmで打ち抜き、負極側電極とした。
内径断面積1cmの筒型セラミックスに上記硫化物固体電解質64.8mgを入れ、平滑にし、1tonでプレスして、固体電解質層を形成した。その両面に正極側電極および負極側電極を入れ、4.3tonで1分間プレスした後、ステンレス棒を両極に入れ、1tonで拘束して電池とした。これにより、評価用電池を得た。
得られた評価用電池(以下、初期の評価用電池と称する。)と、初期の評価用電池に対して以下の評価を行った後、60℃、4.25Vで、28日間保存試験を行った電池(以下、耐久後の評価用電池と称する。)と、について、以下の評価試験を行った。
[評価2]
初期および耐久後の評価用電池を4.4V〜3Vの間で3サイクル充放電し、3.9Vから9Cレートで5秒間放電を行った際の電圧降下値(IRドロップ)から電池抵抗を計算した。その結果を表1および図5に示す。
表1および図5に示すように、実施例1および2は、比較例1よりも初期の電池抵抗が小さい。これは、リチウムイオン伝導性酸化物が負極活物質表面に形成されることにより、負極活物質と硫化物固体電解質とが直接接する場合に比べ、硫化物固体電解質と負極活物質との反応性が低減され、反応抵抗も低減されたためであると考えられる。
また、実施例1および2は、比較例よりも初期と耐久後との電池抵抗の増加量が小さい。これも、上述した理由と同様であるためであると考えられる。
[評価3]
耐久後の評価用電池の容量維持率を以下の式により算出した。その結果を表2および図6に示す。
容量維持率=耐久後放電容量/初期放電容量×100
ここで、放電容量とは、4.4Vから3Vまで0.1Cレートにて放電した際に得られる容量である。
[評価4]
耐久後の評価用電池のクーロン効率を以下の式により算出した。その結果を表3および図7に示す。
クーロン効率=放電容量/充電容量×100
以上の結果から、実施例1および2では、耐久試験前後において、比較例1よりも電池抵抗を低く維持できており、さらに、容量維持率およびクーロン効率も、比較例1と比べて大きな低下が見られないことが確認された。
なお、上記結果から、特許文献1のLiイオン伝導性酸化物として、仮に、Li元素、C元素、B元素、O元素から構成されるLiイオン伝導性酸化物を用いても、不可逆容量の低減やクーロン効率の向上はできないことが示唆された。
このように、負極活物質の表面にLiイオン伝導性酸化物を形成することで、負極活物質の構成材料である炭素材料と、固体電解質との反応を抑制し、電池抵抗を低減することができ、さらに、経時に伴う電池抵抗の増加を抑制することができることが示された。
1 … 負極活物質
2 … Liイオン伝導性酸化物
10 … 活物質複合粒子
11 … 正極層
12 … 負極層
13 … 固体電解質層
14 … 正極集電体
15 … 負極集電体
20 … 全固体リチウム電池

Claims (1)

  1. 負極活物質と、前記負極活物質の表面を被覆するLiイオン伝導性酸化物とを有する活物質複合粒子であって、
    前記負極活物質が炭素材料であり、
    前記Liイオン伝導性酸化物が、Li元素、C元素、B元素、O元素から構成されることを特徴とする活物質複合粒子。
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