JP2017101416A - ポットホールの発生を防止する方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような舗装の損傷の一つとして、ポットホールが挙げられる。
このポットホールは、表層を構成するアスファルトを含むアスファルト混合物が、飛散する現象である。
このため、道路維持管理の観点から、ポットホールを予測し、その発生を防止することは非常に重要な業務となる。
このポットホールの発生には、いくつかの原因ある。
そして、この1つめのポットホールは、この層間剥離が発展し、主として表層が飛散して発生する。
そして、この2つめのポットホールでは、この空隙や支持力の低下に伴い、舗装構造の全体が飛散して発生する。
この噴出により、舗装構造内に空隙が生じる。
そして、この空隙には、雨水や地下水が滞留する。
この滞水は、表層や基層の脆弱化を助長し、ポットホールを誘発する。
このため、ポットホールの発生の予兆をできるだけ早期に、確実に捉える必要があった。
この密粒舗装は、表層の骨材に粒が小さいものを採用し、表層全体としての密度が高い。
この密粒舗装の表層には、ある程度の柔軟性があって、比較的、撓んだり歪んだりし易い。
このため、基層や路盤の脆弱化や、空隙の発生があると、すぐに表層が歪み、表層表面に、轍やくぼみなどの局所的な沈下として現れた。
この排水性舗装は、表層の骨材の粒が大きく、骨材同士が、その接点で強固に結合されているため、表層が全体として強固でゆがみ難い、という特徴がある。
また、舗装構造におけるポットホールは、基層と路盤の脆弱性が影響することは既に述べたとおりであり、舗装構造内の滞水が、この脆弱性を助長することもわかっている。
ここで、排水性舗装におけるポットホールの発生について、具体的に説明する。
この測定は、同一範囲を光切断法による形状測定と、カラーラインスキャンカメラを利用し、測定開始から1ヶ月に1回、4ヶ月にわたって合計5回、定期的に実施した。
測定区間内でポットホールが確認できた箇所の可視画像は、図2に示したとおりである。
なお、図2の3ヵ月後、および、4ヵ月後の画像の損傷が認められた範囲は、矩形状に枠で囲み、その下方に、その範囲の拡大画像を示した。
この測定結果から、この測定箇所のポットホールは、徐々に進展して発生するものではなく、2ヵ月後から3ヶ月後の1ヶ月間という短い期間に、突然出現したことが判明する。
このため、密粒舗装の場合には、路面性状調査におけるひび割れ率が、ポットホールの出現の予測を含む舗装道路の維持管理の指標として極めて有効であった。
下層の路盤、中層の基層、および、上層の表層の3層を含む舗装構造からなる排水性舗装において、舗装表面の局所的な不等沈下が、基層以深の劣化の進行によって発生するものとし、局所的な不等沈下が、予め定められた沈下量の値に達するとき、その沈下量が達した領域の舗装構造の補修を含む補修計画が策定されることを特徴とする。
排水性舗装が施された道路から、ポットホールの発生を予測する区間を選定し、決定する区間決定ステップと、
決定された予想区間の諸元整理を実行する諸元整理ステップと、
予想区間の路面の高さ測定を実施する測定ステップと、
得られた高さ情報を解析し、舗装表面に形成された局所的な不等沈下量を算出する沈下量算出ステップと、
得られた局所的な不等沈下量を用い、舗装構造の損傷推移の傾向を分析する傾向分析ステップと、
損傷推移の傾向分析の結果から、成長曲線モデルを作成するモデル作成ステップと、
得られた成長曲線モデルに基づき、局所的な不等沈下量の予測値の算出を実施する予測値算出ステップと、
得られた予測値が、予め定められた数値に達したときに、補修が実施される補修計画が策定される計画策定ステップと
を含むことを特徴とする。
予測値算出ステップが、
成長曲線モデルの分析結果に作用させる説明変数として用いられる分類が、盛土および切土からなる土工分類と、サグ部、および、サグ部以外のその他からなる滞水しやすさによる分類を含むことを特徴とする。
このため、ポットホールの発生を、舗装表面に出現する、局所的な不等沈下の進行状況から、適正に予測することができる。
そして、この予測にしたがって、ポットホールの発生前に、ポットホールの発生を防止する補修計画を策定できるようになる。
図3は、本発明にかかるポットホールの発生を防止する方法に用いられる光切断法の説明図、図4は、図3を用いて得られた路面の高さ情報を含む解析画像の一例、図5は、本発明にかかるポットホールの発生を防止する方法で得られる局所的な不等沈下を明示する処理画像、図6は、従来のわだち評価の概念図、図7は、本発明にかかるポットホールの発生を防止する方法で用いられる局所的な不等沈下量の概念図、図8は、本発明にかかるポットホールの発生を防止する方法における排水性舗装の破壊形態概念図である。
高さ情報は、光切断法を用いて取得する。
光切断法について、図3に基づき、説明する。
光切断撮影装置10は、排水性舗装の路面を走行しうる車両に取り付けられる。
光切断撮影10は、スリットレーザ発振器100と、エリアカメラ101を備える。
スリットレーザ発振器100は、路面に対して直上からスリットレーザ100aを発振する。
エリアカメラ101は、マーカー100bを斜めから撮影しうる位置に設けられる。
光切断撮影装置10では、図示しない制御装置や計算装置を用い、得られたマーカー100bの画像を解析し、その歪み具合から路面の高精度な高さ情報を面的に取得する。
この解析画像は、路面に形成されたわだちを測定した画像の一例である。
この解析画像から、光切断撮影装置10によって得られた解析画像は、ひび割れの画像化が可能であることがわかる。
局所的な不等沈下を明示するためには、路面の不陸やわだちの影響を排除する必要がある。
このため、式(1)に示すとおり、路面高さの移動平均を求めて対象ピクセルの路面高さを引算した。
i,j=注目領域の座標
N,M=入出力画像の大きさ(画素数)
n=フィルタサイズ(画素数)
この処理画像には、撮影開始から3ヵ月後の処理画像にポットホールが発生する3ヶ月前には、矩形点線で囲まれた範囲に、局所的な不等沈下が明示されている。
なお、図5の4ヵ月後の時点では、ポットホールは応急処置で路面の補修が実施されている。
まず、従来の沈下量の把握について説明する。
従来、路面の沈下量は、図6に示すように、測定区間のわだちが全体的に大きい箇所の傾向を把握することには適している。
しかしながら、排水性舗装の表層は、密粒舗装の表層に比べ、耐流動性に優れる混合物であるため、一定区間に渡る全体的なわだちの発生は抑制傾向となる。
この局所的な不等沈下の発生領域は、ポットホールの発生の危険性が高いことは、既に述べた通りである。
ところが、排水性舗装における不等沈下の発生は、図6に示した従来のわだちの評価方法では把握することができない。
局所的な不等沈下量の算出方法は、図7に示すように、評価地点のわだち量と、代表わだち量を差分した値を、局所的な相対わだち量として評価するものである。
このことから、局所的な不等沈下量の増加は、ポットホール発生の危険度、切迫度を示すことが証明された。
まず、排水性舗装の破壊形態について検討する。
図8に、土工区間におけるポットホール発生までの排水性舗装の破壊形態の概念を示す。
図8によると、排水性舗装の共用後、土工部の初期圧密による一次クリープ変化を経て、弾性領域を保持した状態である潜伏期間(二次クリープ)に進展する。
成長曲線モデルとは、ある個々のデータについて、時間的要素である経過時間について縦断的データの解析を実行したものを示す。
このモデルは、属性の違いによる個体差について、説明変数で記述することが可能である。
なお、以下で説明するモデルについて、サンプル数は52箇所とした。
上記の仮定に基づき、初期値である測定開始時点の可視画像を確認した。
確認の結果、亀甲状のひび割れの有無に応じて、沈下領域を弾性体と塑性体の2つの属性に分類すると、変化傾向の違いが確認された。
なお、図9以下のグラフには、「局所沈下量」という記載があるが、これは、上記の説明における「局所的な不等沈下量」の記載を省略して表記したものである。
また、「塑性体」とは、力を加えて変形させたとき、永久変形を生じる性質を持つ固体であって、ひび割れが発生して破損した状態の舗装を示し、塑性領域沈下量の推移は図10に示した。
なお、グラフに表れる変化傾向は、点線矢印として示される。
次に、道路線形の違いに応じた局所的な不等沈下の推移傾向を図13および図14に示した。
このため、ここでは、「サグ部以外」および「サグ部」に分類した。
なお、これらの因子以外にも、路線特性や材料特性による相違が考えられるが、サンプルデータが特定区間内であること、因子が多いほど後述する分析が複雑となることから、本実施例においては、上記の属性を説明変数として設定した。
成長曲線モデルを分析した結果、弾性領域は一次式、塑性領域は二次式を当てはめたモデルを構築した。
なお、分析に使用したサンプルは、測定時点が個体ごとに揃っていないため、沈下の進行度合いを重視した。
ここで、一時式モデルは、y=ax+bであり、「傾き」がa、「切片」がbとなる。
ここで導き出されるべき予測式は、できる限りシンプルであることが望ましい。
このため、説明変数を、道路構造では盛土とその他(ここでは切土)、サグ部とその他として設定した。
まず、弾性領域の一次式のモデルについて説明する。
弾性領域のパス図は、図15に示すとおりである。
このパス係数から導き出した、弾性領域における一次式を、表1として以下に示す。
x:経過月数(月)
ω:代表わだち量(mm)
このため、盛土区間で、かつ、サグ部区間である重複区間において、局所的な不等沈下の進行が最も早いことが考察できる。
また、図16に示されるように、弾性領域の路面状況は、微細なひび割れが認められ、高さ画像では局所沈下領域が不明確である。
塑性領域のパス図は、図17に示すとおりである。
このモデルの適合度検定結果は良好で、カイ二乗分布内の自由度27における値は、47.883、有意な差(1%未満で有意)を示す有意確立は0.8%であった。
このパス係数の推定結果から導き出した、塑性領域における二次式を、表2として以下に示す。
x:経過月数(月)
なお、ここでは二次式を式(3)とする
「係数b」についてはサグの影響を受ける。
弾性領域と同様に、サグ部は、塑性領域でも推移を促進する。
また、図18に示すように、塑性領域の路面状況には、亀甲状ひび割れの角欠けが確認できる。
弾性領域である一次式と、塑性領域である二次式とを組み合わせることにより、局所的な不等沈下量を予測する成長曲線を導き出すことができる。
一次式の傾きは、代表わだち量の影響を受けることから、実際には、測定区間の測定値を考慮し、代表わだち量0mm、10mm、20mmの3ケースを設定した。
さらに、この区間は、雨水の排水が一般部より困難な状況であるサグ部か、それ以外かによって、局所的な不等沈下の進行が異なることを考慮する必要もある。
次に、盛土の場合と同様に、切土区間における成長曲線として挙げられる2つのモデルを図21および図22に示す。
しかしながら、切土区間において、沈下量が注意領域に達すると、特にサグ部における損傷の進行は、盛土区間のその他一般部と同様の傾向を示すことから、沈下量の推移が緩やかであっても、その監視を怠ることはできないことがわかる。
上記の実施例におけるポットホールの発生領域において、上記の成長曲線に基づき、局所的な不等沈下の進行を予測した。
具体的には、上記の成長曲線を求めた解析区間において、路面性状調査を実施し、新たな指標である局所的な不等沈下量を算出した。
この結果を初期値とし、上記で述べた4つの要因に分類し、各地点の局所的な不等沈下量を算出し、ポットホールの予測を試みた。
上記の検討区間である土工区間23km/車線における予測結果を、図23に示した。
開始から5ヶ月後の予測結果によると、要注意領域40箇所/10km、注意領域54箇所/10kmとなる。
そして、この予測結果は、これらの処置や改良の実施時期、実施周期、補修範囲、および、費用の算定を含む補修計画策定の資料として活用できる。
この場合、部分補修などの維持管理が施されているため、ポットホールの発生に至る危険性は小さい。
しかしながら、損傷の進行(成長)が著しく、沈下量が急激に増加する傾向にあることから、この区間においては、注意領域に至る以前に応急処置を実施することが望まれる。
したがって、定期測定を継続することで、季節変動による違いを反映することが推奨される。
また、舗装の損傷を助長する要因分析、および、局所的な不等沈下量が増大する時期を明確にする成長曲線モデルについて検討することも推奨される。
なお、以下の各ステップにおいて実行される処理は、上記の各測定、解析、および、処理を組み合わせて用いるものである。
次に、予測区間の諸元整理を実行する(ステップS102)。
この諸元整理とは、具体的には、舗装構成、縦断勾配、横断勾配、交通量などを示す。
この測定は、定期測定として例えば各月5ヶ月にわたって実施されることが推奨される。
次に、得られた高さ情報を解析し、舗装表面に形成された局所的な不等沈下量を算出する(ステップS104)。
この損傷推移の傾向分析は、具体的には、この損傷推移の傾向分析として、測定実施時期ごとの局所沈下量の関係を整理することが挙げられる。
本実施例では、図13から図15に示されるように、時間経過と共に局所的な不等沈下量が大きくなる現象が発生し、損傷推移と共に局所的な不等沈下量が大きくなり、損傷が成長することが確認できる。
この成長曲線モデルは、ステップS105で得られた分析結果を、図16に示される共分散解析を行うことによって作成され、例えば、図19から図22に示されたグラフとして表される。
この算出は、例えば、〜という式を用いる。
この補修計画は、例えば、成長曲線モデルにおける曲線が、少なくとも〜に達したときに、局所的に〜を行い、さらに、〜という状況になったときに、広範囲で大規模な〜を行うよう計画される。
このような排水性舗装の局所的な不等沈下の早期発見は、構成度の高さ情報の取得で可能になる。
さらに、本発明では、排水性舗装特有の損傷である基層以深の劣化に伴う局所的な不等沈下を定量的に評価する指標として、その沈下量、即ち、局所的な不等沈下量を用い、これによって、基層以深の劣化を評価できるようにした。
そして、本発明では、排水性舗装の局所的な不等沈下量が、例えば、15mmを超えると路面上に亀甲状のひび割れが発生し、弾性領域から塑性領域へ推移することを利用し、この推移の時期を〜の判定の指標の一つとし、この推移の発生を劣化損傷の進展期と判断し、威光をポットホール発生予備群と分類し、優先的に補修を行うことにより、突発的な損傷発生のリスクを低減できる。
このため、本発明では、局所的な不等沈下量が25mmを超えたときには、損傷の加速的な進行が予想されるものとして、補修計画に、早急な対応策が組み入れられることになる。
100 スリットレーザ発信器
100a スリットレーザ
100b マーカー
101 エリアカメラ
102 車両の進行方向
Claims (3)
- 下層の路盤、中層の基層、および、上層の表層の3層を含む舗装構造からなる排水性舗装において、舗装表面の局所的な不等沈下が、基層以深の劣化の進行によって発生するものとし、局所的な不等沈下が、予め定められた沈下量の値に達するとき、その沈下量が達した領域の舗装構造の補修を含む補修計画が策定されるポットホールの発生を防止する方法。
- 排水性舗装が施された道路から、ポットホールの発生を予測する区間を選定し、決定する区間決定ステップと、
決定された予想区間の諸元整理を実行する諸元整理ステップと、
予想区間の路面の高さ測定を実施する測定ステップと、
得られた高さ情報を解析し、舗装表面に形成された局所的な不等沈下量を算出する沈下量算出ステップと、
得られた局所的な不等沈下量を用い、舗装構造の損傷推移の傾向を分析する傾向分析ステップと、
損傷推移の傾向分析の結果から、成長曲線モデルを作成するモデル作成ステップと、
得られた成長曲線モデルに基づき、局所的な不等沈下量の予測値の算出を実施する予測値算出ステップと、
得られた予測値が、予め定められた数値に達したときに、補修が実施される補修計画が策定される計画策定ステップと
を含む請求項1に記載のポットホールの発生を防止する方法。 - 予測値算出ステップが、
成長曲線モデルの分析結果に作用させる説明変数として用いられる分類が、盛土および切土からなる土工分類と、サグ部、および、サグ部以外のその他からなる滞水しやすさによる分類である請求項2に記載のポットホールの発生を防止する方法。
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