JP6704817B2 - 排水性舗装におけるポットホール発生リスクを定量分析する方法 - Google Patents
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Description
この排水性舗装の劣化機構や破損形態に関しては、劣化要員に対する現象を再現する実験や、供用中の高速道路での調査事例などの多数の報告事例がある。
このポンピング現象が発生すると、基層部の下層に空隙が発生し、この空隙が、経年劣化によって基層部のくぼみを引き起こす。
このような排水性舗装の劣化は、ひび割れが路面に出現した時点で、基層以深まで深度化している現象が散見されている。
その後、上記の方法の検証を重ねた結果、上記の方法は、局所沈下量の増加傾向については、ポットホールの発生との関連性が顕著であることが再確認された。
従来、このような局所沈下量が小さな地点におけるポットホールの発生を予測し、その予測を排水性舗装の維持管理に利用することは、上記の先願をもってしてもできず、ポットホールの発生を防止することができなかった。
下層の路盤、中層の基層、および、上層の表層の3層を含む舗装構造からなる排水性舗装を撮影することによって得られた画像の解析を介して、排水性舗装におけるポットホール発生リスクを定量分析する方法であって、
少なくとも、路面性状データから算出される局所沈下量、画像データから得られる緑と赤の比率であるG/R値、および、路面形状データから算出される平均プロファイル深さであるMPDを、排水性舗装の劣化因子として、これらの劣化因子の値を用い、ポットホールの発生リスクを段階的に判定することを特徴とする。
ポットホールの発生リスクを、局所沈下量の最大値が3mm未満の分析対象の群をリスクがほとんどない観察群とし、
観察群に含まれない分析対象のうち、局所沈下量が7mm未満の分析対象の群を分類Iとし、
観察群および分類Iに含まれない分析対象のうち、G/R=1以上の分析対象の群を分類IIとし、
観察群、分類Iおよび分類IIに含まれない分析対象のうち、MPD最大値が3.5未満の分析対象の群を分類IIIとし、
観察群、分類I、分類IIおよび分類IIIに含まれない分析対象となるMPD最大値が3.5以上の分析対象の群を分類IVとし、
観察群、分類I、分類II、分類III、分類IVの順にポットホールの発生リスクが高くなることを特徴とする。
そして、この予測にしたがって、ポットホールの発生前に、ポットホールの発生を防止する補修計画を策定できるようになる。
図1は、本発明にかかる排水性舗装におけるポットホール発生リスクを定量分析する方法で用いられる路面性状測定車によって生成される二次元画像、および、A−A'断面プロファイルの一例、図2は、本発明における定量分析の流れを示すフロー図、図3は、本発明における分析に用いられる説明変数の一覧、図4は、本発明における局所沈下量の一例を示す説明図、図5は、本発明における潜在変数と説明変数の関係を示すパス図、図6は、図5に示したパス図に適用される一次式の一覧表である。
本発明では、車両に搭載された光切断撮影装置によって、舗装表面の撮影が実行される。
この撮影では、スリットレーザ発信器から路面に対して直上からスリットレーザを照射することにより、車両の進行方向に対して直行するよう線状のマーカーが形成される。
また、この光切断撮影装置には、路面の可視画像を取得する機能も備える。
上記の光切断撮影装置、および、これを用いた局所沈下量の算出そのものは、本発明の特徴とは異なるので、ここでの詳細な説明は省略する。
上記分析では、特に、Cox回帰分析、および、カプラン・マイヤー法を用いた実績を実施する。
このMPDに関連する技術については、例えば、特開2015−049086に開示されている。
上記の分析結果は、初期損傷発生後から、ポットホールへ進展する要因に関する知見をうると共に、補修すべき箇所の優先度付けを可能とし、路面管理の信頼性の向上や、効果的かつ効率的な維持管理手法の提案に寄与するものである。
本発明においては、例えば、高精度計測が可能な路面性状測定車が使用される。
このような路面性状測定車としては、既に説明したとおり、例えば、特願2015−233803で開示されたような車両が挙げられる。
このカラーラインスキャンカメラを介し、高画質なカラー可視画像(1pixel/1mm以下)の生成が可能である。
上記の路面性状測定車の測定によって生成される高さ情報による二次元画像と、A−A'断面プロファイルの一例を図1に示す。
本実施例においては、データの分解能は、横(道幅)方向が1.7mm、縦(進行)方向が時速100km走行における測定時で、5.7mm、高さ精度は±1.0mmである。
本実施例では、このデータに基づき、分析、具体的には、生存時間解析を実施した。
本実施例における分析では、まず、定期測定データによる劣化機構の分析を実行する(ステップS01)。
次に、局所沈下量による成長曲線モデルを作成し(ステップS02)、ポットホールの発生リスクが高い地点と、局所沈下量の増加傾向の予測を行う。
次に、局所沈下量3mm以上を抽出した分析データを生成する(ステップS03)。
次に、ポットホールにいたる劣化進行に起因する因子の特定をCox回帰分析を解して抽出し(ステップS04)、得られた分析結果に基づき生存曲線の推定を実行する(ステップS05)。
そして、ポットホール発生リスクの定量評価を実行する(ステップS06)。
以上が、本発明における定量評価に至る流れである。
まず、図3に基づき、分析に用いられる説明変数について説明する。
説明変数の算出に用いる観測データの概要は以下のとおりである。
高速道路のうち、交通量が多い完成及び暫定区間を特定し、これらの区間を月ごとに観察した観測データを用いた。
判定基準は、上記ステップS02で作成されたポットホール発生の成長曲線モデルの劣化初期の一次式の切片3.49に準拠し、局所沈下量を3mm以上とした。
なお、分析に用いる説明変数については、各種数値型説明変数を10m単位で生成し、上記ステップS01で劣化進行の分類に採用した構造物区分、線形区分を加えた。
上記に基づいた分析に用いられる説明変数は、図3に示されるとおりである。
なお、降雨量による影響については、サンプルの対象とされた区間が、一定の範囲内に設定されているため、本実施例では変数とはしていない。
排水性舗装の損傷は、まず、局所的な沈下領域が発生し、次に、その沈下領域が縦断方向に拡大することで進行する。
この評価値の算出は、評価地点のわだち掘れ量と代表わだち掘れ量を差分した値を、局所的な相対わだち掘れ量として評価するものである。
本実施例では、代表わだち掘れ量としてい、評価地点から前後10mの縦断区間におけるわだち掘れ量の中央値を採用した。
なお、一般的なポットホールの定義値の径は20cmであることから、本指標の評価ピッチは、20cmとした。
潜在変数である一次式のモデルの傾きと切片、および、二次式のモデルの係数に対し、時間経過を示す観測変量、および、属性を示す説明変数の関係をパス図として図5に示した。
この結果、得られた成長曲線モデルの一例は、図8に示したとおりである。
このモデルは、切土・サグ部以外の一例である。
路面性状評価において、ひび割れの評価は重要な要素である。
このひび割れの評価は、例えば、路面を0.5mメッシュで分割したエリア内のひび割れ本数による判定を、面積換算することによって、路面全体を評価する指標となる。
ところで、排水性舗装のひび割れは、ポーラス状の混合物内で、骨材の接合点がはがれることによって表面化する。
表面化したひび割れ近傍の骨材には、接合点の減少が発生する。
このような骨材の欠損の助長によってもたらされる減少を定量化する指標として、MPDが用いられる。
従来から、骨材飛散とMPDとには、一定の相関関係があり、MPDにより骨材飛散が評価できる、とされている。
本発明では、MPDが高いと、ポットホールの発生リスクが高まると仮定し、MPDの推移を、劣化進行への影響を分析する劣化因子の1つとした。
なお、解析エリアについては、一般的なポットホールの定義値である径20cmを採用した。
アスファルトの経年劣化に伴う路面の変色要因として、アスファルト乳剤の老化現象による変色(新設時の黒色から白色)、磨耗による骨材表面の露出、ひび割れ進展による陰影領域の拡大、骨材飛散に伴う身磨耗領域の増大、補修跡(パッチング、クラックシール等の補修材)など多様なものが挙げられる。
このような照度環境下で得られた画像情報を利用し、アスファルト劣化現象の定量化を目的として、RGB色空間に着目した分析を行った。
このスペクトルの変化に対する分光分析結果は、図10および図11に示したとおりである。
この分光分析結果から判明した光強度の変化の値は、図12に示したとおりである。
まず、Cox回帰分析を用いた劣化因子の推定について説明する。
Cox回帰分析は、排水性舗装の劣化因子を推定するため、縦断的研究方法に採用されるものであり、本発明でも、Cox回帰分析を適用する。
比例ハザードモデルでは、これは、観測された生存時間とモデルの線形成分にある未知のパラメータである回帰係数βの関数であり、回帰係数βの推定値は観測されたデータの最尤推定値となる。
具体的には、部分尤度L(β)は、以下の数式(1)に示されるとおりである。
そこで、図12に示した変数のうち、劣化因子を用いてCox回帰分析を行い、変数減少(ステップワイズWald)法により、劣化因子を特定した。
また、本実施例に追いける分析は、SPSS Statisticsを使用した。
本文席における目的変数は、特定区間において、初期変状が確認された時点の変状箇所に対し、評価区間長10mを1サンプルとした。
ポットホールが発生した地点の発生直前から2ヶ月前までの局所沈下量とMPDの指標は、一様の増加傾向があり、本発明では、ポットホール発生直前の両指標の平均値を採用した。
観察対象である局所沈下量3mm異常のうち、上記の閾値に到達しなかった地点を「生存」として定義した。
以上の説明にしたがい、ポットホール発生にいたる劣化進行への影響が懸念される因子について分析を行った。
ここでは、説明変数は、路面形状データから算出する局所沈下量とMPDとし、可視画像から舗装の色相を示すRGB空間を3分割し、256階調の値から得たGreen、RedおよびG/Rについて、基本統計量を算出した。
なお、図13中、表内のハザード比は、ポットホール発生率の影響比率を表し、1を上回ると発生率が数倍になり、1以下の場合は、変数への影響が少ない、と解釈する。
劣化進行へ影響が大きい説明変数として、局所沈下量の最大値、MPDの最大値という結果を得た。
これは、既に述べた従来技術に記載される見解と同様に、局所沈下量が、ポットホール発生リスクを増大させる先行指標として、有用な評価値であることを示す。
ポットホールは、輪荷重が作用する領域に発生することは周知であるが、輪荷重が作用する領域となる走行軌跡は、平面・縦断線形に応じて異なる。
この車輪軌跡部の沈下を評価する指標は、わだち掘れ量による評価となるが、車線内にポットホールが発生する位置の特定は、わだち掘れ量のみから困難である。
既に述べたとおり、ポットホールの発生箇所は、MPDの数値が高い。
また、本発明の特徴の一つとして、既に述べた従来技術で分類された構造区分、線形区分が除外されるが挙げられる。
これにより、表基層部が、一様に劣化することから、本発明では、構造区分、線形区分による分類の影響が少ない、と思われる。
G/Rの全データにおけるヒストグラムは、図14に示したとおりである。
このヒストグラムによると、分布の平均値である1.00を境に分布が2分された。
G/Rによる劣化評価の閾値としてこの値を検証するため、健全箇所と劣化箇所の画像解析を行った。
この図15にしえされたG/R評価によると、アスファルト劣化領域が多く存在する場合は、G/R平均値は、低い値を示し、健全な場合は、分類された平均値1.00に近似する。
なお、抽出した3つの説明変数は、有意確率5%以下であり、分析結果の信頼性を示している。
まず、カプラン・マイヤー法について説明する。
カプラン・マイヤー法は、医学・薬学分野において、被験者への臨床試験に多用される手法である。
カプラン・マイヤー法において、生存時間解析とは、明瞭な貴店から特定のイベントやエンドポイントまでの時間という形のデータに対する解析のことをいう。
ここで、生存関数と、ハザード関数について説明する。
被験対象が健全な状態である期間(生存時間t)は、非負の値をとる変数Tの実現値として捉えられる。
ここで、確率変数Tは、確率密度関数がf(t)である確率分布に従うとする。
このとき、Tの分布関数は、次の数式(2)で表され、生存時間がある値tよりも小さい値となる確率、すなわち、被験対象が時点tを越えて生存できない確率を表す。
なお、式中のuは積分変数とする。
したがって、生存関数は、被験対象が時点tを越えて生存する確率を表す。
観測時間内のデータ群において、t(k)からt(k+1)番目までのk番目の任意の時点tにおける生存関数の推定値は、t(k)を超えて生存する確率の推定値となる。
カプラン・マイヤー法による推定値S(t)は、以下の数式(6)によって表され、条件付き確率を推定し、その積で全数の生存関数を推定する。
本発明では、ポットホール発生までの生存時間の特定を目的とし、ポットホール発生直前に至るまでの局所沈下量の劣化進行に起因する因子について検証するため、カプラン・マイヤー法を適用した。
そして、局所沈下量が3mm以上に進行した表面損傷が発症した地点を観測対象とし、好通材飛散やひび割れの発言を示すMPDを確認することで、路面性状から把握できる劣化状況の定量化を行う。
Cox回帰分析結果に基づき、カプラン・マイヤー法を用いた生存曲線を分類別に推定する。
ポットホール発生リスクは、3分類の劣化因子の組み合わせで分類されると仮定し、生存率の違いが顕著になる各劣化因子における閾値の最適解を得るため、複数の組み合わせによる分類を試みた。
その結果、局所沈下量7mm、MPD3.50の閾値を得た。
劣化因子の組み合わせによる分類別の生存曲線は、図17のとおりである。
この生存曲線に夜と、局所沈下量7mm未満、かつ、G/R1.00以上の場合は、300日が経過しても生存率90%以上でリスクは小さい。
しかしながら、アスファルト劣化が顕在することを示すG/R1.00未満の場合は、生存率が5%低下する。
以上の分析から、ポットホール発生の劣化因子として、局所沈下量、色情報G/R、MPDの3指標は、ポットホール発生リスクを高める指標であることが確認できた。
なお、図18の検定結果1に示したように、上記に基づく検定結果は、全て有意確率5%以下となり、複数群の母生存関数には、有意な差がある。
まず、局所沈下量を算出し、3mm以下については経過観察、3mm以上7mm未満を劣化分類Iと位置づける。
超過する場合は、低リスクである分類II、G/R値が1.00以上である場合には中リスクな分類IIIとする。
以上のとおり、測定値に基づく生存時間解析により、従来は把握することができなかったポットホールの発生リスクの定量化を行った。
ここでは、4,500台/日で分類し、生存曲線を推定した。
ここで得られた生存曲線は、図20および図21に示されるとおりである。
これらの生存曲線から、大型車の交通量が劣化進行に大きく影響していることが確認できる。
一方、交通量4,500台/日以上は、300日経過時点では、生存率70%以下と、色情報G/Rの影響を受け、さらに、MPD3.50超過では、300日経過生存率は25%まで低減することが確認できる。
なお、図22の検定結果2に示したように、上記に基づく検定結果は、全て有意確率5%以下となり、複数群の母生存関数には、有意な差がある。
整理された結果は、カテゴリ別の分類ごとの生存率として、図23に示したとおりである。
図19定量化フローと、図23の表によると、ポットホール発生リスクの定量化が視覚的に確認できることがわかった。
本発明では、本発明の実施に先行して、既に、本件出願人が別に提案した方法で、局所沈下領域の進行性を分析し、その結果、道路構造における水の介在を分類することで、ポットホール予備軍の抽出を可能とした。
また、本発明によると、局所沈下量3mmを超過すると、同六尾添や線形要素に関係なく、舗装表面の評価指標でポットホール発生のリスクを定量化できる。
そして、一様の環境下で取得したカラー画像を解析することにより、舗装表面のアスファルト劣化評価を治療化する色情報G/Rを提案可能とした。
Claims (4)
- 下層の路盤、中層の基層、および、上層の表層の3層を含む舗装構造からなる排水性舗装を撮影することによって得られた画像の解析を介して、排水性舗装におけるポットホール発生リスクを定量分析する方法であって、
少なくとも、路面性状データから算出される局所沈下量、画像データから得られる緑と赤の比率であるG/R値、および、路面形状データから算出される平均プロファイル深さであるMPDを、排水性舗装の劣化因子として、これらの劣化因子の値を用い、ポットホールの発生リスクを段階的に判定する、上記の排水性舗装におけるポットホール発生リスクを定量分析する方法。 - 劣化因子の特定が、Cox回帰分析を用いて実行される、請求項1に記載の排水性舗装におけるポットホール発生リスクを定量分析する方法。
- ポットホールの発生直前に至るまでの局所沈下量の劣化進行に起因する因子を特定が、カプラン・マイヤー法を用いて実行される、請求項1または2に記載の排水性舗装におけるポットホール発生リスクを定量分析する方法。
- ポットホールの発生リスクを、局所沈下量の最大値が3mm未満の分析対象の群をリスクがほとんどない観察群とし、
観察群に含まれない分析対象のうち、局所沈下量が7mm未満の分析対象の群を分類Iとし、
観察群および分類Iに含まれない分析対象のうち、G/R=1以上の分析対象の群を分類IIとし、
観察群、分類Iおよび分類IIに含まれない分析対象のうち、MPD最大値が3.5未満の分析対象の群を分類IIIとし、
観察群、分類I、分類IIおよび分類IIIに含まれない分析対象となるMPD最大値が3.5以上の分析対象の群を分類IVとし、
観察群、分類I、分類II、分類III、分類IVの順にポットホールの発生リスクが高くなる、
請求項1から3のいずれかに記載の排水性舗装におけるポットホール発生リスクを定量分析する方法。
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