JP2017101120A - 天然ゴムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】固形状の天然ゴムの臭気を簡便に低減し、かつ、耐熱老化性等の物性も低下させない天然ゴムの製造方法を提供する。【解決手段】脱蛋白処理されていない固形状の天然ゴムを、亜鉛華を含有する溶液によって処理する工程を含む天然ゴムの製造方法に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、天然ゴムの製造方法に関する。
ゴム業界で使用されている天然ゴム(NR)は、熱帯地方で栽培されるヘベア・ブラジリエンシスと呼ばれるゴムノキから採取された樹液(ラテックス)を固形化したものである。固形化する方法としては、ギ酸等の酸で凝固、シート化、乾燥して製造する方法や、ゴム農園においてラテックス採取用のカップの中で自然に凝固させたり、カップに酸を添加して凝固させたりして得られたカップランプを粉砕、洗浄を繰り返し、乾燥後プレスして製造する方法などがある。
上述のような方法で製造されることから、天然ゴムはポリイソプレン成分以外にタンパク質、脂質、糖等の非ゴム成分を多く含有している。そのため、乾燥の前段階での貯蔵期間中にこれらの成分が腐敗し、悪臭の原因となっている。特にカップランプに関しては非ゴム成分を非常に多く含有し、農園での貯蔵、加工所での貯蔵・輸送期間などから貯蔵期間が長く、臭気の問題が生じ易い。しかしながら、製造のし易さ、コストの面からタイヤ用途では近年カップランプを原材料とした天然ゴムが非常に多く使用されている。天然ゴムの腐敗臭は天然ゴムの加工工場はもちろん、タイヤ等のゴム製品の製造工場においても、工場の作業環境の悪化、工場周辺の環境への影響など問題になっている。
このような天然ゴムの臭気の問題を解決するために、天然ゴムラテックスに蛋白分解酵素、界面活性剤を添加し反応させて、腐敗の原因の1つであるタンパク質を除去することで臭気を低減させる方法や(例えば、特許文献1参照)、天然ゴムラテックスから天然ゴムを濃縮精製する際に生じるしょう液に無機塩と蛋白質分解酵素を添加して微粒子天然ゴムを調製することでゴム臭を低減する方法(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
また、特許文献3には、天然ゴム製造時の乾燥温度を低下させることで臭気を低減させる方法が開示されている。その他、天然ゴムラテックスの凝固物を水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液といった強アルカリ溶液に浸漬することで、臭気成分を低減する方法も開示されている(例えば、特許文献4、5参照)。
特許第3654934号公報 特許第3750100号公報 特許第5312439号公報 特許第3573498号公報 特開2013−249411号公報
上述のように、天然ゴムの臭気を除去すべく種々検討が行われているが、例えば、特許文献1、2のように、蛋白質分解酵素処理により天然ゴムラテックスやしょう液からタンパク質を除去する方法は、ラテックスやしょう液といった液状の原料を用いる場合にしか適用できず、カップランプのような固形状の天然ゴムに関しては臭気低減することができない。また、特許文献3のように、天然ゴム製造時の乾燥温度を低下させる方法では、天然ゴム加工所での生産性が低下し、臭気改善と生産性向上を両立させることができない。他方、特許文献4、5のように、凝固ゴムを水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液といった強アルカリ溶液で処理する方法では、臭気は低減できるが、本発明者らの検討の結果、処理後の乾燥中にゴムの劣化等が起こることが判明し、臭気低減と天然ゴム特性維持を両立させることができないことが分かった。
このように、容易に入手できる固形状の天然ゴムを簡便に臭気低減し、かつ物性も保持できる技術はまだ存在していなかった。
本発明は、前記課題を解決し、固形状の天然ゴムの臭気を簡便に低減し、かつ、耐熱老化性等の物性も低下させない天然ゴムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、脱蛋白処理されていない固形状の天然ゴムを、亜鉛華を含有する溶液によって処理する工程を含む天然ゴムの製造方法に関する。
上記亜鉛華の平均一次粒子径が100nm以下であることが好ましい。
上記溶液が更に界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明によれば、脱蛋白処理されていない固形状の天然ゴムを、亜鉛華を含有する溶液によって処理する工程を含む天然ゴムの製造方法であるので、固形状の天然ゴムの臭気を簡便に低減でき、かつ、耐熱老化性等の物性も低下させずに維持することができる。
本発明の天然ゴムの製造方法は、脱蛋白処理されていない固形状の天然ゴムを、亜鉛華を含有する溶液によって処理する工程を含む。
ここで、天然ゴムの臭気は、天然ゴムの非ゴム成分であるタンパク質、脂質、糖などが貯蔵中に腐敗することで、臭気の原因物質(臭気成分)である低級脂肪酸が発生することが原因と考えられる。本発明者らは、上記溶液によって処理することにより、臭気成分の除去及び発生の抑制を行うことができ、固形状の天然ゴムの臭気を低減することが可能となることを見出した。そして更に、このような処理を行った場合には、処理後の固形状の天然ゴムにおいて、耐熱老化性等の物性を低下させずに維持することも可能となることを見出した。
なお、本発明の製造方法は、上記処理工程を含む限り後述する洗浄工程等その他の工程を含んでいてもよく、また、各工程は1回行われてもよいし、複数回繰り返し行われてもよい。
本発明における処理工程に供される固形状の天然ゴムは、脱蛋白処理されていないものである。すなわち、上記処理工程に供される固形状の天然ゴムとしては、脱蛋白処理されていない天然ゴムラテックスを凝固させた凝固物であれば特に制限されない。当該脱蛋白処理とは、例えば、水酸化ナトリウム等の強アルカリや蛋白質分解酵素を用いた蛋白質の分解処理を表し、よって、本発明において用いられる固形状の天然ゴムとは、このような蛋白質の分解処理を施されていない天然ゴムラテックスを凝固させた凝固物である。そのような固形状の天然ゴムとしては、例えば、天然ゴムラテックスをギ酸等の酸で凝固させたラテックス凝固ゴム、カップランプ、トリーレース、未燻製シート(アンスモークトシート:USS)、カップランプをフィールドラテックスで固めたもの(スラブ)、TSRとして加工後のもの、又はこれらの混合品等が挙げられる。これらの中でも、上記固形状の天然ゴムが、カップランプ、及び、未燻製シート(アンスモークトシート:USS)からなる群より選択される少なくとも1種であること、更には、タンパク質を含む非ゴム成分を多く含有し、貯蔵期間が長くなる傾向にあることから、上記固形状の天然ゴムがカップランプであること、もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記固形状の天然ゴムにおいて、窒素含有量は0.20質量%以上が好ましく、0.25質量%以上がより好ましく、0.30質量%以上が更に好ましい。上記処理工程に供される固形状の天然ゴムは、脱蛋白処理されていないものであるため、少なくとも窒素分を0.20質量%以上含むものである。窒素含有量は、例えば、ケルダール法など、従来の方法で測定できる。窒素は、蛋白質に由来するものである。
天然ゴムラテックスは、ヘベア樹などのゴムノキの樹液として採取され、ゴム分の他、水、タンパク質、脂質、無機塩類などを含み、ゴム中のゲル分は種々の不純物の複合的な存在に基づくものと考えられている。天然ゴムラテックスとして、ヘベア樹をタッピングして出てくる生ラテックス(フィールドラテックス)、遠心分離法やクリーミング法によって濃縮した濃縮ラテックス(精製ラテックス、常法によりアンモニアを添加したハイアンモニアラテックスなど)などを使用できる。
上記カップランプとしては、天然ゴムを採取するカップに天然ゴムラテックスが溜まり、それが微生物による非ゴム成分の分解で生じる脂肪酸によって自然に凝固した天然ゴム、又は、予め天然ゴムラテックスを凝固させる機能を有する薬品をカップに入れておき、強制的に素早く凝固させた天然ゴムなどが挙げられる。上記天然ゴムラテックスを凝固させる機能を有する薬品としては、そのような機能を有するものであれば特に限定されず、例えば、硫酸、ギ酸、塩酸、酢酸などの酸、カルシウムイオンなどの陽イオンやそれらの塩類、メタノール、エタノールなどの有機溶剤などが挙げられる。
また、上記処理工程に供される固形状の天然ゴムの形状としては、特に限定されず、シート状、ブロック状、顆粒状といったように、ゴムの製法や用途に応じて選択することができる。脱臭効果、及び最終的な乾燥効率の観点からは、厚みが3cm以下のシート状が好ましく、その厚みは2cm以下であることがより好ましく、1cm以下であることが更に好ましく、5mm以下が最も好ましい。シート状以外の形態では、最も長い一辺が30cm以下のブロック状であることが好ましく、20cm以下がより好ましく、10cm以下が更に好ましく、1cm以下が特に好ましい。上記適度な大きさの固形状天然ゴムは、大きな形状の固形状天然ゴムを粉砕及び/又は切断することによって得られる。
上記処理工程において、固形状の天然ゴムを、亜鉛華を含有する溶液によって処理する方法としては、固形状の天然ゴムを、亜鉛華を含有する溶液により処理することができれば、その処理方法は特に制限されず、例えば、固形状の天然ゴムに亜鉛華を含有する溶液を塗布したり、スプレー、シャワーなどにより噴霧したり、亜鉛華を含有する溶液に固形状の天然ゴムを浸漬したりすることによって行うことができるが、脱臭効果、効率の観点から、亜鉛華を含有する溶液に固形状の天然ゴムを、必要に応じて撹拌しながら、浸漬する方法が好ましい。
上記処理工程における亜鉛華の添加量としては、上記固形状の天然ゴム100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、30質量部以上が更に好ましく、50質量部以上が特に好ましい。5質量部未満では、臭気成分を充分に中和、除去できないおそれがある。他方、該添加量は、上記固形状の天然ゴム100質量部に対して、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、100質量部以下が更に好ましい。200質量部を超えると、多量の亜鉛華が必要なわりに臭気成分の減少量が増えるわけではなく、コストに見合った効率が得られない傾向にある。
上記処理工程における、固形状の天然ゴムと亜鉛華を含有する溶液との接触時間(処理時間)としては、特に限定されないが、通常5分以上であり、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上であり、更に好ましくは3時間以上、特に好ましくは12時間以上である。5分未満であると、本発明の効果が良好に得られないおそれがある。固形状の天然ゴムと亜鉛華を含有する溶液との接触時間の上限は、特に制限されないが、生産性の観点から、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、16時間以下が更に好ましい。
上記処理工程における、固形状の天然ゴムと亜鉛華を含有する溶液との接触温度(処理温度)としては、特に限定されないが、例えば、10〜50℃とすることが好ましく、15〜35℃がより好ましい。なかでも、室温(20〜30℃)が特に好ましい。
上記亜鉛華(酸化亜鉛)としては、特に限定されず、従来公知のものを使用できるが、微粒子亜鉛華を好適に使用できる。具体的には、平均一次粒子径が600nm以下の亜鉛華が好ましく、100nm以下がより好ましい。600nmを超えると、比表面積が小さくなり、充分な効果が得られない傾向がある。
該平均一次粒子径の下限は、特に限定されないが、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは50nm以上である。
なお、上記平均一次粒子径は、窒素吸着によるBET法により測定した比表面積から換算された平均粒子径(平均一次粒子径)を表す。
上記亜鉛華を含有する溶液としては、上記亜鉛華を含有する水溶液、上記亜鉛華を含有するアルコール溶液等が挙げられるが、上記亜鉛華を含有する水溶液が好ましい。
なお、上記亜鉛華を含有する溶液は、例えば、従来公知の方法で上記亜鉛華を水、アルコール等の溶媒中に分散させることで調整することができ(分散液)、具体的には、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル等を用いて調整できる。より具体的には、コロイドミルに上記溶媒を入れ、撹拌しながら亜鉛華を添加し、次いでホモジナイザーを用いて循環することにより、上記溶液を調整できる。
上記亜鉛華を含有する溶液の市販品としては、住友大阪セメント(株)製のZW−143等を使用できる。
上記亜鉛華を含有する溶液における上記亜鉛華の含有量としては、上記亜鉛華を含有する溶液100質量%中、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは5.0質量%以上である。0.3質量%未満では、臭気成分を充分に中和、除去できないおそれがある。該含有量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。15質量%を超えると、多量の亜鉛華が必要なわりに臭気成分の減少量が増えるわけではなく、コストに見合った効率が得られない傾向にある。
上記亜鉛華を含有する溶液は更に界面活性剤を含有することが好ましい。これにより、固形状の天然ゴム内部の臭気成分を抽出しやすくしたり、亜鉛成分を浸透させやすくしたりすることで、より効率的に臭気成分の除去及び発生の抑制を行うことができ、結果、固形状の天然ゴムの臭気をより低減することが可能となる。
上記処理工程において、固形状の天然ゴムを、亜鉛華及び界面活性剤を含有する溶液によって処理する方法としては、例えば、固形状の天然ゴムに亜鉛華及び界面活性剤を含有する溶液を塗布したり、スプレー、シャワーなどにより噴霧したり、亜鉛華を含有する溶液に固形状の天然ゴムを浸漬したりする際に、該溶液に界面活性剤を添加して行うことができる。中でも、脱臭効果、効率の観点から、亜鉛華及び界面活性剤を含有する溶液に固形状の天然ゴムを、必要に応じて撹拌しながら、浸漬する方法が好ましい。
上記界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種を使用することができる。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという点から、陰イオン性界面活性剤が好ましい。
上記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、リン酸エステル系等の陰イオン性界面活性剤が挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンエーテル系、ポリオキシアルキレンエステル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、糖脂肪酸エステル系、アルキルポリグリコシド系、ポリオキシアルキレンポリグルコシド系等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸系、ベタイン系、イミダゾリン系、アミンオキサイド系等の両性界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。
これら界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩を好適に使用できる。なお、これらの塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩など)、アンモニウム塩、アミン塩(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン塩などのアルカノールアミン塩)などが挙げられる。
これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が特に好ましい。
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、炭素数10〜18のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、アミン塩、ナトリウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が更に好ましい。上記炭素数は10〜14が好ましい。また、オキシエチレン基の平均重合度は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどが挙げられる。なかでも、臭気成分の低減効果に優れるという理由から、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが好ましい。
上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンエーテル系、ポリオキシアルキレンエステル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、糖脂肪酸エステル系、アルキルポリグリコシド系、ポリオキシアルキレンポリグルコシド系の非イオン性界面活性剤や、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオキシアルキレンエーテル系の非イオン性界面活性剤が好ましい。
上記ポリオキシアルキレンエーテル系の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリオールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノ、ジ、又はトリスチリルフェニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルが好適に使用される。なお、前記ポリオールとしては、炭素数2〜12の多価アルコールが好ましく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、グルコース、スクロース、ペンタエリトリトール、ソルビタン等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレンエステル系の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルロジン酸エステル等が挙げられる。
上記多価アルコール脂肪酸エステル系の非イオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜12の多価アルコールの脂肪酸エステル又はポリオキシアルキレン多価アルコールの脂肪酸エステル等が挙げられる。より具体的には、例えば、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリトリトール脂肪酸エステル等が挙げられる。また、これらのポリアルキレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル等)も使用可能である。
上記糖脂肪酸エステル系の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ショ糖、グルコース、マルトース、フルクトース、多糖類の脂肪酸エステル等が挙げられ、これらのポリアルキレンオキサイド付加物も使用可能である。
上記アルキルポリグリコシド系の非イオン性界面活性剤としては、グリコシドとしてグルコース、マルトース、フルクトース、ショ糖などが挙げられ、例えば、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルポリグルコシドなどが挙げられ、これらの脂肪酸エステル類も挙げられる。また、これらすべてのポリアルキレンオキサイド付加物も使用可能である。
これら非イオン性界面活性剤におけるアルキル基としては、例えば、炭素数4〜30の直鎖又は分岐した飽和若しくは不飽和のアルキル基が挙げられる。また、ポリオキシアルキレン基としては、炭素数2〜4のアルキレン基を有するものが挙げられ、例えば、酸化エチレンの付加モル数が1〜50モル程度のものが挙げられる。また、前記脂肪酸としては、例えば、炭素数4〜30の直鎖又は分岐した飽和若しくは不飽和の脂肪酸が挙げられる。
上記亜鉛華及び界面活性剤を含む溶液における界面活性剤の含有量としては、上記亜鉛華及び界面活性剤を含む溶液100質量%中、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。0.01質量%未満では、固形状の天然ゴム中の臭気成分の中和、除去効率を改善できないおそれがある。他方、該含有量は、上記亜鉛華及び界面活性剤を含む溶液100質量%中、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。3質量%を超えると、多量の界面活性剤が必要なわりに臭気成分の減少量が増えず、コストに見合った効率が得られない傾向にある。
上記固形状の天然ゴムを、亜鉛華を含有する溶液によって処理する工程の後、得られる処理済み天然ゴムの表面上に残存する亜鉛華を洗浄する工程を行うのが好ましい。
上記洗浄工程は、処理工程を行った結果得られる処理済み天然ゴムの表面上に残存する亜鉛華を洗浄、除去することができれば、その方法は特に制限されないが、例えば、処理済み天然ゴムを水で希釈した後、遠心分離する方法、処理済み天然ゴムを水浴に静置して浮かせ、水相のみを排出して天然ゴムを取り出す方法などが挙げられる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
実施例において用いた各種薬品を下記に示す。
微粒子亜鉛華水溶液:住友大阪セメント(株)製のZW−143(30wt%水溶液、亜鉛華の平均一次粒子径:20nm)
界面活性剤:花王(株)製のエマール E−27C(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)
<天然ゴムサンプルの調製>
通常のゴム農園で作製されたカップランプ(窒素含有量:0.37質量%)を入手し、5〜10mm角の大きさに切断した。
(比較例1)
上述のようにして調製した天然ゴムサンプルをそのまま乾燥(70℃、14時間)して、サンプルを調製した。
(実施例1〜6)
表1に示す濃度で作製した水溶液60gに、上述のようにして調製した天然ゴムサンプル6gを、表1に示す処理時間、室温(20〜30℃)で撹拌しながら浸漬した。天然ゴムサンプルを取り出し、水で洗浄した後、70℃で14時間乾燥し、処理後天然ゴムを得た。
得られた比較例1のサンプル、及び、実施例1〜6の処理後天然ゴムについて下記の評価を行った。結果を表1に示す。
(臭気成分の分析方法)
天然ゴムの臭気の主な原因物質としては、酢酸、吉草酸、イソ吉草酸、イソ吉草酸アルデヒド、酪酸のような低級脂肪酸及びそれらのアルデヒドが挙げられる。
そこでHead−Space GCMS(株式会社島津製作所製、製品名「GCMS−QP2010 Ultra」、ヘッドスペースサンプラ―として株式会社島津製作所製「HS−20」を使用)を用いて検出される上記成分のピーク面積比を各成分の嗅覚閾値で補正し、全てを足したものを臭気成分指数とした。そして、下記式により、臭気成分率を評価した。臭気成分率が低いほど、臭気が低減されていることを示す。
臭気成分率(%)=(処理後天然ゴム〔比較例1の場合にはサンプル〕における臭気成分指数/比較例1のサンプルにおける臭気成分指数)×100
(天然ゴムの劣化特性評価)
処理後天然ゴム(比較例1の場合にはサンプル)の劣化特性は、下記式により、80℃で72時間老化させた後のムーニー粘度の保持率を評価した。ムーニー粘度保持率の値が大きいほど、処理後天然ゴムが劣化特性(耐熱老化性)に優れていることを示す。具体的には、ムーニー粘度保持率が60%以上であれば充分劣化特性に優れているといえ、65%以上であればより劣化特性に優れているといえ、70%以上であれば更に劣化特性に優れているといえ、80%以上であればより更に劣化特性に優れているといえ、85%以上であれば特に劣化特性に優れているといえ、95%以上であれば中でも特に劣化特性に優れているといえる。
ムーニー粘度保持率(Mw保持率、%)=(老化後のムーニー粘度/老化前のムーニー粘度)×100
Figure 2017101120
表1の結果から、本発明の処理を行った凝固後の固形状天然ゴムは、臭気が低減し、かつ、耐熱老化性に優れることが分かる。
具体的には、亜鉛華を含有する溶液で処理した場合(実施例1〜6)、亜鉛華を含有する溶液で処理しなかった場合(比較例1)に比べて臭気成分率が大幅に低減していることが確認できた。更に、実施例1、2と実施例3との比較から、上記溶液が更に界面活性剤を含有することで更に臭気成分率を低減できることが分かった。

Claims (3)

  1. 脱蛋白処理されていない固形状の天然ゴムを、亜鉛華を含有する溶液によって処理する工程を含む天然ゴムの製造方法。
  2. 前記亜鉛華の平均一次粒子径が100nm以下である請求項1記載の天然ゴムの製造方法。
  3. 前記溶液が更に界面活性剤を含有する請求項1又は2記載の天然ゴムの製造方法。
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