JP2017095317A - 不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんが - Google Patents

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Abstract

【課題】スラグに対して優れた耐食性と共に酸化による脆化が少ない不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがを提供する。【解決手段】この不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがは、A1203成分を70質量%、炭化珪素であるSiC成分を5〜15質量%、バインダーとして用いるリン酸アルミニウムに含まれるP205成分がれんが成分中の0.5〜4質量%となることを特徴としており、また、鱗状黒鉛や無定形黒鉛、ピッチといったカーボン系原料は使用しない。この不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがはスラグに対する高い耐食性と酸化による脆化が少なく、高温下で長時間使用され、且つ、スラグにもさらされる不焼成れんがとして優れた特質を持つ。【選択図】なし

Description

本発明は、鉄鋼プロセスおける高炉樋や卜ーピードカー、溶銑鍋などの容器の裏張りに利用する高耐用で安価なれんがに関する。
高炉樋や卜ーピードカー、溶銑鍋など(以下、溶銑容器と呼ぶ。)は、外殻の鉄鋼構造物(鉄皮)の内側に耐火物がライニングされる。一般的に耐火物のライニングは複層となっており、使用中に溶銑やスラグと接する内側の層を「内張り」、内張りの裏側にライニングされる層を「裏張り」と呼ぶ。溶銑容器に裏張りを配置することで、ライニングの信頼性の向上が図られている。そのため、裏張りに使用される耐火物としては、溶銑や溶融スラグに対する耐食性が高く、また長期間劣化しないことがもとめられる。
溶銑容器、特に高炉樋の裏張りに使用される耐火物としては、「アルミナ一炭化珪素焼成れんが」が一般的に用いられる。アルミナ一炭化珪素焼成れんがは、溶銑や溶融スラグに対し高い耐食性を示し、また長期間使用しても酸化などによる劣化が小さいなどの特徴を持つ。しかし、れんがの製造工程にて500℃を超えて熱処理する工程、すなわち焼成を行うため、その費用(例えば燃料費や焼成設備の固定費)が発生してしまい、高価であった。
焼成れんがに比べ安価な耐火物としては、焼成をせず成形した「不焼成れんが」がある。
不焼成れんがは、「レジンボンド」によって成形されるものが多い。レジンボンドとは、フェノール樹脂などのレジンをバインダーとし、レジンの重合反応によってれんが組織を結合する形態のことである。レジンボンドによる不焼成れんがは、アルミナ(A1203)などの耐火原料と、バインダーとしてのレジンを混練し、プレス成形されたのちに、300℃前後の乾燥工程を経て得られる。
溶銑容器に用いられるレジンボンド不焼成れんがとしては、「アルミナ一炭化珪素一炭素れんが」が代表的であり、溶銑や溶融スラグに対し優れた耐食性を有し、溶銑容器の内張りとして広く使用されている。
レジンボンドによらない不焼成れんがとしては、例えば特許文献1のアルミナ系骨材とアルミナ系微粉末とをケイ酸ソーダ系バインダーで固めた高合金金属溶製用「不焼成ハイアルミナれんが」が挙げられる。また、特許文献2の化学的安定性及び耐久性に優れた炭化珪素粉末をアルミナセメント等で固め、成形後熱処理で結合水が除去された「不焼成炭化珪素成形体」が挙げられる。
特許文献1および特許文献2に用いられるバインダーは無機化合物の重合反応または水和反応によって、そのボンド形態をとることから、ここでは無機ボンドと呼ぶ。
特開2000-119061号公報 特開平10-167829号公報
不焼成れんがの内レジンボンドによる不焼成れんがは、内張りに使用する場合は1000℃以上の高温で使用されることで、レジンが炭化してカーボンボンドを形成して、れんがの強度を発現することが一般的に知られている。しかし、レジンボンドによる不焼成れんがを裏張りに使用する場合は強度不足の問題があった。すなわち、裏張り部位の温度域である400℃〜800℃の環境にさらされると、重合反応したレジンが分解してしまい、また、カーボンボンドを形成していないため、れんがの強度が失われる課題があった。
一方、特許文献1の不焼成ハイアルミナれんがや、特許文献2の不焼成炭化珪素成形体を溶銑容器の裏張りに使用する場合、400℃〜800℃の環境でも強度低下が小さい点では好適である。しかし、不焼成ハイアルミナれんがは、溶銑や溶鋼に対する耐食性は優れるものの、溶融スラグに対する耐食性に劣るため、溶銑容器の裏張りには好適でない。不焼成炭化珪素成形体は、溶銑に対する耐食性に劣る。また溶銑容器の裏張りとして長期に使用すると炭化珪素(SiC)が酸化して酸化珪素(Si02)を生成し、バインダーに用いられるアルミナセメント(CaO・A1203)中の酸化カルシウム(CaO)と反応し、低融点物を生成してしまうため劣化が進行してしまう。そのため溶銑容器の裏張りには好適でない。
また、特許文献1の不焼成れんがはバインダーとしてケイ酸ソーダ(Na20・nSi02・mH20)が用いられる。ケイ酸ソーダ成分中の酸化ナトリウム(Na20)は、耐火性原料中の酸化珪素および炭化珪素が酸化して生成する酸化珪素と反応し、低融点物が生成してしまう。そのため、不焼成れんがのバインダーとしてケイ酸ソーダを選択すると、長期使用により劣化が進行してしまうため、溶銑容器の裏張りには好適でない。
そこで本発明はかかる課題に鑑み、溶銑や溶融スラグに対する高い耐食性を持ち、400℃から800℃の環境に長期間さらされても劣化しにくい特性を持ち、かつ安価な不焼成れんがを提供する。
アルミナと炭化珪素の原料を適切な量を組み合わせ、かつバインダーとしてリン酸アルミニウムを適用することで、溶銑容器の裏張りに最適な特性を見出し、本発明に至った。
本発明の不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがは、A1203成分を70質量%以上、SiC成分を5〜15質量%、リン酸ボンドに用いるリン酸アルミニウムに含まれるP205成分をれんが成分中の0.5〜4質量%含むことを特徴とする。
本発明の好ましい実施形態としては、カーボン系原料を含まないことを特徴とする。
本発明の不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがは、アルミナ原料と炭化珪素原料とを適切に配合し、さらにバインダーとしてリン酸アルミニウムを適用したことにより、優れた耐食性を有し、400℃から800℃の環境で長期使用しても劣化しにくい特性をもつ。
本発明のれんがが400℃から800℃の環境で長期使用により劣化しにくい理由は、バインダーとして適用したリン酸アルミニウムが、使用環境で結合形態を維持することができ、さらに耐火原料中のアルミナ原料と反応が進みにくく、低融点物質を生成しにくい点にある。例えば、バインダーとして酸化ナトリウムを含むものを適用すると、耐火物成分中のアルミナ原料と酸化ナトリウムの反応が進んでしまい、結合形態を長期間維持することが難しい。
また本発明のれんがは長期使用により劣化しにくいため、スラグに対し優れた耐食性を示す炭化珪素の効果を最大限に発揮できる。すなわち、炭化珪素が長期使用により酸化して酸化珪素となっても、酸化珪素とバインダーのリン酸アルミニウムとは低融点物を生成しにくいことから高い耐食性を維持できる。
本発明の不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがは、アルミナ原料、炭化珪素原料を主体に構成され、A1203成分を70質量%以上、SiC成分を5〜15質量%含み、バインダーにはリン酸アルミニウムを用いることを特徴とする。
リン酸アルミニウムは、含まれるP205成分が、れんが成分中の0.5〜4質量%となる範囲で添加される。
また、鱗状黒鉛や無定形黒鉛、ピッチといったカーボン系原料は使用しない。
アルミナは酸化珪素等の酸性酸化物に比べると溶銑や溶融スラグに対する耐食性に優れる。そのため、本発明のれんがは、Al203成分を70質量%以上とすることで優れた耐食性を有する。またA1203成分の上限は、他の原料の配合量に応じて決定されるので、A1203成分の上限を規定せず、SiC成分およびバインダー中のP205成分を調整する。残部は、原料中に含まれるSi02成分や各原料に含まれるFe203成分などの不純物成分により構成される。
炭化珪素は、溶融スラグに対する耐食性に優れる。そのため、本発明のれんがは、SiC成分量を5〜15質量%とすることで優れた耐食性を有する。SiC成分量を15質量%以下としたのは、炭化珪素を多く含有した場合、れんが製造時にリン酸ボンドと炭化珪素の濡れ性の悪さによる成形性の低下が問題となり好ましくないためである。
アルミナ原料としては礬土頁岩、ボーキサイト、ブラウンアルミナ、電融アルミナ、仮焼アルミナ等を使用できる。またアルミナ原料には、種類によってSi02成分が1質量%〜30質量%含まれ、3質量%未満の不純物も含まれるため、これらを考慮したうえでA1203成分が70質量%となるようアルミナ原料の種類を選定する。
炭化珪素原料としでは晶系、純度に寄らず使用できる。
バインダーのリン酸アルミニウムとしては水溶液を使用する。リン酸アルミニウムは一般的に250℃程度の加熱により脱水縮合により硬化する。また更に高温に加熱された場合、結晶転移によって硬化が進み、1000〜1200℃程度までれんがの強度が向上する。リン酸アルミニウムに含まれるP205成分がれんが成分中の0.5〜4質量%となる範囲でリン酸アルミニウムを添加する理由は、0.5質量%未満では、リン酸アルミニウムの添加量が少なく、バインダーとしての機能が不十分であり、れんがを成形した後、500℃以下の温度で乾燥してもリン酸ボンドによる強度発現が僅かなため、梱包時のハンドリングや運搬時の衝撃などでれんがに欠けや割れが生じてしまう。また4質量%を超えると、リン酸アルミニウムを水溶液として添加しているため、添加する水の量も増えてしまう。水にはバインダーとしての機能がなく、水の添加量が増えすぎると成型を阻害してしまい、成形後のれんがに欠けや割れが生じやすくなり品質を保つことが難しい。
不焼成れんがに用いる無機系ボンドにはリン酸ボンドの他にケイ酸ボンドがある。不焼成のケイ酸ボンドにはケイ酸ソーダが用いられるが、乾燥後も吸湿性が残り、長期保管する際にれんが組織が劣化することや、高温下でれんが組織と反応してれんがの耐火度を下げ、耐食性も低下させることが一般的に知られており、高耐食性を目指す本発明には適さない。また、本発明の実施例にもあるようにリン酸ボンドはアルミナセメントと比べ、高耐食性と高い熱間曲げ強さを耐火物に付与する。よって、本発明はリン酸ボンドを用いる。
本発明の不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがは、外形が1mmを超えるアルミナ骨材としての粒子以外に外形が1mm以下の微細耐火原料を15〜35質量%配合するのが好ましい。微細耐火原料としては微細なアルミナ、炭化珪素、アルミナと酸化珪素を含む粘土を使用できる。ただし粘土中には酸化ナトリウムが含まれるため最小限の量にすることが好ましい。
本発明の不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがにはカーボン系原料を使用しない。カーボン系原料を含むと、高温で酸化されて消失するため、長期間使用時の劣化の原因となるためである。
本発明の不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがは、アルミナ原料および炭化珪素原料を混練し、プレス機を用いて任意の形状に成形される。成形後、500℃以下の温度で乾燥することでリン酸ボンドの強度発現によつてれんがに強度を持たせる。
また、本発明は溶銑容器の裏張り用に開発されたものであるが、その優れた特性を活かし、内張りにも適用可能である。
不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがのSiC成分量と溶損量の関係を示す線図である。 高炉樋の裏張りとして使用された後の実施例No.2のれんがの外観を示す写真である。 高炉樋の裏張りとして使用された後の実施例No.2のれんが断面の外観を示す写真である。
実施例として、本発明の不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがを表1−1のNo.1〜No.7に示す。No.1〜No.4と表1−2の比較例No.9〜No.11のれんがは、SiC成分を1〜30質量%の割合で変化させて添加したものであり、その配合は、粒度0.1〜3mmの電融アルミナ骨材と粒度100μm以下のアルミナ、炭化珪素、粘土の微粉末、そして、P205成分がれんが成分中の1質量%となるようにリン酸アルミニウム水溶液を添加したものである。
この配合を混合撹拌して得られた混合物を成形型に入れ、フリクションプレスにて成形し、300℃で乾燥し、れんがを得た。No.5とNo.6は.SiC成分が10質量%、P205成分がれんが成分中の0.5質量%と4質量%となるように、粒度0.1〜3mmの電融アルミナ骨材と粒度100μm以下のアルミナと炭化珪素、粘土の微粉末、そしてリン酸アルミニウム水溶液を配合し、上記と同条件の混合撹拌・成形・乾燥によって得たものである。
No.7とNo.12はアルミナ骨材に焼結アルミナを使用したものである。SiC成分量がNo.7では10質量%、No.12では1質量%となるように粒度100μm以下の炭化珪素原料を添加し、P205成分がれんが成分中の1質量%となるようにリン酸アルミニウム水溶液を添加して得た不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがである。
表1−2の比較例No.8は実施例とは炭化珪素原料を添加していない点で異なる。表1−3のNo.13は一般的なトーピード内張り用不焼成れんがで、アルミナ原料や炭化珪素原料等と共にカーボン系原料である鱗状黒鉛を配合し、結合剤として樹脂を用いている。No.14は、一般的なアルミナ炭化珪素キャスタブルであり、No.15は一般的な焼成炭化珪素れんがである。
No.14とNo.15は不焼成れんがとは大きく異なるが本発明の不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがと同じような用途に使用されるためそれらの物性値を参照するために示した。また、No.16とNo.17は、実施例No.3と比較例No.10の配合中の粒度100μm以下のアルミナ微粉末5質量%を鱗状黒鉛5質量%に置換して得たカーボン系原料を含んだ不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがである。
ここで誘導炉浸食試験は誘導炉に試験用れんがを円周状に組み、その内側に銑鉄とスラグを投入して誘導加熱によって溶解させ、1600℃で7.5時間の条件で行った。試験後、試験用れんがの断面から最大溶損量及び最大浸透層厚みの測定を行った。スラグ成分としては、SiO2-32.3質量%、A1203-10.7質量%、Fe203-0.65質量%、Ti02-0.5質量%、CaO-47.2質量%、K20-0.41質量%、S03-2.55質量%の組成のものを使用し、30分に1回スラグを交換した。
酸化試験は大気圧下、試験温度に加熱された試験炉中に入れた試験用れんがを、試験終了後、触診にて酸化による脆化を判定した。触診は指で試験れんがの表面を擦り、表面から粒子が剥がれ落ちるものを「あり亅、剥がれ落ちないものを「なし」とした。化学成分はJIS R 2216に準拠した蛍光X線分析で行い、物性値の気孔率とかさ比重はJIS R 2205に準拠して行った。圧縮強さはれんがを40X40X40mmに加工した試験用れんがを毎秒1.0MPaの加圧速度で加圧して測定した。曲げ強さは40X40X160mmの試験用れんがを毎秒0.32MPaの加圧速度で加圧して測定した。このときの支持用ロールの中心間の距離は120mmとした。
不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがのSiC成分量と溶損量の関係の線図を図1に示す。SiC成分が5〜15質量%の範囲で高い耐食性を示し、特にSiC成分が8.5質量%の実施例No.2が最も高い耐食性を示した。
本発明の不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがは、溶銑容器の裏張りに一般的に用いられるNo.14のアルミナ炭化珪素キャスタブルやNo.15の焼成炭化珪素れんがと比較することで、現状よりも耐食性が改善できるか評価できる。本発明のれんがは、No.15よりも耐食性の高いNo.14のキャスタブルを基準として、それよりも更に2割以上の高耐食性を示したものをその範囲としている。実施例No.1〜No.7の耐食性は、No.14のキャスタブル(溶損量:13.4mm)よりも2割以上の高耐用(溶損量が10.7mm以下)を示した。
酸化による脆化の目安となる酸化試験の結果は、No.13の卜ーピード内張り用不焼成れんがに大きな脆化が見られたのに対して、本発明の不焼成炭化珪素含有ハイアルミナれんがNo.1〜No.7には全く脆化が見られなかった。
これらの結果、本発明のSiC成分を5〜15質量%含む不焼成炭化珪素含有ハイアルミナれんがは従来の焼成炭化珪素れんがと同様に酸化脆化に強いだけではなく、高い耐食性を有していることが分かる。
その理由として、No.14のキャスタブル及びNo.15の焼成炭化珪素れんがと比較して、本発明はバインダー中に耐火原料と低融点物を生成する酸化ナトリウムや酸化カルシウムといった成分を含まないため、優れた耐食性を示したと考えられる。
実施例No.3、No.7及び、比較例No.9、No.12の浸食試験の結果を比較すると、アルミナ骨材として焼結アルミナを使用するよりも、電融アルミナを使用した方が高い耐食性が得られることがわかる。
次に、本発明のれんがが熱間において使用に耐えうる強度を保持していることを確認するために熱間曲げ試験を実施した。熱間曲げ強さは30X30X160mmに加工した試験用れんがを試験炉にて毎分4℃の昇温速度で加熱し、600℃、800℃、1000℃、1200℃の所定温度に達した後、1時間保持し、その後、試験用れんがを毎秒0.25MPaの加圧速度で加圧して測定した。このときの雰囲気は大気雰囲気とし、支持具の支点間の距離は120mmとした。
実施例No.1〜No.7の熱間曲げ強さの結果から、本発明の不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがは、比較例No.15の焼成炭化珪素れんがと似た強度変化を示し、中間温度域である600℃、800℃での熱間曲げ強さはNo.15と同等程度である。1000℃、1200℃ではNo.15よりも低い熱問曲げ強さとなっているが、実際に使用されている比較例No.14のキャスタブルより高いことから、本発明の不焼成炭化珪素含有ハイアルミナれんがは実際の使用に必要な熱間強度を持っていると判断される。
比較例No.16やNo.17のように、カーボン系原料を含んだリン酸ボンドの不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがは、カーボン系原料を含まない実施例No.3や比較例No.10よりも耐食性が低い。これは、リン酸アルミニウム水溶液がカーボン系原料に濡れにくいことから成形性が悪くなり、低強度となるだけでなく、高気孔率、低かさ比重となったことが原因だと考えられる。また、酸化試験では脆化が見られた。以上より、リン酸ボンドの不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがに、カーボン系原料を添加しない方が優れた性能が得られると考えられる。
前述の実施例No.1(SiC成分量5%)とNo.2(SiC成分量8.5%)、No.4(SiC成分量15%)を実際に、高炉の大樋裏張りれんがとして施工し、約7.5ヶ月間使用した。その間の通銑量は約39万tであったが、問題なく使用できた。
解体して得たれんがを調べた結果、どの実施例も使用を継続するのに問題となるような損傷は観られなかった。一部酸化した部分が観られるものの、れんが組織の脆化はなかった。使用後の実施例No.2の外観を示す写真を図2に、その断面を示す写真を図3に示す。一部に観られる亀裂は解体で生じたものである。
表2−1に使用後の実施例3材質の解析結果を示す。化学成分はJIS R 2216に準拠した蛍光X線分析で行い、物性値の気孔率とかさ比重はJIS R 2205に準拠して行った。圧縮強さはれんがを40X40X40mmに加工した試験用れんがを毎秒1.0MPaの加圧速度で加圧して測定した。曲げ強さは40X40X160mmの試験用れんがを毎秒0.32MPaの加圧速度で加圧して測定した。このときの支持用ロールの中心間の距離は120mmとした。
熱間曲げ強さは30X30X160mmの試験用れんがを試験炉にて毎分4℃の昇温速度で加熱し、600℃、800℃、1000℃、1200℃の所定温度に達した後、1時間保持し、その後、試験用れんがを毎秒0.25MPaの加圧速度で加圧して測定した。このときの雰囲気は大気雰囲気とし、支持具の支点間の距離は120mmとした。
実施例No.2の各測定箇所は図2、図3に示した破線部である。
実施例No.1とNo.4についても同じ箇所を測定した。酸化部分の測定箇所に関しては、使用後れんがの酸化した部分をそれぞれ測定した。酸化部分でSiC成分量が減少し、Si02成分量が増加したことを除けば、化学成分の大きな変化は観られなかった。物性値については、使用によって高気孔率、低かさ比重化が観られたが、使用には問題のない程度である。また、酸化部分については気孔率が高くなっているものの十分な強度を有していることが確認できた。熱聞曲げ強さについては1000℃及び1200℃で強度低下しているものの、実際に使用されている比較例No.14の熱間曲げ強さ以上であることから、使用後れんがは必要な熱間強度を持っていると判断される。
以上より、本発明の不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんがは高炉の大樋裏張りれんがとして使用できることが確認できた。

Claims (1)

  1. A1203成分を70質量%以上、炭化珪素であるSiC成分を5〜15質量%含み、バインダーとして用いるリン酸アルミニウムに含まれるP205成分がれんが成分中の0.5〜4質量%となることを特徴とし、且つ、鱗状黒鉛や無定形黒鉛、ピッチといったカーボン系原料を使用しない不焼成炭化珪素含有ハイアルミナ質れんが。
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