[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による光ファイバ母材の製造方法について、図1乃至図9を用いて説明する。
はじめに、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法の製造過程で得られる成形体の構造について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法の製造過程で得られる成形体の構造を示す概略図である。図1(a)は、成形体の側面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A′線断面図であり、図1(c)は図1(a)のB−B′線断面図である。
後述する本実施形態の製造方法において、光ファイバ母材の製造過程で得られる成形体100は、図1に示すように、コア用部材10と、粉体成形部20とを有している。
コア用部材10は、円柱形状のロッド状部材であるコア用ガラスロッド12と、コア用ガラスロッド12の長手方向の両端部にそれぞれ設けられた支持部14とを有している。コア用ガラスロッド12は、その長手方向に沿って配されたコア16と、コア16を取り囲むように設けられたクラッド18とを有している。
コア16は、例えばゲルマニウムなどがドープされた、屈折率調整用のドーパントが添加されていない純石英よりも屈折率の高い石英系ガラスによって構成されている。クラッド18は、コア16よりも低い屈折率を有する石英系ガラス、例えば純石英ガラスなどで構成されている。支持部14は、例えば石英からなる。なお、コア16及びクラッド18は、ゲルマニウム、フッ素などのドーパントを複数含んでもよく、ドーパントは、所望の屈折率分布を有するように適宜選択できる。また、本実施形態では、コア16及びクラッド18を有するコア用ガラスロッド12を用いているが、コア16のみからなるコア用ガラスロッド12を用いてもよい。
粉体成形部20は、コア用ガラスロッド12の周囲に加圧成形された多孔質ガラス層により構成されている。粉体成形部20は、石英系のガラス粉末の一次粒子(以下、単に「ガラス粉末」と呼ぶ)を含む。粉体成形部20は、外郭部を構成する第1の部分22と、第1の部分22よりも内側の第2の部分24とを含む。第1の部分22及び第2の部分24は、コア用ガラスロッド12に対して同心円筒形状をなしている。粉体成形部20の第1の部分22を構成するガラス粉末の平均粒径は、粉体成形部20の第2の部分24を構成するガラス粉末の平均粒径よりも小さくなっている。
粉体成形部20を構成するガラス粉末の粒子径を小さくすることには、ガラス粉末間の摩擦力を増加し、機械的強度を増加する効果がある。その一方、ガラス粉末間の摩擦力が増加することで、加圧成形時に圧力が加わる外周部から離れるほど(コア用ガラスロッド12側ほど)加圧が不十分となり、成形体100のサイズを大きくすることが困難となる。この対策としては加圧力を上げることが考えられるが、加圧装置で実現できる圧力には上限があり、成形体100が大型になると必要な加圧力を得ることができない問題が生じてくる。
また、加圧力を上げることは、除荷したときにガラス粉末の弾性力によって成形体100が元の形に戻る作用(いわゆるスプリングバック)が大きくなることでもある。スプリングバックの大きい状態では、圧力印加時における変形量の小さいコア用ガラスロッド12と粉体成形部20との間において、除荷時に隙間(空間)が発生しやすくなる。或いは、隙間が発生していなくても、コア用ガラスロッド12と粉体成形部20との間には剥離の原因となる応力が残留し、界面が不安定な状態となる。コア用ガラスロッド12と粉体成形部20との間に隙間や応力が残留したままで成形体100を加熱してガラス化すると、粉体成形部20は収縮するがコア用ガラスロッド12は殆ど縮まないため、両者の界面で機械的な滑りが発生し易くなる。このため、良好な光ファイバ母材を得ることができなくなる。
そこで、本実施形態では、粉体成形部20の外郭部を構成する第1の部分22のガラス粉末の平均粒径を、粉体成形部20の第2の部分24を構成するガラス粉末の平均粒径よりも小さく(すなわち、ガラス粉末同士の接触箇所の数を多く)している。このようにすることで、加圧成形時に粉体成形部20の内部に十分な圧力が印加されなくなるのを抑制しつつ、粉体成形部20の外郭部(第1の部分22)の機械的強度を高めることができ、粉体成形部20の全体的な強度を向上することができる。これにより、成形体100、すなわち光ファイバ母材の大型化が実現可能となる。
粉体成形部20の第2の部分24を構成するガラス粉末の平均粒径は、加圧成形時に印加する圧力が粉体成形部20の全体に十分に印加されるように、粉体成形部20の外径等に応じて適宜選択することが望ましい。粉体成形部20の第2の部分24を構成するガラス粉末の平均粒径は、典型的には、数百nm〜数十μm程度が好ましい。
粉体成形部20の第1の部分22を構成するガラス粉末の平均粒径は、粉体成形部20の第2の部分24を構成するガラス粉末の平均粒径よりも小さくなるように適宜選択される。第1の部分22を構成するガラス粉末の平均粒径は、典型的には、数百nm〜10μm程度である。
また、第1の部分22は、平均粒径が異なる2種類以上のガラス粉末により構成してもよい。例えば、第1の部分22は、粉体成形部20の第2の部分24を構成するガラス粉末と同程度の粒径のガラス粉末に、平均粒径が数十nm程度のガラス粉末(以下、ガラス微小粒子と呼ぶ場合もある)を添加することにより構成してもよい。この場合にも、第1の部分22を構成するガラス粉末の平均粒径は、粉体成形部20の第2の部分24を構成するガラス粉末の平均粒径よりも小さくなる。
なお、ガラス微小粒子を添加することで、ガラス微小粒子が粒径の大きいガラス粉末の表面に付着し、静水圧加圧によりガラス粉末同士が接触した際にはその接触部周辺にもガラス微小粒子が入り込む形となる。これにより、ガラス粉末同士の接触箇所数が増えて摩擦力が増し、成形体100の強度を向上することができる。
第1の部分22による成形体100の強度の向上はガラス粉末同士の接触による摩擦力の向上によるものであることから、第1の部分22の厚さT1は、ガラス粉末同士の接触による摩擦力が十分に得られる厚さとすることが好ましい。たとえば、後の工程で亀裂や破損の発生を抑制できる強度を得るためには、第1の部分22の厚さT1は、粉体成形部20の厚さの3%以上、望ましくは5%以上の厚さとすることが好ましい。また、第1の部分22が厚くなるほど中心付近に圧力を加えることが困難となるため、第1の部分22の厚さT1は30mm以下であることが望ましい。
また、薄い第1の部分22を安定して形成することは困難であることから、第1の部分22の厚さT1は少なくとも1mm以上であることが望ましい。
次に、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法について、図2乃至図9を用いて説明する。図2は、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法において成形体の形成に用いる成形型の構造を示す概略断面図である。図3乃至図5は、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法を示す工程断面図である。図6は、静水圧成形装置を示す概略図である。図7は、脱脂装置を示す概略図である。図8は、脱脂処理の際の成形体の保持態様を説明する概略図である。図9は、焼結装置を示す概略図である。
成形体100の形成に用いる成形型30は、例えば図2に示すように、筒体32と、上蓋体34と、下蓋体36とを含む。上蓋体34及び下蓋体36には、コア用部材10の支持部14を嵌め込むための開口部38,40がそれぞれ設けられている。また、上蓋体34には、成形型30内にガラス粉末を投入するための粉末投入口47が設けられている。筒体32は、弾性及び収縮性を有する材料からなり、例えば、クロロプレンゴム或いはウレタンゴムなどの合成ゴム材料などを用いることができる。上蓋体34及び下蓋体36は、クロロプレンゴム或いはウレタンゴムなどの合成ゴム材料などを用いることができる。なお、上蓋体34及び下蓋体36として筒体32よりも硬度の小さいものを選択することで、後述する成形体を形成する工程において成形体に生じる歪みを小さくすることができる。
なお、本実施形態では例示的に成形型30を円筒状の構造としているが、成形型30は必ずしも円筒状である必要はない。本実施形態で用いる静水圧成形法においては、成形型30の形状を変えることにより形成する成形体100の形状を変えることができる。例えば、断面が長方形となる形状の成形体100を形成したい場合、同形状に即した成形型30を準備すればよい。
まず、例えばVAD(Vapor phase Axial Deposition)法により、コア16及びクラッド18からなるコア用ガラスロッド12を製造する。なお、コア用ガラスロッド12は、VAD法のみならず、他の周知の方法、例えば、OVD(Outside Vapor Deposition)法、MCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法等を用いて製造することもできる。
次いで、コア用ガラスロッド12の両端部に、例えば石英からなる支持部14を接続し、コア用ガラスロッド12と支持部14とからなるコア用部材10を形成する(図3(a))。なお、支持部14の少なくとも一方には、成形体100の搬送や支持を容易にするために、貫通孔を設けることが望ましい。
次いで、図2に示す成形型30の上蓋体34を外し、成形型30内にコア用部材10を設置する。コア用部材10は、下蓋体36に設けられた開口部40に支持部14を嵌め込むことよって成形型30に保持される(図3(b))。
次いで、成形型30内に、筒体32の内径よりも小さい外径を有する筒体42を設置する。筒体42としては、例えば、テフロン(登録商標)製の筒体を用いることができる。なお、図4(a)に示す点線は、筒体42の形状を示しており、引き抜きを容易にするために、図4(a)に示すように上端に数か所凸部を設けている。筒体32の内径と筒体42の外径との差は、粉体成形部20の第1の部分22の厚さを規定するパラメータとなる。筒体42の外径は、加圧成形に伴う体積収縮率を考慮しつつ、筒体32の内径及び形成しようとする第1の部分22の厚さに応じて適宜選択する。
次いで、筒体32と筒体42との間の空隙に、第1の造粒粉体44を充填する。第1の造粒粉体44は、コア用部材10の長手方向と平行な成形型30(筒体32)の内壁と接する外郭部に充填されることになる。また、筒体42とコア用ガラスロッド12との間の空隙に、第2の造粒粉体46を充填する(図4(a))。このとき、粉末の充填密度の均一性を向上する観点から、成形型30を電磁振動式等の篩分器に載せ、成形型30に振動を加えながら第1の造粒粉体44及び第2の造粒粉体46を充填することが望ましい。
第1の造粒粉体44及び第2の造粒粉体46は、多孔質ガラス層からなる粉体成形部20を形成するための材料であり、ガラス粉末から構成される。第1の造粒粉体44には、数百nm〜10μm程度の平均粒径を有する高純度のガラス粉末を使用する。また、第2の造粒粉体46には、数百nm〜数十μm程度の平均粒径であって、且つ、第1の造粒粉体44を構成するガラス粉末よりも平均粒径が大きい高純度のガラス粉末を使用する。第1の造粒粉体44には、平均粒径が数百nm〜数十μm程度のガラス粉末に、平均粒径が数十nm程度のガラス微小粒子を添加したものを使用してもよい。
また、これらガラス粉末には、バインダー、可塑剤等の成形助剤を調合或いは添加してもよい。バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)などを、可塑剤としてはグリセリンなどを、適用することができる。ガラス粉末、バインダー、可塑剤の混合比は、成形性の観点から、ガラス粉末径、バインダー、可塑剤の種類によって適宜選択する。
ガラス粉末は、溶剤を加えて攪拌することにより泥漿状にする。溶剤としては、環境への影響を考慮すると水系が好ましく、純度の観点から純水が好ましい。作製した泥漿状ガラスを噴霧乾燥させることにより、複数の一次粒子が集合した造粒粉(二次粒子)が形成され、50μm〜150μmの粒径を有する第1の造粒粉体44及び第2の造粒粉体46を精製することができる。第1の造粒粉体44及び第2の造粒粉体46の粒径を50μm〜150μmとすることで、成形型30への充填時の流動性が高くなり、一次粒子の特徴を生かしたまま成形型30への充填が容易になるという利点がある。
次いで、筒体42を引き抜き、上蓋体34の開口部38がコア用部材10の支持部14に嵌合するように上蓋体34をかぶせ、成形型30を密閉する(図4(b))。
次いで、粉末投入口47から第2の造粒粉体46を投入し、成形型30内を第1の造粒粉体44及び第2の造粒粉体46で充填した後、粉末投入口47に蓋48をする(図5(a))。
次いで、例えば図6に示すような静水圧成形(CIP)装置150を用いて、コア用部材10、第1の造粒粉体44及び第2の造粒粉体46を装填した成形型30に静水圧を印加する。具体的には、成形型30が設置されたCIP装置150に圧力媒体152を導入し、CIP装置150内の圧力を所定の圧力、例えば98MPa程度)まで上昇させる。この状態を、0.5分〜10分程度の所定の時間、例えば2分間保持する。これにより、コア用部材10の周囲に第1の造粒粉体44及び第2の造粒粉体46が加圧成形されてなる粉体成形部20を有する成形体100を形成することができる(図5(b))。なお、圧力媒体152には、一般的には腐食防止剤を添加した水や潤滑油などが使用されるが、これら以外の液体を代用してもよい。
次いで、CIP装置150内の圧力を徐々に減圧して大気圧に戻した後、CIP装置150から成形型30を取り出し、成形型30から成形体100を取り出す。
次いで、CIP装置150から取り出した成形体100を脱脂装置200内に導入し、脱脂処理を行う。脱脂処理は、結合材及び可塑剤を燃焼(酸化)又は分解可能な雰囲気(例えば窒素及び酸素)下で加熱することによって、成形体100(粉体成形部20)中の結合材及び可塑剤を除去する工程である。処理温度、処理時間は結合剤及び可塑剤の種類及び加圧成形体の大きさにより適宜選択する。
なお、脱脂処理の後、脱脂装置200内において、成形体100の温度を低下せずに、脱脂処理よりも高い温度で熱処理(硬化処理)を更に実施するようにしてもよい。硬化処理は、脱脂処理後の成形体100を、脱脂処理よりも高い温度に加熱することによって、結合材が除去された後の成形体100の強度を向上させる工程である。硬化処理を行う雰囲気は任意であるが、コストを低減する観点からは、大気(より具体的には不純物を除去したクリーンエア)、窒素、窒素と酸素との混合ガスのいずれかを用いることが望ましい。
図7は、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法に用いられる脱脂装置200の一例を示す側面図である。なお、図7においては、視認性を確保するために、チャンバ202やヒータ218等の成形体100よりも手前側に位置する部分の図示は省略している。図7には、重力方向に沿った上下を矢印で示している。
脱脂装置200は、例えば石英ガラスからなるチャンバ202を備えている。チャンバ202の壁面には、開口部であるガス導入口204が設けられている。ガス導入口204には、チャンバ202内に所定のガスを導入するためのガス導入部206が接続されている。ガス導入部206は、導入すべき気体を保持するボンベ、バルブ、マスフローコントローラ等の流量調整機構を含む。ガス導入部206からチャンバ202に導入される気体は、例えば、酸素、窒素、塩素、ヘリウム等のガスである。また、チャンバ202の壁面には、開口部である排気口208が設けられている。排気口208は、チャンバ202内を排気するための排気ポンプ210に接続されている。
チャンバ202の内部には、支持台212,214が設けられている。成形体100は、支持台212,214により、図7(b)に示すような半割れ石英管様の成形体支持治具216上に載置された状態で、その長手方向が重力方向に直交するように水平に保持される。すなわち、成形体100の支持部14は支持台212により保持され、成形体100の粉体成形部20は成形体支持治具216を介して支持台214により保持される。
チャンバ202の外側には、成形体100を所定の温度に加熱するためのヒータ218が設けられている。ヒータ218は、例えばカンタルヒータであり、チャンバ202の外側を取り囲むように配置されている。ヒータ218は、チャンバ202の内部に配置される成形体100(少なくとも粉体成形部20の全体)を加熱可能であれば、チャンバ202の外側及び内側のどちらに設けてもよく、或いは、チャンバ202の壁面に内蔵してもよい。ただし、塩素ガス等の腐食性ガスを使用する場合は、ヒータ218は、チャンバ202の外側に配置することが好ましい。
ヒータ218の周囲には、アルミナとシリカ繊維の成形体からなる耐熱材220が設けられている。更に、チャンバ202、ヒータ218及び耐熱材220を取り囲むように炉体222が設けられている。
本実施形態では、脱脂処理を行う際に、成形体100を成形体支持治具216上に載置し、支持部14を支持台212で保持し、成形体支持治具216を介して粉体成形部20を支持台214により保持している。これは、成形体100の自重によって粉体成形部20が破損したり崩壊したりするのを抑制するためである。
成形体100を、支持台212によって支持部14のみで保持した場合、粉体成形部20の重さがコア用部材10と粉体成形部20との界面に集中するため、成形体100のサイズによっては粉体成形部20が崩壊する虞がある。また、成形体100を、支持台214によって粉体成形部20のみで保持した場合、コア用部材10の重さがコア用部材10と粉体成形部20との界面に集中するため、粉体成形部20が崩壊する虞がある。成形体100を支持部14及び粉体成形部20の双方で保持することにより、コア用部材10と粉体成形部20との界面に加わる外力が抑制され、成形体100の破損や崩壊を抑制することができる。特に、コア用部材10よりも重い粉体成形部20を、半割れ石英管様の成形体支持治具216を用い、成形体100の長手方向に沿った線状或いは面状の接触部で支えることにより、粉体成形部20に加わる外力を効果的に分散することができるため、成形体100の破損や崩壊を抑制するうえで好ましい。
なお、粉体成形部20の自重によって粉体成形部20の破損や崩壊が生じるかどうかは、成形体100のサイズや粉体成形部20の構造によっても変化する。したがって、脱脂処理の際に成形体100を保持する態様は、必ずしも図7に示す例に限定されるものではない。例えば、図8(a)に示すように、支持台212によって支持部14のみを保持するようにしてもよい。或いは、図8(b)に示すように、支持台214によって成形体支持治具216を介して粉体成形部20のみを保持してもよい。或いは、図8(c)に示すような成形体支持治具216を用い、成形体100の支持部14及び粉体成形部20の双方を成形体支持治具216で保持するようにしてもよい。
本実施形態の製造方法により製造される成形体100は、外郭部を構成する第1の部分22によって機械的強度が高められており、第1の部分22のない成形体100と比較して、全体的な強度が向上されている。したがって、図8(a)や図8(b)のような態様によって成形体100を保持した場合でも、成形体100のサイズによっては、破損や崩壊を抑制することが可能である。脱脂工程の際に成形体100を保持する態様は、成形体100のサイズや粉体成形部20の構造等に応じて、適宜選択できる。
次いで、脱脂装置200から取り出した成形体100を焼結装置300内に導入し、焼結処理を行う。焼結装置300内では、内部に配置された成形体100に対して、透明ガラス化処理が実施される。透明ガラス化処理は、成形体100に用いられるガラス粉末を所定の雰囲気下で加熱することによって、成形体100に含まれるガラス粉末を透明ガラス化し、最終的な光ファイバ母材を得る工程である。成形体サイズ、構成するガラス1次粒子径、周囲の雰囲気により処理温度、処理時間を適宜選択する。
図9は、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法に用いられる焼結装置300の一例を示す側面図である。なお、図9においては、視認性を確保するために、チャンバ302やヒータ312等の成形体100よりも手前側に位置する部分の図示は省略している。図9には、重力方向に沿った上下を矢印で示している。
焼結装置300は、例えば石英ガラスからなるチャンバ302を有している。チャンバ302の壁面には、開口部であるガス導入口304が設けられている。ガス導入口304には、チャンバ302内に所定のガスを導入するためのガス導入部306が接続されている。ガス導入部306は、導入すべき気体を保持するボンベ、バルブ、マスフローコントローラ等の流量調整機構を含む。ガス導入部306からチャンバ302に導入される気体は、例えば、塩素、ヘリウム等のガスである。チャンバ302の壁面には、また、開口部である排気口308が設けられている。排気口308には、チャンバ302内を排気するための排気ポンプ310が接続されている。
チャンバ302の外壁には、成形体100を所定の温度に加熱するためのヒータ312が設けられている。ヒータ312は、例えばカーボンヒータであり、チャンバ302の外側を取り囲むように配置されている。ヒータ312の周囲には、カーボンからなる断熱材314が設けられている。
焼結装置300は、成形体100をチャンバ302内の所定位置で支持するための支持機構316を備えている。支持機構316は、成形体100をその長手方向が重力方向に沿うように垂直に支持するとともに、成形体100を回転可能であるように構成されている。具体的には、支持機構316は、成形体100の支持部14を固定する固定部318と、モータ等を含む駆動部320と、固定部318と駆動部320とを接続するシャフト322とを備える。駆動部320は、シャフト322をその中心軸に関して回転させることで、固定部318に固定された成形体100を回転する。
このようにして、成形体100に対して、脱脂処理、透明ガラス化処理等を施すことにより、成形体100の破損や崩壊を抑制しつつ、光ファイバ母材を製造することができる。
このように、本実施形態によれば、成形体100の粉体成形部20の外郭部を、他の部分を構成するガラス粉末よりも平均粒径の小さいガラス粉末により構成するので、成形体100の機械的強度を高めることができる。これにより、脱脂工程における粉体成形部20の破損を抑制することができ、より大きなサイズの良質の光ファイバ母材を製造することが可能となる。また、脱脂工程及び透明ガラス化工程における破損による破棄物を減少することができ、環境への悪影響も低減することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による光ファイバ母材の製造方法について、図10及び図11を用いて説明する。図1乃至図9に示す第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
はじめに、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法の製造過程で得られる成形体の構造について、図10を用いて説明する。図10は、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法の製造過程で得られる成形体の構造を示す概略図である。図10(a)は、成形体の側面図であり、図10(b)は図10(a)のA−A′線断面図であり、図10(c)は図10(a)のB−B′線断面図である。
本実施形態による光ファイバ母材の製造方法の製造過程で得られる成形体100は、図10に示すように、粉体成形部20が、外郭部を構成する第1の部分22と、コア用部材10と接触する内郭部を構成する第3の部分26と、第1の部分22と第3の部分26との間の第2の部分24とを有している。第1の部分22、第2の部分24及び第3の部分26は、コア用ガラスロッド12に対して同心円筒形状をなしている。第3の部分26を構成するガラス粉末の平均粒径は、第1の部分22と同様、第2の部分24を構成するガラス粉末の平均粒径よりも小さくなっている。
第3の部分26のガラス粉末の平均粒径を第2の部分24を構成するガラス粉末の平均粒径よりも小さくすることにより、コア用ガラスロッド12の近傍における粉体成形部20の破損を抑制することができる。また、コア用ガラスロッド12の周辺の1次粒子同士の接触部が増えることによって、粉体成形部20を透明ガラス化する際にガラス化が起きやすくなる。これにより、コア用ガラスロッド12と粉体成形部20との界面が良好な状態で粉体成形部20をガラス化することができる。
粉体成形部20の第3の部分26を構成するガラス粉末の平均粒径は、粉体成形部20の第2の部分24を構成するガラス粉末の平均粒径よりも小さくなるように適宜選択される。第3の部分26を構成するガラス粉末の平均粒径は、典型的には、数百nm〜10μm程度である。
また、第3の部分26は、平均粒径が異なる2種類以上のガラス粉末により構成してもよい。例えば、第3の部分26は、粉体成形部20の第2の部分24を構成するガラス粉末と同程度の粒径のガラス粉末に、平均粒径が数十nm程度のガラス微小粒子を添加することにより構成してもよい。この場合にも、第3の部分26を構成するガラス粉末の平均粒径は、粉体成形部20の第2の部分24を構成するガラス粉末の平均粒径よりも小さくなる。
なお、第1実施形態と同様に、ガラス微小粒子を添加することで、ガラス粉末同士の接触箇所数が増えて摩擦力が増し、成形体100の強度を向上することができる。
第1の部分22を構成するガラス粉末の平均粒径と第3の部分26を構成するガラス粉末の平均粒径とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
成形体100の強度を向上させるためには、第3の部分26によるコア用ガラスロッド12と粉体成形部20との間の界面部分においても、強度を向上させることが好ましい。第3の部分26の厚さT2は、粉体成形部20の厚さの2%以上、望ましくは3%以上の厚さとすることが好ましい。ただし、第3の部分26が厚くなり過ぎると静水圧加圧時に中心付近に圧力を加えることが困難となり、コア用ガラスロッド12付近の粉体成形部20への静水圧加圧力が不十分となり成形体の強度が低下するため、第3の部分26の厚さT2は30mm以下であることが望ましい。
また、薄い第3の部分26を安定して形成することは困難であることから、第3の部分26の厚さT2は少なくとも1mm以上であることが望ましい。
これにより、第1の部分22による機械的強度の向上に加え、コア用ガラスロッド12と粉体成形部20との間の界面特性の向上を図ることができ、より大型且つ良質の光ファイバ母材を実現することが可能となる。
次に、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法について、図11を用いて説明する。図11は、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法を示す工程断面図である。
まず、第1実施形態と同様にして、コア用ガラスロッド12の両端部に支持部14が設けられたコア用部材10を製造する。
次いで、筒体52、上蓋体54及び下蓋体56から構成される成形型50の上蓋体54を外し、成形型50内にコア用部材10を設置する。なお、成形型50は、筒体52の径が異なるほかは、第1実施形態で用いた成形型30と基本的に同じである。
次いで、筒体52とコア用ガラスロッド12との間の空隙に、第3の造粒粉体58を充填する(図11(a))。このとき、粉末の充填密度の均一性を向上する観点から、成形型50を電磁振動式等の篩分器に載せ、成形型50に振動を加えながら第3の造粒粉体58を充填することが望ましい。
第3の造粒粉体58は、多孔質ガラス層からなる粉体成形部20を形成するための材料であり、ガラス粉末から構成される。第3の造粒粉体58には、数百nm〜10μm程度の平均粒径を有する高純度のガラス粉末を使用する。第3の造粒粉体58には、平均粒径が数百nm〜数十μm程度のガラス粉末に、平均粒径が数十nm程度のガラス微小粒子を添加したものを使用してもよい。
また、これらガラス粉末には、バインダー、可塑剤等の成形助剤を調合或いは添加してもよい。バインダーとしては、PVAなどを、可塑剤としてはグリセリンなどを、適用することができる。ガラス粉末、バインダー、可塑剤の混合比は、成形性の観点から、ガラス粒子径、バインダー及び可塑剤の種類により適宜選択する。
ガラス粉末は、溶剤を加えて攪拌することにより泥漿状にする。溶剤としては、環境への影響を考慮すると水系が好ましく、純度の観点から純水が好ましい。作製した泥漿状ガラスを噴霧乾燥させることにより、複数の一次粒子が集合した造粒粉(二次粒子)が形成され、50μm〜150μmの粒径を有する第1の造粒粉体44及び第2の造粒粉体46を精製することができる。第1の造粒粉体44及び第2の造粒粉体46の粒径を50μm〜150μmとすることで、成形型30への充填時の流動性が高くなり、一次粒子の特徴を生かしたまま成形型30への充填が容易になるという利点がある。
次いで、コア用部材10上に上蓋体54をかぶせて成形型50を密閉する(図11(b))。上蓋体54をかぶせた後、成形型30において説明したような粉末投入口から第3の造粒粉体58を更に投入してもよい。
次いで、例えば図6に示すようなCIP装置150を用いて、コア用部材10及び第3の造粒粉体58を装填した成形型50に静水圧を印加する。これにより、コア用部材10の周囲に第3の造粒粉体58が加圧成形されてなる粉体成形部20の第3の部分26が形成された成形体110を形成することができる(図11(c))。
次いで、このように形成した成形体110をコア用部材10の代わりに成形型30内に設置し、図4(a)乃至図5(b)に示す第1実施形態による光ファイバ母材の製造方法と同様にして、粉体成形部20の第1の部分22及び第2の部分24を形成する。これにより、粉体成形部20が、第1の部分22、第2の部分24及び第3の部分26により構成された成形体100を形成する。
この後、第1実施形態による光ファイバ母材の製造方法と同様にして、脱脂処理、透明ガラス化処理等を行い、光ファイバ母材を完成する。
このように、本実施形態によれば、成形体100の粉体成形部20の外郭部を、他の部分を構成するガラス粉末よりも平均粒径の小さいガラス粉末により構成するので、成形体100の機械的強度を高めることができる。これにより、脱脂工程等における粉体成形部20の破損を抑制することができ、より大きなサイズの良質の光ファイバ母材を製造することが可能となる。
また、成形体100の粉体成形部20のコア用ガラスロッド12に接する内郭部を、他の部分を構成するガラス粉末よりも平均粒径の小さいガラス粉末により構成するので、コア用ガラスロッド12と粉体成形部20との間の界面特性を向上することができる。これにより、透明ガラス化工程において、コア用ガラスロッド12と粉体成形部20との間の界面状態を良好に保つことができ、良質の光ファイバ母材を製造することが可能となる。
また、脱脂工程や透明ガラス化工程等における破損による破棄物が減少することで、光ファイバ母材の製造歩留まりの向上、ひいては製造コストを低減することができ、環境への悪影響も低減することができる。
なお、本実施形態では、2度の加圧成形処理を行うことにより成形体100を形成したが、1度の加圧成形処理によって成形体100を形成するようにしてもよい。この場合、図4(a)に示す工程において、成形型30内に二重に筒体を配置し、これら筒体間の空隙に、第3の造粒粉体58、第2の造粒粉体46及び第1の造粒粉体44を充填し、加圧成形処理を行えばよい。この方法によれば、加圧成形処理を1回で行うことができるので、製造工程を簡略化することができる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による光ファイバ母材の製造方法について、図12及び図15を用いて説明する。図1乃至図11に示す第1及び第2実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
はじめに、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法の製造過程で得られる成形体の構造について、図12を用いて説明する。図12は、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法の製造過程で得られる成形体の構造を示す概略図である。図12(a)は、成形体の長手方向に沿った断面図であり、図12(b)は成形体の短手方向に沿った断面図である。図12(a)及び図12(b)は、図1(b)及び図1(c)の断面方向にそれぞれ対応している。
本実施形態による光ファイバ母材の製造方法の製造過程で得られる成形体100は、図12に示すように、マルチコアファイバ用の光ファイバ母材となるものである。成形体100は、中心コア部を構成する1つのコア用ガラスロッド12と、周辺コア部を構成する複数(図12では6本)のコア用ガラスロッド12とを含む。これらコア用ガラスロッド12は、粉体成形部20により一体化され、1つの成形体100を構成している。粉体成形部20は、その外郭部を構成する第1の部分22と、それぞれのコア用ガラスロッド12の周囲に設けられた第3の部分26と、第1の部分22と第3の部分26との間に設けられた第2の部分24とを含む。
中心コア部を構成するコア用ガラスロッド12は、第1及び第2実施形態で説明したコア用部材10のコア用ガラスロッド12である。コア用ガラスロッド12の両端部には支持部14が設けられている。また、コア用部材10と粉体成形部20の第3の部分26とからなる部分は、第2実施形態で説明した成形体110に対応する。周辺コア部を構成するコア用ガラスロッド12と粉体成形部20の第3の部分26とからなる部分は、成形体120を構成する。
第1の部分22及び第3の部分26の厚さは、第1及び第2実施形態の場合と同様に設定することが望ましい。この場合、粉体成形部20の厚さは、中心コア部を構成するコア用ガラスロッド12の外周部から粉体成形部20の外周部までの厚さとする。
このようにして、マルチコアファイバ用の光ファイバ母材となる成形体100の粉体成形部20外郭部に平均粒径の小さいガラス粉末からなる第1の部分22を配置することにより、成形体100の機械的強度を高めることができる。これにより、成形体100、すなわちマルチコアファイバ用の光ファイバ母材のサイズを大型化することが可能となる。また、コア用ガラスロッド12のそれぞれの周囲に平均粒径の小さいガラス粉末からなる第3の部分26を配置することにより、コア用ガラスロッド12と粉体成形部20との間の界面特性を向上することができる。これにより、より大型且つ良質のマルチコアファイバ様の光ファイバ母材を実現することができる。
次に、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法について、図13乃至図15を用いて説明する。図13乃至図15は、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法を示す工程断面図である。
まず、筒体62、上蓋体64及び下蓋体66から構成される成形型60の上蓋体64を外し、例えばVAD法により製造したコア用ガラスロッド12を成形型60内に設置する。なお、成形型60は、筒体62の径が異なるほかは、第1実施形態で用いた成形型30と基本的に同様である。
次いで、筒体62とコア用ガラスロッド12との間の空隙に、第3の造粒粉体58を充填する(図13(a))。このとき、粉末の充填密度の均一性を向上する観点から、成形型50を電磁振動式等の篩分器に載せ、成形型50に振動を加えながら第3の造粒粉体58を充填することが望ましい。
次いで、コア用ガラスロッド12上に上蓋体64をかぶせて成形型60を密閉する(図13(b))。上蓋体64をかぶせた後、成形型30において説明したような図示しない粉末投入口から第3の造粒粉体58を更に投入してもよい。
次いで、例えば図6に示すようなCIP装置150を用いて、コア用ガラスロッド12及び第3の造粒粉体58を装填した成形型60に静水圧を印加する。これにより、コア用ガラスロッド12の周囲に第3の造粒粉体58が加圧成形されてなる粉体成形部20の第3の部分26を有する成形体120を形成することができる(図13(c))。
また、図11に示す第2実施形態による光ファイバ母材の製造方法と同様にして、コア用部材10の周囲に第3の造粒粉体58が加圧成形されてなる粉体成形部20の第3の部分26を有する成形体110を形成する。
次いで、このように形成した1本の成形体110と6本の成形体120とを、図14に示すような成形型70内に設置する。なお、成形型70は、上蓋体74及び下蓋体76に成形体110,120を嵌め込むための複数の開口部が設けられているほかは、第1実施形態で用いた成形型30と基本的に同様である。
次いで、成形型70内に、筒体72の内径よりも小さい外径を有する筒体78を設置する。筒体78としては、例えば、テフロン製の筒体を用いることができる。
次いで、筒体72と筒体78との間の空隙に、第1の造粒粉体44を充填する。また、筒体78と成形体110,120との間の空隙に、第2の造粒粉体46を充填する(図14)。このとき、粉末の充填密度の均一性を向上する観点から、成形型70を電磁振動式等の篩分器に載せ、成形型70に振動を加えながら第1の造粒粉体44及び第2の造粒粉体46を充填することが望ましい。
次いで、筒体78を引き抜き、成形体110,120上に上蓋体74をかぶせて成形型70を密閉する。上蓋体74をかぶせた後、成形型30において説明したような粉末投入口から第2の造粒粉体46を更に投入してもよい。
次いで、例えば図6に示すようなCIP装置150を用いて、成形体110,120、第1の造粒粉体44及び第2の造粒粉体46を装填した成形型70に静水圧を印加する。これにより、マルチコアファイバ用の光ファイバ母材となる成形体100を形成することができる(図15)。
この後、第1実施形態による光ファイバ母材の製造方法と同様にして、脱脂処理、透明ガラス化処理等を行い、光ファイバ母材を完成する。
このように、本実施形態によれば、成形体100の粉体成形部20の外郭部を、他の部分を構成するガラス粉末よりも平均粒径の小さいガラス粉末により構成するので、成形体100の機械的強度を高めることができる。これにより、脱脂工程等における粉体成形部20の破損を抑制することができ、より大きなサイズの良質のマルチコアファイバ用の光ファイバ母材を製造することが可能となる。
また、成形体100の粉体成形部20のコア用ガラスロッド12に接する内郭部を、他の部分を構成するガラス粉末よりも平均粒径の小さいガラス粉末により構成することにより、コア用ガラスロッド12と粉体成形部20との間の界面特性を向上することができる。これにより、透明ガラス化工程において、コア用ガラスロッド12と粉体成形部20との間の界面状態を良好に保つことができ、良質の光ファイバ母材を製造することが可能となる。
また、脱脂工程や透明ガラス化工程等における破損による破棄物が減少することで、光ファイバ母材の製造歩留まりの向上、ひいては製造コストを低減することができ、環境への悪影響も低減することができる。
なお、本実施形態では、コア用ガラスロッド12の周囲に平均粒径の小さいガラス粉末からなる粉体成形部20の第3の部分26を設けたが、第3の部分26は、必ずしも設ける必要はない。また、第3の部分26は、必ずしも総てのコア用ガラスロッド12の周囲に設ける必要はなく、一部のコア用ガラスロッド12(例えば、中心コア部及び周辺コア部のうちの一方)の周囲にのみ配置してもよい。 ただし、本実施形態のようにコア用ガラスロッド12を複数設ける場合は、中心にのみコア用ガラスロッド12を配置する場合と比較して、コア用ガラスロッド12の自重により粉体成形部20の破損が生じやすい。したがって、第3の部分26を設け、成形体の強度を高めることが好ましい。
また、本実施形態では、2度の加圧成形処理を行うことにより成形体100を形成したが、第2実施形態において説明した方法と同様にして、1度の加圧成形処理によって成形体100を形成するようにしてもよい。
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、粉体成形部20の外郭部を構成する第1の部分22及びコア用ガラスロッド12に接する第3の部分26をCIP法により形成する場合を示したが、第1の部分22及び第3の部分26は、必ずしも加圧成形法で形成する必要はない。第1の部分22及び第3の部分26は、CIP法以外の方法、例えばスラリーキャスト法(泥漿法)を用いて形成することも可能である。第1の部分22及び第3の部分26をスラリーキャスト法により形成した場合においても、上記実施形態で説明したと同様の効果を得ることができる。
また、上記実施形態に記載の成形体100において、支持部14に接する粉体成形部20の上端部及び下端部を、例えば特許文献1に記載されているように、第2の部分24を構成するガラス粉末よりも平均粒径の小さいガラス粉末により構成するようにしてもよい。例えば、第1実施形態の場合、図4(a)に示す工程において、下蓋体36の内側の傾斜部が埋まる程度まで第1の造粒粉体44を充填した後に第2の造粒粉体46を充填する。また、図4(b)に示す工程において、粉末投入口47から第1の造粒粉体44を投入する。これにより、成形体100の機械的強度を更に高めることができる。
また、上記第3実施形態では、7本のコア16を有するマルチコアファイバ用の光ファイバ母材の製造方法を示したが、コア16の本数は、これに限定されるものではない。コア16の本数は、必要に応じて適宜増減することができる。また、上記第3実施形態では、外周のコア16を1つの同心円上に配置したが、外周のコア16を複数の同心円上に配置するようにしてもよい。1つのマルチコアファイバ用光ファイバ母材に含まれる複数のコア16は、総て同じ材料により構成されていてもよいし、総てが或いは一部が異なる材料により構成されていてもよい。また、コア用ガラスロッド12の一部を、屈折率がクラッドと等しいガラスロッドに置き換えることもできる。
なお、上記実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
[実施例1]
第1のガラス粉末として、比表面積が1.5m2/g(平均粒径:10μm)である市販の石英ガラス粉末(株式会社トクヤマ製:「エクセリカSE8」)99重量%に対し、比表面積が50m2/g(平均粒径70nm)である市販の石英ガラス粉末(株式会社トクヤマ製:「シルフィルNSS−3N])を1重量%加えたガラス粉末に純水を加え、濃度60%であるスラリーを作製した。このスラリーに、成形助剤としてポリビニルアルコール(PVA)を加え、混合した。得られたスラリーを噴霧乾燥し、平均粒径が150μmの第1の造粒粒子を得た。
また、第2のガラス粉末として、比表面積が1.5m2/g(平均粒径:10μm)である市販の石英ガラス粉末(株式会社トクヤマ製:「エクセリカSE8」)に純水を加え、濃度60%であるスラリーを作製した。このスラリーに、成形助剤としてPVAを加え、混合した。得られたスラリーを噴霧乾燥し、平均粒径が150μmの第2の造粒粒子を得た。
次いで、ウレタンゴム製であり、内径が150mm、円筒部の平行部長さが750mmである成形型30の下蓋体36の開口部40に、コア用部材10を挿入した(図2及び図3(b)を参照)。コア用部材10は、VAD法により作製し、外径が40mm、クラッドに対するコアの比屈折率差が0.35%であり、クラッド/コア比が4.0であった。
次いで、成形型30内に、内径が142mm、厚さが0.1mmのテフロン製の筒体42を設置し、筒体32と筒体42との間に、第1の造粒粒子を胴部の上端まで投入した。また、筒体42とコア用部材10との間には、第2の造粒粒子を胴部の上端まで投入した(図4(a)を参照)。次いで、筒体42を除去した後、成形型30に上蓋体34を取り付け、粉末投入口47から第2の造粒粒子を更に投入し、粉末投入口47に蓋48をした(図4(b)〜図5(a)を参照)。
次いで、このようにしてコア用部材10、第1の造粒粒子及び第2の造粒粒子を装填した成形型30をCIP装置150内に設置し、圧媒(水)を介して圧力98MPaで加圧し、その後、徐々に減圧した。減圧終了後、CIP装置150から成形型30を取り出し、成形型30から成形体100を取り出した。この成形体100には、亀裂や割れは生じておらず、また、中心のコア用部材10にも割れが生じていないことが確認された。加圧成形後の成形体100の外径は約120mm、平行部の長さは約730mm、第1の部分22の厚さは約3mm(粉体成形部20の厚さの約7.5%)であった。
次いで、成形体100の粉体成形部20に含まれている成形助剤(PVA)を取り除くために、成形体100を図7に示すような横型炉(脱脂装置200)内に設置し、脱脂処理を実施した。炉内に導入するガス流量はN2/O2=8/2(リットル/分)とし、常温から脱脂温度である500℃まで昇温した後、500℃で保持し、脱脂処理を実施した。その後、成形体100を炉内で徐冷した。
脱脂装置200内に成形体100を設置する際、図8(a)に示すように成形体100を支持部14のみで支える形態(第1の脱脂方法)としたところ、脱脂した成形体100のコア用部材10に接する粉体成形部20の上部が破損して落下していた。このため、その後の成形体100の焼結、透明ガラス化ができなかった。
また、脱脂装置200内に成形体100を設置する際、成形体100の粉体成形部20を外削して均一な外径とし、図8(b)に示すように成形体100を粉体成形部20のみで支える形態(第2の脱脂方法)としたところ、脱脂した成形体100は破損していた。
一方、脱脂装置200内に成形体100を設置する際、成形体100の粉体成形部20を外削して均一な外径とし、図7に示すように成形体100を支持部14及び粉体成形部20で支える形態(第3の脱脂方法)としたところ、脱脂した成形体100に亀裂や破損は認められなかった。
[実施例2]
第1のガラス粉末としての比表面積が1.6m2/g(平均粒径:3.5μm)である市販の石英ガラス粉末(株式会社トクヤマ製:「エクセリカUF−345」)に純水を加え、濃度60%であるスラリーを作製した。このスラリーに、成形助剤としてPVAを加え、混合した。得られたスラリーを噴霧乾燥し、平均粒径が150μmの第3の造粒粒子を得た。
また、実施例1と同様にして、第2のガラス粉末としての平均粒径10μmの石英ガラス粉末のみからなる第2の造粒粒子を得た。
次いで、ウレタンゴム製であり、内径が150mm、円筒部の平行部長さが750mmである成形型30の下蓋体36の開口部40に、実施例1と同様のコア用部材10を挿入した(図2及び図3(b)を参照)。
次いで、成形型30内に、内径が142mm、厚さが0.1mmのテフロン製の筒体42を設置し、筒体32と筒体42との間に、第3の造粒粒子を胴部の上端まで投入した。また、筒体42とコア用部材10との間には、第2の造粒粒子を胴部の上端まで投入した(図4(a)を参照)。次いで、筒体42を除去した後、成形型30に上蓋体34を取り付け、粉末投入口47から第2の造粒粒子を更に投入し、粉末投入口47に蓋48をした(図4(b)〜図5(a)を参照)。
次いで、このようにしてコア用部材10、第2の造粒粒子及び第3の造粒粒子を装填した成形型30をCIP装置150内に設置し、圧媒(水)を介して圧力98MPaで加圧し、その後、徐々に減圧した。減圧終了後、CIP装置150から成形型30を取り出し、成形型30から成形体100を取り出した。この成形体100には、亀裂や割れは生じておらず、また、中心のコア用部材10にも割れが生じていないことが確認された。加圧成形後の成形体100の外径は約120mm、平行部の長さは約730mm、第1の部分22の厚さは約3mm(粉体成形部20の厚さの約7.5%)であった。
次いで、成形体100の粉体成形部20に含まれている成形助剤(PVA)を取り除くために、実施例1と同様の脱脂処理を実施した。
脱脂装置200内に成形体100を設置する際、図8(a)に示すように成形体100を支持部14のみで支える形態(第1の脱脂方法)としたところ、脱脂した成形体100のコア用部材10に接する粉体成形部20の上部が破損して落下していた。このため、その後の成形体100の焼結、透明ガラス化ができなかった。
一方、脱脂装置200内に成形体100を設置する際、成形体100の粉体成形部20を外削して均一な外径とし、図7に示すように成形体100を支持部14及び粉体成形部20で支える形態(第3の脱脂方法)としたところ、脱脂した成形体100に亀裂や破損は認められなかった。
[実施例3]
第1のガラス粉末としての比表面積が1.6m2/g(平均粒径:3.5μm)である市販の石英ガラス粉末(株式会社トクヤマ製:「エクセリカUF−345」)99重量%に対し、比表面積が50m2/g(平均粒径70nm)である市販の石英ガラス粉末(株式会社トクヤマ製:「シルフィルNSS−3N])を1重量%加えた石英紛体に純水を加え、濃度60%であるスラリーを作製した。このスラリーに、成形助剤としてPVAを加え、混合した。得られたスラリーを噴霧乾燥し、平均粒径が150μmの第4の造粒粒子を得た。
また、実施例1と同様にして、第2のガラス粉末としての平均粒径10μmの石英ガラス粉末のみからなる第2の造粒粒子を得た。
次いで、ウレタンゴム製であり、内径が150mm、円筒部の平行部長さが750mmである成形型30の下蓋体36の開口部40に、実施例1と同様のコア用部材10を挿入した(図2及び図3(b)を参照)。
次いで、成形型30内に、内径が142mm、厚さが0.1mmのテフロン製の筒体42を設置し、筒体32と筒体42との間に、第4の造粒粒子を胴部の上端まで投入した。また、筒体42とコア用部材10との間には、第2の造粒粒子を胴部の上端まで投入した(図4(a)を参照)。次いで、筒体42を除去した後、成形型30に上蓋体34を取り付け、粉末投入口47から第2の造粒粒子を投入し、粉末投入口47に蓋48をした(図4(b)〜図5(a)を参照)。
次いで、このようにしてコア用部材10、第2の造粒粒子及び第4の造粒粒子を装填した成形型30をCIP装置150内に設置し、圧媒(水)を介して圧力98MPaで加圧し、その後、徐々に減圧した。減圧終了後、CIP装置150から成形型30を取り出し、成形型30から成形体100を取り出した。この成形体100には、亀裂や割れは生じておらず、また、中心のコア用部材10にも割れが生じていないことが確認された。加圧成形後の成形体100の外径は約120mm、平行部の長さは約730mm、第1の部分22の厚さは約3mm(粉体成形部20の厚さの約7.5%)であった。
次いで、成形体100の粉体成形部20に含まれている成形助剤(PVA)を取り除くために、実施例1と同様の脱脂処理を実施した。
脱脂装置200内に成形体100を設置する際、成形体100の粉体成形部20を外削して均一な外径とし、図7に示すように成形体100を支持部14及び粉体成形部20で支える形態(第3の脱脂方法)としたところ、脱脂した成形体100に亀裂や破損は認められなかった。
[実施例4]
実施例1で作製した成形体100の脱脂体を、図9に示す焼結装置300を用い1530℃で焼結し、透明ガラス化した。焼結雰囲気は、塩素ガスを含むヘリウムガス雰囲気とした。
透明ガラス化処理後にガラス体を確認したところ、一部の光ファイバ母材において紛体成形部とコア用部材との界面に気泡が認められた。詳細に観察したところ、紛体成形部は焼結により縦方向に大きく縮んでいる一方で中心ロッドはさほど縮んでおらず、コア用部材と紛体成形部上部の界面が部分的に滑って界面に一部空洞が発生していることが確認できた。なお、5本製造したうち、2本には同様の滑りが観察されたが、3本には観察されなかった。
[比較例1]
実施例1と同様にして、平均粒径10μmの石英ガラス粉末のみからなる第2の造粒粒子を得た。
次いで、ウレタンゴム製であり、内径が150mm、円筒部の平行部長さが750mmである成形型30の下蓋体36の開口部40に、実施例1と同様のコア用部材10を挿入した(図2及び図3(b)を参照)。
次いで、成形型30内の筒体32とコア用部材10との間に、第2の造粒粒子を胴部の上端まで投入した。すなわち、粉体成形部20の全体を第2の造粒粒子で形成した。次いで、成形型30に上蓋体34を取り付け、粉末投入口47から第2の造粒粒子を更に投入し、粉末投入口47に蓋48をした。
次いで、このようにしてコア用部材10及び第2の造粒粒子を装填した成形型30をCIP装置150内に設置し、圧媒(水)を介して圧力98MPaで加圧し、その後、徐々に減圧した。減圧終了後、CIP装置150から成形型30を取り出し、成形型30から成形体100を取り出した。この成形体100には、亀裂や割れは生じておらず、また、中心のコア用部材10にも割れが生じていないことが確認された。加圧成形後の成形体100の外径は約120mm、平行部の長さは約730mmであった。
次いで、成形体100の粉体成形部20に含まれている成形助剤(PVA)を取り除くために、実施例1と同様の脱脂処理を実施した。
脱脂装置200内に成形体100を設置する際、図8(a)に示すように成形体100を支持部14のみで支える形態(第1の脱脂方法)としたところ、脱脂した成形体100の粉体成形部20が破損して落下していた。このため、その後の成形体100の焼結、透明ガラス化ができなかった。粉体成形部20の重量を中心のコア用部材10のみで支えようとしたところ、粉体成形部20が自身の重量を支えられずに破損したものと考えられる。
また、脱脂装置200内に成形体100を設置する際、成形体100の粉体成形部20を外削して均一な外径とし、図8(b)に示すように成形体100を粉体成形部20のみで支える形態(第2の脱脂方法)としたところ、成形体支持治具216上で粉体成形部20が破損した状態となり、コア用部材10は破損せずに成形体支持治具216上に残っていた。粉体成形部20の底部が全体の重量を支えきれずに破損したものと考えられる。
また、脱脂装置200内に成形体100を設置する際、成形体100の粉体成形部20を外削して均一な外径とし、図7に示すように成形体100を支持部14及び粉体成形部20で支える形態(第3の脱脂方法)とした場合にも、粉体成形部20は破損していた。
[比較例2]
実施例3と同様にして、平均粒径3.5μmの石英ガラス粉末と平均粒径70nmの石英ガラス粉末とからなる第4の造粒粒子を得た。
次いで、ウレタンゴム製であり、内径が150mm、円筒部の平行部長さが750mmである成形型30の下蓋体36の開口部40に、実施例1と同様のコア用部材10を挿入した(図2及び図3(b)を参照)。
次いで、成形型30内の筒体32とコア用部材10との間に、第4の造粒粒子を胴部の上端まで投入した。すなわち、粉体成形部20の全体を第4の造粒粒子で形成した。次いで、成形型30に上蓋体34を取り付け、粉末投入口47から第4の造粒粒子を更に投入し、粉末投入口47に蓋48をした。
次いで、このようにしてコア用部材10及び第4の造粒粒子を装填した成形型30をCIP装置150内に設置し、圧媒(水)を介して圧力98MPaで加圧し、その後、徐々に減圧した。減圧終了後、CIP装置150から成形型30を取り出し、成形型30から成形体100を取り出した。この成形体100には、亀裂や割れは生じておらず、また、中心のコア用部材10にも割れが生じていないことが確認された。ただし、加圧成形後の成形体100の外径は約130mm、平行部の長さは約740mmであり、実施例1の成形体100と比較するとサイズが大きかった。
次いで、成形体100の粉体成形部20に含まれている成形助剤(PVA)を取り除くために、実施例1と同様の脱脂処理を実施した。脱脂装置200内に成形体100を設置する際、成形体100の粉体成形部20を外削して均一な外径とし、図7に示すように成形体100を支持部14及び粉体成形部20で支える形態(第3の脱脂方法)とした。
脱脂処理後、成形体100の外観を確認したところ異常は認められなかったのでコア用部材10の両端部の支持部14を持って成形体100を持ち上げたところ、粉体成形部20に亀裂が発生して成形体100が破損して落下してしまった。同様の条件で4本の成形体100を作製し脱脂を行ったところ、4本とも成形体が破損して落下してしまった。
脱脂前の成形体100を破壊して内部の様子を観察したところ、成形体100の中心のコア用部材10付近において、加圧成形したにもかかわらず粉体成形部20が崩れ易くなっていた。これは、加圧成形の際の圧力がガラス粉末間の摩擦力によって成形体100の中心付近まで十分に伝わらなかったためと考えられる。
[比較例3]
加圧成形時の圧力を392MPaに変更したほかは比較例2と同様の条件により成形体100を形成した。
加圧成形後、成形型30から取り出した成形体100には、亀裂や割れは生じておらず、また、中心のコア用部材10にも割れが生じていないことが確認された。ただし、加圧成形後の成形体100の外径は約125mm、平行部の長さは約740mmであり、実施例1の成形体100と比較すると若干サイズが大きかった。
次いで、成形体100の粉体成形部20に含まれている成形助剤(PVA)を取り除くために、実施例1と同様の脱脂処理を実施した。脱脂装置200内に成形体100を設置する際、成形体100の粉体成形部20を外削して均一な外径とし、図7に示すように成形体100を支持部14及び粉体成形部20で支える形態(第3の脱脂方法)とした。脱脂処理後、成形体100の外観を確認したところ異常は認められなかった。支持部14を持って搬送が可能な状態であったため、次工程である透明化工程に進めることとした。
次いで、成形体100の脱脂体を、図9に示す焼結装置300を用い1530℃で2時間焼結し、透明化した。焼結雰囲気は、塩素ガスを含むヘリウムガス雰囲気とした。
透明化処理後のガラス体を確認したところ、紛体成形部とコア用部材10との界面に空洞が多数認められた。この空洞は、上部の方が多く認められた。同様の加圧成形体を4本作製し、脱脂及び透明ガラス化を実施したが、4本総てにおいて界面に空洞が認められた。
加圧成形時の圧力が大きくなるに従い、加圧時の紛体成形部の変形量は大きくなるが、コア用部材は縮まない。昇圧過程及び除圧過程で両者間での大きな量のすべりが生じ、更に除圧課程での断面方向での外径変化も大きくなることから、粉体成形部とコア用部材間での接触が弱くなり、ガラス化時にコア用部材10と粉体成形部20との界面で滑りが生じて一部に空洞が発生したものと考えられる。
[実施例5]
実施例1と同様にして、第1、第3のガラス粉末としての平均粒径10μmの石英ガラス粉末と平均粒径70nmの石英ガラス粉末とからなる第1の造粒粒子と、第2のガラス粉末としての平均粒径10μmの石英ガラス粉末のみからなる第2の造粒粒子とを得た。
次いで、ウレタンゴム製であり、内径が50mm、円筒部の平行部長さが940mmである成形型50の下蓋体56の開口部に、実施例1と同様のコア用部材10を挿入した(図11(a)を参照)。次いで、筒体52及びコア用部材10を固定し、それらの隙間に第1の造粒粒子を加振しながら漏斗を使って投入し、上蓋体54で密閉した(図11(b)を参照)。
次いで、このようにしてコア用部材10及び第1の造粒粒子を充填した成形型50をCIP装置150内に設置し、圧媒(水)を介して圧力98MPaで加圧し、その後、徐々に減圧した。減圧終了後、CIP装置150から成形型50を取り出し、成形型30から成形体110を取り出した(図11(c)を参照)。この成形体110には、亀裂や割れは生じておらず、また、中心のコア用部材10にも割れが生じていないことが確認された。加圧成形後の成形体110の外径は約48mm、平行部の長さは約940mm、第3の部分26の厚さは約4mmであった。
次いで、ウレタンゴム製であり、内径が150mm、円筒部の平行部長さが750mmである成形型30の下蓋体36の開口部40に、成形体110を挿入した。
次いで、成形型30内に、内径が142mm、厚さが0.1mmのテフロン製の筒体42を設置し、筒体32と筒体42との間に、第1の造粒粒子を胴部の上端まで投入した。また、筒体42と成形体110との間には、第2の造粒粒子を胴部の上端まで投入した。次いで、筒体42を除去した後、成形型30に上蓋体34を取り付け、粉末投入口47から第2の造粒粒子を投入し、粉末投入口47に蓋48をした。
次いで、このようにして成形体110、第1の造粒粒子及び第2の造粒粒子を装填した成形型30をCIP装置150内に設置し、圧媒(水)を介して圧力98MPaで加圧し、その後、徐々に減圧した。減圧終了後、CIP装置150から成形型30を取り出し、成形型30から成形体100を取り出した。この成形体100には、亀裂や割れは生じておらず、また、中心のコア用部材10にも割れが生じていないことが確認された。加圧成形後の成形体100の外径は約125mm、平行部の長さは約730mm、第1の部分22の厚さは約3mm(粉体成形部20の厚さの約7.3%)であった。また、第3の部分26の厚さは粉体成形部20の厚さの約9%であった。
次いで、成形体100の粉体成形部20に含まれている成形助剤(PVA)を取り除くために、実施例1と同様の脱脂処理を実施した。脱脂装置200内に成形体100を設置する際、成形体100の粉体成形部20を外削して均一な外径とし、図7に示すように成形体100を支持部14及び粉体成形部20で支える形態(第3の脱脂方法)としたところ、脱脂した成形体100に亀裂や破損は認められなかった。
次いで、成形体100の脱脂体を、図9に示す焼結装置300を用い1530℃で2時間焼結し、透明化した。焼結雰囲気は、塩素ガスを含むヘリウムガス雰囲気とした。
透明化処理後にガラス体を確認したところ、紛体成形部と中心コア用部材との界面に気泡は認められなかった。また、詳細に観察したところ、紛体成形部と中心コア用部材の界面は、全長に渡って一体化されていた。4本の光ファイバ母材について同様の条件で透明ガラス化をおこなったところ、4本全てにおいて滑りは認めらなかった。
[実施例6]
実施例1と同様にして、第1、第3のガラス粉末としての平均粒径10μmの石英ガラス粉末と平均粒径70nmの石英ガラス粉末とからなる第1の造粒粒子と、第2のガラス粉末としての平均粒径10μmの石英ガラス粉末のみからなる第2の造粒粒子とを得た。また、実施例5と同様にして、1本の成形体110を得た。
次いで、ウレタンゴム製であり、内径が40mm、円筒部の平行部長さが730mmである成形型60の下蓋体66の開口部に、コアクラッド比が1:3の外径30mmφのコア用ガラスロッド12を挿入した(図13(a)を参照)。次いで、筒体62及びコア用ガラスロッド12を固定し、それらの隙間に第1の造粒粒子を加振しながら漏斗を使って投入し、上蓋体64で密閉した(図13(b)を参照)。
次いで、このようにしてコア用ガラスロッド12及び第1の造粒粒子を充填した成形型60をCIP装置150内に設置し、圧媒(水)を介して圧力98MPaで加圧し、その後、徐々に減圧した。減圧終了後、CIP装置150から成形型50を取り出し、成形型30から成形体120を取り出した(図11(c)参照)。この成形体110には、亀裂や割れは生じておらず、また、中心のコア用部材10にも割れが生じていないことが確認された。加圧成形後の成形体120の外径は約37mm、第3の部分26の厚さは約4mmであった。この成形体120を6本準備した。
次いで、ウレタンゴム製であり、内径が150mm、円筒部の平行部長さが750mmである成形型70の下蓋体76の開口部に、成形体110,120を挿入した。成形型70の中心には成形体110を配置して中心コアロッドとし、その周囲には6本の成形体120を配置して周辺コアロッドとした。
次いで、成形型70内に、内径が142mm、厚さが0.1mmのテフロン製の筒体78を設置し、筒体72と筒体78との間に、第1の造粒粒子を胴部の上端まで投入した。また、筒体78と成形体110,120との間には、第2の造粒粒子を胴部の上端まで投入した。次いで、筒体78を除去した後、成形型70に上蓋体74を取り付け、粉末投入口から第2の造粒粒子を投入し、粉末投入口に蓋をした。
次いで、このようにして成形体110,120、第1の造粒粒子及び第2の造粒粒子を装填した成形型70をCIP装置150内に設置し、圧媒(水)を介して圧力98MPaで加圧し、その後、徐々に減圧した。減圧終了後、CIP装置150から成形型70を取り出し、成形型70から成形体100を取り出した。この成形体100には、亀裂や割れは生じておらず、また、7本のコア用ガラスロッド12にも割れが生じていないことが確認された。加圧成形後の成形体100の外径は約135mm、平行部の長さは720mm、第1の部分22の厚さは約3mmであった。
次いで、成形体100の粉体成形部20に含まれている成形助剤(PVA)を取り除くために、実施例1と同様の脱脂処理を実施した。脱脂装置200内に成形体100を設置する際、成形体100の粉体成形部20を外削して均一な外径とし、図7に示すように成形体100を支持部14及び粉体成形部20で支える形態(第3の脱脂方法)としたところ、脱脂した成形体100に亀裂や破損は認められなかった。
次いで、成形体100の脱脂体を、図9に示す焼結装置300を用い1530℃で2時間焼結し、透明化した。焼結雰囲気は、塩素ガスを含むヘリウムガス雰囲気とした。
透明化処理後にガラス体を確認したところ、紛体成形部とコア用ガラスロッドとの界面には気泡は認められなかった。また、詳細に観察したところ、紛体成形部と中心コア用部材の界面は、全長に渡って一体化されていた。また、中心コアロッド及び周辺コアロッドの界面には空隙等の異常は認められず、全長に渡って透明ガラス化されていた。